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特許7347176画像処理装置及び端末装置のためのコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】画像処理装置及び端末装置のためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/11 20180101AFI20230912BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20230912BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230912BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20230912BHJP
   G06F 3/12 20060101ALI20230912BHJP
   H04W 4/00 20180101ALI20230912BHJP
   H04W 12/0431 20210101ALI20230912BHJP
   H04W 12/06 20210101ALI20230912BHJP
【FI】
H04W76/11
H04W84/10 110
H04W84/12
H04W88/06
G06F3/12 303
G06F3/12 336
G06F3/12 392
H04W4/00 110
H04W12/0431
H04W12/06
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019219889
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021090154
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 宗久
(72)【発明者】
【氏名】朝倉 弘崇
(72)【発明者】
【氏名】井上 卓弥
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-14545(JP,A)
【文献】特開2019-169839(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
G06F 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理装置であって、
Bluetooth規格に従った無線通信を実行するための第1の無線インターフェースであって、
前記第1の無線インターフェースは、前記Bluetooth規格のアドバタイジング信号を送信可能であり、
前記アドバタイジング信号は、端末装置から接続情報を受信するための所定情報を含み、
前記接続情報は、前記画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための情報である、前記第1の無線インターフェースと、
Wi-Fi規格に従った無線通信を実行するための第2の無線インターフェースと、
前記所定情報を含む前記アドバタイジング信号が第1の端末装置によって受信される場合に、前記第1の端末装置から、前記所定情報が利用された第1の要求信号を受信する第1の要求信号受信部であって、前記第1の要求信号は、前記第1の端末装置から第1の接続情報を受信するための通信の実行を要求するための信号である、前記第1の要求信号受信部と、
前記第1の端末装置から前記第1の要求信号が受信される場合に、前記第1の端末装置から前記第1の接続情報を受信する第1の接続情報受信部と、
前記第1の端末装置から前記第1の接続情報が受信される場合に、前記第1の接続情報を利用して、前記第2の無線インターフェースを介して、第1のアクセスポイントとの第1の無線接続を確立する第1の確立部と、
前記第1のアクセスポイントとの前記第1の無線接続が確立された後に、画像処理に関係する関係処理を実行する関係処理実行部であって、前記関係処理は、前記第1のアクセスポイント及び前記第2の無線インターフェースを介して、前記画像処理に関係する対象データの通信を前記第1の端末装置と実行することを含む、前記関係処理実行部と、
前記対象データの通信を前記第1の端末装置と実行中である状態において、前記第2の無線インターフェースを介して、前記第1のアクセスポイントとは異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理を実行することを禁止する禁止部と、
を備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記禁止部は、前記所定情報を含む前記アドバタイジング信号を送信しないように前記第1の無線インターフェースを制御することによって、前記異なるアクセスポイントとの前記無線接続を確立するための前記処理を実行することを禁止する、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の無線インターフェースは、前記Bluetooth規格のバージョン5以降で利用可能な拡張アドバタイジング信号と、前記Bluetooth規格の前記バージョン5未満で利用可能な拡張されていない通常アドバタイジング信号と、のどちらも送信可能であり、
前記所定情報を含む前記アドバタイジング信号は、前記所定情報を含む前記拡張アドバタイジング信号であり、
前記禁止部は、前記所定情報を含む前記拡張アドバタイジング信号に代えて前記所定情報を含まない前記通常アドバタイジング信号を送信するように前記第1の無線インターフェースを制御することによって、前記異なるアクセスポイントとの前記無線接続を確立するための前記処理を実行することを禁止する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記通常アドバタイジング信号は、前記関係処理を実行中であることを示すステータス情報を含む、請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記画像処理装置は、さらに、
前記対象データの通信が完了する場合に、前記所定情報を含まない前記通常アドバタイジング信号に代えて前記所定情報を含む前記拡張アドバタイジング信号を送信するように前記第1の無線インターフェースを制御するインターフェース制御部を備える、請求項3又は4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理装置は、さらに、
前記第1のアクセスポイントとの前記第1の無線接続が確立されている状態において、前記所定情報を含む前記アドバタイジング信号が前記第1の端末装置とは異なる第2の端末装置によって受信される場合に、前記第2の端末装置から、前記所定情報が利用された第2の要求信号を受信する第2の要求信号受信部であって、前記第2の要求信号は、前記第2の端末装置から第2の接続情報を受信するための通信の実行を要求するための信号である、前記第2の要求信号受信部と、
前記第2の端末装置から前記第2の要求信号が受信される場合に、前記第1のアクセスポイントとの前記第1の無線接続を切断する切断部と、
前記第2の端末装置から前記第2の要求信号が受信される場合に、前記第2の端末装置から前記第2の接続情報を受信する第2の接続情報受信部}と、
前記第2の端末装置から前記第2の接続情報が受信される場合に、前記第2の接続情報を利用して、前記第2の無線インターフェースを介して、前記第1のアクセスポイントとは異なる第2のアクセスポイントとの第2の無線接続を確立する第2の確立部と、
を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記画像処理装置は、さらに、
印刷実行部を備え、
前記画像処理は、印刷であり、
前記対象データは、印刷対象の画像を表わす印刷データであり、
前記関係処理は、前記第1の端末装置から前記印刷データを受信すること、及び、前記印刷データによって表わされる前記画像の印刷を前記印刷実行部に実行させること、を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
端末装置のためのコンピュータプログラムであって、
前記端末装置は、
Bluetooth規格に従った無線通信を実行するための第1の無線インターフェースと、
Wi-Fi規格に従った無線通信を実行するための第2の無線インターフェースと、
表示部と、
コンピュータと、を備え、
前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、以下の各部、即ち、
前記第1の無線インターフェースを介して、複数個の画像処理装置から複数個のアドバタイジング信号を受信するアドバタイジング信号受信部であって、前記複数個のアドバタイジング信号は、所定情報を含む第1のアドバタイジング信号と、前記所定情報を含まない第2のアドバタイジング信号と、を含む、前記アドバタイジング信号受信部と、
前記複数個の画像処理装置から前記複数個のアドバタイジング信号が受信される場合に、前記複数個の画像処理装置を識別する複数個の識別情報を含む選択画面を前記表示部に表示させる表示制御部であって、前記選択画面では、前記第1のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報は、第1の表示態様で表示され、前記第2のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報は、前記第1の表示態様とは異なる第2の表示態様で表示される、前記表示制御部と、
前記選択画面において、前記複数個の識別情報の中から、前記第1のアドバタイジング信号の送信元の特定の画像処理装置を識別する特定の識別情報が選択される場合に、要求信号を前記特定の画像処理装置に送信する要求信号送信部であって、前記要求信号は、前記特定の画像処理装置から受信された前記第1のアドバタイジング信号に含まれる前記所定情報が利用された信号であり、前記要求信号は、接続情報を前記特定の画像処理装置に送信するための通信の実行を要求するための信号であり、前記接続情報は、前記特定の画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための情報である、前記要求信号送信部と、
前記要求信号が前記特定の画像処理装置に送信される場合に、前記接続情報を前記特定の画像処理装置に送信する接続情報送信部と、
前記接続情報が前記特定の画像処理装置に送信されることに起因して、前記特定の画像処理装置と前記アクセスポイントとの間に前記無線接続が確立された後に、前記第2の無線インターフェース及び前記アクセスポイントを介して、前記特定の画像処理装置によって実行される画像処理に関係する対象データの通信を前記特定の画像処理装置と実行する対象データ通信部と、
として機能させる、コンピュータプログラム。
【請求項9】
前記第2のアドバタイジング信号は、前記第2のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置のステータス情報を含み、
前記選択画面では、前記第2の表示態様で表示される前記識別情報は、前記ステータス情報に関連付けて表示される、請求項8に記載のコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、Bluetooth(登録商標)規格に従った無線通信によって端末装置から画像処理装置に接続情報が送信され、画像処理装置が当該接続情報を利用してアクセスポイントとの無線接続を確立する技術を開示する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1には、DPP(Device Provisioning Protocolの略)方式に従って、或る装置とアクセスポイントとの間にWi-Fi接続を確立させるための技術が開示されている。この文献には、Bluetooth規格に従った無線通信を利用して、当該或る装置の公開鍵を外部に送信することが開示されている。特に、Bluetooth規格のバージョン5で利用可能な拡張アドバタイジング信号を利用して、公開鍵を外部に送信することが開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】「Device Provisioning Protocol Specification Version 1.1」 Wi-Fi Alliance, 2018年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立させる状況において、ユーザの利便性を向上させる技術を提供する。
【0005】
本明細書によって開示される画像処理装置は、Bluetooth規格に従った無線通信を実行するための第1の無線インターフェースであって、前記第1の無線インターフェースは、前記Bluetooth規格のアドバタイジング信号を送信可能であり、前記アドバタイジング信号は、端末装置から接続情報を受信するための所定情報を含み、前記接続情報は、前記画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための情報である、前記第1の無線インターフェースと、Wi-Fi規格に従った無線通信を実行するための第2の無線インターフェースと、前記所定情報を含む前記アドバタイジング信号が第1の端末装置によって受信される場合に、前記第1の端末装置から、前記所定情報が利用された第1の要求信号を受信する第1の要求信号受信部であって、前記第1の要求信号は、前記第1の端末装置から第1の接続情報を受信するための通信の実行を要求するための信号である、前記第1の要求信号受信部と、前記第1の端末装置から前記第1の要求信号が受信される場合に、前記第1の端末装置から前記第1の接続情報を受信する第1の接続情報受信部と、前記第1の端末装置から前記第1の接続情報が受信される場合に、前記第1の接続情報を利用して、前記第2の無線インターフェースを介して、第1のアクセスポイントとの第1の無線接続を確立する第1の確立部と、前記第1のアクセスポイントとの前記第1の無線接続が確立された後に、画像処理に関係する関係処理を実行する関係処理実行部であって、前記関係処理は、前記第1のアクセスポイント及び前記第2の無線インターフェースを介して、前記画像処理に関係する対象データの通信を前記第1の端末装置と実行することを含む、前記関係処理実行部と、前記対象データの通信を前記第1の端末装置と実行中である状態において、前記第2の無線インターフェースを介して、前記第1のアクセスポイントとは異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理を実行することを禁止する禁止部と、を備えていてもよい。
【0006】
上記の構成によると、画像処理装置は、画像処理装置と第1の端末装置との間で第1のアクセスポイントを介した対象データの通信を実行中である状態において、第1のアクセスポイントとは異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理を実行することを禁止する。従って、画像処理装置は、当該処理を実行することに起因して第1のアクセスポイントとの第1の無線接続が切断されることを抑制することができる。この結果、対象データの通信が妨げられるのを抑制することができ、対象データの通信を望むユーザ(即ち第1の端末装置のユーザ)の利便性を向上させることができる。
【0007】
本明細書では、端末装置のためのコンピュータプログラムも開示する。前記端末装置は、Bluetooth規格に従った無線通信を実行するための第1の無線インターフェースと、Wi-Fi規格に従った無線通信を実行するための第2の無線インターフェースと、表示部と、コンピュータと、を備えていてもよい。前記コンピュータプログラムは、前記コンピュータを、以下の各部、即ち、前記第1の無線インターフェースを介して、複数個の画像処理装置から複数個のアドバタイジング信号を受信するアドバタイジング信号受信部であって、前記複数個のアドバタイジング信号は、所定情報を含む第1のアドバタイジング信号と、前記所定情報を含まない第2のアドバタイジング信号と、を含む、前記アドバタイジング信号受信部と、前記複数個の画像処理装置から前記複数個のアドバタイジング信号が受信される場合に、前記複数個の画像処理装置を識別する複数個の識別情報を含む選択画面を前記表示部に表示させる表示制御部であって、前記選択画面では、前記第1のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報は、第1の表示態様で表示され、前記第2のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報は、前記第1の表示態様とは異なる第2の表示態様で表示される、前記表示制御部と、前記選択画面において、前記複数個の識別情報の中から、前記第1のアドバタイジング信号の送信元の特定の画像処理装置を識別する特定の識別情報が選択される場合に、要求信号を前記特定の画像処理装置に送信する要求信号送信部であって、前記要求信号は、前記特定の画像処理装置から受信された前記第1のアドバタイジング信号に含まれる前記所定情報が利用された信号であり、前記要求信号は、接続情報を前記特定の画像処理装置に送信するための通信の実行を要求するための信号であり、前記接続情報は、前記特定の画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための情報である、前記要求信号送信部と、前記要求信号が前記特定の画像処理装置に送信される場合に、前記接続情報を前記特定の画像処理装置に送信する接続情報送信部と、前記接続情報が前記特定の画像処理装置に送信されることに起因して、前記特定の画像処理装置と前記アクセスポイントとの間に前記無線接続が確立された後に、前記第2の無線インターフェース及び前記アクセスポイントを介して、前記特定の画像処理装置によって実行される画像処理に関係する対象データの通信を前記特定の画像処理装置と実行する対象データ通信部と、として機能させてもよい。
【0008】
上記の構成によると、端末装置は、所定情報を含む第1のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報と、所定情報を含む第2のアドバタイジング信号の送信元の画像処理装置を識別する識別情報と、が区別されている選択画面を表示することができる。即ち、選択画面では、所定情報が利用された要求信号の送信先になり得る画像処理装置を識別する識別情報と、当該要求信号の送信先になり得ない画像処理装置を識別する識別情報と、が区別されている。このために、ユーザは、前者の識別情報を適切に選択することができる。従って、特定の画像処理装置とアクセスポイントとの間に無線接続を確立させることができ、端末装置と特定の画像処理装置との間で対象データの通信を適切に実行させることができる。この結果、対象データの通信を望むユーザ(即ち端末装置のユーザ)の利便性を向上させることができる。
【0009】
上記の画像処理装置を実現するためのコンピュータプログラム、当該コンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記録媒体、及び、上記の画像処理装置によって実行される方法も新規で有用である。上記の端末装置のコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ可読記録媒体、上記の端末装置そのもの、及び、上記の端末装置によって実行される方法も新規で有用である。また、上記の画像処理装置と上記の端末装置とを備えるシステムも新規で有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】通信システムの構成を示す。
図2】プリンタとアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための処理のシーケンス図を示す。
図3】無線接続の確立後の処理のシーケンス図を示す。
図4】プリンタと他のアクセスポイントとの間に無線接続を確立するための処理のシーケンス図を示す。
図5】携帯端末が複数個のプリンタからアドバタイジング信号を受信するケースのシーケンス図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(通信システム2の構成:図1
図1に示されるように、通信システム2は、複数個のプリンタ10,50と複数個の携帯端末100,150とを備える。プリンタ50及び携帯端末100のそれぞれは、Wi-Fi規格に従った無線接続(以下では「Wi-Fi接続」と記載する)をアクセスポイント200と確立している。即ち、プリンタ50及び携帯端末100は、アクセスポイント200によって形成される同じ無線ネットワークに所属している。携帯端末150は、Wi-Fi接続をアクセスポイント250と確立している。以下では、携帯端末、アクセスポイントのことを、それぞれ、「端末」、「AP」と簡単に記載する。
【0012】
本実施例では、まず、プリンタ10と携帯端末100との間でBlueTooth(登録商標)規格に従った無線通信が実行され、AP200とのWi-Fi接続を確立するための接続情報が端末100からプリンタ10に送信される。その後、プリンタ10とAP200との間でWi-Fi接続が確立される。
【0013】
(プリンタ10,50の構成)
各プリンタ10,50は、印刷機能を実行可能な周辺装置(例えば端末100の周辺装置)である。プリンタ10のモデル名は「M1」であり、プリンタ50のモデル名は「M1」とは異なる「M2」である。プリンタ10は、表示部12と、印刷実行部14と、BT(BlueToothの略)インターフェース16と、Wi-Fiインターフェース18と、制御部30と、を備える。以下では、インターフェースのことを「I/F」と記載する。
【0014】
表示部12は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。表示部12は、ユーザから指示を受け付けるタッチパネル(即ち操作部)としても機能する。印刷実行部14は、インクジェット方式、レーザ方式等の印刷機構を備える。
【0015】
BTI/F16は、BT規格に従った無線通信を実行するためのI/Fである。BT規格は、例えば、IEEE802.15.1の規格、及び、それに準ずる規格に基づく無線通信方式である。BTI/F16は、BT規格のバージョン5以降で定義されているI/Fである。BT規格のバージョン5以降では、拡張アドバタイジング信号(いわゆるAdvertising Extensions)が採用されている。BTI/F16は、BT規格のバージョン5.0以降で利用可能な拡張アドバタイジング信号と、BT規格のバージョン5未満で利用可能な拡張されていない通常アドバタイジング信号と、のどちらも送信可能である。拡張アドバタイジング信号に含めることが可能なデータのサイズは、通常アドバタイジング信号に含めることが可能なデータのサイズよりも大きい。このために、BTI/F16は、拡張アドバタイジング信号を利用して、比較的に大きいサイズのデータ(例えば後述の公開鍵300)を送信することができる。以下では、アドバタイジング信号のことを「AD信号」と記載する。
【0016】
Wi-FiI/F14は、Wi-Fi規格に従った無線通信を実行するための無線インターフェースである。Wi-Fi規格は、例えば、IEEE(The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略)の802.11の規格、及び、それに準ずる規格(例えば802.11a,11b,11g,11n,11ac等)に従って、無線通信を実行するための無線通信方式である。Wi-FiI/F14は、特に、Wi-Fi Allianceによって策定されたDPP(Device Provisioning Protocolの略)方式をサポートしている。DPP方式は、Wi-Fi Allianceによって作成された規格書「Device Provisioning Protocol Specification Version 1.1」に記述されている無線通信方式である。
【0017】
制御部30は、CPU32とメモリ34とを備える。CPU32は、メモリ34に記憶されているプログラム36に従って、様々な処理を実行する。メモリ34は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ等によって構成される。
【0018】
プリンタ50のハードウェア構成(図示省略)は、プリンタ10と同様である。即ち、プリンタ50は、BT規格のバージョン5以降で定義されているBTI/Fと、DPP方式をサポートしているWi-FiI/Fと、を備える。
【0019】
(端末100,150の構成)
各端末100,150は、携帯電話(例えばスマートフォン)、PDA、タブレットPC等の可搬型の端末装置である。端末100は、表示部112と、BTI/F116と、Wi-FiI/F118と、制御部130と、を備える。
【0020】
表示部112は、様々な情報を表示するためのディスプレイである。表示部112は、ユーザから指示を受け付けるタッチパネル(即ち操作部)としても機能する。BTI/F116は、プリンタ10のBTI/F16と同様である。即ち、BTI/F116は、BT規格のバージョン5以降で定義されているI/Fであり、拡張AD信号及び通常AD信号のどちらも解釈可能である。Wi-FiI/F118は、プリンタ10のWi-FiI/F18と同様である。即ち、Wi-FiI/F118は、DPP方式をサポートしている。
【0021】
制御部130は、CPU132とメモリ134とを備える。CPU132は、メモリ134に格納されているプログラム136,138に従って、様々な処理を実行する。メモリ134は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ等によって構成され、OS(Operating Systemの略)プログラム136(以下では単に「OS136」と記載する)とプリントアプリケーション138(以下では単に「アプリ138」と記載する)とを記憶する。
【0022】
OS136は、端末100の基本的な動作を制御するためのプログラムであり、例えば、iOS(登録商標)、アンドロイド(登録商標)等である。アプリ138は、プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続を確立させたり、プリンタ10に印刷を実行させたりするためのプログラムである。アプリ138は、例えば、プリンタ10のベンダによって提供されるインターネット上のサーバから端末100にインストールされてもよいし、プリンタ10と共に出荷されるメディアから端末100にインストールされてもよい。
【0023】
携帯端末150のハードウェア構成(図示省略)は、携帯端末100と同様である。即ち、携帯端末150は、BT規格のバージョン5以降で定義されているBTI/Fと、DPP方式をサポートしているWi-FiI/Fと、を備える。
【0024】
(各デバイス10,50,100,150によって実行される処理:図2図5
続いて、図2図5を参照して、各デバイス10等によって実行される具体的な処理を説明する。以下では、端末100のCPU132がOS136又はアプリ138に従って実行する処理を説明する際に、OS136又はアプリ138を主体として説明する。図2図5では、各デバイス10等の間のBT規格に従った通信、Wi-Fi規格に従った通信を、それぞれ、実線、破線で示す。
【0025】
(プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続を確立するための処理:図2
まず、図2を参照して、端末100を利用して、プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続を確立するための処理を説明する。T100では、プリンタ10の電源がユーザによってONされる。この状態では、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続を確立していない。この場合、プリンタ10のCPU32は、拡張AD信号の送信をBTI/F16に指示する。この結果、BTI/F16は、T102において、拡張AD信号を繰り返し送信する。拡張AD信号は、プリンタ10のモデル名M1と、プリンタ10の公開鍵300と、を含む。公開鍵300は、DPP方式の信号であるAuthentication Requestの送信に利用される情報である。
【0026】
T110では、端末100のアプリ138を起動する操作がユーザによって実行され、T112では、プリンタ10とAP200との間のWi-Fi接続を確立するためのWi-Fi接続操作がユーザによって実行される。この場合、T120では、アプリ138は、AD信号の受信を指示するための受信指示をOS136に供給する。
【0027】
OS136は、アプリ138から受信指示を取得すると(T120)、BTI/F116を起動し、T122において、BTI/F116を介して、プリンタ10から拡張AD信号を受信する。そして、OS136は、T124において、拡張AD信号に含まれるモデル名M1及び公開鍵300をアプリ138に供給する。
【0028】
アプリ138は、OS136からモデル名M1及び公開鍵300を取得すると(T124)、T130において、接続確認画面を表示部112に表示する。接続確認画面は、どのプリンタとAPとの間にWi-Fi接続を確立させるのかをユーザに問い合わせるメッセージと、取得済みのモデル名M1と、を含む。
【0029】
T132では、接続確認画面内のモデル名M1がユーザによって選択される。この場合、アプリ138は、T140において、DPP方式に従った無線通信の実行を指示するためのDPP指示をOS136に供給する。DPP指示は、T124で取得済みの公開鍵300、即ち、モデル名M1を有するプリンタ10から受信された公開鍵300を含む。
【0030】
OS136は、アプリ138からDPP指示を取得すると(T140)、T142において、DPP方式のAuthentication(以下では「Auth」と記載する)をプリンタ10と実行する。具体的には、OS136は、まず、公開鍵300と端末100の秘密鍵とを利用して共有鍵を生成し、当該共有鍵を利用して暗号化データを生成する。そして、OS136は、Wi-FiI/F118を介して、当該暗号化データと端末100の公開鍵とを含むAuth Requestをプリンタ10に送信する。当該Requestは、認証の実行をプリンタ10に要求する信号である。
【0031】
CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、端末100から当該Requestを受信すると、当該Requestに含まれる暗号化データの認証を実行する。CPU32は、認証が成功すると、Wi-FiI/F18を介して、成功を示すAuth Responseを端末100に送信する。以下では、Request、Responseのことを、それぞれ、「Req」、「Res」と記載する。
【0032】
CPU32は、Auth Resを端末100に送信すると(T142)、T144において、DPP方式のConfiguration(以下では「Config」と記載する)を端末100と実行する。具体的には、CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、Config Reqを端末100に送信する。当該Reqは、プリンタ用Config Objectの送信をプリンタ10に要求する信号である。当該Objectは、プリンタ10がAP200とのWi-Fi接続を確立するために必要な接続情報であり、プリンタ用Signed-Connector等を含む。以下では、Config Object、Signed-Connectorのことを、それぞれ、「CO」、「SC」と記載する。
【0033】
OS136は、Wi-FiI/F118を介して、プリンタ10からConfig Reqを受信すると、プリンタ用SCを含むプリンタ用COを生成する。次いで、OS136は、Wi-FiI/F118を介して、プリンタ用COを含むConfig Resをプリンタ10に送信する。
【0034】
CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、端末100からConfig Resを受信すると(T144)、T146において、プリンタ用COをメモリ34に記憶する。
【0035】
次いで、CPU32は、T148において、DPP方式のNetwork AccessをAP200と実行する。具体的には、CPU32は、まず、T146で記憶済みのプリンタ用COに含まれるプリンタ用SCを取得する。そして、CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、プリンタ用SCを含むDPP Peer Discovery ReqをAP200に送信する。当該Reqは、認証の実行をAP200に要求する信号である。以下では、DPP Peer Discoveryのことを、単に「Discovery」と記載する。
【0036】
AP200は、プリンタ10からDiscovery Reqを受信すると、当該Reqに含まれるプリンタ用SCを利用して認証を実行する。AP200は、認証が成功すると、接続キーを生成すると共に、AP用SCを含むDiscovery Resをプリンタ10に送信する。
【0037】
CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、AP200からDiscovery Resを受信すると、当該Resに含まれるAP用SCを利用して認証を実行する。CPU32は、認証が成功すると、接続キーを生成する。ここで生成される接続キーは、AP200によって生成される接続キーと同じものである。これにより、プリンタ10及びAP200の間で接続キーが共有される。
【0038】
CPU32は、接続キーを利用して、Wi-FiI/F18を介して、4way-handshakeの通信をAP200と実行する。この結果、プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続が確立される。
【0039】
CPU32は、AP200とのWi-Fi接続を確立すると(T148)、拡張AD信号の送信をBTI/F16に指示する。この結果、BTI/F16は、T150において、拡張AD信号を繰り返し送信する。当該拡張AD信号は、T102で送信される拡張AD信号と同じ信号である。
【0040】
図2の続きの処理:図3
続いて、図3を参照して、図2の続きの処理を説明する。図2の処理において、プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続が確立されると(T148)、各プリンタ10,50及び端末100がAP200によって形成される同じ無線ネットワークに所属する状態になる。
【0041】
T210では、印刷対象の画像を表わす画像ファイルを選択するためのファイル選択操作がユーザによって実行される。ここで選択される画像ファイルは、端末100のメモリ134に記憶されているファイルであってもよいし、インターネットを介して取得されるファイルであってもよい。この場合、T220では、アプリ138は、プリンタ10,50の検索を指示するための検索指示をOS136に供給する。
【0042】
OS136は、アプリ138から検索指示を取得すると(T220)、T222において、Wi-Fi接続を利用して(即ちWi-FiI/F118を介して)、検索信号をブロードキャストによってAP200に送信する。この結果、検索信号が各プリンタ10,50によって受信される。
【0043】
プリンタ10のCPU32は、Wi-Fi接続を利用して(即ちWi-FiI/F18を介して)、端末100から検索信号を受信すると(T222)、T224Aにおいて、Wi-Fi接続を利用して、プリンタ10のモデル名M1と、プリンタ10のIPアドレスIP1と、を含む応答信号を端末100に送信する。同様に、プリンタ50は、T224Bにおいて、Wi-Fi接続を利用して、プリンタ50のモデル名M2と、プリンタ50のIPアドレスIP2と、を含む応答信号を端末100に送信する。
【0044】
OS136は、Wi-Fi接続を利用して、各プリンタ10,50から各応答信号を受信すると(T224A,T224B)、T226において、各応答信号に含まれる各情報(即ち、モデル名M1とIPアドレスIP1のセット、及び、モデル名M2とIPアドレスIP2のセット)をアプリ138に供給する。
【0045】
アプリ138は、OS136から各情報を取得すると(T226)、T230において、プリンタ選択画面を表示部12に表示させる。プリンタ選択画面は、印刷を実行すべきプリンタを選択することをユーザに促すメッセージと、T226で取得済みの各情報に含まれる各モデル名M1,M2と、を含む。
【0046】
T232では、プリンタ選択画面において、プリンタ10のモデル名M1がユーザによって選択される。この場合、アプリ138は、T240において、画像ファイルの送信を指示するための印刷指示をOS136に供給する。印刷指示は、T226で取得済みの各情報のうち、T232で選択済みのモデル名M1に対応するIPアドレスIP1を含む。印刷指示は、さらに、T210で選択済みの画像ファイルのファイル名を含む。
【0047】
OS136は、アプリ138から印刷指示を取得すると(T240)、T242において、Wi-Fi接続を利用して、送信先としてのIPアドレスIP1と、選択済みの画像ファイルに対応する印刷データと、を含む印刷指示をプリンタ10に送信する。
【0048】
CPU32は、Wi-Fi接続を利用して、端末100から印刷指示の受信を開始すると(T242)、T250において、通常AD信号の送信をBTI/F16に指示する。この結果、BTI/F16は、T250において、拡張AD信号を送信する状態(図2のT150)から通常AD信号を送信する状態に変化する。通常AD信号は、プリンタ10のモデル名M1と、印刷を実行中であることを示すステータス情報310と、を含む。通常AD信号は、公開鍵300を含まない。
【0049】
CPU32は、端末100から印刷指示の受信を開始すると(T242)、さらに、T260において、印刷指示に含まれる印刷データを印刷実行部14に供給して、印刷データによって表わされる画像の印刷を印刷実行部14に実行させる。ここで、印刷データの全てを受信するにはある程度の時間を要する。従って、印刷データのうちの一部のデータが受信された時点で印刷が開始され(T260)、その後、印刷データの残りのデータが受信されて、当該残りのデータが印刷実行部14に供給されると、印刷が完了する(T262)。
【0050】
上述したように、プリンタ10は、印刷データの受信を開始すると(T242)、公開鍵300を含む拡張AD信号に代えて、公開鍵300を含まない通常AD信号を送信する(T250)。従って、プリンタ10が印刷データの受信を実行中である状態において、端末100とは異なる端末が拡張AD信号を受信する事象が発生しない。即ち、当該異なる端末が公開鍵300を含むAuth Reqをプリンタ10に送信する事象が発生しない。仮に、このような事象が発生すると、プリンタ10は、印刷データの受信を実行中であるにも関わらず、AP200とのWi-Fi接続を切断して、AP200とは異なるAPとのWi-Fi接続を確立するための処理を実行し得る。本実施例では、プリンタ10は、印刷データの受信を実行中である状態において、拡張AD信号に代えて通常AD信号を送信することによって、AP200とは異なるAPとのWi-Fi接続を確立するための処理を実行することを禁止する。このために、印刷データの受信を実行中である状態において、AP200とのWi-Fi接続が切断されることを抑制することができる。この結果、印刷データの通信が妨げられるのを抑制することができ、印刷データの通信(即ち印刷の実行)を望むユーザの利便性を向上させることができる。
【0051】
また、プリンタ10は、ステータス情報310を含む通常AD信号を送信する(T250)。従って、プリンタ10が印刷データの受信を実行中である状態において、端末100とは異なる端末は、プリンタ10から通常AD信号を受信すると、通常AD信号に含まれるステータス情報310を取得することができる。このために、当該異なる端末は、例えば、ステータス情報310に従って、プリンタ10が印刷を実行中であることを示す画面を表示することができる。当該異なる端末のユーザは、当該画面を見ることによって、プリンタ10が印刷を実行中であることに起因して、プリンタ10とAPとの間にWi-Fi接続を確立させることができないことを知ることができる。
【0052】
CPU32は、印刷データの全ての受信が完了して印刷が完了すると(T262)、T270において、拡張AD信号の送信をBTI/F16に指示する。この結果、BTI/F16は、T270において、通常AD信号を送信する状態(T250)から拡張AD信号を送信する状態に変化する。当該拡張AD信号は、図2のT102で送信される拡張AD信号と同じ信号である。このように、プリンタ10は、印刷データの全ての受信が完了する場合に、拡張AD信号を再び送信するので、AP200とは異なるAPとのWi-Fi接続を確立するための処理を実行することができる。
【0053】
図3の続きの処理:図4
続いて、図4を参照して、図3の続きの処理を説明する。この状態では、プリンタ10は、T302において、拡張AD信号を繰り返し送信している(図3のT270参照)。ここでは、AP250とのWi-Fi接続を確立している端末150を利用して、プリンタ10とAP200との間のWi-Fi接続が確立されている状態から、プリンタ10とAP250との間のWi-Fi接続が確立されている状態に変化させるための処理を説明する。
【0054】
T310~T342は、端末100に代えて端末150が利用される点を除くと、図2のT110~T142と同様である。プリンタ10のCPU32は、Wi-FiI/F18を介して、端末150からAuth Reqを受信してAuth Resを端末150に送信すると(T342)、T343において、Wi-FiI/F18を介して、切断要求をAP200に送信する。切断要求は、Wi-Fi接続の切断をAP200に要求するための信号である。これにより、プリンタ10とAP200との間のWi-Fi接続が切断される。
【0055】
次いで、CPU32は、Wi-FiI/F18を介して、Configを端末150と実行する。当該Configは、端末150が利用されること、及び、AP250とのWi-Fi接続を確立するために必要なプリンタ用COがプリンタ10に送信されること、を除いて、図2のT144と同様である。
【0056】
T346及びT348は、T344のプリンタ用COが利用されること、及び、AP250が利用されること、を除いて、図2のT146及びT148と同様である。この結果、プリンタ10とAP250との間にWi-Fi接続が確立される。T350は、図2のT150と同様である。このように、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続が確立されている状態において、拡張AD信号が端末100とは異なる端末150によって受信される場合(T322)に、AP200とは異なるAP250とのWi-Fi接続を適切に確立することができる。
【0057】
(端末100が複数個のプリンタ10,50からAD信号を受信するケース:図5
続いて、図5を参照して、図2とは異なるケースを説明する。図2のケースでは、端末100は、1個のプリンタ10のみから拡張AD信号を受信して(T122)、プリンタ10のモデル名M1のみを含む接続選択画面を表示する(T130)。これに対し、図5のケースでは、端末100は、複数個のプリンタ10,50のそれぞれからAD信号を受信する。図5の初期状態は、図2の初期状態(即ちプリンタ10がWi-Fi接続を確立していない状態)と同様である。
【0058】
プリンタ50は、印刷を実行中である。このために、プリンタ50は、T400において、通常AD信号を繰り返し送信する(図3のT250参照)。当該通常AD信号は、プリンタ50のモデル名M2と、印刷を実行中であることを示すステータス情報330と、を含む。
【0059】
T401~T420は、図2のT100~T120と同様である。OS136は、アプリ138から受信指示を取得すると(T420)、T422において、プリンタ10から拡張AD信号を受信し、T423において、プリンタ50から通常AD信号を受信する。そして、OS136は、T424において、受信済みの拡張AD信号及び通常AD信号に含まれる各情報(即ち、モデル名M1と公開鍵300のセット、及び、モデル名M2とステータス情報330のセット)をアプリ138に供給する。
【0060】
アプリ138は、OS136から各情報を取得すると(T424)、T430において、接続確認画面を表示部112に表示する。接続確認画面は、取得済みの各情報に含まれる各モデル名M1,M2を含む。ここで、アプリ138は、公開鍵300とのセットであるモデル名M1を選択可能な態様で表示させ、ステータス情報330とのセットであるモデル名M2を選択不可能な態様で表示させる。選択可能な態様は、本実施例では、黒色で表示されることである。選択不可能な態様は、本実施例では、いわゆるグレーアウトで表示されることである。ただし、変形例では、モデル名M2は、選択可能な態様で表示されてもよい。この場合、モデル名M2は、モデル名M1とは異なる色で表示されてもよいし、モデル名M1よりも小さいサイズで表示されてもよい。一般的に言うと、モデル名M1とモデル名M2とは異なる表示態様を有していればよい。
【0061】
なお、仮に、プリンタ50が印刷を実行中でなければ、OS136は、プリンタ50からも拡張AD信号を受信する。この場合、アプリ138は、モデル名M1及びモデル名M2のどちらも選択可能な態様で表示させる。また、仮に、プリンタ10が印刷を実行中であれば、OS136は、プリンタ10からも通常AD信号を受信する。この場合、アプリ138は、モデル名M1及びモデル名M2のどちらも選択不可能な態様で表示させる。
【0062】
アプリ138は、さらに、モデル名M2の右側においてモデル名M2に隣接するように、ステータス情報330によって示される文字列「印刷実行中」を含む接続選択画面を表示する。これにより、ユーザは、モデル名M2を有するプリンタ50が印刷を実行中であることを知ることができる。なお、変形例では、文字列「印刷実行中」は、モデル名M2の左側に配置されてもよいし、モデル名M2の直下に配置されてもよい。また、文字列「印刷実行中」に代えて、印刷実行中を示すマークが利用されてもよい。一般的に言うと、モデル名M2に関連付けてステータス情報330が表示されればよい。
【0063】
ユーザは、接続選択画面を見ることによって、選択可能な態様で表示されるモデル名M1と、選択不可能な態様で表示されるモデル名M2と、を容易に区別することができる。これにより、ユーザは、モデル名M1を有するプリンタ10とAPとの間にWi-Fi接続を確立可能であることを知ることができる。従って、ユーザは、T432において、モデル名M1を適切に選択することができる。この後の処理は、図2のT140~T150及び図3のT220~T270と同様である。このために、プリンタ10とAP200との間にWi-Fi接続を確立させることができ(図5で引用する図2のT148)、端末100とプリンタ10との間で印刷データの通信を適切に実行させることができる(図3のT242)。この結果、印刷データの通信を望むユーザ(即ち端末100のユーザ)の利便性を向上させることができる。
【0064】
(対応関係)
プリンタ10、端末100、端末150が、それぞれ、「画像処理装置」、「第1の端末装置」、「第2の端末装置」の一例である。AP200、AP250が、それぞれ、「第1のアクセスポイント」、「第2のアクセスポイント」の一例である。BTI/F16、Wi-FiI/F18が、それぞれ、「画像処理装置」の「第1の無線インターフェース」、「第2の無線インターフェース」の一例である。公開鍵300、プリンタ用COが、それぞれ、「所定情報」、「接続情報」の一例である。図2のT142のAuth Req、T144のプリンタ用CO、T148のWi-Fi接続が、それぞれ、「第1の要求信号」、「第1の接続情報」、「第1の無線接続」の一例である。図3のT242の印刷データが、「対象データ」の一例である。図3のT242で印刷指示を受信すること、及び、T260で印刷を実行することが、「関係処理」の一例である。T250の処理が、「異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理」の一例である。図4のT342のAuth Req、T344のプリンタ用CO、T348のWi-Fi接続が、それぞれ、「第2の要求信号」、「第2の接続情報」、「第2の無線接続」の一例である。
【0065】
「画像処理装置」に関する対応関係は以下のとおりである。図2のT142の処理、T144の処理、T148の処理が、それぞれ、「第1の要求信号受信部」、「第1の接続情報受信部」、「第1の確立部」によって実行される処理の一例である。図3のT242の処理、T250の処理、T270の処理が、それぞれ、それぞれ、「関係処理実行部」、「禁止部」、「インターフェース制御部」によって実行される処理の一例である。図4のT342の処理、T343の処理、T344の処理、T348の処理が、それぞれ、「第2の要求信号受信部」、「切断部」、「第2の接続情報受信部」、「第2の確立部」によって実行される処理の一例である。
【0066】
端末100が、「端末装置」の一例である。BTI/F116、Wi-FiI/F118が、それぞれ、「端末装置」の「第1の無線インターフェース」、「第2の無線インターフェース」の一例である。プリンタ10,50が、「複数個の画像処理装置」の一例である。図5のT422の拡張AD信号、T423の通常AD信号が、それぞれ、「第1のアドバタイジング信号」、「第2のアドバタイジング信号」の一例である。複数個のモデル名M1,M2、図5のT430の接続選択画面が、それぞれ、「複数個の識別情報」、「選択画面」の一例である。選択可能な態様、選択不可能な態様が、それぞれ、「第1の表示態様」、「第2の表示態様」の一例である。モデル名M1、プリンタ10が、それぞれ、「特定の識別情報」、「特定の画像処理装置」の一例である。図5で引用するT142のAuth Req、T144のプリンタ用CO、T148のWi-Fi接続が、それぞれ、「要求信号」、「接続情報」、「無線接続」の一例である。
【0067】
「端末装置」に関する対応関係は以下のとおりである。図5のT420に起因するT422,T423の処理が、「アドバタイジング信号受信部」によって実行される処理の一例である。T430の処理が、「表示制御部」によって実行される処理の一例である。図5で引用する図2のT140に起因するT142の処理が、「要求信号送信部」によって実行される処理の一例である。図5で引用する図2のT140に起因するT144の処理が、「接続情報送信部」によって実行される処理の一例である。図3のT240に起因するT242の処理が、「対象データ通信部」によって実行される処理の一例である。
【0068】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。上記の実施例の変形例を以下に列挙する。
【0069】
(変形例1)端末100は、DPP方式をサポートしていなくてもよく、通常のWi-Fi規格の手法に従って、AP200とのWi-Fi接続を確立してもよい。この場合、端末100は、AP200によって形成されている無線ネットワークのSSID及びパスワード(以下では「AP接続情報」と記載する)を記憶済みである。また、プリンタ10は、WFD(Wi-Fi Direct(登録商標)の略)方式のGroup Owner(以下では「G/O」と記載する)として動作可能であってもよい。この場合、プリンタ10は、図2のT102において、プリンタ10がG/Oとして動作する無線ネットワークのSSID及びパスワード(以下では「WFD接続情報」と記載する)を含む拡張AD信号を送信してもよい。端末100は、拡張AD信号を受信することによって、WFD接続情報を取得することができる。この場合、端末100は、Wi-FiI/F118を介して、WFD接続情報に含まれるSSIDを含むProbe要求をプリンタ10に送信し、さらに、WFD接続情報を利用して、Wi-FiI/F118を介して、WFD方式の無線接続をプリンタ10と確立することができる。その後、端末100は、WFD方式の無線接続を利用して、Wi-FiI/F118を介して、AP接続情報をプリンタ10に送信する。このために、プリンタ10は、AP接続情報を利用して、AP200とのWi-Fi接続を確立することができる。本変形例では、WFD接続情報、Probe要求、AP接続情報が、それぞれ、「所定情報」、「第1の要求信号(又は要求信号)」、「第1の接続情報(又は接続情報)」の一例である。
【0070】
(変形例2)上記の変形例1と同様に、端末100は、通常のWi-Fi規格の手法に従ってAP200とのWi-Fi接続を確立し、AP接続情報を記憶済みであってもよい。そして、プリンタ10は、図2のT102において、公開鍵300に代えて、BT規格のペアリングを実行するためのペアリング情報(例えばPINコード)を含む拡張AD信号を送信してもよい。端末100は、拡張AD信号を受信することによって、ペアリング情報を取得することができる。この場合、端末100は、BTI/F116を介して、ペアリング情報を含むペアリング要求信号をプリンタ10に送信して、L2CAP Linkをプリンタ10と確立することができる。その後、端末100は、L2CAP Linkを利用して、BTI/F116を介して、AP接続情報をプリンタ10に送信する。このために、プリンタ10は、AP接続情報を利用して、AP200とのWi-Fi接続を確立することができる。本変形例では、ペアリング情報、AP接続情報が、それぞれ、「所定情報」、「接続情報」の一例である。
【0071】
(変形例3)プリンタ10は、図3のT250において、通常AD信号を送信することに代えて、以下の変形例3-1~変形例3-4のいずれかの処理を実行してもよい。
【0072】
(変形例3-1)プリンタ10は、T242で印刷指示を受信しても、拡張AD信号を送信し続けてもよい。そして、プリンタ10は、端末100とは異なる端末150からAuth Reqを受信する場合に、Configを端末150と実行して、端末150からプリンタ用COを受信してもよい。ただし、プリンタ10は、印刷データの受信が完了するまで、AP250とのNetwork Accsessを実行しない。このために、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続を切断せずに済む。本変形例では、AP250とのNetwork Accsessが、「異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理」の一例である。また、Network Accsessの実行を禁止することが、「禁止部」によって実行される処理の一例である。
【0073】
(変形例3-2)プリンタ10は、T242で印刷指示を受信しても、拡張AD信号を送信し続けてもよい。そして、プリンタ10は、端末100とは異なる端末150からAuth Reqを受信する場合に、Auth Resを端末150に送信しなくてもよい。この場合、プリンタ10は、端末150からプリンタ用COを受信することなく、AP250とのNetwork Accsessを実行しない。このために、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続を切断せずに済む。本変形例では、Auth Resの送信からWi-Fi接続の確立までの処理が、「異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理」の一例である。また、Auth Resの送信を禁止することが、「禁止部」によって実行される処理の一例である。
【0074】
(変形例3-3)プリンタ10は、T242で印刷指示を受信する場合に、公開鍵300を含む拡張AD信号に代えて、公開鍵300を含まない拡張AD信号を送信してもよい。この場合、プリンタ10は、端末100とは異なる端末150からAuth Reqを受信することがなく、AP250とのNetwork Accsessを実行しない。このために、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続を切断せずに済む。本変形例では、Auth Reqの受信からWi-Fi接続の確立までの処理が、「異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理」の一例である。また、公開鍵300を含まない拡張AD信号を送信するようにB/TI/F16を制御することが、「禁止部」によって実行される処理の一例である。
【0075】
(変形例3-4)プリンタ10は、T242で印刷指示を受信する場合に、BTI/F16への通電を切断してもよい。この場合、BTI/F16は、拡張AD信号も通常AD信号も送信しない状態になる。この結果、プリンタ10は、端末100とは異なる端末150からAuth Reqを受信することがなく、AP250とのNetwork Accsessを実行しない。このために、プリンタ10は、AP200とのWi-Fi接続を切断せずに済む。本変形例では、Auth Reqの受信からWi-Fi接続の確立までの処理が、「異なるアクセスポイントとの無線接続を確立するための処理」の一例である。BTI/F16への通電を切断することが、「禁止部」によって実行される処理の一例である。
【0076】
(変形例4)プリンタ10は、図2のT148でWi-Fi接続を確立する場合に、T150において、拡張AD信号を送信することに代えて、通常AD信号を送信してもよい。本変形例によっても、プリンタ10は、印刷を実行中である状態において、AP200とは異なるAPとのWi-Fi接続を確立するための処理を実行せずに済む。本変形例では、T150で通常AD信号を送信することが、「禁止部」によって実行される処理の一例である。
【0077】
(変形例5)プリンタ10は、図3のT250において、ステータス情報330を含まない通常AD信号を送信してもよい。一般的に言うと、「通常アドバタイジング信号」は、ステータス情報を含んでいても含んでいなくてもよい。また、本変形例では、アプリ138は、図5のT430において、モデル名M2に関連付けて文字列「印刷実行中」を表示しなくてもよい。一般的に言うと、「選択画面」において、第2の表示態様で表示される識別情報は、ステータス情報に関連付けて表示されてもよいしステータス情報に関連付けて表示されなくてもよい。
【0078】
(変形例6)プリンタ10は、図3のT262で印刷が完了することをトリガとして、通常AD信号に代えて拡張AD信号の送信を開始しなくてもよい。プリンタ10は、例えば、端末100から終了指示を受信することをトリガとして、通常AD信号に代えて拡張AD信号の送信を開始してもよい。本変形例では、「インターフェース制御部」を省略可能である。なお、プリンタ10は、端末100から終了指示を受信しなくても、印刷が完了してから所定時間が経過すると、通常AD信号に代えて拡張AD信号の送信を開始してもよい。
【0079】
(変形例7)プリンタ10は、図3のT262で印刷が完了することをトリガとして、AP200とのWi-Fi接続を切断してもよい。この場合、プリンタ10は、いずれのAPとのWi-Fi接続を確立していない状態になり、拡張AD信号を送信する。本変形例では、「第2の要求信号受信部」、「切断部」、「第2の接続情報受信部」、及び、「第2の確立部」を省略可能である。
【0080】
(変形例8)プリンタ10に代えて、スキャン実行部を備えるスキャナが利用されてもよい。この場合、端末100は、図3のT240,T242において、AP200を介して、印刷指示に代えてスキャン指示をスキャナに送信する。そして、スキャナは、T260において、スキャン実行部にスキャンを実行させ、その後、AP200を介して、スキャンデータを端末100に送信する。本変形例では、スキャン、スキャンデータ、スキャン指示の受信からスキャンデータの送信が、それぞれ、「画像処理」、「対象データ」、「関係処理」の一例である。また、本変形例では、「印刷実行部」を省略可能である。また、「画像処理装置」は、プリンタ10又はスキャナでなくてもよく、例えば、FAX装置、多機能機等であってもよい。
【0081】
(変形例9)上記の各実施例では、プリンタ10のCPU32がプログラム36(即ちソフトウェア)を実行すること、及び、端末100のCPU132がプログラム136,138を実行することによって、図2図5の各処理が実現される。これに代えて、いずれかの処理は、論理回路等のハードウェアによって実現されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
2:通信システム、10:プリンタ、12:表示部、14:印刷実行部、16:BTI/F、18:Wi-FiI/F、30:制御部、32:CPU、34:メモリ、36:プログラム、50:プリンタ、100:携帯端末、112:表示部、116:BTI/F、118:Wi-FiI/F、130:制御部、132:CPU、134:メモリ、136:OSプログラム、138:プリントアプリケーション、150:携帯端末、200,250:AP
図1
図2
図3
図4
図5