(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230912BHJP
B60N 2/06 20060101ALI20230912BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/06
B60R16/02 620A
(21)【出願番号】P 2020008473
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山岡 知憲
(72)【発明者】
【氏名】山下 志麻
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188811(WO,A1)
【文献】特開2005-313662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00- 2/90
H02G 11/00-11/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載される乗物用シートにおいて、
利用者が着座可能なシート本体と、
前記シート本体をスライド可能に支持するためのスライド装置であって、乗物に対して固定される固定レール及び当該固定レールに対してスライド可能な可動レールを有するスライド装置と、
前記シート本体に搭載された電気機器に接続されるケーブルであって、扁平状の断面形状を有するとともに、一部が前記固定レール内に配索されたケーブルと、
前記ケーブルを巻き取る機能を有するケーブルリールであって、前記シート本体に対して固定されて当該シート本体と共に変位しながら、前記ケーブルを巻き取ることが可能なケーブルリールとを備え、
仮想の水平面に投影された前記ケーブルリールは、当該水平面に投影された前記シート本体と重なっているとともに、当該水平面に投影された前記可動レールに対して当該可動レールの長手方向と直交する方向にずれており、
前記ケーブルのうち前記ケーブルリールから前記固定レール内に至る部分であって、前記固定レールの長手方向と直交する第1方向に凸となるように曲がった部分を湾曲部とし、前記第1方向及び前記固定レールの長手方向と直交する方向を第2方向としたとき、
前記湾曲部にて前記ケーブルの移動を案内するケーブルガイドを備え、
さらに、前記湾曲部では、前記ケーブルが前記第1方向及び前記第2方向に曲がっている乗物用シート。
【請求項2】
前記第1方向は上下方向であり、前記第2方向はシート幅方向であり、
前記湾曲部では、前記ケーブルが上向きに凸の状
態でシート幅方向に曲がっている請求項
1に記載の乗物用シート。
【請求項3】
前記ケーブルガイドは、前記ケーブルの上面に滑り接触可能な上面案内部、及び前記ケーブルの下面に滑り接触可能な下面案内部を有しており、
前記下面案内部の曲率半径は、前記上面案内部の曲率半径より大きい請求項
2に記載の乗物用シート。
【請求項4】
前記下面案内部の一部には、下方に向けて開口した開口部が設けられている請求項
3に記載の乗物用シート。
【請求項5】
前記開口部は、少なくとも2つ設けられており、
2つの前記開口部のうち第1の開口部は、前記下面案内部の延び方向一端側に設けられ、
2つの前記開口部のうち第2の開口部は、前記下面案内部の延び方向他端側に設けられている請求項
4に記載の乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乗物に搭載される乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に記載の乗物用シートでは、フラットケーブルの一部が固定レール内に配索されている。さらに、フラットケーブルを巻き取るためのケーブルリールが、固定レールの直上に配置されている。フラットケーブルは、シート本体に搭載された電気機器に接続されている。
【0003】
なお、フラットケーブル(以下、ケーブルと略す。)は、可撓性を有する扁平状断面の電気線である。固定レールは、スライド装置の構成部品である。スライド装置は、シート本体をスライド可能に支持するための機構である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のケーブルリールは、可動レールに対して当該可動レールの長手方向にずれた位置に配置されている。このため、特許文献1に記載の乗物用シートでは、可動レール(シート本体)がスライドした際に、ケーブルリールが他の部材や利用者の足先等と干渉してしまうおそれがある。
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、ケーブルリールが他の部材や利用者の足先等と干渉してしまうことを抑制可能な乗物用シートの一例を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
乗物に搭載される乗物用シートは、例えば、以下の構成要件のうち少なくとも1つを備えることが望ましい。
【0008】
すなわち、当該構成要件は、利用者が着座可能なシート本体(2)と、シート本体(2)をスライド可能に支持するためのスライド装置(10)であって、乗物に対して固定される固定レール(11)及び当該固定レール(11)に対してスライド可能な可動レール(12)を有するスライド装置(10)と、シート本体(2)に搭載された電気機器に接続されるケーブル(7)であって、扁平状の断面形状を有するとともに、一部が固定レール(11)内に配索されたケーブル(7)と、ケーブル(7)を巻き取る機能を有するケーブルリール(15)であって、シート本体(2)に対して固定されて当該シート本体(2)と共に変位しながら、ケーブル(7)を巻き取ることが可能なケーブルリール(15)とを備え、仮想の水平面に投影されたケーブルリール(15)は、当該水平面に投影されたシート本体(2)と重なっているとともに、当該水平面に投影された可動レール(12)に対して当該可動レール(12)の長手方向と直交する方向にずれていることである。
【0009】
これにより、当該乗物用シートでは、ケーブルリール(15)の少なくとも一部が可動レール(12)の長手方向一端と他端との間に位置する構成となる。したがって、当該乗物用シートでは、ケーブルリール(15)が他の部材や利用者の足先等と干渉してしまうことが抑制され得る。
【0010】
なお、当該乗物用シートは、例えば、以下の構成であってもよい。
【0011】
ケーブル(7)のうちケーブルリール(15)から固定レール(11)内に至る部分であって、固定レール(11)の長手方向と直交する第1方向に凸となるように曲がった部分を湾曲部(7A)とし、第1方向及び固定レール(11)の長手方向と直交する方向を第2方向としたとき、湾曲部(7A)にてケーブル(7)の移動を案内するケーブルガイド(20、23)を備え、さらに、湾曲部(7A)では、ケーブル(7)が第1方向及び第2方向に曲がっていることが望ましい。
【0012】
これにより、当該乗物用シートでは、2つの方向に曲がった状態で移動するケーブル(7)がケーブルガイド(20、23)にて案内される。したがって、当該乗物用シートでは、ケーブル(7)が安定的に移動し得る。
【0013】
湾曲部(7A)は上向きに凸の状態でシート幅方向に曲がっていることが望ましい。これにより、当該乗物用シートでは、無理な応力(ストレス)がケーブル(7)に発生することが抑制された状態で当該ケーブル(7)が配索された構成となり得る。
【0014】
ケーブルガイド(20、23)は、ケーブル(7)の上面に滑り接触可能な上面案内部(21A、22A)、及びケーブル(7)の下面に滑り接触可能な下面案内部(21B、22B)を有しており、下面案内部(21B、22B)の曲率半径(R2)は、上面案内部(21A、22A)の曲率半径(R1)より大きいことが望ましい。これにより、当該乗物用シートでは、ケーブル(7)の移動が確実に案内され得る。
【0015】
下面案内部(21B)の一部には、下方に向けて開口した開口部(23A、23B)が設けられていることが望ましい。これにより、ケーブルガイド(23)内の異物が開口部(23A、23B)から外部に排出され得る。したがって、ケーブルガイド(23)内に異物が蓄積して行くことが抑制され得る。
【0016】
なお、開口部(23A、23B)は、少なくとも2つ設けられており、2つの開口部のうち第1の開口部(23A)は、下面案内部(21B)の延び方向一端側に設けられ、2つの開口部のうち第2の開口部(23B)は、下面案内部(21B)の延び方向他端側に設けられていることが望ましい。
【0017】
因みに、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】第1実施形態に係る乗物用シートを示す図である。
【
図2】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図3】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るスライド装置を示す図である。
【
図5】第1実施形態に係る第1ケーブルガイドの分解図である。
【
図6】第1実施形態に係る第1ケーブルガイドの第1部材を示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る第1ケーブルガイドの第2部材を示す図である。
【
図8】第1実施形態に係る第1ケーブルガイドを示す図である。
【
図9】第1実施形態に係る第2ケーブルガイドを示す図である。
【
図10】第1実施形態に係る第2ケーブルガイドを示す図である。
【
図11】第1実施形態に係る第2ケーブルガイドを示す図である。
【
図12】第1実施形態に係るガイド固定部を示す図である。
【
図13】第1実施形態に係る第2ケーブルガイドを示す図である。
【
図14】第2実施形態に係る第1ケーブルガイドを示す図である。
【
図15】第2実施形態に係る第1ケーブルガイドの第1部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下の「発明の実施形態」は、本開示の技術的範囲に属する実施形態の一例を示すものである。つまり、特許請求の範囲に記載された発明特定事項等は、下記の実施形態に示された具体的構成や構造等に限定されない。
【0020】
本実施形態は、車両等の乗物に搭載されるシート(以下、乗物用シートという。)に本開示に係るスライド装置が適用された例である。各図に付された方向を示す矢印及び斜線等は、各図相互の関係及び部材又は部位の形状等を理解し易くするために記載されたものである。
【0021】
したがって、当該乗物用シート(スライド装置を含む。)は、各図に付された方向に限定されない。各図に示された方向は、本実施形態に係る乗物用シート装置が車両に組み付けられた状態における方向である。斜線が付された図は、必ずしも断面図を示さない。
【0022】
少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位は、「1つの」等の断りがされた場合を除き、少なくとも1つ設けられている。つまり、「1つの」等の断りがない場合には、当該部材は2以上設けられていてもよい。本開示に示された乗物用シートは、少なくとも符号が付されて説明された部材又は部位等の構成要素を備える。
【0023】
(第1実施形態)
<1.乗物用シート装置の概要>
乗物用シート1は、
図1に示されるように、シート本体2、ケーブル7及びスライド装置10等を少なくとも備える。シート本体2は利用者が着座可能な座席である。本実施形態に係るシート本体2は、シートクッション3及びシートバック5等を有する。
【0024】
シートクッション3は、着席者の臀部を支持するための部位である。シートバック5は着席者の背部を支持するための部位である。なお、本実施形態に係る乗物用シート1は、いわゆる「ミニバン」型車両の助手席又は2列目シートに適用される。
【0025】
シート本体2には、電気ヒータ等の電気機器(図示せず。)が搭載されている。電気機器にはケーブル7が接続されている。ケーブル7は、断面形状が扁平状に構成され、かつ、可撓性を有する電気線である。
【0026】
スライド装置10は、シート本体2をスライド可能に支持するための装置である。シート本体2は、2つのスライド装置10によりスライド可能に支持される。具体的には、第1のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向一端側を支持する。第2のスライド装置は、乗物用シートのシート幅方向他端側を支持する。
【0027】
2つのスライド装置は略左右対称な構成である。以下の説明は、シート幅方向左端側に配置されたスライド装置10の説明である。スライド装置10は、固定レール11及び可動レール12等を少なくとも備える。
【0028】
固定レール11は、乗物に直接的又は間接的に固定される部材である。可動レール12は、固定レール11に対してスライド可能な部材である。当該可動レール12は、固定レール11内に配置されたローラ等の転動体(図示せず。)介して支持されている。
【0029】
可動レール12には、シート本体2のフレーム2A、2Bが固定されている。これにより、シート本体2は、可動レール12と共にスライド変位する。フレーム2A、2Bは、シート幅方向に延びる金属製のビーム(梁)部材である。
【0030】
なお、フレーム2Aは、シート後方側に配置されている。フレーム2Bはシート前方側に配置されている。そして、フレーム2Aとフレーム2Bとは、シート前後方向に延びる連結材2C、2Dにより連結されている。
【0031】
<2.ケーブルの配索構造>
乗物用シート1は、ケーブル7の配索構造を構成する要素として、ケーブルリール15、第1ケーブルガイド20及び第2ケーブルガイド30等を備える。ケーブル7は、
図2に示されるように、一部が固定レール11内に配索されている。
【0032】
なお、ケーブル7のうち固定レール11内に配索された部位は、固定レール11の長手方向端部側(本実施形態では、長手方向後端側)にて当該固定レール11に固定されている。ケーブル7は、当該固定された部位からスライド装置10外に延びている。
【0033】
<ケーブルリール>
ケーブルリール15は、「ケーブル7を巻き取る機能」及び「巻き取られたケーブル7を送り出す機能」を有する巻取装置の一例である。当該ケーブルリール15は、シート本体2に対して固定されて当該シート本体2と共に変位しながら、ケーブル7を巻き取り又は送り出すことが可能である。
【0034】
なお、本実施形態に係るケーブルリール15は、可動レール12に固定されてシート本体2と一体的に変位する。さらに、ケーブルリール15は、渦巻きバネの復元力を利用してケーブル7を巻き取る機械式の巻取装置である。
【0035】
そして、
図3に示されるように、仮想の水平面(例えば、
図3の紙面)に投影されたケーブルリール15は、当該水平面に投影されたシート本体2と重なっているとともに、当該水平面に投影された可動レール12に対して当該可動レール12の長手方向と直交する方向(シート幅方向)にずれている。
【0036】
なお、本実施形態では、
図4に示されるように、可動レール12の長手方向一端(前端)と他端(後端)との間にケーブルリール15全体が位置し、かつ、シート本体2と固定レール11との間にケーブルリール15全体が位置する構成となる。
【0037】
<第1ケーブルガイド>
第1ケーブルガイド20は、
図4に示されるように、ケーブル7の湾曲部7Aにて当該ケーブル7の移動を案内する案内部材である。当該湾曲部7Aでは、
図3に示されるように、ケーブル7が互い直交する2つの方向(以下、第1方向及び第2方向という。)に曲がっている。
【0038】
湾曲部7Aは、ケーブル7のうちケーブルリール15から固定レール11内に至る部分であって、固定レール11の長手方向と直交する第1方向に凸となるように曲がった部分である。第2方向は、第1方向及び固定レール11の長手方向と直交する方向である。
【0039】
なお、本実施形態では、第1方向は上下方向であり、第2方向はシート幅方向(左右方向)である。したがって、本実施形態に係る湾曲部7Aでは、ケーブル7が上向きに凸の状態でシート幅方向に曲がっている。
【0040】
第1ケーブルガイド20は、
図5に示されるように、樹脂にて構成された第1部材21及び第2部材22等を有して構成されている。第1部材21及び第2部材22それぞれには、
図6及び
図5に示されるように、上面案内部21A、22A及び下面案内部21B、22Bが設けられている。
【0041】
上面案内部21A、22Aは、ケーブル7(湾曲部7A)の上面に滑り接触可能な案内面である。下面案内部21B、22Bは、ケーブル7(湾曲部7A)の下面に滑り接触可能な案内面である。
【0042】
上面案内部21A、22A及び下面案内部21B、22Bは、第1方向(本実施形態では、上向き)に凸となるように湾曲した曲面にて構成されている。そして、下面案内部21B、22Bの曲率半径R2は、上面案内部21A、22Aの曲率半径R1より大きい。
【0043】
換言すれば、上面案内部21A、22Aの曲率は、下面案内部21B、22Bの曲率より大きい。なお、上面案内部21A、22Aの曲率は、ケーブル7の許容曲率以下となる予め決められた所定の曲率である。
【0044】
図5に示されるように、第1部材21には、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の係止部21Cが設けられている。第2部材22には、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の被係止部22Cが設けられている。
【0045】
各被係止部22Cと各係止部21Cとは、互いに引っ掛かるように係止される部位である。これにより、第1部材21と第2部材22とが連結されて一体化される。なお、各被係止部22Cは、弾性変形可能なスナップフィット状の部位である。各係止部21Cは、対応する被係止部22Cが引っ掛かる突起状の部位である。
【0046】
<第1ケーブルガイドの固定構造>
第1ケーブルガイド20には、
図8に示されるように、凹部20Aが設けられている。凹部20Aは、
図4に示されるように、フレーム2Aの少なくとも一部が嵌り込み可能な窪みである。
【0047】
そして、凹部20Aにフレーム2Aに嵌り込んだ状態では、固定レール11の長手方向に第1ケーブルガイド20が変位することが規制される。つまり、凹部20Aは、上記長手方向における第1ケーブルガイド20の位置を決める位置決め部の一例を構成する。
【0048】
図8に示されるように、第1ケーブルガイド20には、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の突起部20Bが設けられている。各突起部20Bは、フレーム2Aに設けられた穴(図示せず。)に嵌め込まれる部位である。
【0049】
これにより、第1ケーブルガイド20がフレーム2Aの長手方向(シート幅方向)に変位することが規制される。つまり、各突起部20Bは、シート幅方向における第1ケーブルガイド20の位置を決める位置決め部の一例を構成する。
【0050】
なお、本実施形態に係る複数の突起部20Bは、「固定レール11の長手方向に第1ケーブルガイド20が変位することを規制する機能」、及び「第1ハーネスガイド20が仮想の鉛直軸線を中心に回転変位することを規制する機能」も兼ね備える。
【0051】
本実施形態に係る各突起部20Bには、少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)の抜け止め20Cが設けられている。各抜け止め20Cは、弾性変形をしてフレーム2Aに着脱自在に係止可能な部位である。
【0052】
なお、各被係止部22C、各係止部21C、各突起部20B及び各抜け止め20Cは、第1ケーブルガイド20(第1部材21及び第2部材22)と共に樹脂にて一体成形された一体品である。
【0053】
<第2ケーブルガイド>
第2ケーブルガイド30は、
図4に示されるように、ケーブル7の下端部分7Bと滑り接触することにより、当該下端部分7Bの上下方向位置を規制する部材である。当該上下方向位置は、
図9に示されるように、固定レール11の第1壁部11Aの下端11C及び第2壁部11Bの下端11Dより上方の位置である。
【0054】
下端部分7Bとは、
図4に示されるように、ケーブル7のうち固定レール11の上方側から当該固定レール11に向けて延びる部分の下端部をいう。換言すれば、下端部分7Bは、ケーブル7のうち、延び方向が略鉛直方向から略水平方向に変わる部分である。
【0055】
そして、ケーブル7のうち下端部分7Bから固定レール11の長手方向端部側に至る部位7C(
図2参照)は、固定レール11内に位置する。つまり、部位7Cは、第1壁部11Aと第2壁部11Bとにより挟まれ空間11E内に位置する。
【0056】
第1壁部11A及び第2壁部11Bは、
図9に示されるように、幅方向において空間11Eを挟んで互い対向する鉛直方向と略平行な壁部である。第1壁部11A及び第2壁部11Bは、固定レール11の長手方向に沿って延びる帯板状の部位である。
【0057】
空間11Eは可動レール12の一部が位置する部位である。このため、可動レール12が位置する部位においては、第1壁部11Aと第2壁部11Bとは、可動レール12を挟んで互い対向する。なお、幅方向とは、固定レール11の長手方向と直交する水平方向をいう。
【0058】
可動レール12には、
図10に示されるように、ガイド固定部40が設けられている。ガイド固定部40は、固定レール11内に位置するとともに、可動レール12に固定されて当該可動レール12と共に変位する部材である。
【0059】
なお、ガイド固定部40は、可動レール12に設けられた凹部12Aに嵌り込む凸部41を有している。凹部12Aは、可動レール12の幅方向一端側及び他端側に設けられている。凸部41は、それら2つの凹部12Aそれぞれに対応する位置に設けられている。
【0060】
ガイド固定部40は、各凹部12Aに各凸部41が嵌り込んだ状態で可動レール12を幅方向から挟み込むようにして当該可動レール12に固定されている。換言すれば、各凸部41が各凹部12Aに係合することより、ガイド固定部40と可動レール12とが一体として変位する。
【0061】
第2ケーブルガイド30は、ガイド固定部40に固定されている。すなわち、
図11及び
図12に示されるように、第2ケーブルガイド30の底面には係止部31が設けられている。ガイド固定部40のうち第2ケーブルガイド30が載置される載置部42Aには被係止部42が設けられている。
【0062】
そして、係止部31が被係止部42に係止されることにより、第2ケーブルガイド30がガイド固定部40に固定される。なお、本実施形態では、係止部31と被係止部42とは圧入状態で係止される。
【0063】
第2ケーブルガイド30には、
図13に示されるように、ケーブル7が貫通する貫通穴32が設けられている。貫通穴32は、矩形断面状の貫通穴であって、一端が固定レール11の上方側において上方に向けて開口している(
図10参照)。
【0064】
貫通穴32の他端は、固定レール11内のうち第1壁部11Aの下端11C及び第2壁部11Bの下端11Dより上方の位置において、水平方向に向けて開口している(
図9参照)。つまり、当該貫通穴32は、略90度曲がったケーブル通路を構成する。
【0065】
貫通穴32の内壁のうち上部内壁及び下部内壁には、複数の突条33A、33Bが設けられている。複数の突条33Aは、上部内壁から下部内壁側に突出した突条である。複数の突条33Bは、下部内壁から上部内壁側に突出した突条である。なお、複数の突条33A、33Bは、貫通穴32の一端から他端までの全域に亘って連続的に設けられている。
【0066】
そして、複数の突条33Aは、ケーブル7の上面に滑り接触して当該ケーブル7の移動を案内する。複数の突条33Bは、ケーブル7の下面に滑り接触して当該ケーブル7の移動を案内する。なお、ケーブル7の移動時には、当該ケーブル7に張力が作用するので、多くの場合、複数の突条33Aがケーブル7に接触する。
【0067】
<3.本実施形態に係る乗物用シートの特徴>
本実施形態に係る乗物用シート1では、
図3に示されるように、仮想の水平面に投影されたケーブルリール15は、当該水平面に投影されたシート本体2と重なっているとともに、当該水平面に投影された可動レール12に対して当該可動レール12の長手方向と直交する方向にずれている。
【0068】
これにより、当該乗物用シート1では、ケーブルリール15の少なくとも一部が可動レール12の長手方向一端と他端との間に位置する構成となる(
図4参照)。したがって、当該乗物用シート1では、ケーブルリール15が他の部材や利用者の足先等と干渉してしまうことが抑制され得る。
【0069】
本実施形態に係る乗物用シート1は、ケーブル7の湾曲部7Aにて当該ケーブル7の移動を案内する第1ケーブルガイド20を備えているとともに、当該湾曲部7Aでは、ケーブル7が第1方向(上下方向)及び第2方向(左右方向)に曲がっている。
【0070】
これにより、当該乗物用シート1では、2つの方向に曲がった状態で移動するケーブル7が第1ケーブルガイド20にて案内される。したがって、当該乗物用シート1では、ケーブル7が安定的に移動し得る。
【0071】
本実施形態に係る湾曲部7Aでは、ケーブル7が上向きに凸の状態でシート幅方向に曲がっている。これにより、当該乗物用シート1では、無理な応力(ストレス)がケーブル7に発生することが抑制された状態で当該ケーブル7が配索された構成となり得る。
【0072】
第1ケーブルガイド20の下面案内部21B、22Bの曲率半径R2は、当該第1ケーブルガイド20の上面案内部21A、22Aの曲率半径R1より大きい。これにより、当該乗物用シート1では、ケーブル7の移動が確実に案内され得る。
【0073】
第2ケーブルガイド30が規制する上下方向位置は、第1壁部11Aの下端11C及び第2壁部11Bの下端11Dより上方の位置である。これにより、当該乗物用シート1では、ケーブル7のうち固定レール11内に配索された部分が固定レール11内の底部に接触してしまうことが抑制され得る。延いては、ケーブル7が早期に損傷してしまうことが抑制され得る。
【0074】
本実施形態に係る乗物用シート1では、可動レール12に固定されて当該可動レール12と共に変位するガイド固定部40であって、固定レール11内に位置するガイド固定部40を備え、第2ケーブルガイド30は、ガイド固定部40に固定されている。
【0075】
これにより、当該乗物用シート1を組み立てる作業者(自動組付機も含む。)は、可動レール12に固定されたガイド固定部40に第2ケーブルガイド30を組み付けることにより、当該第2ケーブルガイド30の組み付け作業が完了する。したがって、当該乗物用シート1では、組み付け作業工数の増加が抑制され得る。
【0076】
第2ケーブルガイド30は、ケーブル7の上面に滑り接触して当該ケーブル7の移動を案内する少なくとも1つの突条33Aを有している。これにより、第2ケーブルガイド30とケーブル7との接触面積が小さくなるので、ケーブル7が移動する際の滑り抵抗が抑制され得る。
【0077】
(第2実施形態)
本実施形態に係る第1ケーブルガイド23は、
図14に示されるように、下方に向けて開口した開口部23A、23Bが少なくとも1つ(本実施形態では、2つ)設けられている。
【0078】
つまり、
図15に示されるように、下面案内部21Bの一部には、下方に向けて開口した開口部23A、23Bが設けられている。これにより、ケーブルガイド23内の異物が開口部23A、23Bから外部に排出され得る。したがって、ケーブルガイド23内に異物が蓄積して行くことが抑制され得る。
【0079】
なお、2つの開口部23A、23Bは、下面案内部21Bの延び方向一端側及び他端側それぞれに設けられている。つまり、第1の開口部23Aは下面案内部21Bの延び方向一端側に設けられ、第2の開口部23Bは下面案内部21Bの延び方向他端側に設けられている。
【0080】
本実施形態に係る第1ケーブルガイド20では、第1部材24のみに上面案内部21A及び下面案内部21Bが設けられている。本実施形態に係る第2部材25(
図14参照)には、上面案内部及び下面案内部が設けられていない。
【0081】
つまり、当該第2部材25は、第1部材24の側面を閉塞する閉塞部材として機能する。このため、本実施形態では、第1部材24の下面案内部21Bに、第2部材25に係止される係止部突起24A、24Bが設けられている。
【0082】
本実施形態においても、第1部材24及び第2部材25は樹脂製である。なお、上述の実施形態と同一の構成要件等は、上述の実施形態と同一の符号が付されている。このため、本実施形態では、重複する説明は省略されている。
【0083】
(その他の実施形態)
上述の実施形態では、第2ケーブルガイド30が規制する上下方向位置は、第1壁部11Aの下端11C及び第2壁部11Bの下端11Dより上方の位置であった。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0084】
すなわち、当該開示は、例えば、第2ケーブルガイド30が廃止された構成、又は上記上下方向位置が第1壁部11Aの下端11C及び第2壁部11Bの下端11Dより下方の位置であってもよい。
【0085】
上述の実施形態に係る第2ケーブルガイド30では、複数の突条33A、33Bが貫通穴32の一端から他端までの全域に亘って連続的に設けられていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、1つの突条又は複数の凹凸(ディンプル)が貫通穴32の内壁に設けられた構成であってもよい。
【0086】
上述の実施形態では、第2ケーブルガイド30がガイド固定部40を介して間接的に可動レール12に固定されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、第2ケーブルガイド30が可動レール12に直接的に固定された構成であってもよい。
【0087】
上述の実施形態に係る乗物用シート1では、仮想の水平面に投影されたケーブルリール15は、当該水平面に投影されたシート本体2と重なっているとともに、当該水平面に投影された可動レール12に対して当該可動レール12の長手方向と直交する方向にずれていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0088】
上述の実施形態では、ケーブル7の湾曲部7Aにて当該ケーブル7の移動を案内する第1ケーブルガイド20を備えているとともに、当該湾曲部7Aでは、ケーブル7が第1方向(上下方向)及び第2方向(左右方向)に曲がっていた。しかし、本開示はこれに限定されない。
【0089】
すなわち、当該開示は、例えば、第1ケーブルガイド20が廃止された構成、又はケーブル7が第1方向(上下方向)及び第2方向(左右方向)のうち一方の方向のみに曲がった構成であってもよい。
【0090】
上述の実施形態に係る湾曲部7Aでは、ケーブル7が上向きに凸の状態でシート幅方向に曲がっていしかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、湾曲部7Aが下向きに凸となる構成、又は湾曲部7Aが水平方向に凸となる構成であってもよい。
【0091】
上述の実施形態では、第1ケーブルガイドの下面案内部の曲率半径が当該第1ケーブルガイドの上面案内部の曲率半径より大きい構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、下面案内部の曲率半径と上面案内部の曲率半径とが同一である構成であってもよい。
【0092】
上述の実施形態では、ケーブル7のうち固定レール11内に配索された部分が固定レール11内の底部に接触することを防止する構成であった。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ケーブル7のうち固定レール11内に配索された部分が固定レール11内の底部に接触可能な構成であってもよい。
【0093】
上述の実施形態では、ケーブルリール15が可動レール12の右側、つまり2つのスライド装置10の間に配置され、かつ、第2ケーブルガイド30が可動レール12の後方側に配置されていた。しかし、本開示はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、ケーブルリール15は可動レール12の左側に配置され、かつ、第2ケーブルガイド30が可動レール12の前方側に配置された構成であってもよい。
【0094】
上述の実施形態では、車両に本開示に係る乗物用シートを適用した。しかし、本明細書に開示された発明の適用はこれに限定されない。すなわち、当該開示は、例えば、鉄道車両、船舶及び航空機等の乗物に用いられるシート、並びに劇場や家庭用等に用いられる据え置き型シートにも適用できる。
【0095】
さらに、本開示は、上述の実施形態に記載された開示の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されない。したがって、上述した複数の実施形態のうち少なくとも2つの実施形態が組み合わせられた構成、又は上述の実施形態において、図示された構成要件もしくは符号を付して説明された構成要件のうちいずれかが廃止された構成でもよい。
【符号の説明】
【0096】
1… 乗物用シート 2… シート本体 7… ケーブル
10… スライド装置 11… 固定レール 11A… 第1壁部
11B… 第2壁部 12… 可動レール 15… ケーブルリール
20… 第1ケーブルガイド 21… 第1部材 21A、22A… 上面案内部
21B、22B… 下面案内部 22… 第2部材 23… 第1ケーブルガイド
30… 第2ケーブルガイド 31… 係止部 32… 貫通穴
33A、33B… 突条 40… ガイド固定部