(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】走行制御装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20230912BHJP
【FI】
G05D1/02 H
(21)【出願番号】P 2019228460
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】井上 祐太
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/069147(WO,A1)
【文献】特開2019-128750(JP,A)
【文献】特開2018-146326(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体を走行させる走行制御装置において、
前記移動体の周囲の物体を検出する第1の検出部及び第2の検出部と、
前記第1の検出部及び前記第2の検出部の少なくとも一方による検出結果、及び予め取得された地図データに基づいて、前記移動体の自己位置を推定する位置推定部と、
前記位置推定部により推定された前記移動体の自己位置に基づいて、前記移動体の走行を制御する走行制御部と、を備え、
前記位置推定部は、
前記自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得し、
前記情報に基づいて、前記第1の検出部による第1の検出結果、及び前記第2の検出部による第2の検出結果の使用態様を調整
し、
前記位置推定部は、
前記第1の検出結果及び前記第2の検出結果の一方の検出結果を使用して前記自己位置の推定を行い、
前記一方の検出結果に対して、前記推定精度の低下に関する情報を取得した場合、他方の検出結果に切り替えて前記自己位置の推定を行い、
前記第1の検出部及び前記第2の検出部は、互いに異なる向きを向くように設けられている、走行制御装置。
【請求項2】
前記第1の検出部及び前記第2の検出部の一方は、前記移動体の移動方向における前方に設けられ、
前記第1の検出部及び前記第2の検出部の他方は、前記移動体の前記移動方向における後方に設けられる、請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記第1の検出部と前記第2の検出部とは、それぞれ同種類の検知手段である、請求項1又は2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記位置推定部は、前記推定精度の低下に関する情報として、前記推定精度が低下した旨の判定結果を取得する、
請求項1~3の何れか一項に記載の走行制御装置。
【請求項5】
前記位置推定部は、前記推定精度の低下に関する情報として、前記移動体の周囲に前記推定精度を低下させる障害物が存在することを示す情報を取得する、
請求項1~4の何れか一項に記載の走行制御装置。
【請求項6】
前記位置推定部は、前記推定精度の低下に関する情報として、前記推定精度が低下する位置を前記移動体が通過したことを示す情報を取得する、
請求項1~5の何れか一項に記載の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の走行制御装置としては、例えば特許文献1に記載されているような技術が知られている。特許文献1に記載の走行制御装置は、周囲の物体を検出して、その検出結果に基づいて移動体の自己位置を推定しながら移動体を走行させる。この走行制御装置は、レーザセンサなどの検出部で周囲の物体を検出することによって、移動体の自己位置を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来技術のように、周囲の物体を検出して、その検出結果に基づいて移動体の自己位置を推定しながら移動体を走行させる走行制御装置では、検出した物体と地図データに登録された物体とを照らし合わせる。しかし、移動体の周囲には、自己位置の推定精度を低下させるような様々な原因が存在する。一例としては、移動体の周囲には、地図データに登録された物体の他、人や他の移動体など、地図データに登録されていない物体が存在する場合がある。この場合、走行制御装置は、人や移動体などを地図データに登録された物体であると誤認識する。これにより、走行制御装置の移動体の自己位置の推定精度が低下する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、移動体の自己位置の推定精度を向上できる走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、移動体を走行させる走行制御装置において、移動体の周囲の物体を検出する第1の検出部及び第2の検出部と、第1の検出部及び第2の検出部の少なくとも一方による検出結果、及び予め取得された地図データに基づいて、移動体の自己位置を推定する位置推定部と、位置推定部により推定された移動体の自己位置に基づいて、移動体の走行を制御する走行制御部と、を備え、位置推定部は、自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得し、情報に基づいて、第1の検出部による第1の検出結果、及び第2の検出部による第2の検出結果の使用態様を調整する。
【0007】
このような走行制御装置においては、位置推定部は、第1の検出部及び第2の検出部の少なくとも一方による検出結果、及び予め取得された地図データに基づいて、移動体の自己位置を推定する。これにより、位置推定部は、検出部で検出された物体と、地図データに登録された物体と、を照らし合わせることによって、移動体の自己位置を推定することができる。ここで、第1の検出部の検出範囲、及び第2の検出部の検出範囲の少なくとも一方において、自己位置の推定精度を低下させるような様々な原因が存在する場合がある。これに対し、位置推定部は、自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得し、情報に基づいて、第1の検出部による第1の検出結果、及び第2の検出部による第2の検出結果の使用態様を調整する。これにより、位置推定部は、自己位置の推定精度の低下を抑制するように、第1の検出部による第1の検出結果、及び第2の検出部による第2の検出結果の使用態様を調整することができる。以上より、走行制御装置は、移動体の自己位置の推定精度を向上することができる。
【0008】
位置推定部は、第1の検出結果及び第2の検出結果の一方の検出結果を使用して自己位置の推定を行い、一方の検出結果に対して、推定精度の低下に関する情報を取得した場合、他方の検出結果に切り替えて自己位置の推定を行ってよい。これにより、自己位置の推定精度の低下を抑制しつつ、第1の検出部及び第2の検出部の一方だけを用いるため、処理の負荷を低減できる。
【0009】
位置推定部は、推定精度の低下に関する情報として、推定精度が低下した旨の判定結果を取得してよい。これにより、推定精度が実際に低下したことに基づいて、検出部の使用態様の調整を行う事ができる。
【0010】
位置推定部は、推定精度の低下に関する情報として、移動体の周囲に推定精度を低下させる障害物が存在することを示す情報を取得してよい。位置推定部は、実際に推定精度が低下したことを演算しなくとも、障害物の存在に基づいて、速やかに検出部の使用態様の調整を行うことができる。
【0011】
位置推定部は、推定精度の低下に関する情報として、推定精度が低下する位置を移動体が通過したことを示す情報を取得してよい。位置推定部は、実際に推定精度が低下したことを演算しなくとも、移動体の通過位置に基づいて、速やかに検出部の使用態様の調整を行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、移動体の自己位置の推定精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る走行制御装置を示す概略構成図である。
【
図2】倉庫内や工場内で移動体が走行を行う様子を示す概念図である。
【
図3】位置推定部が検出結果に基づいて自己位置を推定する際の様子を示す概念図である。
【
図4】位置推定部による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。
【
図5】変形例に係る走行制御装置の位置推定部が検出結果に基づいて自己位置を推定する際の様子を示す概念図である。
【
図6】変形例に係る走行制御装置の位置推定部による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。
【
図7】変形例に係る走行制御装置の位置推定部が検出結果に基づいて自己位置を推定する際の様子を示す概念図である。
【
図8】変形例に係る走行制御装置の位置推定部による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。
【
図9】変形例に係る走行制御装置の位置推定部が検出結果に基づいて自己位置を推定する際の様子を示す概念図である。
【
図10】変形例に係る走行制御装置の位置推定部による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態に係る走行制御装置1を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の走行制御装置1は、
図2に示されるように、移動体2を自動的に走行させる装置である。なお、
図2は、倉庫や工場などの構造物内で移動体2が走行する様子を示す概念図である。移動体2は、例えばフォークリフト、無人搬送車などである。走行制御装置1は、移動体2に搭載されている。
【0016】
走行制御装置1は、レーザセンサ3A(第1の検出部)と、レーザセンサ3B(第2の検出部)と、駆動部4と、コントローラ5とを備えている。
【0017】
レーザセンサ3A,3Bは、移動体2の周囲の物体を検出する。また、レーザセンサ3A,3Bは、検出した物体との位置関係を計測する。レーザセンサ3A,3Bは、移動体2の周囲にレーザを照射し、レーザの反射光を受光することにより、レーザセンサ3A,3Bから移動体2の周囲の物体を検出し、当該物体までの距離を計測する。レーザセンサ3A,3Bとしては、例えばレーザレンジファインダが用いられる。使用するレーザとしては、2Dレーザでもよいし、3Dレーザでもよい。
【0018】
レーザセンサ3A,3Bは、互いに異なる向きを向くように設けられている。これにより、レーザセンサ3Aの検出範囲とレーザセンサ3Bの検出範囲とは、互いに異なる範囲に設定される。例えば、
図2に示すように、レーザセンサ3Aは、移動体2の前側に設けられている。また、レーザセンサ3Aは、移動体2の前方へ向かってレーザLを扇状に照射する。具体的には、レーザセンサ3Aは、移動体2の前方直進方向を中心した規定の角度範囲にレーザLを照射する。これにより、レーザセンサ3Aは、移動体2の前方の所定の角度範囲を検出範囲として、検出を行うことができる。レーザセンサ3Bは、移動体2の後側に設けられている。レーザセンサ3Bは、移動体2の後方へ向かってレーザLを扇状に照射する。具体的には、レーザセンサ3Bは、移動体2の後方直進方向を中心した規定の角度範囲にレーザLを照射する。これにより、レーザセンサ3Bは、移動体2の後方の所定の角度範囲を検出範囲として、検出を行うことができる。
【0019】
レーザセンサ3A,3Bから照射されたレーザLは物体20に当たり、その物体20で反射したレーザ(反射光)がレーザセンサ3A,3Bで受光される。物体20には、壁26や柱27等といった静止物体のように、自己位置を示唆する特徴的な構造物である特徴物21が含まれる。このような特徴物21は、地図データに登録されている。また、物体20には、作業者などの人や他の移動体等といった動的物体22が含まれる(
図3参照)。このような動的物体22は、地図データに登録されておらず、自己位置の推定を行う上では、障害物となる。また、動的物体の他、一時的に配置された荷物や仮設物などの静止物体も障害物となる場合がある。
【0020】
駆動部4は、特に図示はしないが、移動体2の走行輪を回転させる走行モータと、移動体2の操舵輪を転舵させる操舵モータとを有している。
【0021】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。コントローラ5は、位置推定部11と、走行制御部12と、記憶部13と、を有している。
【0022】
位置推定部11は、レーザセンサ3A,3Bによる検出結果、及び予め取得された地図データに基づいて、移動体2の自己位置を推定する。位置推定部11は、例えばSLAM(simultaneous localization andmapping)手法を用いて、移動体2の自己位置を推定する。SLAMは、センサデータ及び地図データを使って自己位置推定を行う自己位置推定技術である。SLAMは、自己位置推定と環境地図の作成とを同時に行う。具体的には、位置推定部11は、レーザセンサ3により検出された物体20までの距離データと移動体2の周囲環境の地図データとをマッチングさせて、移動体2の自己位置の推定演算を行う。
【0023】
位置推定部11は、自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得し、当該情報に基づいて、レーザセンサ3Aによる検出結果(第1の検出結果)、及びレーザセンサ3Bによる検出結果(第2の検出結果)の使用態様を調整する。自己位置の推定精度の低下に関する情報には、自己位置の推定精度が低下したことを示す情報、及び自己位置の推定精度を低下させる原因となり得る事項を示す情報が含まれる。自己位置の推定精度が低下したことを示す情報とは、検出結果と地図データとのマッチング度を示す指標などのように、推定精度の低下を定量的に示すことのできる情報である。自己位置の推定精度を低下させる原因となり得る事項を示す情報とは、移動体2の周囲に推定精度の低下の原因となるような障害物の存在を示す情報や、移動体2の周囲で推定精度の低下の原因となるような状態が発生していることを示す情報である。障害物としては、人や他の移動体などの動的物体、及び荷物や仮設物などの静的物体が挙げられる。推定精度の低下の原因となるような状態としては、特徴物21の位置変更などが挙げられる。本実施形態では、位置推定部11は、推定精度の低下に関する情報として、移動体2の周囲に推定精度を低下させる障害物が存在することを示す情報、及び特徴物21が位置変更されたことを示す情報を取得する。
【0024】
レーザセンサ3Aによる検出結果(第1の検出結果)、及びレーザセンサ3Bによる検出結果(第2の検出結果)の使用態様を調整する。使用態様を調整することには、一方のレーザセンサを用いて自己位置の推定をしている状態から、他方のレーザセンサへ切り替えて自己位置の推定を行うことが含まれる。また、使用態様を調整することには、両方のレーザセンサ3A,3Bで検出を行っている状態において、一方の検出結果を採用して自己位置を推定し、他方の検出結果を用いないことが含まれる。また、使用態様を調整することには、一方のレーザセンサを用いて自己位置の推定をしている状態から、両方のレーザセンサを用いて自己位置の推定を行うことも含まれる。本実施形態においては、位置推定部11は、レーザセンサ3Aによる検出結果及びレーザセンサ3Bによる検出結果の一方の検出結果を使用して自己位置の推定を行い、一方の検出結果に対して、推定精度の低下に関する情報を取得した場合、他方の検出結果に切り替えて自己位置の推定を行う。
【0025】
例えば、
図3に示す例では、移動体2の前方に物体20A~20Dが存在している。このうち、物体20A,20C,20Dが特徴物21であり、物体20Bが動的物体22である。位置推定部11は、物体20A~20Dのうち、動的物体22である物体20Bを障害物として特定する。また、特徴物21である物体20Cは、地図データから位置が変更されていることを特定する。これより、位置推定部11は、移動体2の前方には推定精度を低下させる障害物が存在していることや、特徴物21が位置変更されたことを示す情報を取得する。位置推定部11は、前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bに切り替えて、自己位置の推定を行う。具体的に、位置推定部11は、情報取得部14と、推定精度確認部16と、演算部17と、を備える。
【0026】
情報取得部14は、自己位置の推定に必要な各種情報を所得する。情報取得部14は、レーザセンサ3A,3Bによる検出結果を取得する。情報取得部14は、前側のレーザセンサ3Aが起動しているときは、当該レーザセンサ3Aによる検出結果を取得する。情報取得部14は、後側のレーザセンサ3Bが起動しているときは、当該レーザセンサ3Bによる検出結果を取得する。
図3(a)に示すように、レーザLが物体20A~20Dに照射されることで、レーザセンサ3Aは、点群PA~PDの位置情報を取得する。これによって、レーザセンサ3Aは、点群PA~PDの位置情報に基づいて物体20A~20Dを検出すると共に、物体20A~20Dの移動体2との位置関係などを取得する。情報取得部14は、これらのレーザセンサ3の検出結果を取得する。なお、
図3では、レーザLのうち、各物体のエッジ等に照射されるもののみが示されている。
【0027】
推定精度確認部16は、レーザセンサ3A,3Bによる検出結果に基づいて自己位置の推定を行った場合の推定精度を確認する。推定精度確認部16は、自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得する。
【0028】
具体的に、推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aによって検出された物体の中から、障害物を特定する。例えば、推定精度確認部16は、点群PA~PDの位置を時系列で把握することによって、点群PA~PDの移動方向が変化しているかどうかを把握することができる。特徴物21は静止しているため、当該特徴物21に対応する点群PA,PC,PDは、移動体2の移動に従った移動方向へ相対移動する。従って、推定精度確認部16は、点群PA,PC,PDに対応する物体20A,20C,20Dを自己位置の推定に必要な特徴物21として特定する。これに対し、動的物体22は移動しているため、当該動的物体22に対応する点群PBは、移動体2の移動とは異なる方向へ相対移動する。従って、推定精度確認部16は、点群PBに対応する物体20Bを障害物である動的物体22として特定する。このように、推定精度確認部16は、前方に障害物が存在するという情報を、自己位置の推定精度が低下し得る情報として取得する。
【0029】
また、推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aによって検出された特徴物21としての物体20A,20C,20Dのうち、物体20Cが地図データに登録されている位置から移動したものとして特定する。推定精度確認部16は、点群PCから割り出される物体20Cの位置と、地図データにおける物体20Cの位置(
図3(a)において仮想線で示す位置)とを比較することで、物体20Cが登録時の位置から移動していることを特定する。このように、推定精度確認部16は、前方に地図データに登録されている位置から移動した特徴物21が存在するという情報を、自己位置の推定精度が低下し得る情報として取得する。
【0030】
演算部17は、レーザセンサ3A,3Bの検出結果から、移動体2の自己位置を推定するための演算を行う。また、演算部17は、自己位置の推定精度の低下に関する情報に基づいて、レーザセンサ3Aによる検出結果、及びレーザセンサ3Bによる検出結果の使用態様を調整する。演算部17は、前側のレーザセンサ3Aを用いているときに自己位置の推定精度の低下に関する情報が取得された場合、後側のレーザセンサ3Bに切り替えて自己位置の推定を行う。前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bへ切り替えた場合、演算部17は、
図3(b)に示すように、後方に存在する物体20E,20Fに対応する点群PE,PFを用いて、自己位置を推定する。なお、推定精度確認部16は、後側のレーザセンサ3Bを用いているときに自己位置の推定精度の低下に関する情報が取得された場合、前側のレーザセンサ3Aに切り替えて自己位置の推定を行う。
【0031】
具体的には、演算部17は、点群PE,PFと、記憶部13に記憶された地図データと、を用いて移動体2の自己位置の推定演算を行う。演算部17による自己位置推定は、SLAM手法を用いて行われてよい。また、演算部17は、点群PE,PFから物体20E,20Fを検出し、物体と移動体との距離データと移動体周囲環境の地図データとをマッチングすることで自己位置を推定してよい。
【0032】
走行制御部12は、位置推定部11により推定された移動体2の自己位置に基づいて、移動体2の走行を制御する。走行制御部12は、自己位置と目標位置とを比較することによって、移動体2の移動方向や移動距離を演算する。また、走行制御部12は、当該演算結果に基づいて、移動体2が目標位置へ向かうように駆動部4へ制御信号を出力する。記憶部13は、各種データを記憶する。記憶部13は、地図データを記憶する。
【0033】
次に、
図4を参照して、位置推定部11による移動体2の自己位置の推定処理について説明する。
図4は、位置推定部11による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。ここでは、前側のレーザセンサ3Aで移動体2の前方の検出結果を用いて自己位置を推定している状態から、処理をスタートするものとする。まず、位置推定部11の情報取得部14は、レーザセンサ3Aによる検出結果を取得する(ステップS100)。
図3(a)に示す例においては、情報取得部14は、点群PA~PDに基づいて検出された物体20A~20Dの検出結果を取得する。
【0034】
次に、位置推定部11の推定精度確認部16は、レーザセンサ3によって検出された物体の中から、障害物を特定する(ステップS110)。
図3(a)に示す例においては、推定精度確認部16は、物体20Bを障害物として特定する。次に、推定精度確認部16は、レーザセンサ3の検出範囲に障害物が存在するか否かを判定する(ステップS120)。
【0035】
ステップS120において障害物が存在すると判定された場合、演算部17は、前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bに切り替えて、当該レーザセンサ3Bによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS130)。
図3に示す例においては、演算部17は、後方の物体20E,20Fに対応する点群PE,PFを用いて、移動体2の自己位置を推定する。ステップSS130の処理が終了すると、
図4に示す処理が終了する。なお、後側のレーザセンサ3Bで自己位置の推定をしているときに障害物が特定された場合、演算部17は、後側のレーザセンサ3Bから前側のレーザセンサ3Aに切り替えて、当該レーザセンサ3Aによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する。
【0036】
ステップS120において障害物が前方に存在しないと判定された場合、演算部17は、切り替えを行うことなくレーザセンサ3Aによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS140)。ステップS140の処理が終了すると、
図4に示す処理が終了する。
【0037】
次に、本実施形態に係る走行制御装置1の作用・効果について説明する。
【0038】
まず、比較例に係る走行制御装置について説明する。比較例に係る走行制御装置は、前方の物体を検出して、その検出結果に基づいて移動体の自己位置を推定しながら移動体を走行させる。このとき、走行制御装置は、前方に検出された全ての物体と地図データに登録された物体とを照らし合わせる。しかし、移動体の周囲には、地図データに登録された物体の他、人や他の移動体など、地図データに登録されていない物体が存在する場合がある。この場合、比較例に係る走行制御装置は、人や移動体などを地図データに登録された物体であると誤認識する。例えば、走行制御装置が、他の移動体を壁と誤認識した場合、自己位置と他の移動体との間の距離を、自己位置と壁との間の距離と誤って推定してしまう。これにより、走行制御装置の移動体の自己位置の推定精度が低下する場合がある。
【0039】
これに対し、本実施形態に係る走行制御装置1においては、位置推定部11は、レーザセンサ3A,3Bの少なくとも一方による検出結果、及び予め取得された地図データに基づいて、移動体2の自己位置を推定する。これにより、位置推定部11は、レーザセンサ3A,3Bで検出された物体と、地図データに登録された物体と、を照らし合わせることによって、移動体2の自己位置を推定することができる。ここで、レーザセンサ3Aの検出範囲、及びレーザセンサ3Bの検出範囲の少なくとも一方において、自己位置の推定精度を低下させるような様々な原因が存在する場合がある。これに対し、位置推定部11は、自己位置の推定精度の低下に関する情報を取得し、情報に基づいて、レーザセンサ3Aによる検出結果、及びレーザセンサ3Bによる検出結果の使用態様を調整する。これにより、位置推定部11は、自己位置の推定精度の低下を抑制するように、レーザセンサ3Aによる検出結果、及びレーザセンサ3Bによる検出結果の使用態様を調整することができる。以上より、走行制御装置1は、移動体2の自己位置の推定精度を向上することができる。
【0040】
位置推定部11は、レーザセンサ3Aの検出結果及びレーザセンサ3Bの検出結果の一方の検出結果を使用して自己位置の推定を行い、一方の検出結果に対して、推定精度の低下に関する情報を取得した場合、他方の検出結果に切り替えて自己位置の推定を行う。これにより、自己位置の推定精度の低下を抑制しつつ、レーザセンサ3A及びレーザセンサ3Bの一方だけを用いるため、処理の負荷を低減できる。
【0041】
位置推定部11は、推定精度の低下に関する情報として、移動体2の周囲に推定精度を低下させる障害物が存在することを示す情報を取得する。位置推定部11は、実際に推定精度が低下したことを演算しなくとも、障害物の存在に基づいて、速やかに検出部の使用態様の調整を行うことができる。
【0042】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0043】
上述の実施形態では、自己位置の推定精度を低下させる原因となり得る事項を示す情報として、障害物が存在するという情報や、特徴物21の位置が変わったという情報などを取得した。これに代えて、障害物が存在することを間接的に示す情報が取得されてもよい。走行制御装置1が、動的物体を検出して動的物体に追尾する場合、追尾状態になっているという情報を、自己位置の推定精度を低下させる原因となり得る事項を示す情報として取得してよい。例えば、
図5(a)に示すように、移動体2の前方に動的物体としての物体20Bが存在する場合、前側のレーザセンサ3Aは、物体20Bを動的物体として検出すると共に、物体20Bを追尾する。推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aが追尾状態にあるという情報を取得すると、レーザセンサ3Aの検出範囲に障害物である動的物体22が存在するものとして、レーザセンサ3Aの検出結果による自己位置の推定精度が低下し得ると判断する。この場合、
図5(b)に示すように、演算部17は、前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bへ切り替えて、後方に存在する物体20E,20Fに対応する点群PE,PFを用いて、自己位置を推定する。
【0044】
動的物体を追尾する場合の自己位置の推定処理について、
図6を参照して説明する。
図6は、変形例に係る走行制御装置の位置推定部11による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。まず、位置推定部11の情報取得部14は、レーザセンサ3Aによる検出結果を取得する(ステップS100)。また、推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aが追尾状態であるかどうかを確認する(ステップS210)。次に、推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aが追尾状態にあるかどうかを判定する(ステップS220)。ステップS220においてレーザセンサ3Aが追尾状態にあると判定された場合、演算部17は、前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bに切り替えて、当該レーザセンサ3Bによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS130)。ステップS220においてレーザセンサ3Aが追尾状態にないと判定された場合、演算部17は、切り替えを行うことなくレーザセンサ3Aによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS140)。ステップS140の処理が終了すると、
図6に示す処理が終了する。
【0045】
また、位置推定部11は、推定精度の低下に関する情報として、推定精度が低下した旨の判定結果を取得してよい。これにより、推定精度が実際に低下したことに基づいて、レーザセンサ3A,3Bの使用態様の調整を行う事ができる。具体的には、
図7に示すように、走行制御装置は、前方のレーザセンサ3Aによる検出とレーザセンサ3Bによる検出を同時に行う。そして、位置推定部11は、レーザセンサ3Aの検出結果による自己位置の推定精度と、レーザセンサ3Bの検出結果による自己位置の推定精度を確認する。そして、位置推定部11がレーザセンサ3A,3Bによる検出結果の何れかによる推定精度が低下した旨の判定結果を取得した場合、推定精度のよい方の検出結果を用いて自己位置の推定を行う。推定精度は、検出結果と地図データとのマッチング度を示す指標などを用いて判定する。
【0046】
推定結果の精度が低下した旨の判定結果を取得する場合の自己位置の推定処理について、
図8を参照して説明する。
図8は、変形例に係る走行制御装置の位置推定部11による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。まず、位置推定部11の情報取得部14がレーザセンサ3A,3Bの検出結果を取得し、演算部17はそれらの結果を用いて自己位置の推定を行う(ステップS300)。推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aの検出結果による推定精度と、レーザセンサ3Bの検出結果による推定精度と、を確認する(ステップS310)。そして、演算部17は、レーザセンサ3Aの検出結果と、レーザセンサ3Bの検出結果のうち、自己位置の推定精度のよい方を用いて自己位置を推定する(ステップS330)。ステップS330の処理が終了すると、
図8に示す処理が終了する。
【0047】
また、走行制御装置は、レーザセンサ3A,3Bの一方の検出結果を用いて自己位置を推定しているときに、推定精度が低下した旨の判定結果を取得した場合、レーザセンサ3A,3Bの他方の検出結果に切り替えてもよい。例えば、
図9(a)に示すように、自己位置の推定精度は、同じ風景が続く状態では低下する。長い廊下の入口付近では、前方の風景がしばらく同じとなるため、レーザセンサ3Aの検出結果だけでは、移動体2が入口からどの程度進んだ位置にあるかを推定し難い。一方、入口付近では、後方の様子は特徴的である。従って、位置推定部11は、入口付近では、後方のレーザセンサ3Bの検出結果を用いて自己位置を推定する。そして、後方の風景に特徴が無くなる出口付近では、位置推定部11は、前側のレーザセンサ3Aの検出結果を用いて自己位置を推定する。これにより、前方の様子が特徴的な出口付近において、いち早く前方のレーザセンサ3Aの検出結果を用いて自己位置の推定を行うことができる。
【0048】
この場合の推定処理の流れについて
図10を参照して説明する。
図10は、変形例に係る走行制御装置の位置推定部11による自己位置の推定処理の内容を示すフローチャートである。まず、位置推定部11の情報取得部14がレーザセンサ3Aの検出結果を取得し、演算部17はその結果を用いて自己位置の推定を行う(ステップS400)。推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aの検出結果による推定精度を確認する(ステップS410)。次に、推定精度確認部16は、レーザセンサ3Aの検出結果による自己位置の推定精度が良いか否かを判定する(ステップS420)。ステップS420において推定精度が良いと判定された場合、演算部17は、切り替えを行うことなくレーザセンサ3Aによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS430)。ステップS420において推定精度が悪いと判定された場合、前側のレーザセンサ3Aから後側のレーザセンサ3Bに切り替えて、当該レーザセンサ3Bによる検出結果に基づいて、移動体2の自己位置を推定する(ステップS440)。ステップS430,S440の処理が終了すると、
図10に示す処理が終了する。
【0049】
位置推定部11は、推定精度の低下に関する情報として、推定精度が低下する位置を移動体が通過したことを示す情報を取得してよい。位置推定部11は、実際に推定精度が低下したことを演算しなくとも、移動体2の通過位置に基づいて、速やかにレーザセンサ3A,3Bの使用態様の調整を行うことができる。
図9(b)に示すように、後方のレーザセンサ3Bの検出結果による自己位置の推定精度が低下し始める箇所に、マーク50を設定しておく。位置推定部11は、マーク50を検出したら、推定精度が低下する位置を通過したと判定し、前方のレーザセンサ3Aの検出結果を用いて自己位置を推定する。なお、自己位置の推定精度が低下し得る情報として、レーザ検出結果と地図とによって推定される値と、レーザ以外を使って位置を特定する値とのずれ量が所定の閾値以上であることが挙げられ、このような場合に自己位置の推定精度が低下していると判断してよい。なお、レーザ以外の位置を特定する方法として、路面に設置されたARマーカをカメラにて検出し位置を特定することが挙げられる。
【0050】
なお、上述の実施形態では、移動体2の周囲の物体を検出する検出部としてレーザセンサが例示されていたが、検出部の具体的構成は特に限定されるものではない。例えば、検出部としてカメラが採用されてもよい。カメラは、取得した画像の画像処理を行うことで、物体を検出すると共に、当該物体までの距離などの情報を検出することができる。例えば、画像中に写された物体のエッジを検出することで、物体の検出が可能である。また、予め人の形状や機台の形状を機械学習しておくことで、画像中の物体が人や機台などの動的物体であることを特定することも可能である。また、推定精度確認部16は、カメラで取得された画像を用いて、周囲の物体を検出してよい。また、検出部は、レーザセンサとカメラの組み合わせによって構成されてもよい。例えば、検出部は、物体の検出をカメラの画像に基づいて行い、物体との距離の計測をレーザセンサの結果を用いて行ってもよい。その他、検出部は、超音波などのセンサによって構成されてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…走行制御装置、2…移動体、3…レーザセンサ(検出部)、11…位置推定部、12…走行制御部、20…物体。