(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】検査システム及び検査方法
(51)【国際特許分類】
H02S 50/15 20140101AFI20230912BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02S50/15
G01N21/88 J
(21)【出願番号】P 2019191897
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】藤井 正和
(72)【発明者】
【氏名】吉光 亮
(72)【発明者】
【氏名】藤原 颯馬
【審査官】原 俊文
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-060246(JP,A)
【文献】国際公開第2007/125778(WO,A1)
【文献】特開2010-016019(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0248335(US,A1)
【文献】特開2017-017791(JP,A)
【文献】特開2016-208677(JP,A)
【文献】特開2002-107404(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽電池パネルに直流電流を供給する直流電源と、
前記複数の太陽電池パネルを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した撮像画像から前記各太陽電池パネルの画像であるパネル画像をそれぞれ抽出する画像処理部と、
前記複数の太陽電池パネルのうち異常が生じている太陽電池パネルを特定するための解析値を前記パネル画像ごとに算出する解析値算出部と、
前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記解析値を出力する出力部と、
表示装置とを備え、
前記解析値は、1つの前記パネル画像における輝度値の平均値であるパネル輝度平均値に係る第1解析値と、当該パネル画像における輝度値のばらつきに係る第2解析値とを含
み、
前記出力部は、前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記第1解析値及び前記第2解析値を前記表示装置に表示し、前記第1解析値を第1軸とし、前記第2解析値を第2軸とした二次元の直交座標系に、前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記解析値をプロットした二次元グラフを前記表示装置に表示する、
ことを特徴とする、検査システム。
【請求項2】
前記第1解析値は、前記パネル輝度平均値と、全ての前記パネル画像における輝度値の平均値である全体輝度平均値から前記パネル輝度平均値を差し引いた値である輝度偏差と、のいずれかであり、
前記第2解析値は、前記輝度値の分散又は標準偏差である、
ことを特徴とする、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記解析値算出部は、前記第1解析値及び前記第2解析値のそれぞれに対して、正規化処理を行う、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の検査システム。
【請求項4】
複数の太陽電池パネルに直流電流を供給する供給ステップと、
前記複数の太陽電池パネルに前記直流電流が供給されている間の所定期間において、前記複数の太陽電池パネルを撮像装置で撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで撮像された撮像画像から前記各太陽電池パネルの画像であるパネル画像をそれぞれ抽出する画像処理ステップと、
前記複数の太陽電池パネルのうち異常が生じている太陽電池パネルを特定するための解析値を前記パネル画像ごとに算出する解析値算出ステップと、
前記解析値算出ステップが求めた前記パネル画像ごとの前記解析値を出力する出力ステップと、
を含み、
前記解析値は、1つの前記パネル画像における輝度値の平均値であるパネル輝度平均値に係る第1解析値と、当該パネル画像における輝度値のばらつきに係る第2解析値とを含み、
前記出力ステップでは、前記解析値算出ステップで求めた前記パネル画像ごとの前記第1解析値及び前記第2解析値を表示し、前記第1解析値を第1軸とし、前記第2解析値を第2軸とした二次元の直交座標系に、前記解析値算出ステップで求めた前記パネル画像ごとの前記解析値をプロットした二次元グラフを表示する、
ことを特徴とする、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルの検査システム及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、屋外の太陽電池パネルの異常の有無を特定する方法として、EL(エレクトロルミネッセンス)法を用いた検査(以下、「EL検査」という。)が提案されている。
EL検査では、太陽電池パネルに電流を供給することで当該太陽電池パネルの電池セルが発光(以下、「EL発光」という。)する現象を利用して、当該EL発光を撮像装置が撮像して表示装置に表示する。太陽電池パネルに異常があるとEL発光の輝度が低下するため、検査員は、撮像画像を確認し、その撮像画像に映っている太陽電池パネルの明暗からどの太陽電池パネルに異常が発生しているかを特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、EL検査は、オンサイトで行われることが一般的であるが、オンサイトでは、周囲明るさや太陽電池パネルと撮像装置との間の距離が変動することがあり、太陽電池パネルを撮像する条件(撮像条件)が常に固定されずに変動する場合がある。したがって、撮像画像上の太陽電池パネルの輝度も撮像条件によって変動するため、検査員は、異常が生じている太陽電池パネル(以下、「異常太陽電池パネル」という。)を特定することが困難な場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、オンサイトでのEL検査において、検査員による異常太陽電池パネルの特定を容易にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、複数の太陽電池パネルに直流電流を供給する直流電源と、前記複数の太陽電池パネルを撮像する撮像装置と、前記撮像装置が撮像した撮像画像から前記各太陽電池パネルの画像であるパネル画像をそれぞれ抽出する画像処理部と、前記複数の太陽電池パネルのうち異常が生じている太陽電池パネルを特定するための解析値を前記パネル画像ごとに算出する解析値算出部と、前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記解析値を出力する出力部と、を備え、前記解析値は、1つの前記パネル画像における輝度値の平均値であるパネル輝度平均値に係る第1解析値と、当該パネル画像における輝度値のばらつきに係る第2解析値とを含む、ことを特徴とする、検査システムである。
【0007】
(2)上記(1)の検査システムであって、前記第1解析値は、前記パネル輝度平均値と、全ての前記パネル画像における輝度値の平均値である全体輝度平均値から前記パネル輝度平均値を差し引いた値である輝度偏差と、のいずれかであり、前記第2解析値は、前記輝度値の分散又は標準偏差であってもよい。
【0008】
(3)上記(1)又は上記(2)の検査システムであって、前記解析値算出部は、前記第1解析値及び前記第2解析値のそれぞれに対して、正規化処理を行ってもよい。
【0009】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかの検査システムであって、表示装置をさらに備え、前記出力部は、前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記第1解析値及び前記第2解析値を前記表示装置に表示してもよい。
【0010】
(5)上記(4)の検査システムであって、前記出力部は、前記第1解析値を第1軸とし、前記第2解析値を第2軸とした二次元の直交座標系に、前記解析値算出部が求めた前記パネル画像ごとの前記解析値をプロットした二次元グラフを前記表示装置に表示してもよい。
【0011】
(6)本発明の一態様は、複数の太陽電池パネルに前記直流電流を供給する供給ステップと、前記複数の太陽電池パネルに前記直流電流が供給されている間の所定期間において、前記複数の太陽電池パネルを撮像装置で撮像する撮像ステップと、前記撮像ステップで撮像された撮像画像から前記各太陽電池パネルの画像であるパネル画像をそれぞれ抽出する画像処理ステップと、前記複数の太陽電池パネルのうち異常が生じている太陽電池パネルを特定するための解析値を前記パネル画像ごとに算出する解析値算出ステップと、前記解析値算出ステップが求めた前記パネル画像ごとの前記解析値を出力する出力ステップと、を含み、前記解析値は、1つの前記パネル画像における輝度値の平均値であるパネル輝度平均値に係る第1解析値と、当該パネル画像における輝度値のばらつきに係る第2解析値とを含む、ことを特徴とする、検査方法である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、検査員による異常太陽電池パネルの特定を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る検査システム4の概略構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る異常検査装置7のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る制御装置40の機能部の一例を示す図である。
【
図4】本実施形態に係る画像処理部51の処理を説明する図である。
【
図5】本実施形態に係る輝度値ヒストグラムを示す図である。
【
図6】本実施形態に係る第1解析値及び第2解析値を説明する図である。
【
図7】本実施形態に係る第1解析値及び第2解析値を求めることによる効果を説明する図である。
【
図8】本実施形態に係る表示装置30の表示画面を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る異常検査装置7の動作のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る検査システム及び検査方法を、図面を用いて説明する。本実施形態に係る検査システム及び検査方法は、エレクトロルミネッセンス(EL)の発光を利用して太陽電池パネルの異常の有無の検査又は検査員が異常の有無を判定するための解析値の算出(以下、「EL検査」という。)を実行する。
【0015】
具体的には、本実施形態に係るEL検査は、太陽電池パネルに直流電圧を印加することで当該太陽電池パネルの電池セルが発光(以下、「EL発光」という。)する現象を利用して、当該EL発光を撮像装置で撮像し、その撮像した撮像画像の輝度値に基づいて検査員が異常の有無を判定するための解析値を求めて表示する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る検査システム4の概略構成の一例を示す図である。
図1に示す検査システム4は、太陽電池ストリング1内で直列に接続されている複数の太陽電池パネル2に対して接続箱3を介して直流電圧を印加しながら当該太陽パネルを上空から撮像する。そして、検査システム4は、その撮像画像を用いてEL検査を実行する。ただし、接続箱3は、必ずしも必要ではなく、太陽電池パネル2に直流電圧を印加することができれば、接続箱3を用いなくてもよい。なお、太陽電池パネル2に対する直流電圧の印加は、手動でもよいし、自動であってもよい。例えば、太陽電池パネル2に対する直流電圧の印加は、撮像装置6の位置や撮像タイミングに応じて自動で行われてもよい。
【0017】
太陽電池ストリング1-1~1-nは、それぞれ並列に接続されている。
各太陽電池ストリング1-1~1-nは、直列に接続された複数の太陽電池パネル2を備えている。なお、複数の太陽電池ストリング1-1~1-nのそれぞれを区別しない場合には、単に「太陽電池ストリング1」と標記する。
【0018】
太陽電池パネル2は、複数枚の太陽電池セルがパネル状に並べられ、太陽光を受光することで光起電力効果により直流電力を発生させる。なお、太陽電池ストリング1の数は、1以上であればいくつでもよい。太陽電池ストリング1に含まれる太陽電池パネル2の数は、2以上であればいくつでもよい。
【0019】
接続箱3は、複数の太陽電池ストリング1-1~1-nを多段階且つ電気的に並列に接続している。接続箱3は、太陽電池ストリング1-1~1-nのそれぞれに接続されている各接続線を1つの接続線Lに集線する。なお、複数の太陽電池ストリング1-1~1-nで発電された電力を電力系統に供給する場合には、接続線Lは、パワーコンディショナ(不図示)を介して系統線に接続される。
【0020】
例えば、接続箱3は、複数のスイッチSW-1~SW-nを備える。
スイッチSW-1は、太陽電池ストリング1-1に接続されている電力線W-1と接続線Lとの間で接続されている。スイッチSW-1がオン状態の場合には、電力線W-1と接続線Lとが電気的に接続される。スイッチSW-1がオフ状態の場合には、電力線W-1と接続線Lとの電気的な接続が遮断される。
スイッチSW-2は、太陽電池ストリング1-2に接続されている電力線W-2と接続線Lとの間で接続されている。スイッチSW-2がオン状態の場合には、電力線W-2と接続線Lとが電気的に接続される。スイッチSW-2がオフ状態の場合には、電力線W-2と接続線Lとの電気的な接続が遮断される。
スイッチSW-nは、太陽電池ストリング1-nに接続されている電力線W-nと接続線Lとの間で接続されている。スイッチSW-nがオン状態の場合には、電力線W-nと接続線Lとが電気的に接続される。スイッチSW-nがオフ状態の場合には、電力線W-nと接続線Lとの電気的な接続が遮断される。
【0021】
次に、本実施形態に係る検査システム4の構成について、説明する。
検査システム4は、直流電源5、撮像装置6及び異常検査装置7を備える。
【0022】
直流電源5は、複数の太陽電池パネル2に直流電圧を印加することでその複数の太陽電池パネル2に直流電流を供給する。
具体的には、直流電源5は、接続線Lに接続されており、接続線Lに直流電圧Vdcを印加する。これにより、オン状態であるスイッチSWに電力線Wを介して接続されている複数の太陽電池パネル2に直流電圧が印加され直流電流である検査電流が注入される。なお、直流電源5は、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池といった二次電池であってもよい。直流電源5は、電気二重層キャパシタ(コンデンサ)であってもよい。また、直流電源5は、商用電源からの商用電力を直流に変換することで直流電圧Vdcを生成してもよい。
【0023】
撮像装置6は、近赤外線カメラを有し、検査対象である太陽電池ストリング1に直流電圧が印加され検査電流が当該太陽電池ストリング1を構成する複数の太陽電池パネル2に注入されると、当該複数の太陽電池パネル2を一つの画像に収まるように撮像する。すなわち、撮像装置6は、検査対象となる太陽電池ストリング1に含まれている全ての太陽電池パネル2を一つの画像に収まるように撮像する。なお、撮像装置6は、検査対象が複数の太陽電池ストリング1である場合には、その複数の太陽電池ストリング1に含まれている全ての太陽電池パネル2を一つの画像に収まるように撮像してもよい。このように、撮像装置6は、複数の太陽電池ストリング1を撮像するにあたって、太陽電池ストリング1ごとに撮像してもよいし、複数の太陽電池ストリング1をまとめて一つの画像に収まるように撮像してもよい。なお、撮像装置6は、太陽電池ストリング1内の太陽電池パネル2の全てが一つの画像に収まるように撮像しなくてもよい。撮像装置6は、太陽電池ストリング1内の太陽電池パネル2の全てが一つの画像に収まるように撮像できない場合には、撮像装置6の位置を変えて繰り返し撮影してもよい。撮像装置6は、太陽電池ストリング1内の複数の太陽電池パネル2を1回あるいは複数回に分けて撮影してもよいし、複数の太陽電池ストリング1を1回あるいは複数回に分けて撮影してもよい。
【0024】
撮像装置6が撮像した画像である撮像画像Gは、静止画であってもよいし、動画であってもよい。ここで、検査電流が注入された太陽電池パネル2において、正常の太陽電池セルは、所定の強度でEL発光する。一方、正常ではない太陽電池セルは、所定の強度よりも低い強度でEL発光するか又はEL発光しない。例えば、正常ではない太陽電池セルとは、断線・接続不良が発生している太陽電池セルやクラックなどの劣化が発生している太陽電池セルである。さらに、劣化箇所は、劣化が進むにつれてEL発光の輝度が徐々に低下する。したがって、検査システム4は、撮像装置6が撮像した撮像画像Gの輝度に基づいて太陽電池パネル2の異常の有無を検査することができる。
【0025】
なお、撮像装置6は、手動により撮像してもよいし、自動で撮像してもよい。例えば、ユーザが撮像装置6を操作することで、撮像装置6は検査対象の太陽電池ストリング1を撮像してもよい。また、撮像装置6は、不図示の端末装置から第1の操作信号を受信した場合に、検査対象の太陽電池ストリング1を撮像してもよい。また、撮像装置6は、上記端末装置から第2の操作信号を受信した場合に、撮像装置6は検査対象の太陽電池パネル2の撮像を停止してもよい。
【0026】
上記端末装置は、ユーザにより操作されることで第1の操作信号や第2の操作信号を無線又は有線で撮像装置6に送信する。上記端末装置は、リモートコントローラであってもよい。また、上記端末装置は、ユーザにより可搬可能な携帯情報端末であってもよく、例えば、スマートフォンやタブレット端末である。
【0027】
また、撮像装置6は、所定の位置に固定されてもよいし、太陽電池ストリング1の上空を移動する移動体に設けられてもよい。この移動体は、有人であってもよく、無人であってもよい。例えば、前記移動体は、ドローンなどの小型の飛行体である。
撮像装置6は、撮像した撮像画像Gを無線又は有線で異常検査装置7に送信する。ただし、これに限定されず、撮像装置6が撮像した撮像画像Gのデータをユーザが撮像装置6から取り出し、その取り出したデータを異常検査装置7に入力してもよい。
【0028】
異常検査装置7は、撮像装置6が撮像した撮像画像Gに基づいて太陽電池パネル2ごとの解析値を算出する。そして、異常検査装置7は、太陽電池パネル2ごとの解析値を表示する。
以下において、本実施形態に係る異常検査装置7の構成について、
図2を用いて説明する。
【0029】
図2は、本実施形態に係る異常検査装置7のハードウェア構成の一例を示す図である。
図2に示すように、異常検査装置7は、入力装置10、通信装置20、表示装置30及び制御装置40を備える。
【0030】
入力装置10は、ユーザからの入力を受け付けて、当該入力に係る情報(以下、「入力情報」という。)を制御装置40に出力する。例えば、入力装置10は、タッチパネル、キーボード等に代表されるハードウェアキー、マウス等のポインティングデバイスである。また、入力装置10は、マイク等の音声による操作入力を受け付けてもよい。
【0031】
通信装置20は、外部装置と通信し、撮像装置6が撮像した撮像画像Gを撮像装置6から直接又は間接的に受信する。例えば、通信装置20は、撮像装置6と通信し、撮像装置6から撮像画像Gを受信する。通信装置20は、受信した撮像画像Gを制御装置40に送信する。通信装置20が外部装置と通信する通信方式は、特に限定されないが、有線でもよいし、無線でもよい。また、無線の場合には、無線LAN通信であってもよいし、Wi-Fi(登録商標)やブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信であってもよい。
【0032】
表示装置30は、制御装置40から出力された解析値を含む情報を表示する。表示装置30は、制御装置40から出力された前記情報を表示するものであれば、特に限定されないが、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等である。
【0033】
制御装置40は、メモリと、メモリに格納されているEL検査を行うためのプログラムを実行するプロセッサと、を有する。上記メモリは、不揮発性メモリ(ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等)を有する。ただし、上記メモリは、揮発性メモリを更に備えてもよい。例えば、上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)などである。制御装置40は、例えば、コンピュータである。
【0034】
次に、本実施形態に係る制御装置40の機能部について、
図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る制御装置40の機能部の一例を示す図である。
図3に示すように、制御装置40は、異常解析部50及び出力部60を備える。
【0035】
異常解析部50は、撮像装置6が撮像した撮像画像Gのうち、各太陽電池パネル2の画像であるパネル画像Mを抽出し、各パネル画像Mに基づいて、複数の太陽電池パネル2のうち異常が生じている太陽電池パネル2(以下、「異常太陽電池パネル」という。)を特定するための解析値Kを太陽電池パネル2ごとに算出する。この解析値は、第1解析値と第2解析値とを含む。
【0036】
出力部60は、異常解析部50が算出した太陽電池パネル2ごとの解析値Kを表示装置30に表示する。
【0037】
以下に、異常解析部50の具体的な機能部について、説明する。
【0038】
異常解析部50は、画像処理部51及び解析値算出部52を備える。
【0039】
画像処理部51は、まず、撮像画像Gを取得すると、その撮像画像Gに対して所定の画像処理を行って、撮像画像Gに映っている太陽電池ストリング1の画像を、真上から見下ろした太陽電池ストリング1の画像に補正する。具体的には、8つの太陽電池パネル2-1~2-8からなる太陽電池ストリング1-1が検査対象である場合には、撮像装置6が撮像した太陽電池ストリング1-1の撮像装置Gは、
図4(a)に示すように、傾いている場合がある。したがって、画像処理部51は、撮像画像Gに対して上記傾きを補正して、
図4(b)に示すように、太陽電池ストリング1-1を真上から見下ろした画像である補正画像G´に変換する。なお、太陽電池ストリング1は8つの太陽電池パネル2-1~2-8からなるとしたが、太陽電池パネル2の枚数は何枚であってもよい。
【0040】
ここで、画像処理部51は、入力装置10からの入力情報に基づいて、撮像画像Gを補正画像G´に変換してもよい。例えば、出力部60は、制御装置40が撮像画像Gを受信すると、その撮像画像Gを表示装置30に表示する。ユーザは、表示装置30に表示されている撮像画像Gにおいて、入力装置10を操作して太陽電池ストリング1-1の4隅の頂点を選択する。これにより、画像処理部51は、入力情報に基づいて、撮像画像Gにおける太陽電池ストリング1-1の4隅の頂点を認識することができ、その4つの頂点に基づいて、撮像画像Gを補正画像G´に変換する。ただし、これに限定されず、画像処理部51は、入力装置10から入力情報ではなく、自動で上記4隅の頂点を認識してもよい。例えば、画像処理部51は、撮像画像Gの明暗に基づいて4隅の頂点を自動で選択してもよい。
【0041】
画像処理部51は、撮像画像Gを補正画像G´に変換すると、
図4(c)に示すように、その補正画像G´に含まれている各太陽電池パネル2の画像を抽出する。例えば、画像処理部51には、太陽電池ストリング1-1の中に縦と横で何枚の太陽電池パネル2が含まれているかの情報である枚数情報が記憶されている。よって、画像処理部51は、その枚数情報にしたがって、補正画像G´を均等に切り出すことで、太陽電池パネル2-1から2-8の各画像(以下、「パネル画像」という。)Mを抽出する。なお、画像処理部51は、入力装置10からの入力情報に基づいて枚数情報を取得してもよい。すなわち、ユーザが入力装置10を操作して枚数情報を入力し、画像処理部51は、入力装置10からの枚数情報に基づいて補正画像G´から、太陽電池パネル2-1~2-8の各パネル画像Mを抽出してもよい。そして、画像処理部51は、抽出した各パネル画像Mのそれぞれに対して固有の識別情報Sを付与する。この識別情報Sは、太陽電池パネル2-1から2-8のそれぞれを特定可能な情報であってもよい。例えば、識別情報Sは、太陽電池パネル2-1から2-8のそれぞれの位置を示す情報であってもよい。
このように、画像処理部51は、撮像画像Gから太陽電池パネル2ごとの画像が同じ画像サイズになるように変換し、その太陽電池パネル2ごとの画像であるパネル画像Mを抽出する。
【0042】
本実施形態では、太陽電池パネル2-1のパネル画像Mを「パネル画像M1」とし、パネル画像M1に識別情報S1が付与される。太陽電池パネル2-2のパネル画像Mを「パネル画像M2」とし、パネル画像M2に識別情報S2が付与される。太陽電池パネル2-3のパネル画像Mを「パネル画像M3」とし、パネル画像M3に識別情報S3が付与される。太陽電池パネル2-4のパネル画像Mを「パネル画像M4」とし、パネル画像M4に識別情報S4が付与される。太陽電池パネル2-5のパネル画像Mを「パネル画像M5」とし、パネル画像M5に識別情報S5が付与される。太陽電池パネル2-6のパネル画像Mを「パネル画像M6」とし、パネル画像M6に識別情報S6が付与される。太陽電池パネル2-7のパネル画像Mを「パネル画像M7」とし、パネル画像M7に識別情報S7が付与される。太陽電池パネル2-8のパネル画像Mを「パネル画像M8」とし、パネル画像M8に識別情報S8が付与される。
【0043】
解析値算出部52は、第1解析値算出部53及び第2解析値算出部54を備える。
【0044】
第1解析値算出部53は、パネル画像Mにおける輝度値Lの平均値であるパネル輝度平均値Laveに係る第1解析値をパネル画像Mごとに算出する。例えば、第1解析値算出部53は、パネル画像Mの各画素の輝度値Lを取得し、その輝度値Lの合計からパネル画像Mの総画素数Xで割った値であるパネル輝度平均値Laveを第1解析値として求める。
例えば、第1解析値算出部53は、
図5に示すように、パネル画像Mにおける画素の輝度値の分布を示す輝度値ヒストグラムを作成し、その輝度値ヒストグラムからパネル輝度平均値Laveを1解析値として求めてもよい。
【0045】
第1解析値算出部53は、パネル画像M1のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave1」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M2のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave2」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M3のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave3」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M4のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave4」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M5のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave5」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M6のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave6」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M7のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave7」とする。第1解析値算出部53は、パネル画像M8のパネル輝度平均値Laveを求め、そのパネル輝度平均値Laveを「パネル輝度平均値Lave8」とする。
【0046】
ここで、第1解析値算出部53は、すべてのパネル画像Mの輝度値の平均値である全体輝度平均値Lsを求め、その全体輝度平均値Lsからパネル輝度平均値Laveを差し引いた値である輝度偏差ΔL=(全体輝度平均値Ls-パネル輝度平均値Lave)を第1解析値として求めてもよい。
【0047】
全体輝度平均値Lsは、検査対象である太陽電池ストリング1全体の輝度値の平均値である。よって、太陽電池ストリング1の全体輝度平均値Lsは、例えば、以下に示す式(1)を用いて算出される。
【0048】
Ls=(Lave1+Lave2+Lave3+Lave4+Lave5+Lave6+Lave7+Lave8)/8 …(1)
【0049】
よって、第1解析値は、パネル輝度平均値Laveであってよいし、偏差ΔLであってもよい。
さらに、第1解析値算出部53は、パネル輝度平均値Lave又は偏差ΔLを対して正規化し、その正規化した後の値を第1解析値としてもよい。
【0050】
例えば、偏差ΔLを正規化する場合には、解析値算出部52は、以下に示す式に従って偏差ΔLに対して正規化を行う第1正規化処理を太陽電池パネル(パネル画像M)ごとに行う。
【0051】
第1解析値=偏差ΔL/(輝度最大値Lmax-輝度最小値Lmin) …(2)
【0052】
輝度最大値Lmaxは、太陽電池ストリング1-1における輝度値の最大値である。すなわち、太陽電池パネル2-1~2-8のすべての画素の輝度値の中の最大値である。輝度最小値Lmaxは、太陽電池ストリング1-1における輝度値の最小値である。すなわち、太陽電池パネル2-1~2-8のすべての画素の輝度値の中の最小値である。
【0053】
第2解析値算出部54は、パネル画像Mにおける輝度値Lのばらつきに係る第2解析値をパネル画像Mごとに算出する。例えば、第2解析値算出部54は、パネル画像Mにおける輝度値Lのばらつきを第2解析値としてパネル画像Mごとに算出する。ここで、ばらつきとは、分散E(=σ2)や標準偏差σである。以下に説明する場合には、ばらつきは、分散Eである場合について説明するが、これに限定されない。
【0054】
第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave1と、パネル画像M1の輝度値と、の差を二乗した値(以下、「二乗値」という。)を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値をすべて合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M1の分散E1とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave2と、パネル画像M2の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M2の分散E2とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave3と、パネル画像M3の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M3の分散E3とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave4と、パネル画像M4の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M4の分散E4とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave5と、パネル画像M5の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M5の分散E5とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave6と、パネル画像M6の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M6の分散E6とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave7と、パネル画像M7の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M7の分散E7とする。
同様に、第2解析値算出部54は、パネル輝度平均値Lave8と、パネル画像M8の輝度値と、の差の二乗値を画素ごとに求め、すべての画素の二乗値を合計して総画素数Xで割った値をパネル画像M8の分散E8とする。
【0055】
なお、第2解析値算出部54は、分散Eを対して正規化し、その正規化した後の値を第2解析値としてもよい。
【0056】
例えば、第2解析値算出部54は、太陽電池パネルごとに第2解析値を求める場合には、以下に示す式に従って太陽電池パネルの分散Eに対して正規化を行う第2正規化処理を太陽電池パネルごとに行う。
【0057】
第2解析値=(分散E)/(輝度最大値Lmax-輝度最小値Lmin) …(3)
【0058】
このように、解析値算出部52は、複数のパネル画像M1~M8それぞれにおいて、パネル輝度平均値Laveに係る第1解析値及び分散Eに係る第2解析値を算出する。換言すれば、解析値算出部52は、複数の太陽電池パネル2-1~2-8のそれぞれにおいて、第1解析値及び第2解析値を算出する。
例えば、解析値算出部52は、
図6に示すように、複数のパネル画像M1~M8の識別情報S1~S8のそれぞれにおいて、そのパネル画像Mに対応するパネル輝度平均値Laveに係る第1解析値及び分散Eに係る第2解析値を関連付けて格納する。
図6(a)は、第1解析値がパネル輝度平均値Laveである場合の図である。
図6(b)は、第1解析値が輝度偏差ΔLである場合の図である。
【0059】
ここで、太陽電池ストリング1は、同程度の性能で同時期に(例えば、同じロット)作られた複数の太陽電池パネル2が直列に接続されていることが多い。そのため、各太陽電池パネル2に含まれる全ての太陽電池セルは、同じように劣化するため、太陽電池ストリング1の中の全ての太陽電池パネル2も同じように劣化する。すなわち、太陽電池ストリング1の中に含まれる複数の太陽電池セルのEL発光の輝度値は同じように低下していく。そのため、太陽電池ストリング1内の全ての太陽電池パネル2の各パネル画像Mの輝度値は、同一となるはずである。ただし、実際には同一とはならず、
図7に示すように、一部の太陽電池セルが他の太陽電池セルよりも劣化が進んだり、配線が痛むなどして発電効率が落ちるため、その一部分だけ輝度が低下する。
【0060】
すなわち、
図7に示すように、撮像装置6で撮像した複数の太陽電池パネル2の画像では、健全な太陽電池パネル2であれば、設置直後ではいずれも白く、理想的に劣化すれば、いずれの太陽電池パネルの画像も同じく暗くなるはずであるが、実際には、太陽電池セルごとに劣化度合いが異なる。
そのため、太陽電池ストリング1内で、他の太陽電池パネル2と相対的に比べて輝度値の低い箇所が多い、すなわち輝度値ヒストグラムを描いたときの輝度値の平均値が低い場合には、劣化が進んでいる可能性が高い。さらに、仮に輝度値の平均値が他の太陽電池パネル2と同等であっても、明るい太陽電池セルと暗い太陽電池セルとが混在している可能性がある。
【0061】
そこで、ユーザは、太陽電池ストリング1内の複数の太陽電池パネル2に対し、「パネル輝度平均値Laveが相対的に低い(輝度偏差ΔLが相対的に大きい)」または「輝度値のばらつきを示す第2解析値が相対的に大きい」太陽電池パネル2は、劣化が進んでいる可能性が高いと判断する。
例えば、
図7に示す例では、太陽電池パネル2-1と太陽電池パネル2-8とが異常太陽電池パネルである。
図7に示すように、太陽電池パネル2-2と太陽電池パネル2-1とを比較した場合には、太陽電池パネル2-1は輝度値の平均値が低いため、総じて発電量は少ないといえる。また、太陽電池パネル2-8は、輝度値の平均値が高く発電できているといえるが、急激に劣化が進むセルが混ざっているため、輝度値のばらつきは大きい。よって、ユーザは、太陽電池パネル2-8が太陽電池パネル2-2よりも輝度のばらつきが大きく、太陽電池パネル2-1が太陽電池パネル2-2よりもパネル輝度平均値Laveが低いため、太陽電池パネル2-1と太陽電池パネル2-8とが異常太陽電池パネルであると特定することができる。すなわち、ユーザは、太陽電池パネル2ごとのパネル輝度平均値Laveに係る第1解析値及びばらつき(例えば、分散E)に係る第2解析値との情報に基づいて、異常太陽電池パネルを特定することができる。
【0062】
次に、本実施形態に係る表示装置30の表示画面について、
図8を用いて説明する。
図8は、本実施形態に係る表示装置30の表示画面を示す図である。
図8の黒丸(●)は、解析値Kを示す。
出力部60は、異常解析部50が算出した太陽電池パネル2(パネル画像M)ごとの第1解析値及び第2解析値を表示装置30に表示する。
【0063】
具体的には、
図8に示すように、出力部60は、2次元の直交座標系において、第1軸(例えば、横軸)が第1解析値とし、第2軸(例えば、縦軸)が第2解析値として、解析値算出部52が算出したパネル画像Mごとの解析値Kを表示装置30にプロットする。
図8に示す例では、表示装置30に表示された解析値Kの二次元グラフ100において、横軸が偏差ΔLであり、縦軸が分散Eである。出力部60は、プロットした解析値Kがどの太陽電池パネル2の解析値であるかを示すために、解析値Kのそれぞれの近傍に、解析値Kに対応する識別情報Sを表示する。
【0064】
また、出力部60は、画像処理部51が抽出した複数のパネル画像Mから成る検査対象の太陽電池ストリング1の画像であるストリング画像101を表示する。このストリング画像101は、太陽電池ストリング1内の各太陽電池パネル2の位置関係を示す図である。なお、ストリング画像101における各太陽電池パネル2の画像、すなわちパネル画像Mには、識別情報Sが対応付けられて、表示されている。
これにより、ユーザは、出力部60により解析値Kが二次元の直交座標系にプロットされた二次元グラフ100を確認することで、異常太陽電池パネルを特定することができる。さらに、ユーザは、ストリング画像101を確認することで異常太陽電池パネルがどの位置に配置されている太陽電池パネルなのかを特定することができる。
【0065】
ここで、ユーザは、入力装置10を操作することで、判定閾値200を設定し、且つ、二次元グラフ100にその判定閾値200を表示させることができる。判定閾値200は、異常太陽電池パネルと、異常が生じていない太陽電池パネル2とを判別するための解析値Kの閾値である。ユーザが入力装置10を操作して判定閾値200を入力すると、出力部60は、入力装置10から判定閾値200の入力情報を取得し、判定閾値200を設定するとともに、二次元グラフ100に表示する。ここで、判定閾値200は、
図8に示すように、二次元グラフ100上において、直線で示されているが、これに限定されず、曲線や階段状などに設定されてもよい。また、機械学習などの方法で正常と異常の識別を行なう判定条件を定めてもよい。
【0066】
出力部60は、判定閾値200に基づいて、複数の太陽電池パネル2の中から異常太陽電池パネルを判定してもよい。
図8に示す例では、出力部60は、複数の解析値Kのそれぞれに対して、判定閾値200を超えるか否かを判定し、判定閾値200を超える解析値Kに対応する太陽電池パネル2を異常太陽電池パネルと判定する。
ここで、判定閾値200は、二次元グラフ上において設定されるため、第1解析値の閾値である第1判定閾値と、第2解析値の閾値である第2判定閾値とを有する。
図8に示す例では、第1判定閾値は、偏差ΔLの閾値である。したがって、出力部60は、解析値Kの第1解析値が第1判定閾値を超える第1条件、又は、当該解析値Kの第2解析値が第2判定閾値を超える第2条件の少なくともいずれかの条件が成立すれば、その解析値Kが異常値であるとする。異常値である解析値Kに対応する異常太陽電池パネル2は、異常太陽電池パネルである。
図8に示す例では、識別情報S8の解析値Kが異常値であると判定されるため、識別情報S8の太陽電池パネル2が異常太陽電池パネル2となる。
【0067】
出力部60は、解析値Kの二次元グラフ100を表示装置30に表示するにあたって、判定閾値200を超える解析値K(すなわち、異常値である解析値K)を第1の態様で表示し、その他の解析Kを第1の態様とは異なる第2の態様で表示してもよい。例えば、第1の態様とは、第1の色で表示することであり、第2の態様とは第1の色とは異なる第2の色で表示することである。ただし、これに限定されず、出力部60は、異常値である解析値Kとその他の解析値Kとを区別できるように表示すれば、どのような態様であってもよい。
出力部60は、判定閾値200に基づいて、異常値である解析値Kに対応する識別情報Sを表示装置30に表示してもよい。
【0068】
次に、本実施形態に係る太陽電池パネル2の検査方法について、説明する。
【0069】
まず、撮像画像Gを取得する方法について、説明する。
ユーザは、直流電源5を検査対象である太陽電池ストリング1に接続して、当該太陽電池ストリング1に直流電圧を印加して太陽電池パネル2に直流電流を供給する。これにより、太陽電池ストリング1内の太陽電池パネル2は、EL発光する。撮像装置6は、太陽電池ストリング1に直流電流が供給されている間の所定期間において、太陽電池ストリング1の上空から、当該太陽電池ストリング1を撮像する。なお、撮像装置6がドローンなどの小型飛行体に取り付けられている場合には、小型飛行体が予め設定されたルートを飛行することで撮像装置6が太陽電池ストリング1を撮像してもよい。ただし、これに限定されず、ユーザが小型飛行体を遠隔操縦してもよい。
撮像装置6による太陽電池ストリング1の撮像が終了すると、ユーザは、直流電源5を取り外して、太陽電池ストリング1に対する直流電圧の印加を終了する。撮像装置6が撮像した撮像画像Gは、異常検査装置7に直接又は間接的に送られる。
【0070】
次に、本実施形態に係る異常検査装置7の動作について、
図9を用いて説明する。
図9は、本実施形態に係る異常検査装置7の動作のフロー図である。
【0071】
画像処理部51は、撮像画像Gを取得すると、その撮像画像Gに対して所定の画像処理を行って、撮像画像Gに映っている太陽電池ストリング1の画像を、真上から見下ろした太陽電池ストリング1の画像である補正画像G´に補正する。これにより、太陽電池ストリング1に含まれる太陽電池パネル2の画像サイズが同一になる。画像処理部51は、補正画像G´からその補正画像G´に含まれている各太陽電池パネル2の画像を抽出する(ステップS101)。
【0072】
解析値算出部52は、パネル画像Mにおける輝度値Lの平均値であるパネル輝度平均値Laveと分散値Eをパネル画像Mごとに算出する(ステップS102)。
解析値算出部52は、検査対象である太陽電池ストリング1全体の輝度値の平均値である全体輝度平均値Lsを求める(ステップS103)。例えば、解析値算出部52は、ステップS102で求めたパネル画像Mごとのパネル輝度平均値Laveの平均値を全体輝度平均値Lsとして求める。
【0073】
解析値算出部52は、全体輝度平均値Lsからパネル輝度平均値Laveを差し引いた値である輝度偏差ΔLをパネル画像Mごとに求める(ステップS104)。この輝度偏差ΔLは、本発明の「第1解析値」の一例である。分散Eは、本発明の「第2解析値」の一例である。
ここで、解析値算出部52は、輝度偏差ΔL及び分散Eのそれぞれに対して正規化処理を行ってもよい。これにより、撮像装置6の絞りや撮像条件が変化した場合などによる影響を抑制することができる。
【0074】
出力部60は、パネル画像Mごとの輝度偏差ΔL及び分散Eを表示装置30に表示する(ステップS105)。具体的には、出力部60は、表示装置30に対して、輝度偏差ΔL及び分散Eを二次元の直交座標系にプロットした二次元グラフ100を表示する。これにより、ユーザは、表示装置30に表示された二次元グラフ100を確認することで、「パネル輝度平均値Laveが相対的に低い(輝度偏差ΔLが相対的に大きい)」または「輝度値のばらつきが相対的に大きい」太陽電池パネル2を特定するが可能となり、撮像画像Gを確認することなく、異常太陽電池パネルを容易に特定するが可能となる。
【0075】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【0076】
(変形例)
上記実施形態では、出力部60は、パネル画像Mごとの輝度偏差ΔL及び分散Eを表示装置30に表示したが、これに限定されず、パネル画像Mごとの輝度偏差ΔL及び分散Eを出力すればよく、その態様には特に限定されない。例えば、出力部60は、パネル画像Mごとの輝度偏差ΔL及び分散Eを紙媒体に印刷させることで出力してもよいし、音声により出力してもよい。さらに、出力部60は、表示装置30にパネル画像Mごとの輝度偏差ΔL及び分散Eを表示するにあたって、輝度偏差ΔL及び分散Eの二次元グラフ100ではなく、
図6に示すような表を出力してもよい。
【0077】
以上、説明したように、本実施形態に係る検査システム4は、複数の太陽電池パネル2のうち異常が生じている太陽電池パネルを特定するための解析値Kをパネル画像Mごとに算出する異常解析部50と、異常解析部50が求めたパネル画像Mごとの解析値Kを出力する出力部60と、を備える。解析値Kは、1つのパネル画像Mにおける輝度値Lの平均値であるパネル輝度平均値Laveに係る第1解析値と、当該パネル画像Mにおける輝度値のばらつきに係る第2解析値とを含む。
【0078】
このような構成によれば、オンサイトでのEL検査において、検査員は、撮像画像から異常太陽電池パネルを特定する必要がなく、検査員による異常太陽電池パネルの特定を容易になる。
【0079】
ここで、一般的に、発電所で用いられている太陽電池パネルの異常の有無の検査を行う場合には、太陽電池パネルを発電所から取り外し、検査機関等の計測環境が常に固定されている場所(以下、「オフサイト」という。)に持ち込んで検査を行うことが一般的である。ただし、オフサイトで太陽電池パネルの検査する場合には、すべての太陽電池パネルを発電所から取り外して検査機関に持ち込んで検査するという大掛かりな作業が必要となる。その結果、ストリング全体の発電が長期間にわたって停止するとともに、太陽電池パネルの取り外し費用も増大する。そこで、エレクトロルミネッセンス(EL)を利用したEL検査をオンサイト(発電所)にて実行することで、異常が生じている可能性がある太陽電池パネルを特定することが行われている。これにより、EL検査で異常があるとした太陽電池パネルのみを取り外して検査機関にて精密な検査を行うことで無駄な太陽電池パネルの取り外しを抑制することが望まれている。ただし、EL検査は、オンサイトで行われることが一般的であるが、オンサイトでは、周囲明るさや太陽電池パネルと撮像装置6との間の距離が変動することがあり、太陽電池パネルを撮像する条件(撮像条件)が常に固定されずに変動する場合がある。したがって、撮像画像上の太陽電池パネルの輝度も撮像条件によって変動してしまう。その結果、検査員が撮像画像Gを目で見ることで異常が生じている太陽電池パネルを特定することは困難な場合があった。
【0080】
一方、本実施形態に係る検査システム4は、1つのパネル画像Mにおける輝度値Lの平均値であるパネル輝度平均値Laveに係る第1解析値と、当該パネル画像Mにおける輝度値のばらつきに係る第2解析値とを解析値Kをパネル画像ごとに出力する構成を備える。そのため、ユーザは、太陽光発電所から太陽電池パネル2を取り外すことなく、劣化が進む太陽電池パネル2の特定することができる。また、ユーザは、検査システム4によって異常太陽電池パネル2だけを取り外して精密な検査を行う検査機関に持ち込むことで、無駄な太陽電池パネル2の取り外しを抑制することができる。
【0081】
なお、上述した制御装置40の全部または一部をコンピュータで実現するようにしてもよい。この場合、上記コンピュータは、CPU、GPUなどのプロセッサ及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えてもよい。そして、制御装置40の全部または一部の機能をコンピュータで実現するためのプログラムを上記コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムを上記プロセッサに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。ここで、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 太陽電池ストリング
2 太陽電池パネル
4 検査システム
5 直流電源
6 撮像装置
7 異常検査装置
30 表示装置
40 制御装置
50 異常解析部
51 画像処理部
52 解析値算出部
60 出力部