(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ステアリングホイール
(51)【国際特許分類】
B62D 1/04 20060101AFI20230912BHJP
B60R 21/203 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B62D1/04
B60R21/203
(21)【出願番号】P 2019208075
(22)【出願日】2019-11-18
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】318002149
【氏名又は名称】Joyson Safety Systems Japan合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】早川 真司
(72)【発明者】
【氏名】岩里 賢
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-145173(JP,A)
【文献】特開2002-362276(JP,A)
【文献】特開2001-058572(JP,A)
【文献】特開2000-095113(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0100078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/04
B60R 21/203
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングホイール本体と、該ステアリングホイール本体に設けられたエアバッグ装置取付部と、背面を該エアバッグ装置取付部に対峙させて該エアバッグ装置取付部に取り付けられたエアバッグ装置とを備えたステアリングホイールであって、
該エアバッグ装置の背面から突設されたピンと、
該ピンの先端側に設けられた係合部と、
前記エアバッグ装置取付部に設けられており、該ピンが差し込まれた差込穴と、
該エアバッグ装置取付部に設けられており、該差込穴に差し込まれたピンの該係合部に係合する係止部を有したロック部材と
を有するステアリングホイールにおいて、
前記ロック部材は、前記差込穴の周方向の一方向に回動することにより前記係止部がピンの前記係合部と係合し、他方向に回動することにより該係止部と係合部との係合が解除されるように回動可能であり、
該ピンの先端側と該ロック部材との少なくとも一方に設けられており、エアバッグ装置のステアリングホイールへの取り付け時に該ピンの先端部とロック部材とが当接したときに、該ロック部材に対して前記他方向に回動する分力を与える分力付与部を有することを特徴とするステアリングホイール。
【請求項2】
前記分力付与部は斜面であることを特徴とする請求項
1のステアリングホイール。
【請求項3】
前記ロック部材と一体又は別体に設けられた、該ロック部材を係合方向に付勢する付勢部材を有することを特徴とする請求項1
又は2のステアリングホイール。
【請求項4】
前記付勢部材はコイルスプリングであることを特徴とする請求項
3のステアリングホイール。
【請求項5】
前記ロック部材は、
リング部と、
該リング部の直径又は弦方向に延在する前記係止部と、
該リング部と該係止部とで囲まれた、前記ピンの先端側が差し込まれる開口と
を有しており、
前記ピンの前記係合部は、
該ピンの先端面からピン基端側に向って凹設されており、該係止部がピン先端側から入り込む縦溝と、
該縦溝のピン基端側からピン周方向に凹設された横溝とを有していることを特徴とする請求項1~
4のいずれかのステアリングホイール。
【請求項6】
前記係止部は、前記リング部の直径方向に設けられたロックバーであり、
前記縦溝は、前記ピンの先端面の直径方向に延在しており、
前記横溝は、該縦溝の該直径方向の一半側と他半側との双方に設けられていることを特徴とする請求項
5のステアリングホイール。
【請求項7】
前記分力付与部は、前記ピンの先端面のうち、前記縦溝の前記直径方向の一半側に沿う部分と、他半側に沿う部分との双方に設けられていることを特徴とする請求項
6のステアリングホイール。
【請求項8】
前記係止部は、前記リング部の弦方向に延在する辺縁を有しており、
前記縦溝は、前記先端面を弦方向に切り欠いた形状を有していることを特徴とする請求項
5のステアリングホイール。
【請求項9】
前記分力付与部は、前記ピンの先端面において、前記縦溝の前記直径方向の全体に沿って設けられていることを特徴とする請求項
8のステアリングホイール。
【請求項10】
前記ピンの軸心と前記リング部の軸心とが同軸となっていることを特徴とする請求項
6~
9のいずれかのステアリングホイール。
【請求項11】
前記ピンの軸心と前記リング部の軸心とが偏心していることを特徴とする請求項
8又は
9のステアリングホイール。
【請求項12】
前記ロック部材は、
回動可能なプレートと、
該プレートに設けられた中心孔と、
該中心孔の内周面から求心方向に突設された凸部と
を有しており、
前記ピンの前記係合部は、該ピンの先端からピン外周面に沿ってピン基端側に向って凹設された縦溝と、
該縦溝の該ピン基端側から、ピン外周面に沿ってピン周方向に凹設された横溝と
を有しており、
前記凸部が該縦溝を通って該横溝に係合することを特徴とすることを特徴とする請求項1~
4のいずれかのステアリングホイール。
【請求項13】
複数の前記凸部及び前記縦溝が、周方向に間隔をおいて同数個ずつ設けられていることを特徴とする請求項
12のステアリングホイール。
【請求項14】
前記ロック部材は、
回動可能なプレートと、
該プレートに設けられた中心孔と、
該中心孔から放射方向に延設されたスロットと
を有しており、
前記ピンは、
先端側に設けられた小径部と、
該小径部の側周面に設けられた凸部と
を有しており、
該スロットの放射方向の壁面と該凸部の先端側との少なくとも一方に前記分力付与部が設けられており、
該小径部が該中心孔を通過し、且つ該凸部が該スロットを通過して該中心孔の縁部に係合することを特徴とする請求項1~
4のいずれかのステアリングホイール。
【請求項15】
前記スロット及び前記凸部は、それぞれ周方向に間隔をおいて同数個ずつ設けられていることを特徴とする請求項
14のステアリングホイール。
【請求項16】
前記ロック部材を該ロック部材の軸心回りに回動自在に保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1~
15のいずれかのステアリングホイール。
【請求項17】
前記エアバッグ装置取付部の前記差込穴にブッシュが装着され、該ブッシュに前記ピンが挿通されており、
前記保持部材は、該ブッシュに取り付けられていることを特徴とする請求項
16のステアリングホイール。
【請求項18】
前記保持部材は、前記ロック部材の周囲を囲む周壁を有しており、該周壁から突設された突片がブッシュに取り付けられていることを特徴とする請求項
16のステアリングホイール。
【請求項19】
前記ロック部材は、前記周壁よりも放射方向外方に延出する摘み片を有することを特徴とする請求項
18のステアリングホイール。
【請求項20】
前記ロック部材と一体又は別体に設けられた、該ロック部材を係合方向に付勢する付勢部材を有し、
前記周壁の内周面と
前記ロック部材の外周面との間に、前記付勢部材が設けられていることを特徴とする請求項18
又は19のステアリングホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はステアリングホイールに係り、特にエアバッグ装置がステアリングホイール本体に取り付けられているステアリングホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置をスナップイン方式によってステアリングホイールのエアバッグ装置取付部に取り付けた従来例として、特許文献1(特開2015-145173号公報)がある。
【0003】
特許文献1では、エアバッグ装置の背面からピンが突設され、このピンの先端側がエアバッグ装置取付部の差込穴に差し込まれる。エアバッグ装置取付部の背面に沿ってロックバネ(屈曲バネ)が設けられている。ピンの先端部は、テーパ部となっており、ピンを差込穴に挿入すると、ロックバネはテーパ部に沿って移動し、やがてロックバネがピンの先端近傍の溝に係合し、エアバッグ装置が取付部に取り付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エアバッグ装置を取付部に取り付けるに際し、ピンを差込穴に挿入すると、これに伴ってロック部材が回動してピン先端部がロック部材によって係止されるステアリングホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のステアリングホイールは、ステアリングホイール本体と、該ステアリングホイール本体に設けられたエアバッグ装置取付部と、背面を該エアバッグ装置取付部に対峙させて該エアバッグ装置取付部に取り付けられたエアバッグ装置とを備えたステアリングホイールであって、該エアバッグ装置の背面から突設されたピンと、該ピンの先端側に設けられた係合部と、前記エアバッグ装置取付部に設けられており、該ピンが差し込まれた差込穴と、該エアバッグ装置取付部に設けられており、該差込穴に差し込まれたピンの該係合部に係合する係止部を有したロック部材とを有するステアリングホイールにおいて、該ロック部材は、該差込穴の周方向に回動することにより該係止部がピンの前記係合部と係合する。
【0007】
本発明の一態様では、前記ロック部材は、前記差込穴の周方向の一方向に回動することにより前記係止部がピンの前記係合部と係合し、他方向に回動することにより該係止部と係合部との係合が解除されるように回動可能である。
【0008】
本発明の一態様では、前記ステアリングホイールは、さらに、該ピンの先端側と該ロック部材との少なくとも一方に設けられており、エアバッグ装置のステアリングホイールへの取り付け時に該ピンの先端部とロック部材とが当接したときに、該ロック部材に対して前記他方向に回動する分力を与える分力付与部を備える。
【0009】
本発明の一態様では、前記分力付与部は斜面である。
【0010】
本発明の一態様では、前記ロック部材と一体又は別体に設けられた、該ロック部材を係合方向に付勢する付勢部材を有する。
【0011】
本発明の一態様では、前記付勢部材はコイルスプリングである。
【0012】
本発明の一態様では、前記ロック部材は、リング部と、該リング部の直径又は弦方向に延在する前記係止部と、該リング部と該係止部とで囲まれた、前記ピンの先端側が差し込まれる開口とを有しており、前記ピンの前記係合部は、該ピンの先端面からピン基端側に向って凹設されており、該係止部がピン先端側から入り込む縦溝と、該縦溝のピン基端側からピン周方向に凹設された横溝とを有している。
【0013】
本発明の一態様では、前記係止部は、前記リング部の直径方向に設けられたロックバーであり、前記縦溝は、前記ピンの先端面の直径方向に延在しており、前記横溝は、該縦溝の該直径方向の一半側と他半側との双方に設けられている。
【0014】
本発明の一態様では、前記分力付与部は、前記ピンの先端面のうち、前記縦溝の前記直径方向の一半側に沿う部分と、他半側に沿う部分との双方に設けられている。
【0015】
本発明の一態様では、前記係止部は、前記リング部の弦方向に延在する辺縁を有しており、前記縦溝は、前記先端面を弦方向に切り欠いた形状を有している。
【0016】
本発明の一態様では、前記分力付与部は、前記ピンの先端面において、前記縦溝の前記直径方向の全体に沿って設けられている。
【0017】
本発明の一態様では、前記ピンの軸心と前記リング部の軸心とが同軸となっている。
【0018】
本発明の一態様では、前記ピンの軸心と前記リング部の軸心とが偏心している。
【0019】
本発明の一態様では、前記ロック部材は、回動可能なプレートと、該プレートに設けられた中心孔と、該中心孔の内周面から求心方向に突設された凸部とを有しており、前記ピンの前記係合部は、該ピンの先端からピン外周面に沿ってピン基端側に向って凹設された縦溝と、該縦溝の該ピン基端側から、ピン外周面に沿ってピン周方向に凹設された横溝とを有しており、前記凸部が該縦溝を通って該横溝に係合する。
【0020】
本発明の一態様では、複数の前記凸部及び前記縦溝が、周方向に間隔をおいて同数個ずつ設けられている。
【0021】
本発明の一態様では、前記ロック部材は、回動可能なプレートと、該プレートに設けられた中心孔と、該中心孔から放射方向に延設されたスロットとを有しており、前記ピンは、先端側に設けられた小径部と、該小径部の側周面に設けられた凸部とを有しており、該スロットの放射方向の壁面と該凸部の先端側との少なくとも一方に前記分力付与部が設けられており、該小径部が該中心孔を通過し、且つ該凸部が該スロットを通過して該中心孔の縁部に係合する。
【0022】
本発明の一態様では、前記スロット及び前記凸部は、それぞれ周方向に間隔をおいて同数個ずつ設けられている。
【0023】
本発明の一態様では、前記ロック部材を該ロック部材の軸心回りに回動自在に保持する保持部材を備える。
【0024】
本発明の一態様では、前記エアバッグ装置取付部の前記差込穴にブッシュが装着され、該ブッシュに前記ピンが挿通されており、前記保持部材は、該ブッシュに取り付けられている。
【0025】
本発明の一態様では、前記保持部材は、前記ロック部材の周囲を囲む周壁を有しており、該周壁から突設された突片がブッシュに取り付けられている。
【0026】
本発明の一態様では、前記ロック部材は、前記周壁よりも放射方向外方に延出する摘み片を有する。
【0027】
本発明の一態様では、前記周壁の内周面とロック部材の外周面との間に、前記付勢部材が設けられている。
【発明の効果】
【0028】
本発明のステアリングホイールにあっては、ピンを取付部の差込穴に挿入すると、ピンの先端部がロック部材に当接する。両者の当接部に斜面が設けられている。ピンを差込穴に押し込む力が該斜面によってロック部材に対し回動方向の分力として付与され、ロック部材が回動し、ピンがさらに差込穴に差し込まれ、該ロック部材の係止部とピンの係合部とが係合する。付勢部材がロック部材を付勢するので、この係合状態が維持される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】エアバッグ装置取り付け時のステアリングホイールの断面図である。
【
図5】
図5aはピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
図5bは
図5aのVb-Vb線断面図である。
【
図6】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図7】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図9】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図10】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図11】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図12】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図13】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図15】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図17】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図18】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図19】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図21】
図19のXXI-XXI線に沿う、ロック部材の部分断面図である。
【
図22】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図23】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【
図24】ピンとロック部材との係合を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1~7を参照して第1の実施の形態について説明する。
【0031】
図1,2の通り、ステアリングホイール1は、ステアリングホイール本体10にエアバッグ装置2を取り付けたものである。ステアリングホイール本体10は、ホイール部12と、スポーク部13と、ボス部14(芯金部)とを有する。
【0032】
ボス部14は、エアバッグ装置取付部15と、該エアバッグ装置取付部15に設けられたピン40の差込穴16、ロック部材50を保持するホルダ60等を有する。
【0033】
エアバッグ装置2は、
図1の通り、リテーナ21と、該リテーナ21に取り付けられたインフレータ22及びエアバッグ23と、エアバッグ23を覆うモジュールカバー24と、リテーナ21から突設された複数本(この実施の形態では3本)のピン40と、ピン40を取り巻いており、エアバッグ装置2を取付部15から離反方向に付勢するコイルバネ25と、ホーンスイッチプレート(図示略)等を有する。このピン40が前記差込穴16に差し込まれる。
【0034】
エアバッグ23は、折り畳まれ、インフレータ22と共にボルト(図示略)によってリテーナ21に取り付けられている。車両衝突時にインフレータ22がガスを噴出すると、エアバッグ23が膨張し、モジュールカバー24を開裂させて展開する。
【0035】
図2に拡大して示した通り、差込穴16にブッシュ30,31を介してガイドカラム32が装着されている。各ブッシュ30,31は、上下両端側にフランジ部30a,30b及び31a,31bが設けられており、これらが差込穴16の上縁部及び下縁部に重なることにより各ブッシュ30,31が差込穴16に装着される。ブッシュ31の内孔にガイドカラム32が装着されている。
【0036】
図2,3に明示の通り、ガイドカラム32は、ガイドカラムアッパー32Aとガイドカラムロワー32Bとの2体を係合したものである。ガイドカラムアッパー32Aは、フランジ部32aと、該フランジ部32aの内周縁から立設された3本の脚部32bと、各脚部32bの先端側の外周面から突設された爪部32cを有する。
【0037】
ガイドカラムロワー32Bは、フランジ部32dと、該フランジ部32dの内周縁から立設された3本の脚部32eとを有する。フランジ部32dの外周面には、後述する保持部材60の突片64が係合する切欠部32fが設けられ、該切欠部32fにビス穴32gが設けられている。
【0038】
ガイドカラムアッパー32Aの脚部32bをブッシュ31の内孔に上側から差し込み、ガイドカラムロワー32Bの脚部32eをブッシュ31の内孔に下側から差し込む。脚部32bが、脚部32e,32e同士の間、及びフランジ部32dの内孔を通り抜け、爪部32cがフランジ部32dの内孔の縁部に係合することにより、ガイドカラムアッパー32Aとガイドカラムロワー32Bとが連結されてガイドカラム32が形成される。この状態では、フランジ部32a,32dによって、ブッシュ31のフランジ部31a,31bが挟持される。
【0039】
このガイドカラム32の内孔にピン40が挿通される。
【0040】
図4~7に明示の通り、ピン40は、基端側(上端側)にフランジ部41を備え、先端側の先端面に、直径方向に延在した縦溝42を備えている。縦溝42は、直径方向と平行な立壁面42a,42aと、奥面42bとに囲まれている。縦溝42の幅(立壁面42a,42a間の距離)は、後述のロック部材50のロックバー52よりも大きい。
【0041】
縦溝42の奥側(
図4の上端側)において、縦溝42から1対の横溝43がピン40の周回方向に凹設されている。一方の横溝43は、縦溝42の長手方向(ピン40の直径方向)の一半側に位置し、他方の横溝43は縦溝42の他半側に位置している。各横溝43は、
図5a,5bの通り、縦溝42の立壁面42aからピン40の中心軸に対して同一周方向(
図5a,5bでは時計回り方向)に凹設されている。
【0042】
各横溝43,43は、立壁面43aと、縦溝42との間に広がる略三角形の係止面43bを有する。
【0043】
図5bに明示の通り、一方の横溝43の立壁面43aと、他方の横溝43の立壁面43aとは平行である。
【0044】
ピン40の先端側は、縦溝42によって1対の略半円柱形の柱状部44,44に分かれている。各柱状部44の先端面は、縦溝42に向う周方向において縦溝42に近接するほどピン40の基端側となるように傾斜した斜面45となっている。
【0045】
ピン40の先端側が係合するロック部材50は
図3に明示の通り、略円環形のリング部51と、該リング部51を直径方向に横断する係止部としてのロックバー52と、リング部51から略放射方向に延出した摘み片53と、リング部51の外周面の周方向に延在する切欠部54とを有している。この切欠部54に沿ってコイルスプリング58が配置される。
【0046】
ロックバー52によって、リング部51の内側に2個の略半円形の開口55が設けられている。
【0047】
ロック部材50を保持するための保持部材60は、円形のプレート61と、プレート61の板央部に設けられた開口62と、該プレート61の外周縁から起立する周壁63と、周壁63の周方向の複数個所(この実施の形態では3箇所)からさらに該起立方向に突設する突片64と、各突片64に設けられた小孔64a(
図3)と、周壁63の内周面から板央側に突設されたストッパ部65と、プレート61から周壁63の起立方向と同方向に突設された凸部66と、周壁63の一部を切り欠いた形状の摘み片53の通過部67とを有している。なお、
図5a,6,7では、穴片64の図示が省略されている。
【0048】
凸部66とストッパ部65とは、開口62を挟んで反対側に位置している。
【0049】
ロック部材50は、周壁63内に摺動自在に嵌合している。この嵌合状態では、ストッパ部65が切欠部54の長手方向の一端側に入り込み、摘み片53は摘み片53通過部67を通って外方に延出している。凸部66は、開口55に入り込んでいる。
【0050】
また、この状態で、切欠部54の長手方向の他端側とストッパ部65との間にコイルスプリング58が蓄力状態(若干押し縮められた状態)にて配置されており、ロック部材50を
図3,5~7において時計回り方向(
図6の矢印θと反対方向)に付勢し、摘み片53を通過部67側の周壁63の端面に押し当てている。
【0051】
ロック部材50を保持した保持部材60は、その突片64をガイドカラムロワー32Bのフランジ部32d外周面の切欠部32fに係合させるようにしてガイドカラムロワー32Bのフランジ部32dに重ね合わされ、小孔64aを通してビス(図示略)をビス穴32gに締め込むことにより、ロック部材50及び保持部材60がガイドカラムロワー32Bと一体化される。
【0052】
エアバッグ装置2をステアリングホイール本体10に取り付けるには、ピン40にコイルバネ25を外嵌させた状態で、各ピン40をそれぞれ差込穴16に対峙させ、エアバッグ装置2を取付部15に向って移動させ、ピン40を差込穴16に差し込む。
【0053】
ピン40が差し込み方向に前進すると、その先端の斜面45がロックバー52に当接する。ピン40がさらに前進すると、斜面45がロックバー52に
図6の矢印θ方向の分力を与え、ロック部材50がθ方向に回動し、ロックバー52が縦溝42と重なった位置となり、ロックバー52が縦溝42に入り込む。
【0054】
なお、ロック部材50がθ方向に回動すると、コイルスプリング58が押し縮められる。
【0055】
ロックバー52が縦溝42の奥面42b近傍まで入り込むと、このコイルスプリング58の付勢力によってロック部材50が反θ方向に回動し、
図7の通り、ロックバー52が横溝43に入り込み、係止面43bに重なる。これによりピン40が差込穴16から不抜となり、エアバッグ装置2がステアリングホイール本体10に取り付けられる。
【0056】
なお、
図7の取付状態(係止状態)において、摘み片53をθ方向に押すと、ロックバー52が横溝43から離脱して縦溝42に移動するので、エアバッグ装置2を取付部15から取り外すことができる。
【0057】
図8~11を参照して第2の実施の形態について説明する。第2の実施の形態は、第1の実施の形態において、ピン40Aに柱状部44を1個だけ設け、横溝43Aを1個だけ設けたものである。
【0058】
この実施の形態では、縦溝42Aは、ピン40Aの先端側を弦方向に切り欠いた形状の縦方向凹部であり、立壁面42aは弦方向に延在している。横溝43Aは、この立壁面42aの弦方向の中間付近からピン40Aの外周面にまで切り欠いた形状の横方向凹部となっている。
【0059】
柱状部44の先端面に、立壁面42aに近づくほどピン40Aの基端側となる斜面45Aが設けられている。
【0060】
ロック部材50Aは、ロックバー52Aの一半側のみ略半円形の開口55となっており、他半側はプレート状となっている。
【0061】
第2の実施の形態におけるその他の構成は第1の実施の形態と同様であり、
図8~11のその他の符号は第1の実施の形態と同一部分を示している。
【0062】
第2の実施の形態において、エアバッグ装置を取付部15に装着するには、ピン40Aを、ロック部材50Aの開口55を介して開口62に差し込む。この途中で
図10の通り、斜面45Aがロックバー52Aに接触し、該斜面45Aから与えられる分力によりロック部材50Aがθ方向に回動し、コイルスプリング58が押し縮められる。
【0063】
ロックバー52Aが縦溝42Aの最奥側まで入り込むと、コイルスプリング58の付勢力によって、ロック部材50Aが反θ方向に回動し、
図11の通り、ロックバー52Aが横溝43Aに入り込む。これにより、ピン40Aがロック部材50Aから不抜となり、エアバッグ装置がステアリングホイール本体に取り付けられる。
【0064】
この実施の形態でも、摘み片53をθ方向に回すことにより、ピン40Aがロック部材50Aから抜け出し可能となる。
【0065】
図8~11では、開口62はプレート61の中心に位置しているが、
図12~14に示す第3の実施の形態のように、開口62はプレート51の中心からずれた偏心位置に配置されてもよい。
図12~14の実施の形態のその他の構成は
図8~11の実施の形態と同様であり、同一符号は同一部分を示している。
【0066】
図15~18を参照して第4の実施の形態について説明する。
【0067】
図15は、この実施の形態におけるピン40Bと、ロック部材50Bとの係合関係を示す分解斜視図、
図16はピン40Bを先端側から見た斜視図である。
【0068】
このピン40Bは、先端側の外周面に、先端からピン40Bの長手方向に延在する3条の縦溝71が設けられている。縦溝71は周方向に等間隔で配置されている。
【0069】
各縦溝71の延在方向末端側(ピン40Bの基端側)からは、ピン40Bの周方向に横溝72が設けられている。これにより、縦溝71と横溝72とは、L字形のキー溝を形成している。
【0070】
各縦溝71は、1対の立壁面71a,71bを有している。立壁面71a,71bは、ピン40Bの外周面から立ち下っている。縦溝71の幅、すなわち立壁面71a,71bの間の間隔は、ピン40Bの先端側ほど大きくなっている。
【0071】
立壁面71a,71bは、ピン40Bの軸心線と平行線に対し斜交する斜面となっている。換言すると、縦溝71は、ピン40Bの基端側ほど時計回りに変位する形状となっている。
【0072】
各横溝72は、ピン40Bの先端側から基端側に向って延在する各縦溝71から同一周回方向に延出している。
【0073】
このピン40Bは、ロック部材50Bの中心孔75に差し込まれる。中心孔75の内周面には、求心方向に突出する3個の凸部76が設けられている。凸部76の幅(中心孔75の周回方向の幅)は、立壁面71a,71b間の最も狭い箇所を通過可能なものとなっている。
【0074】
第4の実施の形態におけるその他の構成は第1の実施の形態と同様であり、その他の符号は第1の実施の形態と同一部分を示している。
【0075】
第4の実施の形態において、エアバッグ装置を取付部15に装着するには、ピン40Bを中心孔75に差し込む。そうすると、凸部76が立壁面71aに接触し、該立壁面71aが与える分力によってロック部材50Bがθ方向に回動し、コイルスプリング58が縮められる。凸部76が縦溝71の最奥側まで入り込むと、コイルスプリング58の付勢力によって、ロック部材50Bが反θ方向に回動し、凸部76が横溝72に入り込む。これにより、ピン40Bがロック部材50Bから不抜となり、エアバッグ装置がステアリングホイール本体に取り付けられる。
【0076】
この実施の形態でも、摘み片53をθ方向に回すことにより、ピン40Bが中心孔75から抜け出し可能となる。
【0077】
図19~24を参照して、第5の実施の形態について説明する。
【0078】
図19は、この実施の形態におけるピン40C、ロック部材50C及び保持部材60の係合関係を示す分解斜視図、
図20は凸部の形状を示す
図19のXX矢視図、
図21はスロットの断面形状を示すための、
図19におけるXXI-XXI線に沿う拡大断面図、
図22~24はピン40Cとロック部材50Cとの係合関係を示す斜視図である。
【0079】
ピン40Cは、先端側が略円柱形の小径部81となっており、それよりも上側(ピン基端側)の大径部との境界が段差面81aとなっている。
【0080】
小径部81の側周面には、直径方向に対峙する位置関係にて2個の凸部82が設けられている。
図20の通り、凸部82は、5辺82a~82eを有した、下方(ピン先端側)に向って凸となる五角形であり、先端側にV字形に交わる斜面82a,82bが配置されている。
【0081】
このピン40Cの小径部81は、ロック部材50Cの中心孔83に差し込まれる。ロック部材50Cは、円板部51Cを有しており、円板部51Cの中心部に中心孔83が設けられている。
【0082】
中心孔83からは放射方向に且つ互いに反対方向に延在する1対のスロット84が設けられている。
図21の通り、スロット84の放射方向に延在する側面の一方に斜面84aが設けられている。
【0083】
ロック部材50Cには、ロック部材50と同様に摘み片53と切欠部54が設けられている。
【0084】
ロック部材50Cを保持する保持部材60の形状は、第1の実施の形態と同じである。切欠部54に配置されたコイルスプリング58により、ロック部材50Cが矢印θと反対方向(反θ方向)に付勢されている。
【0085】
第5の実施の形態におけるその他の構成は第1の実施の形態と同様であり、その他の符号は第1の実施の形態と同一部分を示している。
【0086】
第5の実施の形態において、エアバッグ装置を取付部15に装着するには、ピン40Cを中心孔83に差し込む。そうすると、凸部82の斜面82aが斜面84aに接触する。ピン40Cをさらに中心孔83に押し込むと、斜面82a,84同士の摺動によって与えられる分力によってロック部材50Cがθ方向に回動し、コイルスプリング58が縮められる。凸部82の上辺82dがスロット84を通り抜けると、コイルスプリング58の付勢力によって、ロック部材50Cが反θ方向に回動し、
図24の通り、凸部82が円板部51Cの中心孔83の縁部の下側に入り込む。これにより、ピン40Cがロック部材50Cから不抜となり、エアバッグ装置がステアリングホイール本体に取り付けられる。
【0087】
この実施の形態でも、摘み片53をθ方向に回すことにより、ピン40Cがロック部材50Cから抜け出し可能となる。
【0088】
なお、
図19~24では、凸部82及びスロット84が2個ずつ設けられているが、1個ずつでもよく、3個以上の複数個ずつ設けられてもよい。
【0089】
また、
図19~24では、斜面が凸部82とスロット84の双方に設けられているが、いずれか一方にのみ設けられてもよい。
【0090】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は図示以外の形態とされてもよい。例えば、斜面以外の分力付与部を設けてもよい。また、ロック部材と付勢部材とを一体にしてもよい。
【0091】
上記第1~第4の実施の形態では、斜面はピンに設けられているが、ロック部材に設けられてもよく、ピンとロック部材との双方に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 ステアリングホイール
2 エアバッグ装置
10 ステアリングホイール本体
12 ホイール部
13 スポーク部
14 ボス部
15 エアバッグ装置取付部
16 差込穴
21 リテーナ
22 インフレータ
23 エアバッグ
40,40A,40B,40C ピン
42,42A,71 縦溝
43,43A,72 横溝
45,45A,82a,82b,84a 斜面
50,50A,50B,50C ロック部材
52,52A ロックバー
60 保持部材