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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】粘着シート
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20230912BHJP
   C09J 123/22 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230912BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J123/22
C09J123/26
C09J151/06
C09J11/06
C09J11/08
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019180696
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021054980
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000066
【氏名又は名称】味の素株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【弁理士】
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】名取 直輝
(72)【発明者】
【氏名】奥野 真奈美
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/012905(WO,A1)
【文献】特開平10-036597(JP,A)
【文献】米国特許第05817413(US,A)
【文献】国際公開第2014/084352(WO,A1)
【文献】特表2018-526469(JP,A)
【文献】特表2014-502299(JP,A)
【文献】特開2013-189523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、該支持体上に形成された粘着組成物層とを含む、粘着シートであって、該粘着組成物層を構成する粘着組成物が、
(A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体、
(B)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s未満の可塑剤、並びに
(C)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s以上の液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有し、
架橋構造を有するイソブチレン系重合体が、エポキシ基を有するイソブチレン系重合体と、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体との反応物である、粘着シート。
【請求項2】
架橋構造を有するイソブチレン系重合体が、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とが反応して形成された架橋結合を含む請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
イソブチレン系重合体が、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
粘着組成物が、架橋構造を有するイソブチレン系重合体を、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して40~80質量%含有する請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
粘着組成物が、可塑剤を、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して10~45質量%含有する請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
粘着組成物が、液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムを、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して10~45質量%含有する請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項7】
フレキシブル電子デバイス用である、請求項1~のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項8】
フレキシブル電子デバイスが、フレキシブル有機ELデバイスまたはフレキシブル太陽電池デバイスである、請求項に記載の粘着シート。
【請求項9】
(A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体、
(B)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s未満の可塑剤、並びに
(C)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s以上の液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有し、
架橋構造を有するイソブチレン系重合体が、エポキシ基を有するイソブチレン系重合体と、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体との反応物である、粘着組成物。
【請求項10】
(A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体、
(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体、
(B)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s未満の可塑剤、並びに
(C)25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s以上の液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する、粘着組成物。
【請求項11】
ワニス状である請求項10に記載の粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む、粘着シートの製造方法。
【請求項12】
ワニス状である請求項10に記載の粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、(A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体のエポキシ基と、(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体のカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基との反応により、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む、粘着シートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘着シートに関し、具体的にはフレキシブル電子デバイスにおける封止シート、接着シート、光学用透明粘着シート(OCA)等に好適な粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、フラットパネルディスプレイ(液状ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパー等)や太陽電池などの電子デバイスには、主としてガラス基板が用いられてきたが、ガラス基板は重く壊れやすく、軽量化、薄型化すると強度が低下するという問題がある。このため、近年は、ガラス基板を柔軟で折り曲げ可能なフレキシブル基板へと置き換えたフレキシブル電子デバイス(以下、単に「フレキシブルデバイス」とも略称する)の開発が盛んに進められている。
フレキシブルデバイスにおいては、折り曲げる際に発生する応力により部材が破損したり剥がれが生じたりすることが課題となる。また折り曲げにより生じるひずみに対する形状回復性も要求される。従って、フレキシブルデバイスに使用される封止シート、接着シート、OCA等の接着性のシート材料にも、接着性に加え、折り曲げによるひずみへの応答性が高く、かつひずみ回復性に優れたものが求められている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2018-526469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、イソブチレン系重合体は一般に粘着性に優れることから、イソブチレン系重合体を含む粘着組成物は粘着シート用の材料として有用であることが知られている。しかしながら、フレキシブル電子デバイスに用いるには、必ずしも十分に満足のいくものとは言えず、粘着性とひずみへの応答性や回復性を兼ね備え、フレキシブルデバイス用に適した粘着シートの開発が望まれていた。
【0005】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、粘着性が高く、かつひずみへの応答性や回復性に優れ、フレキシブル電子デバイスの部材に用いるのに適した、粘着シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究をした結果、支持体と粘着組成物層とを含む粘着シートにおいて、粘着組成物層が、架橋構造を有するイソブチレン系重合体と、可塑剤と、液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムとを含有する粘着組成物により構成される粘着シートにより、前記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下の特徴を有するものを含む。
[1]支持体と、該支持体上に形成された粘着組成物層とを含む、粘着シートであって、該粘着組成物層を構成する粘着組成物が、
(A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する、粘着シート。
[2]可塑剤が、25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s未満の可塑剤である、[1]に記載の粘着シート。
[3]液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムが、25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s以上の液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムである、[1]または[2]に記載の粘着シート。
[4]架橋構造を有するイソブチレン系重合体が、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とが反応して形成された架橋結合を含む[1]~[3]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[5]イソブチレン系重合体が、イソブチレンとイソプレンとの共重合体である[1]~[4]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[6]架橋構造を有するイソブチレン系重合体が、エポキシ基を有するイソブチレン系重合体と、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体との反応物である[1]~[5]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[7]粘着組成物が、架橋構造を有するイソブチレン系重合体を、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して40~80質量%含有する[1]~[6]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[8]粘着組成物が、可塑剤を、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して10~45質量%含有する[1]~[7]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[9]粘着組成物が、液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムを、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して10~45質量%含有する[1]~[7]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[10]フレキシブル電子デバイス用である、[1]~[9]のいずれか1項に記載の粘着シート。
[11]フレキシブル電子デバイスが、フレキシブル有機ELデバイスまたはフレキシブル太陽電池デバイスである、[10]に記載の粘着シート。
[12](A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する、粘着組成物。
[13](A’)架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体、
(A’’)前記架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体の該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体および/または架橋剤、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する、粘着組成物。
[14](A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体、
(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する粘着組成物。
[15]ワニス状である[13]または[14]に記載の粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む、粘着シートの製造方法。
[16]ワニス状である[14]に記載の粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、(A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体のエポキシ基と、(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体のカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基との反応により、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む、粘着シートの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粘着性に優れ、かつひずみへの応答性や回復性にも優れ、フレキシブル電子デバイス用に適した粘着シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して説明する。
本発明の粘着シートは、支持体と、該支持体上に形成された粘着組成物層とを含む。粘着組成物層を構成する粘着組成物は、
(A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する。
【0009】
<(A)架橋構造を有するイソブチレン系重合体>
本発明において使用する架橋構造を有するイソブチレン系重合体(以下、(A)成分ともいう)における架橋構造は、特に限定されるものではなく、例えば、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とからなる架橋構造、エポキシ基とアミノ基とからなる架橋構造、ヒドロキシ基とイソシアネート基とからなる架橋構造、アルコキシシリル基からなる架橋構造、アクリロイル基からなる架橋構造等を挙げることができる。これらの中でも、密着性向上、光学特性向上および透湿性低下の観点から、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とからなる架橋構造が好ましい。すなわち、本発明において使用する架橋構造を有するイソブチレン系重合体は、好ましくは、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とが反応して形成された架橋結合を含む。
【0010】
本発明で使用し得る架橋構造を有するイソブチレン系重合体としては、架橋構造を有しかつイソブチレン骨格を有するものであれば特に限定されない。イソブチレン系重合体は、イソブチレンの単独重合体であるポリイソブチレンでもよく、ランダム共重合体、ブロック共重合体等の共重合体でもよい。共重合体としては、イソブチレン・イソプレンの共重合体、イソブチレン・n-ブテンの共重合体、イソブチレン・ブタジエンの共重合体等が挙げられる。イソブチレン系重合体は、密着性および弾性率の温度安定性の観点から、ポリイソブチレンおよびイソブチレン・イソプレン共重合体が好ましく、特にイソブチレン・イソプレン共重合体が好ましい。本発明における架橋構造を有するイソブチレン系重合体は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
架橋構造を有するイソブチレン系重合体の数平均分子量は、特に限定はされないが、粘着組成物のワニスの良好な塗工性と粘着組成物における他の成分との良好な相溶性をもたらすという観点から、1,000,000以下が好ましく、750,000以下がより好ましく、500,000以下がより一層好ましく、400,000以下がさらに好ましく、300,000以下がさらに一層好ましく、200,000以下が特に好ましく、150,000以下が最も好ましい。一方、粘着組成物のワニスの塗工時のハジキを防止し、形成される粘着組成物層の耐透湿性を発現させ、機械強度を向上させるという観点から、この数平均分子量は、1,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、5,000以上がより一層好ましく、10,000以上がさらに好ましく、30,000以上がさらに一層好ましく、50,000以上が特に好ましい。なお、本発明における数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法(ポリスチレン換算)で測定される。GPC法による数平均分子量は、具体的には、測定装置として社島津製作所製LC-9A/RID-6Aを、カラムとして昭和電工社製Shodex K-800P/K-804L/K-804Lを、移動相としてトルエン等を用いて、カラム温度40℃にて測定し、標準ポリスチレンの検量線を用いて算出することができる。
【0012】
本発明の粘着組成物中の(A)成分の含有量は特に制限はない。しかし、(A)成分が多いと密着性が低下する傾向があり、十分な密着性を維持するという観点から、該含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対し、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がより一層好ましく、65質量%以下がさらに好ましく、60質量%以下が特に好ましい。一方、架橋密度を向上させ、ひずみ回復性を向上させるという観点から、該含有量は、粘着組成物中の不揮発成分100質量%に対し、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がより一層好ましく、30質量%以上がさらに好ましく、35質量%以上がさらに一層好ましく、40質量%以上が特に好ましい。
【0013】
本発明の1つの実施態様において、本発明の粘着組成物中の(A)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対し、15~80質量%が好ましく、25~70質量%がより好ましく、35~60質量%がさらに好ましくい。本発明の別の実施態様において、本発明の粘着組成物中の(A)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは40~80質量%である。
【0014】
架橋構造を有するイソブチレン系重合体は、例えば、以下の方法によって製造することができる。
(1)架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体(1種または2種以上)を、該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体(1種または2種以上)と反応させる。
(2)架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体(1種または2種以上)を架橋剤(1種または2種以上)と反応させて架橋させる。
架橋構造を形成し得る官能基としては、例えば、エポキシ基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、アミノ基、ヒドロキシ基、イソシアネート基、アルコキシシリル基、アクリロイル基等が挙げられる。該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基としては、例えば、架橋構造を形成し得る官能基がエポキシ基である場合はカルボン酸基またはカルボン酸無水物基であり、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基である場合はエポキシ基である。架橋剤としては、架橋構造を形成し得る官能基と反応して架橋構造を形成し得るものであれば特に限定されず、例えば、多官能性エポキシ化合物等が挙げられる。
方法(1)において、架橋構造を形成し得る官能基と該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基との組み合わせとしては、エポキシ基とカルボン酸基またはカルボン酸無水物基との組み合わせ、エポキシ基とアミノ基との組み合わせ、ヒドロキシ基とイソシアネート基との組み合わせ、アルコキシシリル基同士、アクリロイル基同士、メタクリロイル基同士等が挙げられるが、密着性向上、光学特性向上および透湿性低下の観点から、エポキシ基とカルボン酸基またはカルボン酸無水物基との組み合わせが好ましい。
また、方法(1)において、架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体と、該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体とは、同一であってもよい。すなわち、架橋構造を形成し得る官能基と該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基とを有するイソブチレン系重合体同士を反応させてもよい。
方法(2)において、ひずみ回復性向上および光学特性の観点から、架橋構造を形成し得る官能基としてはカルボン酸無水物基が好ましく、架橋剤としては多官能性エポキシ化合物が好ましい。
【0015】
本発明の好適な実施態様において、架橋構造を有するイソブチレン系重合体は、エポキシ基を有するイソブチレン系重合体と、カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体との反応物である。
【0016】
エポキシ基を有するイソブチレン系重合体とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体との反応における量比は、適切な架橋構造が形成できれば特に限定されないが、エポキシ基とカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基とのモル比(エポキシ基:カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基)は、好ましくは100:10~100:200、より好ましくは100:50~100:150、特に好ましくは100:90~100:110である。
【0017】
<(A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体>
本発明において使用するエポキシ基を有するイソブチレン系重合体(以下、(A-1)成分ともいう)は、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基を有する不飽和化合物であり、イソブチレン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、エポキシ基を有する不飽和化合物を、オレフィン等とともにラジカル共重合するようにしてもよい。
【0018】
エポキシ基を有するイソブチレン系重合体中のエポキシ基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。エポキシ基濃度はJIS K 7236-1995に基づいて得られるエポキシ当量から求められる。
【0019】
エポキシ基を有するイソブチレン系重合体の数平均分子量は、屈曲耐性等の観点から、好ましくは20,000~160,000、より好ましくは30,000~140,000、特に好ましくは40,000~120,000である。
【0020】
<(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体>
本発明において使用するカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体(以下、(A-2)成分ともいう)としては、例えば、ER641、ER661(星光PMC社製)、ユニストールP801、P802(三井化学社製)、サーフレンP1000(三菱化学社製)等が挙げられる。カルボン酸基を有するイソブチレン系重合体は、例えば、イソブチレン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。カルボン酸無水物基としては、例えば、無水コハク酸に由来する基、無水マレイン酸に由来する基、無水グルタル酸に由来する基等が挙げられる。カルボン酸無水物基は1種または2種以上を有することができる。カルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体は、例えば、カルボン酸無水物基を有する不飽和化合物で、イソブチレン系重合体をラジカル反応条件下にてグラフト変性することで得られる。また、カルボン酸無水物基を有する不飽和化合物を、イソブチレン系重合体とともにラジカル共重合するようにしてもよい。
【0021】
カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体中のカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基の濃度は、0.05~10mmol/gが好ましく、0.1~5mmol/gがより好ましい。カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基の濃度はJIS K 2501の記載に従い、樹脂1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数として定義される酸価の値より得られる。
【0022】
カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体の数平均分子量は、屈曲耐性等の観点から、好ましくは1,000~150,000、より好ましくは10,000~100,000、特に好ましくは30,000~80,000である。
【0023】
<(B)可塑剤>
本発明の粘着組成物は、ひずみへの応答性および接着性をより高める目的等のために、可塑剤(以下、(B)成分ともいう)を含有する。本発明における可塑剤は、可塑剤としての機能を発揮する観点から、25℃で液状かつ25℃における粘度が10,000mPa・s未満の可塑剤が使用される。可塑剤の粘度は、好ましくは5,000mPa・s以下、より好ましくは2,000mPa・s以下、さらに好ましくは1,000mPa・s以下である。可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル系、アジピン酸エステル系、リン酸エステル系、トリメリット酸エステル系、スルホン酸エステル系、石油系オイル、液状ポリオレフィン、液状ポリブタジエン、ポリオールポリエステル、動物油、植物油等の可塑剤が挙げられる。可塑剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、本発明における可塑剤の粘度は、振動式粘度計またはE型粘度計によって測定することができる。この場合、振動式粘度計は比較的低粘度領域(例えば1,000mPa・s以下)の可塑剤の粘度測定に好適に使用される。市販されている粘度計としては、例えば、セコニック社製振動式粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM-10A)や、東機産業製E型粘度計(商品名:RE85H、製)等が挙げられる。
【0024】
フタル酸エステル系可塑剤としては、例えば、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)等が挙げられる。アジピン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アジピン酸ジオクチル、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。リン酸エステル系可塑剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル等が挙げられる。トリメリット酸エステル系塑剤としては、例えば、トリメリット酸トリオクチル等が挙げられる。スルホン酸エステル系可塑剤としては、例えば、アルキルスルホン酸エステル等が挙げられる。
【0025】
石油系オイルとしては、例えば、パラフィンオイル(流動パラフィン)、ナフテンオイル、芳香族オイル等が挙げられる。液状ポリオレフィンとしては、例えば、液状ポリブテン、エチレン-αオレフィンコオリゴマー等が挙げられる。ポリオールポリエステルとしては、例えば、ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。
【0026】
動物油としては、例えば、スクワラン、スクワレン等が挙げられる。植物油としては、例えば、オリーブ油、ツバキ油、ヒマシ油、トール油、ラッカセイ油、綿実油、菜種油、大豆油、パーム油、ヤシ油等が挙げられる。
【0027】
市販されている可塑剤としては、例えば、mesamoll(LANXESS社製)、mesamoll2(LANXESS社製)、BXA-N(大八化学工業社製)、サンソサイザーDOA(新日本理化社製)、サンソサイザーDINA(新日本理化社製)、サンソサイザーDIDA(新日本理化社製)等が挙げられる。
【0028】
ヒマシ油誘導体の市販品として、伊藤製油社のヒマシ硬化油A(商品名)、CO-FA(商品名)、DCO-FA(商品名)、リックサイザーS4(商品名)、リックサイザーC-101(商品名)、及びリックサイザーGR-310(商品名);青木油脂工業社製のブラウノンBR-410(商品名)、ブラウノンBR-410(商品名)、ブラウノンBR-430(商品名)、ブラウノンBR-450(商品名)、ブラウノンCW-10(商品名)、ブラウノンRCW-20(商品名)、ブラウノンRCW-40(商品名)、ブラウノンRCW-50(商品名)、及びブラウノンRCW-60(商品名);及び日油社製のカスターワックスA(商品名)、ニューサイザー510R(商品名)、ステアリン酸さくら(商品名)、ヒマシ硬化脂肪酸(商品名)、NAA-34(商品名)、NAA-160(商品名)、及びNAA-175(商品名)等が挙げられる。
【0029】
本発明に使用する可塑剤としては、フタル酸エステル系可塑剤が好ましく、特にジオクチルフタレートが好ましい。またフタル酸エステル系可塑剤としては接着性の観点から分子量が低いものが好ましく、重量平均分子量で200~3,000、さらには300~1,000の範囲のものが好ましい。なお、ここで「液状」とは、室温(25℃)での可塑剤の状態である。
【0030】
本発明の粘着組成物中の(B)成分の含有量は特に制限はないが、引張り強度などの機械特性という観点から、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。一方、タックの向上という観点から、その含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上が特に好ましい。
【0031】
本発明の1つの実施態様において、本発明の粘着組成物中の(B)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは10~25質量%である。本発明の別の実施態様において、本発明の粘着組成物中の(B)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10~45質量%である。
【0032】
<(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム>
本発明の粘着組成物は、密着性をより高める目的等のために、液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム(以下、(C)成分ともいう)を含有する。本発明において使用する液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムとしては、(A)成分または(A)成分を構成する成分(例えば、上記の(A-1)成分(エポキシ基を有するイソブチレン系重合体)、(A-2)成分(カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体)等)と反応しないもの(すなわち、エポキシ基、カルボン酸基、カルボン酸無水物基と反応する官能基を有しないもの)が使用される。また(C)成分は、25℃で液状かつ25℃における動的粘弾性測定装置で測定される動粘度を密度で除して求められる粘度で10Pa・s(10,000mPa・s)以上のものが使用される。(C)成分の粘度は、好ましくは20Pa・s以上、より好ましくは50Pa・s以上、さらに好ましくは100Pa・s以上、さらにより好ましくは500Pa・s以上、さらにより一層好ましくは1,000Pa・s以上である。(C)成分としては、例えば、合成液状オイル、C5石油原料留分重合体のゴム、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリプロペン、ポリテルペン、ポリブタジエン、またはそれらのコポリマーおよび水素化誘導体などが挙げられる。(C)成分は重量平均分子量(Mw)が2,000~150,000のものが好ましく使用され、10,000~50,000のものがより好ましく使用される。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定される。(C)成分の動粘度は動的粘弾性測定装置により測定され、市販されている動的粘弾性測定装置としては、例えば、TAインスツルメント社製レオメーター(商品名:DISCOVERY HR-2)等が挙げられる。
【0033】
合成液状オイルは、恒常的に液状のモノオレフィン、イソパラフィンまたはパラフィンである低粘度のオリゴマーである。市販の液状ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリブタジエンとしては、クラレからLIR30、LIR50として入手可能なポリイソプレン、LIR290として入手可能な水添ポリイソプレン、IneosからINDOPOL H-1500、H-1900、H-2100、H-6000、H-18000の名称で入手可能なポリブテン、JXTGエネルギーから日石ポリブテン HV-300、HV-1900、SV-7000の名称で入手可能なポリブテン、BASFからOPPANOL B10、B12、B14、B15の名称で入手可能なポリイソブチレン;日本曹達からB-3000、BI-3000の名称で入手可能なポリブタジエンが挙げられる。
【0034】
本発明の粘着組成物中の(C)成分の含有量は特に制限はないが、(C)成分はひずみ回復率を低下させる傾向があり、ひずみ回復率維持の観点から、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以下が好ましく、35質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。一方、密着性維持の観点から、その含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。
【0035】
本発明の1つの実施態様において、本発明の粘着組成物中の(C)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5~40質量%であり、より好ましくは10~25質量%である。本発明の別の実施態様において、本発明の粘着組成物中の(C)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは10~45質量%である。
【0036】
<(D)硬化剤及び/又は硬化促進剤>
本発明の粘着組成物は、粘着組成物の硬化性能を向上させる観点から、さらに硬化剤及び/又は硬化促進剤(以下、(D)成分ともいう)を含んでいてもよい。(D)成分は2種以上を組み合わせて使用してもよい。(D)成分は同じ化合物であっても、系によって硬化剤として機能する場合や硬化促進剤として機能する場合があり得る。
【0037】
(D)成分における硬化剤としては、例えば、イオン液体、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機酸ジヒドラジド系化合物、有機ホスフィン化合物、ジシアンジアミド化合物、1級・2級アミン系化合物、フェノール系化合物、チオール系化合物等が挙げられる。
(D)成分における硬化促進剤としては、例えば、イオン液体、イミダゾール化合物、3級アミン系化合物、ジメチルウレア化合物、アミンアダクト化合物、有機ホスフィン化合物、4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0038】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのイオン液体は、例えば、特開2016-186843号公報に記載のものを挙げることができる。具体的なイオン液体としては、例えば、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、テトラブチルホスホニウム-2-ピロリドン-5-カルボキシレート、テトラブチルホスホニウムアセテート、テトラブチルホスホニウムデカノエート、テトラブチルホスホニウムトリフルオロアセテート、テトラブチルホスホニウムα-リポエート、ギ酸テトラブチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウムラクテート、酒石酸ビス(テトラブチルホスホニウム)塩、馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、N-メチル馬尿酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゾイル-DL-アラニンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルフェニルアラニンテトラブチルホスホニウム塩、2,6-ジ-tert-ブチルフェノールテトラブチルホスホニウム塩、L-アスパラギン酸モノテトラブチルホスホニウム塩、グリシンテトラブチルホスホニウム塩、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムラクテート、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、酒石酸ビス(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム)塩、N-アセチルグリシン1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩等が挙げられ、テトラブチルホスホニウムデカノエート、N-アセチルグリシンテトラブチルホスホニウム塩、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムアセテート、ギ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩、N-メチル馬尿酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウム塩が好ましい。
【0039】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのイミダゾール化合物としては、例えば、1H-イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-(2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジン、2-フェニル-4,5-ビス(ヒドロキシメチル)イミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-ドデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’)-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-(2’-メチルイミダゾリル-(1’))-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加物等が挙げられる。イミダゾール化合物の具体例としては、キュアゾール2MZ、2P4MZ、2E4MZ、2E4MZ-CN、C11Z、C11Z-CN、C11Z-CNS、C11Z-A、2PHZ、1B2MZ、1B2PZ、2PZ、C17Z、1.2DMZ、2P4MHZ-PW、2MZ-A、2MA-OK(いずれも四国化成工業社製)等が挙げられる。
【0040】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としての3級アミン系化合物としては、例えば、DBN(1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]ノン-5-エン)、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)、DBUの2-エチルヘキサン酸塩、DBUのフェノール塩、DBUのp-トルエンスルホン酸塩、U-CAT SA 102(サンアプロ社製:DBUのオクチル酸塩)、DBUのギ酸塩等のDBU-有機酸塩、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール(TAP)などが挙げられる。
【0041】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのジメチルウレア化合物としては、例えば、DCMU(3-(3,4-ジクロロフェニル)-1,1-ジメチルウレア)、U-CAT3512T(サンアプロ社製)等の芳香族ジメチルウレア、U-CAT3503N(サンアプロ社製)等の脂肪族ジメチルウレア等が挙げられる。中でも硬化性の点から、芳香族ジメチルウレアが好ましく用いられる。
【0042】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としてのアミンアダクト化合物としては、例えば、エポキシ樹脂への3級アミンの付加反応を途中で止めることによって得られるエポキシアダクト化合物等が挙げられる。アミンアダクト化合物の具体例としては、アミキュアPN-23、アミキュアMY-24、アミキュアPN-D、アミキュアMY-D、アミキュアPN-H、アミキュアMY-H、アミキュアPN-31、アミキュアPN-40、アミキュアPN-40J(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0043】
本発明における硬化剤としての有機酸ジヒドラジド化合物としては、例えば、アミキュアVDH-J、アミキュアUDH、アミキュアLDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)等が挙げられる。
【0044】
本発明における硬化剤および/または硬化促進剤としての有機ホスフィン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフェニルボレート、(4-メチルフェニル)トリフェニルホスホニウムチオシアネート、テトラフェニルホスホニウムチオシアネート、ブチルトリフェニルホスホニウムチオシアネート、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン等が挙げられる。有機ホスフィン化合物の具体例としては、TPP、TPP-MK、TPP-K、TTBuP-K、TPP-SCN、TPP-S(北興化学工業社製)等が挙げられる。
【0045】
本発明における硬化剤としてのジシアンジアミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミドが挙げられる。ジシアンジアミド化合物の具体例としては、ジシアンジアミド微粉砕品であるDICY7、DICY15(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
【0046】
本発明における硬化剤としての1級・2級アミン系化合物としては、例えば、脂肪族アミンであるジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、プロピレンジアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン等、脂環式アミンであるN-アミノエチルピベラジン、1,4-ビス(3-アミノプロピル)ピペラジン等、芳香族アミンであるジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、m-キシレンジアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン等が挙げられる。1級・2級アミン系化合物の具体例としては、カヤハードA-A(日本化薬社製:4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン)等が挙げられる。
【0047】
本発明における硬化剤としてのフェノール系化合物としては、例えば、トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤、トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤、MEH-7700、MEH-7810、MEH-7851(明和化成社製)、NHN、CBN、GPH(日本化薬社製)、SN170、SN180、SN190、SN475、SN485、SN495、SN375、SN395(東都化成社製)、TD2090(DIC社製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノール系硬化剤の具体例としては、LA3018(DIC社製)等が挙げられる。トリアジン骨格含有フェノールノボラック硬化剤の具体例としては、LA7052、LA7054、LA1356(DIC社製)等が挙げられる。
【0048】
本発明における硬化剤としてのチオール系化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、トリス(3-メルカプトプロピル)イソシアヌレート、1,4-ビス(3-メルカプトブチリルオキシ)ブタン、1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,4,6-テトラキス(2-メルカプトエチル)グリコールウリルなどが挙げられる。市販品としては、淀化学社製のOTG、EGTG、TMTG、PETG、3-MPA、TMTP、PETP、堺化学工業社製のTEMP、PEMP、TEMPIC、DPMP、昭和電工社製のPE-1、BD-1、NR-1、TPMB、TEMB、四国化成工業社製のTS-Gなどが挙げられる。
【0049】
本発明における硬化促進剤としての4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラアルキル(各アルキル基の炭素数1~18)アンモニウム塩[例えば、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド、テトラアルキルアンモニウムカルボン酸塩(カルボン酸の炭素数1~12)など]、芳香環含有4級アンモニウム塩[例えば、ベンジルトリフェニルアンモニウムカルボン酸塩など]などが挙げられる。
【0050】
本発明の粘着組成物において、(D)成分としての硬化剤及び/又は硬化促進剤が含まれる場合は、(D)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、0.2質量%以上が特に好ましい。また、(D)成分の含有量は、10質量%以下が好ましく、8質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましく、3質量%以下が特に好ましい。
【0051】
本発明の1つの実施態様において、本発明の粘着組成物中の(D)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.2~8質量%である。
【0052】
<(E)粘着付与剤>
本発明の粘着組成物においては、接着性をより高める目的等のために、粘着付与剤(以下、(E)成分ともいう)を含んでいてもよい。粘着付与剤はタッキファイヤーとも呼ばれ、例えば、テルペン系樹脂、ロジン系樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、脂肪族系炭化水素樹脂、脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。粘着付与剤は2種以上を組み合わせて用いてもよい。より好ましい粘着付与剤としては、脂肪族/芳香族共重合系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、クマロン・インデン樹脂等が挙げられる。
【0053】
(E)成分を使用する場合、本発明の粘着組成物中の(E)成分の含有量は特に制限はないが、(A)成分のゴムの特性を阻害しないという観点から、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、25質量%以下がさらに好ましい。一方、剥離強度の向上という観点から、その含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、2質量%以上が好ましく、4質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましく、6質量%以上が特に好ましい。
【0054】
本発明の1つの実施態様において、本発明の粘着組成物中の(E)成分の含有量は、粘着組成物の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5~30質量%であり、より好ましくは6~25質量%である。
【0055】
市販されている粘着付与剤としては、例えばアルコンP-90(荒川化学工業社製)、アルコンP-100(荒川化学工業社製)、アルコンP-115(荒川化学工業社製)、パインクリスタルME-G(荒川化学工業社製)、パインクリスタルME-H(荒川化学工業社製)、パインクリスタルME-G(荒川化学工業社製)、T-REZ RB093(JXTGエネルギー社製)、T-REZ RC115(JXTGエネルギー社製)、ネオポリマーL90(JXTGエネルギー社製)、ネオポリマー120(JXTGエネルギー社製)、ネオポリマー140(JXTGエネルギー社製)、T-REZ HA-105(JXTGエネルギー社製)、ペトコール120(東ソー社製)、ペトロタック90HS(東ソー社製)、ペトロタック100V(東ソー社製)、ノバレスC9(ノバレス・ルトガース社製)、ノバレスL(ノバレス・ルトガース社製)、ニットレジンL-5(日塗化学社製)、ニットレジンV-120S(日塗化学社製)、ニットレジンG-90(日塗化学社製)等が挙げられる。
【0056】
<その他の成分>
本発明の粘着組成物は、上述の成分とは異なるその他の添加剤をさらに含有していてもよい。このような添加剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、クレー、雲母粉、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、ジルコン酸カルシウム等の無機充填材;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化アルミニウム、酸化バリウム、焼成ドロマイト(酸化カルシウム及び酸化マグネシウムを含む混合物)、焼成ハイドロタルサイト(アルミニウムなどとマグネシウムなどとの複酸化物)、半焼成ハイドロタルサイト等の吸湿性金属酸化物;ゴム粒子、シリコンパウダー、ナイロンパウダー、フッ素パウダー等の有機充填剤;オルベン、ベントン等の増粘剤;シリコーン系、フッ素系、高分子系の消泡剤またはレベリング剤;トリアゾール化合物、チアゾール化合物、トリアジン化合物、ポルフィリン化合物等の密着性付与剤等を挙げることができる。無機充填材または吸湿性金属酸化物は、表面処理剤で表面処理してその耐湿性を向上させることができる。表面処理剤としては、アミノシラン系カップリング剤、エポキシシラン系カップリング剤、メルカプトシラン系カップリング剤、ビニルシラン系カップリング剤、イミダゾールシラン系カップリング剤、オルガノシラザン化合物、チタネート系カップリング剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0057】
本発明は、(A)成分が架橋構造を形成する前の粘着組成物にも関する。すなわち、本発明は、(A’)架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体(1種または2種以上)と、(A’’)前記架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体の該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体(1種または2種以上)および/または架橋剤(1種または2種以上)、(B)可塑剤、並びに(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムを含有する粘着組成物にも関する。(A)成分が架橋構造を形成する前の粘着組成物における、好ましい態様としては、
(A-1)エポキシ基を有するイソブチレン系重合体、
(A-2)カルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基を有するイソブチレン系重合体、
(B)可塑剤、並びに
(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴム
を含有する粘着組成物が挙げられる。
【0058】
本発明における粘着組成物は有機溶媒を含有することができる。特に(A)成分が架橋構造を形成する前の粘着組成物を、後述の支持体上に粘着組成物層が形成された粘着シートを作製する等のためワニス状とする際、粘着組成物の塗工性等の観点から、有機溶剤を配合することができる。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(以下、「MEK」とも略称する)、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を挙げることができる。かかる有機溶剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。有機溶剤の量は、特に限定されないが、塗工性の観点から粘着組成物の粘度(25℃)が300~2000mPa・sとなる量を使用するのが好ましい。本発明の粘着組成物は、各成分を、混練ローラーや回転ミキサーなどを用いて混合することによって製造することができる。
【0059】
本発明における粘着シートは、ワニス状である粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を経て製造することができる。本発明における粘着シートの製造方法の好ましい態様としては、上記の(A’)架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体、(A’’)前記架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体の該官能基と反応して架橋構造を形成し得る官能基を有するイソブチレン系重合体および/または架橋剤、(B)可塑剤、並びに(C)液状ポリオレフィンおよび/または液状ゴムを含有する粘着組成物において、ワニス状である当該粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む。より好ましい態様としては、上記の(A-1)成分、(A-2)成分、(B)成分および(C)成分を含有する、(A)成分が架橋構造を形成する前の粘着組成物において、ワニス状である当該粘着組成物を、支持体上に塗布および加熱乾燥し、(A-1)成分のエポキシ基と、(A-2)成分のカルボン酸基および/またはカルボン酸無水物基との反応により、架橋構造が形成された粘着組成物層を形成する工程を含む。
【0060】
前述のように、ワニス状にした粘着組成物を支持体上に塗布し、得られた塗膜を加熱あるいは熱風吹きつけ等で乾燥することにより、支持体上に架橋構造が形成された粘着組成物層が形成されたシートである粘着シートが得られる。粘着シートにおける粘着組成物層の厚さは、光吸収性能と透過率のバランスの観点から、好ましくは5μm~200μm、より好ましくは15~180μm、さらに好ましくは20μm~150μmである。
【0061】
粘着シートに使用する支持体としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミドなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムとしては、特にPETが好ましい。また支持体はアルミ箔、ステンレス箔、銅箔等の金属箔であってもよい。
【0062】
デバイスに防湿性の層を設ける場合、粘着シートに使用する支持体としては、防湿性を有する支持体(防湿性支持体)を用いることができる。またデバイスに円偏光板の層を設ける場合は、粘着シートに使用する支持体としては、円偏光板を用いることができる。また、デバイスに防湿性の層と円偏光板の層を設ける場合、粘着シートに使用する支持体としては、防湿性支持体と円偏光板の双方を含む支持体を用いることができる。
【0063】
防湿性を有する支持体としては、防湿性を有するプラスチックフィルムや、銅箔、アルミニウム箔などの金属箔等が挙げられる。防湿性を有するプラスチックフィルム(バリアフィルム)としては、酸化ケイ素(シリカ)、窒化ケイ素、SiCN、アモルファスシリコン等の無機物を表面に蒸着させたプラスチックフィルム等が挙げられる。ここで、表面に無機物が蒸着されるプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下「PET」と略称することがある。)、ポリエチレンナフタレート等)、ポリカーボネート、ポリイミド等のプラスチックフィルムが好適であり、PETフィルムが特に好ましい。市販されている防湿性を有するプラスチックフィルムの例としては、テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズ(三菱ケミカル社製)や、該テックバリアHX、AX、LX、Lシリーズよりもさらに防湿効果を高めたX-BARRIER(三菱ケミカル社製)等が挙げられる。また、防湿性を有する支持体として、2層以上の複層構造を有するもの、例えば、上記のプラスチックフィルムと上記の金属箔とを接着剤を介して張り合わせたものも使用できる。このものは安価であり、ハンドリング性の観点からも有利である。なお、粘着シートの支持体には、防湿性を有しない支持体(例えば、上記の表面に無機物が蒸着されていないプラスチックフィルムの単体)も使用できる。
【0064】
円偏光板は、一般に偏光板と1/4波長板により構成される。円偏光板を支持体として使用する場合は、一般に1/4波長板が粘着組成物層側に配置される。また円偏光板と防湿性支持体の双方を含む支持体を用いる場合、好ましくは防湿性支持体が粘着組成物層側に配置され、円偏光板の1/4波長板が防湿性支持体側に配置される。防湿性支持体と円偏光板は、接着剤等により接着することができる。
【0065】
支持体はマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。すなわち、支持体は剥離性支持体であってもよい。離型処理としては、例えば、シリコーン樹脂系離型剤、アルキッド樹脂系離型剤、フッ素樹脂系離型剤等の離型剤による離型処理が挙げられる。本発明において支持体が離型層を有する場合、該離型層も支持体の一部とみなす。支持体の厚さは、特に限定されないが、取扱い性等の観点から、好ましくは20~200μm、より好ましくは20~125μmである。
【0066】
粘着シートにおいて、粘着組成物層は、保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、粘着組成物層の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。保護フィルムは、支持体と同様のプラスチックフィルムを用いるのが好ましい。また、保護フィルムもマット処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。保護フィルムの厚さは特に制限されないが、通常1~150μm、好ましくは10~100μmである。
【0067】
<電子デバイス>
本発明のフレキシブル電子デバイスは、例えば、本発明の粘着シートが封止用シートである場合、基板上の電子素子上に本発明の粘着シートを積層することによって製造することができる。また、フレキシブル電子デバイスの製造工程において、複数の材料を積層する際に、本発明の粘着シートを層間接着剤として使用することができる。例えばフレキシブルディスプレイであればタッチパネルセンサー、偏光板、表面保護シート等を本発明の粘着シートを層間接着剤として使用して積層することができる。
【実施例
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、上記・下記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、成分および共重合単位の量における「部」および「%」は、特に断りがない限り、それぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。
実施例及び比較例で用いた材料を以下に示す。
【0069】
(A-1)成分
「ER850」グリシジルメタクリレート変性ブチルゴム(GMA変性ブチル)(星光PMC社製)、エポキシ基濃度0.64mmol/g、数平均分子量110,000
(A-2)成分
「ER641」無水マレイン酸変性ブチルゴム(MA変性ブチル)(星光PMC社製)、酸無水物基濃度0.46mmol/g、数平均分子量57,000
【0070】
(B)成分
「DOP」フタル酸系可塑剤(フタル酸ジオクチル)(ジェイ・プラス社製)、25℃で液状、25℃における粘度73mPa・s
「DIDA」アジピン酸系可塑剤(アジピン酸ジイソデシル)(ジェイ・プラス社製)25℃で液状、25℃における粘度35mPa・s
「LX-004」液状ポリαオレフィン(エチレン-αオレフィンコオリゴマー)(三井化学社製)25℃で液状、25℃における粘度727mPa・s
「LV-50」ポリブテン(JXエネルギー社製)25℃で液状、25℃における粘度223mPa・s
(B)成分の粘度はセコニック社製振動式粘度計(商品名:VISCOMATE MODEL VM-10A)で測定した。
【0071】
(C)成分
「Oppanol B10」ポリイソブチレン(BASF社製)、重量平均分子量40,000、25℃で液状、25℃における粘度21,000Pa・s
「LIR-290」水添ポリイソプレン(クラレ社製)、重量平均分子量31,000、25℃で液状、25℃における粘度1,400Pa・s
(C)成分の粘度はTAインスツルメント社製レオメーター(商品名:DISCOVERY HR-2)で測定した25℃における動粘度を、各(C)成分の密度で除して算出した。
【0072】
(D)成分
「SA102」DBU系硬化剤(サンアプロ社製)
【0073】
その他成分
「ブチル065」ブチルゴム(JSR社製)
【0074】
次に示す手順にて実施例および比較例の各組成物を調製した。配合は表1に示す量で行った。なお、表1に記載の有機溶剤以外の成分の量は、不揮発成分で換算した値である。
【0075】
<実施例1>
グリシジルメタクリレート(GMA)変性ブチルゴム(ER850、20%イプゾール溶液)125部(不揮発分換算25部)に無水マレイン酸(MA)変性ブチルゴム(ER641、35%イプゾール溶液)114部(不揮発分換算40部)、フタル酸エステル(DOP)30部、ポリイソブチレン(Oppanol B10、50%イプゾール溶液)50部(不揮発分換算25部)およびDBU系硬化剤(SA102、20%トルエン溶液)5部(不揮発分換算1部)を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。得られたワニスをシリコーン系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離形処理面上に、ダイコータにて均一に塗布し、130℃で30分間加熱することにより、厚さ25μmの粘着組成物層を有する粘着シートを得た。
【0076】
<実施例2>
フタル酸エステル(DOP)の代わりにアジピン酸エステル(DIDA)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0077】
<実施例3>
フタル酸エステル(DOP)の代わりにエチレン-αオレフィンコオリゴマー(LX-004)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0078】
<実施例4>
フタル酸エステル(DOP)の代わりにポリブテン(LV-50)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0079】
<実施例5>
ポリイソブチレン(Oppanol B10)の代わりにポリイソプレン(LIR-290)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0080】
<比較例1>
ポリイソブチレン(Oppanol B10)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0081】
<比較例2>
フタル酸エステル(DOP)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0082】
<比較例3>
フタル酸エステル(DOP)およびポリイソブチレン(Oppanol B10)を使用しなかったこと以外は実施例1と同様にして、粘着組成物のワニスおよび粘着シートを作製した。
【0083】
<比較例4>
ブチルゴム(ブチル065、イプゾール15%溶液)433部(不揮発分換算65部)に、フタル酸エステル(DOP)30部、ポリイソブチレン(Oppanol B10、50%イプゾール溶液)50部(不揮発分換算25部)を配合し、得られた混合物を高速回転ミキサーで均一に分散して、粘着組成物のワニスを得た。得られたワニスをシリコーン系離型剤で処理されたPETフィルム(厚さ38μm)の離形処理面上に、ダイコータにて均一に塗布し、130℃で30分間加熱することにより、厚さ25μmの粘着組成物層を有する粘着シートを得た。
【0084】
上述のようにして得られた実施例および比較例の粘着シートにおいて架橋構造が形成されたか否かを以下のように確認した。
粘着シート約1gを採取し、これを精秤した。その後、精秤した粘着シートをトルエン40gに7日間浸漬して、その後、粘着組成物のトルエン不溶分をすべて回収し、これを、130℃で2時間乾燥して、乾燥質量を求めた。
そして、下記式により、粘着成分のゲル分率を求めた。
粘着シートのゲル分率=(トルエン不溶分の乾燥質量/浸漬前の粘着シートの質量)×100
上記試験により求められたゲル分率が10%以上であれば架橋構造が形成されているものとし、実施例および比較例4を除く比較例において架橋構造が形成されていることを確認した。
【0085】
上述のようにして得られた実施例および比較例の粘着シートの粘着組成物層を以下のように評価した。
【0086】
<ひずみに対する応答性と回復性評価>
粘着組成物層に応力をかけた際に生じるひずみに対する応答性と回復性を、下記試験により評価した。
直径8mm、厚さ約1.0mmの評価用サンプルをDHR平行板レオメーターに定置し、95kPaのせん断応力を5秒間負荷し、その時点で負荷した応力を解除し、評価用サンプルを固定具で60秒間回復させることにより、評価用サンプルにひずみ応答性試験及びひずみ回復性試験を実施した。
上記95kPaのせん断応力を5秒間負荷した際のピークせん断ひずみ率によりひずみ応答性を評価した。また上記95kPaのせん断応力を5秒間負荷し、その時点で負荷した応力を解除し、60秒後のひずみ回復率によりひずみ回復性を評価した。
ひずみ回復性は、((S1-S2)/S1)×100(式中、S1は、応力を負荷した5秒後のピークで記録されたせん断ひずみ率であり、S2は、負荷した応力を解除した60秒後に測定されたせん断ひずみ率である)で求められるひずみ回復率により評価した。
【0087】
<ひずみ応答性>
きわめて良好〇:ひずみ率が200[%]以上
良好△:ひずみ率が100[%]以上、200[%]未満
不良×:ひずみ率100[%]未満
【0088】
<ひずみ回復性>
きわめて良好〇:ひずみ回復率が50[%]以上
良好△:ひずみ回復率が30[%]以上、50[%]未満
不良×:ひずみ回復率が30[%]未満
【0089】
<粘着性評価>
粘着組成物層の粘着性を下記試験により評価した。
実施例および比較例で作製した粘着シート(粘着組成物層の厚さ:25μm)を長さ70mm×幅20mmにカットし、カットした粘着シートを、バッチ式真空ラミネータ(ニチゴー・モートン社製、V-160)を用いて、長さ150mm×幅25mmのアルミ箔/PET複合フィルム[PETツキAL1N30](アルミ箔30μm、PET25μm:東洋アルミ販売社製商品(名))のアルミ面にラミネートした。ラミネート条件は、温度80℃、減圧時間30秒の後、圧力0.3MPaにて30秒加圧であった。その後、粘着シートのPETフィルムを剥離し、露出した粘着組成物層上に、さらにガラス板(長さ76mm×幅26mm×厚さ1.2mm、マイクロスライドガラス)を上記と同じ条件でラミネートして、積層体を作製した。得られた積層体について、アルミ箔/PET複合フィルムの長さ方向に対して、90°方向に、引張り速度を50mm/分として剥離したときの、ガラス板面に対する剥離強度を測定し、下記の基準で粘着性を評価した。
【0090】
きわめて良好〇:剥離強度が0.25[kgf/cm]以上
良好△:剥離強度が0.15[kgf/cm]以上、0.25[kgf/cm]未満
不良×:剥離強度が0.15[kgf/cm]未満
【0091】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の粘着シートは、粘着性が高く、かつひずみへの応答性や回復性に優れ、フレキシブル電子デバイス用の封止シート、接着シート、透明光学粘着シート(OCA)等として優れたものとなり得る。