(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 3/36 20060101AFI20230912BHJP
B41J 11/14 20060101ALI20230912BHJP
B41J 2/32 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B41J3/36 T
B41J11/14
B41J2/32 C
(21)【出願番号】P 2019193860
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田上 裕也
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 信次
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-43350(JP,A)
【文献】特開平07-68814(JP,A)
【文献】特開2001-18480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 3/36
B41J 11/14
B41J 2/32
B41J 15/00-15/04
B41J 29/00
B41J 29/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カセット装着口を介して印刷テープを収容した印刷用カセットが装着可能な筐体と、
前記筐体内に設けられ、前記筐体の内部から前記カセット装着口に近づくように延びる印刷ヘッドと、
前記筐体内に設けられ、前記印刷ヘッドと対向するプラテンローラと、
前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラのうちの一方を保持すると共に、前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラが前記印刷テープをニップするニップ位置と、前記印刷ヘッド及び前記プラテンローラが前記印刷テープをニップしない非ニップ位置とに移動可能なホルダと、
前記筐体へ装着可能であり、前記カセット装着口の少なくとも一部を覆う被覆位置から、前記印刷用カセットの前記カセット装着口への装着方向と平行な回転軸心を中心に回転することで前記筐体に係合した係合位置へ移動可能なカバーと、
を備え、
前記ホルダは、前記カバーの前記被覆位置から前記係合位置への移動に連動して、前記非ニップ位置から前記ニップ位置に移動する、印刷装置。
【請求項2】
前記カバーは、前記カバーが前記係合位置にあるときに前記筐体に係合する爪を有し、
前記爪と接触し、前記ホルダを前記ニップ位置へ向けて押圧する押圧位置と前記ホルダを押圧しない非押圧位置との間で移動可能な接触部材をさらに備え、
前記接触部材は、前記カバーの前記被覆位置から前記係合位置への移動に連動して前記非押圧位置から前記押圧位置へ移動し、前記カバーの前記係合位置から前記被覆位置への移動に連動して前記押圧位置から前記非押圧位置へ移動する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記接触部材は、
前記爪と共に前記カバーの前記回転軸心を中心軸として回動する回動部と、
前記回動部及び前記ホルダのそれぞれに対し回転可能に連結され、前記爪の回動を前記ホルダの前記非ニップ位置から前記ニップ位置への移動に変換する変換部と、
を有する、請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記ホルダは、前記ニップ位置から前記非ニップ位置に向かって付勢され、前記カバーの前記係合位置から前記被覆位置への移動に連動して前記ニップ位置から前記非ニップ位置に移動する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記カバーは、前記カバーが前記係合位置にあるときに前記筐体に係合する複数の爪を有し、
前記複数の爪は、前記カバーの回転方向に沿って等間隔に配置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記カバーは、前記カバーが前記係合位置、又は前記被覆位置と前記係合位置との間にあるときに前記印刷用カセットを前記カセット装着口への装着方向に押圧する押圧部を有する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記押圧部は、前記カバーの前記回転軸心と直交する方向において前記回転軸心から離れて配置される、請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記押圧部は、前記カバーが前記被覆位置から前記係合位置に移動する間、前記印刷用カセットの被押圧部に常に接触する、請求項7に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記押圧部は、軸方向が前記カバーの前記回転軸心と平行な円筒状である、請求項8に記載の印刷装置。
【請求項10】
前記筐体は、円柱状又は円錐台状である、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項11】
前記印刷用カセットは、直方体状である、請求項10に記載の印刷装置。
【請求項12】
前記筐体の前記カセット装着口が設けられた第1面とは反対側の第2面に設けられた電源スイッチをさらに備える、請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷テープに印刷を行う印刷装置では、印刷テープを収納したカセットを印刷装置本体に着脱することで、印刷テープの交換及び供給が行われる。このようなカセットにおいて、カセットを覆うカバーを閉じる動作と、印刷テープをニップする位置にプラテンローラを移動させる動作とを連動させたものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の印刷装置では、カバーが閉じ切る前にプラテンローラが印刷テープに接触するので、カバーを閉じている途中でユーザーがカセットに触れた場合に、プラテンローラが印刷テープに接触した状態でカセットが動き得る。そのため、印刷テープにねじれ、折れ曲がり等の不具合が発生するおそれがある。
【0005】
本開示の一局面は、カセット装着後のプラテンローラのニップによる印刷テープの不具合を抑制できる印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、カセット装着口を介して印刷テープを収容した印刷用カセットが装着可能な筐体と、筐体内に設けられ、筐体の内部からカセット装着口に近づくように延びる印刷ヘッドと、筐体内に設けられ、印刷ヘッドと対向するプラテンローラと、印刷ヘッド及びプラテンローラのうちの一方を保持するホルダと、筐体へ装着可能なカバーと、を備える印刷装置である。
【0007】
ホルダは、印刷ヘッド及びプラテンローラが印刷テープをニップするニップ位置と、印刷ヘッド及びプラテンローラが印刷テープをニップしない非ニップ位置とに移動可能である。カバーは、カセット装着口の少なくとも一部を覆う被覆位置から、印刷用カセットのカセット装着口への装着方向と平行な回転軸心を中心に回転することで筐体に係合した係合位置へ移動可能である。
【0008】
ホルダは、カバーの被覆位置から係合位置への移動に連動して、非ニップ位置からニップ位置に移動する。
【0009】
このような構成によれば、カバーがカセット装着口を覆った状態でプラテンローラが移動するため、プラテンローラが印刷テープに接触した状態でユーザーが印刷用カセットに触れるなどして印刷用カセットが動くことが抑制できる。その結果、プラテンローラのニップによる印刷テープの不具合を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】
図2Aは、
図1Aの印刷装置においてカバーが係合位置にある状態を示す模式的な斜視図であり、
図2Bは、
図2Aの印刷装置の模式的な右側面図であり、
図2Cは、
図2Aの印刷装置の模式的な左側面図である。
【
図5】
図5は、
図1Aの印刷装置においてカバーが被覆位置にある状態を示す模式的な斜視図であり、
図5Bは、
図5Aの印刷装置の模式的な右側面図であり、
図5Cは、
図5Aの印刷装置の模式的な左側面図である。
【
図7】
図7は、
図1Aの印刷装置においてカバーが係合位置にあるときの筐体の内部構造を示す模式的な斜視図である。
【
図9】
図9は、
図1Aの印刷装置においてカバーが被覆位置にあるときの筐体の内部構造を示す模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1A,1B及び
図2A,2B,2Cに示す印刷装置1は、印刷装置本体10と、印刷用カセット100とを備える。印刷装置1は、テープ状の印刷媒体に印刷を行う装置である。なお、
図2A,2B,2Cでは、カバー12は、爪12B以外の図示が省略されている。
【0012】
本実施形態では、プラテンローラ15の回転軸心と平行な方向を上下方向とし、上下方向と直交する方向のうち印刷装置本体10から印刷テープが排出される方向を前後方向とし、上下方向と前後方向との双方に直交する方向を左右方向とする。
【0013】
<印刷装置本体>
印刷装置本体10は、筐体11と、カバー12と、電源スイッチ25とを備える。また、
図3A,3Bに示すように、印刷装置本体10は、印刷ヘッド13と、ヘッド保持部14と、プラテンローラ15と、プラテンギア16と、駆動シャフト17と、ホルダ18と、接触部材19とを備える。
【0014】
(筐体)
筐体11は、
図2Aに示すように、カセット装着口11Aと、排出口11Bと、凹部11Cと、4つの溝11Dと、4つの係合部11Eとを有する。
【0015】
カセット装着口11Aは、筐体11の上面11Fに形成されている。筐体11は、カセット装着口11Aを介して(つまりカセット装着口11Aを貫通して)印刷テープを収容した印刷用カセット100が装着可能に構成されている。
【0016】
排出口11Bは、印刷テープを外部に排出する。排出口11Bは、筐体11の前面に形成されている。カセット装着口11A及び排出口11Bは、それぞれ、凹部11Cと連通している。
【0017】
凹部11Cは、印刷用カセット100の少なくとも一部が収容される。凹部11Cは、筐体11の内部に設けられている。凹部11Cは、印刷用カセット100の位置決め機能を有する。印刷用カセット100は、カセット装着口11Aの上方から凹部11Cの底に向かって下方に挿入されることで、凹部11Cに装着される。
【0018】
本実施形態の筐体11は、中心軸が上下方向と平行な円柱状である。つまり、筐体11は、上下方向に直交する円形の上面11F及び下面11G(
図1B参照)を有する。上面11Fの径と下面11Gの径とは同じである。ただし、上面11Fの径と下面11Gの径とは異なっていてもよい。つまり、筐体11は、円錐台状であってもよい。
【0019】
4つの溝11Dは、それぞれ、カバー12の1つの爪12Bが上方から挿入可能に構成されている。また、各溝11Dは、挿入された爪12Bが上面11Fの周方向に沿って移動可能なように構成されている。つまり、各溝11Dは、上下方向及び筐体11の周方向に延伸すると共に、上方に連通する開口を有する。
【0020】
4つの係合部11Eは、4つの溝11Dのいずれか1つと上下方向に重なるように配置されている。4つの係合部11Eの少なくとも1つは、溝11Dの内部において下方に突出する凸部11Iを有している。この凸部11Iは、カバー12の爪12Bと係合するように構成されている。本実施形態では、凸部11Iは1つの係合部11Eのみに設けられているが、凸部11Iは全ての係合部11Eに設けられてもよい。
【0021】
係合部11Eは、溝11Dの上方に連通する開口に対し、筐体11の周方向にずれた位置に配置されている。換言すれば、係合部11Eは、筐体11の周方向における溝11Dの一部を上方から塞いでいる。
【0022】
(カバー)
カバー12は、
図1Aに示すように、上面11Fを覆うように筐体11に装着可能である。カバー12は、
図4に示すように、上方の端部が閉塞され、下方の端部が開口した円筒体である。
【0023】
カバー12は、カバー12の中心を通る回転軸心L1周りに回転することで、筐体11への装着及び離脱がなされる。カバー12の回転軸心L1は、印刷用カセット100のカセット装着口11Aへの装着方向(つまり下方)と平行である。カバー12は、押圧部12Aと4つの爪12Bとを有する。
【0024】
カバー12は、カセット装着口11Aの少なくとも一部(本実施形態ではカセット装着口11Aの全体)を覆う被覆位置から、回転軸心L1を中心に回転することで、筐体11に係合した係合位置へ移動可能である。以下では、印刷装置本体10の上方から視て時計回りを第1回転方向D1とし、反時計回りを第2回転方向D2とする。
【0025】
押圧部12Aは、カバー12が係合位置、又は被覆位置と係合位置との間にあるときに印刷用カセット100を下方に押圧する。また、押圧部12Aは、カバー12が被覆位置から係合位置に移動する間、後述する印刷用カセット100の被押圧部111に常に接触する。
【0026】
押圧部12Aは、カバー12の天面12Cから下方に突出している。押圧部12Aは、カバー12の回転軸心L1と直交する方向(つまり、カバー12を筐体11に装着した状態での前後方向及び左右方向)に離れて配置されている。
【0027】
具体的には、押圧部12Aは、軸方向がカバー12の回転軸心L1と平行な円筒状であり、回転軸心L1を囲むように配置されている。つまり、押圧部12Aは、回転軸心L1とカバー12の径方向に離れて配置されている。
【0028】
4つの爪12Bは、カバー12が筐体11へ装着された状態において(つまり、カバー12が係合位置にあるときに)、それぞれ、筐体11の4つの係合部11Eのいずれか1つと上下方向に重なる。4つの爪12Bは、カバー12の回転方向(つまり周方向)に沿って等間隔に配置されている。
【0029】
カバー12が被覆位置にあるとき、
図5A,5B,5Cに示すように、カバー12の各爪12Bは、溝11Dにそれぞれ上方から挿入される。この被覆位置から、カバー12を第1回転方向D1に回転させると、各爪12Bは、溝11D内を第1回転方向D1に移動する。なお、
図5A,5B,5Cでは、
図2A,2B,2Cと同様、カバー12は、爪12B以外の図示が省略されている。
【0030】
各爪12Bは、第1回転方向D1への移動に伴って、溝11D内において係合部11Eと上下方向に重なる。具体的には、4つの爪12Bは、それぞれ、係合部11Eの凸部11Iが嵌まり込む凹部を有している。
【0031】
カバー12が係合位置にあるとき、
図2A,2B,2Cに示すように、少なくとも1つの爪12Bの凹部が凸部11Iを有する係合部11Eと上下方向に重なることで、爪12Bがこの係合部11Eに係合し、爪12Bの移動が規制される。これにより、カバー12が係合位置においてロックされる。
【0032】
(印刷ヘッド)
図3Aに示す印刷ヘッド13は、印刷用カセット100が保持する印刷テープに印刷するための装置である。
【0033】
印刷ヘッド13は、筐体11内に設けられ、筐体11の内部からカセット装着口11Aに近づくように延びている。具体的には、印刷ヘッド13は、厚み方向が左右方向と平行となるように配置された板形状を有する。
【0034】
印刷ヘッド13は、個別に発熱が制御される複数の発熱素子を有する。後述するプラテンローラ15によって印刷ヘッド13と重なる位置に搬送された印刷テープは、インクリボンを介して発熱素子が発熱した印刷ヘッド13に押し付けられる。これにより、インクリボンの表面に配置されたインクの一部が印刷テープに転写され、印刷テープに文字、記号等が印刷される。
【0035】
(ヘッド保持部)
ヘッド保持部14は、印刷ヘッド13を保持している。ヘッド保持部14は、厚み方向が左右方向と平行となるように配置された金属板であり、左側の板面に印刷ヘッド13が取り付けられている。ヘッド保持部14は、印刷ヘッド13の熱を放出するヒートシンクの機能を有する。
【0036】
(プラテンローラ)
プラテンローラ15は、印刷テープを印刷用カセット100内から外部に向けて搬送するためのローラである。プラテンローラ15の回転軸心は、上下方向と平行である。
【0037】
プラテンローラ15は、筐体11の内部において、印刷ヘッド13と対向するように配置されている。プラテンローラ15は、
図6Aに示す印刷ヘッド13と離間した位置と、
図3Aに示す印刷テープを印刷ヘッド13に押し当てる(つまりニップする)位置とに移動可能である。
【0038】
(プラテンギア)
プラテンギア16は、筐体11内に設けられ、プラテンローラ15に駆動連結されている。プラテンギア16は、
図6Bに示す後述する印刷用カセット100の出力ギア106と離間した位置と、
図3Bに示す出力ギア106と係合した位置とに移動可能である。本実施形態では、プラテンギア16の回転軸心は、プラテンローラ15の回転軸心と同一線上に配置されている。
【0039】
(駆動シャフト)
駆動シャフト17は、
図3Aに示すように、筐体11の内部に配置されている。駆動シャフト17の回転軸心は、上下方向と平行である。駆動シャフト17は、
図7に示すように、駆動源(例えばモータ)26によって回転軸心を中心に回転する。駆動源26の駆動力は、複数のギアを含む駆動伝達機構27によって駆動シャフト17に伝達される。
【0040】
図3Aに示すように、印刷用カセット100が筐体11に装着された状態で、駆動シャフト17は、印刷用カセット100の入力スプール105に挿入されると共に入力ギア107に係合し、入力スプール105と入力ギア107とを回転させる。
【0041】
(ホルダ)
ホルダ18は、印刷ヘッド13とプラテンローラ15との相対位置を変えることによって印刷テープのニップ状態を切り替えるための部材である。
【0042】
ホルダ18は、プラテンローラ15を保持すると共に、印刷ヘッド13及びプラテンローラ15が印刷テープをニップするニップ位置(
図3A参照)と、印刷ヘッド13及びプラテンローラ15が印刷テープをニップしない非ニップ位置(
図6A参照)とに移動可能に構成されている。
【0043】
具体的には、ホルダ18は、筐体11の内部において、左後方に設けられた軸部11Hに取り付けられている。ホルダ18は、筐体11に対し、上下方向と平行な回転軸心を中心に回動可能である。
【0044】
ホルダ18の前端部(つまり軸部11Hとは反対側の端部)18Aには、プラテンローラ15及びプラテンギア16が回転可能に取り付けられている。プラテンギア16は、ホルダ18が非ニップ位置にあるときに出力ギア106から離れ、ホルダ18がニップ位置にあるときに出力ギア106に係合する。
【0045】
図6Aに示すように、ホルダ18の非ニップ位置からニップ位置への移動方向(つまりホルダ18の回動方向)D0は、印刷用カセット100の筐体11への装着方向(つまりカセット装着口11Aへの挿入方向である下方)と交差している。ホルダ18の全体は、常に筐体11の外面よりも内側に位置している。
【0046】
ホルダ18は、カバー12の被覆位置から係合位置への移動に連動して、非ニップ位置からニップ位置に移動する。具体的には、ホルダ18は、接触部材19の運動によって非ニップ位置からニップ位置へ向かって移動する。
【0047】
ホルダ18は、筐体11の軸部11Hに巻回されると共に、ホルダ18に端部が連結されたねじりコイルバネ31によって、ニップ位置から非ニップ位置に向かって(つまり筐体11の外側に向かって)付勢されている。ホルダ18は、カバー12の係合位置から被覆位置への移動に連動してニップ位置から非ニップ位置に移動する。
【0048】
(接触部材)
接触部材19は、カバー12の4つの爪12Bの1つと接触し、ホルダ18をニップ位置へ向けて押圧する押圧位置(
図3B参照)とホルダ18を押圧しない非押圧位置(
図6B参照)との間で移動可能である。
【0049】
接触部材19は、カバー12の被覆位置から係合位置への移動(つまり、爪12Bの第1回転方向D1への移動)に連動して被押圧位置から押圧位置へ移動する。また、接触部材19は、カバー12の係合位置から被覆位置への移動(つまり、爪12Bの第2回転方向D2への移動)に連動して押圧位置から被押圧位置へ移動する。
【0050】
接触部材19は、回動部20と、変換部21とを有する。
回動部20は、
図7及び
図8Aに示すように、カバー12の回転方向に沿って延伸している。回動部20は、ホルダ18よりも筐体11の径方向外側に配置されている。
【0051】
回動部20は、爪12Bと共にカバー12の回転軸心L1を中心軸として回動する。具体的には、回動部20は、爪12Bの第1回転方向D1の移動に伴い、爪12Bに押されて
図6Bに示す位置から
図3Bに示す位置に向かって第1回転方向D1に移動する。
【0052】
変換部21は、回動部20及びホルダ18のそれぞれに対し、上下方向と平行な軸を中心に回動可能に連結されている。つまり、変換部21は、回動部20とホルダ18とを連結するリンクを構成している。
【0053】
変換部21は、
図8Bに示すように、回動部20に連結された基部21Aと、ホルダ18の一部を上下に挟むように配置された第1板部21B及び第2板部21Cとを有する。第1板部21B及び第2板部21Cは、それぞれ、基部21Aの上端部及び下端部からホルダ18に向かって延伸し、ホルダ18の前端部18Aに回動可能に連結されている。
【0054】
変換部21は、回動部20に接触した爪12Bの回動をホルダ18の非ニップ位置からニップ位置への移動に変換する。
図9及び
図10A,10Bに示すように、ホルダ18が非ニップ位置にあるときの変換部21における2つの回動中心軸を結ぶ直線(つまり、リンク方向)と前後方向との成す鋭角α(
図6B参照)は、ホルダ18がニップ位置にあるときの鋭角α(
図3B参照)よりも小さい。
【0055】
ホルダ18が非ニップ位置にあるとき、回動部20の第1方向D1の回動に伴う基部21Aの回動に連動して、第1板部21B及び第2板部21Cが筐体11の径方向内側に向かって移動する。これにより、ホルダ18の前端部18Aが径方向内側に押され、ホルダ18がニップ位置へ移動する。
【0056】
<電源スイッチ>
図1Bに示す電源スイッチ25は、印刷装置1の駆動源26への電力供給のオンオフを切り替えるスイッチである。電源スイッチ25は、筐体11のカセット装着口11Aが設けられた上面11Fとは反対側の下面11Gに設けられている。
【0057】
<印刷用カセット>
印刷用カセット100は、印刷媒体を格納している。印刷用カセット100は、印刷装置本体10に着脱可能である。印刷用カセット100の交換により、印刷媒体の補給、及び印刷媒体の種類(例えば、色、材質等)の変更ができる。
【0058】
印刷用カセット100は、
図11に示すように、ケース110と、第1ロール101と、第1供給スプール102と、第2ロール103と、第2供給スプール104と、入力スプール105と、出力ギア106と、入力ギア107と、アイドルギア108と、クラッチバネホルダ109とを備える。
【0059】
(ケース)
ケース110は、各ロール、各スプール、各ギアを収容している。ケース110は、上下方向に平行な辺と、前後方向に平行な辺と、左右方向に平行な辺とを有する直方体状である。ケース110は、第1部110Aと、第2部110Bと、第3部110Cと、第4部110Dとが上下方向に組み合わされることで構成されている。
【0060】
ケース110は、
図2Aに示すように、印刷用カセット100が印刷装置本体10に装着された状態でカバー12の押圧部12Aから押圧力を受ける被押圧部111を有する。被押圧部111は、カバー12の上面に配置されている。被押圧部111の上端は、筐体11の上端よりも上方に位置する。
【0061】
(第1ロール)
図11に示す第1ロール101は、印刷が行われる印刷テープを第1供給スプール102に巻回したものである。印刷テープの表面には、印刷装置本体10の印刷ヘッド13及びインクリボンによって印刷が行われる。
【0062】
(第1供給スプール)
第1供給スプール102は、回転軸心周りに回転可能である。第1供給スプール102は、印刷装置本体10のプラテンローラ15による印刷テープの搬送に伴って回転することで、印刷テープを印刷ヘッド13に供給する。
【0063】
(第2ロール)
第2ロール103は、印刷テープの印刷に用いられるインクリボンを第2供給スプール104に巻回したものである。
【0064】
インクリボンは、印刷テープと重ね合わされ、印刷ヘッド13による印刷に供される。印刷に使用されたインクリボンは、入力スプール105に巻き取られる。第2ロール103には、クラッチバネホルダ109に保持されたクラッチバネによって回転抵抗が付される。
【0065】
(第2供給スプール)
第2供給スプール104は、回転軸心周りに回転可能である。第2供給スプール104は、入力スプール105によるインクリボンの巻き取りに伴って回転することで、インクリボンを印刷ヘッド13に供給する。
【0066】
(入力スプール)
入力スプール105は、回転軸心周りに回転可能である。入力スプール105の内周面にはスプライン歯が設けられている。スプライン歯には、印刷装置本体10の駆動シャフト17が連結される。入力スプール105は、駆動シャフト17によって回転され、インクリボンを巻き取る。
【0067】
(出力ギア)
出力ギア106は、印刷テープを搬送するための駆動力を外部に出力するためのギアである。出力ギア106は、印刷装置本体10のプラテンギア16を介してプラテンローラ15に駆動力を伝達する。
【0068】
出力ギア106の一部は、ケース110の外部に位置している。出力ギア106は、印刷用カセット100が印刷装置本体10に装着された状態で、プラテンギア16に係合する。
【0069】
(入力ギア)
入力ギア107は、アイドルギア108を介して出力ギア106と間接的に係合し、駆動力を出力ギア106に伝達する。入力ギア107には、印刷装置本体10の駆動源26からの駆動力が入力される。
【0070】
入力ギア107は、外歯ギア107Aと、外歯ギア107Aに固定されると共に、内周面にスプライン歯を有する円筒状のスプール107Bとを有する。外歯ギア107Aは、スプール107Bに入力された駆動力によってスプール107Bと一体回転する。
【0071】
入力ギア107の回転軸心は、入力スプール105の中空部を通る。つまり、駆動シャフト17が入力スプール105と入力ギア107とに同時に挿通される。その結果、入力ギア107は、入力スプール105と直接連結はされていないが、入力スプール105と共通の駆動源26(つまり駆動シャフト17)によって回転される。
【0072】
(アイドルギア)
アイドルギア108は、入力ギア107と出力ギア106とに駆動連結され(つまり係合し)、入力ギア107に入力された駆動力を出力ギア106に伝達する。
【0073】
アイドルギア108は、入力ギア107に係合した第1ギア108Aと、出力ギア106に係合した第2ギア108Bとが同軸上に並んで配置された段ギアである。第2ギア108Bは、第1ギア108Aよりも径が小さい。
【0074】
印刷用カセット100が印刷装置本体10に装着された状態で、駆動シャフト17が入力ギア107に係合すると共にプラテンギア16が出力ギア106に係合する。印刷用カセット100が装着された状態で駆動シャフト17により入力ギア107が回転されることで出力ギア106が回転され、出力ギア106の回転によりプラテンギア16が回転し、プラテンギア16の回転によりプラテンローラ15が回転する。
【0075】
<印刷用カセットの脱着>
以下、印刷装置本体10への印刷用カセット100の装着手順について説明する。まず、カバー12を筐体11から取り外した状態で、印刷用カセット100をカセット装着口11Aに上方から挿入する。
【0076】
この状態(つまり、カバー12が被覆位置及び係合位置のどちらでもない状態)では、
図9に示すように、接触部材19は、非押圧位置にある。また、ホルダ18は非ニップ位置にある。
【0077】
印刷用カセット100の挿入後、
図5Aに示すように4つの爪12Bをそれぞれ筐体11の溝11Dに上方から挿入させつつ、カセット装着口11Aを覆う被覆位置にカバー12を配置する。この時点では、接触部材19は非押圧位置にある。
【0078】
次に、カバー12を第1方向D1に回転させることで、
図2Aに示す係合位置まで4つの爪12Bをそれぞれ溝11D内で第1方向D1に前進させる。このとき、爪12Bの1つが接触部材19の回動部20を第1方向D1に回動させる。
【0079】
カバー12を第1方向D1に回転させている間、押圧部12Aの一部が印刷用カセット100の被押圧部111に接触し続ける。そのため、印刷用カセット100は、カバー12が被覆位置から係合位置に移動する間、及び係合位置に移動した後において、下方に押圧され続ける。
【0080】
回動部20の回動によって変換部21が回転することで、ホルダ18がニップ位置に向けて押圧され始める。爪12Bが係合位置に到達すると、
図7に示すように、接触部材19が押圧位置に移動すると共に、ホルダ18がニップ位置に移動する。
【0081】
爪12Bの筐体11への係合によって、接触部材19が押圧位置に保持されるため、ホルダ18もニップ位置に保持される。これにより、印刷用カセット100の印刷テープが印刷ヘッド13及びプラテンローラ15によってニップされると共にプラテンギア16と出力ギア106とが係合した状態が保持される。その結果、印刷装置1が印刷可能状態となる。
【0082】
次に、印刷装置本体10からの印刷用カセット100の脱離手順について説明する。まず、カバー12を第2方向D2に回転させることで、
図2Aに示す係合位置から4つの爪12Bを後退させる。
【0083】
これにより、接触部材19を介した爪12Bによるホルダ18の押圧が解除される。その結果、ホルダ18は付勢力によって、非ニップ位置に移動する。ホルダ18の非ニップ位置への移動に伴い、接触部材19は非押圧位置に移動する。
【0084】
爪12Bを溝11Dから引き抜き可能な位置まで後退させた後、カバー12を上方に持ち上げることで、カバー12が筐体11から取り外される。カバー12の取り外し後、印刷用カセット100をカセット装着口11Aから上方に引き出すことにより、印刷用カセット100が印刷装置本体10から脱離される。
【0085】
[1-2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)カバー12がカセット装着口11Aを覆った状態でプラテンローラ15が移動するため、プラテンローラ15が印刷テープに接触した状態でユーザーが印刷用カセット100に触れるなどして印刷用カセット100が動くことが抑制できる。その結果、プラテンローラ15のニップによる印刷テープの不具合を抑制できる。
【0086】
(1b)カバー12の爪12Bの回動によってホルダ18を非ニップ位置からニップ位置へ移動させる接触部材19を備えることで、カバー12のロック操作と、ホルダ18の移動操作とを同時に行うことができる。
【0087】
(1c)カバー12が回転方向に沿って等間隔に配置された複数の爪12Bを有することで、カバー12の筐体11に対する向き合わせが容易になる。そのため、カバー12の装着の手間が低減される。
【0088】
(1d)カバー12が印刷用カセット100を装着方向に押圧する押圧部12Aを有することで、印刷用カセット100が規定の装着位置に保持された状態でプラテンローラ15をニップさせることができる。そのため、ニップ後に印刷用カセット100が移動することを抑制できる。
【0089】
(1e)押圧部12Aが円筒状であることで、筐体11への取付時のカバー12の回転姿勢に関わらず、押圧部12Aを印刷用カセット100の被押圧部111に接触させることができる。
【0090】
(1f)筐体11が円柱状又は円錐台状であり、印刷用カセット100が直方体状であることで、カセット装着口11Aへ印刷用カセット100が誤った向きで挿入されることを抑制できる。
【0091】
(1g)電源スイッチ25が筐体11の下面11Gに設けられていることで、印刷装置1の意匠性を高めることができる。また、筐体11が転倒した際の電源スイッチ25の誤動作を抑制できる。
【0092】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0093】
(2a)上記実施形態の印刷装置において、カバーは必ずしもカセット装着口の全体を覆う必要はなく、カセット装着口の一部を覆ってもよい。また、カバーは必ずしも押圧部を有しなくてもよい。
【0094】
(2b)上記実施形態の印刷装置において、接触部材は必ずしも回動部と変換部とで構成されなくてもよい。接触部材は、1つの独立した部品で構成されてもよいし、3つ以上の部品を組み合わせて構成されてもよい。
【0095】
(2c)上記実施形態の印刷装置において、ホルダは必ずしもカバーの爪と連動して移動しなくてもよい。例えば、ホルダは、カバーにおける爪以外の部位の移動と連動してニップ位置に移動してもよい。
【0096】
(2d)上記実施形態の印刷装置において、カバーが有する爪の数は4に限定されない。つまり、カバーは、3以下又は5以上の爪を有してもよい。また、複数の爪は必ずしもカバーの回転方向に沿って等間隔に配置されなくてもよい。
【0097】
(2f)上記実施形態の印刷装置において、筐体は円柱状又は円錐台状に限定されない。つまり、筐体は角柱状又は角錐台状であってもよい。
(2g)上記実施形態の印刷装置において、ホルダは、プラテンローラの代わりに印刷ヘッドを保持してもよい。つまり、印刷装置は、筐体に固定されたプラテンローラに対して印刷ヘッドを移動させることで印刷テープをニップするように構成されてもよい。
【0098】
(2h)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0099】
1…印刷装置、10…印刷装置本体、11…筐体、11A…カセット装着口、
11B…排出口、11C…凹部、11D…溝、11E…係合部、11F…上面、
11G…下面、11H…軸部、12…カバー、12A…押圧部、12B…爪、
12C…天面、13…印刷ヘッド、14…ヘッド保持部、15…プラテンローラ、
16…プラテンギア、17…駆動シャフト、18…ホルダ、19…接触部材、
20…回動部、21…変換部、21A…基部、21B,21C…板部、
25…電源スイッチ、31…ねじりコイルバネ、100…印刷用カセット、
101…第1ロール、102…第1供給スプール、103…第2ロール、
104…第2供給スプール、105…入力スプール、106…出力ギア、
107…入力ギア、108…アイドルギア、110…ケース、111…被押圧部。