(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】情報処理装置および車両システム
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20230912BHJP
B60N 2/14 20060101ALI20230912BHJP
A47C 3/18 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/14
A47C3/18 Z
(21)【出願番号】P 2020020440
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 光由
(72)【発明者】
【氏名】久保 大輝
(72)【発明者】
【氏名】野崎 陽介
(72)【発明者】
【氏名】中西 司
(72)【発明者】
【氏名】青山 宏典
(72)【発明者】
【氏名】余合 清嗣
(72)【発明者】
【氏名】杉村 多恵
(72)【発明者】
【氏名】小畠 康宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 武史
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
(72)【発明者】
【氏名】二之夕 紗弥香
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/116461(WO,A1)
【文献】特開2008-089570(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0313208(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行中の車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得することと、
前記車両によって移動するユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得することと、
前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記ユーザが着座する座席の、前記車両に対する回転角を変更するアクチュエータに対して動作指令を発行することと、
を実行する制御部を有
し、
前記車両は、前記座席が設けられた車室ユニットと結合可能に構成され、
前記アクチュエータは、前記車両に結合された前記車室ユニットを、重力方向を軸として回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更する、
情報処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両の進行方向をさらに取得し、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
時刻ごとの太陽の方位角が定義された方位データを記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記方位データと、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記座席に着座している前記ユーザから見た太陽の方角である第二の方角が、前記嗜好データによって指定された方角を維持するよう、前記回転角の算出および前記動作指令の発行を周期的に行う、
請求項1から3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記座席の台座に内蔵され、重力方向を軸として前記座席を回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記制御部は、直射日光が前記車両に当たるか否かを判定するための外部データをさらに取得し、
前記直射日光が前記車両に当たらないと判定した場合に、前記動作指令の発行を停止する、
請求項1から
5のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項7】
車両と、情報処理装置と、を含む車両システムであって、
前記車両は、
ユーザが着座する座席が設けられた車室ユニットと結合可能に構成され、
前記車両に結合された前記車室ユニットを、重力方向を軸として回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更するアクチュエータを有し、
前記情報処理装置は、
前記車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得することと、
前記ユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得することと、
前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記アクチュエータに対して動作指令を発行することと、
を実行する制御部を有する、
車両システム。
【請求項8】
前記車両は、前記情報処理装置に対して進行方向を通知し、
前記制御部は、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出する、
請求項
7に記載の車両システム。
【請求項9】
前記情報処理装置は、時刻ごとの太陽の方位角が定義された方位データを記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、前記方位データと、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出する、
請求項
8に記載の車両システム。
【請求項10】
前記制御部は、前記座席に着座している前記ユーザから見た太陽の方角である第二の方角が、前記嗜好データによって指定された方角を維持するよう、前記回転角の算出および前記動作指令の発行を周期的に行う、
請求項
7から
9のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項11】
前記アクチュエータは、前記座席の台座に内蔵され、重力方向を軸として前記座席を回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更する、
請求項
7から
10のいずれか1項に記載の車両システム。
【請求項12】
前記制御部は、直射日光が前記車両に当たるか否かを判定するための外部データをさらに取得し、
前記直射日光が前記車両に当たらないと判定した場合に、前記動作指令の発行を停止する、
請求項
7から
11のいずれか1項に記載の車両システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両によって移動サービスを提供する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途向けに設計された自動運転車を派遣することでサービスを提供する試みがなされている。例えば、特許文献1には、サービスに対する需要と、車両の稼働状況に基づいて、派遣する車両を決定し、当該車両に対して移動を指令する装置が開示されている。
自動運転車両を派遣することで、ライドシェアサービスなどの各種サービスを低コストで提供することが可能になる。
【0003】
車両に乗車して移動するユーザにとって、直射日光を避けたい、または積極的に直射日光を浴びたいという要望がある。これに関連し、特許文献2には、シートの向きや配置を動的に変更可能な車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-075047号公報
【文献】特開2017-024652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シートの向きや配置を変更することで、一時的には直射日光を避ける等、直射日光のあたり方に関する要望を実現することができる。しかし、シートに対する太陽の向きは、車両の進行方向に応じて変わりうる。
【0006】
本発明は上記の課題を考慮してなされたものであり、車両の乗員に対する直射日光のあたり方に関する要望を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一の様態は、
走行中の車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得することと、前記車両によって移動するユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得することと、前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記ユーザが着座する座席の、前記車両に対する回転角を変更するアクチュエータに対して動作指令を発行することと、を実行する制御部を有する、情報処理装置である。
【0008】
また、本開示の第二の様態は、車両と、情報処理装置と、を含む車両システムである。
具体的には、前記車両は、ユーザが着座する座席の、前記車両に対する回転角を変更するアクチュエータを有し、前記情報処理装置は、前記車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得することと、前記ユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得することと、前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記アクチュエータに対して動作指令を発行することと、を実行する制御部を有する。
【0009】
また、本開示の第三の様態は、
走行中の車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得するステップと、前記車両によって移動するユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得するステップと、前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記ユーザが着座する座席の、前
記車両に対する回転角を変更するアクチュエータに対して動作指令を発行するステップと、
を含む、情報処理方法である。
【0010】
また、他の態様として、上記の情報処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラム、または、該プログラムを非一時的に記憶したコンピュータ可読記憶媒体が挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、車両の乗員に対する直射日光のあたり方に関する要望を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第一の実施形態に係る車両システムの概要図。
【
図2】第一の実施形態に係る車両システムの全体構成を示した図。
【
図8】第二の実施形態に係る車両システムの全体構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本実施形態に係る情報処理装置は、自動運転車両によってユーザの輸送を行うシステムにおいて、当該自動運転車両に搭乗するユーザに対する日当たりを制御するための装置である。
【0014】
本実施形態における車両とは、例えば、複数の車輪と動力を備えた移動体である。車両は、車載されたコンピュータの制御下で自動運転を行う車両であってもよい。このような車両によって、例えば、ライドシェアなどの移動サービスを提供することができる。
【0015】
開口部が大きい車両を運行する場合、直射日光が乗員にとって問題となる場合がある。窓にカーテンを設けることも考えられるが、多人数を乗車させる場合、座席ごとに独立したカーテンを設けることが難しいケースもある。
また、車両の中で、移動中に様々なサービスを提供する形態が考えられるが、サービスの種類によっても、直射日光が問題となる場合がある。例えば、車室にオフィスとしての機能を持たせた場合、直射日光によってコンピュータの画面が見づらくなるといった問題が起こりうる。また、車両内で、化粧やヘアメイクなどのサービスを提供する場合、鏡に反射した日光が、サービス提供の障害となってしまう場合がある。
【0016】
この問題を解決するための、実施形態に係る情報処理装置は、
走行中の車両から見た太陽の方角である第一の方角を取得することと、前記車両によって移動するユーザの、日当たりに関する嗜好を表す嗜好データを取得することと、前記第一の方角と、前記嗜好データと、に基づいて、前記ユーザが着座する座席の、前記車両に対する回転角を変更するアクチュエータに対して動作指令を発行することと、を実行する制御部を有する。
【0017】
第一の方角は、対象車両を基準とした太陽の方角であって、例えば、0~360度の方位によって表すことができる。
嗜好データは、日当たりに関するユーザの嗜好を表す。嗜好データは、例えば、「直射日光を避けたい」、または、「日光に当たりたい」といった、個人の嗜好を表したものである。
制御部は、第一の方角と、嗜好データに基づいて、アクチュエータに対する動作指令を発行する。アクチュエータは、ユーザが着座する座席の、車両に対する回転角を変更するための機構である。制御部がアクチュエータを動作させることで、ユーザから見た太陽の方角を、ユーザの嗜好に合致する任意の方角にすることができる。
【0018】
なお、車両は、居室部であるボディを備えたものであってもよいし、居室部を備えておらず、居室部と結合して走行可能なシャーシであってもよい。
また、アクチュエータは、座席を直接回転させてもよいし、間接的に回転させてもよい。例えば、車両がシャーシ単体である場合、搭載されたボディそのものを回転させることで、車両に対する座席の回転角を変更してもよい。
【0019】
また、前記制御部は、前記車両の進行方向をさらに取得し、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出することを特徴としてもよい。
かかる構成によると、車両の進行方向が変化しても、ユーザから見た太陽の方角が一定になる。車両の進行方向は、実測(例えば、地磁気センサが取得した方位情報)に基づいて決定してもよいし、計画(例えば、車両の予定経路)に基づいて決定してもよい。
【0020】
また、時刻ごとの太陽の方位角が定義された方位データを記憶する記憶部をさらに有し、前記制御部は、前記方位データと、前記進行方向に基づいて、前記第一の方角を算出することを特徴としてもよい。
方位データは、例えば、日付と時刻から太陽の方位角(例えば、真北を0度として、0~360度の範囲で表された角度)を求めるためのデータとすることができる。これにより、正確な太陽の位置を算出することが可能になる。
【0021】
また、前記制御部は、前記座席に着座している前記ユーザから見た太陽の方角である第二の方角が、前記嗜好データによって指定された方角を維持するよう、前記回転角の算出および前記動作指令の発行を周期的に行うことを特徴としてもよい。
これにより、例えば、「常に太陽が背になるようにしたい」といったユーザの要望に応えることが可能になる。
【0022】
また、前記アクチュエータは、前記座席の台座に内蔵され、重力方向を軸として前記座席を回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更することを特徴としてもよい。
例えば、座面と床の間にアクチュエータを配置することで、座席全体を回転可能に構成することができる。
【0023】
また、前記車両は、前記座席が設けられた車室ユニットと結合可能に構成され、前記アクチュエータは、前記車両に結合された前記車室ユニットを、重力方向を軸として回転させることで、前記座席の前記車両に対する回転角を変更することを特徴としてもよい。
車両がシャーシ単体であって、ボディである車室ユニットと接続可能なものである場合、車両に対して車室ユニットを回転させてもよい。かかる構成によると、車両に対する座席の回転角を一括して変更することができる。
【0024】
また、前記制御部は、直射日光が前記車両に当たるか否かを判定するための外部データをさらに取得し、前記直射日光が前記車両に当たらないと判定した場合に、前記動作指令の発行を停止することを特徴としてもよい。
外部データは、例えば、天候を表すデータとすることができる。天候が曇りや雨である
場合、直射日光は問題とならないためである。
【0025】
以下、図面に基づいて、本開示の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本開示は実施形態の構成に限定されない。
【0026】
(第一の実施形態)
第一の実施形態に係る車両システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。本実施形態に係る車両10は、与えられた指令に基づいて自律走行を行う車両プラットフォーム100と、自動運転装置である自動運転プラットフォーム200と、座席の向き(回転角)を制御するための車載装置300を含んで構成される。
【0027】
車両プラットフォーム100は、車両の走行制御を行うコンピュータ(例えば、エンジンECU等)を含むプラットフォームである。車両プラットフォーム100は、制御指令に基づいて動作し、車両情報を生成する。制御指令や車両情報は、例えば、車載ネットワークを流れるCANフレームによって送受信される。
自動運転プラットフォーム200は、車両の自動運転制御を行うコンピュータ(例えば、自動運転ECU)を含むプラットフォームである。自動運転プラットフォーム200は、車両周辺のセンシングを行い、センシング結果に基づいて、車両プラットフォーム100に対する制御指令を生成する。
車載装置300は、車両10と太陽との位置関係に基づいて、車両10が有する座席の向き(回転角)を制御する装置である。
【0028】
次に、システムの構成要素について、詳しく説明する。
図2は、
図1に示した車両システムの構成の一例を概略的に示したブロック図である。車両システムには、車両プラットフォーム100、自動運転プラットフォーム200、車載装置300が含まれており、各構成要素はバスによって通信可能に接続される。
【0029】
車両プラットフォーム100は、車両制御ECU101、ブレーキ装置102、ステアリング装置103、舵角センサ111、車速センサ112を有して構成される。なお、本例ではエンジンを有する車両を例に挙げるが、対象の車両は電気自動車であってもよい。この場合、エンジンECUは、車両の動力を管理するECUに置き換えることができる。なお、車両プラットフォーム100には、図示したもの以外のECUやセンサが備わっていてもよい。
【0030】
車両制御ECU101は、車両が有する構成要素(例えば、エンジン系統コンポーネント、パワートレイン系統コンポーネント、ブレーキ系統コンポーネント、電気系統コンポーネント、ボディ系統コンポーネント等)を制御するコンピュータである。車両制御ECU101は、複数のコンピュータの集合であってもよい。
車両制御ECU101は、例えば、燃料噴射制御を行うことで、エンジンの回転数を制御する。車両制御ECU101は、例えば、乗員の操作(アクセルペダル操作等)によって生成される制御指令(例えば、スロットル開度を指定する指令)に基づいて、エンジンの回転数を制御することができる。
【0031】
また、車両10が電気自動車である場合、車両制御ECU101は、駆動電圧や電流、駆動周波数等を制御することでモータの回転数を制御することができる。この場合も、内燃車両と同様に、乗員の操作によって生成される制御指令に基づいて、モータの回転数を制御することができる。また、ブレーキペダルの踏力や、回生ブレーキの程度を示す制御指令に基づいて、回生電流を制御することができる。
なお、車両10がハイブリッド車両である場合、エンジンに対する制御と、モータに対する制御の双方を行うようにしてもよい。
【0032】
この他、車両制御ECU101は、後述するブレーキ装置102に含まれるアクチュエータ1021を制御することで、機械ブレーキによる制動力を制御することができる。車両ECU101は、例えば、乗員の操作(ブレーキペダル操作等)によって生成される制御指令(例えば、ブレーキペダルの踏力を表す指令)に基づいてアクチュエータ1021を駆動することで、ブレーキ油圧を制御する。
【0033】
また、車両制御ECU101は、後述するステアリング装置103に含まれるステアリングモータ1031を制御することで、ステアリング角度ないし操舵輪の角度(操舵角)を制御することができる。車両ECU101は、例えば、乗員の操作(ステアリング操作等)によって生成される制御指令(例えば、ステアリング角度を表す指令)に基づいてステアリングモータ1031を駆動することで、車両の操舵角を制御する。
【0034】
なお、制御指令は、乗員の操作に基づいて車両プラットフォーム100内で生成されたものであってもよいし、車両プラットフォーム100外で(例えば、自動運転プラットフォーム200によって)生成されたものであってもよい。
【0035】
ブレーキ装置102は、車両が有する機械ブレーキシステムである。ブレーキ装置102は、インタフェース(ブレーキペダル等)、アクチュエータ1021、油圧系統、ブレーキシリンダ等を含んで構成される。アクチュエータ1021は、ブレーキ系統における油圧を制御するための手段である。車両制御ECU101から指令を受けたアクチュエータ1021がブレーキ油圧を制御することで、機械ブレーキによる制動力を確保することができる。
【0036】
ステアリング装置103は、車両が有する操舵システムである。ステアリング装置103は、インタフェース(ステアリングホイール等)、ステアリングモータ1031、ギアボックス、ステアリングコラム等を含んで構成される。ステアリングモータ1031は、操舵操作をアシストするための手段である。車両制御ECU101から指令を受けたステアリングモータ1031が駆動することで、ステアリング操作に必要な力を軽減することができる。また、ステアリングモータ1031を駆動することで、乗員の操作によらないステアリング操作の自動化も可能である。
【0037】
舵角センサ111は、ステアリング操作によって得られた操舵角を検出するセンサである。舵角センサ111によって得られた検出値は、車両制御ECU101に随時送信される。なお、本実施形態とは、操舵角として、タイヤの切れ角を直接表す数値を用いるが、タイヤの切れ角を間接的に表す値を用いてもよい。
車速センサ112は、車両の速度を検出するセンサである。車速センサ112によって得られた検出値は、車両制御ECU101に随時送信される。
【0038】
座席装置121は、車両の乗員が着座する座席を含む。座席装置121は、アクチュエータ1211を有しており、座席を任意の角度に回転させることができる。
図3は、車両が有する車室の斜視図である(壁面および天井は一部省略)。図示したように、座席装置121は、乗員が着座する面を、重力方向を軸として360度回転させることができる。
【0039】
次に、自動運転プラットフォーム200について説明する。
自動運転プラットフォーム200は、車両周辺のセンシングを行い、センシング結果に基づいて、走行に関する計画を生成し、当該計画に従って車両プラットフォーム100に対して制御指令を発行する装置である。自動運転プラットフォーム200は、車両プラットフォーム100と異なるメーカーまたはベンダによって開発されたものであってもよい。
自動運転プラットフォーム200は、自動運転ECU201、センサ群202を有して構成される。
【0040】
自動運転ECU201は、後述するセンサ群202から取得したデータに基づいて自動運転に関する判断を行い、車両プラットフォーム100と通信することで車両を制御するコンピュータである。自動運転ECU201は、例えば、CPU(Central Processing Unit)によって構成される。
自動運転ECU201は、状況認知部2011および自動運転制御部2012の2つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、ROM(Read Only Memory)等の記憶手段に記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0041】
状況認知部2011は、後述するセンサ群202に含まれるセンサによって取得されたデータに基づいて、車両周辺の環境を検出する。検出の対象は、例えば、車線の数や位置、自車両の周辺に存在する車両の数や位置、自車両の周辺に存在する障害物(例えば歩行者、自転車、構造物、建築物など)の数や位置、道路の構造、道路標識などであるが、これらに限られない。自律的な走行を行うために必要なものであれば、検出の対象はどのようなものであってもよい。状況認知部2011が検出した、環境に関するデータ(以下、環境データ)は、後述する自動運転制御部2012へ送信される。
【0042】
自動運転制御部2012は、状況認知部2011が生成した環境データを用いて、自車両の走行を制御する。例えば、環境データに基づいて自車両の走行軌跡を生成し、当該走行軌跡に沿って走行するよう、車両の加減速度および操舵角を決定する。自動運転制御部2012によって決定された情報は、車両プラットフォーム100(車両制御ECU101)へ送信される。車両を自律走行させる方法については、公知の方法を採用することができる。
【0043】
本実施形態では、自動運転制御部2012は、車両の加減速に関する指令(加減速指令)と、車両の操舵角に関する指令(操舵角指令)を生成し、車両プラットフォーム100に送信する。
さらに、自動運転制御部2012は、車両の進行方向を示す情報を車載装置300に送信する。これについては後述する。
【0044】
センサ群202は、車両周辺のセンシングを行う手段であり、典型的には単眼カメラ、ステレオカメラ、レーダ、LIDAR、レーザスキャナなどを含んで構成される。センサ群202には、車両周辺をセンシングする手段のほか、車両の現在位置を取得する手段(GPSモジュール等)などが含まれていてもよい。センサ群202に含まれるセンサが取得したデータは、自動運転ECU201(状況認知部2011)に随時送信される。
【0045】
車載装置300は、太陽の方角と、車両の進行方向に基づいて、座席に着座しているユーザと太陽との位置関係を求める。また、当該ユーザから見た太陽の方角が、当該ユーザの嗜好を満たす範囲となるよう、アクチュエータ1211に対して駆動指令を発行し、当該ユーザが着座している座席を回転させる。
【0046】
車載装置300は、汎用のコンピュータにより構成してもよい。すなわち、車載装置300は、CPUやGPU等のプロセッサ、RAMやROM等の主記憶装置、EPROM、ハードディスクドライブ、リムーバブルメディア等の補助記憶装置を有するコンピュータとして構成することができる。なお、リムーバブルメディアは、例えば、USBメモリ、あるいは、CDやDVDのようなディスク記録媒体であってもよい。補助記憶装置には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、各種テーブル等が格納され、そこに格納されたプログラムを主記憶装置の作業領域にロードして実行し、プログラムの実行
を通じて各構成部等が制御されることによって、後述するような、所定の目的に合致した各機能を実現することができる。ただし、一部または全部の機能はASICやFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0047】
制御部301は、車載装置300が行う制御を司る演算装置である。制御部301は、CPUなどの演算処理装置によって実現することができる。
制御部301は、方位角算出部3011と、回転角制御部3012の2つの機能モジュールを有して構成される。各機能モジュールは、記憶されたプログラムをCPUによって実行することで実現してもよい。
【0048】
方位角算出部3011は、後述する記憶部303に記憶されたデータ(太陽の方位角を記録した方位データ)に基づいて、太陽の方位角(真北を基準とした方位角)を取得する。また、自動運転プラットフォーム200から取得したデータ(車両10の進行方向)に基づいて、車両10から見た太陽の方位角を算出する。
以降の説明においては、車両10を基準とした太陽の方位角(すなわち、車両10から見た太陽の方位角。第一の方角とも言う)を太陽角度と称する。
【0049】
回転角制御部3012は、方位角算出部3011が算出した太陽角度と、車両10に乗車している乗員の、日当たりに関する嗜好と、に基づいて、日当たりが当該嗜好と一致するような座席の回転角を算出する。そして、当該回転角に基づいて、座席装置121が有するアクチュエータ1211を駆動させる指令を生成し、送信する。
座席の回転角は、例えば、車両10の進行方向を0度として、0~360度の範囲で表される。
【0050】
入出力部302は、情報の入出力を行うためのインタフェースである。入出力部302は、例えば、ディスプレイ装置やタッチパネルを有して構成される。入出力部302は、キーボード、カメラ、スピーカ、タッチスクリーンなどを含んでいてもよい。
【0051】
記憶部303は、主記憶装置と補助記憶装置を含んで構成される。主記憶装置は、制御部301によって実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータが展開されるメモリである。補助記憶装置は、制御部301において実行されるプログラムや、当該制御プログラムが利用するデータ(例えば、方位データ)が記憶される装置である。
【0052】
図4は、記憶部303に記憶される方位データの例である。方位データは、時刻および日付をキーとして太陽の方位角を算出するためのデータであって、例えば、図示したようなテーブルとすることができる。図示した例では、太陽の方位角が時刻および日付ごとに定義されている。なお、太陽の方位角は場所(緯度および経度)によって異なるため、場所ごとに方位データを保持してもよい。また、方位データは、数式であってもよい。
【0053】
図5は、制御部301が入出力するデータを例示した図である。
方位角算出部3011は、自動運転プラットフォーム200(自動運転制御部2012)から、現在の車両10の進行方向を表すデータを取得する。車両の進行方向は、例えば、地磁気センサ等を用いて取得してもよいし、走行予定の経路と現在位置に基づいて算出してもよい。車両の進行方向は、例えば、真北を基準とした方位角によって表される。
【0054】
さらに、方位角算出部3011は、記憶部303から方位データを取得し、車両10が走行している地点(緯度および経度)、時刻、日付に基づいて、現在の太陽の方位角を算出する。
【0055】
続いて、方位角算出部3011は、算出した太陽の方位角と、車両10の進行方向に基
づいて、太陽角度を算出する。これにより、車両を基準とした座標系における太陽の方位角が算出される。例えば、
図6(A)に示したように、真北を基準とした太陽の方位角が150度であって、真北を基準とした車両の進行方向(方位角)が45度である場合、車両を基準とした(車両から見た)太陽の方位角は105度となる。算出された値は、回転角制御部3012へ送信される。
【0056】
回転角制御部3012は、太陽角度と、対応する座席に着座しているユーザの嗜好に基づいて、車両10に対する座席の回転角を決定する。
ユーザの嗜好とは、例えば、以下のようなものが挙げられる。
図6(B)は、ユーザに対する太陽の方位角を説明する図である。
・太陽を背面に配置したい(90度以上270度未満)
・太陽を正面に配置したい(270度以上90度未満)
・太陽を左半身に配置したい(0度以上180度未満)
・太陽を右半身に配置したい(180度以上360度未満)
・太陽が配置される角度を詳細に指定したい
例えば、太陽角度が105度である場合であって、ユーザの背面(180度)に太陽を配置したい場合、座席の回転角を-75度とすればよい。
【0057】
ユーザの嗜好を表すデータ(嗜好データ)は、ユーザが車両10に搭乗する前に取得することができる。例えば、車両10がライドシェア車両である場合、ユーザが乗車を予約する際に、ユーザ端末から管理サーバへ嗜好データを送信し、管理サーバが車載装置300に当該嗜好データを転送してもよい。また、この際、ユーザの識別子、または、着座予定の座席の識別子を同時に伝送するようにしてもよい。
さらに、座席が指定されていない場合、ユーザが車両10に乗車する際に、ユーザと座席を紐付けるためのデータを、入出力部302を介して取得してもよい。
【0058】
回転角制御部3012は、座席の回転角を指定する駆動指令を座席装置121(アクチュエータ1211)へ送信する。
以上に説明した処理を周期的に実行することで、ユーザに対する太陽の角度を常に所望の値に維持することができる。
【0059】
図7は、車載装置300(制御部301)が行う処理のフローチャートである。当該処理は、車両10が走行を開始するタイミングで実行される。なお、車両10に搭乗しているユーザが複数いる場合、以下に例示するステップをユーザごとに実行してもよい。
【0060】
まず、ステップS11で、回転角制御部3012が、ユーザに対応する嗜好データを取得する。嗜好データは、車両10の運行を管理するサーバ装置から取得してもよいし、ユーザが所持する端末から取得してもよい。また、車室内に備えられたインタフェース装置(入出力部302)から取得してもよい。
【0061】
ステップS12では、方位角算出部3011が、車両10の進行方向と、車両10が走行する場所および日時に対応する方位データを取得し、太陽角度を算出する。
次に、ステップS13で、回転角制御部3012が、太陽角度と嗜好データに基づいて、必要な座席の回転角を算出する。
【0062】
ステップS14では、回転角制御部3012が、座席の回転角を変更する必要があるか否かを判定する。例えば、以下のような場合、回転角を変更する必要が無いと判定する。(1)算出した回転角が、嗜好データが示す範囲から外れていない場合
これにより、座席を回転させる頻度を抑制することができる。
(2)方位データが示している太陽の仰角が、所定の値より小さい場合
(3)その他、直射日光が車両10に当たらないと想定できる場合
例えば、太陽の高度が十分に低い場合や、天候が晴れ以外である場合、直射日光が問題とならないためである。
ステップS14で肯定判定となった場合、処理はステップS15へ進む。ステップS14が否定判定となった場合、座席を回転させる必要はないと判定し、ステップS12へ戻る。
なお、制御部301は、(3)の判定を行うための追加の外部データを取得可能に構成されていてもよい。外部データは、例えば、天候を示すデータ等とすることができるが、直射日光がユーザに当たるか否かを判定することができれば、これ以外であってもよい。
【0063】
ステップS15では、回転角制御部3012が、アクチュエータ1211に対する駆動指令を生成し、送信する。これにより、ユーザが着座している座席が、嗜好データと整合するように回転する。
【0064】
以上説明したように、第一の実施形態に係る車載装置300は、日当たりに関するユーザの嗜好を満たすように、当該ユーザが着座する座席の回転角を変更する。かかる構成によると、ユーザにとって快適な移動環境を提供することができる。さらに、
図7に示した処理を反復することで、ユーザに対する太陽の角度を、ユーザが所望する値に維持することができる。
【0065】
(第二の実施形態)
第一の実施形態では、座席装置121に内蔵されたアクチュエータ1211によって、ユーザが着座する座席を回転させた。これに対し、第二の実施形態は、シャーシとボディ(車室ユニット)を分離可能にし、ボディそのものを回転させる実施形態である。
【0066】
図8は、第二の実施形態に係る車両システムの概要図である。第二の実施形態に係る車両は、走行を行うためのユニットであるシャーシユニット20と、居室部を有するユニットである車室ユニット30から構成される。
図9(A)は、第二の実施形態に係る車両の外観を示した図である(壁面の一部は省略)。
【0067】
車室ユニット30は、ユーザが乗車するためのユニットであって、所定の設備を有するユニットである。所定の設備として、例えば、座席、テーブル、照明、空調設備などが挙げられるが、車室に備えられる設備であれば、これ以外であってもよい。
【0068】
シャーシユニット20と車室ユニット30は、用途に応じて結合および分離することができる。例えば、定員の異なるシャーシユニット20を交換することで、輸送人数に合った車両を組成することができる。また、用途の異なるシャーシユニット20に載せ替えることで、車両の用途を変更することができる。
シャーシユニット20と車室ユニット30の結合および分離は、外部のサーバ装置によって制御されてもよいし、シャーシユニット20または車室ユニット30が制御してもよい。また、結合および分離は、所定の装置(リフト等)によって行ってもよい。
【0069】
第一の実施形態では、座席装置121にアクチュエータ1211が設けられていたが、第二の実施形態では、アクチュエータ1211の代わりに、シャーシユニット20に、車室ユニット30を回転させるためのアクチュエータ400が設けられる。
図9(B)は、アクチュエータ400によって車室ユニット30を回転させた状態を示した図である。
【0070】
第二の実施形態では、回転角制御部3012が、アクチュエータ400に対して駆動指令を発行する。車載装置300が実行するその他の処理は、第一の実施形態と同様である
。
第二の実施形態によると、それぞれの座席ではなく、車室全体を回転させるため、車室内のユーザに与える違和感を抑制することができる。
【0071】
(変形例)
上記の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施しうる。
例えば、本開示において説明した処理や手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0072】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0073】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク・ブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、光学式カード、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0074】
100・・・車両プラットフォーム
200・・・自動運転プラットフォーム
201・・・自動運転ECU
202・・・センサ群
300・・・車載装置
301・・・制御部
302・・・入出力部
303・・・記憶部