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特許7347237センサを有する基礎構造体、及び当該基礎構造体の施工方法
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  • 特許-センサを有する基礎構造体、及び当該基礎構造体の施工方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】センサを有する基礎構造体、及び当該基礎構造体の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 27/01 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
E02D27/01 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020010804
(22)【出願日】2020-01-27
(65)【公開番号】P2021116607
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【弁理士】
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】馬場 祐
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一聡
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352886(JP,A)
【文献】特開2007-032063(JP,A)
【文献】特開平11-089500(JP,A)
【文献】特表平08-503769(JP,A)
【文献】特開2013-055919(JP,A)
【文献】特開2002-027887(JP,A)
【文献】特開平07-255344(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に沿って延びる天面を有する立上りを備えた基礎と、
上記天面が延びる延出方向に沿って延びており、当該天面の上方に配置された木製の横架材と、
上記延出方向に延びる金属板であって、主面が上記横架材の表面に当接する金属板と、
先端部が上記横架材にあり、上記金属板と接触する金属製の複数の棒材と、
検知部が上記金属板に接触し、当該金属板を伝わるアコースティックエミッション波を検知するAEセンサと、を備えた基礎構造体。
【請求項2】
隣り合う2つの上記棒材間の距離が、検知可能距離の2倍未満とされた、請求項1に記載の基礎構造体。
【請求項3】
上記立上りの上方であって、上記横架材の側方に配置された第1柱をさらに備えており、
上記延出方向における上記金属板の端部は、上記第1柱まで延びており、
一の上記棒材は、上記金属板の上記端部に配置された、請求項1または2に記載の基礎構造体。
【請求項4】
上記横架材の上方に配置された第2柱をさらに備えており、
上記棒材は、上記第2柱の直下となる位置に配置された、請求項3に記載の基礎構造体。
【請求項5】
上記立上りの上方であって、上記横架材の側方に配置された第1柱をさらに備えており、
上記金属板の上記主面は、上記第1柱に当接しており、
一の上記棒材の先端部は、上記第1柱内にある、請求項1または2に記載の基礎構造体。
【請求項6】
上記横架材の上方に配置された第2柱をさらに備えており、
上記金属板の上記主面は、上記第2柱に当接しており、
一の上記棒材の先端部は、上記第2柱内にある、請求項5に記載の基礎構造体。
【請求項7】
上記棒材は、上記金属板を上記横架材に固定する、請求項1から3のいずれかに記載の基礎構造体。
【請求項8】
水平方向に沿って延びる天面を有する立上りを備えた基礎を打設する第1工程と、
上記立上りの天面の上方に横架材を配置して固定する第2工程と、
上記横架材の表面に主面を当接させて金属板を配置し、当該金属板に接触させて当該横架材に金属製の棒材を入れ込む第3工程と、
アコースティックエミッション波を検知するAEセンサを、その検知部を上記金属板に接触させて取り付ける第4工程と、を備える基礎構造体の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白蟻を検知するセンサを有する基礎構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、白蟻が木材を齧るアコースティックエミッション波(以下、AE波と記載する)を検知するAEセンサを備えた基礎構造体を開示する。AEセンサは、木材の側面に取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平3-102257号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
白蟻が木材を齧ることによって生じるAE波は微弱であるため、多数のAEセンサを木材に取り付けなければ、広範囲の白蟻を検知できないという問題があった。
【0005】
本発明は、前述された事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、白蟻の検知精度を低下させることなく、基礎構造体に使用するセンサの個数を低減する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明に係る基礎構造体は、水平方向に沿って延びる天面を有する立上りを備えた基礎と、上記天面が延びる延出方向に沿って延びており、当該天面の上方に配置された木製の横架材と、上記延出方向に延びる金属板であって、主面が上記横架材の表面に当接する金属板と、先端部が上記横架材にあり、上記金属板と接触する金属製の複数の棒材と、上記金属板に検知部が接触するセンサと、を備える。
【0007】
白蟻が木製の横架材を齧ることによって生じたAE波は、横架材の内部を伝わる。先端部が横架材にある金属製の複数の棒材は、AE波を金属板に伝達する。センサは、金属板に伝達されたAE波を検知する。横架材の内部を伝わるAE波を金属製の棒材及び金属板を介してセンサで検知するので、センサは、横架材の表面に検知部が接触されている場合よりも、白蟻が横架材を齧ることによって生じたAE波を感度良く検知することができる。すなわち、センサの検知範囲が広がる。その結果、使用するセンサの個数を低減した基礎構造体が実現される。
【0008】
(2) 隣り合う2つの上記棒材間の距離が、検知可能距離の2倍未満とされていてもよい。
【0009】
検知可能距離は、横架材の内部を伝達したAE波をセンサが検知可能な最大距離である。隣り合う2つの棒材間の距離が、検知可能距離の2倍未満とされるので、白蟻が横架材を齧る位置と、当該位置と最も近い棒材との間の距離は、検知可能距離未満となる。したがって、白蟻が横架材を齧る位置に拘わらず、センサにAE波を検知させることができる。
【0010】
(3) 本発明に係る基礎構造体は、上記立上りの上方であって、上記横架材の側方に配置された第1柱をさらに備えていてもよい。上記延出方向における上記金属板の端部は、上記第1柱まで延びる。一の上記棒材は、上記金属板の上記端部に配置されている。
【0011】
延出方向における金属板の端部は、第1柱まで延びる。すなわち、金属板の端部は、第1柱の近傍に位置する。そして、一の棒材は、第1柱の近傍に位置する金属板の当該端部に配置されている。したがって、棒材は、白蟻が第1柱を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板に伝達することができる。その結果、白蟻が第1柱を齧ることによって生じたAE波を検知するセンサを別途設けなくてもよく、センサの使用個数がさらに低減する。
【0012】
(4) 本発明に係る基礎構造体は、上記横架材の上方に配置された第2柱をさらに備えていてもよい。上記棒材は、上記第2柱の直下となる位置に配置されている。
【0013】
棒材は、第2柱の直下となる位置に配置されているので、棒材は、白蟻が第2柱を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板に伝達することできる。その結果、白蟻が第2柱を齧ることによって生じたAE波を検知するセンサを別途設けなくてもよく、センサの使用個数がさらに低減する。
【0014】
(5) 本発明に係る基礎構造体は、上記立上りの上方であって、上記横架材の側方に配置された第1柱をさらに備えていてもよい。上記金属板の上記主面は、上記第1柱に当接している。一の上記棒材の先端部は、上記第1柱内にある。
【0015】
一の棒材の先端部は、第1柱内にあるので、棒材は、白蟻が第1柱を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板に伝達することができる。その結果、白蟻が第1柱を齧ることによって生じたAE波を検知するセンサを別途設けなくてもよく、センサの使用個数がさらに低減する。
【0016】
(6) 本発明に係る基礎構造体は、上記横架材の上方に配置された第2柱をさらに備えていてもよい。上記金属板の上記主面は、上記第2柱に当接している。一の上記棒材の先端部は、上記第2柱内にある。
【0017】
一の棒材の先端部は第2柱内にあるので、棒材は、白蟻が第2柱を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板に伝達することができる。その結果、白蟻が第2柱を齧ることによって生じたAE波を検知するセンサを別途設けなくてもよく、センサの使用個数がさらに低減する。
【0018】
(7) 上記棒材は、上記金属板を上記横架材に固定していてもよい。
【0019】
横架材内を進行するAE波を金属板に伝達する棒材を用いて金属板を横架材に固定することができる。
【0020】
(8) 上記センサは、アコースティックエミッション波を検知するAEセンサである。
【0021】
(9) 本発明に係る基礎構造体の施工方法は、水平方向に沿って延びる天面を有する立上りを備えた基礎を打設する第1工程と、上記立上りの天面の上方に横架材を配置して固定する第2工程と、上記横架材の表面に主面を当接させて金属板を配置し、当該金属板に接触させて当該横架材に金属製の棒材を入れ込む第3工程と、上記金属板に検知部を接触させてセンサを取り付ける第4工程と、を備える。
【0022】
本発明は、基礎構造体の施工方法として捉えることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る基礎構造体は、白蟻の検知精度を低下させることなく、使用するセンサの個数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は、基礎構造体10の一部の斜視図である。
図2図2は、基礎構造体10の断面図である。
図3図3(A)は、第1柱22、横架材20、及び金属板30の水平断面図であり、図3(B)は、変形例2に係る第2柱24、横架材20、及び金属板30の水平断面図である。
図4図4は、端末装置50の機能ブロック図である。
図5図5は、変形例1に係る基礎構造体10の一部の斜視図である。
図6図6は、変形例2に係る基礎構造体10の一部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0026】
図1は、本実施形態に係る基礎構造体10の一部の斜視図である。基礎構造体10は、布基礎11と、布基礎11に取り付けられた柱脚25と、柱脚25に固定された複数の第1柱22と、2つの第1柱22の間に配置された横架材20と、横架材20と布基礎11との間に配置されたスペーサ60と、横架材20に支持された一乃至複数の第2柱24と、横架材20に取り付けられた複数の金属板30と、各金属板30にそれぞれ取り付けられた複数のAEセンサ40と、を備える。基礎構造体10は、白蟻が横架材20や第1柱22や第2柱24を齧ったことによって生じたAE波をAEセンサ40によって検知する。以下、詳しく説明がされる。
【0027】
布基礎11は、フーチング12と、立上り13と、複数のアンカーボルト14と、を備える。フーチング12は、地中に埋設されている。立上り13は、フーチング12から上方に向かって突出している。すなわち、立上り13は、地面から上向きに突出している。そして、立上り13の天面15は、水平方向に沿って延びている。以下では、天面15が延びる方向を延出方向9と記載して説明する。
【0028】
アンカーボルト14は、布基礎11に埋設された不図示の埋設体と、埋設体から上向きに突出するボルトと、を有する。当該ボルトの上端部は、立上り13の天面15から上向きに突出している。アンカーボルト14及びアンカーボルト14に締結されたナット17は、柱脚25を固定する。詳しくは後述される。
【0029】
布基礎11は、例えば、地面に設けた溝に砕石を敷設した後、捨てコンクリートを当該溝内に打設し、次いで当該溝に沿って型枠を設置するとともに、型枠に保持させて鉄筋及びアンカーボルト14を設置した後、型枠内に生コンクリートを流し込んで打設される。布基礎11を打設する工程は、第1工程の一例である。なお、基礎構造体10は、布基礎11に代えて、べた基礎を備えていてもよい。
【0030】
柱脚25は、金属製であり、下フランジ26、上フランジ27(図2)、ウェブ28、及び不図示の取付片を有する。柱脚25は、例えば、平板にLアングルを溶接して製造される。
【0031】
下フランジ26及び上フランジ27は、主面が水平方向に沿う矩形板状である。ウェブ28は、主面が上下方向に沿う矩形板状であって、下端において下フランジ26と接続され、上端において上フランジ27と接続されている。下フランジ26は、アンカーボルト14が挿通される不図示のボルト孔を有する。当該ボルト孔は、上下方向において下フランジ26を貫通している。柱脚25は、下フランジ26のボルト孔に挿通されたアンカーボルト14と、アンカーボルト14に締結されたナット17とによって、布基礎11に固定されている。
【0032】
取付片は、上フランジ27の上面から上向きに突出している。取付片は、第1柱22の下端部に設けられた不図示の嵌入溝に嵌入される。また、取付片は、ドリフトピン18が挿通される不図示の孔を有している。当該孔は、水平方向において取付片を貫通している。第1柱22を貫通し、かつ取付片の孔に挿通されたドリフトピン18により、第1柱22が柱脚25に固定されている。
【0033】
第1柱22は、木製であり、かつ、上下方向に延びる角柱状である。第1柱22は、例えば矩形板状の複数の板材を接着することによって製造される。第1柱22は、柱脚25の取付片が嵌入される嵌入溝を下端部に有する。また、ドリフトピン18が挿通される不図示のドリフトピン孔を下端部に有する。
【0034】
作業者は、柱脚25の取付片を第1柱22の嵌入溝に嵌入させて第1柱22を柱脚25に載置した後、第1柱22のドリフトピン孔及び柱脚25の取付片のドリフトピン孔にドリフトピン18を挿通し、固定する。作業者は、複数の第1柱22を各柱脚25にそれぞれ取り付ける。作業者が柱脚25を用いて第1柱22を布基礎11に固定する工程は、第5工程の一例である。
【0035】
横架材20は、木製であり、かつ、図1に示されるように、延出方向9に沿って延びる角柱状である。横架材20は、例えば矩形板状の複数の板材を接着することによって製造される。
【0036】
接続金具70は、矩形板状の第1片71及び第2片72を有しており、第1片71の一端と第2片72の一端とが接続するL字状である。第1片71及び第2片72は、ビス73が挿通される不図示のビス孔をそれぞれ有する。横架材20は、接続金具70及びビス73によって、第1柱22に固定されている。具体的には、延出方向9における横架材20の一端部は、一の接続金具70によって一の第1柱22に固定され、横架材20の他端部は、他の接続金具70によって他の第1柱22に固定されている。
【0037】
横架材20は、布基礎11の立上り13の天面15から離間して第1柱22に固定されている。横架材20と立上り13の天面15との間にはスペーサ60が配置されている。図1に示す例では、1つのスペーサ60が、延出方向9における横架材20の中間部の下に配置されている。ただし、複数のスペーサ60が横架材20と立上り13との間に配置されていてもよい。
【0038】
スペーサ60は、例えば樹脂製である。スペーサ60の下面は、布基礎11の立上り13の天面15と当接しており、スペーサ60の上面は、横架材20の下面と当接している。すなわち、スペーサ60は、横架材20を支持する。なお、スペーサ60は、ビスなどによって横架材20に固定されていてもよい。
【0039】
作業者は、布基礎11の立上り13の天面15にスペーサ60を載置した後、スペーサ60に横架材20を載置する。そして、作業者は、ビスなどを用いて、接続金具70を横架材20及び第1柱22に固定する。すなわち、作業者は、接続金具70を用いて、横架材20の両端部を第1柱22にそれぞれ固定する。作業者が横架材20を第1柱22に固定する工程は、第2工程の一例である。
【0040】
第2柱24は、木製であり、かつ上下方向に延びる角柱状である。第2柱24は、例えば、第1柱22と同様に、矩形板状の複数の板材を貼り合わせて製造される。第2柱24は、いわゆる間柱である。なお、第2柱24は、幅が第1柱の幅よりも狭い、いわゆる半柱であってもよい。
【0041】
第2柱24は、横架材20の上に載置され、横架材20に固定されている。図1に示される例では、第2柱24は、釘などによって、横架材20に固定されている。
【0042】
金属板30は、白蟻が横架材20や第1柱22や第2柱24を齧ることによって生じたAE波をAEセンサに伝達する機能を有する。以下詳しく説明する。
【0043】
金属板30は、延出方向9に沿って延びる矩形板状であり、かつ主面が上下方向に沿う矩形板状である。金属板30は、AE波の伝達効率を高めるために、比重の小さな金属で製造される。例えば、金属板30は、アルミニウム製である。但し、金属板30は、ステンレスなどの合金を含む他の種類の金属によって製造されていてもよい。金属板30は、例えば規定サイズのアルミ板をプレス加工によって適切な大きさに切断して製造される。
【0044】
金属板30の厚みは、振動を伝達可能な強度を金属板30が有するように0.1mm以上とされ、伝達効率を高めるために6cm以下とされる。金属板30は、好ましくは0.35mm以上3.2mm以下とされる。
【0045】
上下方向における金属板30の長さである金属板30の幅は、白蟻が第2柱24や横架材20を齧ることによって生じたAE波を金属板30に効率良く伝達可能なように、上下方向における横架材20の長さの約半分とされている。詳しく説明すると、上下方向における横架材20の約半分の幅とされた金属板30は、上端が横架材20の上端に重なり、下端が上下方向における横架材20の中央部に重なるように、横架材20の側面に配置されている。すなわち、金属板30の上端は、第2柱24に近接しており、金属板30の下端は、上下方向における横架材20の中央部に位置している。金属板30の上端部であって、かつ第2柱24の直下となる位置に、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を捉える後述の第2ビス82が配置される。また、後述の第3ビス83が、上下方向における金属板30の下端部及び横架材20の中央部にねじ込まれている。第3ビス83は、横架材20の内部を伝達するAE波を、横架材20の端部にねじ込まれるよりも、効率的に捉える。すなわち、金属板30は、上下方向における横架材20の長さ未満とされることにより、上下方向における横架材20の長さと同一とされるよりも軽くなって、AE波の伝達効率を高められている。そして、金属板30は、上下方向における横架材20の半分未満とされないことにより、上端を第2柱24に近接させ、かつ下端を上下方向における横架材20の中央部に重ねて配置されることができる。したがって、金属板30は、第2ビス82を通じて、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を効率良く伝達され、かつ、第3ビス83を通じて、白蟻が横架材20を齧ることによって生じたAE波を効率良く伝達される。
【0046】
金属板30は、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波を検知可能な長さを有している。具体的には、金属板30は、延出方向9における金属板30の一端が一の第1柱22に近接する長さとされている。図1に示す例では、金属板30は、一端が一の第1柱22に近接し、他端が他の第1柱22に近接する長さとされている。ただし、金属板30は、一端のみが第1柱22に近接する長さとされていてもよい。
【0047】
金属板30は、金属製の複数のビス80によって横架材20に固定されている。詳しく説明すると、ビス80は、金属板30及び横架材20にねじ込まれている。図3(A)に示されるように、各ビス80のビス頭は、金属板30を第1柱22、第2柱24、及び横架材20に押し付けて、金属板30を第1柱22、第2柱24、及び横架材20に固定する。
【0048】
ビス80は、木材にねじ込まれる木ネジである。ビス80は、金属板30を固定する機能に加え、白蟻が第1柱22や第2柱24や横架材20を齧ることによって生じたAE波を金属板30に伝達する機能を有する。すなわち、弾性波として第1柱22や第2柱24や横架材20の内部を伝達するAE波は、金属製のビス80を通じて金属板30に伝わる。ビス80は、金属製の棒材の一例である。
【0049】
ビス80の長さは、横架材20の内部を伝わるAE波を効率的に受け易くするため、第1柱22や第2柱24や横架材20の厚み方向における中心部にビス80の先端が位置する長さとされることが望ましい。ただし、ビス80の長さは、ビス80を第1柱22や第2柱24や横架材20にねじ込む作業の作業性を考慮して、上記長さよりも短くされてもよい。
【0050】
ビス80の直径は、横架材20の内部を伝わるAE波を効率的に金属板30に伝達可能なように、8mm以下とされ、かつ強度を確保するため、2.5mm以上とされる。好ましくは、ビス80の直径は、3mm以上5mm以下とされる。
【0051】
図2に示されるように、一のビス80である第1ビス81は、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波を捉えることができるように、延出方向9における金属板30の端部において、金属板30及び横架材20にねじ込まれている。第1柱22と第1ビス81との間の距離L7は、AEセンサ40の性能に応じた値であり、例えば実測によって決定される。距離L7は、例えば10mm以上50mm以下とされる。
【0052】
また、ビス80である第2ビス82は、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を捉えることができるように、第2柱24の直下となる位置であって、金属板30の上端部において、金属板30及び横架材20にねじ込まれている。第2ビス82は、金属板30の上端部に位置しているので、金属板30の下端部や中央部に位置する場合よりも、第2柱24に近い。したがって、第2ビス82は、金属板30の下端部や中央部に配置される場合よりも、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を効率的に捉えて金属板30に伝達することができる。
【0053】
隣り合う2つのビス80の間の距離L1、L2、L3、L4、L5、L6は、検知可能距離の2倍未満とされている。検知可能距離は、横架材20の内部を伝達したAE波をセンサが検知可能な最大距離である。検知可能距離は、横架材20の材質及び太さや、AEセンサ40の性能に応じた値である。検知可能距離は、例えば実測によって決定される。検知可能距離は、例えば500mmである。隣り合う2つの第3ビス83間の距離が検知可能距離の2倍未満とされることにより、白蟻が横架材20を齧った位置と、当該位置から最も近い第3ビス83との間の距離は、検知可能距離未満となる。したがって、白蟻が横架材20のいずれの箇所を齧ったとしても、AEセンサ40は、生じたAE波を検知することができる。なお、距離L1、L2、L3、L4、L5、L6は、同一の長さであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
また、第3ビス83は、上下方向における横架材20の中央部に位置するように、金属板30の下端部に配置されている。したがって、第3ビス83は、横架材20の内部を進行する弾性波であるAE波を効率良く捉えることができる。また、白蟻が横架材20を齧る場合、通常、横架材20の下部を齧る。すなわち、第3ビス83を横架材20の上端部に配置するよりも、白蟻が横架材20を齧る位置と第3ビス83と間の距離が短くなる。したがって、第3ビス83は、白蟻が横架材20を齧ることによって生じたAE波を効率良く捉えて金属板30に伝達することができる。
【0055】
AEセンサ40は、金属板30に当接される検知部と、検知部に伝達されたAE波を電圧に変換して出力する検知回路と、検知部及び検知回路を収容する筐体と、を備える。例えば市販のAEセンサがAEセンサ40として用いられる。
【0056】
作業者は、検知部を金属板30に接触させて、接着剤やビスなどを用いてAEセンサ40を金属板30に取り付ける。作業者がAEセンサ40を金属板30に取り付ける工程は、第4工程の一例である。なお、検知部が金属板30に接触していれば、AEセンサ40は、横架材20など、金属板30以外の他の部材に取り付けられていてもよい。
【0057】
複数のAEセンサ40は、信号線によって、図4に示される端末装置50と接続されている。端末装置50は、例えば、基礎構造体10を備えた住宅の壁に取り付けられて使用される。端末装置50は、CPU51、メモリ52、入力インタフェース54、通信インタフェース55、報知装置56、及び通信バス57を備える。CPU51、メモリ52、入力インタフェース54、通信インタフェース55、及び報知装置56は、通信バス57と接続されており、通信バス57を介して相互に通信可能である。
【0058】
メモリ52は、サーバ42のURL(Uniform Resource Locator)や、顧客IDや、制御プログラム53などを記憶している。制御プログラム53は、中央演算処理装置であるCPU51によって実行される。実行された制御プログラム53は、入力インタフェース54を通じてAEセンサ40からの信号の入力を受け付け、通信インタフェース55及びインターネット41を通じて情報をサーバ42に送信する。
【0059】
報知装置56は、ディスプレイやスピーカなどであって、画像や音声によって住宅の住人に報知を行う装置である。
【0060】
サーバ42は、住宅を施工したメーカや、サービス提供業者が使用権限を有するウェブサーバなどであって、URLをインターネット41上に公開する。
【0061】
以下、白蟻が横架材20や第1柱22や第2柱24を齧ることによって生じたAE波をAEセンサ40が検出し、AEセンサ40がAE波を検知したことが端末装置50によってサーバ42に送信され、かつ報知装置56によって報知されることについて説明する。
【0062】
白蟻が第1柱22、第2柱24、及び横架材20を齧ることによって生じたAE波は、弾性波として第1柱22、第2柱24、及び横架材20の内部を伝達する。横架材20の内部を伝達したAE波は、ビス80及び金属板30を通じてAEセンサ40まで伝達する。AEセンサ40は、伝達されたAE波を検知し、AE波を検知したことを示す検知信号を出力する。AEセンサ40が出力した検知信号は、信号線、入力インタフェース54、及び通信バス57を通じてCPU51に入力される。制御プログラム53は、検知信号が入力されたと判断すると、白蟻が発生したことを示す情報及び顧客IDを含むHTTPリクエストを、サーバ42が公開するURL宛てに、通信インタフェース55を通じて送信する。また、制御プログラム53は、報知装置56を用いて、食害が生じたことを住人に報知する。端末装置50は、報知装置56と通信インタフェース55との一方のみを有していてもよい。すなわち、白蟻が発生したことを示す情報は、サーバ42宛てに送信されるだけでもよいし、或いは報知装置56によって住人に報知されるだけでもよい。
【0063】
サーバ42を管理するサービス提供業者は、白蟻が発生したことを示す情報がサーバ42に入力された場合、白蟻が発生したおそれがあることを、顧客IDが示す顧客に通知する。
【0064】
[実施形態の作用効果]
本実施形態では、ビス80により、横架材20の内部を伝達するAE波を捉え、ビス80が捉えたAE波を金属板30によってAEセンサ40まで伝達する。したがって、ビス80及び金属板30を用いない場合よりも広範囲を、AEセンサ40の検知範囲とすることができる。その結果、基礎構造体10は、使用するAEセンサ40の個数を低減することができる。
【0065】
また、本実施形態では、隣り合う2つの第3ビス83間の距離が、検知可能距離の2倍未満とされるので、白蟻が横架材20を齧る位置に拘わらず、AEセンサ40は、白蟻が横架材20を齧ったことによって生じたAE波を検知することができる。
【0066】
また、本実施形態では、延出方向9における金属板30の端部が第1柱22の近傍まで延出され、当該端部に第1ビス81が配置されている。したがって、当該端部にビス80が配置されていない場合に比べ、AEセンサ40は、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波を効率良く検知することができる。その結果、基礎構造体10に使用するAEセンサ40の個数がさらに低減する。
【0067】
また、本実施形態では、第2ビス82は、第2柱24の直下であって、金属板30のy上端部に配置されている。したがって、当該位置に第2ビス82が配置されていない場合に比べ、AEセンサ40は、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を効率良く検知することができる。その結果、基礎構造体10に使用するAEセンサ40の個数がさらに低減する。
【0068】
また、本実施形態では、第1柱22、第2柱24、及び横架材20の内部を伝わるAE波を金属板30に伝達するビス80を用いて、金属板30を固定することができる。
【0069】
また、本実施形態では、アルミニウムからなる金属板30が用いられているので、鉄や銅などアルミニウムよりも比重の大きな金属からなる金属板を用いる場合に比べ、AEセンサ40の検知範囲が広くなる。その結果、基礎構造体10に使用するAEセンサ40の個数がさらに低減する。
【0070】
[変形例1]
上述の実施形態では、金属板30を横架材20の側面に取り付けた例が説明された。しかしながら、金属板30は、図5に示されるように、横架材20の上面に取り付けられていてもよい。
【0071】
本変形例では、金属板30は、ビス73が挿通されるビス孔を両端部に有する。ビス73は、接続金具70のビス孔及び金属板30のビス孔に挿入され、横架材20と締結されている。すなわち、金属板30は、金属製の接続金具70と接触している。ビス73が、接続金具70及び第1柱22にねじ込まれている。また、ビス80が、金属板30及び横架材20にねじ込まれている。その他の構成は、実施形態の構成と同様である。なお、金属板30と接続金具70とは、接着剤によって接着されていてもよい。
【0072】
白蟻が第1柱22や横架材20を齧ることによって生じたAE波は、第1柱22の内部を伝達し、ビス73によって接続金具70を伝達し、さらには金属板30に伝達され、AEセンサ40によって検知される。また、AE波は、横架材20の内部を伝達し、ビス80によって金属板30に伝達され、AEセンサ40によって検知される。
【0073】
このように、金属板30が横架材20の上面に配置されていても、AEセンサ40は、白蟻が第1柱22や横架材20を齧ることによって生じたAE波を検知することができる。
【0074】
なお、本変形例では、第2柱24が設けられていない例が説明されたが、第2柱24が設けられていてもよい。その場合、金属板30には、第2柱24が挿通される開口が設けられる。或いは、金属板30の端部が上向きに折り曲げられ、折り曲げられた端部及び第2柱24にビス80がねじ込まれる。
【0075】
[変形例2]
上述の実施形態では、ビス80が横架材20にねじ込まれた例が説明された。本変形例では、ビス80が横架材20に加え、第1柱22及び第2柱24にもねじ込まれる例が説明される。すなわち、白蟻が第1柱22或いは第2柱24を齧ることによって生じたAE波が、第1柱22及び第2柱23にねじ込まれたビス80によって金属板30に伝達される例が説明される。
【0076】
本変形例では、図6に示されるように、金属板30の主面が第1柱22の側面に当接するまで金属板30の端が延出方向9に延出されている。ビス80である第4ビス84は、延出方向における金属板30の端部及び第1柱22にねじ込まれている。第4ビス84は、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板30に伝達する。
【0077】
また、本変形例では、第2柱24は、横架材20に継がれている。具体的には、第2柱24は、横架材20の上面から凹む凹部に嵌め込まれ、釘などを用いて横架材20に固定されている。そして、ビス80である第5ビス85は、金属板30及び第2柱24にねじ込まれている。第5ビス85は、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板30に伝達する。
【0078】
図3(B)に示されるように、隣り合う2つの第3ビス83間の距離L8、L9、L10、L11、L12は、実施形態と同様に、検知可能距離の2倍未満とされる。そして、延出方向9における両側の第3ビス83と、延出方向9における横架材20の端との間の距離L13は、検知可能距離未満とされる。第3ビス83は、白蟻が横架材20を齧ることによって生じたAE波を捉えて金属板30に伝達する。その他の構成は、実施形態の構成と同様である。
【0079】
本変形例では、第4ビス84により、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波が金属板30に伝達される。したがって、白蟻が第1柱22を齧ることによって生じたAE波を検知するAEセンサを別途設ける場合に比べ、基礎構造体10に使用するAEセンサ40の個数が低減する。
【0080】
本変形例では、第5ビス85により、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波が金属板30に伝達される。したがって、白蟻が第2柱24を齧ることによって生じたAE波を検知するAEセンサを別途設ける場合に比べ、基礎構造体10に使用するAEセンサ40の個数が低減する。
【0081】
[その他の変形例]
上述の実施形態では、棒材の一例としてビス80が説明された。しかしながら、ビス80に代えて、金属製の釘やピンなどが用いられてもよい。さらに、金属板30の表面を加工して形成した刺状の突出とすることもできる。
【符号の説明】
【0082】
10・・・基礎構造体
11・・・布基礎
13・・・立上り
15・・・天面
20・・・横架材
22・・・第1柱
24・・・第2柱
30・・・金属板
40・・・AEセンサ(センサ)
80、81、82、83、84、85・・・ビス(棒材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6