(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】乗物用内装材
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20230912BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60R13/02 B
B60R21/207
(21)【出願番号】P 2020029170
(22)【出願日】2020-02-25
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 大造
(72)【発明者】
【氏名】小池 陽平
(72)【発明者】
【氏名】砂田 大貴
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-189843(JP,A)
【文献】特開2016-124381(JP,A)
【文献】特開2014-046784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
B60R 21/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグが搭載された乗物に使用される乗物用内装材であって、
乗物室内側の側面を構成する第1板状部材と、前記乗物の前後方向における前記第1板状部材の後方側に前記第1板状部材と連なって配され、後方側を向く後面を構成する第2板状部材と、を備え、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との境界部は、前記後面に配されており、
前記境界部には、展開された前記エアバッグが後方側から押圧されるようになっており、
前記第1板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がる第1移動規制部が設けられており、
前記第2板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がるとともに前記第1移動規制部と当接することで、前記第1板状部材および前記第2板状部材の相対的な移動を規制する第2移動規制部が設けられて
おり、
前記第1板状部材および前記第2板状部材は複数の締結部において締結されており、前記第1移動規制部および前記第2移動規制部は、隣接する前記締結部の間に設けられている乗物用内装材。
【請求項2】
エアバッグが搭載された乗物に使用される乗物用内装材であって、
乗物室内側の側面を構成する第1板状部材と、前記乗物の前後方向における前記第1板状部材の後方側に前記第1板状部材と連なって配され、後方側を向く後面を構成する第2板状部材と、を備え、
前記第1板状部材と前記第2板状部材との境界部は、前記後面に配されており、
前記境界部には、展開された前記エアバッグが後方側から押圧されるようになっており、
前記第1板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がる第1移動規制部が設けられており、
前記第2板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がるとともに前記第1移動規制部と当接することで、前記第1板状部材および前記第2板状部材の相対的な移動を規制する第2移動規制部が設けられており、
前記第2移動規制部には前記第1移動規制部を抜き差し可能に貫通させる貫通孔が設けられており、前記貫通孔の内周面はその周方向の全体にわたって延びており、前記内周面と前記第1移動規制部とが当接することで、前記第1板状部材および第2板状部材の相対的な移動が規制されるようになっている乗物用内装材。
【請求項3】
前記第2板状部材には、前記第1板状部材に沿うように配されて前記乗物のボディパネルに取り付けるための装着部が設けられており、前記第1移動規制部は、前記装着部と重畳する位置に設けられている請求項1
または請求項2に記載の乗物用内装材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、エアバッグが搭載された乗物に使用される乗物用内装材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等の車両においては、大きな衝撃力が作用した場合に、その衝撃から乗員の保護を図るためのエアバッグ装置が採用されている。例えば下記特許文献1には、車両側方からの衝突により車両のボディサイド部に所定値以上の衝撃が加わったとき、ボディサイド部と車室内に配置された車両用シートとの間に展開膨張されるようにしたサイドエアバッグ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両用パネルの室内側に配されて室内意匠面を構成する内装材は、複数の板状部材を組み付けることによって構成されている。そしてこれらの板状部材間は、スクリュー締結やカシメ締結等により互いに固定されるようになっている。しかし、これらの締結箇所は自由に設定できるわけでなく、内装材と車両用パネルとの間に配される種々の装置や部品と干渉しないように設ける必要がある。その結果、隣り合う締結部間の距離が他の部分と比較して長くなる場合がある。
【0005】
一方、エアバッグが乗員と内装材との間に展開膨張した際に、エアバッグは、内装材を強い力で押圧する。この結果、押圧された内装材のうち、比較的距離が長い締結部間が変形して、隣り合う板状部材間に段差が生じる場合がある。そして、エアバッグが押圧される部分にこのような段差が生じた場合、エアバッグは、その一部が段差に引っかかったり、段差の間に生じた隙間中に入り込んだりすることによって、展開速度に遅延が生じたり、設定した方向とは異なる方向に展開することが懸念される。
【0006】
本明細書に開示される技術は上記事情に鑑みてなされたものであって、エアバッグが搭載された乗物に使用される乗物用内装材において、乗物用内装材を構成する複数の板状部材間の位置ずれを抑制することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、エアバッグが搭載された乗物に使用される乗物用内装材であって、乗物室内側の側面を構成する第1板状部材と、前記乗物の前後方向における前記第1板状部材の後方側に前記第1板状部材と連なって配され、後方側を向く後面を構成する第2板状部材と、を備え、前記第1板状部材と前記第2板状部材との境界部は、前記後面に配されており、前記境界部には、展開された前記エアバッグが後方側から押圧されるようになっており、前記第1板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がる第1移動規制部が設けられており、前記第2板状部材には、その乗物室外側の板面から立ち上がるとともに前記第1移動規制部と当接することで、前記第1板状部材および前記第2板状部材の相対的な移動を規制する第2移動規制部が設けられている。
【0008】
上記構成によれば、展開膨張したエアバッグが、乗物用内装材を前方に向けて強い力で押圧した場合でも、エアバッグを受ける第2板状部材の第2移動規制部が第1移動規制部と当接することにより、第2板状部材が第1板状部材に対して相対的に移動することが規制されるようになっている。つまり、第1板状部材と第2板状部材とが位置ずれして、それらの間に段差や隙間が生じることが抑制される。これにより、エアバッグの一部が段差に引っかかったり、隙間中に入り込んだりすることが回避され、エアバッグの展開速度に遅延が生じたり、設定した方向とは異なる方向に展開することが抑制される。
【0009】
前記第2移動規制部には前記第1移動規制部を抜き差し可能に貫通させる貫通孔が設けられており、前記貫通孔の内周面と前記第1移動規制部とが当接することで、前記第1板状部材および第2板状部材の相対的な移動が規制されるようになっていてもよい。
【0010】
このような構成によれば、第2移動規制部はその貫通孔の内周面が第1移動規制部に当接することでその周方向の全体にわたって第1移動規制部との相対的な移動が規制されるから、第1の板状部材と第2の板状部材とが位置ずれすることをより確実に抑制することができる。
【0011】
前記第1板状部材および前記第2板状部材は複数の締結部において締結されており、前記第1移動規制部および前記第2移動規制部は、隣接する前記締結部の間に設けられていてもよい。
【0012】
このような構成によれば、設計上の問題等により、隣接する締結部を離れて設けなくてはならない場合でも、それらの隣接する締結部の間は、第1移動規制部および第2移動規制部が互いに当接することで、第1の板状部材および第2の板状部材が正規の配置とされるようになっている。すなわち、隣接する締結部の間がエアバッグにより押圧された場合でも、第1板状部材および第2板状部材の位置ずれを抑制することができる。
【0013】
前記第2板状部材には、前記第1板状部材と沿うように配されて前記乗物のボディパネルに取り付けるための装着部が設けられており、前記第1移動規制部は、前記装着部と重畳する位置に設けられていてもよい。
【0014】
このような構成によれば、第1板状部材と第2板状部材との締結作業が装着部が邪魔になって困難であったり、設計上の理由により締結部が設けられない場合でも、第1移動規制部および第2移動規制部の当接によって、第1板状部材および第2板状部材の位置ずれを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書に開示される技術によれば、乗物用内装材を構成する複数の板状部材間の位置ずれを抑制することができる。これにより、乗物衝突時の衝撃によるエアバッグの展開が妨げられることが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施例のドアトリムを搭載した車両を車室内側からの視点において示す図
【
図2】ドアトリムを車室外側からの視点において示す一部拡大図
【
図3】エアバッグが展開した場合のドアトリムの
図2におけるA-A線の断面図
【
図4】他の実施形態のエアバッグが展開した場合のドアトリムの断面図
【
図5】従来のエアバッグが展開した場合のドアトリムの断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、一実施形態を、
図1から
図3を参照しつつ詳しく説明する。なお、本明細書に開示される技術は、下記の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。また、以下においては、
図1の左側を前方、右側を後方、上側を上方、下側を下方として説明する。
【0018】
本実施形態の乗物用内装材の一例であるドアトリム10を搭載した車両を、
図1に示す。ドアトリム10は、車両用のサイドドア11の車室内側部分を構成するものであって、車室内のシート12の側方に配されるとともに、車両のピラー(Bピラー)13の前方に配されている。なお、シート12は、シートクッション12Aと、シートバック12Bと、ヘッドレスト12Cと含んで構成されている。そして、そのシート12には、サイドエアバッグ14が内蔵されている。詳しく言えば、シートバック12Bの側面(サイドドア11側の面)にサイドエアバッグ14が内蔵されており、車両に側方からの衝撃が加わった場合には、
図1に示すように、前方に向かって飛び出して乗員とサイドドア11との間に拡がり、乗員への衝撃を緩和するものである。また、ピラー13には、車室内側からピラーガーニッシュ15が取り付けられている。
【0019】
ドアトリム10は、車室外側部分を構成するドアパネル16に対して、車室内側から取り付けられる。詳しく言えば、ドアパネル16は、車室外側に配されたドアアウタパネル(図示せず)と、ドアアウタパネルの車室内側に配されたドアインナパネル16Aとからなり、ドアトリム10は、後述するクリップ26によってドアインナパネル16Aに取り付けられている(
図3参照)。
【0020】
ドアトリム10は、
図1に示すように、トリムボード20を主体として構成され、そのトリムボード20に加えて、トリムボード20上に設けられたインサイドハンドル21、アームレスト22、ドアグリップ23、スピーカグリル24およびドアポケット25等の各種機能部品を含んで構成される。トリムボード20は、複数の板状部材が互いに組み付けられたものであり、主として、ロアボード30(第2板状部材の一例)、アッパボード40、アームレストボード50(第1板状部材の一例)およびドアポケットボード(図示省略)によって構成される。上記のインサイドハンドル21は、ロアボード30の上方側に設けられている。アームレスト22およびドアグリップ23は、アームレストボード50がロアボード30の中央付近(トリムボード20のほぼ中央)に締結されることによって形成され、ドアグリップ23は、アームレスト22の車両前方側に配されている。また、スピーカグリル24は、ロアボード30の下方前側に設けられている。ドアポケット25は、図示は省略するが、ドアポケットボードがロアボード30の車室外側に締結されることによって、形成されている。
【0021】
ロアボード30およびアッパボード40は、車両前後方向に長い略長方形の板状部材である。ロアボード30は、概ねトリムボード20の車両下方側の部分をなし、アッパボード40は、トリムボード20の車両上方側の部分をなす。また、アームレストボード50は、ロアボード30およびアッパボード40の間に位置しており、ドアトリム10においてその後端から前方に向けて約2/3の範囲に細長く張り出すように組み付けられている。すなわち、ドアトリム10の前方側約1/3の範囲はアッパボード40とロアボード30とが直接組み付けられており、アームレストボード50は、後方側約2/3の範囲において前方側に突出するU字形状をなしてアッパボード40とロアボード30の双方と組み付けられている。このアームレストボード50は、基材51の車室内側の面に表皮材52が貼付されてなる(
図3参照)。
【0022】
図2は、車両前後方向の後端部におけるロアボード30とアームレストボード50との組み付け部分の一部を、車室外側から視た一部拡大図である。ロアボード30は、車両のサイドドア11の下方側の部分において車両の前後方向に延びて車室内側の側面10Aの一部を構成する板状の本体部31を有している。本体部31のうち、後端から下端および前端にわたる縁部、すなわち、上端を除く周縁部には、車室外側に向けて立ち上がる立ち上がり部32Aと、この立ち上がり部32Aからさらに外周側に向けて断面クランク状に屈曲した突き当て部32Bとを備える立壁部32が設けられている。この立壁部32は、本体部31の後端の上端縁から、ドアパネル16の周縁部に沿うように上方に向けて延びている。以下、立壁部32のうち本体部31の後端の上端縁から上方に向けて延びている部分を、延設部33(第2板状部材の一例)と称することとする。延設部33は、ドアトリム10の後面10Bの一部を構成する帯状の部分である。
【0023】
本体部31の上端縁と、立壁部32のうち延設部33の前端縁には、それぞれ、縁部からドアトリム10の内周側に向けて張り出す取付片34A,34Bが設けられている。つまり、取付片34A,34Bは、本体部31および延設部33からそれぞれ本体部31の板面に沿う方向に張り出している。このうち、延設部33に設けられた取付片34Bは、その板面が延設部33の立ち上がり部32Aの板面と交差する方向に配されている。そして、取付片34A,34Bの車室内側にはアームレストボード50の端部が重畳されており、アームレストボード50から車室外側(ロアボード30側)に向けて突出する複数の円筒状の取付ボスが取付片34に設けられた複数の取付孔に挿通されるとともに、取付ボスにビスがねじ込まれることにより、ロアボード30とアームレストボード50とが締結されている。以下、ロアボード30とアームレストボード50とが締結されている部分を、締結部27と称することとする。
【0024】
なお、アームレストボード50の後端は車室外側に湾曲しており、ロアボード30とアームレストボード50とが締結部27により締結されている状態において、アームレストボード50の端縁部は、ロアボード30(延設部33)の端縁部に突き当てられている。すなわち、延設部33とアームレストボード50との車両後方側における境界部Bは、ドアトリム10の後面10Bに配されている(
図3参照)。
【0025】
図2に示す複数の締結部27のうち、本体部31側の取付片34Aの後端に配された締結部27Aと、この締結部27Aと隣接する、延設部33側の取付片34Bに設けられた締結部27Bとの間には、クリップ座35(装着部の一例)が設けられている。このクリップ座35は、延設部33の立ち上がり部32Aからドアトリム10の内周側に向けて張り出した箱形をなしており、ドアトリム10の内周側の面が開放されている。このようなクリップ座35がドアトリム10(ロアボード30)の周方向に複数設けられており、これらのクリップ座35の車室外側の壁部に取り付けられたクリップ26によって、ドアトリム10がドアパネル16に対して取り付けられるようになっている。
【0026】
本実施形態の車両には、上述したように、シートバック12Bの側部にエアバッグ14が備えられており、車両に大きな衝撃が加えられた場合には、エアバッグ14がシート12の側方からサイドドア11と乗員との間、すなわち、シート12の側方から前方に向けて展開膨張するようになっている。そして、展開膨張したエアバッグ14は、
図3に示すように、サイドドア11(ドアトリム10)のうち、ロアボード30とアームレストボード50との境界部Bであって上述したクリップ座35のひとつが設けられている後面10Bを、後方側から押圧するようになっている。
【0027】
一方、延設部33のうちクリップ座35が設けられる位置においては、締結部27の締結作業の際にクリップ座35が邪魔となって作業が行い難いあるいは行えないため、ロアボード30とアームレストボード50との締結部27が設けられない領域とされている。つまり、上述した一の締結部27Aと、この締結部27Aとクリップ座35を挟んで隣り合う締結部27Bとの間の距離を短くすることが難しい、あるいはできない部分とされている。以下、トリムボード20のうち、この締結部27Aと、クリップ座35を挟んで隣り合う締結部27Bとの間を、撓み可能部分Pと称することとする。
【0028】
図5は従来のドアトリム210を示す断面図であって、
図2に示す本実施形態のドアトリム10のA-A断面に相当する断面図である。エアバッグ14が展開膨張してドアトリム210の撓み可能部分Pに到達し、ドアトリム210を強い力で押圧すると、押圧されたドアトリム210のうちロアボード230とアームレストボード250との境界部の、特に撓み可能部分Pにおいて撓みが発生し、ロアボード230とアームレストボード250との間に変形による段差や隙間が生じる場合がある。そして、このような段差や隙間が生じた場合、ドアトリム210に押し付けられたエアバッグ14は、その一部が段差に引っ掛かったり、段差の間に生じた隙間中に入り込んだりすることによって、設定した方向とは異なる方向に展開したり、展開速度に遅延が生じることが懸念される。
【0029】
これに対し、本実施形態のドアトリム10は、以下の構成を備えている。
図3は
図2におけるA-A断面図であって、アームレストボード50には、車室外側の面から立ち上がるとともにロアボード30(延設部33)に沿って延びる略円筒状の貫通ボス55(第1移動規制部の一例)が設けられており、ロアボード30の延設部33に設けられた取付片34Bには、貫通ボス55を抜き差し可能に貫通させる貫通孔37が設けられている。
【0030】
このような本ドアトリム10が搭載された車両に対して、他の車両が衝突し、エアバッグ14が展開膨張した場合を考える。そのような場合には、展開膨張したエアバッグ14はドアトリム10の後方側からロアボード30の延設部33とアームレストボード50との境界部Bに到達し、ドアトリム10の後面10Bを強い力で押圧する。このため、ドアトリム10の後面10Bを構成する延設部33がその力を受けて変形し、延設部33とアームレストボード50との間に段差や隙間が生じる虞がある。
【0031】
しかし、本実施形態のドアトリム10においては、
図3に示すように、エアバッグ14を受ける延設部33の取付片34Bに設けられた貫通孔37に、アームレストボード50の貫通ボス55が貫通されており、貫通孔37の内周面37A(第2移動規制部の一例)が貫通ボス55と当接することにより、延設部33がアームレストボード50に対して位置ずれすることが規制されるようになっている。つまり、延設部33とアームレストボード50との間に段差や隙間が生じることが抑制される。これにより、エアバッグ14の一部が段差に引っかかったり、隙間中に入り込んだりすることが回避され、エアバッグ14の展開速度に遅延が生じたり、設定した方向とは異なる方向に展開することが抑制される。
【0032】
このように、本実施形態のドアトリム10は、乗物室内側の側面10Aを構成するアームレストボード50と、アームレストボード50の後方側にアームレストボード50と連なって配され、後方側を向く後面10Bを構成する延設部33と、を備え、アームレストボード50と延設部33との境界部Bは、後面10Bに配されており、境界部Bには、展開されたエアバッグ14が後方側から押圧されるようになっており、アームレストボード50には、その車両室外側の板面から立ち上がる貫通ボス55が設けられており、延設部33には、その車両室外側の板面から立ち上がる取付片34が設けられるとともに、当該取付片34に貫通ボス55を抜き差し可能に貫通させる貫通孔37が設けられており、貫通孔37の内周面37Aと貫通ボス55とが当接することで、アームレストボード50と延設部33との相対的な移動を規制されるようになっている。
【0033】
このような構成によれば、展開膨張したエアバッグ14が、ドアトリム10を前方に向けて強い力で押圧した場合でも、エアバッグ14を受けるロアボード30の延設部33の取付片34に設けられた貫通孔37の内周面37Aが貫通ボス55と当接することにより、延設部33がアームレストボード50に対して相対的に移動することが規制されるようになっている。つまり、アームレストボード50とロアボード30の延設部33とが位置ずれして、それらの間に段差や隙間が生じることが抑制される。これにより、エアバッグ14の一部が段差に引っかかったり、隙間中に入り込んだりすることが回避され、エアバッグ14の展開速度に遅延が生じたり、設定した方向とは異なる方向に展開することが抑制される。また、従来の構成と比較して、製造工程や部品点数が増えることもない。しかも、当接面は貫通孔37の内周面37Aであるから、その周方向の全体にわたって貫通ボス55の相対的な移動が規制されるようになっており、アームレストボード50とロアボード30の延設部33とが位置ずれすることをより確実に規制することができる。
【0034】
また、アームレストボード50とロアボード30とは複数の締結部27において締結されており、貫通ボス55および貫通孔37は、隣接する締結部27の間に設けられている。
【0035】
このような構成によれば、設計上の問題等により、隣接する締結部27を離れて設けなくてはならない場合でも、それらの隣接する締結部27の間は、貫通ボス55および貫通孔37の内周面37Aが互いに当接することで、アームレストボード50および延設部33が正規の配置とされるようになっている。すなわち、隣接する締結部27の間がエアバッグ14により押圧された場合でも、アームレストボード50およびロアボード30の延設部3の位置ずれを抑制することができる。
【0036】
また、ロアボード30の延設部33には、貫通ボス55と沿うように配されて乗物のドアパネル16に取り付けるためのクリップ座35が設けられており、貫通孔37は、クリップ座35と重畳する位置に設けられている。
【0037】
このような構成によれば、アームレストボード50とロアボード30の延設部33との締結作業がクリップ座35が邪魔になって困難であったり、設計上の理由により締結部27が設けられない場合でも、貫通ボス55と貫通孔37の内周面37Aとの当接によって、アームレストボード50とロアボード30の延設部33との位置ずれを抑制することができる。
【0038】
<他の実施形態>
本明細書に開示される技術は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)上記実施形態では、乗物用内装材として車両用のドアトリムを例示したが、これに限定されない。本明細書に開示される技術は、ドアトリム以外の車両用内装材(例えば、インストルメントパネルやルーフパネルなど)や、車両以外の種々の乗物に搭載される乗物用内装材について適用することが可能である。
【0040】
(2)上記実施形態では、延設部33の取付片34Bにアームレストボード50の貫通ボス55を貫通させるための貫通孔37を設ける構成を示したが、
図4に示すドアトリム110のように、単に、ロアボード130の延設部133の取付片134Bの先端をアームレストボード150に設けたボス155に当接させる構成としてもよい。
【0041】
(3)貫通ボスは、クリップ座35と重畳しない位置に設ける構成とすることもできる。
【0042】
(4)第1移動規制部および第2移動規制部は、隣接する締結部の間に複数個所設ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…ドアトリム(乗物用内装材)、10A…側面、10B…後面、12…シート、14…エアバッグ、16…ドアパネル(ボディパネル)、20…トリムボード、27…締結部、30…ロアボード(第2板状部材)、33…延設部(第2板状部材)、34…取付片、35…クリップ座(装着部)、37…貫通孔、37A…内周面(第2移動規制部)、50…アームレストボード(第1板状部材)55…貫通ボス(第1移動規制部)、B…境界部