(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 21/16 20060101AFI20230912BHJP
G03G 15/08 20060101ALI20230912BHJP
F16H 1/28 20060101ALI20230912BHJP
F16H 1/08 20060101ALI20230912BHJP
F16D 41/08 20060101ALI20230912BHJP
F16D 41/12 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G03G21/16 147
G03G21/16 176
G03G15/08 390A
F16H1/28
F16H1/08
F16D41/08 A
F16D41/12 B
(21)【出願番号】P 2019237868
(22)【出願日】2019-12-27
【審査請求日】2022-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【氏名又は名称】稲垣 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100195224
【氏名又は名称】松井 宏憲
(72)【発明者】
【氏名】西村 祥一郎
【審査官】山下 清隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-116319(JP,A)
【文献】特開平07-110054(JP,A)
【文献】特開2013-113971(JP,A)
【文献】特開2008-045686(JP,A)
【文献】特開2008-032143(JP,A)
【文献】特開2015-048165(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0061763(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/16
G03G 15/08
F16H 1/28
F16H 1/08
F16D 41/08
F16D 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
ローラと、
前記モータからの駆動力を前記ローラに伝達可能な動力伝達装置と、を備える画像形成装置であって、
前記動力伝達装置は、
前記モータからの駆動力が入力される入力要素と、前記ローラに向けて駆動力を出力する出力要素と、回転が規制された場合に前記入力要素から前記出力要素に駆動力を伝達可能とし、回転が規制されない場合に前記入力要素から前記出力要素に駆動力を伝達しない伝達要素とを有する遊星歯車機構と、
前記伝達要素の回転を規制する規制位置と前記伝達要素の回転を規制しない非規制位置との間で移動可能な規制部材と、を備え、
前記入力要素、前記出力要素および前記伝達要素は、同軸で回転可能であり、
前記入力要素および前記出力要素は、前記遊星歯車機構の軸方向において互いに隣接して配置され、
前記入力要素は、前記モータからの駆動力が入力される第1はすば歯車を有し、
前記出力要素は、前記ローラに向けて駆動力を出力する第2はすば歯車を有し、
前記第1はすば歯車と前記第2はすば歯車は、前記第1はすば歯車で発生する第1スラスト力の方向と、前記第2はすば歯車で発生する第2スラスト力の方向が逆向きとなるように設けられていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記第1はすば歯車は、前記第1スラスト力の方向が前記出力要素に向かう方向となるように設けられ、
前記第2はすば歯車は、前記第2スラスト力の方向が前記入力要素に向かう方向となるように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1はすば歯車の歯のねじれ方向と、前記第2はすば歯車の歯のねじれ方向は、同じ向きであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第2はすば歯車と噛み合う第3はすば歯車と、
前記第3はすば歯車を回転可能に支持する板金部材と、を備え、
前記第3はすば歯車は、前記第3はすば歯車で発生する第3スラスト力の方向が前記板金部材に向かう方向となるように設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記遊星歯車機構は、サンギヤ、リングギヤ、キャリアおよびプラネタリギヤを有し、
前記入力要素、前記出力要素および前記伝達要素のうち、1つが前記サンギヤを有し、前記サンギヤを有する要素以外の1つが前記リングギヤを有し、残りの1つが前記キャリアを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記伝達要素が前記サンギヤを有し、前記入力要素が前記リングギヤを有し、前記出力要素が前記キャリアを有することを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記サンギヤおよび前記プラネタリギヤは、平歯車であり、互いに噛み合っており、
前記リングギヤは、内歯車であり、前記プラネタリギヤと噛み合っていることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記伝達要素は、ギヤ部と、前記ギヤ部と一体に回転する回転板と、前記回転板の外周に設けられた爪部とを有し、
前記規制部材は、前記爪部に係合する前記規制位置と前記爪部から離脱する前記非規制位置との間で移動可能であり、
前記爪部は、1つだけ設けられていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記ローラは、現像ローラであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータからの駆動力をローラに伝達可能な動力伝達装置を備える画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータからの駆動力をローラに伝達可能な動力伝達装置として、サンギヤ、リングギヤ、キャリアおよびプラネタリギヤを有する遊星歯車機構と、サンギヤと一体に設けられ、回転が規制されることでリングギヤに入力された駆動力をキャリアに伝達でき、回転自在となることでリングギヤに入力された駆動力をキャリアに伝達しないラチェット部と、ラチェット部の突起部に噛み合う爪部を有する規制アームと、ばねの作用により規制アームを爪部を接触部に噛み合わせてラチェット部の回転を規制する状態とソレノイドにより規制アームを爪部を突起部から離間させてラチェット部を回転自在とする状態とに切り替える切換手段とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、遊星歯車機構は、安定して駆動できる構成であることが望ましい。
【0005】
そこで、本発明は、遊星歯車機構を安定して駆動させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した目的を達成するため、本発明の画像形成装置は、モータと、ローラと、モータからの駆動力をローラに伝達可能な動力伝達装置と、を備える。
動力伝達装置は、遊星歯車機構と、規制部材と、を備える。
遊星歯車機構は、モータからの駆動力が入力される入力要素と、ローラに向けて駆動力を出力する出力要素と、回転が規制された場合に入力要素から出力要素に駆動力を伝達可能とし、回転が規制されない場合に入力要素から出力要素に駆動力を伝達しない伝達要素とを有する。
規制部材は、伝達要素の回転を規制する規制位置と伝達要素の回転を規制しない非規制位置との間で移動可能である。
入力要素、出力要素および伝達要素は、同軸で回転可能である。
入力要素および出力要素は、遊星歯車機構の軸方向において互いに隣接して配置されている。
入力要素は、モータからの駆動力が入力される第1はすば歯車を有する。
出力要素は、ローラに向けて駆動力を出力する第2はすば歯車を有する。
第1はすば歯車と第2はすば歯車は、第1はすば歯車で発生する第1スラスト力の方向と、第2はすば歯車で発生する第2スラスト力の方向が逆向きとなるように設けられている。
【0007】
このような構成によれば、入力要素のモータからの駆動力が入力される部分や、出力要素のローラに向けて駆動力を出力する部分をはすば歯車としたことで、入力要素や出力要素の回転ムラを抑えることができるので、入力要素や出力要素を安定して回転させることができる。また、第1はすば歯車で発生する第1スラスト力の方向と、第2はすば歯車で発生する第2スラスト力の方向が逆向きとなることで、遊星歯車機構の軸方向の一方だけに向けて力が集中してかかることがなく、また、軸に対する入力要素や出力要素の傾きを抑制することができる。これにより、遊星歯車機構を安定して駆動させることができる。
【0008】
前記した画像形成装置において、第1はすば歯車は、第1スラスト力の方向が出力要素に向かう方向となるように設けられ、第2はすば歯車は、第2スラスト力の方向が入力要素に向かう方向となるように設けられている構成とすることができる。
【0009】
これによれば、第1スラスト力と第2スラスト力を互いに打ち消し合うように作用させることができるので、軸に対する入力要素や出力要素の傾きをより抑制することができる。これにより、遊星歯車機構をより安定して駆動させることができる。
【0010】
前記した画像形成装置において、第1はすば歯車の歯のねじれ方向と、第2はすば歯車の歯のねじれ方向は、同じ向きである構成とすることができる。
【0011】
これによれば、第1スラスト力の方向と第2スラスト力の方向を互いに向かい合う方向とすることができるので、第1スラスト力と第2スラスト力を互いに打ち消し合うように作用させることができ、軸に対する入力要素や出力要素の傾きをより抑制することができる。これにより、遊星歯車機構をより安定して駆動させることができる。
【0012】
前記した画像形成装置は、第2はすば歯車と噛み合う第3はすば歯車と、第3はすば歯車を回転可能に支持する板金部材と、を備え、第3はすば歯車は、第3はすば歯車で発生する第3スラスト力の方向が板金部材に向かう方向となるように設けられている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、第3スラスト力が第3はすば歯車を板金部材に押し当てる方向に作用するので、第3はすば歯車の軸方向の位置を安定させることができる。
【0014】
前記した画像形成装置において、遊星歯車機構は、サンギヤ、リングギヤ、キャリアおよびプラネタリギヤを有し、入力要素、出力要素および伝達要素のうち、1つがサンギヤを有し、サンギヤを有する要素以外の1つがリングギヤを有し、残りの1つがキャリアを有する構成とすることができる。
【0015】
前記した画像形成装置においては、伝達要素がサンギヤを有し、入力要素がリングギヤを有し、出力要素がキャリアを有する構成とすることができる。
【0016】
前記した画像形成装置において、サンギヤおよびプラネタリギヤは、平歯車であり、互いに噛み合っており、リングギヤは、内歯車であり、プラネタリギヤと噛み合っている構成とすることができる。
【0017】
これによれば、遊星歯車機構を容易に組み立てることができる。
【0018】
前記した画像形成装置において、伝達要素は、ギヤ部と、ギヤ部と一体に回転する回転板と、回転板の外周に設けられた爪部とを有し、規制部材は、爪部に係合する規制位置と爪部から離脱する非規制位置との間で移動可能であり、爪部は、1つだけ設けられている構成とすることができる。
【0019】
前記した画像形成装置において、ローラは、現像ローラである構成とすることができる。
【0020】
これによれば、遊星歯車機構を安定して駆動させることができることで、現像ローラを安定して駆動させることができるので、画質を向上させることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、遊星歯車機構を安定して駆動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す図である。
【
図2】モータ、駆動伝達機構および移動機構を右上から見た斜視図である。
【
図3】モータ、駆動伝達機構および移動機構を右側から見た図である。
【
図5】現像ローラが接触位置にあり、クラッチが伝達状態にあるときの、カム、カムフォロワ、遊星歯車機構、規制部材を示す斜視図(a)と、側面図(b)である。
【
図6】現像カートリッジの周辺を上から見た模式図であり、カムフォロワが待機位置に位置するとき(a)と、突出位置に位置するとき(b)を示す。
【
図7】遊星歯車機構を伝達要素側から見た分解斜視図(a)と、出力要素側から見た分解斜視図(b)である。
【
図8】規制部材の分解斜視図(a)と、第1レバーが回転規制部により回転が規制されている状態を示す図(b)と、第1レバーが第2レバーに対して揺動した状態を示す図(c)である。
【
図9】現像ローラが離間位置にあり、クラッチが切断状態にあるときの、カム、カムフォロワ、遊星歯車機構、規制部材を示す斜視図(a)と、側面図(b)である。
【
図10】遊星歯車機構と、遊星歯車機構の入力ギヤと噛み合うアイドルギヤと、遊星歯車機構の出力ギヤと噛み合うカップリングギヤを示す斜視図である。
【
図11】遊星歯車機構、アイドルギヤ、カップリングギヤを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、実施形態に係る画像形成装置1は、カラープリンタであり、筐体10と、シート供給部20と、画像形成部30と、制御部2とを備えている。なお、本実施形態においては、
図1の左側を前、右側を後、上下をそのまま上下とし、
図1の紙面手前側を右、紙面奥側を左とする。
【0024】
シート供給部20は、シートSがセットされるシートトレイ21と、供給機構22とを備えている。シートトレイ21は、画像形成部30の下方に配置され、筐体10から前側に引き出して取り外し可能である。供給機構22は、給紙ローラ23と、分離ローラ24と、分離パッド25と、搬送ローラ26と、レジストレーションローラ27とを備えている。シートSは、画像形成装置1で画像を形成することができる媒体であって、普通紙、封筒、葉書、薄紙、厚紙、光沢紙、樹脂シート、シール等を含む。
【0025】
シートトレイ21に収容されたシートSは、給紙ローラ23により送り出された後、分離ローラ24と分離パッド25との間で1枚ずつに分離され、搬送ローラ26によりレジストレーションローラ27に向けて搬送される。その後、シートSは、回転が停止した状態のレジストレーションローラ27により前端の位置が規制された後、レジストレーションローラ27が回転することで画像形成部30に供給される。
【0026】
画像形成部30は、露光装置40と、複数の感光ドラム50と、複数の現像カートリッジ60と、搬送装置70と、定着器80とを備えている。
露光装置40は、図示しないレーザダイオード、偏向器、レンズおよびミラーを備えている。露光装置40は、複数の感光ドラム50を露光する一点鎖線で示した複数の光ビームを発して、各感光ドラム50の表面を露光するように構成されている。
【0027】
複数の感光ドラム50は、イエローに対応するY感光ドラム50Yと、マゼンタに対応するM感光ドラム50Mと、シアンに対応するC感光ドラム50Cと、ブラックに対応するK感光ドラム50Kとを含む。なお、本明細書および図面においては、各色に対応して設けられた部材について、色を区別して示す場合には、符号にY,M,C,Kを付し、色を区別しないで説明する場合には、符号にY,M,C,Kを付さない。
【0028】
現像カートリッジ60は、複数の感光ドラム50のそれぞれに1つずつ対応して設けられている。複数の現像カートリッジ60は、Y感光ドラム50Yにトナーを供給するY現像ローラ61Yを有するY現像カートリッジ60Yと、M感光ドラム50Mにトナーを供給するM現像ローラ61Mを有するM現像カートリッジ60Mと、C感光ドラム50Cにトナーを供給するC現像ローラ61Cを有するC現像カートリッジ60Cと、K感光ドラム50Kにトナーを供給するK現像ローラ61Kを有するK現像カートリッジ60Kとを含む。
【0029】
各現像カートリッジ60は、現像ローラ61が対応する感光ドラム50に接触する接触位置にある位置(実線参照)と、現像ローラ61が対応する感光ドラム50から離間する離間位置にある位置(仮想線参照)との間で移動可能である。
【0030】
複数の感光ドラム50は、支持部材90に回転可能に支持されている。支持部材90には、各感光ドラム50に対応して配置された、感光ドラム50を帯電させるための帯電器52が設けられている。支持部材90は、筐体10のフロントカバー11を開くことで形成される開口から、筐体10に対して着脱可能である。また、支持部材90は、複数の現像カートリッジ60を着脱可能に支持する。
【0031】
搬送装置70は、シートトレイ21と複数の感光ドラム50との間に設けられている。搬送装置70は、駆動ローラ71と、従動ローラ72と、無端状のベルトからなる搬送ベルト73と、4つの転写ローラ74とを備えている。搬送ベルト73は、駆動ローラ71と従動ローラ72との間に張設され、外側の面が各感光ドラム50に対向して配置されている。各転写ローラ74は、各感光ドラム50との間で搬送ベルト73を挟持するように搬送ベルト73の内側に配置されている。
【0032】
定着器80は、複数の感光ドラム50および搬送装置70の後方に設けられている。定着器80は、加熱ローラ81と、加熱ローラ81に対向して配置された加圧ローラ82とを備えている。シートSの搬送方向における定着器80の下流側には、搬送ローラ15と、排出ローラ16が設けられている。
【0033】
画像形成部30では、感光ドラム50の表面が、帯電器52により一様に帯電された後、露光装置40から照射される光ビームにより露光される。これにより、感光ドラム50上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、現像カートリッジ60内に収容されたトナーは現像ローラ61の表面に担持され、接触位置に位置する現像ローラ61から感光ドラム50上に形成された静電潜像に供給される。これにより、感光ドラム50上にトナー像が形成される。次に、搬送ベルト73上に供給されたシートSが搬送ベルト73上を搬送されて感光ドラム50と転写ローラ74との間を通過することで、感光ドラム50上のトナー像がシートSに転写される。そして、シートSが加熱ローラ81と加圧ローラ82との間を通過することで、トナー像がシートSに熱定着される。その後、シートSは、搬送ローラ15および排出ローラ16により排紙トレイ13上に排出される。
【0034】
次に、現像ローラ61を駆動・停止するための構成と、現像ローラ61を対応する感光ドラム50に対して接触・離間させるための構成について説明する。
図2に示すように、画像形成装置1は、モータ3と、駆動伝達機構100と、移動機構5とを備えている。
【0035】
モータ3は、現像ローラ61と移動機構5の後述するカム150を駆動するためのモータである。モータ3は、正逆回転可能なモータである。本実施形態においては、画像形成装置1が画像形成する際のモータ3の回転方向を正回転とし、正回転と逆に回転する場合を逆回転とする。モータ3は、回転駆動する出力軸3Aを有し、出力軸3Aには、図示しないギヤが設けられている。モータ3は、制御部2により駆動が制御される。
【0036】
駆動伝達機構100は、モータ3からの駆動力を現像ローラ61とカム150に伝達するための機構である。
図3および
図4に示すように、駆動伝達機構100は、駆動力を現像ローラ61に伝達するための第1ギヤ列100Dと、駆動力をカム150に伝達するための第2ギヤ列100Cとを有している。なお、
図3および
図4では、第1ギヤ列100Dを構成する各ギヤ同士の噛み合いを太い実線で示し、第2ギヤ列100Cを構成する各ギヤ同士の噛み合いを太い破線で示している。
【0037】
図4に示すように、第1ギヤ列100Dは、アイドルギヤ110,113A,113B,113C,115と、動力伝達装置としてのクラッチ120と、カップリングギヤ117とを備えている。第1ギヤ列100Dを構成する各ギヤは、第1プレート101または第2プレート102に支持されており、感光ドラム50の軸方向に平行な回転軸周りに回転可能である。
【0038】
カップリングギヤ117は、クラッチ120と噛み合い、一体に回転するカップリング軸119(
図2参照)を有している。カップリング軸119は、フロントカバー11(
図1参照)の開閉に連動して現像ローラ61の軸方向に移動可能であり、フロントカバー11を閉めると現像カートリッジ60の図示しないカップリングと係合してモータ3からの駆動力を現像ローラ61に伝達可能となる。
【0039】
イエローのカップリングギヤ117Yは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110A,113A,115Yおよびクラッチ120を介して伝達される。マゼンタのカップリングギヤ117Mは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110A,113A,115Mおよびクラッチ120を介して伝達される。シアンのカップリングギヤ117Cは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110B,113B,115Cおよびクラッチ120を介して伝達される。ブラックのカップリングギヤ117Kは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110B,113B,115C,113C,115Kおよびクラッチ120を介して伝達される。クラッチ120の詳細な構成については後述する。
【0040】
図3に示すように、第2ギヤ列100Cは、アイドルギヤ131~137と、YMCクラッチ140Aと、Kクラッチ140Kとを備えている。第2ギヤ列100Cを構成する各ギヤは、第1プレート101または第2プレート102に支持されており、感光ドラム50の軸方向に平行な回転軸周りに回転可能である。
【0041】
YMCクラッチ140Aは、駆動力の伝達と切断を切り替えることで、カム150Y,150M,150Cの回転と停止を切り替える。YMCクラッチ140Aは、大径ギヤ140Lと小径ギヤ140Sを有し、大径ギヤ140Lがアイドルギヤ132Aと噛み合っており、小径ギヤ140Sがアイドルギヤ133Aと噛み合っている。
【0042】
Kクラッチ140Kは、駆動力の伝達と切断を切り替えることで、カム150Kの回転と停止を切り替える。Kクラッチ140Kは、YMCクラッチ140Aと同じ構成を有し、大径ギヤ140Lがアイドルギヤ132Bと噛み合っており、小径ギヤ140Sがアイドルギヤ133Bと噛み合っている。
【0043】
YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140Kは、電磁クラッチであり、通電してONとすることにより大径ギヤ140Lと小径ギヤ140Sが一体に回転し、通電を止めてOFFとすることにより大径ギヤ140Lが空転して小径ギヤ140Sが回転しない。YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140Kは、制御部2によりON・OFFが制御される。
【0044】
イエローのカム150Yは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110A,131A,132A、YMCクラッチ140A、アイドルギヤ133A,134を介して伝達される。マゼンタのカム150Mは、駆動力がカム150Yからアイドルギヤ135を介して伝達される。シアンのカム150Cは、駆動力がカム150Mからアイドルギヤ136を介して伝達される。カム150Y,150M,150Cは、YMCクラッチ140AをONとすることにより同時に回転し、OFFとすることにより停止する。
【0045】
ブラックのカム150Kは、モータ3から駆動力がアイドルギヤ110B,131B,132B、Kクラッチ140K、アイドルギヤ133B,137を介して伝達される。カム150Kは、Kクラッチ140KをONとすることにより回転し、OFFとすることにより停止する。
【0046】
移動機構5は、現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させるための機構である。移動機構5は、モータ3が正回転する場合にモータ3から駆動力を受けることで現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させるとともに、モータ3が逆回転する場合にもモータ3から駆動力を受けることで現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させるように構成されている。移動機構5は、複数のカム150(150Y,150M,150C,150K)と、複数のカム150のそれぞれに1つずつ対応して設けられた複数のカムフォロワ170とを備えている。
【0047】
カム150は、回転することにより、対応する現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させる部材である。
図5に示すように、カム150は、円板部151と、円板部151の外周に形成されたギヤ部150Gと、第1カム部152と、第2カム部153と、被検出部154とを有している。
【0048】
第1カム部152は、現像ローラ61を接触位置と離間位置との間で移動させる部分であり、円板部151から現像ローラ61の軸方向に突出している。第1カム部152は、軸方向における端面にカム面152Fを有している。カム面152Fは、第1保持面F11と、第2保持面F12と、第1案内面F13と、第2案内面F14とを有する。第1保持面F11は、カムフォロワ170を後述する待機位置に保持する面であり、第2保持面F12は、カムフォロワ170を後述する突出位置に保持する面である。第1案内面F13は、第1保持面F11と第2保持面F12を繋ぐ、第1保持面F11に対して傾斜した面であり、第2案内面F14は、第2保持面F12と第1保持面F11を繋ぐ、第1保持面F11に対して傾斜した面である。なお、
図5等において、第1カム部152に付したドットハッチは、第2保持面F12を表している。
【0049】
第2カム部153は、後述する規制部材160と協働してクラッチ120の伝達と切断を切り換える部分であり、円板部151の側面のうち、第1カム部152が配置された側面とは反対側の側面から現像ローラ61の軸方向に突出している。第2カム部153は、軸方向から見て、略円弧状に延びている。第2カム部153は、第1カム部152とともに円板部151と一体に形成されている。このため、第2カム部153は、第1カム部152とともに回転する。
【0050】
被検出部154は、カム150の回転方向の位相を示す部分であり、第1カム部152よりも回転中心に近い位置において、円板部151から現像ローラ61の軸方向に突出している。シアンとブラックのカム150C,150Kの被検出部154は、後述する離間センサ4C,4Kにより検出される。
【0051】
図2に示すように、各カム150Y,150M,150Cは、第1カム部152のカム150の回転方向の長さがカム150Yが他よりも長い点が異なるだけで、他の構成はほぼ同じである。また、ブラックのカム150Kは、回転方向に短い第1カム部152が2つ設けられている。
【0052】
図5に戻り、カムフォロワ170は、スライド軸部171と、接触部172と、バネ掛け部174とを有している。
スライド軸部171は、筐体10に設けられた支持軸179(
図6(b)参照)に、現像ローラ61の軸方向にスライド移動可能に支持されている。これにより、カムフォロワ170は、軸方向にスライド移動可能である。
【0053】
接触部172は、第1カム部152のカム面152Fと接触可能な部分であり、スライド軸部171から延出して設けられている。カムフォロワ170は、
図6(b)に示す、接触部172が第2保持面F12に接触して現像ローラ61を離間位置に位置させる突出位置と、
図6(a)に示す、接触部172が第1保持面F11に接触して現像ローラ61を接触位置に位置させる待機位置との間でスライド移動可能である。
【0054】
図5に示すように、バネ掛け部174は、バネ176の一端が引っ掛けられる部分であり、スライド軸部171から接触部172とは異なる方向に延出して設けられている。バネ176は、引張バネであり、他端が第2プレート102の、バネ掛け部174よりも下の位置に設けられた図示しないバネ掛け部に引っ掛けられている。バネ176は、カムフォロワ170を突出位置から待機位置に向けて付勢している。
【0055】
図6に示すように、現像カートリッジ60は、支持部材90に前後に移動可能に支持されている。支持部材90は、被当接部94と、押圧部材95とを有している。被当接部94は、後述するスライド部材64が当接する部分であり、上下方向に沿った軸回りに回転可能なローラからなる。押圧部材95は、バネ95Aにより後方に向けて付勢されており、支持部材90に現像カートリッジ60が装着されると、現像カートリッジ60を押圧して現像ローラ61を対応する感光ドラム50に接触する接触位置に移動させる。
【0056】
現像カートリッジ60は、トナーを収容するケース63と、スライド部材64とを有している。スライド部材64は、ケース63に対して現像ローラ61の軸方向にスライド移動可能な部材であり、カムフォロワ170に押圧されることで軸方向にスライド移動する。スライド部材64は、ケース63にスライド移動可能に支持されたシャフト191と、シャフト191の一端に設けられた第1当接部材192と、シャフト191の他端に設けられた第2当接部材193とを有している。
【0057】
第1当接部材192は、押圧面192Aと、軸方向に対して傾斜した斜面192Bとを有し、第2当接部材193は、斜面192Bと同様に傾斜した斜面193Bを有している。押圧面192Aは、カムフォロワ170により押圧される。斜面192B,193Bは、スライド部材64がカムフォロワ170により押圧された場合に、被当接部94に当接して現像カートリッジ60を軸方向と直交する方向に付勢し、現像ローラ61を対応する感光ドラム50から離間する離間位置に移動させる。第1当接部材192とケース63の間には、スライド部材64を左側に向けて付勢するバネ194が配置されている。
【0058】
図2に示すように、画像形成装置1は、シアンとブラックのカム150C,150Kに対応して設けられた離間センサ4C,4Kを備えている。離間センサ4C,4Kは、カム150C,150Kの位相の原点を検知可能な位相センサであり、離間センサ4C,4Kは、カム150C,150Kが、現像ローラ61C,61Kが離間位置にある所定の位相範囲に位置する場合に信号を出力し、カム150C,150Kが所定の位相範囲に位置しない場合に信号を出力しない。
【0059】
離間センサ4C,4Kは、検出光を発する発光部と、発光部からの検出光を受光可能な受光部とを有している。離間センサ4C,4Kは、発光部と受光部の間に被検出部154が入って発光部の検出光を遮り、受光部が検出光を受光しないときに、制御部2に信号を出力し、発光部と受光部の間から被検出部154が外れて受光部が発光部の検出光を受光したときに、制御部2に信号を出力しない。なお、カム150Y,150Mにも被検出部154が設けられているが、カム150Y,150Mに対応する離間センサは設けられていないので、これらは離間センサにより検出される部分としては機能しない。
【0060】
次に、クラッチ120の詳細な構成について説明する。
図5に示すように、クラッチ120は、モータ3からの駆動力を現像ローラ61に伝達可能な機構である。詳しくは、クラッチ120は、
図5に示すようなモータ3からの駆動力を現像ローラ61に伝達する伝達状態と、
図9に示すような、モータ3からの駆動力を現像ローラ61に伝達しない切断状態とで切替可能に構成されている。本実施形態においては、現像ローラ61が「ローラ」に相当する。クラッチ120は、遊星歯車機構200と、規制部材160とを備えている。
【0061】
図7に示すように、遊星歯車機構200は、入力要素210と、出力要素220と、伝達要素230とを有している。
図12に示すように、入力要素210、出力要素220および伝達要素230は、第1プレート101に固定された1つのシャフト250に回転可能に支持されている。このため、入力要素210、出力要素220および伝達要素230は、シャフト250の中心軸である回転軸X1を中心に同軸で回転可能である。
【0062】
図7に戻り、遊星歯車機構200は、サンギヤ231、リングギヤ211、キャリア221およびプラネタリギヤ241を有している。遊星歯車機構200は、入力要素210、出力要素220および伝達要素230のうち、1つがサンギヤ231を有し、サンギヤ231を有する要素以外の1つがリングギヤ211を有し、残りの1つがキャリア221を有している。本実施形態においては、遊星歯車機構200は、伝達要素230がサンギヤ231を有し、入力要素210がリングギヤ211を有し、出力要素220がキャリア221を有している。
【0063】
入力要素210は、モータ3からの駆動力が入力される要素であり、リングギヤ211と、リングギヤ211の外周面に設けられた入力ギヤ212とを有している。リングギヤ211は、内周面にギヤ歯が設けられた内歯車である。入力ギヤ212は、モータ3からの駆動力が入力される部分であり、アイドルギヤ115(
図10参照)と噛み合っている。入力ギヤ212は、はすば歯車である。本実施形態においては、入力ギヤ212が「第1はすば歯車」に相当する。
【0064】
出力要素220は、現像ローラ61に向けて駆動力を出力する要素であり、キャリア221と、キャリア221の外周面に設けられた出力ギヤ222とを有している。キャリア221は、プラネタリギヤ241を回転可能に支持する4つの軸部221Aを有している。出力ギヤ222は、現像ローラ61に向けて駆動力を出力する部分であり、カップリングギヤ117(
図10参照)と噛み合っている。出力ギヤ222は、はすば歯車である。本実施形態においては、出力ギヤ222が「第2はすば歯車」に相当する。
【0065】
入力要素210および出力要素220は、遊星歯車機構200の軸方向において互いに隣接して配置されている。入力要素210および出力要素220は、遊星歯車機構200の軸方向において伝達要素230の一部(後述する回転板232)に対して同じ側に配置されている。
【0066】
伝達要素230は、回転が規制された場合に入力要素210から出力要素220に駆動力を伝達可能とし、回転が規制されない場合に入力要素210から出力要素220に駆動力を伝達しないように構成された要素である。伝達要素230は、ギヤ部としてのサンギヤ231と、サンギヤ231と一体に回転する回転板232と、回転板232の外周に設けられた爪部233とを有している。サンギヤ231は、平歯車である。爪部233は、回転板232の外周から突出するように設けられている。爪部233の一方の面は、伝達要素230の回転方向に対して略直交しており、他方の面は、伝達要素230の回転方向に沿って回転板232の外周に滑らかにつながっている。爪部233は、伝達要素230に1つだけ設けられている。
【0067】
プラネタリギヤ241は、4つ設けられ、それぞれ、キャリア221の軸部221Aに回転可能に支持されている。プラネタリギヤ241は、平歯車である。プラネタリギヤ241は、キャリア221の径方向において、サンギヤ231を取り囲むようにサンギヤ231の外側に配置されるとともに、リングギヤ211の内側に配置されている。サンギヤ231およびプラネタリギヤ241は、互いに噛み合っている。また、リングギヤ211は、プラネタリギヤ241と噛み合っている。
【0068】
遊星歯車機構200は、伝達要素230が回転しないように止められた状態では、入力ギヤ212に入力された駆動力を出力ギヤ222に伝達できる伝達状態となる。一方、伝達要素230が回転できる状態では、入力ギヤ212に入力された駆動力を出力ギヤ222に伝達できない切断状態となる。遊星歯車機構200は、切断状態かつ出力ギヤ222に負荷が掛かっている状態で入力ギヤ212に駆動力が入力された場合、出力要素220は回転せず、伝達要素230が空転する。
【0069】
図3に示すように、規制部材160は、第2プレート102に移動可能に支持されている。具体的には、規制部材160は、第2プレート102に設けられた支持軸102Aに揺動可能に支持されている。
図8(a)に示すように、規制部材160は、第1レバー161と、第2レバー162と、バネ163とを有している。
【0070】
第1レバー161は、支持軸102Aの中心軸である揺動軸X2の周りで揺動可能であり、第2カム部153に接触可能である。第1レバー161は、支持軸102Aに嵌合する孔161Bを有する回転支持部161Aと、回転支持部161Aから延びる第1アーム161Cと、回転支持部161Aから第1アーム161Cとは反対側に突出した突起161Dとを有している。
図8(b)、(c)に示すように、第1レバー161は、揺動軸X2の周りで第2レバー162に対しても相対的に揺動可能である。ここで、
図8(c)に示す、第1レバー161が第2レバー162に対して揺動した位置を揺動位置とする。
【0071】
第2レバー162は、揺動軸X2の周りで揺動可能であり、伝達要素230に係合可能である。第2レバー162は、支持軸102Aに嵌合する孔162Bを有する回転支持部162Aと、回転支持部162Aから延びる第2アーム162Cと、回転規制部162Dと、バネ掛け部162Eとを有している。回転規制部162Dは、第2アーム162Cから揺動軸X2が延びる方向に突出している。
図8(b)に示すように、回転規制部162Dは、第1レバー161の突起161Dが接触することによって、第1レバー161の第2レバー162に対する一方向の回転を規制する。
【0072】
バネ163は、トーションバネであり、第1レバー161を、第2レバー162に対して、突起161Dが回転規制部162Dに当接する方向に向けて付勢している。
【0073】
図5に示すように、規制部材160は、第2アーム162Cの先端が、伝達要素230の回転板232の外周面に向けて延びている。バネ掛け部162Eには、バネ169の一端が引っ掛けられている。バネ169は、引張バネであり、他端が、第2プレート102の、バネ掛け部162Eよりも前の位置に設けられた図示しないバネ掛け部に引っ掛けられている。これにより、バネ169は、第2レバー162を
図5における時計回りに付勢している。第2アーム162Cは、伝達要素230の爪部233に係合することで伝達要素230の回転を規制する。
【0074】
規制部材160は、
図5に示すような、第1レバー161の先端部が第2カム部153から離間し、第2レバー162が爪部233に係合して伝達要素230の回転を規制する規制位置と、
図9に示すような、第1レバー161の先端部が第2カム部153と接触して押し動かされることで、第2レバー162の先端部が爪部233から離脱して伝達要素230の回転を規制しない非規制位置との間で揺動可能である。規制部材160は、規制位置にある状態でクラッチ120を伝達状態とし、非規制位置にある状態でクラッチ120を切断状態とする。
【0075】
また、規制部材160は、
図5に示すような、規制位置にある状態で、モータ3が逆回転してカム150が
図5の反時計回りに回転し、第1レバー161が第2カム部153に押されると、第1レバー161が、バネ163の付勢力に抗して第2レバー162に対して揺動し、揺動位置(
図8(c)参照)に位置する。これにより、モータ3が逆回転した場合に規制部材160に無理な力が掛からないようになっている。
【0076】
制御部2は、画像形成装置1の動作を制御する装置である。制御部2は、CPU、ROM、RAM、入出力部等を有し、予め記憶されたプログラムを実行することで各処理を実行する。制御部2は、モータ3の駆動を制御したり、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140KのON・OFFを制御してカム150の動作を制御したりすることで、現像ローラ61の駆動・停止や、現像ローラ61の対応する感光ドラム50に対する接触・離間を制御する。
【0077】
ここで、制御部2の処理の一例について説明する。
画像形成装置1は、画像形成を実行する前の待機状態において、すべての現像ローラ61が離間位置に位置している。このとき、
図9に示すように、カムフォロワ170は、接触部172がカム150の第2保持面F12に接触する突出位置に位置する。
【0078】
印刷ジョブが入力されて画像形成を実行する場合、制御部2は、モータ3を正回転させるとともに、画像形成に用いるトナーの色に応じてYMCクラッチ140AやKクラッチ140KをONとしてカム150を図の時計回りに回転させる。これにより、カムフォロワ170の接触部172は、第2保持面F12から第2案内面F14に案内され、第2案内面F14上を摺接して、
図5に示すように、第1保持面F11に接触する。これにより、カムフォロワ170がバネ176の付勢力によって突出位置から待機位置にスライド移動し、現像ローラ61が離間位置から接触位置に移動する。現像ローラ61が接触位置に移動したら、制御部2は、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KをOFFとして、カム150を停止させる。
【0079】
現像ローラ61による現像が終了した場合、制御部2は、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KをONとし、カム150を再び回転させる。これにより、接触部172は、第1保持面F11から第1案内面F13に案内され、第1案内面F13上を摺接して、
図9に示すように、第2保持面F12に接触する。これにより、カムフォロワ170が待機位置から突出位置にスライド移動し、現像ローラ61が接触位置から離間位置に移動する。その後、離間センサ4C,4Kが信号を出力した場合に、制御部2は、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KをOFFとして、カム150を停止させる。
【0080】
一方、開いていたフロントカバー11(
図1参照)が閉じられた場合、制御部2は、現像ローラ61を離間位置(待機状態のときの位置)に位置させるため、モータ3を逆回転させるとともに、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140KをONとしてカム150を図の反時計回りに回転させる。その後、制御部2は、離間センサ4C,4Kが2回ONとなった場合に、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KをOFFとして、カム150を停止させる。
【0081】
この間、接触部172が、第1保持面F11から第2案内面F14に案内され、第2案内面F14上を摺接して第2保持面F12に接触することで、カムフォロワ170が待機位置から突出位置にスライド移動し、現像ローラ61が接触位置から離間位置に移動する。また、接触部172が、第2保持面F12から第1案内面F13に案内され、第1案内面F13上を摺接して第1保持面F11に接触することで、カムフォロワ170が突出位置から待機位置にスライド移動し、現像ローラ61が離間位置から接触位置に移動する。
【0082】
カム150を停止させた後、制御部2は、モータ3を正回転させるとともに、YMCクラッチ140AおよびKクラッチ140KをONとしてカム150を回転させる。そして、制御部2は、離間センサ4C,4Kが信号を出力した場合に、YMCクラッチ140AやKクラッチ140KをOFFとして、カム150を停止させる。これにより、現像ローラ61が離間位置(待機状態のときの位置)に位置することとなる。
【0083】
図10および
図11に示すように、入力ギヤ212と噛み合うアイドルギヤ115は、入力ギヤ212と同様に、はすば歯車であり、また、出力ギヤ222と噛み合うカップリングギヤ117は、出力ギヤ222と同様に、はすば歯車である。第1プレート101は、板金からなり、遊星歯車機構200、アイドルギヤ115およびカップリングギヤ117を回転可能に支持している。なお、
図11では、便宜的に、アイドルギヤ115、遊星歯車機構200、カップリングギヤ117を一直線上に並べた状態で示している。
【0084】
入力ギヤ212と出力ギヤ222は、入力ギヤ212とアイドルギヤ115との間で発生する第1スラスト力F1の方向と、出力ギヤ222とカップリングギヤ117との間で発生する第2スラスト力F2の方向が逆向きとなるように設けられている。本実施形態においては、入力ギヤ212は、第1スラスト力F1の方向が出力要素220に向かう方向となるように設けられている。また、出力ギヤ222は、第2スラスト力F2の方向が入力要素210に向かう方向となるように設けられている。入力ギヤ212のギヤ歯のねじれ方向と、出力ギヤ222のギヤ歯のねじれ方向は、同じ向きである。
【0085】
カップリングギヤ117のギヤ歯は、カップリングギヤ117と出力ギヤ222との間で発生する第3スラスト力F3の方向が第1プレート101に向かう方向となるように設けられている。出力ギヤ222のギヤ歯のねじれ方向は、カップリングギヤ117のギヤ歯のねじれ方向を基準として、カップリングギヤ117のギヤ歯のねじれ方向と逆向きになっている。本実施形態においては、カップリングギヤ117が「第3はすば歯車」に相当し、第1プレート101が「板金部材」に相当する。
【0086】
以上説明した本実施形態によれば、入力要素210のモータ3からの駆動力が入力される部分である入力ギヤ212や、出力要素220の現像ローラ61に向けて駆動力を出力する部分である出力ギヤ222をはすば歯車としたことで、入力要素210や出力要素220の回転ムラを抑えることができる。これにより、入力要素210や出力要素220を安定して回転させることができる。
【0087】
また、
図12に示すように、入力ギヤ212で発生する第1スラスト力F1の方向と、出力ギヤ222で発生する第2スラスト力F2の方向が逆向きとなることで、遊星歯車機構200の軸方向の一方だけに向けて力が集中してかかることがなく、また、回転軸X1に対する入力要素210や出力要素220の傾きを抑制することができる。これにより、遊星歯車機構200を安定して駆動させることができる。
【0088】
ここで、例えば、入力ギヤ212で発生する第1スラスト力F9(二点鎖線の矢印参照)の方向と、出力ギヤ222で発生する第2スラスト力F2の方向が同じ向きであった場合には、入力要素210と出力要素220の両方で伝達要素230を押してしまい、伝達要素230に回転を阻害する不要な力がかかる可能性がある。
【0089】
また、
図4に示すように、アイドルギヤ115とカップリングギヤ117は、遊星歯車機構200の回転軸X1を通る直線L1に対して同じ側に配置されている。このため、入力ギヤ212がアイドルギヤ115と噛み合う位置と、出力ギヤ222がカップリングギヤ117と噛み合う位置とが比較的近接している。この場合に、入力ギヤ212で第1スラスト力F9が発生すると、入力ギヤ212は、第1スラスト力F9によって入力ギヤ212とアイドルギヤ115が噛み合う部分が
図12の上に向けて移動しようとするとともに、第2スラスト力F2により
図12の上に向けて移動しようとする出力ギヤ222によって入力ギヤ212とアイドルギヤ115が噛み合う部分の近くが押し上げられることで、回転軸X1に対して傾く可能性がある。
【0090】
一方、本実施形態では、第1スラスト力F1の方向と第2スラスト力F2の方向が逆向きとなることで、入力要素210と出力要素220の両方で伝達要素230を押すことがない。
【0091】
また、特に本実施形態では、第1スラスト力F1の方向が出力要素220に向かい、第2スラスト力F2の方向が入力要素210に向かうので、第1スラスト力F1と第2スラスト力F2を互いに打ち消し合うように作用させることができる。具体的には、入力ギヤ212のギヤ歯のねじれ方向と、出力ギヤ222のギヤ歯のねじれ方向が同じ向きであることで、第1スラスト力F1の方向と第2スラスト力F2の方向を互いに向かい合う方向とすることができ、第1スラスト力F1と第2スラスト力F2を互いに打ち消し合うように作用させることができる。
【0092】
これにより、伝達要素230が入力要素210や出力要素220によって押されることがない。また、第1スラスト力F1と第2スラスト力F2を互いに打ち消し合うように作用させることができることで、回転軸X1に対する入力要素210や出力要素220の傾きをより抑制することができる。これにより、遊星歯車機構200をより安定して駆動させることができる。
【0093】
また、カップリングギヤ117で発生する第3スラスト力F3の方向が第1プレート101に向かうので、第3スラスト力F3がカップリングギヤ117を第1プレート101に押し当てる方向に作用し、カップリングギヤ117の軸方向の位置を安定させることができる。
【0094】
また、サンギヤ231とプラネタリギヤ241が平歯車であり、リングギヤ211が平歯車と噛み合う内歯車であるので、リングギヤ211(入力要素210)と、プラネタリギヤ241を支持するキャリア221(出力要素220)と、サンギヤ231(伝達要素230)を容易に組み付けることができる。これにより、遊星歯車機構200を容易に組み立てることができる。
【0095】
また、遊星歯車機構200から駆動力が伝達されるローラが現像ローラ61であるので、遊星歯車機構200を安定して駆動させることができることで、現像ローラ61を安定して駆動させることができる。これにより、現像ローラ61によって安定して現像を行うことができるので、画像形成装置1における画質を向上させることができる。
【0096】
以上に発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように適宜変形して実施することができる。
例えば、前記実施形態では、伝達要素230に爪部233が1つだけ設けられていたが、これに限定されず、爪部は、複数設けられていてもよい。
【0097】
また、前記実施形態では、入力ギヤ212(第1はすば歯車)が第1スラスト力F1の方向が出力要素220に向かう方向となるように設けられ、出力ギヤ222(第2はすば歯車)が第2スラスト力F2の方向が入力要素210に向かう方向となるように設けられていたが、これに限定されない。例えば、第1はすば歯車は、第1スラスト力の方向が出力要素とは反対に向かう方向となるように設けられ、第2はすば歯車は、第2スラスト力の方向が入力要素とは反対に向かう方向となるように設けられていてもよい。
【0098】
また、前記実施形態では、規制部材160が規制位置と非規制位置との間で揺動可能に設けられていたが、これに限定されず、例えば、規制部材は、規制位置と非規制位置との間でスライド移動可能に設けられていてもよい
【0099】
また、前記実施形態では、ローラが現像ローラ61である画像形成装置1を例示したが、これに限定されず、ローラは、例えば、感光ドラムであってもよい。また、ローラは、現像ローラにトナーを供給するための供給ローラや、感光ドラムを帯電させるための帯電ローラ、感光ドラムから転写残トナーを回収するためのクリーニングローラ、シートをシートトレイからピックアップするための給紙ローラ(ピックアップローラ)、シートを搬送するためのシート搬送ローラ等の現像ローラ以外のローラ類であってもよい。
【0100】
また、前記実施形態では、サンギヤ231およびプラネタリギヤ241が平歯車であり、リングギヤ211が内歯車であったが、これに限定されず、例えば、サンギヤおよびプラネタリギヤがはすば歯車であり、リングギヤがはすば内歯車であってもよい。
【0101】
また、前記実施形態では、遊星歯車機構200について、伝達要素230がサンギヤ231を有し、入力要素210がリングギヤ211を有し、出力要素220がキャリア221を有する構成であったが、このような組み合わせに限定されず、別の組み合わせであってもよい。
【0102】
また、前記実施形態では、4色のトナーを用いた画像を形成可能な画像形成装置1を例示したが、例えば、2色や3色、または、5色以上のトナーを用いた画像を形成可能な画像形成装置であってもよい。また、1色のトナーのみを用いて画像を形成する画像形成装置であってもよい。また、画像形成装置は、プリンタに限定されず、複合機やコピー機等であってもよい。
【0103】
また、前記した実施形態および変形例で説明した各要素は、適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0104】
1 画像形成装置
3 モータ
61 現像ローラ
101 第1プレート
117 カップリングギヤ
120 クラッチ
160 規制部材
200 遊星歯車機構
210 入力要素
211 リングギヤ
212 入力ギヤ
220 出力要素
221 キャリア
222 出力ギヤ
230 伝達要素
231 サンギヤ
232 回転板
233 爪部
241 プラネタリギヤ