(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用同期装置
(51)【国際特許分類】
F16D 23/06 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F16D23/06 C
(21)【出願番号】P 2019201838
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2018228572
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 真幸
(72)【発明者】
【氏名】吉村 孝広
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116074(JP,A)
【文献】特開2018-031479(JP,A)
【文献】特開2020-060217(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 23/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に円錐状外周摩擦面を有するとともに内周面に円錐状内周摩擦面を有するアウタリングと、外周面に円錐状外周摩擦面を有するインナリングと、前記アウタリングの前記円錐状内周摩擦面に摺接可能な円錐状外周摩擦面を有するとともに前記インナリングの前記円錐状外周摩擦面に摺接可能な円錐状内周摩擦面を有するミドルリングと、を備え、共通な回転軸線まわりに相対回転する第1回転部材と第2回転部材とを同期させる車両用同期装置であって、
前記アウタリングおよび前記インナリングは、前記回転軸線方向に突き出す複数の爪片をそれぞれ有しており、
前記アウタリングおよび前記インナリングが前記第1回転部材および前記第2回転部材のうちの一方の回転部材に対して動力伝達可能且つ前記アウタリングおよび前記インナリングが前記一方の回転部材に対して前記回転軸線方向に移動可能に、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持するホルダを備え、
前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片をそれぞれ挿入可能とし且つ外周側の側面から前記回転軸線までの径寸法が前記回転軸線まわりに段階的または連続的に変化する円弧状の長穴を複数有しており、
前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片の外周面が前記複数の長穴の外周側の側面にそれぞれ当接することによって、前記インナリングを前記インナリングの爪片が前記長穴から脱落不能に保持する
ことを特徴とする車両用同期装置。
【請求項2】
前記長穴の外周側の側面は、前記長穴の外周側の側面から前記回転軸線までの径寸法が前記回転軸線まわりに段階的に変化するように形成されており、
前記長穴には、前記径寸法が前記インナリングの爪片を挿入することができる大きさに予め定められた爪挿入穴部と、前記径寸法が前記インナリングの爪片を脱落不能に保持することができる大きさに予め定められた爪保持穴部と、が備えられ、
前記爪保持穴部の前記径寸法は、前記インナリングの爪片の先端に向かうほど段階的または連続的に大きくなる
ことを特徴とする請求項1の車両用同期装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウタリングと、インナリングと、ミドルリングと、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持するホルダと、を備える車両用同期装置に関して、前記車両用同期装置を車両へ組み付けるときの組付性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
(a)外周面に円錐状外周摩擦面を有するとともに内周面に円錐状内周摩擦面を有するアウタリングと、(b)外周面に円錐状外周摩擦面を有するインナリングと、(c)前記アウタリングの前記円錐状内周摩擦面に摺接可能な円錐状外周摩擦面を有するとともに前記インナリングの前記円錐状外周摩擦面に摺接可能な円錐状内周摩擦面を有するミドルリングと、を備え、共通な回転軸線まわりに相対回転する第1回転部材および第2回転部材を同期させる車両用同期装置が知られている。例えば、特許文献1に記載された車両用同期装置がそれである。上記特許文献1では、前記アウタリングおよび前記インナリングは、リングギヤの内周面と入力軸の外周面との間に配設された状態で、それぞれ入力軸にスプライン嵌合されており、前記アウタリングおよび前記インナリングは、それぞれ、前記入力軸に対して動力伝達可能且つ前記入力軸に対して前記入力軸が回転する回転軸線方向に移動可能に、前記入力軸に設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような車両用同期装置では、前記アウタリングおよび前記インナリングが前記入力軸に対して動力伝達可能且つ前記アウタリングおよび前記インナリングが前記入力軸に対して前記回転軸線方向に移動可能に、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持するホルダを前記入力軸に設けることが考えられている。例えば、前記ホルダを備える車両用同期装置では、前記アウタリングに形成されたシンクロアウタ爪(爪片)が前記ホルダに形成された第1係止部に係止され、且つ、前記インナリングに形成されたシンクロインナ爪(爪片)が前記ホルダに形成された第2係止部に係止されることによって、前記ホルダは、前記アウタリングおよび前記インナリングが前記入力軸に対して動力伝達可能且つ前記アウタリングおよび前記インナリングが前記入力軸に対して前記回転軸線方向に移動可能に、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持する。
【0005】
しかしながら、前記ホルダを備える車両用同期装置では、その車両用同期装置を車両に組み付けるときにおいて、前記アウタリングに形成された前記シンクロアウタ爪が前記ホルダに形成された前記第1係止部に係止され、且つ、前記インナリングに形成された前記シンクロインナ爪が前記ホルダに形成された前記第2係止部に係止されるように、前記アウタリングと前記ホルダとの位置を合わせつつ、前記インナリングと前記ホルダとの位置を合わせて、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ホルダに組み付ける必要があるので、前記車両用同期装置を前記車両に組み付ける組付性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、アウタリングおよびインナリングをホルダに組み付けるときの組付性を向上させることができる車両用同期装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の要旨とするところは、(a)外周面に円錐状外周摩擦面を有するとともに内周面に円錐状内周摩擦面を有するアウタリングと、外周面に円錐状外周摩擦面を有するインナリングと、前記アウタリングの前記円錐状内周摩擦面に摺接可能な円錐状外周摩擦面を有するとともに前記インナリングの前記円錐状外周摩擦面に摺接可能な円錐状内周摩擦面を有するミドルリングと、を備え、共通な回転軸線まわりに相対回転する第1回転部材と第2回転部材とを同期させる車両用同期装置であって、(b)前記アウタリングおよび前記インナリングは、前記回転軸線方向に突き出す複数の爪片をそれぞれ有しており、(c)前記アウタリングおよび前記インナリングが前記第1回転部材および前記第2回転部材のうちの一方の回転部材に対して動力伝達可能且つ前記アウタリングおよび前記インナリングが前記一方の回転部材に対して前記回転軸線方向に移動可能に、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持するホルダを備え、(d)前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片をそれぞれ挿入可能とし且つ外周側の側面から前記回転軸線までの径寸法が前記回転軸線まわりに段階的または連続的に変化する円弧状の長穴を複数有しており、(e)前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片の外周面が前記複数の長穴の外周側の側面にそれぞれ当接することによって、前記インナリングを前記インナリングの爪片が前記長穴から脱落不能に保持することにある。
【0008】
また、第2発明の要旨とするところは、前記第1発明において、(a)前記長穴の外周側の側面は、前記長穴の外周側の側面から前記回転軸線までの径寸法が前記回転軸線まわりに段階的に変化するように形成されており、(b)前記長穴には、前記径寸法が前記インナリングの爪片を挿入することができる大きさに予め定められた爪挿入穴部と、前記径寸法が前記インナリングの爪片を脱落不能に保持することができる大きさに予め定められた爪保持穴部と、が備えられ、(c)前記爪保持穴部の前記径寸法は、前記インナリングの爪片の先端に向かうほど段階的または連続的に大きくなることにある。
【発明の効果】
【0009】
第1発明の車両用同期装置によれば、(b)前記アウタリングおよび前記インナリングは、前記回転軸線方向に突き出す複数の爪片をそれぞれ有しており、(c)前記アウタリングおよび前記インナリングが前記第1回転部材および前記第2回転部材のうちの一方の回転部材に対して動力伝達可能且つ前記アウタリングおよび前記インナリングが前記一方の回転部材に対して前記回転軸線方向に移動可能に、前記アウタリングおよび前記インナリングを保持するホルダを備え、(d)前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片をそれぞれ挿入可能とし且つ外周側の側面から前記回転軸線までの径寸法が前記回転軸線まわりに段階的または連続的に変化する円弧状の長穴を複数有しており、(e)前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片の外周面が前記複数の長穴の外周側の側面にそれぞれ当接することによって、前記インナリングを前記インナリングの爪片が前記長穴から脱落不能に保持する。このため、前記ホルダは、前記インナリングの前記複数の爪片の外周面が前記複数の長穴の外周側の側面にそれぞれ当接することによって、前記インナリングを前記インナリングの爪片が前記長穴から脱落不能に保持することができるので、前記ホルダに前記インナリングを保持した状態で、前記ホルダを前記アウタリングに組み付けることができる。これによって、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ホルダに組み付けるときに、前記インナリングと前記ホルダとの位置を合わせる必要がなくなり、前記アウタリングと前記ホルダとの位置を合わせるだけで、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ホルダに組み付けられるので、例えば、前記アウタリングと前記ホルダとの位置を合わせつつ前記インナリングと前記ホルダとの位置を合わせて、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ホルダに組み付ける場合に比べて、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ホルダに組み付けるときの組付性が向上する。
【0010】
第2発明の車両用同期装置によれば、前記爪保持穴部の前記径寸法は、前記インナリングの爪片の先端に向かうほど段階的または連続的に大きくなっているので、例えば前記インナリングの製造時に前記爪片の外周面と前記回転軸線までの径寸法が比較的大きくばらついたとしても、前記爪保持穴部において前記長穴の外周側の側面に前記インナリングの爪片の外周面が好適に当接して、前記爪保持穴部で前記インナリングの爪片を前記長穴から脱落不能に保持することができる。
【0011】
ここで、好適には、(a)前記長穴の内周面には、前記長穴の外周側の側面と前記長穴の内周側の側面とを連結する一対の連結面が形成されており、(b)前記一対の連結面の一方は、前記アウタリングおよび前記インナリングと前記ミドルリングとを当接させて前記第1回転部材の回転速度と前記第2回転部材の回転速度とを同期させるときに前記インナリングの爪片を受け止め、(c)前記一対の連結面の他方は、前記アウタリングおよび前記インナリングと前記ミドルリングとが当接している状態から前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ミドルリングから引き離すときに前記インナリングの爪片を受け止める。これによって、前記第1回転部材の回転速度と前記第2回転部材の回転速度とを同期させるとき、または、前記アウタリングおよび前記インナリングを前記ミドルリングから引き離すときに、前記インナリングの爪片が前記一対の連結面に好適に受け止められる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明が好適に適用された四輪駆動車両の構成を概略的に説明する骨子図である。
【
図2】
図1の四輪駆動車両に設けられた第2断接装置の同期装置の構成を説明する断面図である。
【
図4】インナリングをシンクロホルダに組み付ける組付方法を説明する斜視図であり、インナリングに形成されたシンクロインナ爪をシンクロホルダに形成された長穴に挿入するときの状態を示す図である。
【
図5】インナリングをシンクロホルダに組み付ける組付方法を説明する斜視図であり、シンクロインナ爪が長穴の爪挿入穴部に挿入された状態を示す図である。
【
図8】インナリングをシンクロホルダに組み付ける組付方法を説明する斜視図であり、シンクロインナ爪が長穴の爪挿入穴部から爪保持穴部に移動させられた状態を示す図である。
【
図11】本実施例の同期装置を後輪用駆動力配分装置に組み付ける組付方法を説明する図である。
【
図12】本実施例とは異なる同期装置を使用した場合において、その同期装置を後輪用駆動力配分装置に組み付ける組付方法を説明する図である。
【
図13】本発明の他の実施例(実施例2)の同期装置を説明する図である。
【
図14】実施例1の同期装置において、アウタリングおよびインナリングとミドルリングとを当接させてリングギヤの回転速度と円筒部材の回転速度とを同期させるときの状態と、アウタリングおよびインナリングとミドルリングとが当接している状態からアウタリングおよびインナリングをミドルリングから引き離すときの状態と、を示す図である。
【
図15】実施例1の同期装置において、インナリングの製造時にシンクロインナ爪の外周面から回転軸線までの径寸法が比較的大きくばらついて例えば径寸法が比較的大きなインナリングが製造され、シンクロインナ爪が第2連結面に受け止められる前に長穴の外周側の側面で受け止められた状態を示す図である。
【
図16】本発明の他の実施例(実施例3)の同期装置に設けられたシンクロホルダを示す図である。
【
図19】
図17のシンクロホルダの長穴の周辺部分を拡大した拡大図である。
【
図20】本発明の他の実施例(実施例4)の同期装置に設けられたシンクロホルダを示す図である。
【
図21】
図20のXXI-XXI視断面図であり、
図20のシンクロホルダの長穴に備えられた第1爪保持穴部および第2爪保持穴部の断面を示す断面図である。
【
図22】本発明の他の実施例(実施例5)の同期装置に設けられたシンクロホルダを説明する図であり、シンクロホルダの長穴に備えられた第1爪保持穴部および第2爪保持穴部の断面を示す断面図である。
【
図23】本発明の他の実施例(実施例6)の同期装置に設けられたシンクロホルダを説明する図であり、シンクロホルダの長穴に備えられた第1爪保持穴部および第2爪保持穴部の断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例を、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明が好適に適用された四輪駆動車両10の構成を概略的に説明する骨子図である。
図1において、四輪駆動車両10は、エンジン12を駆動力源とし、エンジン12からの駆動力を主駆動輪に対応する左右一対の前輪14L、14Rに伝達する第1の動力伝達経路と、四輪駆動状態においてエンジン12の駆動力の一部を副駆動輪に対応する左右一対の後輪16L、16Rに伝達する第2の動力伝達経路と、を備えているFFベースの四輪駆動装置を有している。
【0015】
四輪駆動車両10が二輪駆動状態のときには、エンジン12から自動変速機18を介して伝達された駆動力が、前輪用駆動力配分装置20を通して左右一対の前輪14L、14Rへ伝達される。この二輪駆動状態のときには、少なくとも第1断接装置22の第1噛合式クラッチ24が解放され、トランスファ26、プロペラシャフト28、後輪用駆動力配分装置30、および、左右一対の後輪16L、16Rへは、エンジン12から駆動力が伝達されない。しかし、四輪駆動車両10が四輪駆動状態のときには、第1噛合式クラッチ24および第2断接装置32の第2噛合式クラッチ34が共に係合されて、上記トランスファ26、プロペラシャフト28、後輪用駆動力配分装置30、および、左右一対の後輪16L、16Rへエンジン12から駆動力が伝達される。
【0016】
後輪用駆動力配分装置30は、
図1および
図2に示すように、リングギヤ(第1回転部材)36と、円筒部材(第2回転部材)38と、第2断接装置32と、差動装置40と、を備えている。リングギヤ36は、プロペラシャフト28の後輪16L、16R側の端部に電磁カップリング42を介して動力伝達可能に連結されたドライブピニオン44と噛み合う。差動装置40は、後輪車軸46L、46R(
図1参照)を介して後輪16L、16Rに動力伝達可能に連結されており、差動装置40に備えられたデフケース40aには、そのデフケース40aが回転する回転軸線C方向に円筒状に突き出された円筒突部40b(
図2参照)と、その円筒突部40bの先端部に形成された角スプライン歯40cと、が備えられている。円筒部材38には、その円筒部材38の後輪16R側の端部38aにデフケース40aの円筒突部40bに形成された角スプライン歯40cに噛み合い可能な角スプライン歯38bが形成されており、円筒部材38は、その円筒部材38に形成された角スプライン歯38bがデフケース40aの円筒突部40bに形成された角スプライン歯40cに噛み合うことによって、デフケース40aの円筒突部40bに動力伝達可能に連結されている。第2断接装置32は、リングギヤ36と円筒部材38すなわちデフケース40aとの間の動力伝達経路を選択的に切断または接続する。後輪用駆動力配分装置30では、第2断接装置32によってリングギヤ36とデフケース40aとの間の動力伝達経路が接続されると、第1噛合式クラッチ24および電磁カップリング42がそれぞれ係合している場合において、エンジン12から伝達される駆動力の一部が、プロペラシャフト28を介して左右一対の後輪16L、16Rへ出力されるようになっている。
【0017】
円筒状のリングギヤ36は、
図2に示すように、例えば斜歯又はハイポイドギヤが形成された傘歯車であり、リングギヤ36の内周部から後輪16L側に略円筒状に突出する軸部36aが形成されている。また、円筒状のリングギヤ36は、例えば第2断接装置32等を収容するケース48(
図1参照)内に設けられた軸受50を介してケース48により軸部36aが支持されることによって回転軸線Cまわりに回転可能に片持状に支持されている。
【0018】
円筒状の円筒部材38は、
図1および
図2に示すように、その円筒部材38の後輪16L側の端部がケース48内に設けられた軸受52(
図1参照)を介してケース48に支持され、且つ、その円筒部材38の後輪16R側の端部38aがデフケース40aの円筒突部40bの内側に嵌合された円筒状連結部材54に支持されることによって、円筒部材38が回転軸線Cまわりに回転可能すなわち円筒部材38がリングギヤ36と同心に相対回転可能に支持されている。すなわち、円筒部材38とリングギヤ36とは、共通な回転軸線Cまわりに回転する。
【0019】
第2噛合式クラッチ34には、
図2に示すように、リングギヤ36に形成された複数の噛合歯36bと、噛合歯36bとの噛み合いが可能な複数の噛合歯56aが形成された円筒状の可動スリーブ56と、が備えられている。なお、可動スリーブ56には、円筒部材38すなわちデフケース40aの円筒突部40bに対して回転軸線Cまわりの相対回転が不能且つデフケース40aの円筒突部40bに対して回転軸線C方向の相対移動が可能に、デフケース40aの円筒突部40bに形成された外周スプライン歯40dに噛み合う内周噛合歯56bが形成されている。また、可動スリーブ56は、第2断接装置32に設けられた移動装置58(
図1参照)によって可動スリーブ56が回転軸線C方向に移動することにより、可動スリーブ56の噛合歯56aが選択的にリングギヤ36の噛合歯36bに噛み合うようになっている。
【0020】
移動装置58は、可動スリーブ56を噛合位置と非噛合位置とに選択的に回転軸線C方向に移動させて、第2噛合式クラッチ34を選択的に係合させる。なお、前記噛合位置は、可動スリーブ56が回転軸線C方向に移動し可動スリーブ56の噛合歯56aがリングギヤ36の噛合歯36bと噛み合う位置である。また、前記非噛合位置は、可動スリーブ56が回転軸線C方向に移動し可動スリーブ56の噛合歯56aがリングギヤ36の噛合歯36bと噛み合わない位置である。
【0021】
移動装置58は、
図1に示すように、電磁アクチュエータ60と、ラチェット機構62と、を備えている。なお、電磁アクチュエータ60には、例えば、ボールカム64と、電磁コイル66と、補助クラッチ68等と、が備えられている。電磁アクチュエータ60は、円筒部材38すなわちデフケース40aが回転している状態において、図示しない電子制御装置から電磁コイル66に駆動電流が供給されると、電磁コイル66に補助クラッチ68の可動片68aが吸着されることによりボールカム64で第1カム部材64aと第2カム部材64bとが相対回転して、第1カム部材64aに一体的に設けられた第1ピストン70を回転軸線C方向においてスプリング72の付勢力に抗して後輪16R側へ移動、すなわち第1ピストン70を
図2に示す矢印F1方向へ移動させる。また、電磁アクチュエータ60では、図示しない電子制御装置から電磁コイル66に供給されていた駆動電流の供給が停止させられると、電磁コイル66に可動片68aが吸着されなくなり第2カム部材64bが球状転動体64cを介して第1カム部材64aと連れまわって、第1ピストン70が、スプリング72の付勢力によって後輪16L側へ移動する。なお、スプリング72は、可動スリーブ56を前記非噛合位置から前記噛合位置に向けて常時付勢、すなわち可動スリーブ56を回転軸線C方向において後輪16L側に常時付勢している。
【0022】
ラチェット機構62は、
図2に示すように、環状の第1ピストン70と、環状の第2ピストン74と、複数の掛止歯すなわち第1掛止歯76aおよび第2掛止歯76bを周方向に複数有する環状のホルダ76と、を備えている。第1ピストン70は、電磁コイル66が可動片68aを吸着したり可動片68aを吸着しないことによりボールカム64によって所定のストロークで回転軸線C方向に往復移動させられる。また、第2ピストン74は、第1ピストン70の回転軸線C方向の往復移動によりスプリング72の付勢力に抗して可動スリーブ56を前記非噛合位置へ移動させる。また、ホルダ76は、第1掛止歯76aおよび第2掛止歯76bのいずれか1つで第1ピストン70により移動させられた第2ピストン74を掛け止める。
【0023】
第2断接装置32では、電磁アクチュエータ60によって、第1ピストン70が回転軸線C方向において後輪16R側、後輪16L側へ例えば1回往復移動させられると、
図2に示すように、ラチェット機構62を介して可動スリーブ56が前記非噛合位置へスプリング72の付勢力に抗して移動させられて、第2ピストン74がホルダ76の第1掛止歯76aに掛け止められる。また、第2断接装置32では、電磁アクチュエータ60によって、第1ピストン70が例えば2回往復移動、すなわち可動スリーブ56が前記非噛合位置に配置された状態でさらに第1ピストン70が1回往復移動させられると、第2ピストン74がホルダ76の第1掛止歯76aから掛け外されて第2ピストン74がホルダ76の第2掛止歯76bに掛け止められると、可動スリーブ56がスプリング72の付勢力によって前記噛合位置へ移動させられる。
【0024】
第2断接装置32には、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ34がそれぞれ解放された状態において共通な回転軸線Cまわりに相対回転するリングギヤ36と円筒部材38すなわちデフケース40aの円筒突部40bとを第2噛合式クラッチ34の噛み合いに先立って同期させる同期装置(車両用同期装置)78が備えられている。同期装置78は、リングギヤ36の内周面と円筒部材38の外周面との間の空間に設けられている。また、同期装置78には、
図2に示すように、外周面に円錐状の外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)80aを有するとともに内周面に円錐状の内周摩擦面(円錐状内周摩擦面)80bを有する環状のアウタリング80と、外周面に円錐状の外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)82aを有する環状のインナリング82と、アウタリング80の内周摩擦面80bに摺接可能な円錐状の外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)84aを有するとともにインナリング82の外周摩擦面82aに摺接可能な円錐状の内周摩擦面(円錐状内周摩擦面)84bを有する環状のミドルリング84と、が備えられている。なお、
図2に示すように、同期装置78においてアウタリング80は最も外周側に配置されており、リングギヤ36の内周部には、アウタリング80の外周摩擦面80aに向かい合い外周摩擦面80aに摺接可能な円錐状の内周摩擦面36cが形成されている。また、同期装置78においてインナリング82は最も内周側に配置されており、ミドルリング84はインナリング82とアウタリング80との間に配置されている。なお、
図2に示すように、アウタリング80に形成された外周摩擦面80aおよび内周摩擦面80bと、インナリング82に形成された外周摩擦面82aと、ミドルリング84に形成された外周摩擦面84aおよび内周摩擦面84bと、は、それぞれ、回転軸線C方向において後輪16L側から後輪16R側に向かうに連れて回転軸線Cに接近するように傾斜するテーパー状の面である。
【0025】
また、同期装置78には、アウタリング80およびインナリング82が円筒部材38すなわちデフケース40aの円筒突部40bに対して動力伝達可能且つアウタリング80およびインナリング82が円筒部材38に対して回転軸線C方向に移動可能に、アウタリング80およびインナリング82を保持するシンクロホルダ(ホルダ)86が備えられている。
【0026】
図2および
図3に示すように、アウタリング80は、回転軸線C方向においてシンクロホルダ86側に突き出す複数すなわち本実施例では3つのシンクロアウタ爪(爪片)80cを一体的に有している。また、インナリング82は、回転軸線C方向においてシンクロホルダ86側に突き出す複数すなわち本実施例では3つのシンクロインナ爪(爪片)82bを一体的に有している。また、ミドルリング84は、回転軸線C方向においてシンクロホルダ86側とは反対側に突き出す複数すなわち本実施例では3つのシンクロミドル爪84cを一体的に有している。なお、ミドルリング84は、シンクロミドル爪84cがリングギヤ36の内周部に形成された図示しない係止部に係止されることにより、リングギヤ36に対して動力伝達可能且つリングギヤ36に対して回転軸線C方向に移動可能にリングギヤ36に設けられている。
【0027】
シンクロホルダ86は、
図3に示すように、円板状に形成されており、そのシンクロホルダ86の内周部86aには、円筒部材38の外周面に形成された外周スプライン歯38cにスプライン嵌合する複数の内周歯86bが形成されている。また、シンクロホルダ86には、そのシンクロホルダ86の外周側に突き出した3つの突部86cと、その突部86cと内周部86aとの間に貫通し、シンクロホルダ86の周方向に伸びる円弧状の3つの長穴86dと、が形成されている。
【0028】
シンクロホルダ86は、
図2に示すように、そのシンクロホルダ86の内周歯86bに円筒部材38の外周スプライン歯38cがスプライン嵌合することによって、円筒部材38に対して動力伝達可能且つ円筒部材38に対して回転軸線C方向の移動可能に、円筒部材38に設けられている。また、シンクロホルダ86は、スプリング72の付勢力によって可動スリーブ56と第2ピストン74との間に挟まれている。すなわち、シンクロホルダ86は、スプリング72の付勢力によって可動スリーブ56に一体的に固定されている。
【0029】
シンクロホルダ86の突部86cには、
図3に示すように、それぞれ、回転軸線Cまわりに回転するアウタリング80のシンクロアウタ爪80cを係止する第1係止部86eが形成されている。また、シンクロホルダ86の長穴86dの周辺部分の一部には、それぞれ、回転軸線Cまわりに回転するインナリング82のシンクロインナ爪82bを係止する第2係止部86fが形成されている。なお、アウタリング80のシンクロアウタ爪80cがシンクロホルダ86の第1係止部86eに係止されることによって、シンクロホルダ86は、アウタリング80が円筒部材38に対して動力伝達可能且つアウタリング80が円筒部材38に対して回転軸線C方向に移動可能に、アウタリング80を保持する。また、インナリング82のシンクロインナ爪82bがシンクロホルダ86の第2係止部86fに係止されることによって、シンクロホルダ86は、インナリング82が円筒部材38に対して動力伝達可能且つインナリング82が円筒部材38に対して回転軸線C方向に移動可能に、インナリング82を保持する。
【0030】
以上のように構成された同期装置78では、第1噛合式クラッチ24および第2噛合式クラッチ34がそれぞれ解放され円筒部材38すなわちデフケース40aが回転している場合において、電磁コイル66に駆動電流が供給されて、可動スリーブ56がスプリング72の付勢力に抗して前記非噛合位置を超えて後輪16R側に移動させられると、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とが当接すなわち摩擦係合して、円筒部材38の回転速度とリングギヤ36の回転速度とが同期させられる。なお、
図2で1点鎖線で示す可動スリーブ56は、可動スリーブ56がスプリング72の付勢力に抗して前記非噛合位置を超えて後輪16R側に移動させられたときの可動スリーブ56を示すものである。
【0031】
図3に示すように、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bを挿入可能であり、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dは、それぞれ、その長穴86dの外周側の側面86gから回転軸線Cまでの径寸法Mが回転軸線Cまわりに段階的に変化するように形成されている。なお、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dは、それぞれ同じ形状に形成されている。また、
図3に示すように、長穴86dには、インナリング82のシンクロインナ爪82bを挿入可能に形成された爪挿入穴部86hと、爪挿入穴部86hに挿入したシンクロインナ爪82bを長穴86dから脱落不能に保持する爪保持穴部86iと、爪保持穴部86iと爪挿入穴部86hとの間を連通する連通穴部86jと、が備えられている。なお、長穴86dは、爪挿入穴部86hの外周側の側面86kから回転軸線Cまでの第1径寸法M1が連通穴部86jの外周側の側面86lから回転軸線Cまでの第2径寸法M2、爪保持穴部86iの外周側の側面86mから回転軸線Cまでの第3径寸法M3よりも長くなり、且つ、第3径寸法M3が第1径寸法M1、第2径寸法M2よりも短くなるように、形成されている(M1>M2>M3)。
【0032】
また、
図3に示すように、インナリング82に形成された3つのシンクロインナ爪82bは、それぞれ、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dに挿入されており、例えば、1つのシンクロインナ爪82bが、長穴86dの爪保持穴部86iに配置させられると、その他の2つのシンクロインナ爪82bも爪保持穴部86iに配置されるようになっている。すなわち、インナリング82に形成された3つのシンクロインナ爪82bは、1つのシンクロインナ爪82bが長穴86dにおいて爪挿入穴部86h、爪保持穴部86i、連通穴部86jのうちの1つの空間に配置されると、その他の2つのシンクロインナ爪82bもその一つの空間に配置されるように、インナリング82に形成されている。なお、インナリング82に形成された3つのシンクロインナ爪82bは、回転軸線C方向において後輪16L側から後輪16R側に向かうに連れて回転軸線Cに接近するように傾斜するテーパー形状の一部であり、シンクロインナ爪82bの外周面82cは、例えば
図7に示すように、シンクロインナ爪82bの先端に向かうにつれてそのシンクロインナ爪82bの外周面82cから回転軸線Cまでの径寸法Nが長くなるように形成されている。
【0033】
第1径寸法M1は、
図7に示すように、シンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxより大きく設定されている。このため、インナリング82に形成されたシンクロインナ爪82bをシンクロホルダ86に形成された長穴86dの爪挿入穴部86hに挿入することができる。また、第3径寸法M3は、
図10に示すように、シンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxより小さく設定されている。このため、シンクロインナ爪82bが長穴86dの爪保持穴部86iから脱落しようとすると、シンクロインナ爪82bの外周面82cがシンクロホルダ86に形成された爪保持穴部86iの外周側の側面86mに当接して、シンクロインナ爪82bが爪保持穴部86iから脱落するのを防止する。なお、上記した最大径寸法Nmaxは、
図7および
図10に示すように、シンクロインナ爪82bの外周側の先端から回転軸線Cまでの径寸法Nである。
【0034】
ここで、
図4から
図6、
図8、
図9を用いて、インナリング82をシンクロホルダ86に組み付ける組付方法を説明する。先ず、
図4に示すように、インナリング82の3つのシンクロインナ爪82bを、それぞれ、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dの爪挿入穴部86hに挿入する。
図5および
図6に示すようにシンクロインナ爪82bが長穴86dの爪挿入穴部86hに挿入されると、次に、長穴86dにおいてシンクロインナ爪82bが爪挿入穴部86hから爪保持穴部86iに移動するように、インナリング82をシンクロホルダ86に対して回転軸線Cまわり矢印F2方向(
図8参照)に回動させる。そして、
図8および
図9に示すようにシンクロインナ爪82bが爪挿入穴部86hから爪保持穴部86iに移動すると、インナリング82がシンクロホルダ86に組み付けられる。
【0035】
なお、
図8に示すようにインナリング82がシンクロホルダ86に組み付けられると、シンクロホルダ86は、シンクロインナ爪82bの外周面82cが長穴86dの外周側の側面86gすなわち爪保持穴部86iの側面86mに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持する。また、3つのシンクロインナ爪82bの外周面82cがシンクロホルダ86の3つの長穴86dの爪保持穴部86iの側面86mに当接すると、インナリング82の軸心がシンクロホルダ86の軸心すなわち回転軸線Cと一致するように芯出しさせられる。
【0036】
また、本実施例のシンクロホルダ86の長穴86dでは、径寸法Mを第2径寸法M2と第3径寸法M3と2段にすることによって、例えば、インナリング82の製造上のバラツキが発生しても、すなわちシンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxにバラツキが発生しても、シンクロホルダ86は、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持することができる。例えば、爪挿入穴部86hに挿入されたシンクロインナ爪82bがインナリング82の製造上のバラツキによって爪挿入穴部86hから連通穴部86jまでしか移動できない場合には、シンクロホルダ86は、シンクロインナ爪82bの外周面82cが連通穴部86jの外周側の側面86lに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持することができる。なお、例えば、爪挿入穴部86hに挿入させたシンクロインナ爪82bを爪挿入穴部86hから爪保持穴部86iまで移動させることができるが、インナリング82の製造上のバラツキによって、シンクロインナ爪82bを連通穴部86jまたは爪保持穴部86iに移動させても、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持することができる場合がある。また、例えば、爪挿入穴部86hに挿入させたシンクロインナ爪82bを爪挿入穴部86hから爪保持穴部86iまで移動させることができるが、インナリング82の製造上のバラツキによって、シンクロインナ爪82bを爪保持穴部86iに移動させるしか、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持することができない場合がある。
【0037】
さらに、ここで、
図11を用いて、後輪用駆動力配分装置30に同期装置78を組み付ける組付方法を説明する。始めに、円筒部材38、ケース48、電磁アクチュエータ60、ラチェット機構62等が一体的に組み付けられたディスコネクトモジュールB1に、
図11に示すように、インナリング82が組み付けられたシンクロホルダ86、すなわちインナリング82が保持されたシンクロホルダ86を組み付ける。次に、リングギヤ36、差動装置40、ドライブピニオン44、円筒状連結部材54、可動スリーブ56等が一体的に組み付けられた後輪用駆動力配分装置本体部B2に、
図11に示すように、アウタリング80およびミドルリング84を組み付ける。そして、シンクロホルダ86に形成された第1係止部86eがアウタリング80に形成されたシンクロアウタ爪80cに係止するように、シンクロホルダ86とアウタリング80との位置を合わせて、円筒部材38に形成された角スプライン歯38bをデフケース40aの円筒突部40bに形成された角スプライン歯40cに噛み合わせる。これによって、同期装置78が後輪用駆動力配分装置30に組み付けられる。
【0038】
図12は、本実施例とは異なる同期装置90を使用した場合において、その同期装置90を後輪用駆動力配分装置30に組み付ける組付方法を説明する図である。なお、同期装置90は、長穴86dにかえてその長穴86dとは異なる形状の穴86nが形成されたシンクロホルダ86を備える点で相違しており、その他は本実施例の同期装置78と略同じである。また、シンクロホルダ86に形成された穴86nは、インナリング82のシンクロインナ爪82bを挿入することが可能であり、そのシンクロホルダ86の穴86nの周辺部の一部には、回転軸線C回りに回転するインナリング82のシンクロインナ爪82bを係止する図示しない第2係止部が形成されている。シンクロホルダ86に形成された穴86nは、本実施例のシンクロホルダ86の長穴86dとは異なり、シンクロインナ爪82bを穴86nから脱落不能にする機能を有していない。
【0039】
図12に示すように、始めに、ディスコネクトモジュールB1に、シンクロホルダ86を組み付ける。次に、後輪用駆動力配分装置本体部B2に、
図12に示すように、アウタリング80、インナリング82、ミドルリング84を組み付ける。そして、シンクロホルダ86に形成された第1係止部86eがアウタリング80に形成されたシンクロアウタ爪80cに係止され、且つ、シンクロホルダ86に形成された前記第2係止部がインナリング82に形成されたシンクロインナ爪82bに係止されるように、シンクロホルダ86とアウタリング80との位置を合わせつつシンクロホルダ86とインナリング82との位置を合わせて、円筒部材38に形成された角スプライン歯38bをデフケース40aの円筒突部40bに形成された角スプライン歯40cに噛み合わせる。これによって、同期装置90が後輪用駆動力配分装置30に組み付けられる。なお、本実施例の同期装置78では、シンクロホルダ86とアウタリング80との位置を合わせるだけで、アウタリング80およびインナリング82をシンクロホルダ86に組み付けられるので、同期装置90を使用する場合に比べて、後輪用駆動力配分装置30への組付性が向上する。
【0040】
上述のように、本実施例の同期装置78によれば、シンクロホルダ86は、インナリング82のシンクロインナ爪82bの外周面82cが長穴86dの外周側の側面86mに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86dから脱落不能に保持することができるので、シンクロホルダ86にインナリング82を保持した状態で、シンクロホルダ86をアウタリング80に組み付けることができる。これによって、アウタリング80およびインナリング82をシンクロホルダ86に組み付けるときに、インナリング82とシンクロホルダ86との位置を合わせる必要がなくなり、アウタリング80とシンクロホルダ86との位置を合わせるだけで、アウタリング80およびインナリング82をシンクロホルダ86に組み付けられるので、例えば、アウタリング80とシンクロホルダ86との位置を合わせつつインナリング82とシンクロホルダ86との位置を合わせて、アウタリング80およびインナリング82をシンクロホルダ86に組み付ける場合に比べて、アウタリング80およびインナリング82をシンクロホルダ86に組み付けるときの組付性が向上する。
【0041】
続いて、本発明の他の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【実施例2】
【0042】
図13は、本発明の他の実施例の同期装置(車両用同期装置)100を説明する図である。本実施例の同期装置100は、実施例1の同期装置78に比較して、シンクロホルダ86に形成された長穴86pの形状が異なる点で、相違しており、その他は実施例1の同期装置78と略同じである。なお、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86pはそれぞれ同じ形状であり、長穴86pは、その長穴86pの外周側の側面86qから回転軸線Cまでの径寸法MAが回転軸線Cまわりに連続的に変化するように形成されている。また、インナリング82のシンクロインナ爪82bをシンクロホルダ86に形成された長穴86pの第2係止部86r側とは反対側の端部86sに挿入させて、その挿入させたシンクロインナ爪82bが長穴86pの第2係止部86r側の端部86tに移動するようにインナリング82をシンクロホルダ86に対して回転軸線Cまわりに回動させると、シンクロホルダ86は、インナリング82のシンクロインナ爪82bの外周面82cが長穴86pの外周側の側面86qに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86pから脱落不能に保持する。なお、第2係止部86rは、回転軸線Cまわりに回転するインナリング82のシンクロインナ爪82bを係止する、シンクロホルダ86の長穴86pの周辺部分の一部である。
【実施例3】
【0043】
ところで、前述した実施例1の同期装置78では、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とを当接させてリングギヤ36の回転速度と円筒部材38の回転速度とを同期させるとき(
図14に示す同期時)に、
図14に示すようにインナリング82のシンクロインナ爪82bを第1連結面(連結面)86uで受け止めてシンクロインナ爪82bからシンクロホルダ86に矢印F3方向のトルクが入力されるようになっている。また、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とが当接している状態からアウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すとき(
図14に示す引離時)に、
図14に示すようにインナリング82のシンクロインナ爪82bを第2連結面(連結面)86vで受け止めてシンクロインナ爪82bからシンクロホルダ86に矢印F3方向とは反対方向である矢印F4方向のトルクが入力されるようになっている。なお、第1連結面86uおよび第2連結面86vは、シンクロホルダ86の長穴86dの内周面に形成された、長穴86dの外周側の側面86gと長穴86dの内周側の側面86wとを連結する一対の連結面である。しかしながら、インナリング82の製造時にシンクロインナ爪82bの外周面82cから回転軸線Cまでの径寸法Nすなわち最大径寸法Nmaxが比較的大きくばらついて例えば最大径寸法Nmaxが比較的大きなインナリング82が製造されると、アウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すときに、
図15に示すようにインナリング82のシンクロインナ爪82bが第2連結面86vに受け止められる前に長穴86dの外周側の側面86gに当接しまいシンクロインナ爪82bが長穴86dの外周側の側面86gで受け止められてしまうという問題があった。本発明の実施例3の同期装置(車両用同期装置)は、上記問題を解決するものである。
【0044】
図16および
図17は、本発明の実施例3の同期装置を説明する図、すなわち実施例3の同期装置に設けられたシンクロホルダ86を説明する図である。実施例3の同期装置は、実施例1の同期装置78に比較して、シンクロホルダ86に形成された長穴86xの形状が異なる点と、シンクロホルダ86の内周部86aにおいてシンクロホルダ86の周方向の全体に内周歯86bが形成されている点と、で相違しており、その他は実施例1の同期装置78と略同じである。
【0045】
図16および
図17に示すように、長穴86xの外周側の側面86gは、長穴86xの外周側の側面86gから回転軸線Cまでの径寸法MBが回転軸線Cまわりに段階的に変化するように形成されている。また、長穴86xには、径寸法MBがインナリング82のシンクロインナ爪82bを挿入することができる大きさ第1径寸法MB1に予め定められた爪挿入穴部86yと、径寸法MBがインナリング82のシンクロインナ爪82bを脱落不能に保持することができる大きさ第2径寸法MB2に予め定められた爪保持穴部86zと、が備えられている。なお、第1径寸法MB1は、爪挿入穴部86yの外周側の側面86Aから回転軸線Cまでの径寸法MBであり、第1径寸法MB1は、
図18に示すようにシンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxより大きく設定されている。また、第2径寸法MB2は、爪保持穴部86zの外周側の側面86Bから回転軸線Cまでの径寸法MBであり、第2径寸法MB2は、シンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxより小さく設定されている。また、爪挿入穴部86yは爪保持穴部86zと隣接している。
【0046】
図16および
図17に示すように、長穴86xの内周面には、長穴86xの外周側の側面86gと長穴86xの内周側の側面86wとを連結する一対の第1連結面(連結面)86Cおよび第2連結面(連結面)86Dとが形成されている。なお、実施例3の同期装置では、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とを当接させてリングギヤ36の回転速度と円筒部材38とを同期させるときに、インナリング82のシンクロインナ爪82bを第1連結面86Cで受け止めるようになっている。また、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とが当接している状態からアウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すときには、インナリング82のシンクロインナ爪82bを第2連結面86Dで受け止めるようになっている。
【0047】
図18に示すように、爪保持穴部86zの径寸法MBは、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かうほど段階的に大きくなっている。すなわち、爪保持穴部86zの径寸法MBは、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かう方向において、第2径寸法MB2、第3径寸法MB3の順に大きくなっている。なお、第3径寸法MB3は、爪保持穴部86zの外周側の側面86E(
図19参照)から回転軸線Cまでの径寸法MBであり、第3径寸法MB3は、第2径寸法MB2よりも大きく且つシンクロインナ爪82bの最大径寸法Nmaxよりも小さくなるように設定されている。
【0048】
ここで、インナリング82をシンクロホルダ86に組み付ける組付方法を説明する。先ず、
図16に示すように、インナリング82の3つのシンクロインナ爪82bをシンクロホルダ86に形成された3つの長穴86xの爪挿入穴部86yに挿入する。次に、長穴86xに挿入されたシンクロインナ爪82bが爪挿入穴部86yから爪保持穴部86zに移動するように、例えばシンクロインナ爪82bが長穴86xの第2連結面86Dに受け止められるまで、インナリング82をシンクロホルダ86に対して回転軸線Cまわり矢印F4方向に回動させる。これによって、インナリング82がシンクロホルダ86に組み付けられる。なお、インナリング82をシンクロホルダ86に対して回転軸線Cまわり矢印F4方向に回動させるときにおいて、前述したように爪保持穴部86zの径寸法MBはシンクロインナ爪82bの先端に向かうほど段階的に大きくなっているので、例えば爪保持穴部86zの径寸法MBがシンクロインナ爪82bの先端に向かって変化しないものに比べて、シンクロインナ爪82bが長穴86xの外周側の側面86gに当接し難くなっている。これによって、インナリング82の製造時に最大径寸法Nmaxが比較的大きくばらついて例えば最大径寸法Nmaxが比較的大きなインナリング82が製造されても、例えばインナリング82をシンクロホルダ86に組み付けるときに、インナリング82のシンクロインナ爪82bが長穴86xの外周側の側面86gに当接して止まらず第2連結面86vに好適に受け止められるようになっている。つまり、実施例3の同期装置では、インナリング82の製造時に最大径寸法Nmaxが比較的大きくばらついて例えば最大径寸法Nmaxが比較的大きなインナリング82が製造されても、例えばアウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とが当接している状態からアウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すときに、インナリング82のシンクロインナ爪82bが第2連結面86vに受け止められる前に長穴86xの外周側の側面86gで受け止められることが好適に抑制される。
【0049】
また、インナリング82がシンクロホルダ86に組み付けられると、シンクロホルダ86は、シンクロインナ爪82bの外周面82cが長穴86xの外周側の側面86gである爪保持穴部86zの外周側の側面86B、86Eに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86xから脱落不能に保持する。なお、インナリング82の製造時に最大径寸法Nmaxが比較的大きくばらついて例えば最大径寸法Nmaxが比較的大きいインナリング82が製造されると、シンクロホルダ86は、シンクロインナ爪82bの外周面82cが爪保持穴部86iの外周側の側面86Eに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86xから脱落不能に保持する。また、例えば最大径寸法Nmaxが比較的小さいインナリング82が製造されると、シンクロホルダ86は、シンクロインナ爪82bの外周面82cが爪保持穴部86zの外周側の側面86Bに当接することによって、インナリング82をシンクロインナ爪82bが長穴86xから脱落不能に保持する。
【0050】
上述のように、本実施例の同期装置によれば、爪保持穴部86zの径寸法MBは、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かうほど段階的に大きくなっているので、例えばインナリング82の製造時にシンクロインナ爪82bの外周面82cと回転軸線Cまでの最大径寸法Nmaxが比較的大きくばらついたとしても、爪保持穴部86zにおいて長穴86xの外周側の側面86B、86Eにインナリング82のシンクロインナ爪82bの外周面82cが好適に当接して、爪保持穴部86zでインナリング82のシンクロインナ爪82bを長穴86xから脱落不能に保持することができる。
【0051】
また、本実施例の同期装置によれば、長穴86xの内周面には、長穴86xの外周側の側面86gと長穴86xの内周側の側面86wとを連結する一対の第1連結面86Cおよび第2連結面86Dが形成されており、第1連結面86Cは、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とを当接させてリングギヤ36の回転速度と円筒部材38の回転速度とを同期させるときにインナリング82のシンクロインナ爪82bを受け止め、第2連結面86Dは、アウタリング80およびインナリング82とミドルリング84とが当接している状態からアウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すときにインナリング82のシンクロインナ爪82bを受け止める。これによって、リングギヤ36の回転速度と円筒部材38の回転速度とを同期させるとき、または、アウタリング80およびインナリング82をミドルリング84から引き離すときに、インナリング82のシンクロインナ爪82bが一対の第1連結面86Cおよび第2連結面86Dに好適に受け止められる。
【実施例4】
【0052】
図20および
図21は、本発明の実施例4の同期装置(車両用同期装置)を説明、すなわち実施例4の同期装置に設けられたシンクロホルダ86を説明する図である。本実施例の同期装置は、実施例3の同期装置に比較して、シンクロホルダ86に形成された長穴86Fの形状が異なる点、すなわち、爪挿入穴部86Gの両端部に第1爪保持穴部(爪保持穴部)86Hと第2爪保持穴部(爪保持穴部)86Iとが設けられている点で、相違しており、その他は実施例3の同期装置と略同じである。なお、爪挿入穴部86Gは、実施例3の爪挿入穴部86yと同様に径寸法MBがインナリング82のシンクロインナ爪82bを挿入することができる大きさ第1径寸法MB1に設定されている。また、第1爪保持穴部86Hおよび第2爪保持穴部86Iは、それぞれ、実施例3の爪保持穴部86zと同様に径寸法MBがインナリング82のシンクロインナ爪82bを脱落不能に保持することができる大きさ第2径寸法MB2に設定されている。
【0053】
図21は、
図20のXXI-XXI視断面図、すなわち第1爪保持穴部86Hおよび第2爪保持穴部86Iの断面を示す断面図である。なお、第1爪保持穴部86Hの断面と第2爪保持穴部86Iの断面とは、同じ形状である。
図21に示すように、第1爪保持穴部86Hの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86Iの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かうほど段階的に大きくなっている。すなわち、第1爪保持穴部86Hの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86Iの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かう方向において、第2径寸法MB2、第3径寸法MB3の順に大きくなっている。
【0054】
ここで、インナリング82をシンクロホルダ86に組み付ける組付方法を説明する。先ず、
図20に示すように、インナリング82の3つのシンクロインナ爪82bをシンクロホルダ86に形成された3つの長穴86Fの爪挿入穴部86Gに挿入する。次に、長穴86Fに挿入されたシンクロインナ爪82bが爪挿入穴部86Gから第1爪保持穴部86Hまたは第2爪保持穴部86Iに移動するように、インナリング82をシンクロホルダ86に対して回転軸線Cまわり矢印F5方向または矢印F6方向に回動させる。これによって、インナリング82がシンクロホルダ86に組み付けられる。
【実施例5】
【0055】
図22は、本発明の実施例5の同期装置(車両用同期装置)を説明、すなわち実施例5の同期装置に設けられたシンクロホルダ86を説明する図である。本実施例の同期装置は、実施例4の同期装置に比較して、シンクロホルダ86に形成された長穴86Jの第1爪保持穴部(爪保持穴部)86Kおよび第2爪保持穴部(爪保持穴部)86Lの断面形状が異なる点で、相違しており、その他は実施例4の同期装置と略同じである。なお、実施例4では、第1爪保持穴部86Hの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86Iの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かう方向において、2段階に変化していたが、実施例5では、第1爪保持穴部86Kの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86Lの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に方向において、4段階に変化している。
【実施例6】
【0056】
図23は、本発明の実施例6の同期装置(車両用同期装置)を説明、すなわち実施例6の同期装置に設けられたシンクロホルダ86を説明する図である。本実施例の同期装置は、実施例4の同期装置に比較して、シンクロホルダ86に形成された長穴86Mの第1爪保持穴部(爪保持穴部)86Nおよび第2爪保持穴部(爪保持穴部)86Oの断面形状が異なる点で、相違しており、その他は実施例4の同期装置と略同じである。なお、実施例6では、第1爪保持穴部86Nの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86Oの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かうほど連続的に大きくなっている。
【0057】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0058】
例えば、前述の実施例1の同期装置78において、シンクロホルダ86は、アウタリング80およびインナリング82が円筒部材38すなわちデフケース40aに形成された円筒突部40bに対して動力伝達可能且つアウタリング80およびインナリング82が円筒部材38に対して回転軸線C方向に移動可能に、アウタリング80およびインナリング82を保持していたが、例えば、シンクロホルダ86は、アウタリング80およびインナリング82がリングギヤ36に対して動力伝達可能且つアウタリング80およびインナリング82がリングギヤ36に対して回転軸線C方向に移動可能に、アウタリング80およびインナリング82を保持できるように、同期装置78の構造すなわち後輪用駆動力配分装置30の構造を変更しても良い。
【0059】
また、前述の実施例1の同期装置78において、シンクロホルダ86に形成された3つの長穴86dは、それぞれ、その長穴86dの外周側の側面86gから回転軸線Cまでの径寸法Mが回転軸線Cまわりに3段階に変化するように形成されていたが、3段階に代えて、2段階または4段階以上に変化するように形成しても良い。
【0060】
また、前述の実施例1の同期装置78において、アウタリング80のシンクロアウタ爪80cおよびインナリング82のシンクロインナ爪82bは、3つであったが、例えば2つ以上であればいくつでも良い。
【0061】
前述の実施例4、5の同期装置において、第1爪保持穴部86H、86Kの径寸法MBおよび第2爪保持穴部86I、86Lの径寸法MBは、それぞれ、インナリング82のシンクロインナ爪82bの先端に向かう方向において、2段階または4段階に変化していたが、例えば3段階または5段階以上に変化するようにしても良い。
【0062】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0063】
36:リングギヤ(第1回転部材)
38:円筒部材(第2回転部材)
78、100:同期装置(車両用同期装置)
80:アウタリング
80a:外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)
80b:内周摩擦面(円錐状内周摩擦面)
80c:シンクロアウタ爪(爪片)
82:インナリング
82a:外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)
82b:シンクロインナ爪(爪片)
82c:外周面
84:ミドルリング
84a:外周摩擦面(円錐状外周摩擦面)
84b:内周摩擦面(円錐状内周摩擦面)
86:シンクロホルダ(ホルダ)
86d、86p、86x、86F、86J、86M:長穴
86g、86q:側面
86y、86G:爪挿入穴部
86z:爪保持穴部
86H、86K、86N:第1爪保持穴部(爪保持穴部)
86I、86L、86O:第2爪保持穴部(爪保持穴部)
C:回転軸線
M、MA、MB:径寸法