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特許7347233蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/317 20210101AFI20230912BHJP
   H01G 11/14 20130101ALI20230912BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20230912BHJP
   H01G 11/84 20130101ALI20230912BHJP
   H01G 11/12 20130101ALI20230912BHJP
   H01M 50/325 20210101ALI20230912BHJP
   H01M 50/102 20210101ALI20230912BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H01M50/317 101
H01G11/14
H01G11/78
H01G11/84
H01G11/12
H01M50/325
H01M50/102
H01M10/04 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020010261
(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公開番号】P2021118087
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【弁理士】
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】井上 拓
(72)【発明者】
【氏名】田丸 耕二郎
(72)【発明者】
【氏名】濱岡 賢志
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061850(JP,A)
【文献】特開2018-170265(JP,A)
【文献】特開2019-220313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/10-392
H01G 11/00-86
H01M 10/04-39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内部空間、及び、前記複数の内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有するモジュール本体と、
前記複数の第1連通孔にそれぞれ対応した複数の第2連通孔が形成された筐体、及び、前記筐体内において前記複数の第2連通孔のそれぞれを閉塞する複数の弾性弁体を有し、前記モジュール本体に取り付けられた圧力調整弁と、を備え、
前記モジュール本体は、前記複数の第1連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして前記圧力調整弁に向けて突出する第1接合用突起を含み、
前記圧力調整弁は、前記筐体の外面において前記複数の第2連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして前記モジュール本体に向けて突出する第2接合用突起を含み、
前記第1接合用突起の幅は、前記第2接合用突起の幅よりも大きく、
前記第1接合用突起と前記第2接合用突起とは、前記複数の第1連通孔のそれぞれと対応する前記複数の第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、溶着されている、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記筐体は、
長手方向及び幅方向を有する矩形板状をなし、前記複数の第2連通孔が形成された底壁と、前記底壁において前記長手方向に互いに離間して形成された複数の前記第2接合用突起と、前記底壁から前記モジュール本体とは逆側に突出し、前記複数の弾性弁体のそれぞれを収容する複数の筒体と、前記底壁の周縁に接続され、前記複数の筒体を囲む枠状の外周壁と、を含むケースと、
前記底壁に対向するように前記外周壁に固定されたカバーと、を備え、
前記筐体は、前記長手方向における複数の前記第2接合用突起同士の間の少なくとも一部の領域では、前記底壁、前記外周壁及び前記カバーのみによって形成されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記筐体は、
長手方向及び幅方向を有する矩形板状をなし、前記複数の第2連通孔が形成された底壁と、前記底壁において前記長手方向に互いに離間して形成された複数の前記第2接合用突起と、前記底壁から前記モジュール本体とは逆側に突出し、前記複数の弾性弁体のそれぞれを収容する複数の筒体と、前記底壁の周縁に接続され、前記複数の筒体を囲む枠状の外周壁と、を含むケースと、
前記底壁に対向するように前記外周壁に固定されたカバーと、を備え、
前記筐体は、前記長手方向における複数の前記第2接合用突起同士の間の少なくとも一部の領域では、前記底壁及び前記外周壁のみによって形成されている、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記一部の領域では、前記外周壁にスリットが形成されている、請求項2又は3に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
複数の内部空間、及び、前記複数の内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有するモジュール本体と、
前記複数の第1連通孔にそれぞれ対応した複数の第2連通孔が形成された筐体、及び、前記筐体内において前記複数の第2連通孔のそれぞれを閉塞する複数の弾性弁体を有し、前記モジュール本体に取り付けられた圧力調整弁と、を備えた蓄電モジュールの製造方法であって、
前記蓄電モジュール及び前記圧力調整弁を用意する工程と、
前記蓄電モジュールと前記圧力調整弁とを接合する工程と、を含み、
前記モジュール本体は、前記複数の第1連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして前記圧力調整弁に向けて突出する第1接合用突起を含み、
前記圧力調整弁は、前記筐体の外面において前記複数の第2連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして前記モジュール本体に向けて突出し、前記第1接合用突起に対面する第2接合用突起を含み、
前記第1接合用突起の幅は、前記第2接合用突起の幅よりも大きく、
前記接合する工程では、前記第1接合用突起及び前記第2接合用突起を溶融させた状態で、前記複数の第1連通孔のそれぞれと対応する前記複数の第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、前記第1接合用突起と前記第2接合用突起とを接合する、蓄電モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載された蓄電モジュールが知られている。この蓄電モジュールは、モジュール本体と、モジュール本体に取り付けられ、モジュール本体の内圧が設定値を超えた時に内部空間からのガスを外部へ排出する圧力調整弁とを備えている。モジュール本体及び圧力調整弁には、それぞれ接合用突起が設けられている。モジュール本体の接合用突起と圧力調整弁の接合用突起とが互いに接合されることによって、モジュール本体の内部空間からのガスが圧力調整弁に流れるための流路が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-133875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記蓄電モジュールのように、モジュール本体の接合用突起と圧力調整弁の接合用突起とが互いに接合される構成においては、接合時に接合用突起同士の接合不良が生じるような位置ずれが発生する虞がある。接合不良が生じると、接合部分の強度が下がりモジュール本体の内圧上昇時に接合部分が破損する虞がある。
【0005】
本発明の一側面は、接合用突起同士の接合部分における位置ずれの発生を抑制する蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、複数の内部空間、及び、複数の内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有するモジュール本体と、複数の第1連通孔にそれぞれ対応した複数の第2連通孔が形成された筐体、及び、筐体内において複数の第2連通孔のそれぞれを閉塞する複数の弾性弁体を有し、モジュール本体に取り付けられた圧力調整弁と、を備え、モジュール本体は、複数の第1連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして圧力調整弁に向けて突出する第1接合用突起を含み、圧力調整弁は、筐体の外面において複数の第2連通孔をそれぞれ囲む枠状をなしてモジュール本体に向けて突出する第2接合用突起を含み、第1接合用突起の幅は、第2接合用突起の幅よりも大きく、第1接合用突起と第2接合用突起とは、複数の第1連通孔のそれぞれと対応する複数の第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、接合されている。
【0007】
上記蓄電モジュールでは、モジュール本体に設けられた第1接合用突起の幅が圧力調整弁に設けられた第2接合用突起の幅よりも大きく形成されているため、第1接合用突起と第2接合用突起との位置ずれの発生が抑制される。そのため、第1接合用突起と第2接合用突起との接合部分に不良が生じることが抑制される。
【0008】
筐体は、長手方向及び幅方向を有する矩形板状をなし複数の第2連通孔が形成された底壁と、底壁において長手方向に互いに離間して形成された複数の第2接合用突起と、底壁からモジュール本体とは逆側に突出し、複数の弾性弁体のそれぞれを収容する複数の筒体と、底壁の周縁に接続され、複数の筒体を囲む枠状の外周壁と、を含むケースと、底壁に対向するように外周壁に固定されたカバーと、を備え、筐体は、長手方向における複数の第2接合用突起同士の間の少なくとも一部の領域では、底壁、外周壁及びカバーのみによって形成されていてもよい。この構成では、複数の第2接合用突起同士の間の領域において筐体内に筒体等の構造物が形成されない。この場合、複数の第2接合用突起同士の間の領域は、第2接合用突起が形成されている領域に比べて変形しやすくなる。そのため、圧力調整弁の底壁に反りが形成された場合であっても、第1接合用突起に対する第2接合用突起の位置を調整しやすい。
【0009】
筐体は、長手方向及び幅方向を有する矩形板状をなし、複数の第2連通孔が形成された底壁と、底壁において長手方向に互いに離間して形成された複数の第2接合用突起と、底壁からモジュール本体とは逆側に突出し、複数の弾性弁体のそれぞれを収容する複数の筒体と、底壁の周縁に接続され、複数の筒体を囲む枠状の外周壁と、を含むケースと、底壁に対向するように外周壁に固定されたカバーと、を備え、筐体は、長手方向における複数の第2接合用突起同士の間の少なくとも一部の領域では、底壁及び外周壁のみによって形成されていてもよい。この構成では、複数の第2接合用突起同士の間の領域において、筐体が底壁及び外周壁のみによって形成されており、筐体内に筒体等の構造物が形成されない。この場合、複数の第2接合用突起同士の間の領域は、第2接合用突起が形成されている領域に比べて変形しやすくなる。そのため、圧力調整弁の底壁に反りが形成された場合であっても、第1接合用突起に対する第2接合用突起の位置を調整しやすい。
【0010】
筐体における、複数の第2接合用突起同士の間の少なくとも一部の領域では、外周壁にスリットが形成されていてもよい。この場合、複数の第2接合用突起同士の間の領域は、第2接合用突起が形成されている領域に比べて変形しやすくなる。そのため、圧力調整弁の底壁に反りが形成された場合であっても、第1接合用突起に対する第2接合用突起の位置を調整しやすい。
【0011】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールの製造方法は、複数の内部空間、及び、複数の内部空間にそれぞれ連通された複数の第1連通孔を有するモジュール本体と、複数の第1連通孔にそれぞれ対応した複数の第2連通孔が形成された筐体、及び、筐体内において複数の第2連通孔のそれぞれを閉塞する複数の弾性弁体を有し、モジュール本体に取り付けられた圧力調整弁と、を備えた蓄電モジュールの製造方法であって、蓄電モジュール及び圧力調整弁を用意する工程と、蓄電モジュールと圧力調整弁とを接合する工程と、を含み、モジュール本体は、複数の第1連通孔をそれぞれ囲む枠状をなして圧力調整弁に向けて突出する第1接合用突起を含み、圧力調整弁は、筐体の外面において複数の第2連通孔をそれぞれ囲む枠状をなしてモジュール本体に向けて突出し、第1接合用突起に対面する第2接合用突起を含み、第1接合用突起の幅は、第2接合用突起の幅よりも大きく、接合する工程では、第1接合用突起及び第2接合用突起を溶融させた状態で、複数の第1連通孔のそれぞれと対応する複数の第2連通孔のそれぞれとが互いに連通するように、第1接合用突起と第2接合用突起とを接合する。
【0012】
上記蓄電モジュールの製造方法では、モジュール本体に設けられた第1接合用突起の幅が圧力調整弁に設けられた第2接合用突起の幅よりも大きく形成されているため、第1接合用突起と第2接合用突起との位置合わせにおいて高い精度が必要としない。そのため、第1接合用突起と第2接合用突起との接合部分に不良が生じることが抑制され、接合品質が保持されやすい。また、モジュール本体に設けられた第1接合用突起の幅が大きく形成されているので、接合する工程において、圧力調整弁に設けられた第2接合用突起に対する入熱量は、第1接合用突起に対する入熱量よりも小さい。そのため、圧力調整弁の弾性部材に対する入熱の影響を抑制できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一側面によれば、接合用突起同士の接合部分における接合品質を低下させにくい蓄電モジュール及び蓄電モジュールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一例の蓄電モジュールを備えた蓄電装置を示す概略断面図である。
図2】一例の蓄電モジュールの概略断面図である。
図3】一例の蓄電モジュールの概略斜視図である。
図4】一例の蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図である。
図5】一例のモジュール本体に形成された取付領域を示す図である。
図6】一例の圧力調整弁の分解斜視図である。
図7】一例の圧力調整弁の底面図である。
図8】一例のケースの側面図である。
図9】一例の圧力調整弁の断面図である。
図10】一例のカバーの側面図である。
図11】圧力調整弁と蓄電モジュールとの接合工程を説明するための図である。
図12】圧力調整弁と蓄電モジュールとの接合工程を説明するための図である。
図13】圧力調整弁と蓄電モジュールとの接合工程を説明するための図である。
図14】一例の圧力調整弁を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。図中には、必要に応じてXYZ直交座標系が示される。Z軸方向は、一例として鉛直方向であり、X軸方向及びY軸方向は、一例として水平方向である。
【0016】
図1は、本実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置の一例を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール2を含むモジュール積層体4と、モジュール積層体4に対してモジュール積層体4の積層方向Dに拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0017】
モジュール積層体4は、複数(ここでは4つ)の蓄電モジュール2と、複数(ここでは3つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール2は、バイポーラ電池であり、積層方向Dから見て矩形状をなしている。蓄電モジュール2は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0018】
積層方向Dに互いに隣り合う蓄電モジュール2同士は、導電板5を介して電気的に直列に接続されている。モジュール積層体4の積層方向Dの両端には、蓄電モジュール2に電気的に接続された導電板Pと、絶縁板Fとが順に積層されている。一方の導電板Pには正極端子6が接続され、他方の導電板Pには負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板Pの縁部から積層方向Dに交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7を介して、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0019】
蓄電モジュール2間に配置された導電板5の内部には、空気等の冷却用媒体を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向Dと、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向とにそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール2同士を電気的に接続する接続部材としての機能を有している。また、導電板5は、これらの流路5aに冷却用媒体を流通させることにより、蓄電モジュール2で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。図1の例では、積層方向Dから見た導電板5の面積は、積層方向Dから見て蓄電モジュール2の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール2の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール2の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0020】
拘束部材3は、モジュール積層体4を積層方向Dに挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向Dから見た蓄電モジュール2、導電板5、及び導電板Pの面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。各エンドプレート8と導電板Pとの間には、電気絶縁性を有する絶縁板Fが設けられているため、この絶縁板Fにより、エンドプレート8と導電板Pとの間が絶縁されている。
【0021】
エンドプレート8の縁部には、積層方向Dから見てモジュール積層体4よりも外側となる位置(積層方向Dから見てモジュール積層体4と重ならない位置)に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通されている。他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール2、導電板5、及び導電板Pがエンドプレート8によって挟持され、モジュール積層体4としてユニット化されている。また、モジュール積層体4に対し、積層方向Dに拘束荷重が付加されている。
【0022】
次に、蓄電モジュール2の構成について詳細に説明する。図2は、蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図3は、蓄電モジュールの概略斜視図である。図2及び図3において、蓄電モジュール2は、積層方向Dにおいて複数のセル(例えば24セル)が積層された構造(複数セル構造)を有している。なお、「セル」とは、電池を構成する最小単位であり、正極、負極、セパレータ及び電解液が収容された内部空間を有する。一例においては、1つの正極と、1つの負極と、正極と負極との間に配置されるセパレータと、電解液とが内部空間に収容されることで一つのセルが構成され得るが、例えば、複数の正極、複数の負極、複数のセパレータ、及び電解液が内部空間に収容されることで一つのセルが構成されてもよい。また、電解液は液に限定されず、固体電解質を用いてもよい。この場合、固体電解質は正極と負極との間に収容され、セパレータは備えなくてもよい。
【0023】
蓄電モジュール2は、モジュール本体11と、モジュール本体11に取り付けられた複数(ここでは4つ)の圧力調整弁12とを備える。モジュール本体11は、電極積層体15と、電極積層体15を取り囲むように配置された枠体16とを備える。電極積層体15は、セパレータ14を介して蓄電モジュール2の積層方向Dに沿って積層された複数の電極を備える。複数の電極は、複数のバイポーラ電極13と、負極終端電極21と、正極終端電極20とを含む。
【0024】
バイポーラ電極13は、一方面17a及び一方面17aの逆側の他方面17bを含む電極板17と、一方面17aに設けられた正極活物質層18と、他方面17bに設けられた負極活物質層19とを有している。正極活物質層18は、正極活物質を含む正極スラリーが電極板17に塗工されることにより形成されている。正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極活物質層19は、負極活物質を含む負極スラリーが電極板17に塗工されることにより形成されている。負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。
【0025】
本実施形態では、電極板17の他方面17bにおける負極活物質層19の形成領域は、電極板17の一方面17aにおける正極活物質層18の形成領域に対して一回り大きくなっている。電極積層体15において、1つのバイポーラ電極13の正極活物質層18は、セパレータ14を挟んで積層方向Dの一方に隣り合う別のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。電極積層体15において、1つのバイポーラ電極13の負極活物質層19は、セパレータ14を挟んで積層方向Dの他方に隣り合う別のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0026】
負極終端電極21は、電極板17と、電極板17の他方面17bに設けられた負極活物質層19とを有している。負極終端電極21は、他方面17bが電極積層体15における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極21の電極板17の一方面17aは、電極積層体15の積層方向Dにおける一方の外側面を構成し、蓄電モジュール2に隣接する一方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。負極終端電極21の電極板17の他方面17bに設けられた負極活物質層19は、セパレータ14を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極13の正極活物質層18と対向している。
【0027】
正極終端電極20は、電極板17と、電極板17の一方面17aに設けられた正極活物質層18とを有している。正極終端電極20は、一方面17aが電極積層体15における積層方向Dの中央側を向くように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極20の電極板17の他方面17bは、電極積層体15の積層方向Dにおける他方の外側面を構成し、蓄電モジュール2に隣接する他方の導電板5又は導電板P(図1参照)と電気的に接続されている。正極終端電極20の一方面17aに設けられた正極活物質層18は、セパレータ14を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極13の負極活物質層19と対向している。
【0028】
電極板17は、水平方向に延在する板形状を有する導電体であり、可撓性を示す。このため水平方向は、電極板17の延在方向とも言える。電極板17は、例えばニッケル箔、メッキ処理が施された鋼板、またはメッキ処理が施されたステンレス鋼板である。鋼板としては、例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼板(SPCC等)が挙げられる。ステンレス鋼板としては、例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304等が挙げられる。電極板17の厚さは、例えば0.1μm以上1000μm以下である。なお、電極板17がニッケル箔である場合、当該ニッケル箔にメッキ処理が施されてもよい。電極板17の縁部17c(バイポーラ電極13の縁部)は、矩形枠状をなし、正極スラリー及び負極スラリーが塗工されない未塗工領域となっている。
【0029】
セパレータ14は、例えばシート状に形成されている。セパレータ14としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ14は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。
【0030】
枠体16は、例えば全体として矩形の枠であり、絶縁性の樹脂によって形成されている。枠体16は、それぞれの電極板17の縁部17cを包囲し、かつ電極積層体15の側面15aを包囲するように設けられている。枠体16は、縁部17cを保持している。枠体16は、電極板17の縁部17cに結合された複数の第1封止部22と、積層方向Dに沿って延び、第1封止部22のそれぞれに結合された第2封止部23と、を有している。第1封止部22及び第2封止部23は、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂によって構成されている。第1封止部22及び第2封止部23の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)などが挙げられる。
【0031】
第1封止部22は、電極板17の一方面17aにおいて縁部17cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向Dから見て矩形枠状をなしている。本実施形態では、バイポーラ電極13の電極板17のみならず、負極終端電極21の電極板17及び正極終端電極20の電極板17に対しても第1封止部22が設けられている。負極終端電極21では、電極板17の一方面17aの縁部17cに第1封止部22が設けられ、正極終端電極20では、電極板17の一方面17a及び他方面17bの双方の縁部17cに第1封止部22が設けられている。
【0032】
第1封止部22は、電極板17の縁部17cに重ねられ、重なり部分Kが形成されている。重なり部分Kにおいて、第1封止部22は、例えば超音波又は熱圧着によって電極板17に気密に溶着されている。第1封止部22は、例えば積層方向Dに所定の厚さを有するフィルムを用いて形成されている。第1封止部22の内壁面は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板17の縁部17c同士の間(電極積層体15の側面15aよりも内側)に位置している。第1封止部22の外壁面は、電極板17の縁よりも外側(電極積層体15の側面15aよりも外側)に張り出しており、その先端部分は、第2封止部23によって保持されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部22同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。また、第1封止部22の外縁部分同士は、例えば熱板溶着などによって互いに結合していてもよい。
【0033】
電極積層体15において、積層方向Dについて内層に位置する第1封止部22の内壁面には、当該内壁面から突出しセパレータ14の縁部を載置するための段部22sが設けられている。段部22sは、第1封止部22を構成するフィルムの外縁部分を内側に折り返すことによって形成されていてもよい。段部22sは、下段を構成するフィルムに上段を構成するフィルムを重ね合わせることによって形成されていてもよい。また、一例においては、電極積層体15において、積層方向Dについて外層に位置する(積層方向Dにおける電極積層体15の両端部に配置される)第1封止部22は、段部22sを有さないが、内層に位置する第1封止部22と同様に段部22sを有してもよい。
【0034】
第2封止部23は、積層方向Dと直交する方向において電極積層体15及び第1封止部22の外側に設けられ、蓄電モジュール2の外壁を構成している。また、第2封止部23は、積層方向Dにおける電極積層体15の両端部に配置される第1封止部22の外壁面の一部を被覆している。第2封止部23は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体15の全長にわたって延在している。第2封止部23は、積層方向Dを軸方向として延在する矩形の枠状である。第2封止部23は、例えば射出成型時の熱によって第1封止部22の外縁部分に溶着されている。
【0035】
第2封止部23は、積層方向Dにおける電極積層体15の両端部に配置される第1封止部22の外壁面の一部を被覆するオーバーハング部23aをそれぞれ有している。一方のオーバーハング部23aは、積層方向Dの一端部において第1封止部22の内縁側に張り出し、負極終端電極21を構成する電極板17の一方面17aに溶着された第1封止部22に結合している。他方のオーバーハング部23aは、積層方向Dの他端部において第1封止部22の内縁側に張り出し、正極終端電極20を構成する電極板17の他方面17bに溶着された第1封止部22に結合している。一方及び他方のオーバーハング部23aの張り出し長さは、互いに等しくなっており、これらのオーバーハング部23aの先端面23bは、積層方向Dから見て電極板17と第1封止部22との重なり部分Kに重なるように位置している。
【0036】
第1封止部22及び第2封止部23は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に、内部空間Vを封止する。より具体的には、第2封止部23は、第1封止部22と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極13の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極21とバイポーラ電極13との間、及び積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極20とバイポーラ電極13との間をそれぞれ封止している。これにより、隣り合うバイポーラ電極13の間、負極終端電極21とバイポーラ電極13との間、及び正極終端電極20とバイポーラ電極13との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。本実施形態では、電極板17の一方面17aと、当該電極板17と隣り合う一の電極板17の他方面17bと、第1封止部22とによって囲われた空間が内部空間Vとなっている。この内部空間Vには、電解液が収容される。
【0037】
すなわち、電極板17と当該電極板17の一方面17aに形成された正極活物質層18、当該電極板17と隣り合う一の電極板17と当該一の電極板17の他方面17bに形成された負極活物質層19、当該正極活物質層18と当該負極活物質層19との間に配置されたセパレータ14、及び電解液によって1つのセルが構成されている。換言すると、1つのセルは隣り合う電極の間に第1封止部22及び第2封止部23によって封止された内部空間Vを有する。そして、電極板17の一方面17aに形成された正極活物質層18、当該電極板17と隣り合う一の電極板17の他方面17bに形成された負極活物質層19、当該正極活物質層18と当該負極活物質層19との間に配置されたセパレータ14、及び電解液が当該内部空間Vに収容される。電解液は、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む水系の電解液である。電解液は、セパレータ14、正極活物質層18、及び負極活物質層19内に含浸されている。蓄電モジュール2は、積層方向Dに順に配列された複数(図示例では24個)の内部空間Vを含む。すなわち、蓄電モジュール2は積層方向Dに配列された複数のセル(図示例では24個)を含む。
【0038】
図4図10を更に参照して、圧力調整弁12の構成、すなわち圧力調整弁構造について説明する。図4は、一例の蓄電モジュールの一部を示す分解斜視図である。図5は、モジュール本体に形成された取付領域を示す図である。図6は、一例の圧力調整弁を示す分解斜視図である。図7は、一例の圧力調整弁の底面図である。図8は、圧力調整弁を構成するケースの側面図である。図9は、一例の圧力調整弁の断面図である。図10は、圧力調整弁を構成するカバーの側面図である。
【0039】
図3図4及び図5に示されるように、枠体16を構成する1つの壁部16aには、圧力調整弁12を取り付けるための複数(ここでは4つ)の取付領域24が設けられている。壁部16aは積層方向Dに平行な壁面を有する。一例においては、Y方向に隣り合った2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる。各取付領域24において、枠体16は、複数の内部空間V(図2参照)のそれぞれまで貫通した複数の貫通孔(第1連通孔)16bを有する。なお、図5では、取付領域24内に形成される貫通孔16bを省略している。各取付領域24には、複数(ここでは6つ)の貫通孔16bが設けられている。貫通孔16bは、各取付領域24において3列2段(Y方向に3列、Z方向に2段)に配列されている。したがって、貫通孔16bは、壁部16aにおいて12列2段に配列されている。各貫通孔16bは、異なるセルの内部空間Vとそれぞれ連通されている。
【0040】
各貫通孔16bは、第1封止部22に設けられた貫通孔25と、第2封止部23に設けられた貫通孔26とを含む。各貫通孔16bは、各内部空間Vに電解液を注入するための注液孔として機能する。また、各貫通孔16bは、電解液が注入された後は、各内部空間Vで発生したガス(例えば水素ガス)が流れる流路となる。
【0041】
第2封止部23の各取付領域24には、壁部16aの壁面から突出した略枠状の接合用突起(第1接合用突起)27がそれぞれ設けられている。接合用突起27は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは6つ)の流路28を貫通孔26と協働して形成する。したがって、流路28は、各取付領域24において3列2段に配列されている。流路28は、X方向に垂直な面に沿った断面において矩形状を有している。接合用突起27は、X方向から見て、格子状に形成されており、Z方向に延びる壁体27aと、Y方向に延びる壁体27bとを有している。
【0042】
図4及び図6に示されるように、圧力調整弁12は、ケース29及びカバー31からなる筐体60と、筐体60に収容される複数(ここでは12個)の弁体30と、を有している。ケース29は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。ケース29は、ケース29とカバー31とが対向する対向方向から見て略矩形状に形成されている。対向方向は、モジュール本体11(壁部16a)に対する圧力調整弁12の取付方向であり、後述する弁体30の圧縮方向でもある。圧力調整弁12は、壁部16aに垂直な方向に、モジュール本体11に取り付けられる。このため、対向方向は、X方向と一致している。
【0043】
ケース29は、Y方向に沿った長手方向及びZ方向に沿った幅方向を有する矩形板状の底壁32を有している。底壁32には、モジュール本体11側の外壁面32aからカバー31側の内壁面32b(壁面)に向けて対向方向(X方向)に貫通した複数(ここでは12個)の貫通孔(第2連通孔)33が設けられている。これらの貫通孔33は、モジュール本体11の各貫通孔16bとそれぞれ対応している。すなわち、貫通孔33及び貫通孔16bによって、モジュール本体11に形成された内部空間Vに連通する連通孔49が構成される。換言すると、貫通孔33及び貫通孔16bのそれぞれは、連通孔49の一部を構成している。貫通孔33は、連通孔49の出口に相当しており、X方向に垂直な面(YZ平面)に沿った断面で円形状を有している(図7参照)。
【0044】
図7に示されるように、底壁32の外壁面32aには、外壁面32aから突出した略枠状の一対の接合用突起(第2接合用突起)34が設けられている。一対の接合用突起34は、一対の接合用突起27に対応する間隔でY方向に離間して形成されている。一対の接合用突起34は、モジュール本体11と圧力調整弁12とを接合すると共に、各内部空間Vからのガスがそれぞれ流れる複数(ここでは12個)の流路35を形成する。接合用突起34は、モジュール本体11の接合用突起27に対面しており、接合用突起27と接合されている。
【0045】
接合用突起34は、接合用突起27に対応して格子状に形成されており、Z方向に延びる壁体34aと、Y方向に延びる壁体34bとを有している。図5及び図7に示すように、接合用突起34の壁体34a及び壁体34bの中心線(図7において一点鎖線で示す)と、接合用突起27の壁体27a及び壁体27bの中心線(図5において一点鎖線で示す)とは、X方向の一方向から見たときに、互いに一致する形状を有している。また、接合用突起27の幅W1は接合用突起34の幅W2よりも大きく形成されている。すなわち、接合用突起27の壁体27aの幅W1a(すなわちY方向の大きさ)は、接合用突起34の壁体34aの幅W2a(すなわちY方向の大きさ)よりも大きく形成されており、接合用突起27の壁体27bの幅W1b(すなわちZ方向の大きさ)は、接合用突起34の壁体34bの幅W2b(すなわちZ方向の大きさ)よりも大きく形成されている。一例において、接合用突起27の壁体27aの幅W1aと壁体27bの幅W1bとは同じであってもよい。また、接合用突起34の壁体34aの幅W2aと壁体34bの幅W2bとは同じであってもよい。さらに、一例においては、接合用突起34の外壁面32aからの突出高さ(X方向における外壁面32aからの距離)は、接合用突起27の壁部16aの壁面からの突出高さ(X方向における壁部16aの壁面の距離)と同じであるが、接合用突起34と接合用突起27の突出高さは異なっていてもよい。
【0046】
図4図6及び図8に示されるように、ケース29は、それぞれ底壁32からモジュール本体11とは逆側に突出した外周壁36及び隔壁部(筒体)37を有している。本実施形態では、外周壁36及び隔壁部37は、底壁32と一体的に形成されている。外周壁36は、複数(ここでは12個)の弁体30を一括して包囲するように、底壁32の内壁面32bの縁部に立設されている。具体的には、外周壁36は、底壁32の外周縁部の全周にわたって形成されており、ケース29の外壁を構成している。より具体的には、外周壁36は、対向方向から見て、略矩形状に形成された底壁32の外周縁部に沿って、略矩形枠状に形成されている。
【0047】
隔壁部37は、各弁体30の側面30cを覆うように底壁32の内壁面32bを基端として立設されている。一例において、隔壁部37は、各弁体30が収容される略円柱状の収容空間S1を形成している。すなわち、隔壁部37は、断面略円形状を有する筒状をなしている。なお、筒状とは、X方向に延在する弁体30を収容するための略柱状の空間を内側に形成し得る形状であればよく、それぞれの隔壁部37が独立して筒状に形成される必要はない。本実施形態では、隔壁部37と外周壁36の一部とが弁体30の側面30cを包囲することによって、収容空間S1が形成されている。また、本実施形態では、一の弁体30を収容する隔壁部37と当該一の弁体30に隣接する位置に配置された他の弁体30を収容する隔壁部37とは、一体的に形成されている。このように、互いに異なる弁体30を収容する隔壁部37同士は、共有する部分を有していてもよい。なお、それぞれの隔壁部37の外周面は、互いに離間していてもよく、さらに、外周壁36の内壁面36bから離間していてもよい。
【0048】
本実施形態では、底壁32の内壁面32bを基準として、外周壁36のカバー31側の端面36aは、隔壁部37のカバー31側の端面37aよりも対向方向において高い位置にある。したがって、ケース29にカバー31が固定された状態において、カバー31が外周壁36の端面36aに接する一方で、カバー31と隔壁部37の端面37aとは互いに離間している。すなわち、カバー31と隔壁部37の端面37aとの間には空間S2が形成されている。当該空間S2は、内部空間Vから圧力調整弁12の内部に流入したガスの流路として機能する。
【0049】
弁体30(弾性弁体)は、貫通孔33を塞ぐように、収容空間S1に収容されている。弁体30は、ゴム等の弾性部材によって形成された円柱状部材である。弁体30は、底壁32の内壁面32b側において貫通孔33を塞ぐ第1端面30aと、第1端面30aとは逆側に位置する第2端面30bと、第1端面30a及び第2端面30bを接続する側面30cとを有している。第2端面30bは、カバー31によって押圧される被押圧面である。弁体30は、第1端面30aが底壁32の内壁面32bに対して押し付けられた状態で配置されることで、貫通孔33を塞いでいる。弁体30は、内部空間Vの圧力に応じて、貫通孔33を開閉させる。弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面37b又は外周壁36の内壁面36bとの間には、隙間Gが設けられている。
【0050】
図6及び図8に示されるように、隔壁部37の内壁面37bには、弁体30を位置決めするための突出部38が形成されている。突出部38は、隔壁部37の内壁面37bから内周に向かって突出している。すなわち、突出部38は、内壁面37bから収容空間S1の中心に向かって突出している。突出部38は、貫通孔33の中心軸線の延びる方向(X軸方向)に沿って隔壁部37の内壁面37b全体にわたって設けられている。突出部38は、弁体30の側面30cと接触するように形成されている。突出部38が弁体30と接触することにより、弁体30の中心位置と貫通孔33の中心軸線とが互いに一致し得る。このような突出部38により、弁体30の位置ずれを一定の範囲内に抑えることができる。本実施形態では、複数(ここでは6つ)の突出部38が、貫通孔33の中心軸線回りに等ピッチで形成されている。図示例では、X方向から見て、貫通孔33の中心を通るZ軸に沿った線上(すなわち、6時の位置と12時の位置)に形成された2つの突出部38を含む6つの突出部38が60°のピッチで配置されている。
【0051】
図8に示されるように、収容空間S1において、底壁32の内壁面32bには、当該内壁面32bから突出するシール部(突起)39が形成されている。シール部39は、当該シール部39に対して押し付けられた弁体30の第1端面30aと接触することで、貫通孔33と隙間Gとの間を開閉可能に閉塞している。シール部39は、内壁面32bにおける貫通孔33の開口端を囲むように形成されている。シール部39は、貫通孔33の縁部に沿って、貫通孔33の中心軸線を中心とする円環状に形成されている。シール部39は、貫通孔33の全周を隙間無く囲むように形成されている。これにより、シール部39は、弁体30の第1端面30aと隙間無く接触しており、気密性が確保されている。
【0052】
シール部39は、対向方向から見たときに、隔壁部37に囲まれている。また、複数のシール部39は、一括して外周壁36によって囲まれている。なお、一例においては、上述のとおり、2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる構成であるため、複数のシール部39は、一対の接合用突起34に対応してY方向の中央から一方側と他方側とに分けて配置されている。Y方向の中央から一方側に配置されたシール部39を囲む隔壁部37と、他方側に配置されたシール部39を囲む隔壁部37とは、Y方向の中央において互いに離間している。
【0053】
また、複数の貫通孔33においては、底壁32におけるZ方向の中央よりも下側に形成された貫通孔33と上側に形成された貫通孔33とがY方向に沿って交互に並んでいる。そのため、Y方向に隣り合うシール部39同士では、Z方向における位置が互いにずれている。また、複数の隔壁部37は、Y方向(左右方向)において互いにずれた位置に配置されている。
【0054】
また、図9に示されるように、Y方向において、一方の接合用突起34と他方の接合用突起との間の領域Rの少なくとも一部では、底壁32、外周壁36及びカバー31のみによって筐体が構成されている。すなわち、Y方向において、一方の接合用突起34と他方の接合用突起との間には、隔壁部37が形成されない領域Rが形成されている。なお、Y方向において、排気口41の位置は領域Rの位置と重複している。
【0055】
図6及び図8に示されるように、ケース29には、カバー31に形成された一対の切り欠き31aに沿った、カバー31の縁部と溶着(接合)される接合用壁部40が形成されている。一例の接合用壁部40は、対向方向から見て、一方の対角位置に形成されている。接合用壁部40は、外周壁36と一体的に形成されている。接合用壁部40のカバー31側の端面40aは、外周壁36の端面36aと同一平面上に形成されている。
【0056】
カバー31は、底壁32に対向した状態でケース29の開口を塞ぐ板状部材である。カバー31は、例えばPP、PPSまたは変性PPE等の樹脂で形成されている。一例において、カバー31は射出成形によって製造され得る。図10に示すように、カバー31には、ケース29の接合用壁部40に対応した一対の切り欠き31aが形成されている。対向方向から見て、カバー31の外周縁部のうち切り欠き31aに沿った縁部以外の部分の位置は、ケース29の外周縁部(外周壁36の外側縁部)の位置と略一致している。
【0057】
カバー31は、ケース29の開口端面に溶着により接合されている。具体的には、カバー31の縁部42のうち、切り欠き31aに沿った部分は、接合用壁部40の端面40aに溶着されており、切り欠き31a以外に沿った部分は、外周壁36の端面36aに溶着されている。カバー31の縁部42は、例えば超音波溶着によってケース29の開口端面に接合されている。
【0058】
カバー31には、圧力調整弁12の内部のガスを圧力調整弁12の外部に排気するための排気口41が設けられている。本実施形態では一例として、カバー31のY方向の中央に矩形状の排気口41が設けられている。排気口41は、対向方向から見て弁体30と重ならないように配置されている。排気口41は、対向方向から見て、例えば矩形状に形成されている。
【0059】
カバー31は、弁体30の第2端面30bを押圧する平坦な内面43を有している。それぞれの弁体30は、対応するシール部39に向けて、内面43によって圧縮される。一例において、カバー31の内面43は、カバー31の縁部42に囲まれた範囲であってよい。カバー31において、内面43とは逆側の外面45には、カバー31を補強するための補強部50が形成されている。一例の補強部50は、カバー31を部分的に厚肉にして形成されている。図示例では、Z方向(第1の方向)に延在する複数の補強部51と、Y方向(第2の方向)に延在する一対の補強部52と、が示されている。また、図示例では、切り欠き31aに沿って補強部53が形成されている。
【0060】
以上のような蓄電モジュール2を製造する際には、まず、モジュール本体11と圧力調整弁12とをそれぞれ用意する工程を実施する。続いて、熱溶着の一つである熱板溶着によってモジュール本体11と圧力調整弁12とを接合する工程を実施する。具体的には、まず図11に示されるように、接合用突起27と接合用突起34とが対向するようにモジュール本体11及び圧力調整弁12を配置すると共に、モジュール本体11と圧力調整弁12との間に熱板46を配置する。一例の製造方法においては、Y方向において、接合用突起27の壁体27aの中心位置と接合用突起34の壁体34aの中心位置とが一致し、Z方向において、接合用突起27の壁体27bの中心位置と接合用突起34の壁体34bの中心位置とが一致するように、モジュール本体11と圧力調整弁12とが配置され得る。なお、図11では、Z方向における中心位置が一点鎖線で示されている。続いて、熱板46により接合用突起27,34を溶融させる。そして、図12に示されるように、接合用突起27,34が溶融している間に、モジュール本体11の接合用突起27と圧力調整弁12の接合用突起34とを押し付けることにより、接合用突起27,34同士が溶着される。これにより、接合用突起27,38同士が接合される。すなわち、モジュール本体11と圧力調整弁12とが接合される。この場合、図13に示されるように、接合用突起27,34同士が互いに押圧されることによって、接合用突起27の先端27cと接合用突起34の先端34cとがX方向に交差する方向(YZ平面方向)に広がってもよい。
【0061】
以上説明した蓄電モジュール2では、複数の弁体30のそれぞれの第2端面30bが、カバー31によって押圧されることで、第1端面30aが貫通孔33(連通孔49)を囲むシール部39に当接する。これにより、弁体30の第1端面30aとシール部39とが密着し、それぞれの貫通孔33が対応する弁体30によって閉塞され得る。ケース29の貫通孔33は、第2封止部23の貫通孔26及び第1封止部22の貫通孔25を介してモジュール本体11の内部空間Vと連通されている。内部空間Vの圧力が設定圧よりも低いときは、貫通孔33が弁体30によって塞がれた閉弁状態に維持される。内部空間Vの圧力が上昇して設定圧以上になると、弁体30が底壁32から離間するように弾性変形し、貫通孔33の閉塞が解除された開弁状態となる。その結果、内部空間Vからのガスは、弁体30の側面30cと隔壁部37の内壁面37bとの隙間G(収容空間S1)を介して、隔壁部37とカバー31との間に形成された空間S2へと流通する。そして、当該ガスは、空間S2から排気口41を介して圧力調整弁12の外部へと排気される。
【0062】
この蓄電モジュール2では、モジュール本体11に設けられた接合用突起27の幅W1が圧力調整弁12に設けられた接合用突起34の幅W2よりも大きく形成されているため、接合用突起27と接合用突起34との位置ずれの発生が抑制される。なお、この場合の位置ずれとは、対向方向から見て接合用突起27,34の中心位置同士が単にずれて接合することではなく、対向方向から見て接合用突起27が接合用突起34の範囲からはみ出て接合されることを意味する。
【0063】
上述のとおり、蓄電モジュール2では、接合用突起27と接合用突起34との位置合わせにおいて高い精度が必要としない。そのため、接合用突起27と接合用突起34との接合部分に不良が生じることが抑制される。また、モジュール本体11に設けられた接合用突起27の幅が大きく形成されているので、接合する工程において、圧力調整弁12に設けられた接合用突起34に対する入熱量は、接合用突起27に対する入熱量よりも小さい。例えば、接合用突起34に対する入熱量が大きくなると、熱の影響によって弁体30が劣化する虞がある。弁体30が劣化すると、圧力調整弁12の開弁圧が設定圧から変化し、内部空間Vの圧力が設定圧未満で開弁状態となる、又は内部空間Vの圧力が設定圧以上になっても開弁状態とならないことが考えられるが、本実施形態では、圧力調整弁12の弁体30に対する入熱の影響を抑制できる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られない。
【0065】
例えば、図14は、圧力調整弁12に代えて使用され得る圧力調整弁の他の例を示す平面図である。図14に示すように、圧力調整弁112は、ケース129と複数(図示例では2つ)のカバー131とによって構成される筐体160を有している。ケース129の基本的な構成はケース29と同じである。すなわち、ケース129は、図示されない隔壁部37、シール部39等を含んでおり、複数の弁体30を収容している。ケース129は、外周壁36に代えて外周壁136を有している。外周壁136は、外周壁36と同様に、複数の弁体30を一括して包囲するように、底壁32の縁部に立設されている。外周壁136は、底壁32のY方向の中央において、外周壁136のX方向の中央から底壁32と逆側の端部まで延在するスリット136sを有している。換言すると、外周壁136は外周壁136の底壁32と逆側の端部から底壁32に向かって凹んだスリット136sを有する。スリット136sは、Y方向において一方の接合用突起34と他方の接合用突起34との間の領域Rと重複する位置に形成されている。2つのカバー131は、一方の接合用突起34に対応する弁体30と他方の接合用突起34に対応する弁体30とをそれぞれ押圧するように外周壁36に固定されている。一方のカバー131と他方のカバー131とは領域R内において互いに離間している。すなわち、領域Rの少なくとも一部では、底壁32、外周壁136のみによって筐体160が構成されており、当該外周壁136にはスリット136sが形成されている。スリット136sは、圧力調整弁112の排気口として機能する。
【0066】
図14に例示される圧力調整弁では、筐体160内に隔壁部37等の構造物が形成されない。この場合、複数の接合用突起34同士の間の領域Rは、接合用突起34が形成されている領域に比べて変形しやすくなる。そのため、圧力調整弁112の底壁32に反りが形成された場合であっても、接合用突起27に対する接合用突起34の位置を調整しやすい。
【0067】
また、筐体160における、領域Rでは、外周壁136に切欠き状のスリット136sが形成されている。この場合、複数の接合用突起34同士の間の領域Rは、接合用突起34が形成されている領域に比べて変形しやすくなる。そのため、圧力調整弁112の底壁32に反りが形成された場合であっても、接合用突起27に対する接合用突起34の位置を調整しやすい。なお、スリット136sのY方向の幅は領域RのY方向の大きさよりも小さければ特に問わないが、スリット136sのY方向の幅が大きい方が領域Rの変形がしやすくなる。また、本例では1つのスリット136sが設けられているが、複数のスリット136sが設けられてもよい。
【0068】
なお、図14に示す圧力調整弁112では、複数のカバー131を含む形態を示したが、圧力調整弁112では、例えば複数のカバー131に代えて1つのカバー31が用いられてもよい。
【0069】
また、一例では、2つの取付領域24に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられる構成を示したが、例えば、1つの取付領域に対して1つの圧力調整弁が取り付けられてもよい。また、4つの取付領域に対して1つの圧力調整弁12が取り付けられてもよい。
【0070】
また、弁体30が収容される収容空間Sの断面形状は、略円形に限定されず、例えば、四角形、六角形等の多角形状であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
2…蓄電モジュール、11…モジュール本体、12…圧力調整弁、16b…貫通孔(第1連通孔)、27…接合用突起(第1接合用突起)、30…弁体(弾性弁体)、31…カバー、32…底壁、33…貫通孔(第2連通孔)、34…接合用突起(第2接合用突起)、36…外周壁、37…隔壁部(筒体)、60…筐体、V…内部空間、W1,W2…幅。
図1
図2
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図14