(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ゴルフボール
(51)【国際特許分類】
A63B 37/00 20060101AFI20230912BHJP
C08L 21/00 20060101ALI20230912BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
A63B37/00 538
C08L21/00
C08K5/098
(21)【出願番号】P 2019174424
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】新藤 絢香
(72)【発明者】
【氏名】兼子 拓巳
(72)【発明者】
【氏名】唯岡 弘
(72)【発明者】
【氏名】重光 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】志賀 一喜
【審査官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-094434(JP,A)
【文献】特開2017-226758(JP,A)
【文献】特開2018-102693(JP,A)
【文献】特開昭49-048423(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 7/00-21/02
C08K 5/00- 5/56
A63B 37/00-37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
球状コアと、前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤を含有し、前記(b)共架橋剤が式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物から形成され
、前記ゴム組成物中の式(1)で表される化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、3.5質量部以上、40質量部以下であることを特徴とするゴルフボール。
(R
1COO)M(OCOR
2)m (1)
[式(1)中、Mは
亜鉛を示し、
mは1を示す。R
1
はエテニル基であり、R
2
は1-プロペニル基または1,3-ブタジエニル基である。]
【請求項2】
前記球状コアの中心硬度Hoと表面硬度Hsとの硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で20以上である請求項
1に記載のゴルフボール。
【請求項3】
前記球状コアの中心硬度Hoと表面硬度Hsとの硬度差(Hs-Ho)に対する、球状コアの中心から半径37.5%地点の硬度H37.5と中心硬度Hoとの硬度差(H37.5-Ho)の比は、0.4以下である請求項
1または2に記載のゴルフボール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行性能に優れたゴルフボールに関するものであり、より詳細には、ゴルフボールのコア用ゴム組成物の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ゴルフボールのコアを形成する材料として、反発性が良い観点から、基材ゴム、共架橋剤、架橋開始剤を含有するゴム組成物が広く使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、球状コアと、前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤を含有し、前記(b)共架橋剤が式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボールが開示されている。
(R1OCO)M(COOR2)m (1)
式(1)中、Mは金属原子を示し、mは1または2を示す。mが1の場合、R1およびR2は異なって、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基を示す。mが2の場合、R1は炭素数2~30のアルケニル基、炭素数2~30のアルキニル基、炭素数1~30のアルキル基、炭素数6~30のアリール基を示し、2つのR2は同一または異なって、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基を示す。ただし、mが2の場合、R1および2つのR2が全て同一である化合物は除く。
【0004】
特許文献2には、ゴム組成物の架橋成型物を構成要素とするゴルフボールであって、該ゴム組成物が、下記の(a)~(d)成分、
(a)基材ゴム、
(b)α,β-不飽和カルボン酸及び/又はその金属塩、
(c)架橋開始剤、
(d)金属と結合するカルボン酸が異なる2種類以上であり、且つ、該カルボン酸のうち少なくとも1種が炭素数8個以上であるカルボン酸金属塩
を含有することを特徴とするゴルフボールが開示されている。
【0005】
特許文献3には、コアと、カバーと、コアとカバーとの間に配置された中間層とを有するゴルフボールであって、前記コアは、ポリブタジエンゴムと、脂肪酸(メタ)アクリル酸塩との配合物を含み、前記脂肪酸(メタ)アクリル酸塩は、脂肪酸と(メタ)アクリル酸モノマーと、M(OH)xまたはMxOyとの反応生成物を含み、ここで、Mは、金属カチオンであり、xおよびyは、それぞれ独立して、約1~約7であり、前記脂肪酸(メタ)アクリル酸塩は、配合物中に約1部~70部存在することを特徴とするゴルフボールが開示されています。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2018-102693号公報
【文献】特開2018-86179号公報
【文献】米国特許公開2018-002510号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のゴルフボールでは、共架橋剤としてアクリル酸亜鉛が使用されている。アクリル酸亜鉛を使用することにより、ゴルフボールの反発性が向上する。しかしながら、アクリル酸亜鉛を使用して、ゴルフボールの反発性を向上することには限界がある。そのため、異なる方法により、ゴルフボールの飛距離を向上させることが求められている。一方、ドライバーショットのスピン量を低減することにより、ドライバーショットの飛距離が大きくなることが知られている。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ドライバーショットのスピン量が低減されたゴルフボールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤を含有し、前記(b)共架橋剤が式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
(R1COO)M(OCOR2)m (1)
[式(1)中、Mは金属原子を示し、mは1または2を示す。R1およびR2は異なって、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基を示し、カルボニル基に結合するα位の炭素原子が炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する。mが2の場合、2つのR2は同一または異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライバーショットのスピン量が低減されたゴルフボールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係るゴルフボールが示された一部切り欠き断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記課題を解決することができた本発明のゴルフボールは、球状コアと、前記球状コアを被覆する少なくとも一層のカバーとを有するゴルフボールであって、
前記球状コアが、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤を含有し、前記(b)共架橋剤が式(1)で表される化合物を含有するゴム組成物から形成されていることを特徴とするゴルフボール。
(R1COO)M(OCOR2)m (1)
[式(1)中、Mは金属原子を示し、mは1または2を示す。R1およびR2は異なって、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基を示し、カルボニル基に結合するα位の炭素原子が炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する。mが2の場合、2つのR2は同一または異なっていてもよい。]
【0012】
[球状コア]
前記球状コアは、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤および(c)架橋開始剤を含有するゴム組成物から形成されている。
【0013】
((a)基材ゴム)
前記(a)基材ゴムとしては、天然ゴムおよび/または合成ゴムを使用することができ、例えば、ポリブタジエンゴム、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレンポリブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)などを使用できる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、反発に有利なシス-1,4-結合を、40質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有するハイシスポリブタジエンが好適である。前記(a)基材ゴム中のハイシスポリブタジエンの含有量は、50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0014】
前記ハイシスポリブタジエンは、1,2-ビニル結合の含有量が2質量%以下であることが好ましく、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。1,2-ビニル結合の含有量が多すぎると反発性が低下する場合がある。
【0015】
前記ハイシスポリブタジエンは、希土類元素系触媒で合成されたものが好適であり、特に、ランタン系列希土類元素化合物であるネオジム化合物を用いたネオジム系触媒の使用が、1,4-シス結合が高含量、1,2-ビニル結合が低含量のポリブタジエンゴムを優れた重合活性で得られるので好ましい。
【0016】
前記ハイシスポリブタジエンは、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))が、30以上であることが好ましく、より好ましくは32以上、さらに好ましくは35以上であり、140以下が好ましく、より好ましくは120以下、さらに好ましくは100以下、最も好ましくは80以下である。なお、本発明でいうムーニー粘度(ML1+4(100℃))とは、JIS K6300-1(2013)に準じて、Lローターを使用し、予備加熱時間1分間、ローターの回転時間4分間、100℃の条件下にて測定した値である。
【0017】
前記ハイシスポリブタジエンとしては、分子量分布Mw/Mn(Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)が、2.0以上であることが好ましく、より好ましくは2.2以上、さらに好ましくは2.4以上、最も好ましくは2.6以上であり、6.0以下であることが好ましく、より好ましくは5.0以下、さらに好ましくは4.0以下、最も好ましくは3.4以下である。ハイシスポリブタジエンの分子量分布(Mw/Mn)が小さすぎると作業性が低下し、大きすぎると反発性が低下するおそれがある。なお、分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(東ソー社製、「HLC-8120GPC」)により、検知器として示差屈折計を用いて、カラム:GMHHXL(東ソー社製)、カラム温度:40℃、移動相:テトラヒドロフランの条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として算出した値である。
【0018】
((b)共架橋剤)
前記(b)共架橋剤は、式(1)で表される化合物を含有する。共架橋剤として、式(1)で表される化合物を配合することで、ドライバーショットのスピン量を低減することができる。
【0019】
(R1COO)M(OCOR2)m (1)
[式(1)中、Mは金属原子を示し、mは1または2を示す。R1およびR2は異なって、炭素数2~30のアルケニル基または炭素数2~30のアルキニル基を示し、カルボニル基に結合するα位の炭素原子が炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を有する。mが2の場合、2つのR2は同一または異なっていてもよい。]
【0020】
前記金属原子(M)としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなどのアルカリ土類金属;スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金などの遷移金属;ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、ガリウム、カドミウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、ポロニウムなどの卑金属が挙げられる。前記金属原子は、単独または2種以上であってもよい。これらの中でも、前記金属原子としては、2価または3価の金属イオンを形成し得る金属原子が好ましく、より好ましくはベリリウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、鉛およびアルミニウムよりなる群から選択される少なくとも1種の金属である。
【0021】
前記炭素数2~30のアルケニル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。前記アルケニル基は、式(1)においてカルボニル基に結合するα位の炭素原子が炭素-炭素二重結合を有する。
【0022】
前記炭素数2~30のアルケニル基は、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。前記炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、炭素-炭素二重結合を一つ有するアルケニル基、炭素-炭素二重結合を二つ有するアルケニル基を挙げることができる。炭素-炭素二重結合を二つ有するアルケニル基は、二つの炭素-炭素二重結合が共役していることが好ましい。
【0023】
前記アルケニル基の炭素数は、2以上が好ましく、30以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0024】
炭素-炭素二重結合を一つ有する炭素数2~30のアルケニル基としては、例えば、エテニル基(C2:ビニル基)、1-プロペニル基(C3)、イソプロペニル基(C3)、1-ブテニル基(C4)、1-ペンテニル基(C5)、1-ヘキセニル基(C6)、1-ヘプテニル基(C7)、1-オクテニル基(C8)、1-ノネニル基(C9)、1-デセニル基(C10)、1-ウンデセニル基(C11)、1-ドデセニル基(C12)、1-トリデセニル基(C13)、1-テトラデセニル基(C14)、1-ペンタデセニル基(C15)、1-ヘキサデセニル基(C16)、1-ヘプタデセニル基(C17)、1-オクタデセニル基(C18)、1-ノナデセニル基(C19)、1-イコセニル基(C20)、1-ヘンイコセニル基(C21)、1-ドコセニル基(C22)、1-トリコセニル基(C23)、1-テトラコセニル基(C24)、1-ペンタコセニル基(C25)、1-ヘキサコセニル基(C26)、1-ヘプタコセニル基(C27)、1-オクタコセニル基(C28)、1-ノナコセニル基(C29)、1-トリアコンテニル基(C30)などを挙げることができる。
【0025】
炭素-炭素二重結合を二つ有する炭素数4~30のアルケニル基としては、1,3-ブタジエニル基(C4)、1,3-ペンタジエニル基(C5)、1,3-ヘキサジエニル基(C6)、1,3-ヘプタジエニル基(C7)、1,3-オクタジエニル基(C8)、1,3-ノナジエニル基(C9)、1,3-デカジエニル基(C10)、1,3-ウンデカジエニル基(C11)、1,3-ドデカジエニル基(C12)、1,3-トリデカジエニル基(C13)、1,3-テトラデカジエニル基(C14)、1,3-ペンタデカジエニル基(C15)、1,3-ヘキサデカジエニル基(C16)、1,3-ヘプタデカジエニル基(C17)、1,3-オクタデカジエニル基(C18)、1,3-ノナデカジエニル基(C19)、1,3-イコサジエニル基(C20)、1,3-ヘンイコサジエニル基(C21)、1,3-ドコサジエニル基(C22)、1,3-トリコサジエニル基(C23)、1,3-テトラコサジエニル基(C24)、1,3-ペンタコサジエニル基(C25)、1,3-ヘキサコサジエニル基(C26)、1,3-ヘプタコサジエニル基(C27)、1,3-オクタコサジエニル基(C28)、1,3-ノナコサジエニル基(C29)、1,3-トリアコンタジエニル基(C30)などを挙げることができる。
【0026】
前記炭素-炭素二重結合を有するアルケニル基としては、例えば、エテニル基(C2:ビニル基)、1-プロペニル基(C3)、イソプロペニル基(C3)、1,3-ブタジエニル基(C4)、または、1,3-ペンタジエニル基(C5)が好ましい。
【0027】
炭素数2~30のアルキニル基としては、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよいが、直鎖状が好ましい。前記炭素数2~30のアルキニル基としては、式(1)においてカルボニル基に結合するα位の炭素原子が炭素-炭素三重結合を有する。前記炭素数2~30のアルキニル基としては、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。前記炭素数2~30のアルキニル基としては、例えば、炭素-炭素三重結合を一つ有するアルキニル基、炭素-炭素三重結合を二つ有するアルキニル基を挙げることができる。
【0028】
前記アルキニル基の炭素数は、2以上が好ましく、30以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0029】
炭素数2~30のアルキニル基としては、例えば、エチニル基(C2)、1-プロピニル基(C3)、1-ブチニル基(C4)、1-ペンチニル基(C5)、1-ヘキシニル基(C6)、1-ヘプチニル基(C7)、1-オクチニル基(C8)、1-ノニニル基(C9)、1-デシニル基(C10)、1-ウンデシニル基(C11)、1-ドデシニル基(C12)、1-トリデシニル基(C13)、1-テトラデシニル基(C14)、1-ペンタデシニル基(C15)、1-ヘキサデシニル基(C16)、1-ヘプタデシニル基(C17)、1-オクタデシニル基(C18)、1-ノナデシニル基(C19)、1-イコシニル基(C20)、1-ヘンイコシニル基(C21)、1-ドコシニル基(C22)、1-トリコシニル基(C23)、1-テトラコシニル基(C24)、1-ペンタコシニル基(C25)、1-ヘキサコシニル基(C26)、1-ヘプタコシニル基(C27)、1-オクタコシニル基(C28)、1-ノナコシニル基(C29)、1-トリアコンチニル基(C30)などを挙げることができる。
【0030】
前記炭素-炭素三重結合を有するアルキニル基としては、例えば、エチニル基(C2)、1-プロピニル基(C3)、1-ブチニル基(C4)などが挙げられる。
【0031】
式(1)の化合物において、R1の炭素数は、2以上が好ましく、6以下が好ましく、3以下がより好ましい。R1としては、エテニル基(ビニル基)またはイソプロペニル基が好ましく、エテニル基(ビニル基)がより好ましい。
【0032】
式(1)の化合物において、R2の炭素数は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、6以下が好ましい。R2としては、1-プロペニル基、1,3-ブタジエニル基、または、1,3-ペンタジエニル基が好ましく、1-プロペニル基、または、1,3-ブタジエニル基がより好ましく、1-プロペニル基がさらに好ましい。
【0033】
式(1)の化合物の具体例としては、m=1であって、R1=エテニル基(ビニル基)、R2=1-プロペニル基である化合物;m=1であって、R1=エテニル基(ビニル基)、R2=1,3-ブタジエニル基である化合物;または、m=1であって、R1=エテニル基(ビニル基)、R2=1,3-ペンタジエニル基である化合物を挙げることができる。
【0034】
[式(1)で表される化合物の調製]
前記式(1)で表される化合物は、カルボン酸と、金属酸化物とを反応させることで得られる。具体的には、金属酸化物と、少なくとも第一カルボン酸と第二カルボン酸とを溶媒中で撹拌する方法が挙げられる。
【0035】
前記金属酸化物としては、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物;酸化スカンジウム、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化テクネチウム、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化パラジウム、酸化銀、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化タングステン、レニウム、酸化オスミウム、酸化イリジウム、酸化白金、酸化金などの遷移金属の酸化物;酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化ガリウム、酸化カドミウム、酸化インジウム、酸化スズ、酸化タリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、酸化ポロニウムなどの卑金属の酸化物が挙げられる。前記金属酸化物は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属酸化物としては、2価の金属の酸化物が好ましく、より好ましくは酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化バリウム、酸化カドミウム、酸化鉛である。
【0036】
前記カルボン酸としては、例えば、炭素数3~30の不飽和脂肪酸が挙げられる。前記不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸、炭素-炭素三重結合を有する不飽和脂肪酸が挙げられる。炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合は、カルボキシル基が結合するα位(2位)の炭素原子が有することが好ましい。
【0037】
前記炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸としては、炭素-炭素二重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。前記炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素-炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸、または、炭素-炭素二重結合を二つ有する不飽和脂肪酸を挙げることができる。炭素-炭素二重結合を二つ有する不飽和脂肪酸の二つの炭素-炭素二重結合は、共役していることが好ましい。
【0038】
前記炭素-炭素二重結合を有する不飽和脂肪酸の炭素数は、3以上が好ましく、30以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0039】
炭素-炭素二重結合を一つ有する不飽和脂肪酸としては、2-プロペン酸(C3:アクリル酸)、2-メチル-2-プロペン酸(C4:メタクリル酸)、2-ブテン酸(C4:クロトン酸)、2-ペンテン酸(C5)、2-ヘキセン酸(C6)、2-ヘプテン酸(C7)、2-オクテン酸(C8)、2-ノネン酸(C9)、2-デセン酸(C10)、2-ウンデセン酸(C11)、2-ドデセン酸(C12)、2-トリデセン酸(C13)、2-テトラデセン酸(C14)、2-ペンタデセン酸(C15)、2-ヘキサデセン酸(C16)、2-ヘプタデセン酸(C17)、2-オクタデセン酸(C18)、2-ノナデセン酸(C19)、2-イコセン酸(C20)、2-ヘンイコセン酸(C21)、2-ドコセン酸(C22)、2-トリコセン酸(C23)、2-テトラコセン酸(C24)、2-ペンタコセン酸(C25)、2-ヘキサコセン酸(C26)、2-ヘプタコセン酸(C27)、2-オクタコセン酸(C28)、2-ノナコセン酸(C29)、2-トリアコンテン酸(C30)などを挙げることができる。
【0040】
炭素-炭素二重結合を二つ有する不飽和脂肪酸としては、ブタジエン酸(C4)、ペンタジエン酸(C5)、ヘキサジエン酸(C6)、ヘプタジエン酸(C7)、オクタジエン酸(C8)、ノナジエン酸(C9)、デカジエン酸(C10)、ウンデカジエン酸(C11)、ドデカジエン酸(C12)、トリデカジエン酸(C13)、テトラデカジエン酸(C14)、ペンタデカジエン酸(C15)、ヘキサデカジエン酸(C16)、ヘプタデカジエン酸(C17)、オクタデカジエン酸(C18)、ノナデカジエン酸(C19)、イコサジエン酸(C20)、ヘンイコサジエン酸(C21)、ドコサジエン酸(C22)、トリコサジエン酸(C23)、テトラコサジエン酸(C24)、ペンタコサジエン酸(C25)、ヘキサコサジエン酸(C26)、ヘプタコサジエン酸(C27)、オクタコサジエン酸(C28)、ノナコサジエン酸(C29)、トリアコンタジエン酸(C30)などを挙げることができる。
【0041】
前記二つの炭素-炭素二重結合は、共役していることが好ましい。すなわち、2位と4位の炭素が炭素-炭素二重結合を有している2,4-不飽和カルボン酸であることが好ましい。
【0042】
炭素-炭素三重結合を有する不飽和カルボン酸は、炭素-炭素三重結合を少なくとも1つ有するものが好ましい。前記炭素-炭素三重結合を有する不飽和脂肪酸としては、例えば、炭素-炭素三重結合を一つ有する不飽和脂肪酸、または、炭素-炭素三重結合を二つ有する不飽和脂肪酸を挙げることができる。
【0043】
前記炭素-炭素三重結合を有する不飽和脂肪酸の炭素数は、3以上が好ましく、30以下が好ましく、より好ましくは20以下、さらに好ましくは10以下である。
【0044】
炭素-炭素三重結合を一つ有する不飽和脂肪酸としては、2-プロピン酸(C3)、2-ブチン酸(C4)、2-ペンチン酸(C5)、2-ヘキシン酸(C6)、2-ヘプチン酸(C7)、2-オクチン酸(C8)、2-ノニン酸(C9)、2-デシン酸(C10)、2-ウンデシン酸(C11)、2-ドデシン酸(C12)、2-トリデシン酸(C13)、2-テトラデシン酸(C14)、2-ペンタデシン酸(C15)、2-ヘキサデシン酸(C16)、2-ヘプタデシン酸(C17)、2-オクタデシン酸(C18)、2-ノナデシン酸(C19)、2-イコシン酸(C20)、2-ヘンイコシン酸(C21)、2-ドコシン酸(C22)、2-トリコシン酸(C23)、2-テトラコシン酸(C24)、2-ペンタコシン酸(C25)、2-ヘキサコシン酸(C26)、2-ヘプタコシン酸(C27)、2-オクタコシン酸(C28)、2-ノナコシン酸(C29)、2-トリアコンチン酸(C30)を挙げることができる。
【0045】
本発明では、第一カルボン酸として、2-プロペン酸(アクリル酸)または2-メチル-2-プロペン酸(メタクリル酸)を使用することが好ましく、第一カルボン酸として2-プロペン酸(アクリル酸)を使用することがより好ましい。また、第二カルボン酸として、2-ブテン酸(クロトン酸)、2,4-ペンタジエン酸または2,4-ヘキサジエン酸(ソルビン酸)を使用することが好ましく、2-ブテン酸(クロトン酸)、または、2,4-ペンタジエン酸を使用することがより好ましい。
【0046】
第一カルボン酸と第二カルボン酸との使用量は、所望とする脂肪酸金属塩の化学構造に応じて適宜調節すればよい。なお、金属酸化物中の金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積(金属イオンが複数種存在する場合は各金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積の合計)をX、第一カルボン酸中のカルボキシ基のモル数をY1、第二カルボン酸中のカルボキシ基のモル数をY2としたとき、比率((Y1+Y2)/X)が、0以上であり、1.0以下が好ましい。
【0047】
前記溶媒としては、トルエン、キシレンなどが挙げられる。溶媒の使用量は、前記カルボン酸の合計100gに対して、150mL以上が好ましく、200mL以上がより好ましく、600mL以下が好ましく、500mL以下がより好ましい。
【0048】
前記金属酸化物とカルボン酸とを混合する際の液温は、10℃以上が好ましく、より好ましくは15℃以上であり、100℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以下である。前記金属酸化物とカルボン酸とを混合する際の撹拌時間は、適宜調節すればよい。
【0049】
前記カルボン酸として、第一カルボン酸、第二カルボン酸に加えて第三カルボン酸を使用する場合、第一カルボン酸と第二カルボン酸と第三カルボン酸との使用量は、所望とする脂肪酸金属塩の化学構造に応じて適宜調節すればよい。なお、金属酸化物中の金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積(金属イオンが複数種存在する場合は各金属イオンのモル数とその金属イオンの価数との積の合計)をX、第一カルボン酸中のカルボキシ基のモル数をY1、第二カルボン酸中のカルボキシ基のモル数をY2、第三カルボン酸中のカルボキシ基のモル数をY3としたとき、比率((Y1+Y2+Y3)/X)が、0以上であり、1.0以下が好ましい。
【0050】
前記(b)共架橋剤は、本発明の効果を損なわない程度に、前記一般式(1)で表される化合物以外の他の共架橋剤を含有してもよい。前記他の共架橋剤としては、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩が挙げられる。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は、基材ゴム分子鎖にグラフト重合することによって、ゴム分子を架橋する作用を有する。前記炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、マレイン酸、クロトン酸等が挙げられる。
【0051】
炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の金属塩を構成する金属としては、ナトリウム、カリウム、リチウムなどの1価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属イオン;アルミニウムなどの3価の金属イオン;錫、ジルコニウムなどのその他のイオンが挙げられる。前記金属成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。これらの中でも、前記金属成分としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウムなどの2価の金属が好ましい。炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸の2価の金属塩を用いることにより、ゴム分子間に金属架橋が生じやすくなるからである。
【0052】
本発明の好ましい態様では、(b)共架橋剤は、(メタ)アクリル酸またはその金属塩と、一般式(1)で表される化合物とを含有することが好ましく、(メタ)アクリル酸の金属塩と一般式(1)で表される化合物とを含有することがより好ましい。
【0053】
前記ゴム組成物中の前記(b)共架橋剤の含有率は、前記(a)基材ゴム100質量部に対して、10質量部以上が好ましく、より好ましくは15質量部以上、さらに好ましくは20質量部以上であり、50質量部以下が好ましく、より好ましくは45質量部以下、さらに好ましくは40質量部以下である。前記(b)共架橋剤の含有量が10質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材を適当な硬さとするために、後述する(c)架橋開始剤の量を増加しなければならず、架橋ゴム成形体の反発性が低下する傾向がある。一方、(b)共架橋剤の含有量が50質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材が硬くなりすぎる傾向がある。
【0054】
前記ゴム組成物中の前記一般式(1)で表される化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、3.5質量部以上がより好ましく、4質量部以上がさらに好ましく、40質量部以下が好ましく、35質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。一般式(1)で表される化合物の含有量が、前記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量がより低減する。
【0055】
((c)架橋開始剤)
前記(c)架橋開始剤は、(a)基材ゴム成分を架橋するために配合されるものである。(c)架橋開始剤としては、有機過酸化物が好適である。前記有機過酸化物は、具体的には、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(175.4℃)、ジクミルパーオキサイド(175.2℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン(179.8℃)、t-ブチルクミルペルオキシ(173.3℃)、ジ-t-ヘキシルペルオキシ(176.7℃)、ジ-t-ブチルペルオキシ(185.9℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3(194.3℃)などが挙げられる。パーオキシエステルとしては、例えば、t-ブチルペルオキシマレエート(167.5℃)、t-ブチルペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノエート(166.0℃)、t-ブチルペルオキシラウレート(159.4℃)、t-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(158.8℃)、t-ヘキシルペルオキシベンゾエート(160.3℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルペルオキシ)ヘキサン(158.2℃)、t-ブチルペルオキシアセテート(159.9℃)、t-ブチルペルオキシベンゾエート(166.8℃)などが挙げられる。パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(147.1℃)、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン(149.2℃)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)-2-メチルシクロヘキサン(142.1℃)、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(153.8℃)、2,2-ジ(t-ブチルペルオキシ)ブタン(159.9℃)、n-ブチル-4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)バレレート(172.5℃)、2,2-ジ(4,4-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン(153.8℃)などが挙げられる。ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、p-メンタンハイドロパーオキサイド(199.5℃)、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド(232.5℃)などが挙げられる。上記有機過酸化物の化合物名の後の括弧内に記載した数値は、これらの1分間半減期温度である。これらの中でも、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタールが好適である。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、上記有機過酸化物を2種以上併用する場合、使用される有機過酸化物の1分間半減期温度の最大値と最小値との差は25℃以下が好ましく、より好ましくは10℃以下である。
【0056】
前記(c)架橋開始剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.2質量部以上が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.5質量部以下である。0.2質量部未満では、ゴム組成物から形成される部材が柔らかくなりすぎて、ゴルフボールの反発性が低下する傾向があり、5.0質量部を超えると、ゴム組成物から形成される部材を適切な硬さにするために、前述した(b)共架橋剤の使用量を減少する必要があり、ゴルフボールの反発性が不足したり、耐久性が悪くなるおそれがある。
【0057】
((d)金属化合物)
前記共架橋剤として炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を使用する際は、(d)金属化合物をさらに含有することが好ましい。前記(d)金属化合物としては、ゴム組成物中において(b)共架橋剤として配合される炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸を中和することができるものであれば、特に限定されない。前記(d)金属化合物としては、例えば、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化銅などの金属水酸化物;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化銅などの金属酸化物;炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウムなどの金属炭酸化物が挙げられる。(d)前記金属化合物として好ましいのは、二価金属化合物であり、より好ましくは亜鉛化合物である。二価金属化合物は、炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸と反応して、金属架橋を形成するからである。また、亜鉛化合物を用いることにより、反発性の高いゴルフボールが得られる。これらの(d)金属化合物は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
((e)有機硫黄化合物)
前記ゴム組成物は、さらに(e)有機硫黄化合物を含有してもよい。(e)有機硫黄化合物としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類、ポリスルフィド類、チウラム類、チオカルボン酸類、ジチオカルボン酸類、スルフェンアミド類、ジチオカルバミン酸塩類、チアゾール類およびこれらの金属塩よりなる群から選択される少なくとも1種を挙げることができる。球状コアの硬度分布が大きくなるという観点から、(e)有機硫黄化合物としては、チオール基(-SH)を有する有機硫黄化合物、または、その金属塩が好ましく、チオフェノール類、チオナフトール類、または、これらの金属塩が好ましい。
【0059】
チオール類としては、例えば、チオフェノール類、チオナフトール類が挙げられる。前記チオフェノール類としては、例えば、チオフェノール;4-フルオロチオフェノール、2,5-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,4,5-トリフルオロチオフェノール、2,4,5,6-テトラフルオロチオフェノール、ペンタフルオロチオフェノールなどのフルオロ基で置換されたチオフェノール類;2-クロロチオフェノール、4-クロロチオフェノール、2,4-ジクロロチオフェノール、2,5-ジクロロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、2,4,5,6-テトラクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノールなどのクロロ基で置換されたチオフェノール類;4-ブロモチオフェノール、2,5-ジブロモチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,4,5-トリブロモチオフェノール、2,4,5,6-テトラブロモチオフェノール、ペンタブロモチオフェノールなどのブロモ基で置換されたチオフェノール類;4-ヨードチオフェノール、2,5-ジヨードチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリヨードチオフェノール、2,4,5,6-テトラヨードチオフェノール、ペンタヨードチオフェノールなどのヨード基で置換されたチオフェノール類;または、これらの金属塩が挙げられる。金属塩としては、亜鉛塩が好ましい。
【0060】
前記チオナフトール類(ナフタレンチオール類)としては、2-チオナフトール、1-チオナフトール、1-クロロ-2-チオナフトール、2-クロロ-1-チオナフトール、1-ブロモ-2-チオナフトール、2-ブロモ-1-チオナフトール、1-フルオロ-2-チオナフトール、2-フルオロ-1-チオナフトール、1-シアノ-2-チオナフトール、2-シアノ-1-チオナフトール、1-アセチル-2-チオナフトール、2-アセチル-1-チオナフトール、またはこれらの金属塩を挙げることができ、2-チオナフトール、1-チオナフトール、またはこれらの金属塩が好ましい。金属塩としては、好ましくは2価の金属塩、より好ましくは亜鉛塩である。金属塩の具体的としては、例えば、1-チオナフトールの亜鉛塩、2-チオナフトールの亜鉛塩が挙げられる。
【0061】
ポリスルフィド類とは、ポリスルフィド結合を有する有機硫黄化合物であり、例えば、ジスルフィド類、トリスルフィド類、テトラスルフィド類が挙げられる。前記ポリスルフィド類としては、ジフェニルポリスルフィド類が好ましい。
【0062】
ジフェニルポリスルフィド類としては、ジフェニルジスルフィドの他;ビス(4-フルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-クロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(4-ヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,5-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5,6-テトラヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタヨードフェニル)ジスルフィド等のハロゲン基で置換されたジフェニルジスルフィド類;ビス(4-メチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタメチルフェニル)ジスルフィド、ビス(4-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(2,4,5-トリ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタ-t-ブチルフェニル)ジスルフィド等のアルキル基で置換されたジフェニルジスルフィド類;などが挙げられる。
【0063】
チウラム類としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィドなどのチウラムモノスルフィド類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィドなどのチウラムジスルフィド類、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラムテトラスルフィド類が挙げられる。チオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンチオカルボン酸が挙げられる。ジチオカルボン酸類としては、例えば、ナフタレンジチオカルボン酸が挙げられる。スルフェンアミド類としては、例えば、N-シクロへキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミドが挙げられる。
【0064】
(e)前記有機硫黄化合物は、単独もしくは二種以上を混合して使用することができる。(e)有機硫黄化合物としては、チオフェノール類および/またはその金属塩、チオナフトール類および/またはその金属塩、ジフェニルジスルフィド類、チウラムジスルフィド類が好ましく、より好ましくは2,4-ジクロロチオフェノール、2,6-ジフルオロチオフェノール、2,6-ジクロロチオフェノール、2,6-ジブロモチオフェノール、2,6-ジヨードチオフェノール、2,4,5-トリクロロチオフェノール、ペンタクロロチオフェノール、1-チオナフトール、2-チオナフトール、ジフェニルジスルフィド、ビス(2,6-ジフルオロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジクロロフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジブロモフェニル)ジスルフィド、ビス(2,6-ジヨードフェニル)ジスルフィド、ビス(ペンタブロモフェニル)ジスルフィドである。
【0065】
(e)有機硫黄化合物の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.05質量部以上が好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であって、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは2.0質量部以下である。(e)有機硫黄化合物の含有量が、0.05質量部未満では、(e)有機硫黄化合物を添加した効果が得られず、ゴルフボールの反発性が向上しないおそれがある。また、(e)有機硫黄化合物の含有量が、5.0質量部を超えると、得られるゴルフボールの圧縮変形量が大きくなって、反発性が低下するおそれがある。
【0066】
((f)カルボン酸および/またはその塩)
前記ゴム組成物は(f)カルボン酸および/またはその塩を含有してもよい。前記(f)カルボン酸および/またはその塩を含有することで、得られる球状コアの外剛内柔度合を大きくできる。前記(f)カルボン酸および/またはその塩としては、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸および芳香族カルボン酸塩が挙げられる。前記(f)カルボン酸および/または塩は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0067】
前記脂肪族カルボン酸は、飽和脂肪族カルボン酸(以下、「飽和脂肪酸」と称する場合がある。)、不飽和脂肪族カルボン酸(以下、「不飽和脂肪酸」と称する場合がある。)のいずれであっても良い。また、脂肪族カルボン酸は、分岐構造や環状構造を有していてもよい。前記飽和脂肪酸の炭素数は、1以上が好ましく、30以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。前記不飽和脂肪酸の炭素数は、5以上が好ましく、より好ましくは7以上、さらに好ましくは8以上であり、30以下が好ましく、より好ましくは18以下、さらに好ましくは13以下である。なお、(f)カルボン酸および/またはその塩には、(b)共架橋剤として使用する炭素数が3~8個のα,β-不飽和カルボン酸および/またはその金属塩は含まれないものとする。
【0068】
前記芳香族カルボン酸としては、分子中にベンゼン環を有するもの、分子中に複素芳香環を有するものが挙げられる。前記芳香族カルボン酸は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。ベンゼン環を有するカルボン酸としては、例えば、ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した芳香族カルボン酸、ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した芳香族-脂肪族カルボン酸、縮合ベンゼン環にカルボキシル基が直接結合した多核芳香族カルボン酸、縮合ベンゼン環に脂肪族カルボン酸が結合した多核芳香族-脂肪族カルボン酸などが挙げられる。前記複素芳香環を有するカルボン酸としては、例えば、複素芳香環に直接カルボキシル基が結合したものが挙げられる。
【0069】
脂肪族カルボン酸塩または芳香族カルボン酸塩としては、上述した脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の塩を用いることできる。これらの塩のカチオン成分としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、および、有機陽イオンを挙げることができる。金属イオンとしては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム、銀などの一価の金属イオン;マグネシウム、カルシウム、亜鉛、バリウム、カドミウム、銅、コバルト、ニッケル、マンガンなどの二価の金属イオン;アルミニウム、鉄などの3価の金属イオン;錫、ジルコニウム、チタンなどのその他のイオンが挙げられる。前記カチオン成分は、単独または2種以上の混合物として使用することもできる。
【0070】
前記有機陽イオンとは、炭素鎖を有する陽イオンである。前記有機陽イオンとしては、特に限定されず、例えば、有機アンモニウムイオンが挙げられる。前記有機アンモニウムイオンとしては、例えば、ステアリルアンモニウムイオン、ヘキシルアンモニウムイオン、オクチルアンモニウムイオン、2-エチルヘキシルアンモニウムイオンなどの1級アンモニウムイオン、ドデシル(ラウリル)アンモニウムイオン、オクタデシル(ステアリル)アンモニウムイオンなどの2級アンモニウムイオン;トリオクチルアンモニウムイオンなどの3級アンモニウムイオン;ジオクチルジメチルアンモニウムイオン、ジステアリルジメチルアンモニウムイオンなどの4級アンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの有機陽イオンは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0071】
前記脂肪族カルボン酸および/またはその塩としては、飽和脂肪酸および/またはその塩、不飽和脂肪酸および/またはその塩が挙げられる。前記飽和脂肪酸および/またはその塩が好ましく、カプリル酸(オクタン酸)、ペラルゴン酸(ノナン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。前記不飽和脂肪酸および/またはその塩としては、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸もしくはアラキドン酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0072】
前記芳香族カルボン酸および/またはその塩としては、特に、安息香酸、ブチル安息香酸、アニス酸(メトキシ安息香酸)、ジメトキシ安息香酸、トリメトキシ安息香酸、ジメチルアミノ安息香酸、クロロ安息香酸、ジクロロ安息香酸、トリクロロ安息香酸、アセトキシ安息香酸、ビフェニルカルボン酸、ナフタレンカルボン酸、アントラセンカルボン酸、フランカルボン酸もしくはテノイル酸、または、これらのカリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、亜鉛塩、鉄塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩が好ましい。
【0073】
前記(f)カルボン酸および/またはその塩の含有量は、例えば、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であって、40質量部以下が好ましく、より好ましくは35質量部以下であり、さらに好ましくは30質量部以下である。(f)カルボン酸および/またはその塩の含有量が0.5質量部以上であれば、球状コアの外剛内柔度合が大きくなり、40質量部以下であれば、コア硬度の低下が抑制され、反発性が良好となる。
【0074】
前記ゴム組成物は、必要に応じて、顔料、重量調整などのための充填剤、老化防止剤、しゃく解剤、軟化剤などの添加剤を含有してもよい。また、ゴム組成物は、ゴルフボールのコアや、コア作製時に発生した端材を粉砕したゴム粉末を含有してもよい。
【0075】
ゴム組成物に配合される顔料としては、例えば、白色顔料、青色顔料、紫色顔料などを挙げることができる。前記白色顔料としては、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンの種類は、特に限定されないが、隠蔽性が良好であるという理由から、ルチル型を用いることが好ましい。また、酸化チタンの含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは2質量部以上であって、8質量部以下が好ましく、より好ましくは5質量部以下である。
【0076】
ゴム組成物が白色顔料と青色顔料とを含有することも好ましい態様である。青色顔料は、白色を鮮やかに見せるために配合され、例えば、群青、コバルト青、フタロシアニンブルーなどを挙げることができる。また、前記紫色顔料としては、例えば、アントラキノンバイオレット、ジオキサジンバイオレット、メチルバイオレットなどを挙げることができる。
【0077】
ゴム組成物に用いる充填剤としては、主として最終製品として得られるゴルフボールの重量を調整するための重量調整剤として配合されるものであり、必要に応じて配合すれば良い。前記充填剤としては、酸化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、タングステン粉末、モリブデン粉末などの無機充填剤を挙げることができる。
【0078】
前記老化防止剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、1質量部以下であることが好ましい。また、しゃく解剤の含有量は、(a)基材ゴム100質量部に対して、0.1質量部以上、5質量部以下であることが好ましい。
【0079】
[ゴム組成物の調製]
本発明で使用するゴム組成物は、(a)基材ゴム、(b)共架橋剤、(c)架橋開始剤、および、必要に応じてその他の添加剤などを混合して、混練することにより得られる。混練の方法は、特に限定されず、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行えばよい。
【0080】
次に、ゴム組成物を加熱プレスして球状コアを成形する工程について説明する。まず、ゴム組成物を押出機により棒状に押し出し、所定の長さに切断して、予備成形体(「プラグ」とも呼ばれる)を作製する。プラグの作製に押出機を使用する場合、混練時にゴム組成物を加熱してもよいが、加熱温度は75℃以下とすることが好ましい。また、コア用ゴム組成物を厚みのあるシート状に成形し、これを打ち抜いてプラグにしてもよい。プラグの大きさは、圧縮成形用金型のサイズに応じて適宜変更すればよい。得られたプラグは、例えば、お互いにくっつかないように防着剤液に浸漬し、乾燥後、約8~48時間熟成することが好ましい。
【0081】
次いで、プラグをコア成型用金型に投入し、プレス成型する。本発明の製造方法では、ゴム組成物を加熱プレスして球状コアを成形する工程において、前記(c)架橋開始剤の1分間半減期温度をt℃としたとき、前記ゴム組成物をt-60℃~t-15℃のプレス温度で加熱プレスして球状コアを成形することが好ましい。加熱プレス温度をこの範囲とすることにより、得られる球状コアのコア半径の37.5%地点の硬度を選択的に低くすることができ、ドライバーショットのスピン量を低下させることができる。なお、本発明においてプレス温度とは、プレス成型機の設定温度である。
【0082】
前記加熱プレスの温度は、t-60℃以上が好ましく、t-50℃以上がより好ましく、t-40℃以上がさらに好ましく、t-15℃以下が好ましく、t-20℃以下が好ましい。加熱プレスの温度がt-60℃以上であればコアの外剛内柔の度合いを大きくすることができ、t-15℃以下であれば最適な硬度分布となり、スピン量低減効果が向上する。なお、ゴム組成物が(c)架橋開始剤を2種以上配合する場合、加熱プレスの温度はすべての(c)架橋開始剤の1分間半減期温度に対して上記範囲を満足するように調整する必要がある。
【0083】
前記加熱プレス温度は、120℃以上が好ましく、130℃以上がより好ましく、170℃以下が好ましい。成形時間は、10分間以上が好ましく、より好ましくは12分間以上、さらに好ましくは15分間以上であり、60分間以下が好ましく、より好ましくは50分間以下、さらに好ましくは45分間以下である。また、成形時の圧力は、2.9MPa~11.8MPaが好ましい。
【0084】
前記球状コアの中心硬度Hoは、ショアC硬度で、30以上が好ましく、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上である。球状コアの中心硬度HoがショアC硬度で30以上であれば、軟らかくなりすぎず、反発性が良好となる。また、球状コアの中心硬度Hoは、ショアC硬度で70以下が好ましく、より好ましくは65以下であり、さらに好ましくは60以下である。前記中心硬度HoがショアC硬度で70以下であれば、硬くなり過ぎず、打球感が良好となる。
【0085】
前記球状コアの表面硬度Hsは、ショアC硬度で、65以上が好ましく、より好ましくは70以上、さらに好ましくは72以上であり、100以下が好ましく、より好ましくは95以下、さらに好ましくは90以下である。前記球状コアの表面硬度を、ショアC硬度で65以上とすることにより、球状コアが軟らかくなり過ぎることがなく、良好な反発性が得られる。また、前記球状コアの表面硬度をショアC硬度で100以下とすることにより、球状コアが硬くなり過ぎず、良好な打球感が得られる。
【0086】
前記球状コアの表面硬度Hsと中心硬度Hoとの硬度差(Hs-Ho)は、ショアC硬度で、0以上が好ましく、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上、特に好ましくは20以上であり、60以下が好ましく、55以下がより好ましく、50以下がさらに好ましい。前記硬度差が大きいと、高打出角および低スピンの飛距離が大きいゴルフボールが得られる。
【0087】
本発明で使用するゴム用組成物から形成される球状コアは、球状コアの中心から半径37.5%地点の硬度H37.5が、小さくなる。H37.5が小さい球状コアは、得られるゴルフボールのドライバーショットのスピン量が低減する。この観点から、前記球状コアの中心から半径37.5%地点の硬度H37.5は、ショアC硬度で、40以上が好ましく、より好ましくは45以上、さらに好ましくは50以上であり、75以下が好ましく、より好ましくは70以下、さらに好ましくは69以下である。
【0088】
前記球状コアの中心硬度Hoと表面硬度Hsとの硬度差(Hs-Ho)に対する球状コアの中心から半径37.5%地点の硬度H37.5と中心硬度Hoとの硬度差(H37.5-Ho)の比((H37.5-Ho)/(Hs-Ho))は、0.1以上が好ましく、0.2以上がより好ましく、0.40以下が好ましく、0.38以下がより好ましく、0.36以下がさらに好ましい。前記比((H37.5-Ho)/(Hs-Ho)は、表面硬度と中心硬度の硬度差(Hs-Ho)に対する、コア中心から半径37.5%地点の硬度H37.5の相対的硬度を表す。前記比(H37.5-Ho)/(Hs-Ho)が、前記範囲内であれば、ドライバーショットのスピン量がより低減する。
【0089】
前記球状コアの直径は、34.8mm以上が好ましく、より好ましくは36.8mm以上、さらに好ましくは38.8mm以上であり、42.2mm以下が好ましく、41.8mm以下がより好ましく、さらに好ましくは41.2mm以下であり、最も好ましくは40.8mm以下である。前記球状コアの直径が34.8mm以上であれば、カバーの厚みが厚くなり過ぎず、反発性がより良好となる。一方、球状コアの直径が42.2mm以下であれば、カバーが薄くなり過ぎず、カバーの機能がより発揮される。
【0090】
前記球状コアは、直径34.8mm~42.2mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮変形量(圧縮方向にセンターが縮む量)が、2.0mm以上が好ましく、2.8mm以上がより好ましく、6.0mm以下が好ましく、5.0mm以下がより好ましい。前記圧縮変形量が、2.0mm以上であれば打球感がより良好となり、6.0mm以下であれば、反発性がより良好となる。
【0091】
[カバー]
前記ゴルフボールのカバーは、樹脂成分を含有するカバー用組成物から形成される。前記樹脂成分としては、例えば、アイオノマー樹脂、BASFジャパン(株)から商品名「エラストラン(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリウレタンエラストマー、アルケマ(株)から商品名「ペバックス(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリアミドエラストマー、東レ・デュポン(株)から商品名「ハイトレル(登録商標)」で市販されている熱可塑性ポリエステルエラストマー、三菱ケミカル(株)から商品名「テファブロック」で市販されている熱可塑性スチレンエラストマーなどが挙げられる。
【0092】
本発明のゴルフボールのカバーを構成するカバー用組成物は、樹脂成分として、熱可塑性ポリウレタンエラストマーまたはアイオノマー樹脂を含有することが好ましい。アイオノマー樹脂を使用する場合には、熱可塑性スチレンエラストマーを併用することも好ましい。カバー用組成物の樹脂成分中のポリウレタンまたはアイオノマー樹脂の含有率は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0093】
前記カバー用組成物は、上述した樹脂成分のほか、白色顔料(例えば、酸化チタン)、青色顔料、赤色顔料などの顔料成分、酸化亜鉛、炭酸カルシウムや硫酸バリウムなどの重量調整剤、分散剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、蛍光材料または蛍光増白剤などを、カバーの性能を損なわない範囲で含有してもよい。
【0094】
前記白色顔料(例えば、酸化チタン)の含有量は、カバーを構成する樹脂成分100質量部に対して、0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上であって、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下である。白色顔料の含有量を0.5質量部以上とすることによって、カバーに隠蔽性を付与することができる。また、白色顔料の含有量が10質量部超になると、得られるカバーの耐久性が低下する場合があるからである。
【0095】
前記カバー用組成物のスラブ硬度は、所望のゴルフボールの性能に応じて適宜設定することが好ましい。例えば、飛距離を重視するディスタンス系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で50以上が好ましく、55以上がより好ましく、80以下が好ましく、70以下がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度を50以上にすることにより、ドライバーショットおよびアイアンショットにおいて、高打出角で低スピンのゴルフボールが得られ、飛距離が大きくなる。また、カバー用組成物のスラブ硬度を80以下とすることにより、耐久性に優れたゴルフボールが得られる。また、コントロール性を重視するスピン系のゴルフボールの場合、カバー用組成物のスラブ硬度は、ショアD硬度で、50未満が好ましく、20以上が好ましく、25以上がより好ましい。カバー用組成物のスラブ硬度が、ショアD硬度で50未満であれば、ドライバーショットでは、本発明のコアにより、高飛距離化がはかれるとともに、アプローチショットのスピン量が高くなり、グリーン上で止まりやすいゴルフボールが得られる。また、スラブ硬度を20以上とすることにより、耐擦過傷性が向上する。複数のカバー層の場合は、各層を構成するカバー用組成物のスラブ硬度は、上記範囲内であれば、同一あるいは異なっても良い。
【0096】
本発明のゴルフボールのカバーを成形する方法としては、例えば、カバー用組成物から中空殻状のシェルを成形し、コアを複数のシェルで被覆して圧縮成形する方法(好ましくは、カバー用組成物から中空殻状のハーフシェルを成形し、コアを2枚のハーフシェルで被覆して圧縮成形する方法)、あるいは、カバー用組成物をコア上に直接射出成形する方法を挙げることができる。
【0097】
カバーには、通常、表面にディンプルと呼ばれるくぼみが形成される。ディンプルの総数は、200個以上500個以下が好ましい。ディンプルの総数が200個未満では、ディンプルの効果が得られにくい。また、ディンプルの総数が500個を超えると、個々のディンプルのサイズが小さくなり、ディンプルの効果が得られにくい。形成されるディンプルの形状(平面視形状)は、特に限定されるものではなく、円形;略三角形、略四角形、略五角形、略六角形などの多角形;その他不定形状;を単独で使用してもよいし、2種以上を組合せて使用してもよい。
【0098】
前記カバーの厚みは、4.0mm以下が好ましく、より好ましくは3.0mm以下、さらに好ましくは2.0mm以下である。カバーの厚みが4.0mm以下であれば、得られるゴルフボールの反発性や打球感がより良好となる。前記カバーの厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましく、さらに好ましくは0.8mm以上、特に好ましくは1.0mm以上である。カバーの厚みが0.3mm未満では、カバーの耐久性や耐摩耗性が低下する場合がある。複数のカバー層の場合は、複数のカバー層の合計厚みが上記範囲であることが好ましい。カバーが成形されたゴルフボール本体は、金型から取り出し、必要に応じて、バリ取り、洗浄、サンドブラストなどの表面処理を行うことが好ましい。また、所望により、塗膜やマークを形成することもできる。
【0099】
本発明のゴルフボールの直径は、40mm~45mmが好ましい。米国ゴルフ協会(USGA)の規格が満たされるとの観点から、直径は42.67mm以上が特に好ましい。空気抵抗抑制の観点から、直径は44mm以下がより好ましく、42.80mm以下が特に好ましい。また、ゴルフボールの質量は、40g以上50g以下が好ましい。大きな慣性が得られるとの観点から、質量は44g以上がより好ましく、45.00g以上が特に好ましい。USGAの規格が満たされるとの観点から、質量は45.93g以下が特に好ましい。
【0100】
本発明のゴルフボールは、直径40mm~45mmの場合、初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときの圧縮変形量(圧縮方向に縮む量)は、2.0mm以上であることが好ましく、より好ましくは2.4mm以上であり、さらに好ましくは2.5mm以上であり、最も好ましくは2.8mm以上であり、4.0mm以下であることが好ましく、より好ましくは3.8mm以下、さらに好ましくは3.6mmである。前記圧縮変形量が2.0mm以上のゴルフボールは、硬くなり過ぎず、打球感が良い。一方、圧縮変形量を4.0mm以下にすることにより、反発性が高くなる。
【0101】
本発明のゴルフボールの構造は、球状コアと、前記球状コアを被覆する一層以上のカバーとを有するものであれば、特に限定されない。前記球状コアは、単層構造であることが好ましい。単層構造の球状コアは、多層構造の界面における打撃時のエネルギーロスがなく、反発性が向上するからである。また、カバーは、一層以上の構造であればよく、単層構造、あるいは、少なくとも二層以上の多層構造を有していてもよい。本発明のゴルフボールとしては、例えば、球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された単層のカバーとからなるツーピースゴルフボール;球状コアと前記球状コアを被覆するように配設された二層以上のカバーを有するマルチピースゴルフボール(スリーピースゴルフボールを含む);球状コアと前記球状コアの周囲に設けられた糸ゴム層と、前記糸ゴム層を被覆するように配設されたカバーとを有する糸巻きゴルフボールなどを挙げることができる。上記いずれの構造のゴルフボールにも本発明を好適に利用できる。
【0102】
図1は、本発明の一実施形態に係るゴルフボール1が示された一部切り欠き断面図である。ゴルフボール1は、球状コア2と、球状コア2を被覆するカバー3とを有する。このカバーの表面には、多数のディンプル31が形成されている。このゴルフボール3の表面のうち、ディンプル31以外の部分は、ランド32である。このゴルフボール1は、カバー3の外側にペイント層およびマーク層を備えているが、これらの層の図示は省略されている。
【実施例】
【0103】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0104】
[評価方法]
(1)圧縮変形量(mm)
コアに初期荷重98Nを負荷した状態から終荷重1275Nを負荷したときまでの圧縮方向の変形量(圧縮方向にコアが縮む量)を測定した。
【0105】
(2)コア硬度分布(Shore-C硬度)
スプリング式硬度計Shore-C型を備えた高分子計器社製自動ゴム硬度計P1型を用いて、コアの表面部において測定したShore-C硬度をコア表面硬度とした。また、コアを半球状に切断し、切断面の中心、および、中心から所定の距離において硬度を測定した。なお、コア硬度は、コア断面の中心から所定の距離の4点で硬度を測定して、これらを平均することにより算出した。硬度は、自動硬度計(H.バーレイス社製、デジテストII)を用いて測定した。検出器は、「Shore C」を用いた。
【0106】
(3)ドライバーショットのスピン量(rpm)
ゴルフラボラトリー社製のスイングロボットM/Cに、メタルヘッド製W#1ドライバー(住友ゴム工業社製、スリクソンZ745、ロフト8.5°)を取り付け、ヘッドスピード50m/秒でゴルフボールを打撃し、打撃直後のゴルフボールのスピン量を測定した。測定は、各ゴルフボールについて12回ずつ行って、その平均値をそのゴルフボールの測定値とした。なお、打撃直後のゴルフボールのスピン量は、打撃されたゴルフボールを連続写真撮影することによって測定した。スピン量は、ゴルフボールNo.6との差で示した。
【0107】
[式(1)で表される化合物(脂肪酸金属塩)の調製]
(1)脂肪酸金属塩No.1
酸化亜鉛81g(1.0mol)とトルエン400mLとを2Lのスリ合わせフラスコに仕込んだ。液をかき混ぜながら懸濁させ、アクリル酸75g(1.0mol)とクロトン酸89g(1.0mol)を滴下して混合した後、75℃にて8時間反応させた。反応後、溶媒を除去して、脂肪酸金属塩No.1を得た。
【0108】
(2)脂肪酸金属塩No.2
酸化亜鉛8g(0.1mol)とトルエン40mLとを200mLのスリ合わせフラスコに仕込んだ。液をかき混ぜながら懸濁させ、アクリル酸7.5g(0.1mol)と2,4-ペンタジエン酸10g(0.1mol)を滴下して混合した後、75℃にて4時間反応させた。反応後、溶媒を除去して、脂肪酸金属塩No.2を得た。
【0109】
[ゴルフボールの作製]
(1)コアの作製
表1に示す配合のゴム組成物を混練ロールにより混練し、半球状キャビティを有する上下金型内で20分間~40分間加熱プレスすることにより直径39.8mmの球状コアを得た。プレス温度は、表1に記載した。
【0110】
【0111】
表1で用いた材料は下記の通りである。
BR730:JSR社製ハイシスポリブタジエンゴム(シス-1,4-結合含有量=96質量%、1,2-ビニル結合含有量=1.3質量%、ムーニー粘度(ML1+4(100℃))=55、分子量分布(Mw/Mn)=3))
ZN-DA90S:日触テクノファインケミカル社製、アクリル酸亜鉛(ステアリン酸亜鉛を10質量%含有))
DCP:日油社製ジクミルパーオキサイド「パークミル(登録商標)D」(1分間半減期温度:175.2℃)
ホワイトシール:INDOLYSAGHT社製酸化亜鉛
ステアリン酸亜鉛:和光純薬社製(純度99%以上)
【0112】
(2)カバーの作製およびゴルフボールの作製
表2に示した配合のカバー用材料を、二軸混練型押出機により押し出して、ペレット状のカバー用組成物を調製した。カバー用組成物の押出条件は、スクリュー径45mm、スクリュー回転数200rpm、スクリューL/D=35であり、配合物は、押出機のダイの位置で160~230℃に加熱された。得られたカバー用組成物を厚さ1.5mmとなるように上述のようにして得られた球状コア上に射出成形して、球状コアと前記コアを被覆するカバーを有するゴルフボールを作製した。得られたゴルフボールについて評価した結果を、表1に併せて示した。
【0113】
【0114】
表2で用いた材料は以下の通りである。
ハイミラン1555:三井・ダウポリケミカル社製Na中和アイオノマー
ハイミラン1605:三井・ダウポリケミカル社製Na中和アイオノマー
ハイミランAM7329:三井・ダウポリケミカル社製Zn中和アイオノマー
二酸化チタン:石原産業社製、A-220
JF-90:城北化学社製、光安定剤
【0115】
表1の結果より、本発明のゴルフボールは、ドライバーショットのスピン量が低減されていることが分かる。
【符号の説明】
【0116】
1:ゴルフボール、2:球状コア、3:カバー、31:ディンプル、32:ランド