(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】スイッチギア取替工法
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20230912BHJP
H02B 1/20 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02B3/00 D
H02B3/00 E
H02B1/20 M
(21)【出願番号】P 2019227036
(22)【出願日】2019-12-17
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】山根 光喜
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-097340(JP,A)
【文献】特開2019-047557(JP,A)
【文献】特開2019-122145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/00 - 1/38
H02B 1/46 - 7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配変二次箱を含む必須箱と配電線箱を含む付帯箱とを備えた既設のスイッチギアが基礎の上に設置され、前記既設のスイッチギアを新設のスイッチギアに取り替えるスイッチギア取替工法であって、
前記基礎の余剰スペースに前記新設のスイッチギアの少なくとも必須箱を設置して、前記既設のスイッチギアと並列に変圧器に接続する必須箱設置ステップと、
前記既設のスイッチギアの付帯箱を前記基礎から撤去し、前記新設のスイッチギアの付帯箱を前記基礎に設置して前記変圧器に接続する付帯箱取替ステップと、
前記既設のスイッチギアの必須箱を前記基礎から撤去する必須箱撤去ステップと、
を備えることを特徴とするスイッチギア取替工法。
【請求項2】
前記付帯箱取替ステップにおいて、1回の停電で前記基礎から撤去する付帯箱の数と前記基礎に設置する付帯箱の数は、停電許容時間内で行えるように設定されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のスイッチギア取替工法。
【請求項3】
前記必須箱設置ステップおよび前記付帯箱取替ステップにおいて、重要度が高い配電線が接続される配電線箱を優先に取り替える、
ことを特徴とする請求項1または2のいずか1項に記載のスイッチギア取替工法。
【請求項4】
前記必須箱設置ステップにおいて、前記新設のスイッチギアの配電線箱を前記余剰スペースに設置して前記変圧器に接続する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずか1項に記載のスイッチギア取替工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配電用の設備として使用されるスイッチギアを取り替えるスイッチギア取替工法に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチギアは、電力の開閉や制御などを行う開閉装置であり、金属製のキャビネット内に遮断器や変成器、母線などが収納されている。具体的には、配変用変圧器の二次側に接続される配変二次箱、所内で使う電力や各継電器等の計器に使う電圧を供給する所内GPT箱、母線と他の変圧器の二次盤からの母線とを連絡する母連箱、配電線(回線)を介して電力需要地に配電する複数の配電線箱を備える。
【0003】
このようなスイッチギアは、経年などにより劣化した場合には、新たなスイッチギアと取り替る必要がある。スイッチギアを取り替る場合、従来、バンク停電を長期間することなく工事期間中の電力供給信頼度を高めるために、既設の位置(現位置)とは異なる別位置に新たなスイッチギアを設置する工法が採られていた。しかし、新たなスイッチギアを設置するための基礎を設置しなければならず、工事費用が嵩むばかりでなく、設置スペースがない場合や他設備の基礎などと干渉する場合には、設置および取替が困難となる。
【0004】
このため、開閉ユニット群の取り替え作業を小さい作業スペースでスムーズに行うことができる、という開閉ユニット群取替工法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この工法は、移動用スイッチギアを変圧器に接続すると共に至近の配電線立ち上げ箇所に接続し、既設の配電線箱を1つずつ新配電線箱に取り替え、取り替えられた新配電線箱を移動用スイッチギアの母線と電気的に接続する。また、次に取り替える配電線箱の母線を切り離すとともに、この配電線箱に接続されていた電力ケーブルを取り替えられた新配電線箱に振り替える。このような作業を未取替の配電線箱がなくなるまで行い、直近で取り替えた新配電線箱を至近の配電線立ち上げ箇所に接続するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の開閉ユニット群取替工法では、移動用スイッチギアを設置しなければならず、設置スペースがない場合や他設備の基礎などと干渉する場合には、適用することができない。一方、既設のスイッチギアの基礎には、余剰スペースが設けられている場合があり、この余剰スペースを有効に活用してスイッチギアの取り替えができれば、新たな基礎を設置することなく現位置での取替が可能となる。
【0007】
そこでこの発明は、新たな基礎を設置することなくスイッチギアの取替を可能にするスイッチギア取替工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、配変二次箱を含む必須箱と配電線箱を含む付帯箱とを備えた既設のスイッチギアが基礎の上に設置され、前記既設のスイッチギアを新設のスイッチギアに取り替えるスイッチギア取替工法であって、前記基礎の余剰スペースに前記新設のスイッチギアの少なくとも必須箱を設置して、前記既設のスイッチギアと並列に変圧器に接続する必須箱設置ステップと、前記既設のスイッチギアの付帯箱を前記基礎から撤去し、前記新設のスイッチギアの付帯箱を前記基礎に設置して前記変圧器に接続する付帯箱取替ステップと、前記既設のスイッチギアの必須箱を前記基礎から撤去する必須箱撤去ステップと、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のスイッチギア取替工法において、前記付帯箱取替ステップにおいて、1回の停電で前記基礎から撤去する付帯箱の数と前記基礎に設置する付帯箱の数は、停電許容時間内で行えるように設定されている、ことを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のスイッチギア取替工法において、前記必須箱設置ステップおよび前記付帯箱取替ステップにおいて、重要度が高い配電線が接続される配電線箱を優先に取り替える、ことを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1から3に記載のスイッチギア取替工法において、前記必須箱設置ステップにおいて、前記新設のスイッチギアの配電線箱を前記余剰スペースに設置して前記変圧器に接続する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、基礎の余剰スペースに新設のスイッチギアの配変二次箱等を設置し、同基礎上で配電線箱等の付帯箱を取り替えて既設のスイッチギアの配変二次箱等の必須箱を撤去するため、新たな基礎を設置することなくスイッチギアの取替を行うことが可能となる。従って、新たな基礎の設置に伴う工事費用を削減することができるとともに、設置スペースがない場合や他設備の基礎などが干渉する場合であっても、スイッチギアを適正に取り替えることが可能なる。
【0013】
請求項2の発明によれば、1回の停電作業の停電許容時間内で行えるだけの数の付帯箱を順次取り替えるため、付帯箱の取替に伴う停電の影響を軽減することが可能となる。
【0014】
請求項3の発明によれば、重要度が高い配電線が接続される配電線箱を優先に取り替えるため、配電線箱の取替に伴う停電の影響を軽減することが可能となる。
【0015】
請求項4の発明によれば、必須箱設置ステップにおいて、必須箱のみならず配電線箱を余剰スペースに設置して配電線をより早く運開するため、停電による影響を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】この発明の実施の形態に係るスイッチギア取替工法の取替対象である、既設のスイッチギアの設置状態を示す概念図である。
【
図2】
図1の状態から配電用変圧器二次ダクト改良を行う状態を示す回路図である。
【
図3】この発明の実施の形態に係るスイッチギア取替工法において、新設のスイッチギアの配変二次箱などを設置した状態を示す概念図である。
【
図5】
図4の状態から第1の配電線箱の配電線を切り替える状態を示す回路図である。
【
図6】
図5の状態から新設のスイッチギアを変圧器に接続する状態を示す回路図である。
【
図7】
図6の状態から新設のスイッチギアの第1の配電線箱の配電線を運開した状態を示す回路図である。
【
図8】
図7の状態から既設のスイッチギアの母連箱を撤去して新設の配電線箱を2つ設置する状態を示す概念図である。
【
図10】
図9の状態から既設のスイッチギアの残箱を撤去して新設の母連・SC箱を設置する状態を示す概念図である。
【
図12】
図11の状態から取替が完了した状態を示す回路図である。
【
図13】この発明の実施の形態に係るスイッチギア取替工法の取替対象である、既設のスイッチギアの他の設置状態を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0018】
図1~
図13は、この発明の実施の形態を示し、
図1は、この実施の形態に係るスイッチギア取替工法の取替対象である、既設のスイッチギア100Aの設置状態を示す概念図ある。既設のスイッチギア100Aは、必須箱として配変二次箱102Aと所内GPT箱103Aを備え、付帯箱として母連箱101Aと3つの配電線箱104A~106Aを備え、これらの箱(キャビネット)101A~106Aが長方形状の基礎110の上に設置されている。
【0019】
すなわち、基礎110の長手方向の一端部から順に、配電線箱106A、105A、104A、所内GPT箱103A、配変二次箱102A、母連箱101Aが設置されている。また、母連箱101Aから基礎110の他端部までの間に、何も設置されていない余剰スペース111が設けられている。この余剰スペース111は、この実施の形態では、後述するように3つの箱2~4を設置可能な大きさの空間となっている。
【0020】
ここで、箱101A~106Aの配列順序や余剰スペース111の大きさはこれに限らない。すなわち、箱101A~106Aの配列順序は、後述するように、いずれかの箱101A~106Aを基礎110から撤去して、撤去した空間に新設のスイッチギア10のいずれかの箱1~6を基礎110に設置する、という工程を順次行える順序であればよい。例えば、
図13に示すような順序であってもよい。また、余剰スペース111の大きさは、必須箱つまり配変二次箱102Aと所内GPT箱103Aを設置できる大きさであればよく、この実施の形態の余剰スペース111よりも大きくても小さくてもよい。
【0021】
また、この実施の形態では、
図2に示すように、母線120に第1のバンクAと第2のバンクBが連系されており、第1のバンクA側の第1のトランス(変圧器)121Aにスイッチギア100Aが接続され、第2のバンクB側の第2のトランス121Bにスイッチギア100Aと同等の構成のスイッチギア100Bが接続されている。そして、スイッチギア100Aの母連箱101Aとスイッチギア100Bの母連箱101Bとが、連系線122を介して接続されている。
【0022】
このような既設のスイッチギア100Aを新設のスイッチギア10に取り替えるスイッチギア取替工法について、以下に説明する。ここで、トランス停電およびバンク停電は、土曜、日曜、祝日のみ可能であるとする。つまり、1回の停電作業で許容される停電許容時間は、連続2日間または3日間とする。また、バンク停電の復旧時においては、バンクA-バンクB母連遮断器並用が必要で、配電線によるバンクA-バンクB並用は不可とする。また、新設のスイッチギア10は、既設のスイッチギア100Aと同等の構成で、母連・SC箱(付帯箱)1、配変二次箱(必須箱)2、所内GPT箱(必須箱)3および3つの配電線箱(付帯箱)4~6を備える。ここで、SCは、力率改善用コンデンサ装置(スタコン)を示す。
【0023】
スイッチギア取替工法では、まず、ダクト改造ステップとして、
図2に示すように、第1のトランス121Aの二次側のダクト123を改造して分岐ダクト124を加え、二股のダクトにする。ここで、ダクト123には、第1のトランス121Aの二次側のケーブルが収納され、分岐ダクト124には、新設のスイッチギア10からのケーブルが収納される。このように分岐ダクト124を設けることで、後述するようにして、新設のスイッチギア10からのケーブル(配変二次ケーブル)を分岐ダクト124を通して第1のトランス121Aに接続できるようになる。このダクト改造ステップでは、第1のトランス121Aの一次側遮断器131と二次側遮断器132および母線連絡用遮断器133を含むエリアが停電範囲BAとなる。
【0024】
次に、
図3に示すように、必須箱設置ステップとして、基礎110の余剰スペース111に新設のスイッチギア10の少なくとも必須箱を設置して、既設のスイッチギア100Aと並列に第1のトランス121Aに接続する。この実施の形態では、まず、余剰スペース111の大きさと停電許容時間、必要作業時間を考慮して、新設のスイッチギア10の配変二次箱2と所内GPT箱3と第1の配電線箱4を余剰スペース111に設置し、配変二次ケーブルを敷設する。このとき、
図4に示すように、分岐ダクト124から新設のスイッチギア10までのエリアが停電範囲BAとなる。このように、分岐ダクト124から新設のスイッチギア10の3箱2~4までを先に設置、敷設しておくことで、第1のバンクAの停電時間を縮小化可能となる。
【0025】
続いて、
図5に示すように、既設のスイッチギア100Aの第1の配電線箱104Aに接続されている、2回線の配電線を切り替える。すなわち、第1の配電線箱104Aから配電線を切り離し、新設のスイッチギア10の第1の配電線箱4に接続する。このとき、
図4の停電範囲BAに加えて、既設のスイッチギア100Aの第1の配電線箱104Aが停電範囲BAとなる。ここで、第1の配電線箱104Aの配電線を優先的に切り替えるのは、第1の配電線箱104Aに接続されている配電線が他の配電線に比べて重要度が高いから(重負荷回線だから)である。すなわち、後述する付帯箱取替ステップのみならず必須箱設置ステップにおいても、配電線箱104A~106Aを取り替える場合に、重要度が高い配電線が接続された配電線箱104A~106Aを優先して取り替える。
【0026】
次に、
図6に示すように、分岐ダクト124内の導体をダクト123内の導体に接続して、新設のスイッチギア10を既設のスイッチギア100Aと並列に、第1のトランス121Aつまり第1のバンクAに接続する。このとき、第1のトランス121Aの一次側遮断器131と二次側遮断器132、母線連絡用遮断器133および新設のスイッチギア10を含むエリアと、第1の配電線箱104Aが停電範囲BAとなる。
【0027】
続いて、
図7に示すように、バンク停電を復旧させて、新設のスイッチギア10の第1の配電線箱4に接続された配電線2回線を運開し、既設のスイッチギア100Aと新設のスイッチギア10を並用運転する。このとき、配変二次箱102Aに接続された二次側遮断器132でバンクA-バンクB並用となる。
【0028】
次に、付帯箱取替ステップとして、既設のスイッチギア100Aの付帯箱を基礎110から撤去し、新設のスイッチギア10の付帯箱を基礎110に設置して第1のトランス121Aに接続する。この際、1回の停電で基礎110から撤去する付帯箱の数と基礎110に設置する付帯箱の数は、停電許容時間内で行えるように設定する。
【0029】
具体的には、基礎110の大きさと停電許容時間、必要作業時間を考慮して、まず、既設のスイッチギア100Aの母連箱101Aから連系線122を切り離し、
図8に示すように、既設のスイッチギア100Aの1つの付帯箱つまり母連箱101Aを基礎110から撤去し、新設のスイッチギア10の配電線箱5、6を基礎110に設置する。ここで、例えば、1回の停電で基礎110からの旧付帯箱の撤去と、基礎110への新付帯箱の設置を行えない場合には、旧付帯箱の撤去と新付帯箱の設置とを異なる停電時に行ってもよい。また、1回の停電で旧付帯箱の撤去や新付帯箱の設置を行えるように、準備工程(例えば、設置ボルトの取り外しやケーブル端末処理など)を停電前に行うようにしてもよい。
【0030】
次に、
図9に示すように、既設のスイッチギア100Aの第2の配電線箱105Aおよび第3の配電線箱106Aから配電線を切り離し、新設のスイッチギア10の第2の配電線箱5および第3の配電線箱6に接続する。このとき、第1のトランス121Aの二次側遮断器132、既設のスイッチギア100A、新設のスイッチギア10の配電線箱5、6および第2のバンクBの母連箱101Bを含むエリアが停電範囲BAとなる。
【0031】
続いて、付帯箱取替ステップとともに、既設のスイッチギア100Aの必須箱を基礎110から撤去する必須箱撤去ステップを同時に行う。すなわち、
図10に示すように、既設のスイッチギア100Aの残箱102A~106Aをすべて基礎110から撤去し、新設のスイッチギア10の母連・SC箱1を基礎110に設置する。次に、
図11に示すように、連系線122を新設のスイッチギア10の母連・SC箱1に接続する。このとき、第1のトランス121Aの一次側遮断器131と二次側遮断器132、母線連絡用遮断器133、既設のスイッチギア100A、新設のスイッチギア10および第2のバンクBの母連箱101Bを含むエリアが停電範囲BAとなる。ここで、連系線122の新設のスイッチギア10側の端末は、洞道内で事前に端末処理(端子圧縮を除く処理)を実施することで、既設の母連箱101Aから新設の母連・SC箱1への切り替えを短時間で行い、停電時間を短縮する。そして、
図12に示すように、新設のスイッチギア10への切り替えが完了するものである。
【0032】
このように、付帯箱取替ステップにおいて、新設の配電線箱5、6を同時に基礎110に設置、接続しているが、停電許容時間などに応じて、配電線箱5、6を順次設置、接続してもよい。この場合、重要度が高い配電線が接続される配電線箱5、6を優先に取り替える。例えば、第3の配電線箱106Aに比べて第2の配電線箱105Aの方が重要度の高い配電線が接続されている場合、まず、既設の母連箱101Aを基礎110から撤去し、新設の第2の配電線箱5を基礎110に設置して、新設の第2の配電線箱5に配電線を接続する。次に、新設の第3の配電線箱6を基礎110に設置して、新設の第3の配電線箱6に配電線を接続する。このようにして、重要度が高い配電線が接続される第2の配電線箱5を優先的に取り替えることで、重要度が高い配電線を早期に開運して、配電線箱5、6の取替に伴う停電の影響を軽減することが可能となる。
【0033】
また、必須箱撤去ステップと付帯箱取替ステップを同時に行って、既設のスイッチギア100Aの残箱102A~106Aをすべて基礎110から同時に撤去しているが、箱101A~106Aの配列順序や停電許容時間などに応じて、順次行ってもよい。例えば、
図13に示すような配列順序の場合、必須箱設置ステップとして、新設の配変二次箱2と所内GPT箱3と第1の配電線箱4を余剰スペース111に設置し、既設の第1の配電線箱104Aの配電線を新設の第1の配電線箱4に接続する。次に、既設の第1の配電線箱104Aを撤去し、新設の第2の配電線箱5を基礎110に設置し、既設の第2の配電線箱105Aの配電線を新設の第2の配電線箱5に接続する。同様に、既設の第2の配電線箱105Aを撤去し、新設の第3の配電線箱6を基礎110に設置し、既設の第3の配電線箱106Aの配電線を新設の第3の配電線箱6に接続して、既設の第3の配電線箱106Aを撤去する。
【0034】
このように、このスイッチギア取替工法によれば、基礎110の余剰スペース111に新設のスイッチギア10の配変二次箱2等を設置し、同基礎110上で配電線箱4~6、104A~106A等の付帯箱を取り替えて既設のスイッチギア100Aの配変二次箱102A等の必須箱を撤去するため、新たな基礎を設置することなくスイッチギアの取替を行うことが可能となる。従って、新たな基礎の設置に伴う工事費用を削減することができるとともに、設置スペースがない場合や他設備の基礎などが干渉する場合であっても、スイッチギアを適正に取り替えることが可能なる。
【0035】
また、1回の停電作業の停電許容時間内で行えるだけの数の付帯箱を順次取り替えるため、付帯箱の取替に伴う停電の影響を軽減することが可能となる。
【0036】
さらに、重要度が高い配電線が接続される配電線箱4~6、104A~106Aを優先に取り替えるため、配電線箱4~6、104A~106Aの取替に伴う停電の影響を軽減することが可能となる。特に、この実施の形態では、必須箱設置ステップにおいて、必須箱のみならず、重要度が高い配電線が接続された第1の配電線箱4を余剰スペース111に設置して配電線2回線を運開し、既設のスイッチギア100Aと新設のスイッチギア10を並用運転するため、重負荷回線に対する停電の影響を最小限に軽減することが可能となる。
【0037】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、必須箱設置ステップにおいて、新設の配変二次箱2と所内GPT箱3と第1の配電線箱4を余剰スペース111に設置しているが、余剰スペース111の大きさや停電許容時間などに応じて、新設の配変二次箱2と所内GPT箱3のみを設置、接続してもよい。この場合、付帯箱取替ステップにおいて第1の配電線箱4を設置、接続する。
【0038】
また、既設のスイッチギア100Aの箱101A~106Aの構成や配列順序、新設のスイッチギア10の箱1~6の構成や配列順序は、上記のものに限らない。従って、箱1~6、101A~106Aを取り替える順番も上記のものに限らない。さらに、余剰スペース111が既設のスイッチギア100Aの横隣にある場合を説明したが、既設のスイッチギア100Aの背面側などに余剰スペース111があってもよい。また、余剰スペース111がない場合は必須箱が設置可能なスペース111を増設してもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 新設のスイッチギア
1 母連・SC箱(付帯箱)
2 配変二次箱(必須箱)
3 所内GPT(必須箱)
4~6 配電線箱(付帯箱)
100A 既設のスイッチギア
101A 母連箱(付帯箱)
102A 配変二次箱(必須箱)
103A 所内GPT箱(必須箱)
104A~106A 配電線箱(付帯箱)
110 基礎
111 余剰スペース
121A 第1のトランス(変圧器)