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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/52 20200101AFI20230912BHJP
   G01R 31/389 20190101ALI20230912BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230912BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01R31/52
G01R31/389
H01M10/04 Z
H01M10/48 P
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019236722
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021105557
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】井出 直孝
(72)【発明者】
【氏名】大槻 康明
(72)【発明者】
【氏名】松山 嘉夫
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/150416(WO,A1)
【文献】特開平11-271408(JP,A)
【文献】特開2003-059544(JP,A)
【文献】特開2019-138757(JP,A)
【文献】特開2019-091622(JP,A)
【文献】特開2016-091872(JP,A)
【文献】特開2019-113469(JP,A)
【文献】特開2008-243440(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/50-31/74
G01R 31/36-31/396
H01M 10/04
H01M 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電圧モードと定電流モードとを相互に切り替え可能な直流電源を、接続配線を介して蓄電デバイスの蓄電端子間に接続し、予め定めた検査時間に亘り、上記定電流モードとした上記直流電源から上記蓄電端子を通じて上記蓄電デバイスに、予め定めた大きさの定電流を流す定電流ステップと、
上記定電流ステップに続いて、上記定電流ステップにおける上記接続配線を介した上記直流電源と上記蓄電デバイスとの接続を維持したまま、かつ、上記定電圧モードとした上記直流電源に、上記定電流ステップの終期に上記直流電源で生じさせていた終期電源電圧と同じ大きさの電源電圧を発生させて、上記接続配線を介して上記蓄電デバイスの上記蓄電端子間に印加する電圧印加ステップと、
上記電圧印加ステップにおいて上記蓄電デバイスに流す電源電流の収束状況と上記蓄電デバイスの内部短絡の大きさの良否を判別する電流しきい値とから、上記蓄電デバイスの内部短絡を検知する検知ステップと、を備える
蓄電デバイスの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池など蓄電デバイスの良否を判定する検査方法が種々提案されている。例えば特許文献1では、検査対象とする二次電池を加圧状態で放置する放置工程を行うと共に、この放置工程の前後に電池電圧を測定する。放置工程の前後に生じた電池電圧の差は、放置工程の間に生じた自己放電による電圧低下量を示している。即ち、電圧低下量が大きい電池は自己放電量が多いことになる。このため、電圧低下量の大小により二次電池の良否を判定できる。なおこの検査方法は、二次電池などの蓄電デバイスの製造方法をなす工程中の一工程として行われることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-153275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の二次電池の良否判定の手法では、蓄電デバイスの良否判定に時間が掛かる不具合があった。放置工程の放置時間を長く取らないと、二次電池の良否の判定に有意性があるといえるほどの電圧低下量の大小の差異が生じないからである。
【0005】
そこで、図5に示すように、二次電池などの蓄電デバイスCTの接続端子CT1,CT2に接続配線CWを介して可変直流定電圧電源SPを接続し、適宜設定した定電圧(電源電圧)Vspを印加し続けることにより、蓄電デバイスCTを通じて流れる電源電流(漏れ電流)Idを電流検知部SPIで検知し、この電源電流Idが安定した時点での電源電流Idの大きさから、蓄電デバイスCTの良否を判定する手法を考えた。なお、図5では、蓄電デバイスCTは、並列に接続されたデバイス容量Cd及び短絡抵抗Rdpに、直流抵抗Rdsが直列に接続された等価回路で示してある。また、蓄電デバイスCTの接続端子CT1,CT2と接続配線CWの接続プローブP1,P2との間には、それぞれ接触抵抗R1,R2が発生する。また、接続配線CWに生じる抵抗を併せて配線抵抗Rwとする。
【0006】
定電圧の電源電圧Vspを蓄電デバイスCTに印加し続けると、この蓄電デバイスCTが充電あるいは放電されて、可変直流定電圧電源SPの電源電圧Vspと、蓄電デバイスCT(そのデバイス容量Cdに生じる)デバイス電圧Vdとが徐々に均衡し、蓄電デバイスCTのうち、デバイス容量Cdには充電電流Iidが流れず、直流抵抗Rds及び短絡抵抗Rdpを通じて電源電流(漏れ電流)Idのみが流れる状態となって安定すると考えられる。従って、安定した状態における電源電流Idを検知すれば、蓄電デバイスCTの短絡抵抗Rdpの大小を検知できると考えられるからである。
【0007】
ところで、電源電流Idを早期に安定させ、蓄電デバイスCTの良否判定を早期に可能とするには、図5に示す、可変直流定電圧電源SPと蓄電デバイスCTとを接続した回路において、蓄電デバイスCT外に存在する外部抵抗Rextを、より正確には、接続配線CWの配線抵抗Rwと、接続プローブP1,P2と接続端子CT1,CT2との間の接触抵抗R1,R2と、直流抵抗Rsとの和(Rext=Rw+R1+R2)を小さくするとよい。電源電流Idの変化の速さを羈束する時定数τ(=Cb・Rext)を小さくできるからである。具体的には、接続配線CWの配線抵抗Rwを下げるべく、接続配線CWの長さを短く、径を太くするのが好ましい。
【0008】
一方、可変直流定電圧電源SPの可変定電圧源SPEで発生させ電圧検知部SPVで検知する電源電圧Vspの大きさは、設定値に対し誤差が生じるので、蓄電デバイスCTに実際に印加される電源電圧Vspを蓄電デバイスCT(デバイス容量Cd)に生じているデバイス電圧Vdに完全に一致させることは困難である。このため、図5に示す回路において、可変直流定電圧電源SPの電源電圧Vspと蓄電デバイスCTのデバイス電圧Vdとの間に電圧差ΔV(=Vsp-Vd)が存在すると、蓄電デバイスCTに対し電源電圧Vspを印加した直後に、大きな電源電流Id(≒ΔV/Rext)が流れる(蓄電デバイスの直流抵抗Rdsは十分小さいとする)。ここで前述のように、外部抵抗Rextを小さくしていた場合には、特に大きな電源電流Idが印加当初に流れる。これにより、可変直流定電圧電源SPを損傷したり、接続配線CWの接続プローブP1,P2と蓄電デバイスCTの接続端子CT1,CT2とが溶着するなどの不具合を生じる虞がある。一方、このような不具合を避けるために外部抵抗Rextを大きくすると、蓄電デバイスCTの良否判定に時間が掛かる。
【0009】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、蓄電デバイスに定電圧を印加した場合に流れる電源電流により、当該蓄電デバイスの良否を判定するにあたり、設定した電源電圧とデバイス電圧との電圧差が存在することに伴う不具合の発生を防止した、蓄電デバイスの検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、定電圧モードと定電流モードとを相互に切り替え可能な直流電源を、接続配線を介して蓄電デバイスの蓄電端子間に接続し、予め定めた検査時間に亘り、上記定電流モードとした上記直流電源から上記蓄電端子を通じて上記蓄電デバイスに、予め定めた大きさの定電流を流す定電流ステップと、上記定電流ステップに続いて、上記定電流ステップにおける上記接続配線を介した上記直流電源と上記蓄電デバイスとの接続を維持したまま、かつ、上記定電圧モードとした上記直流電源に、上記定電流ステップの終期に上記直流電源で生じさせていた終期電源電圧と同じ大きさの電源電圧を発生させて、上記接続配線を介して上記蓄電デバイスの上記蓄電端子間に印加する電圧印加ステップと、上記電圧印加ステップにおいて上記蓄電デバイスに流す電源電流の収束状況と上記蓄電デバイスの内部短絡の大きさの良否を判別する電流しきい値とから、上記蓄電デバイスの内部短絡を検知する検知ステップと、を備える蓄電デバイスの検査方法である。
【0011】
上述の検査方法では、まず定電流ステップでは、定電流モードとした直流電源から蓄電デバイスに定電流を流すため、そもそも大電流は流れない。その後、電圧印加ステップにおいて、定電圧モードとした直流電源で蓄電デバイスに電圧を印加するのであるが、定電流ステップの終期に直流電源で生じさせていた終期電源電圧と同じ大きさの電源電圧を発生させて、蓄電デバイスに印加する。このため、上述のように定電流ステップでも大電流は流れない上、従来と異なり、電圧印加ステップの当初にも、定電流ステップで流した定電流と同じ大きさの電流が流れるに留まり、外部抵抗の大小に拘わらず、大電流が流れることがない。このため、従来のような不具合を生じないで、外部抵抗、具体的には、接続配線の配線抵抗を適宜の大きさに選択して、蓄電デバイスの内部短絡を検知できる。
【0012】
なお、定電流ステップで蓄電デバイスに流す定電流の大きさは、適宜設定すれば良いが、電圧印加ステップにおいて蓄電デバイスを流れる電流が収束して安定する大きさに近い大きさとすると良い。例えば、蓄電デバイスの良否を判別する電流しきい値を設定する場合には、この電流しきい値の1/2~2倍程度の大きさとすると良い。
【0013】
電圧印加ステップでは、蓄電デバイスを流れる電源電流の変化は徐々に収束する。具体的には、終期電源電圧と同じ大きさとした電源電圧と蓄電デバイスの内部短絡で生じる短絡抵抗の大きさとから定まる電流値(収束電流値)に向けて、徐々に変化が収束し安定する。この収束電流値が、蓄電デバイスの内部短絡の大きさの良否を判別する電流しきい値よりも大きい場合には、蓄電デバイスの短絡抵抗の大きさが小さく、内部短絡が生じていると考えられ、不良品と判断できる。一方、収束電流値が電流しきい値よりも小さい場合には、蓄電デバイスの短絡抵抗が大きく、内部短絡が生じていないと考えられ、良品と判断できる。
このことから、検知ステップにおいて、蓄電デバイスを流れる電流の収束状況から、蓄電デバイスの内部短絡を検知する手法としては、上述の収束電流値が得られる時期まで電圧印加ステップを継続し収束電流値を取得して、取得した収束電流値を用いて、内部短絡を判断する手法が挙げられる。そのほか、蓄電デバイスに流す電源電流が十分収束しなくとも、安定に近づいていると判断できた段階での電源電流の値、電流しきい値と比較する手法も挙げられる。また、蓄電デバイスに流す電源電流が十分収束しなくとも、蓄電デバイスに流す電源電流の収束の方向が、電流しきい値に比して、増加方向か減少方向かを判断することで、蓄電デバイスの内部短絡を検知するようにしても良い。
【0014】
このような検査方法を適用できる蓄電デバイスとしては、リチウムイオン二次電池などの二次電池のほか、電気二重層キャパシタ、リチウムイオンキャパシタなどのキャパシタが挙げられる。
【0015】
さらに、組み立てた未充電の蓄電デバイスをあらかじめ定めた充電状態まで初充電して充電済みの蓄電デバイスとする初充電工程と、上記充電済みの蓄電デバイスを検査する検査工程と、を備え、上記検査工程は、請求項1に記載の蓄電デバイスの検査方法を行う工程を含む蓄電デバイスの製造方法とするのが好ましい。
【0016】
この蓄電デバイスの製造方法では、初充電工程の後の検査工程に、前述の蓄電デバイスの内部短絡を検知する検査方法を行う工程を含むので、電源電圧とデバイス電圧との電圧差が存在することに伴う不具合の発生を防止しつつ、内部短絡の検査を行った蓄電デバイスを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施の形態にかかる検査対象の二次電池の例を示す外観図である。
図2】実施形態にかかり、定電流モード及び定電圧モードを選択できる電源を用いた検査回路を二次電池に接続した状態の等価回路図である。
図3】実施形態にかかる二次電池の製造工程を示すフローチャートである。
図4】実施形態にかかり、検査対象の二次電池を、定電流モードとこれに続く定電圧モードで駆動した場合に流れる電源電流の時間変化を示すグラフである。
図5】定電圧電源を用いた二次電池の検査回路の構成を示す等価回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。まず、検査対象の蓄電デバイスである二次電池1について説明する。図1に示す二次電池1は、扁平な直方体形状でアルミニウムからなる電池ケース10と、この電池ケース10内に内蔵された、図示しない電極体を有している。電池ケース10は、有底で四角筒状のケース本体11と、ケース本体11を封口する矩形板状の蓋体13とからなる。この蓋体13には、接続端子である正極端子50及び負極端子60が設けられている。但し、検査する二次電池1は、図1のような扁平角型のものに限らず、円筒型など他の形状のものでも構わない。
【0019】
次いで図2に、二次電池1を検査回路IPCに接続した状態の等価回路図を示す。図2では、二次電池1は、起電要素である電池容量Cbと、この電池容量Cbと並列に接続された短絡抵抗Rpと、電池容量Cb及び短絡抵抗Rpに直列に接続された直流抵抗Rsより構成される等価回路で示してある。このうち、短絡抵抗Rpは、二次電池1内の図示しない電極体が本来有している絶縁抵抗を、あるいはこれに加えて、電極体に混入する場合がある金属異物などによる短絡経路の有する抵抗をモデル化したものである。このため、短絡抵抗Rpが小さい不良品の二次電池1では、電池容量Cbに蓄積された電荷が短絡抵抗Rpを通じた内部短絡により、比較的短時間で放電(自己放電)されることになる。
【0020】
検査回路IPCは、直流電源EPと、先端に接続プローブP1,P2を有する接続配線CWと、を有している。直流電源EPは、定電流モードと定電圧モードとを切り替えて相互に移行できるようになっている。即ち、図2に示す等価回路で言えば、可変定電圧源EPEと可変定電流源EPCとをモード選択スイッチSWで切り替え可能となっている。また直流電源EPは、可変定電圧源EPEあるいは可変定電流源EPCとモード選択スイッチSWとに直列に接続され、直流電源EPが流す電源電流Ibを検知する電流検知部EPIを有している。また、可変定電圧源EPEあるいは可変定電流源EPCとモード選択スイッチSWとに並列に接続され、直流電源EPが出力する電源電圧Vepを検知する電圧検知部EPVを有している。
【0021】
図2に示すように、接続配線CWには配線抵抗Rwが生じる。また、接続プローブP1と二次電池1の正極端子50との間には接触抵抗R1が、接続プローブP2と負極端子60との間には接触抵抗R2が発生する。さらに、配線抵抗Rwと接触抵抗R1及びR2の和を、外部抵抗Rext(=Rw+R1+R2)とする。
【0022】
この検査回路IPCを用いて、二次電池1の短絡抵抗Rpの大小による、二次電池1の良否を検査する。短絡抵抗Rpが小さければ不良品であり、大きければ良品である。但し、本実施形態では、後述するように、短絡抵抗Rpの大小判断に代えて、定電圧を印加した後に安定した電源電流Ibの大きさを用いて、二次電池1の良否を判断する。
【0023】
この検査を含む二次電池1の製造方法の流れについて、図3のフローチャートを参照して説明する。先ず、組立工程S1において、二次電池1を組み立てる。出来上がった二次電池1は未充電であるため、初充電工程S2において、予め定めた充電パターンで初充電を行う。次いで、初充電された二次電池1を、開放状態として、高温下で所定時間に亘り放置する高温エージング工程S3を行う。その後、冷却工程S4において二次電池1を室温まで徐々に冷却する。
【0024】
次いで、図3において破線で示す検査工程S5を行う。この検査工程S5は、定電流工程S51、電圧印加工程S52、収束検知工程S53、及び判定工程S54を含む。この検査工程S5では、具体的には図2に示すように、二次電池1の正極端子50に接続プローブP1を、負極端子60に接続プローブP2を接続して、検査回路IPCを二次電池1に接続する。検査工程S5においては、この状態を維持する。即ち、一旦形成した正極端子50と接続プローブP1との接続、及び、負極端子60と接続プローブP2との接続は、この検査工程S5が終了するまで変化させず、接続し直しは行わない。正極端子50と接続プローブP1との間に生じる接触抵抗R1、及び、負極端子60と接続プローブP2との間に生じる接触抵抗R2の大きさは、接続のたびに変動するからである。
【0025】
この状態で、定電流工程S51において、直流電源EPを定電流モードとして、図2に即して言えば、モード選択スイッチSWを切り替えて可変定電流源EPCに接続して、予め定めた大きさの定電流Ibc(本実施形態では、Ibc=80μA)を二次電池1に流す。すると、既に初充電工程S2で充電されていた二次電池1の電池容量Cbがさらに充電される。また、二次電池1の正負極端子50,60間には、電池電圧Vbが発生し、直流電源EPの電源電圧Vepは、定電流Ibcを流すべく、電池電圧Vbと外部抵抗Rextで決まる大きさに制御される(Vep=Vb+Rext・Ibc)。本実施形態では、この定電流工程S51を、検査時間t=0~200秒に亘って行う。なお、図4に、典型的な良品と不良品の二次電池1について、定電流工程S51及び次述する電圧印加工程S52を行った場合の、電源電流Ibの変化の様子を示す。図4から理解できるように、定電流工程S51に検査時間t=0~200秒の間は、良品及び不良品のいずれの二次電池1でも、電源電流Ibとして、Ibc=80μAの定電流が流されていることが判る。
【0026】
次いで、電圧印加工程S52に進む。具体的には、直流電源EPと二次電池1との接続を維持したまま、直流電源EPを定電圧モードに移行させる、図2に即して言えば、モード選択スイッチSWを切り替えて、可変定電圧源EPEに接続して、定電圧を発生させ、二次電池1に印加する。具体的には、定電流工程S51の終期(検査時間t=200secの直前、以下、t=200(-)と表記する)において、直流電源EPが発生していた終期電源電圧Vepe=Vep(200(-))と同じ大きさの電源電圧Vepを、電圧印加工程S52で継続維持して発生させる。このため、この電圧印加工程S52の当初(検査時間t=200secの直後、以下、t=200(+)と表記する)において流れる電源電流(電池電流)Ib(200(+))は、定電流工程S51で流していた定電流Ibcに等しくなる(Ib(200(+))=Ibc)。本実施形態で言えば、電圧印加工程S52の当初の電源電流Ib(200(+))は80μAとなる(Ib(200(+))=80μA)。このように、本実施形態では、電圧印加工程S52で二次電池1に終期電源電圧Vepeと同じ定電圧を印加するのであるが、外部抵抗Rextの大小に拘わらず、定電圧の印加当初に大電流が流れることがない。このため、適宜の外部抵抗Rextを選択できる。従って、次述するように、この電圧印加工程S52で、徐々に変化が収束して安定する電源電流Ibを、早期に収束させ安定させるため、外部抵抗Rextを小さくすること、具体的には、接続配線CWを太くあるいは短くして配線抵抗Rwを小さくすることができる。
【0027】
さて、図4からも理解できるように、この電圧印加工程S52では、上述のように、終期電源電圧Vepe(=Vep(200(-)))と同じ大きさの電源電圧Vepを継続して発生するので、二次電池1の電池容量Cbに引き続き充電される。すると、電池容量Cbで発生する電圧(従って、電池電圧Vb)が徐々に上昇し、電源電流Ibが徐々に減少する。そしてついには、終期電源電圧Vepeと同じ大きさの電源電圧Vepでは、電池容量Cbを充電できなくなり、電池容量Cbには充電電流Iibが流れず、電源電流Ibは、直流抵抗Rsと短絡抵抗Rpの直列回路を流れる分のみとなって安定する。なお、短絡抵抗Rpに比して、直流抵抗Rsは十分小さいので無視できる。従って、電圧印加工程S52を介してから十分時間が経過した後に、電源電流Ibは、短絡抵抗Rpの大小に応じた大きさとなって安定する。即ち、二次電池1に内部短絡が生じており、短絡抵抗Rpが相対的に小さい場合には、電源電流Ibが大きい値で安定する。逆に、二次電池1に内部短絡が生じておらず、短絡抵抗Rpが相対的に大きい場合には、電源電流Ibが小さな値で安定する。従って、安定した時点での電源電流Ibの大きさにより、二次電池1の内部短絡の有無に関する、二次電池1の良否を判定できる。
【0028】
そこで、収束検知工程S53では、電源電流Ibの変化が収束し安定したか否かを検知し、変化が収束していない場合(No)には、電圧印加工程S52を継続する。一方、変化が収束している場合(Yes)には、判定工程S54に進む。なお、電源電流Ibの変化が収束しているかどうかを検知する手法としては、適宜の手法を選択できる。
【0029】
例えば本実施形態では、定期的(10秒毎)に電源電流Ibの大きさを検知して、電源電流の値Ib(n)を得ておく(nは自然数)。続いて、電源電流の値Ib(n)を得た各時点で、Ib(n-12)からIb(n)までの13ヶ(過去2分間)の電源電流値の平均値AV1と、Ib(n-24)からIb(n-12)までの13ヶ(過去4分~過去2分までの2分間)の電源電流値の平均値AV2との差(AV1-AV2)を算出する。本実施形態では、図4に示すように、定電流工程S51において、Ibc=80μAの定電流を流したので、電圧印加工程S52では、良品及び不良品の二次電池1のいずれでも、電源電流Ibは、80μAから徐々に減少して、短絡抵抗Rpの大きさに応じた電源電流Ibの大きさで安定する。そこで、初めて2つの平均値の差が0以上(0又は正の値)となった(AV1-AV2≧0)となった時点で、電源電流Ibの変化が収束したと判断する。図4に示す良品の二次電池1は、上向き矢印で示す検査時間t=1460秒の時点で電源電流Ibの変化が収束したと判断された。また、図4に示す負良品の二次電池1は、下向き矢印で示す検査時間t=1380秒の時点で電源電流Ibの変化が収束したと判断された。
【0030】
判定工程S54では、収束検知工程S53で電源電流Ibの変化が収束し安定したと判断した時点での電源電流Ibの大きさなどを用いて、検査対象の二次電池1が良品であるか不良品であるかを判定する。例えば、本実施形態では、電源電流Ibの変化が収束したと判断された時点(図4に示す二次電池1で言えば、検査時間t=1460秒あるいはt=1380秒の時点)で算出していた平均値AV1の大きさ(13ヶ分、過去2分間の電源電流の平均値)と、予め定めておいた電流しきい値Ibthとを比較する。そして、平均値AV1が電流しきい値Ibthよりも小さい(AV1<Ibth)の場合(Yes)には、検査対象の二次電池1が良品であると判定する。しかし、平均値AV1が電流しきい値Ibth以上(AV1≧Ibth)である場合(No)には、検査対象の二次電池1は不良品であると判定する。本実施形態では、図4において破線で示すように、電流しきい値Ibthを30μA(Ibth=30μA)に設定してある。このため、図4において上側のグラフをなす二次電池1は、AV1≧Ibthであるので、判定工程S54において、不良品と判定される。一方、図4において下側のグラフをなす二次電池1は、AV1<Ibthであるので、判定工程S54において、良品と判定される。かくして、良品とされた二次電池1が完成する。なお、不良品と判定された二次電池1は廃棄される。
【0031】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
例えば、実施形態では、二次電池1の製造方法における検査工程S5で、上述の検査方法を採用した。しかし、二次電池1の製造段階のみならず、二次電池1を一旦使用した後に、二次電池を検査する場合に適用しても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 二次電池(蓄電デバイス)
50 (二次電池の)正極端子(接続端子)
60 (二次電池の)負極端子(接続端子)
IPC 検査回路
EP 直流電源
EPE 可変定電圧源
EPC 可変定電流源
SW モード選択スイッチ
EPI 電流検知部
EPV 電圧検知部
Vep 電源電圧
Vepe 終期電源電圧
CW 接続配線
P1,P2 (接続配線の)接続プローブ
Rw (接続配線の)配線抵抗
R1,R2 (接続配線の接続プローブと蓄電デバイスの接続端子との間の)接触抵抗
Vb (二次電池の)電池電圧
Ib (二次電池を流れる)電源電流
Ibc (定電流モードで流す)定電流
Cb (二次電池の)電池容量
Rs (二次電池の)直流抵抗
Rp (二次電池の)短絡抵抗
Iib 充電電流
t 検査時間
S1 組立工程
S2 初充電工程
S3 高温エージング工程
S4 冷却工程
S5 検査工程
S51 定電流工程(定電流ステップ)
S52 電圧印加工程(電圧印加ステップ)
S53 収束検知工程(検知ステップ)
S54 判定工程(検知ステップ)
図1
図2
図3
図4
図5