(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】オレフィン系重合体組成物、架橋オレフィン系重合体組成物、成形体及び自動車用部品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20230912BHJP
C08K 5/14 20060101ALI20230912BHJP
C08L 23/10 20060101ALI20230912BHJP
C08L 79/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
C08L23/00
C08K5/14
C08L23/10
C08L79/02
(21)【出願番号】P 2019183093
(22)【出願日】2019-10-03
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】蔡 光珂
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-012041(JP,A)
【文献】特開2001-002857(JP,A)
【文献】特表2003-515649(JP,A)
【文献】特開2015-124306(JP,A)
【文献】特表2004-502009(JP,A)
【文献】特開2018-154707(JP,A)
【文献】特開2019-157032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、重量平均分子量(Mw)が11万~40万のポリエチレンイミン(B)0.01~10質量部を含有
し、
前記オレフィン系重合体(A)が、プロピレン系重合体(A-1)1~100質量部とオレフィン系ゴム(A-2)99~0質量部とを含み(ただし、プロピレン系重合体(A-1)とオレフィン系ゴム(A-2)との合計量は100質量部である)、
前記オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、更にゴム用軟化剤(C)を10~200質量部含む、オレフィン系重合体組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載のオレフィン系重合体組成物を、前記オレフィン系重合体(A)100質量部に対して0.005~3質量部の有機パーオキサイド(D)の存在下に動的熱処理してなる架橋オレフィン系重合体組成物。
【請求項3】
請求項
2に記載の架橋オレフィン系重合組成物を押出成形してなる成形体。
【請求項4】
請求項
3に記載の成形体を含む自動車用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はオレフィン系重合体組成物に関する。より詳細には、ポリエチレンイミンを含有するオレフィン系重合体組成物と、当該オレフィン系重合体組成物を有機パーオキサイドの存在下に動的熱処理して得られる架橋オレフィン系重合体組成物及びこの架橋オレフィン系重合体組成物を押出成形してなる成形体と、この成形体を含む自動車用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
オレフィン系重合体は、機械的物性、耐熱性、耐溶剤性、耐油性及び耐薬品性などの諸特性が良好であるため、自動車、電気機器などの工業部品及び日用品などの製造原料として広く利用されている。
【0003】
このような用途においては、他部材との密着性(接着性)に優れることが要求される。例えば、ウィンドウモールなどの自動車内装部材においては、植毛を行う際のウレタン系接着剤との密着性(接着強度)が要求される。しかしながら、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体は分子内に極性基を有しておらず、化学的に不活性であるために、他の樹脂との密着性が良好ではない。このため、オレフィン系重合体の密着性向上のための提案がなされている。
【0004】
例えば特許文献1には、基体に数平均分子量500~100000の末端イソシアネートウレタンプレポリマーを介してウレタン系ゴムが接合されて成る合成樹脂製成形体であって、上記の基体が、オレフィン系ゴムとポリオレフィン系重合体樹脂と水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物とを含有する変性熱可塑性エラストマーにて構成されている合成樹脂製成形体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、極性樹脂に対して優れた接着性を有するオレフィン系重合体組成物として、オレフィン系重合体(A)100重量部に対して、光散乱法により測定した平均分子量が300~10万のポリエチレンイミン(B)0.1~30重量部を含有するオレフィン系重合体組成物が開示されている。
【0006】
これらの特許文献1,2では、添加剤を配合することでオレフィン系重合体の接着性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-187209号公報
【文献】特開2001-002857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、ユーザーの自動車に対する美的センスや高級感を求める嗜好が高まりつつある。このため、従来から必要とされてきた他部品との密着性(接着強度)以外にも、自動車内の美的内装部材としての意匠性の向上も求められている。
このような状況において、特許文献1,2では、次のような問題がある。
【0009】
特許文献1に記載の方法では、オレフィン系重合体に水酸基有するポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマーと共に、極性樹脂との相溶性を高めるためにスズ触媒であるDOTOL(ジラウリン酸ジオクチルスズ)を添加しているが、この方法では接着強度が不十分であった。加えて、DOTOLに含まれる三置換スズ化合物(有機スズ化合物)は、毒性の観点から、その使用は避けることが望まれる。
【0010】
また、特許文献2に記載の方法では、低分子量ポリエチレンイミン(分子量が300~10万のポリエチレンイミン)を添加して極性樹脂に対する密着性を高めているが、低分子量ポリエチレンイミンの添加によって、組成物の流動性が極端に高くなって成形加工性が悪化する上に、成形品表面に低分子量成分がブリードアウトし、成形品の表面がべたつき、結果として意匠性が悪化する問題がある。
【0011】
本発明は上記の従来技術における問題点に着目し、樹脂の成形加工性や意匠性を損なわずに、極性樹脂に対して優れた密着性を有するオレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、オレフィン系重合体に対して、特定の重量平均分子量を有するポリエチレンイミンをブレンドすることにより、ベース樹脂の成形加工性や意匠性を損なわずに、極性樹脂に対して優れた密着性を有するオレフィン系重合体組成物とすることができることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
すなわち、本発明の要旨は以下の[1]~[6]に存する。
【0014】
[1] オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、重量平均分子量(Mw)が11万~40万のポリエチレンイミン(B)0.01~10質量部を含有するオレフィン系重合体組成物。
【0015】
[2] 前記オレフィン系重合体(A)が、プロピレン系重合体(A-1)1~100質量部とオレフィン系ゴム(A-2)99~0質量部とを含む(ただし、プロピレン系重合体(A-1)とオレフィン系ゴム(A-2)との合計量は100質量部である)、[1]に記載のオレフィン系重合体組成物。
【0016】
[3] 前記オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、更にゴム用軟化剤(C)を10~200質量部含む、[2]に記載のオレフィン系重合体組成物。
【0017】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載のオレフィン系重合体組成物を、前記オレフィン系重合体(A)100質量部に対して0.005~3質量部の有機パーオキサイド(D)の存在下に動的熱処理してなる架橋オレフィン系重合体組成物。
【0018】
[5] [4]に記載の架橋オレフィン系重合組成物を押出成形してなる成形体。
【0019】
[6] [5]に記載の成形体を含む自動車用部品。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、成形加工性や意匠性を損なうことなく、極性樹脂に対して優れた密着性を有するオレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物を提供することができる。
本発明のオレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物は、極性樹脂との密着性に優れるため、極性樹脂と直接接合させて複合成形体を形成する用途等に有利に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。尚、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0022】
本発明において、オレフィン系重合体(A)における「単位」とは、原料であるオレフィンが重合した結果、得られるオレフィン系重合体(A)に形成される当該オレフィン由来の構成単位をさす。例えば、「プロピレン単位」とは、プロピレンが重合した結果生じる、プロピレン1個当たりの単位である。
オレフィン系重合体(A)中の各単位の含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0023】
[オレフィン系重合体組成物]
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体(A)100質量部に対して、重量平均分子量(Mw)が11万~40万のポリエチレンイミン(B)0.01~10質量部を含有するものである。
【0024】
<オレフィン系重合体(A)>
本発明のオレフィン系重合体組成物で使用されるオレフィン系重合体(A)としては、単量体であるα-オレフィンの単独重合体または共重合体が挙げられる。オレフィン系重合体(A)は樹脂状のものを使用することできるし、エラストマー状のものを使用することもできるし、これらの混合物を使用することもできる。
【0025】
オレフィン系重合体(A)の原料として用いられるα-オレフィンの例としては、直鎖状のα-オレフィンでも分岐状のα-オレフィンであってもよい。具体的にはエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、3,3-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、メチル-1-ヘキセン、ジメチル-1-ペンテン、トリメチル-1-ブテン、エチル-1-ペンテン、1-オクテン、メチル-1-ペンテン、ジメチル-1-ヘキセン、トリメチル-1-ペンテン、エチル-1-ヘキセン、メチルエチル-1-ペンテン、ジエチル-1-ブテン、プロピル-1-ペンテン、1-デセン、1-メチルノネン、1-ジメチルオクテン、1-トリメチルヘプテン、1-エチルオクテン、メチルエチル-1-ヘプテン、ジエチル-1-ヘキセン、1-ドデセンおよび1-ヘキサドデセンなどを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。好ましくは、炭素数2~10の直鎖状のα-オレフィンであり、より好ましくは、炭素数2~4の直鎖状のα-オレフィンである。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどが挙げられる。
【0026】
本発明のオレフィン系重合体組成物で使用されるオレフィン系重合体(A)は、プロピレン系重合体(A-1)1~100質量部とオレフィン系ゴム(A-2)99~0質量部(ただし、プロピレン系重合体(A-1)とオレフィン系ゴム(A-2)との合計量は100質量部である)を含む混合物であることが好ましい。
【0027】
本発明におけるプロピレン系重合体(A-1)は、当該重合体中におけるプロピレン単量体の含有量が60モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは85モル%以上の重合体である。
【0028】
プロピレン系重合体(A-1)としては、上記のプロピレン単位含有量を満足するものであれば、特に限定されないが、好ましくは、プロピレン単独重合体;プロピレン単位含有量が60~98モル%、エチレン単位含有量が2~40モル%の結晶性プロピレン・エチレンブロック共重合体;プロピレン単位含有量が90~99.5モル%、エチレン単位含有量が0.5~10モル%の結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体が挙げられる。
【0029】
プロピレン系重合体(A-1)は、メルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、230℃、荷重21.2N)が0.05~200g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.10~100g/10分、さらに好ましくは0.5~60g/10分である。このようなMFRを有するプロピレン系重合体(A-1)を使用することにより、良好な成形性を確保することができる。
また、プロピレン系重合体(A-1)は密度(JIS K6922)が0.85~0.92g/cm3の範囲内にあることがさらに好ましい。
【0030】
プロピレン系重合体(A-1)は、公知の製造方法で得ることができる。その製造方法は例えば特開昭50-108385号公報、特開昭50-126590号公報、特開昭51-20297号公報、特開昭51-28189号公報、特開昭52-151691号公報などの公報に詳細に開示されており、本発明においてもこれらに記載されている技術を利用することができる。
【0031】
また、プロピレン系重合体(A-1)は、市販のものを用いてもよい。例えば、プライムポリマー社製のPrim Polypro(登録商標)、住友化学社製の住友ノーブレン(登録商標)、サンアロマー社製のポリプロピレンブロックコポリマー、日本ポリプロ社製のノバテック(登録商標)PP、ウェイマックス(WAYMAX(登録商標))、LyondellBasell社製のMoplen(登録商標)、ExxonMobil社製のExxonMobil PP、ダウ・ケミカル社製のバーシファイ(登録商標)、Formosa Plastics社製のFormolene(登録商標)、Borealis社製のBorealis PP、LG Chemical社製のSEETEC PP、A.Schulman社製のASI POLYPROPYLENE、INEOS Olefins&Polymers社製のINEOS PP、Braskem社製のBraskem PP、SAMSUNG TOTAL PETROCHEMICALS社製のSumsung Total、Sabic社製のSabic(登録商標)PP、TOTAL PETROCHEMICALS社製のTOTAL PETROCHEMICALS Polypropylene、SK社製のYUPLENE(登録商標)等が挙げられる。
【0032】
これらのプロピレン系重合体(A-1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本発明で用いるオレフィン系ゴム(A-2)としては、オレフィンからなる結晶化度40%以下、好ましくは30%以下の無定形の弾性共重合体が制限なく使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数2~10のα-オレフィンの共重合体、あるいはこれらのα-オレフィンの1種又は2種以上と非共役ジエンとの共重合体などが挙げられる。なお、オレフィン系ゴム(A-2)にプロピレン単位が含まれる場合は、プロピレン単位含有量は60モル%未満であることが好ましい。
【0034】
上記非共役ジエンとしては、具体的にはジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0035】
オレフィン系ゴム(A-2)の具体的なものとしては、エチレン・プロピレン共重合ゴム、エチレン・1-ブテン共重合ゴム、エチレン・1-オクテン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・1-ブテン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合ゴム、エチレン・1-オクテン・非共役ジエン共重合ゴム、エチレン・プロピレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合ゴムなどが挙げられる。
【0036】
オレフィン系ゴム(A-2)はメルトフローレート(MFR;ASTM D 1238、230℃、荷重21.2N)が0.05~200g/10分であることが好ましく、より好ましくは0.10~100g/10分である。このようなMFRを有するオレフィン系ゴム(A-2)を使用することにより、良好な成形性を確保することができる。
【0037】
オレフィン系ゴム(A-2)としては、市販のものを使用することができる。例えば、JSR社製のJSR EPR、三井化学社製の三井EPT、ダウ・ケミカル社製のエンゲージ(登録商標)、住友化学社製のエスプレン(登録商標)、ARLANXEO社製のKeltan(登録商標)等が挙げられる。
【0038】
これらのオレフィン系ゴム(A-2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明で用いるオレフィン系重合体(A)は、上記のプロピレン系重合体(A-1)1~100質量部及びオレフィン系ゴム(A-2)99~0質量部(ただし、プロピレン系重合体(A-1)とオレフィン系ゴム(A-2)との合計量は100質量部である)を含む混合物であることが好ましいが、プロピレン系重合体(A-1)とオレフィン系ゴム(A-2)の含有比率は、質量比でプロピレン系重合体(A-1):オレフィン系ゴム(A-2)=1~60:99~40であることがより好ましく、さらに好ましくは10~50:90~50である。
【0040】
<ポリエチレンイミン(B)>
本発明のオレフィン系重合体組成物に配合されるポリエチレンイミン(B)は、重量平均分子量(Mw)が11万~40万(110,000~400,000)であり、好ましくは120,000~350,000である。使用するポリエチレンイミン(B)の重量平均分子量(Mw)が上記下限未満ではブリードアウトを生じ、上記上限を超えると得られる成形体の物性バランスが悪くなる傾向にある。
【0041】
本発明において、ポリエチレンイミン(B)の重量平均分子量(Mw)はGPC法により測定された値であり、例えば後掲の実施例で用いたポリエチレンイミン(B)は以下の装置により以下の条件で測定されたものである。
装置:東ソー株式会社製 Tosoh HLC-8320
カラム:東ソー株式会社製 Tosoh TSKgel GMPWxl(7.5mm I.D.×30cmL×2)
検出器:RI
移動相:0.5M酢酸水溶液+0.2M硝酸ナトリウム水溶液
流速:1.0mL/分
注入:100μL
カラム温度:40℃
標準物質:単分散PEG/PEO
【0042】
ポリエチレンイミン(B)は公知の方法により製造することができる。その製造方法としては、例えば、エチレンイミンを二酸化炭素、塩酸、臭化水素酸、p-トルエンスルホン酸、塩化アルミニウム、三フッ化ホウ素などを触媒として開環重合させる方法、塩化エチレンとエチレンジアミンの重縮合反応により合成する方法、オキサゾリドン-2を加熱する方法などが挙げられる。
【0043】
ポリエチレンイミン(B)は市販品を使用することもできる。市販品としては、日本触媒株式会社製のエポミン、BASFジャパン株式会社製のLupasolなどを挙げることができる。
【0044】
本発明のオレフィン系重合体組成物中のポリエチレンイミン(B)の含有量は、前記のオレフィン系重合体(A)100質量部に対して、0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部である。オレフィン系重合体組成物中のポリエチレンイミン(B)の含有量が、上記下限未満では接着性が劣り、上記上限を超えるとブリードアウトを生じる恐れがある。
【0045】
<ゴム用軟化剤(C)>
本発明のオレフィン系重合体組成物は、上述のオレフィン系重合体(A)及びポリエチレンイミン(B)を含むものであるが、更にゴム用軟化剤(C)を含むことが好ましい。
【0046】
本発明で用いるゴム用軟化剤(C)としては、鉱物油系ゴム用軟化剤のうちでパラフィン系と称されているプロセスオイル、ナフテン系として称されているプロセスオイルが挙げられる。また、これら以外にも、ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα-オレフィンのオリゴマー、低分子量ポリブタジエン、パラフィンワックス、流動パラフィンなどを用いることができる。その中でもパラフィン系のプロセスオイルが好ましく用いられる。
【0047】
ゴム用軟化剤(C)としては、例えば、日本油脂(株)製のNAソルベント(イソパラフィン系炭化水素油、商品名)、出光興産(株)のPW-90(n-パラフィン系プロセスオイル、商品名)、出光石油化学(株)製のIP-ソルベント2835(合成イソパラフィン系炭化水素、99.8質量%以上のイソパラフィン、商品名)、三光化学工業(株)製のネオチオゾール(n-パラフィン系プロセスオイル、商品名)が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明のオレフィン系重合体組成物がゴム用軟化剤(C)を含有する場合、その含有量は、オレフィン系ゴム(A-2)100質量部に対して、10~200質量部が好ましく、より好ましくは20~150質量部、更に好ましくは30~100質量部である。ゴム用軟化剤(C)の含有量が上記下限以上であると、柔軟性付与効果が充分に発現する。また、ゴム用軟化剤(C)の含有量が上記上限以下であると、オレフィン系重合体(A)の本来の特性を損なうおそれがない。
【0049】
<その他の成分>
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体(A)、ポリエチレンイミン(B)及びゴム用軟化剤(C)以外のその他の成分を含むものであってもよい。
【0050】
その他の成分としては、上記オレフィン系ゴム(A-2)以外のエラストマー、例えば、スチレン系エラストマー及び/又はその水添物を配合することができる。スチレン系エラストマー及び/又はその水添物としては、スチレン・エチレン・ブチレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体、スチレン・エチレン・ブチレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0051】
また、本発明の効果を著しく損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の配合成分を配合することが出来る。斯かる成分としては、例えば、充填材(フィラー)、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤などの各種添加剤、前記必須成分以外の熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0052】
前記必須成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂などが挙げられる。
【0053】
ただし、オレフィン系重合体(A)を用いることによる効果をより有効に得る上で、本発明のオレフィン系重合体組成物がこれらの必須成分以外の熱可塑性樹脂を含有する場合、その含有量は、オレフィン系重合体組成物中の樹脂成分の合計100質量%に10質量%以下、特に5質量%以下であることが好ましい。
【0054】
また、充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
【0055】
[架橋オレフィン系重合体組成物]
本発明の架橋オレフィン系重合体組成物は、上述の本発明のオレフィン系重合体組成物を、有機パーオキサイド(D)の存在下に動的熱処理して得られるものである。
【0056】
<有機パーオキサイド(D)>
有機パーオキサイド(D)としては、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(パーオキシベンゾイル)ヘキシン-3、ジクミルパーオキシド等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
これらの中では、低臭気性およびスコーチ性の点において、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3が好ましい。
【0058】
有機パーオキサイド(D)の使用量は、オレフィン系重合体組成物中のオレフィン系重合体(A)100質量部当たり、通常0.005~3質量部、好ましくは0.05~2質量部の範囲から選択される。有機パーオキサイド(D)の使用量が上記下限以上であれば架橋反応を十分に進行させることができ、上記上限以下であれば押出外観等の成形体の外観に影響を及ぼすことがなく、また、経済的にも有利である。
【0059】
<架橋助剤>
本発明では、架橋剤としての有機パーオキサイド(D)と共に、架橋助剤を併用することもできる。
主な架橋助剤としては、硫黄、p-キノンジオキシム、ニトロソベンゼン、ジフェニルグアニジン、N-メチル-N-4-ジニトロソアニリン、トリメチロールプロパン-N,N’-m-フェニレンジマレイミドのようなパーオキシ架橋用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートのような多官能性メタクリレートモノマー、ビニルブチラート、ビニルステアレートのような多官能ビニルモノマー等が挙げられる。上記のような化合物の使用により、均一かつ緩和な架橋反応が期待できる。
【0060】
架橋助剤を用いる場合、その使用量は、オレフィン系重合体組成物中のオレフィン系重合体(A)100質量部当たり、通常0.005~4質量部、好ましくは0.05~3質量部の範囲から選択される。架橋助剤の使用量が上記下限以上であればその効果を十分に得ることができ、上記上限以下であれば経済的である。
【0061】
[オレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物の製造方法]
本発明のオレフィン系重合体組成物は、オレフィン系重合体(A)及びポリエチレンイミン(B)と必要に応じて用いられるゴム用軟化剤(C)やその他の成分を所定の割合で混合、混練することにより製造される。本発明のオレフィン系重合体組成物の製造には、例えば一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、プラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機が使用される。これらの中では、二軸押出機が好適である。
【0062】
本発明の架橋オレフィン系重合体組成物は、このようなオレフィン系重合体組成物を有機パーオキサイド(D)の存在下に動的熱処理することにより得られる。本発明の架橋オレフィン系重合体組成物は予め混合された本発明のオレフィン系重合体組成物に、有機パーオキサイド(D)を添加して製造してもよく、オレフィン系重合体(A)及びポリエチレンイミン(B)と必要に応じて用いられるゴム用軟化剤(C)やその他の成分と共に、所定量の有機パーオキサイド(D)を添加して動的熱処理して製造してもよい。
【0063】
本発明において「動的熱処理」とは架橋剤である有機パーオキサイド(D)の存在下で溶融状態又は半溶融状態で混練することを意味する。この動的熱処理は、溶融混練によって行うのが好ましく、そのための混合混練装置としては、例えば非開放型バンバリーミキサー、ミキシングロール、ニーダー、二軸押出機等が用いられる。これらの中でも二軸押出機を用いることが好ましい。この二軸押出機を用いた製造方法の好ましい態様としては、複数の原料供給口を有する二軸押出機の原料供給口(ホッパー)に各成分を供給して動的熱処理を行うものである。
【0064】
動的熱処理を行う際の温度は、通常80~300℃、好ましくは100~250℃である。また、動的熱処理を行う時間は通常0.1~30分である。
【0065】
[オレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物の成形方法]
本発明のオレフィン系重合体組成物及び架橋オレフィン系重合体組成物の成形方法には特に制限はなく、例えば、射出成形、押出成形、中空成形、圧縮成形等の各種成形方法により、成形体とすることができる。これらの中でも押出成形が好適である。また、これらの成形を行った後に積層成形、熱成形等の二次加工を行った成形体とすることもできる。
【0066】
[成形体及び複合成形体]
本発明の成形体は、本発明の架橋オレフィン系重合体組成物を押出成形して得られるものである。
【0067】
特に本発明の架橋オレフィン系重合体組成物は、極性樹脂との密着性に優れることから、極性樹脂との複合成形体とする用途に好適に用いることができる。例えば、本発明の架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体上に極性樹脂を成形することにより、架橋オレフィン系重合体組成物と極性樹脂とが強固に接着した架橋オレフィン系重合体組成物/極性樹脂複合成形体を容易に得ることができる。この場合、架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体に対してコロナ放電等の電気的処理、機械的粗面化、火炎処理、酸素処理またはオゾン処理などの表面処理を行って極性樹脂に対する親和性を向上させる予備処理やプライマー処理等の前処理を行うことなく、直接極性樹脂と接合することで、極性樹脂との密着性に優れた複合成形体を得ることができる。このような複合成形体の製造方法としては、例えば、本発明の架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体を部品製造用の型枠内に配置した後、極性樹脂原液を流し入れて型閉めし、極性樹脂の成形と接着を同時に行う方法などが挙げられる。
【0068】
このような複合成形体に適用される極性樹脂としては、ウレタン樹脂、ウレタンフォーム、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシエステル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド、クロロプレンゴム、ニトリルゴムなどが挙げられる。これらの中では、ウレタン樹脂、ウレタンフォーム、メラミン樹脂、アルキド樹脂が好ましい。
【0069】
本発明の架橋オレフィン系重合体組成物よりなる成形体は、極性樹脂系の塗料や接着剤、例えばウレタン樹脂系塗料、アミノ樹脂系塗料等の塗料や、ウレタン樹脂系接着剤、アミノ樹脂系接着剤などに対する密着性にも優れているため、このような塗料を用いて塗装を施したり、上記の接着剤を用いて部品同士を接着する用途にも好適である。
【0070】
いずれの場合においても、極性樹脂との密着性を向上させるためのプライマー処理や表面処理を不要とすることができ、処理装置及び製造工程の削減、製造コストの低減を図ることができる。
【0071】
[用途]
本発明の成形体或いはこの成形体を極性樹脂と直接接合させてなる複合成形体は、各種工業部品、例えば、自動車用部品、オートバイ部品、電気機器部品、日用品、建材、事務機器、包装資材、スポーツ用品、医療用品などに広く使用することができる。
これらのうち、特に自動車用部品として好適であり、具体的には、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル、エアバッグカバーなどの自動車内装部品;モール、バンパー等の自動車外装部品;ラックアンドピニオンブーツ、サスペンションブーツ、等速ジョイントブーツなどの自動車機能部品;などが挙げられる。
【実施例】
【0072】
以下、実施例を用いて本発明の具体的態様を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。尚、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味をもつものであり、好ましい範囲は前記した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0073】
[原材料]
以下の実施例及び比較例で使用した原材料は以下のとおりである。
【0074】
<成分(A):オレフィン系重合体(A)>
<プロピレン系重合体(A-1)>
(A-1a) ホモポリプロピレン
日本ポリプロ株式会社製 ノバテック(登録商標)PP
プロピレン単位含有量:100モル%
MFR(230℃、21.2N):2.5g/10分
密度(JIS K6922):0.90g/cm3
(A-1b) エチレン・プロピレンランダム共重合体
ダウ・ケミカル株式会社製 バーシファイ(登録商標)
プロピレン単位含有量:90モル%
MFR(230℃、21.2N):8g/10分
密度(JIS K6922):0.87g/cm3
<オレフィン系ゴム(A-2)>
(A-2a) エチレン・1-ブテン共重合体ゴム
ダウ・ケミカル株式会社製 エンゲージ(登録商標)
プロピレン単位含有量:0モル%
MFR(230℃、21.2N):2.1g/10分
(A-2b) エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム
JSR社製 JSRO EPR
プロピレン単位含有量:30モル%
MFR(230℃、21.2N):0.2g/10分
【0075】
<成分(B):ポリエチレンイミン(B)>
ポリエチレンイミン
日本触媒株式会社製 エポミンP-1000
重量平均分子量(Mw):125,000
【0076】
<成分(C):ゴム用軟化剤(C)>
パラフィン系オイル
出光興産株式会社製 ダイアナプロセスオイル PW-90
【0077】
<成分(D):有機パーオキサイド(D)>
化薬アクゾ株式会社 カヤヘキサAD40C
(2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン40質量%と炭酸カルシウム60質量%の混合物)
【0078】
<その他の成分>
(X-1)ポリエチレンイミン
BASFジャパン株式会社 LupasolFG
重量平均分子量(Mw):800
(X-2)ジラウリン酸ジオクチルスズ(DOTDL)
日東化成株式会社製 TVS8501
(X-3)ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー
三菱ケミカル株式会社製 ポリテールH
(X-4) 酸化防止剤
BASFジャパン株式会社製 イルガノックス1010
(X-5) 架橋助剤 ジビニルベンゼン
新日鐵化学株式会社製 DVB-570(純度60%)
【0079】
[評価方法]
以下の実施例及び比較例における架橋オレフィン系重合体組成物の評価方法は以下の通りである。
【0080】
<剥離強度>
架橋オレフィン系重合体組成物を用いて、プレス成形機(油圧ジャッキ式加熱・冷却プレス200×200mm、東洋精機製作所製)を使用して220℃で厚さ1mmのシートを成形した。成形シート表面に、溶剤系1液湿気硬化型ウレタン樹脂接着剤(溶媒:トルエン+メチルエチルケトン+酢酸ブチル、不揮発分:47%、構成成分:ジフェニルメタンジイソシアネート/液状ポリブタジエンポリオール/ポリプロピレングリコール/2-エチル-1,3-ヘキサンジオール=33/39/19/8(質量比))をバーコーターで約7μmの厚みとなるように塗り、接着剤が湿潤状態のうちのナイロンテープ(奥田産業株式会社製 ポリコテープ、幅1.5cm)を重ねた。その後、80℃のオーブン中で2分間乾燥し、さらに室温で48時間自然乾燥した。
得られた試験片について、ISO 8510-2:1990の規格を参考にして、テープとシートの剥離強度を測定した。
この剥離強度から架橋オレフィン系重合体組成物とウレタン系樹脂との密着性を評価した。
【0081】
<MFR>
メルトインデクサー(機種名「L220」、立山科学工業株式会社製)を用いて、荷重2.12N、測定温度230℃で、MFRを測定した。
【0082】
<ブリードアウト>
架橋オレフィン系重合体組成物を用いて、プレス成形機(油圧ジャッキ式加熱・冷却プレス200×200mm、東洋精機製作所製)を使用し、220℃で厚さ2mmのシートを成形した。成形直後に指でシートの表面を触り、ベタつきの有無を評価した。
【0083】
<実施例1>
成分(A)~成分(C)を表1に示す割合で配合し(成分(A)の合計は100質量部)、更に(X-4)酸化防止剤を0.1質量部、(X-5)架橋助剤を0.4質量部配合して、同方向二軸押出機(日本製鋼所製「TEX30」、L/D=52.5、シリンダブロック数:14)に混合物を投入した。上流部から下流部を120~210℃の範囲で昇温させて溶融混練を行い、ペレット化してオレフィン系重合体組成物を製造した。
得られたペレットと成分(D)0.6質量部を小型混練機(東洋精機製作所「ラボプラストミルA」、本体20C-200、ミキサーR-60H)に投入し、温度180℃、スクリュー回転数100rpmの条件で8分混練し、架橋オレフィン系重合体組成物を製造した。
この架橋オレフィン系重合体組成物について、剥離強度の評価を実施した。得られた評価結果を表-1に示す。
【0084】
<実施例2~3>
表-1に示したように配合組成を変更した以外は実施例1と同様に実施し、剥離強度の評価を実施した。実施例2についてはMFRとブリードアウトの評価も行った。得られた評価結果を表-1,2に示す。
【0085】
<比較例1~2>
表-1,2に示したように、成分(B)を配合しないこと以外は、実施例1と同様な配合組成で同方向二軸押出機から架橋オレフィン系重合体組成物のペレットを得た。なお、比較例2では更に成分(X-2)DOTDLと(X-3)ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマーを表1に示す配合量で配合した。得られたペレットを用いて、剥離強度の評価を行った。比較例1では更にMFRとブリードアウトの評価も行った。
得られた評価結果を表-1,2に示す。
【0086】
<比較例3>
低分子量のポリエチレンイミンの添加による成形性と意匠性への影響を確認するために、成分(B)の代りに成分(X-1)低分子量のポリエチレンイミンを用い、表-2に示す配合としたこと以外は実施例2と同様に架橋オレフィン系重合体組成物のペレットを得た。
得られた架橋オレフィン系重合体組成物について、MFRとブリードアウトの評価を実施した。得られた評価結果を表-2に示す。
【0087】
【0088】
【0089】
[考察]
表-1に示すとおり、本発明の高分子量ポリエチレンイミン(B)含有の架橋オレフィン系重合体組成物に該当する実施例1、2、3は、いずれも(X-2)ポリヒドロキシポリオレフィンオリゴマー含有の比較例2より高い剥離強度を示し、ウレタン接着剤と優れた密着性を有することが分かる。
一方、比較例1は密着成分を使用せず、ウレタン接着剤との密着性が不十分であった。
【0090】
また、表-2に示すとおり、本発明の高分子量ポリエチレンイミン(B)含有の架橋オレフィン系重合体組成物に該当する実施例2は、高分子量ポリエチレンイミン(B)を含まない比較例1に対して流動性や成形外観が変化しないことが分かる。
一方、(X-1)低分子量ポリエチレンイミンを添加した比較例3は、流動性が極端に高くなるため、押出成形性が悪化することが分かる。更に、成形品表面に低分子量成分がブリードアウトし、外観が悪化する。