(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】センサユニット及びセンサユニットの較正方法
(51)【国際特許分類】
G01D 18/00 20060101AFI20230912BHJP
G08C 25/00 20060101ALI20230912BHJP
G08C 15/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01D18/00
G08C25/00 H
G08C15/00 E
(21)【出願番号】P 2020039695
(22)【出願日】2020-03-09
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140899
【氏名又は名称】竹本 如洋
(72)【発明者】
【氏名】山岸 将照
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-321620(JP,A)
【文献】特開2012-105011(JP,A)
【文献】国際公開第2016/147267(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 18/00
G01D 21/00-21/02
G08C 15/00-25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作モードを切り換えるボタンを備えた、互いに通信可能な複数のセンサユニットにおける較正方法であって、
前記ボタンの操作によって送信モードにした前記センサユニットの1つから
、前記ボタンの操作によって受信モードにした他のセンサユニットへ測定データを送信し、該他のセンサユニットで当該測定データを記憶するステップと、
当該ステップを、
前記送信モードにするセンサユニットと前記受信モードにするセンサユニットとを前記ボタンの操作によって切り換えて実行し、全ての前記センサユニットの前記測定データを全ての前記センサユニットにおいて記憶するステップと、
各前記センサユニットにおいて、記憶された全ての前記センサユニットの前記測定データに基づいて基準データを算出し、当該基準データ及び自身の前記測定データに基づいて算出された補正データを記憶するステップと、を有する較正方法。
【請求項2】
前記補正データに基づいて自身の前記測定データを補正した補正後測定データを算出し、
該補正後測定データを送信する
ステップをさらに有する、
請求項1に記載の較正方法。
【請求項3】
マスタとスレーブを切り換えるボタンを備えた、互いに通信可能な複数のセンサユニットにおける較正方法であって、
前記ボタンの操作によって前記センサユニットのうちの1つをマスタに設定すると共に
、前記ボタンの操作によって他のセンサユニットをスレーブに設定し、前記スレーブのセンサユニットから測定データを送信するステップと、
前記マスタのセンサユニットにおいて、複数の前記スレーブのセンサユニットから受信した前記測定データ及び前記マスタのセンサユニットの
測定データに基づいて基準データを算出し、当該基準データを複数の前記スレーブのセンサユニットへ送信するステップと、
各前記スレーブのセンサユニットにおいて、前記基準データと前記スレーブのセンサユニットの前記測定データとに基づいて補正データを算出し、当該補正データを記憶するステップと、を有する較正方法。
【請求項4】
各前記スレーブのセンサユニット
において、前記補正データに基づいて各前記スレーブのセンサユニットの前記測定データを補正した補正後測定データを算出し、当該補正後測定データを送信するステップを
さらに有する、請求項3に記載の較正方法。
【請求項5】
前記基準データは、複数の前記測定データの平均値に基づいて算出される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の較正方法。
【請求項6】
前記測定データは、温度センサ、湿度センサ、気圧(高度計測)センサ、照度センサ、紫外線センサ、騒音センサ、ガスセンサの少なくとも1つから取得された温度、湿度、気圧(高度)、照度、紫外線、騒音、ガス濃度の少なくとも1つの測定データである、
請求項1~5のいずれか1項に記載の較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する発明は、温湿度、気圧、照度などの各種センサを備えるセンサユニット及びセンサユニットの較正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一例として、湿度センサユニットの較正技術が特許文献1に、温度センサユニットの較正技術が特許文献2に、それぞれ開示されている。これらのセンサ較正技術は、個々のセンサユニットについて、出荷時や定期点検のときに較正用の環境を設定して測定データを取得し、その測定データの誤差から個体ごとに較正を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-062199
【文献】特開2006-105870
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば一つの工場で同種のセンサユニットを多数使用するシステムを構築した場合、設置した多くのセンサユニットの間に多少の個体差が発生することは避けられない。すなわち、その個々のセンサユニットは上記従来技術等によってそれぞれが較正されているが、このような個別の較正技術では相対的な個体差を吸収することができないし、安価なセンサユニットであればそもそも精度が低くて個体にバラツキがあるという状況も考察される。
このような背景に鑑みて本発明では、センサユニット同士が通信を行うことでセンサユニット間の個体差の補正を行うセンサユニット及びその較正方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、センサと、該センサの測定データを処理する処理モジュールと、通信モジュールとを備えた第1のセンサユニットであって、前記通信モジュールは、前記第1のセンサユニットの測定データを第2のセンサユニットへ送信可能であり、かつ前記第2のセンサユニットから前記第2のセンサユニットの測定データを受信可能に構成され、前記処理モジュールは、受信した前記第2のセンサユニットの測定データと前記第1のセンサユニットの測定データとに基づいて基準データを算出し、前記基準データと前記第1のセンサユニットの測定データとに基づいて算出された補正データを記憶する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係るセンサユニット及びその較正方法によれば、センサユニット同士が通信を行うことでセンサユニット間の個体差の補正を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】センサユニットの一例として温湿度センサユニットを例示する図である。
【
図2】通信可能なセンサユニットの機能ブロック図の例である。
【
図3】本発明の第1の態様に係る較正方法に関し、一つのセンサユニットから他のセンサユニットへ測定データを送信する送信過程を説明する図の例である。
【
図4】測定データを送信するセンサユニットを
図3のセンサユニットから別のセンサユニットへ切り換えて行う送信過程の説明図の例である。
【
図5】測定データを送信するセンサユニットを
図4のセンサユニットから別のセンサユニットへ切り換えて行う送信過程の説明図の例である。
【
図6】各センサユニットがクラウドサーバと通信して各自の補正後測定データをアップロードする過程の説明図の例である。
【
図7】センサユニット間で交信する信号のフォーマットの例である。
【
図8】本発明の第1の態様に係る較正方法を説明するシーケンスの例である。
【
図9】本発明の第2の態様に係る較正方法に関し、マスタのセンサユニットとスレーブのセンサユニットとの通信過程を説明する図の例である。
【
図10】本発明の第2の態様に係る較正方法を説明するシーケンスの例である。
【
図11】サーバで補正値を計算する態様の較正方法に関し、センサユニットとサーバとの通信過程を説明する図の例である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0008】
図1は、センサユニットの一例として温湿度センサユニットを例示する図である。
この実施例においては、温度センサと湿度センサとを備えた温湿度センサユニットを一例として説明するが、この他にも、気圧(高度計測)センサ、照度センサ、紫外線センサ、騒音センサ、ガスセンサなど、各種のセンサを備えたセンサユニットに応用可能である。
【0009】
センサユニット1~3は、所定の較正技術によって出荷時等に個別に較正されているが、その中の電子部品、回路の個性によって若干の個体差が生じる可能性がある。すなわち、センサユニット1~3は、同じ測定環境、例えば温湿度制御した室内、に置いてあるが、その測定値には個体差が出ており、センサユニット1が温度26.0℃/湿度45%、センサユニット2が温度26.5℃/湿度55%、センサユニット3が温度25.0℃/湿度43%をそれぞれ示している。
【0010】
図2は、通信可能なセンサユニットの機能ブロック図の例である。
これらセンサユニット1~3は、電子部品を組み付けた回路基板を、一例として円筒形の筐体内に収めた構造をもっており、その機能ブロック図が
図2に示されている。マイクロプロセッサなどからなる処理モジュールPMは、フラッシュメモリなどのメモリMDを備え、温度センサTS及び湿度センサMSによる測定データを処理し、メモリMDに記憶する。メモリMDから読み出された測定データは、処理モジュールPMから無線通信モジュールCMへ送られ、搬送波変調等の処理後、アンテナから送信される。
【0011】
また、無線通信モジュールCMは、他のセンサユニット1~3から送信されてくる測定データを受信し、復調して処理モジュールPMに送る。この受信測定データは処理モジュールPMによりメモリMDに記憶される。
測定データは、温度センサ、湿度センサ、気圧(高度計測)センサ、照度センサ、紫外線センサ、騒音センサ、ガスセンサ等のセンサの種類に応じて温度、湿度、気圧(高度)、照度、紫外線、騒音、ガス濃度に関する測定データである。
【0012】
無線通信モジュールCMは、SubGHz帯の無線通信を実行し、センサユニット1,2,3の間で例えばLPWA(Low Power Wide Area:省電力広域ネットワーク)等の通信網を構築する。なお、無線通信のモジュールを例にするが、LANケーブルなどによる有線の通信モジュールを使用することもできる。また、無線通信網はLPWAに限られず、LTE(登録商標)等の携帯電話ネットワークでもよいし、Wi-Fi(登録商標)などの無線通信ネットワークでもよい。
【0013】
センサユニット1~3は、センサ及び各モジュールに給電する一次電池又は二次電池の電源PWを備え、電源スイッチPSによりその給電のオン/オフが操作される。また、処理モジュールPMの動作モード(後述する送信モード、受信モード、計算モード、アップロードモードなど)を、押し方により切り換え操作する動作ボタンOBが備えられている。処理モジュールPMの実行中のモードは、LEDなどの動作通知器LDで視覚的に通知される。
【0014】
同じ測定環境に置いたセンサユニット1~3においてそれぞれの補正値を算出することで個体差を補正する較正方法の第1の実施例について、
図3~
図6を参照して説明する。
図3は、本発明の第1の態様に係る較正方法に関し、一つのセンサユニットから他のセンサユニットへ測定データを送信する送信過程を説明する図の例である。
まず、
図3に示すように、この例では最初に、センサユニット1~3のうちの一つとしてセンサユニット3から、温度センサTS及び湿度センサMSによる測定データの送信を開始する。
【0015】
例えば動作ボタンOBを短く押す(例えば予め定められた0.5秒以内の間動作ボタンOBが押されたことを検知する)ことにより、センサユニット3は測定データを送信する送信モードに入る。一方、他のセンサユニット1,2は、動作ボタンOBを長押しする(例えば予め定められた0.5秒より長い間動作ボタンOBが押されたことを検知する)ことによって、センサユニット3から送信される測定データを受信する受信モードに移行する。これにより、センサユニット3の測定データがセンサユニット1,2のメモリMDに記憶される。
【0016】
図4は、測定データを送信するセンサユニットを
図3のセンサユニットから別のセンサユニットへ切り換えて行う送信過程の説明図の例である。
図4に示すように、センサユニット2の動作ボタンOBを短く押すことにより、センサユニット2を測定データの送信モードにし、測定データを送信するユニットを切り換える。一方、他のセンサユニット1,3は、動作ボタンOBの長押しによって受信モードとし、センサユニット1,3でセンサユニット2の測定データを受信し、メモリMDに記憶する。
【0017】
図5は、測定データを送信するセンサユニットを
図4のセンサユニットから別のセンサユニットへ切り換えて行う送信過程の説明図の例である。
図5に示すように、センサユニット1の動作ボタンOBを短く押すことにより、センサユニット1を測定データの送信モードにし、測定データを送信するユニットを切り換える。一方、他のセンサユニット2,3は、動作ボタンOBの長押しによって受信モードとし、センサユニット2,3でセンサユニット1の測定データを受信し、メモリMDに記憶する。
【0018】
各センサユニット1~3のメモリMDには自身の測定データも記憶されているので、以上の
図3~
図5の過程により、全てのセンサユニット1~3のメモリMDに、全てのセンサユニット1~3の測定データが記憶される。続いて、センサユニット1~3の動作ボタンOBを二度押し(例えば予め定められた1秒以内に2回連続で動作ボタンOBが押されたことを検知)することにより、センサユニット1~3は補正値計算モードとなって、処理モジュールPMが各自の補正値を計算する。すなわち、処理モジュールPMが、メモリMDに記憶された全測定データを読み出し、これらから、基準データとして平均データを算出し、この平均データと自身の測定データとから補正値を計算する。算出した補正値はメモリMDに記憶する。
【0019】
なお、複数の測定データから平均を求めるのではなく、その他の基準データを算出する方法でもよい。例えば、複数の測定データのうち最も値の小さいものを基準データとし、補正値は、この最も値の小さい基準データとの差分とすることもできる。
逆に、最も値の大きいものを基準データとしてもよい。
他には、複数の測定データから平均値を求め、この平均値に最も近い値の測定データを基準データとしてもよい。この場合には、平均値に最も近い値の測定データを送信したセンサユニットについては、補正値が不要となる。
【0020】
補正値は、例えば差分割合である。例えばセンサユニット1の場合、自身の温度センサTSの測定データは26.0℃で、湿度センサMSの測定データは45%である(
図1)。他のセンサユニット2,3の測定データが
図1のとおりであれば、平均データが用途に応じて四捨五入して得られるものとすると、平均データは温度が25.8℃で湿度が48%と算出される。
【0021】
したがって、補正値は、同じく用途に応じて四捨五入して得られるものとすると、温度センサTSについて0.2(=26.0-25.8)/26.0の計算から+0.7%、湿度センサMSについて-3(=45-48)/45の計算から-6.7%と算出される。この補正値をメモリMDに記憶し、以降の実測において温度センサTS及び湿度センサMSの実測値に補正値を適用して補正する。同様の補正値計算モードがセンサユニット2,3においても実行される(
図6)。
【0022】
図6は、各センサユニットがクラウドサーバと通信して各自の補正後測定データをアップロードする過程の説明図の例である。
補正値計算後、センサユニット1~3の動作ボタンOBを三度押し(例えば予め定められた1秒以内に3回連続で動作ボタンOBが押されたことを検知)すると、センサユニット1~3はアップロードモードとなり、上位アプリケーションであるクラウドサーバ10へ、補正後の測定データ25.8℃/48%をアップロードする。
【0023】
また、この際、補正後測定データと共に各センサユニットの各補正値もアップロードする構成としてもよい。アップロードされたデータはクラウドサーバ10で、センサユニット1~3に対応させて記憶される。クラウドサーバ10に記憶されたデータは、製造元で管理等に使用することができる。
【0024】
図7に、センサユニット1~3の間で通信される信号のフォーマットを例示する。プリアンブルで信号の開始が示され、開始符号が、続くアプリケーションデータの始まりを示す。アプリケーションデータに実際の測定データが格納され、次のCRCは巡回冗長検査の符号である。アプリケーションデータの部分にはヘッダとペイロードがあり、これを拡大して図示してある。ヘッダにはデータIDが入れられ、このデータIDにより、上記の送信モード/受信モードにおける測定データであることが判別される。
【0025】
すなわち、本実施例においては、動作ボタンOBの押し方を変えることで、送信モード/受信モードを切り替えることが可能であるが、動作ボタンOBの押し方に応じて、それぞれ送信モード/受信モードを示すIDがヘッダに格納される。
また、第2の実施例における、マスタ/スレーブを特定する情報をヘッダに格納することも可能である。信号を受信したセンサユニットは、そのヘッダに格納された情報に基づいて、その情報がマスタのセンサユニットから受信したことを判断し、自らがスレーブとして機能する構成であってもよい。
【0026】
ペイロード長は次のペイロードのデータ長を示す。ペイロードの部分には、シーケンス番号、送信元アドレス、宛先アドレス、コマンド種別、実際のデータが含まれる。シーケンス番号はデータの順序を表す符号で、後述する受信完了通知(ACK)がこれを基に作成される。シーケンス番号の次に送信元アドレスと宛先アドレスが入り、その次にコマンド種別と該コマンドに該当するデータが入る。データの中に、各種センサにより計測された温度や湿度などの測定値が格納されている。
【0027】
図8は、本発明の第1の態様に係る較正方法を説明するシーケンスの例である。
図3~
図6に示した較正方法のシーケンスが同図に示されている。
同じ測定環境に置いたセンサユニット1~3のうち、センサユニット3を送信として(
図3)、動作ボタンOBを短く押すことにより送信モードを開始する。同時に、他のセンサユニット1,2は、動作ボタンOBを長押しすることにより、受信モードを開始する。すると、送信モードのセンサユニット3から、受信モードのセンサユニット1,2へ、センサユニット3の測定データが同報送信される。
【0028】
一例として、送信モードのセンサユニット3は、自身の測定データを一定回数送信し、受信モードのセンサユニット1,2は、一定回数の測定データが受信されたら、受信完了通知(ACK)をセンサユニット3へ送信する。センサユニット1,2は、受信した一定回数の測定データを平均し、これをセンサユニット3の測定データとしてメモリMDに記憶し、受信モードを終了する。センサユニット3は、センサユニット1,2から受信完了通知(ACK)を受信できたら送信モードを終了する。
【0029】
次に、センサユニット2の動作ボタンOBを短く押して送信モードとすると共に他のセンサユニット1,3の動作ボタンOBを長押しして受信モードとし(
図4)、上記と同じ過程を繰り返す。続いて今度は、センサユニット1の動作ボタンOBを短く押して送信モードとすると共に他のセンサユニット2,3の動作ボタンOBを長押しして受信モードとし(
図5)、上記と同じ過程を繰り返す。
【0030】
以上の順次送信により、全てのセンサユニット1~3において、全てのセンサユニット1~3の測定データが記憶される。すると次には、センサユニット1~3の動作ボタンOBを二度押しして補正値計算モードとする。補正値計算モードのセンサユニット1~3の処理モジュールPMは、記憶した測定データから自身の補正値を計算する補正値計算を開始する。すなわち、上述のように処理モジュールPMが全測定データから平均データを算出し、この平均データと自身の測定データとから補正値を計算する。各センサユニット1~3の処理モジュールPMはそれぞれ算出した補正値をメモリMDに記憶する(
図6)。
【0031】
なお、二度押しによらず、一定の時間経過後に自動的に補正値計算モードに移行することとしてもよい。また、較正するセンサユニットの数を算出し、この数に対応する測定データの受信が確認された場合に補正値計算モードに移行することとしてもよい。
補正値を記憶したセンサユニット1~3は、自動的に、あるいは、上述のように動作ボタンOBの三度押しにより、アップロードモードとなって、クラウドサーバ10へ、補正後の測定データと補正値とを送信し(
図6)、アップロードを終了する。なお、クラウドサーバ10へのアップロードの過程を行わないこととしてもよい。
また、動作ボタンの押し方を変えることで送信モードや受信モードを切り替えたり、基準データを算出することとしたが、センサユニットに機能やモードに応じた複数のボタンを設ける構成としてもよい。
【0032】
この第1の実施例に係る較正方法によれば、センサユニット1~3のそれぞれで補正値が算出されて記憶され、この補正値が適用されることで、センサユニット1~3の個体差が吸収される。さらに、
図8に示す較正の過程は、互いに無線通信するセンサユニット1~3の間で完結するので、較正過程を統括するサーバ等が不要である。また、クラウドサーバ10と通信できない環境でもセンサユニット1~3同士で互いに個体差を補正する較正を実行することができる。
【実施例2】
【0033】
較正方法の第2の実施例について、
図9及び
図10を参照して説明する。この例では、上記第1の実施例と同じセンサユニット1~3に加えて、マスタユニットとして動作するセンサユニット0が使用される。センサユニット0も、
図2に示すセンサユニット1~3の機能ブロックと同じ構成をもつ。なお、マスタとなるセンサユニット0を加えて説明するが、センサユニット1~3のいずれか一つがマスタに設定されて動作し、センサユニット1~3の他のユニットがスレーブに設定されて動作するようにしてもよい。
【0034】
例えば、マスタ/スレーブは、動作ボタンOBの押し方を変えることにより切り替えられてもよいし、あるいは別の切り換えボタンを押すことで切り替えられてもよい。
例えば、1つのセンサユニットの動作ボタンOBを押してマスタに設定し、マスタから較正を開始する旨のデータをその他のセンサユニットに同報通知する。同報通知を受信した他のセンサユニットは、送信されたデータのヘッダ等を読み、それがマスタからの送信データであること、かつ/又は較正を開始する旨のデータであることを確認すると、自らがスレーブとして動作するように設定されていてもよい。
【0035】
図9は、本発明の第2の態様に係る較正方法に関し、マスタのセンサユニットとスレーブのセンサユニットとの通信過程を説明する図の例である。
図9に示すように、第2の実施例においては、センサユニット0がマスタユニットに設定され、他のセンサユニット1~3がスレーブユニットに設定されて、これらセンサユニット0~3が同じ測定環境に置かれる。そして、スレーブのセンサユニット1~3からマスタのセンサユニット0へ測定データが送信され、測定データを受信したセンサユニット0の処理モジュールPMが、受信した測定データと自身の測定データとから平均データを計算する。そして、センサユニット0は、算出した平均データをセンサユニット1~3へ送信する。
【0036】
この後、各センサユニット0~3において、各処理モジュールPMが平均データと各自身の測定データとから補正値を計算し、算出した補正値をメモリMDに記憶する。本例の場合、センサユニット1~3の測定データは上述の通りであり、センサユニット0の測定データは温度が26.0℃で湿度が52%であるから、基準データとしての平均データは、用途に応じて平均データを四捨五入すると、温度25.9%、湿度49%である。この平均データを基に各センサユニット0~3において補正値(例えば上述の差分割合)が計算される。
【0037】
なお、複数の測定データから平均を求めるのではなく、その他の基準データを算出する方法でもよい。例えば、複数の測定データのうち最も値の小さいものを基準データとし、補正値は、この最も値の小さい基準データとの差分とすることもできる。逆に、最も値の大きいものを基準データとしてもよい。
他には、複数の測定データから平均値を求め、この平均値に最も近い値の測定データを基準データとしてもよい。
また、マスタのセンサユニットの測定データを基準データとし、スレーブのセンサユニットの補正値はこの基準データとの差分とすることもできる。
この場合には、スレーブから測定データを受信することなく、マスタの測定値を基準データとしてスレーブに送信する構成としてもよい。
【0038】
図10は、この第2の実施例に係る較正方法のシーケンスの例である。
マスタのセンサユニット0は、動作ボタンOBの長押しにより受信モードを開始する。一方、スレーブのセンサユニット1~3は、動作ボタンOBを短く押すことにより送信モードを開始する。受信モードのセンサユニット0は、所定の時間、例えば30秒~1分間、スレーブユニットからの測定データ送信を待機する。送信モードのセンサユニット1~3は、それぞれが測定データをセンサユニット0へ一定回数送信し、各一定回数送信される測定データを受信したセンサユニット0は、受信完了通知(ACK)をセンサユニット1~3へそれぞれ送信する。センサユニット0は、一定回数ずつ受信される各測定データをセンサユニット1~3ごとに平均して記憶する。
【0039】
待機時間が過ぎると受信モードがタイムアウト(終了)となり、センサユニット0は、自動的に平均データの計算モードに入る。または、動作ボタンOBを二度押しすることで強制的に計算モードに移行してもよい。
計算を開始したセンサユニット0の処理モジュールPMは、受信して記憶した測定データと自身の測定データとから平均データを計算し、算出した平均データを自身のメモリMDに記憶すると共にセンサユニット1~3へ送信する。スレーブのセンサユニット1~3は、送信モードで受信完了通知(ACK)を受信すると平均データの受信を待機している。
【0040】
算出された平均データがセンサユニット0から送信されてセンサユニット1~3で受信されると、センサユニット1~3の処理モジュールPMは、受信した平均データをそれぞれのメモリMDに記憶する。平均データが記憶されると、自動的に、あるいは動作ボタンOBの二度押しを検知することにより、各センサユニット0~3の処理モジュールPMが補正値計算モードに入り、それぞれ補正値の計算を開始する。算出した補正値はセンサユニット0~3のメモリMDに記憶され、以降の測定データに適用される。この後、上記第1の実施例のときと同様にアップロードモードが実行されてもよい。
【0041】
以上の説明から理解できるとおり、この第2の実施例に係るセンサユニット0は(又はセンサユニット1~3も)、無線通信モジュールCMにより測定データを送信した後に本例では平均データである基準データを受信して、処理モジュールPMが、該基準データと自身の測定データとから補正値を算出して記憶するスレーブとしての機能と、無線通信モジュールCMにより測定データを受信して、処理モジュールPMが測定データに基づいて本例では平均データである基準データを算出し、無線通信モジュールCMにより該基準データを送信するマスタとしての機能とを実行可能である。
【0042】
第2の実施例に係る較正方法も、第1の実施例に係る較正方法と同様の利点をもつ。また、第2の実施例の場合、センサユニット0をマスタユニットとして専用に製造することも可能であり、この場合、スレーブのセンサユニット1~3の各補正値計算機能もマスタユニットにもたせ、センサユニット0において平均データから補正値を算出して各センサユニット1~3へ送信して記憶させる制御とすることも可能である。こうすると、スレーブユニットとして製造するセンサユニット1~3の機能を簡素化することができる。
【実施例3】
【0043】
以上の第1及び第2の実施例に係る較正方法とは少し違って、上位アプリケーションとしてサーバを使用する第3の実施例に係る較正方法を、
図11及び
図12を参照して説明する。図示のセンサユニット1~3とクラウドサーバ10とは、上述したLPWA(あるいは有線/無線LANなど)やインターネットを通じて通信する。
【0044】
図11は、本発明の第3の態様に係る較正方法に関し、センサユニットとサーバとの通信過程を説明する図の例である。
第3の実施例に係る較正方法では、
図11に示すように、第1の実施例同様のセンサユニット1~3が、動作ボタンOBを短く押すことにより送信モードを開始する。この場合のセンサユニット1~3は、それぞれがクラウドサーバ10と通信して自身の測定データを上位アプリケーションへアップロードする。
【0045】
測定データを受信したクラウドサーバ10は、基準データとして、全測定データを平均して平均データを算出し、そして、その平均データとセンサユニット1~3ごとの測定データとから、センサユニット1~3ごとにそれぞれ補正値(例えば上述の差分割合)を計算する。算出した補正値は、クラウドサーバ10において測定データと共にセンサユニット1~3のそれぞれに関連付けて記憶されると同時に、クラウドサーバ10から該当するセンサユニット1~3へそれぞれ送信される。各センサユニット1~3は、送られてきた補正値を記憶して以降の測定に適用する。
【0046】
この過程を経る結果、センサユニット1は、補正値に従って自身の測定データが温度26.5℃→25.8℃、湿度45%→48%と補正され、センサユニット2は、補正値に従って測定データが温度26.5℃→25.8℃、湿度55%→48%と補正され、そして、センサユニット3は、補正値に従って測定データが温度25.0℃→25.8℃、湿度43%→48%と補正され、個体差を吸収する較正が実施される。
【0047】
図12は、この第3の実施例に係る較正方法のシーケンスの例である。
クラウドサーバ10は入力装置による所定の操作か、あるいは、センサユニット1~3のいずれかが送信モードを開始することに応じて、受信モードを開始する。一方のセンサユニット1~3は、動作ボタンOBを短く押すことにより送信モードを開始する。受信モードのクラウドサーバ10は、所定の時間、例えば30秒~1分間、センサユニット1~3からの測定データ送信を待機する。
【0048】
送信モードのセンサユニット1~3は、それぞれが測定データをクラウドサーバ10へ一定回数送信し、各一定回数送信される測定データを受信したクラウドサーバ10は、受信完了通知(ACK)をセンサユニット1~3へそれぞれ送信する。クラウドサーバ10は、一定回数ずつ受信される各測定データをセンサユニット1~3ごとに平均してメモリやハードディスクドライブ等の記憶装置に記憶する。
【0049】
待機時間が過ぎると受信モードがタイムアウト(終了)となり、クラウドサーバ10は、自動的に補正値の計算モードに入る。計算を開始したクラウドサーバ10のプロセッサは、受信して記憶した全測定データから平均データを計算し、算出した平均データと各センサユニット1~3の測定データとから補正値を計算する。そして、算出した補正値を、センサユニット1~3に関連付けて記憶装置に記憶すると共に、該当するセンサユニット1~3へそれぞれ送信し、補正値計算モードを終了する。
【0050】
一方のセンサユニット1~3は、送信モードで受信完了通知(ACK)を受信すると補正値の受信を待機している。算出された補正値がクラウドサーバ10から送信され、センサユニット1~3により受信されると、センサユニット1~3の処理モジュールPMはそれをメモリMDに記憶してモードを終了する。
なお、補正値による各センサユニット1~3の較正を行うことなく、測定データをクラウドサーバ10により受信し、クラウドサーバ10のプロセッサが、各センサユニット1~3から受信した測定データを、算出した補正値に基づいて補正する構成でもよい。
【0051】
第3の実施例に係る較正方法も、上記実施例に係る較正方法と同様、ユニットの個体差を吸収できる利点をもつ。第3の実施例の場合、センサユニット1~3の機能を簡素化することができるが、ただし、クラウドサーバ10(上位アプリケーション)に較正用プログラムのインストールが必要である。
【0052】
以上、本発明に関し、いくつかの実施例を示し説明した。本発明では、例えばセンサユニットごとに専用の補正値が算出され、この補正値が個々のセンサユニットにおいて適用されることで、個体差が吸収される。さらに、上記第1及び第2の態様の場合、その補正値算出過程を、互いに通信するセンサユニット間で実行(完結)することもでき、この場合、上位のサーバに較正用のアプリケーション等をインストールする必要がないし、上位のサーバが無くてもよい。また、サーバ等の主制御部と通信できない環境であっても個体差補正のための較正を実行することができる。
【0053】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0054】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0055】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
なお、上述の実施例は少なくとも特許請求の範囲に記載の構成を開示している。
【符号の説明】
【0056】
0,1,2,3…センサユニット
10…クラウドサーバ