(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ガスセンサの被水防止構造
(51)【国際特許分類】
F02M 35/10 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F02M35/10 301H
F02M35/10 301T
(21)【出願番号】P 2019215005
(22)【出願日】2019-11-28
【審査請求日】2022-04-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】野地 祐矢
(72)【発明者】
【氏名】平塚 公一
【審査官】中田 善邦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-025726(JP,A)
【文献】特開2002-257608(JP,A)
【文献】特開2018-179763(JP,A)
【文献】特開2009-042056(JP,A)
【文献】特開2013-060934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 35/00- 35/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路に設けられ、内部にガスを導入する導入口、および前記ガスを排出する排出口を有する隔壁と、
前記隔壁の内部に設けられたハウジングと、
前記ハウジングの内部に設けられたガスセンサと、
前記導入口に設けられ、前記隔壁の内側に突出する突出部と、を具備し、
第1の方向の一方から他方に向けて、前記ハウジングが延伸し、
前記隔壁は、前記第1の方向の前記一方から前記他方に向けて延伸する部分を有し、
前記第1の方向の前記他方における前記ハウジングの端部は、
前記第1の方向の前記他方における前記隔壁の端部から離間し、
前記ハウジングの前記端部と前記隔壁の
前記端部との間には、前記隔壁に閉じられていない空洞が形成され、
前記空洞が前記排出口であり、
前記導入口は、前記隔壁の前記端部に設けられているガスセンサの被水防止構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスセンサの被水防止構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の吸気系などにガスセンサを設け、ガスセンサにガスを当てることでガスの温度などの測定を行う。しかしガスセンサがガス中の水に接触することで故障する恐れがある。耐被水性の向上のため、副室に取り入れたガスを旋回させることで水分を分離する技術が開発されている(特許文献1など)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の技術では水分の分離前のガスを副室に導入するため、耐被水性が不十分であった。また、ガスセンサの感度向上のためにはガスを滞留させずガスの交換を促進することが有効である。しかし従来の技術では副室の開口部をガスの導入口および排出口として使用するため、ガスが干渉してしまい、ガス交換が効果的に行われない恐れがある。以上のように、耐被水性と感度向上との両立は困難であった。そこで、耐被水性および感度の向上が可能なガスセンサの被水防止構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、内燃機関の吸気通路に設けられ、内部にガスを導入する導入口、および前記ガスを排出する排出口を有する隔壁と、前記隔壁の内部に設けられたハウジングと、前記ハウジングの内部に設けられたガスセンサと、前記導入口に設けられ、前記隔壁の内側に突出する突出部と、を具備し、第1の方向の一方から他方に向けて、前記ハウジングが延伸し、前記隔壁は、前記第1の方向の前記一方から前記他方に向けて延伸する部分を有し、前記第1の方向の前記他方における前記ハウジングの端部は、前記第1の方向の前記他方における前記隔壁の端部から離間し、前記ハウジングの前記端部と前記隔壁の前記端部との間には、前記隔壁に閉じられていない空洞が形成され、前記空洞が前記排出口であり、前記導入口は、前記隔壁の前記端部に設けられているガスセンサの被水防止構造によって達成できる。
【発明の効果】
【0006】
耐被水性および感度の向上が可能なガスセンサの被水防止構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1はインテークマニホールドを例示する図である。
【
図2】
図2(a)は実施形態に係るガスセンサの被水防止構造を例示する正面図であり、
図2(b)はガスセンサを例示する断面図である。
図2(c)は導入口付近を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態のガスセンサの被水防止構造について説明する。
図1はインテークマニホールド40を例示する図である。インテークマニホールド40は内燃機関に吸気を導入する吸気通路として機能する。インテークマニホールド40のサージタンク42に被水防止構造100が設けられる。
【0009】
図2(a)は実施形態に係るガスセンサの被水防止構造100を例示する正面図であり、
図2(b)は被水防止構造100を例示する断面図である。被水防止構造100は隔壁10、ハウジング12およびガスセンサ14を有する。
【0010】
隔壁10はインテークマニホールドに設けられ、X軸方向およびZ軸方向に延伸するL字形状を有し、内部に副室11を区画する。隔壁10の-X側かつ-Z側の頂点に対応する位置に、導入口20が設けられている。
【0011】
副室11内にハウジング12が設けられている。ハウジング12は例えば円筒形であり、Z軸方向に延伸し、内部に空洞を有する。ハウジング12の内部には、ガスの温度を測定するガスセンサ14が設けられている。ハウジング12の+Z側は例えばインテークマニホールドの内壁で閉塞され、-Z側は開放されている。ハウジング12の-Z側の端部は隔壁10から離間しており、これらの間に空洞が形成される。当該空洞は隔壁10によって閉じられておらず、副室11の外部と連通し、ガスの排出口22として機能する。
【0012】
図2(c)は導入口20付近を拡大した斜視図である。導入口20は隔壁10を貫通するスリット状の開口部である。隔壁10の導入口20付近には隔壁10から副室11内に向けて突出するリブ30および32(突出部)が設けられている。リブ30はX軸方向に延伸し、リブ32はZ軸方向に延伸する。リブ30および32の先端はハウジング12から離間する。
【0013】
点線L1はリブ30の先端と導入口20の端部とを結ぶ仮想の線であり、点線L2はリブ32の先端と導入口20の端部とを結ぶ仮想の線である。点線L1およびL2はガスセンサ14に重ならない。
【0014】
図2(b)に矢印で示すように、ガスは導入口20から副室11の内部に導入される。このときリブ30および32によってガスが剥離され、ガスから水分が分離される。導入口20、リブ30および32を通過したガスはハウジング12の内部に導入され、ハウジング12内で旋回する。ガスセンサ14は導入されたガスの温度を測定する。ガスは排出口22から排出される。
【0015】
本実施形態によれば、被水防止構造100は隔壁10、ハウジング12およびガスセンサ14を備える。隔壁10の導入口20には副室11に向けて突出するリブ30および32が設けられている。リブ30および32にガスが衝突することで、ガス中の水が除去される。水分を除去したガスを副室11に導入することで、ガスセンサ14の水への暴露が抑制され、耐被水性が向上する。
【0016】
ガスセンサ14は、リブ30の先端と導入口20の端部とを結ぶ点線L1、およびリブ32の先端と導入口20の端部とを結ぶ点線L2から外れている。リブ30および32で分離された水は、慣性によって点線L1およびL2に沿って飛散する。ガスセンサ14が点線L1およびL2から外れているため、水はガスセンサ14に到達しにくい。したがって耐被水性を高めることができる。
【0017】
隔壁10には副室11にガスを導入する導入口20、および副室11からガスを排出する排出口22が設けられている。このためガスセンサ14付近でのガス交換が促進され、感度が向上する。この結果ガスセンサ14は、ガスの温度変化に追従して正確な温度を検出することができる。導入口20とは別の位置に排出口22が配置されるため、導入口20から導入されるガスの流路と、排出口22から排出されるガスの流路が干渉しにくい。円滑にガスを導入および排出することで、ガス交換を効果的に行うことができる。
【0018】
ガスセンサ14は温度センサでもよいし、例えば圧力センサなどでもよい。温度検知のためには圧力検知に比べて、より積極的なガス交換を行うことが好ましい。ガスセンサ14はハウジング12内に設けられ、ガスはハウジング12内で渦を発生させる。このためガスセンサ14付近でのガス交換が促進され、感度が向上する。したがって温度検知の精度が高くなる。ハウジング12の形状は円筒形状に限定されず、楕円筒形状でもよいし、多角形筒状などでもよい。ガスが渦を生成するように、ハウジング12は円弧などの曲線を含むことが好ましい。特に
図2(a)および
図2(b)に示すように、ハウジング12が円筒形状であることにより、ガスの渦生成が促進されるため、感度が大きく向上する。
【0019】
以上本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 隔壁
11 副室
12 ハウジング
14 ガスセンサ
20 導入口
22 排出口
30、32 リブ(突出部)
40 インテークマニホールド(吸気通路)
42 サージタンク
100 被水防止構造