(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】位置関係検出装置、および位置関係検出方法
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20230912BHJP
G01S 17/93 20200101ALI20230912BHJP
B60R 99/00 20090101ALI20230912BHJP
G01C 9/02 20060101ALI20230912BHJP
G01C 15/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01B11/00 A
G01S17/93
B60R99/00 322
G01C9/02
G01C15/00 101
(21)【出願番号】P 2019235042
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】野々口 裕三
(72)【発明者】
【氏名】倉本 和男
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-036981(JP,A)
【文献】特開2018-022270(JP,A)
【文献】特開2007-326428(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00
G01C 9/02
G01C 15/00
G01S 17/93
B60R 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁石から路面上の車両までの距離を検出する位置関係検出装置であって、
前記車両の周辺に存在する前記縁石、および前記路面を含む道路構造物の状態を計測する計測装置から計測データを取得するデータ取得部と、
取得した前記計測データに基づき前記路面を示す路面データを抽出する路面抽出部と、
前記路面データに基づき、水平面内の所定の一軸である第一軸に対する前記車両に取り付けられた前記計測装置の第一傾斜度を導出する傾斜導出部と、
前記計測データから鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる前記計測データを起立データとして抽出し、前記第一傾斜度を用いて前記起立データを補正した補正後データに基づき前記縁石を示す縁石データを抽出する縁石抽出部と、
前記路面データと前記縁石データとの交線を示す交線データを算出する交線算出部と、
前記交線データに基づき前記縁石から前記車両までの距離を算出する位置関係算出部と、
を備える位置関係検出装置。
【請求項2】
前記位置関係算出部は、
前記縁石データに基づき前記縁石の並び方向に対する前記車両の角度を算出する
請求項1に記載の位置関係検出装置。
【請求項3】
前記傾斜導出部は、
水平面内において前記第一軸に直交する第二軸に対する前記計測装置の第二傾斜度を導出し、
前記縁石抽出部は、
前記第一傾斜度に加え前記第二傾斜度を用いて前記起立データを補正し、補正後データを生成する
請求項1または2に記載の位置関係検出装置。
【請求項4】
前記縁石抽出部は、
前記補正後データから、高さが高さ閾値以下の平面を縁石データとして抽出する
請求項1から3のいずれか一項に記載の位置関係検出装置。
【請求項5】
前記縁石抽出部は、
前記補正後データから、面積が縁石面積閾値以上の平面を縁石データとして抽出する
請求項1から4のいずれか一項に記載の位置関係検出装置。
【請求項6】
前記縁石抽出部は、
前記補正後データに含まれる点データの数に対し、高さ閾値より高い点データの数の割合が比較閾値以上の場合、前記縁石データから除外する
請求項1から5のいずれか一項に記載の位置関係検出装置。
【請求項7】
縁石から路面上の車両までの距離を検出する位置関係検出方法であって、
前記車両の周辺に存在する前記縁石、および前記路面を含む道路構造物の状態を計測する計測装置からデータ取得部が計測データを取得し、
取得した計測データに基づき前記路面を示す路面データを路面抽出部が抽出し、
前記路面データに基づき、水平面内の所定の一軸である第一軸に対する前記車両に取り付けられた前記計測装置の第一傾斜度を傾斜導出部が導出し、
前記計測データから鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる前記計測データを起立データとして抽出し、前記第一傾斜度を用いて前記起立データを補正した補正後データに基づき前記縁石を示す縁石データを縁石抽出部が抽出し、
前記路面データと前記縁石データとの交線を示す交線データを交線算出部が算出し、
前記交線データに基づき前記縁石から前記車両までの距離を位置関係算出部が算出する
位置関係検出方法。
【請求項8】
前記位置関係算出部は、
前記縁石データに基づき前記縁石の並び方向に対する前記車両の角度を算出する
請求項7に記載の位置関係検出方法。
【請求項9】
前記計測装置を備えた車両を水平な路面上に配置し、前記路面抽出部に路面データを抽出させ、前記傾斜導出部に導出させた第一傾斜度に基づき前記計測装置の基準面を較正する
請求項7または8に記載の位置関係検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路構造物である縁石と自車両との位置関係を検出する位置関係検出装置、および位置関係検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に取り付けられた計測装置を用いて縁石などの道路構造物と車両の位置関係を計測し、車両の自動運転、車両に対する駐車支援などを行う場合がある。車両は、ロール方向やピッチ方向に傾く場合があるため、車両に取り付けられた計測装置の姿勢を把握する必要がある。特許文献1に記載の技術は、車両に取り付けられた複数の計測装置の計測結果に基づいて計測装置の傾き検出するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、複数のセンサを用いて車両に取り付けられた計測装置の傾きを検出し、計測結果を補正すると、補正に時間を要するため即答性が損なわれる場合がある。また複数の計測装置が必要になるため部品点数が増加し、計測装置の配置場所を確保する必要や計測装置間の通信などを確保する必要が生じる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、一つの計測装置の計測データを用いて計測装置の姿勢を把握し、縁石に対する車両の距離と傾きとを高速、正確に検出する位置関係検出装置、および位置関係検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の1つである位置関係検出装置は、縁石から路面上の車両までの距離を検出する位置関係検出装置であって、前記車両の周辺に存在する前記縁石、および前記路面を含む道路構造物の状態を計測する計測装置から計測データを取得するデータ取得部と、取得した計測データに基づき前記路面を示す路面データを抽出する路面抽出部と、前記路面データに基づき、水平面内の所定の一軸である第一軸に対する前記車両に取り付けられた前記計測装置の第一傾斜度を導出する傾斜導出部と、前記計測データから鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる前記計測データを起立データとして抽出し、前記第一傾斜度を用いて前記起立データを補正した補正後データに基づき前記縁石を示す縁石データを抽出する縁石抽出部と、前記縁石データに基づき前記縁石から前記車両までの距離を算出する位置関係算出部と、を備える。
【0007】
また、上記目的を達成するために、本発明の他の1つである位置関係検出方法は、縁石から路面上の車両までの距離を検出する位置関係検出方法であって、前記車両の周辺に存在する前記縁石、および前記路面を含む道路構造物の状態を計測する計測装置からデータ取得部が計測データを取得し、取得した計測データに基づき前記路面を示す路面データを路面抽出部が抽出し、前記路面データに基づき、水平面内の所定の一軸である第一軸に対する前記車両に取り付けられた前記計測装置の第一傾斜度を傾斜導出部が導出し、前記計測データから鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる前記計測データを起立データとして抽出し、前記第一傾斜度を用いて前記起立データを補正した補正後データに基づき前記縁石を示す縁石データを縁石抽出部が抽出し、前記縁石データに基づき前記縁石から前記車両までの距離を位置関係算出部が算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、一つの計測装置から得られる計測データを用いて路面に対する計測装置の傾きを把握し、この傾きを縁石データを抽出する際に用いることで、高速、正確に縁石データを抽出し、縁石に対する車両の距離と傾きとを検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係る位置関係検出システムが搭載された車両、および縁石の位置関係を示す上面図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両、位置関係検出システム、および縁石の位置関係を示す側面図である。
【
図3】本実施の形態に係る位置関係検出システムの機能構成を示すブロック図である。
【
図4】本実施の形態に係る計測装置の傾きと縁石に対する走査状態との関係を示す図である。
【
図5】本実施の形態に係るデータ取得部による計測データの抽出範囲を示す図である。
【
図6】本実施の形態に係る正着制御中の縁石に対する車両の距離と角度を示す図である。
【
図7】本実施の形態に係る車両の傾きを示す図である。
【
図8】本実施の形態に係る位置関係検出方法の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る位置関係検出装置、および位置関係検出方法の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る位置関係検出システムが搭載された車両、および縁石の位置関係を示す上面図である。
図2は、本実施の形態に係る車両、位置関係検出システム、および縁石の位置関係を示す側面図である。
図3は、位置関係検出システムの機能構成を示すブロック図である。位置関係検出システム100が搭載される車両200の種類は、特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、縁石210の近傍に設置されるバス停に自動運転によって正着し、次のバス停まで自律走行する自動走行型の路線バスを車両200として例示している。車両200は、右側通行用、左側通行用のいずれでもかまわないが、本実施の形態の場合、左側通行用を例示しており、車両200の幅方向(図中X軸方向)における中央位置C(
図1中、一点鎖線で示す)に対し進行方向に向いて右側に操舵部材、シートなどが配置される運転席203が設けられている。
【0012】
正着とは、本実施の形態の場合、
図1に示すように、縁石210の並び方向(図中Y軸方向)に車両200の前後方向が平行、またはほぼ平行になるように車両200が停車し、縁石210から車両本体202までの距離が10cm以下の状態、例えば縁石210とタイヤとの間隔が4cm±2cmの範囲内に収まる状態を正着としている。正着制御とは、前記正着状態に車両本体202をするための制御を意味している。
【0013】
位置関係検出システム100は、縁石210から計測装置110までの距離D(
図6参照)、および縁石210の並び方向(図中Y軸方向)に対する計測装置110の角度θ(
図5参照)を検出するシステムであって、計測装置110と、位置関係検出装置120と、正着制御部130と、を備えている。なお、車両200に対する計測装置110の位置に基づき距離Dを縁石210と車両200との距離、縁石210とタイヤとの距離に換算することができ、車両200に対する計測装置110の姿勢に基づき角度θを縁石210の並び方向と車両200の前後方向との角度に換算することができる。
【0014】
計測装置110は、車両200の周辺に存在する縁石210、および路面220を含む道路構造物の状態を計測する装置である。計測装置110は、車両200の車輪を除く車両本体202の下面において、下側に向いて突出状に取り付けられている。計測装置110は、車両200の前後方向(図中Y軸方向)において前輪201よりも前側、かつ車両200の幅方向(図中X軸方向)において前輪201の間に配置されている。本実施の形態の場合、計測装置110は、車両200の幅方向において、前輪201間の中央位置よりも左側通行に対応した車両200の場合は右側、右側通行に対応した車両200の場合は左側(本実施の形態の場合、運転席203側)に配置されている。なお、車両200が完全自動運転であり運転席203が存在しない場合は、左側通行に対応した車両200の場合は、中央位置Cよりも右側、右側通行に対応した車両200の場合は中央位置Cよりも左側に計測装置110が配置されればよい。
【0015】
計測装置110は、車両200のピッチ方向P(
図2中X軸周り)において、計測装置110の計測範囲の中心線L(
図2、
図3参照)が傾くように取付手段111によって車両本体202に取り付けられている。本実施の形態の場合、取付手段111は、いわゆるブラケットであり、車両本体202と計測装置110との間に介在配置され、車両本体202に対し計測装置110を所定角度傾いた状態で固定する。
【0016】
道路構造物の状態を計測する計測装置110とは、縁石210に対する車両200の位置関係が導出できる計測データを出力できる装置である。なお、車両200に対する計測装置110の位置、および車両200の直進方向と計測装置110との関係は、明確であるため、縁石210に対する計測装置110の位置関係がわかれば、縁石210に対する車両200の位置関係は1対1で算出できる。
【0017】
計測装置110の種類は、前記計測データを出力できるものであれば特に限定されるものではない。計測装置110としては例えば、道路構造物の状態を画像として取得する撮像素子およびレンズ系を備えて画像データを計測データとして出力する単数のカメラ、複数のカメラにより道路構造物との距離や姿勢を計測するための複数の画像データを計測データとして出力するステレオカメラ、Time Of Flightの技術を用いて各画素における距離データを含む画像を取得し計測データとして出力するTOFセンサなどを例示することができる。
【0018】
本実施の形態の場合、計測装置110としては、360°(全方位)において三次元のイメージングを可能とするLiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)が採用されている。LiDARは、道路構造物にレーザー光を照射して散乱光や反射光を受光し、レーザー光照射から受光までの時間に基づき対象物までの距離や位置関係を計測する。計測装置110は、車両200に取り付けられた計測装置110から道路構造物の各点までの距離、および車両200に対する点の方向、例えば計測装置110を通過する水平面内の所定の基準方向に対する計測装置110を中心とした角度を示す点データF(
図4参照)を計測データとして生成する。
【0019】
具体的に計測装置110は、相互に異なる伏角(例えば数°間隔)の複数本のレーザー光、相互に異なる仰角(例えば数°間隔)の複数本のレーザー光を回転させながら走査し、レーザー光源と一緒に回転する受光素子により散乱光や反射光を受光する。計測装置110が取付手段111によらず水平に取り付けられている場合、レーザー光の回転軸は鉛直軸に沿っており(
図4の(b)の部分参照)、水平面内を回転するレーザー光が、ピッチ方向の計測範囲の中心線Lとなる。
【0020】
本実施の形態の場合、計測装置110は、放射するレーザー光の回転軸がピッチ方向Pにおいて鉛直軸に対し角度E傾くように取付手段111により車両本体202に取り付けられている。角度Eは、10°±7°の範囲から選定されることが好ましい。角度Eが3°未満の場合、縁石210から取得される点データFの数が不足する可能性が高くなる。角度Eが17°より大きい場合、他の道路構造物などの検出精度の低下が無視できなくなる。
図4の(a)の部分に示すように、鉛直軸に対する回転軸の傾きの角度Eを10°±7°の範囲から選定される角度に設定することで、比較的背が低い縁石210に対してもレーザー光による走査本数を適切に増加させることができ、縁石210を示す点データFの点数を増加させることができる。
【0021】
位置関係検出装置120は、計測装置110から取得した計測データに基づき縁石210に対する車両200の位置関係を導出する装置であり、データ取得部121と、平面特定部127と、路面抽出部125と、傾斜導出部128と、縁石抽出部122と、交線算出部126と、位置関係算出部123と、を備えている。
【0022】
データ取得部121は、計測装置110から計測データを取得する。本実施の形態の場合、計測装置110は、計測装置110の回転軸周り全周(360°)において縁石210を含む道路構造物の状態を計測する全方位型のLiDARであるため、データ取得部121は、計測装置110から取得した計測データから、
図5に示すように、所定の軸(本実施の形態の場合、計測装置110を通過する鉛直軸)周りにおける所定の角度範囲であって、角度範囲の中央線Bが車両200の左右方向に対し左側通行に対応した車両200の場合は左側、右側通行に対応した車両200の場合は右側(本実施の形態の場合、運転席203の反対側)に向いている抽出角度範囲Aに含まれる点データのみを新たな計測データとして抽出する。これにより、位置関係検出装置120が処理するデータ量を削減し、処理速度の向上を図っている。
【0023】
また、抽出角度範囲Aの一端は、左側通行に対応した車両200の場合は左側、右側通行に対応した車両200の場合は右側(本実施の形態の場合、運転席203の反対側)の前輪201と接し、他端は車両200の前後方向における前方に向くように設定されている。これにより、計算に用いる計測データのデータ量を抑制しつつ、縁石210に関する十分な情報を確保することが可能となる。また、計測装置110が全方位型のLiDARであり、取得する計測データが極座標により表現されるため、抽出角度範囲A内の計測データを容易に抽出することが可能である。
【0024】
計測装置110は、計測装置110の特異方向Sが抽出角度範囲A以外に向くように配置または設定されている。特異方向Sとは、測定の開始方向、および終了方向の少なくも一方であり、全方位型のLiDARに関しては測定の開始方向、および終了方向が一致している。特異方向Sは、計測データの切れ目に該当し、計測データに含まれる角度の基準方向(本実施の形態の場合、0°の方向)に該当している。このように特異方向Sを抽出角度範囲A以外となるように計測装置110を配置または設定することで、データ処理の負荷を抑制し、検出精度の向上を図ることができる。
【0025】
なお、データ取得部121は、所定の角度範囲Aとして所定の距離以下の範囲を新たな計測データとして抽出してもよい。具体的に例えば計測装置110から20m以内の計測データを抽出する場合を例示できる。また、データ取得部121は、角度、および距離の少なくとも一方で計測データを抽出する範囲を制限するのではなく、矩形など所定の形状の領域を用いて計測データを抽出してもかまわない。この場合、選定する領域は、前輪よりも前方の領域が後方の領域よりも大きいことが好ましく、また、車両200の中央位置Cに対し左側通行に対応した車両200の場合は左側、右側通行に対応した車両200の場合は右側(本実施の形態の場合、運転席203の反対側)が左側通行に対応した車両200の場合は右側、右側通行に対応した車両200の場合は左側(本実施の形態の場合、運転席203側)より大きいことが好ましい。
【0026】
平面特定部127は、計測データに含まれる点データの集合である三次元点群から少なくとも二つの平面を特定する。本実施の形態の場合、制限された領域内の計測データに基づき平面が特定される。これにより、道路構造物の内、縁石210、および路面220に関する平面を集中して特定することができる。平面の特定方法は、特に限定されるものではないが、例えば、三次元点群処理のためのソフトウェアライブラリであるPoint Cloud Library(PCL)を用いることを例示できる。具体的例えば、点群データの中からランダムに選んだ点データFの組から法線ベクトルを求め、法線ベクトルの一致度合いに基づき平面を特定する方法を例示することができる。
【0027】
路面抽出部125は、取得した計測データに基づき路面を示す路面データを抽出する。路面抽出部125の路面抽出ロジックは、特に限定されるものではない。例えば計測データがカメラに基づく画像の場合、画像解析により路面データを抽出してもかまわない。
【0028】
本実施の形態の場合、路面抽出部125は、平面特定部127により特定された複数の平面の中から、計測装置110の基準面(水平面と想定される)との傾きが路面傾斜範囲内、かつ、面積が路面面積閾値以上の平面を路面データとして抽出する。
【0029】
路面傾斜範囲は、特に限定されるものではなく、車両200の最大ロール角度や最大ピッチ角度に基づき設定される。具体的には計測装置110の基準面に対する傾きに対し±10°程度の範囲を路面傾斜範囲として例示できる。
【0030】
なお、面積が路面面積閾値以上か否かの判定において、特定された平面に含まれる点データFの数が所定数以上か否かに基づき判定することも可能である。例えば、少なくとも特定された平面に含まれる点データFの数が50以下の平面は、傾斜に関する判断をすることなく路面データとして抽出しないようにすることも可能である。
【0031】
傾斜導出部128は、路面抽出部125により抽出された路面データに基づき、
図7の(a)に示すように実際の水平面内の所定の一軸である第一軸231に対する車両200に取り付けられた計測装置110の基準面112の第一傾斜度θ1を導出する。本実施の形態の場合、第一軸231は、車両200の幅方向に沿う軸であって、車両200が位置している路面220に沿う軸である。つまり、第一傾斜度θ1は、車両200のロール方向Rの傾斜度である。また、傾斜導出部128は、
図7の(b)に示すように、水平面内において第一軸231に直交する第二軸232に対する計測装置110の基準面112の第二傾斜度θ2も導出する。第二軸232は車両200の前後方向に沿う軸である。つまり、第二傾斜度θ2はピッチ方向Pの傾斜度である。具体的に、傾斜導出部128は、路面抽出部125により抽出された路面データが水平面に平行であるとし、予め定められた計測装置110の基準面112の路面データに対するロール方向R、およびピッチ方向Pの傾斜度を第一傾斜度θ1、および第二傾斜度θ2として導出する。第一傾斜度θ1と第二傾斜度θ2の導出に用いる路面データは、縁石210と路面220の両方を計測した計測データに基づいて抽出されることが好ましい。
【0032】
縁石抽出部122は、データ取得部121が取得した計測データに基づき縁石210を示す縁石データを抽出する。縁石抽出部122の縁石データを抽出する方法は、特に限定されるものではない。
【0033】
本実施の形態の場合、データ取得部121が取得する計測データには、車両200に対する道路構造物の各点の位置を示す点データFが含まれている。平面特定部127は、点データFの集合である三次元点群から平面を特定している。縁石抽出部122は、縁石210の側面211を示す縁石データの候補として鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる平面を起立データとして抽出し、起立データについて第一傾斜度に基づき補正を行って補正後データを生成している。なお、起立データに対し第二傾斜度を加えて補正後データを生成してもかまわない。
【0034】
縁石傾斜範囲は、特に限定されるものではなく、普及している実際の縁石の側面の鉛直面に対する傾きに対し±10°程度の範囲を縁石傾斜範囲として例示できる。具体的に例えば、実際の縁石の側面の鉛直面に対する傾きは5.7°、縁石傾斜範囲は5.7°±10°を例示できる。
【0035】
縁石抽出部122はさらに、補正後データに基づき縁石210の側面211を示す縁石データを抽出する。具体的に例えば、縁石抽出部122は、補正後データから、高さが高さ閾値以下の平面を縁石データとして抽出してもよい。また、縁石抽出部122は、補正後データから、面積が縁石面積閾値未満の平面を縁石データから除外してもかまわない。さらに、縁石抽出部122は、補正後データに含まれる点データFの数に対し、高さ閾値より高い点データFの数の割合が比較閾値以上の補正後データを、前記縁石データから除外してもかまわない。
【0036】
高さ閾値は、特に限定されるものではなく、普及している実際の縁石の高さに基づき設定される。具体的に例えば、複数種類の縁石の高さの最低値が20cmとした場合、計測誤差などを考慮した18cmを高さ閾値として例示できる。
【0037】
縁石面積閾値は、特に限定されるものではない。また、縁石210は、長手方向に並べて配置されるため、縁石210の側面211の面積は、一律に特定できない。従って、縁石面積閾値は、複数個(例えば数個)の縁石210の側面積の合計を下限値として設定してもかまわない。本実施の形態の場合、縁石面積閾値は、抽出された縁石データに含まれる点データFの数としている。これは、縁石210の側面211として計測された点データFの数と縁石210の側面211の面積が比例関係にあることに基づく。
【0038】
交線算出部126は、路面抽出部125で抽出された路面データと縁石抽出部122で抽出された縁石データとの交線215を示す交線データを算出する。交線データを算出するロジックは、特に限定されるものではない。例えば、路面データを含む仮想的な路面平面方程式、および縁石データを含む仮想的な縁石平面方程式を作成し、これらの二つの平面の交わりを交線データ(交線方程式)とする方法を例示できる。
【0039】
位置関係算出部123は、縁石抽出部122が抽出した縁石データに基づき縁石210から車両200までの距離D、および縁石210の並び方向に対する車両200の角度θを算出する。距離Dおよび角度θの算出方法は、計測装置110が出力する計測データの種類によって異なり、限定されるものではない。例えば、計測データが画像の場合、縁石として抽出された部分の画像内の傾きを角度θに対応付けてもよく、縁石として抽出された部分と直交する線であって画像内の基準点を通過する線の縁石から基準点までの長さを距離Dに対応付けてもかまわない。
【0040】
本実施の形態の場合、位置関係算出部123は、算出された交線データに基づき交線215から車両200までの距離D(詳細には縁石210と路面220の交線215から計測装置110までの距離Dが算出される。
【0041】
正着制御部130は、位置関係算出部123により算出される縁石210から車両200までの距離D、および縁石210の並び方向に対する車両200の角度θに基づき縁石210に沿って正着させるように車両200を制御する。具体的に例えば、正着制御部130は、ステアリング、走行用のモータ(エンジン)、ブレーキなどを統合的に制御して正着制御を行う。なお、正着制御部130は、運転者に対して正着に必要な情報を提示することで車両200を正着制御してもよい。
【0042】
次に、縁石210から路面220上の車両200までの距離D、および縁石210の並び方向に対する車両200の前後方向の角度を検出する位置関係検出方法の流れを説明する。
図8は、位置関係検出方法の流れを示すフローチャートである。
【0043】
最初に、計測装置110の較正の必要性が判断される(S101)。例えば、計測装置110の初期設定の段階や計測装置110の使用を開始して所定期間経過の後などのタイミングにおいて計測装置110の較正が行われる(S101:Yes)。具体的には、計測装置110が取り付けられた車両200を水平であることが保証されている路面上まで移動させて配置し、路面抽出部125に路面データを抽出させ、傾斜導出部128に導出させた第一傾斜度が0°となるように計測装置110の基準面を較正する(S102)。なお、計測装置110の特異方向S(
図5参照)と、車両200の前後方向などに関して較正してもかまわない。
【0044】
次に、自動運転において正着制御が開始されると(S103:Yes)、データ取得部121は、車両200の周辺に存在する縁石210、および路面220を含む道路構造物の状態を計測する計測装置110から計測データを取得する(S104)。本実施の形態の場合、データ取得部121は、取得した計測データから所定の領域内を示す所定領域データを抽出して新たな計測データとし、データ量を削減している(S105)。
【0045】
次に本実施の形態の場合、平面特定部127が削減された所定領域データに基づき複数の平面を特定する(S106)。路面抽出部125は、複数の平面の中から路面220を示す路面データを抽出する(S107)。
【0046】
抽出した路面データが正しい路面データである場合(S108:Yes)、傾斜導出部128が、抽出された路面データと予め較正された計測装置110の基準面とを比較し、ロール方向の計測装置110の傾きである第一傾斜度、およびピッチ方向の傾きである第二傾斜度を導出する(S109)。
【0047】
次に、縁石抽出部122が、平面特定部127により特定された平面から鉛直面に対し縁石傾斜範囲内に含まれる平面に対応する計測データを起立データとして抽出する(S110)。抽出した起立データに対し、第一傾斜度、および第二傾斜度を用いて補正を実行し補正後データを生成する(S111)。縁石抽出部122は、生成した補正後データに対し高さ閾値、縁石面積閾値などを用いて正しい縁石データを抽出する(S112:Yes)。
【0048】
次に、交線算出部126が、路面抽出部125で抽出された路面データと縁石抽出部122で抽出された縁石データとの交線215を示す交線データを算出する(S113)。次に、位置関係算出部123が、交線データに基づき縁石210から車両200までの距離D、および縁石210の並び方向に対する車両200の角度θを算出する(S114)。距離Dおよび角度θの算出方法は、計測装置110が出力する計測データの種類によって異なり、限定されるものではない。例えば、計測データが画像の場合、縁石として抽出された部分の画像内の傾きを角度θに対応付けてもよく、縁石として抽出された部分と直交する線であって画像内の基準点を通過する線の縁石から基準点までの長さを距離Dに対応付けてもかまわない。
【0049】
本実施の形態の場合、位置関係算出部123が、算出された交線データに基づき交線215から車両200までの距離D(詳細には縁石210と路面220の交線215から計測装置110までの距離Dを算出する(S114)。最後に、位置関係算出部123は、正着制御部130に算出した距離と角度とを出力する(S115)。以上のS104からS116までのフローが正着制御終了(S116:Yes)まで繰り返される(S116:No)。
【0050】
上記実施の形態に係る位置関係検出装置120は、計測装置110から取得する計測データから縁石210の側面211を示す可能性の高い起立データを選定し、起立データに対し、同じ計測装置110から得られる路面データに基づいて補正を行うことで、即答性に優れ、精度の高い距離と角度のデータを出力することができる。従って、ロール方向やピッチ方向に揺れ動く車両200に対しても正着制御(自動駐車)を高い精度で安定的に実現させることができる。具体的に例えば、本実施の形態により得られる距離D、および角度θを用いれば、縁石210と車両200の縁石210側の前輪201との距離は4cm±2cmの範囲に収まるように正着制御をすることができる。本実施の形態によれば、縁石210の上端面の車両200側の縁212と車両200との距離を使用した正着制御の場合に起こりうる縁石210の側面211と車両200の前輪201との干渉を回避することができる。
【0051】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0052】
例えば、計測装置110を車両本体202の下面に取り付ける場合を説明したが、計測装置110は、車両本体202の側面、天井の外側、平面視における車両200の角部など任意の位置に配置することができる。
【0053】
また、計測装置110は、所定の軸周りの全周において道路構造物の状態を計測するものばかりでなく、
図9に示すような所定の軸周りにおいて所定の角度範囲Aの道路構造物の状態を計測するものであってもかまわない。例えば計測装置110がカメラなどの場合、カメラの画角が角度範囲Aとなる。また、このような計測装置110は、角度範囲Aの中央線Bは、車両200の左右方向に対し左側通行に対応した車両200の場合は左側、右側通行に対応した車両200の場合は右側(本実施の形態の場合、運転席203の反対側)に向くように配置されることが好ましい。
【0054】
また、位置関係検出装置120は、平面特定部127を備えていない場合もある。具体的に例えば、計測データが距離データを含む画像データのような場合は、路面220、および縁石210の側面211を、パターンマッチングなどを用いて計測データから路面データ、および縁石データを直接抽出することも可能である。
【0055】
また、位置関係検出装置120は、交線算出部126を備えていない場合もある。具体的には縁石210の側面211を示す路面データに基づき、縁石210と車両200との距離、および縁石210の並び方向に対する車両200の角度を位置関係算出部123が直接算出してもかまわない。
【0056】
また、データ取得部121は、計測装置110から取得した計測データを所定の角度範囲に限定したが、データ取得部121は、角度範囲、および距離範囲の少なくとも一方により限定してもよい。距離範囲とは具体的に例えば計測装置110から20m以内の計測データのみを抽出することである。
【0057】
また、データ取得部121は、計測装置110から取得した計測データを矩形など任意の閉じた形状の範囲内に限定してもかまわない。
【0058】
またデータ取得部121、縁石抽出部122、位置関係算出部123、および正着制御部130の処理部の一部、または全部の処理をコンピュータに実現させるプログラムであってもかまわない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明は、乗用車、バス、トラック、農業機械、建設機械などの路面を走行する車両などに利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
100…位置関係検出システム、110…計測装置、111…取付手段、112…基準面、120…位置関係検出装置、121…データ取得部、122…縁石抽出部、123…位置関係算出部、125…路面抽出部、126…交線算出部、127…平面特定部、128…傾斜導出部、130…正着制御部、200…車両、201…前輪、202…車両本体、203…運転席、210…縁石、211…側面、215…交線、220…路面、231…第一軸、232…第二軸