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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】スライド装置
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/07 20060101AFI20230912BHJP
   B60N 2/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60N2/07
B60N2/06
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020051343
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021146989
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】久米 将
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-119386(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110027449(CN,A)
【文献】特開2001-208156(JP,A)
【文献】特開平07-243502(JP,A)
【文献】特開平04-262155(JP,A)
【文献】特開2006-182186(JP,A)
【文献】特開2021-139401(JP,A)
【文献】特開2017-067264(JP,A)
【文献】特開2001-277176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/07
B60N 2/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に設置されたシートに取り付けられるように構成された可動レールと、
前記可動レールをスライド可能に支持する固定レールと、
前記可動レールをスライドさせるように構成された駆動ユニットと、
停止している前記可動レールを制動するように構成された制動ユニットと、
前記駆動ユニット及び前記制動ユニットを制御するように構成された制御部と、
を備え、
前記固定レールは、前記可動レールのスライド方向に並んで配置された複数の駆動用開口を有し、
前記駆動ユニットは、複数の駆動突起部を有すると共に、前記複数の駆動突起部が前記複数の駆動用開口への嵌まり込みと前記複数の駆動用開口からの離脱とを順に行うように回転するように構成された駆動回転体を有し、
前記制動ユニットは、
複数の制動突起部を有すると共に、前記複数の制動突起部が前記固定レールに前記スライド方向に並んで配置された複数の開口への出入りを順に行うように回転するように構成された制動回転体を有し、
前記制御部は、
前記駆動回転体の第1方向への回転により前記可動レールをスライドさせるスライド処理と、
前記駆動回転体の回転の停止により前記可動レールのスライドを停止させる停止処理と、
を実行するように構成され、
前記停止処理において、前記制御部は、前記駆動回転体の回転の停止後、前記制動回転体を前記第1方向とは反対の第2方向に回転させることで、前記複数の開口の縁に前記複数の制動突起部の少なくとも1つを当接させる、スライド装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド装置であって、
前記複数の制動突起部の数は、前記複数の駆動突起部の数と同じである、スライド装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスライド装置であって、
前記複数の制動突起部の前記制動回転体の回転方向における幅は、前記複数の駆動突起部の前記駆動回転体の回転方向における幅よりも小さい、スライド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スライド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等に設置される乗物用シートをスライドさせるためのスライド装置において、固定レールに設けられた複数の開口に、回転体に設けられた突起を着脱自在に嵌まり込ませることで可動レールをスライドさせる送り機構が考案されている(特許文献1参照)。
【0003】
この送り機構では、開口にロック用の爪を挿入することによって可動レールのスライドを規制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-119386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のスライド装置では、突起を固定レールの開口から円滑に着脱するために、突起と開口との間には隙間(バックラッシ)が設けられている。そのため、可動レールが停止した状態において、この隙間によって突起がスライド方向に移動することで、可動レールにスライド方向のガタツキが生じる。
【0006】
このようなガタツキを抑えるには、ロック用の爪を完全に開口に挿入する必要がある。しかし、固定レールの開口の大きさ及びピッチの制限によって、このような完全なロックが可能な可動レールの停止位置は限られる。
【0007】
本開示の一局面は、停止している可動レールのガタツキを抑制できるスライド装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、乗物に設置されたシート(11)に取り付けられるように構成された可動レール(2)と、可動レール(2)をスライド可能に支持する固定レール(3)と、可動レール(2)をスライドさせるように構成された駆動ユニット(4)と、停止している可動レール(2)を制動するように構成された制動ユニット(5)と、駆動ユニット(4)及び制動ユニット(5)を制御するように構成された制御部(6)と、を備えるスライド装置(1)である。
【0009】
固定レール(3)は、可動レール(2)のスライド方向に並んで配置された複数の駆動用開口(36)を有する。駆動ユニット(4)は、複数の駆動突起部(411C)を有すると共に、複数の駆動突起部(411C)が複数の駆動用開口(36)への嵌まり込みと複数の駆動用開口(36)からの離脱とを順に行うように回転するように構成された駆動回転体(411)を有する。
【0010】
制動ユニット(5)は、複数の制動突起部(511C)を有すると共に、複数の制動突起部(511C)が固定レール(3)にスライド方向に並んで配置された複数の開口(36)への出入りを順に行うように回転するように構成された制動回転体(511)を有する。
【0011】
制御部(6)は、駆動回転体(411)の第1方向への回転により可動レール(2)をスライドさせるスライド処理と、駆動回転体(411)の回転の停止により可動レール(2)のスライドを停止させる停止処理と、を実行するように構成される。停止処理において、制御部(6)は、駆動回転体(411)の回転の停止後、制動回転体(511)を第1方向とは反対の第2方向に回転させることで、複数の開口(36)の縁に複数の制動突起部(511C)の少なくとも1つを当接させる。
【0012】
このような構成によれば、スライドの停止後に、制動突起部(511C)のいずれかが固定レール(3)の開口(36)の縁に可動レール(2)がスライドしていた前進方向とは反対の後退方向から当接する。これにより、可動レール(2)の後退方向への移動が規制される。その結果、駆動回転体(411)を用いた駆動ユニット(4)を備えるスライド装置(1)において、スライド方向の位置に関わらず、停止している可動レール(2)のガタツキを抑制できる。
【0013】
本開示の一態様では、複数の制動突起部(511C)の数は、複数の駆動突起部(411C)の数と同じであってもよい。このような構成によれば、駆動回転体(411)と、制動回転体(511)とを同期させ易くなるため、これらの回転体の回転制御が容易となる。
【0014】
本開示の一態様では、複数の制動突起部(511C)の制動回転体(511)の回転方向における幅は、複数の駆動突起部(411C)の駆動回転体(411)の回転方向における幅よりも小さくてもよい。このような構成によれば、可動レール(2)のスライド時に開口(36)の縁への制動突起部(511C)の接触を抑制しつつ、制動突起部(511C)を開口(36)に出し入れすることができる。そのため、共通の開口(36)に駆動突起部(411C)と制動突起部(511C)とを出し入れすることができる。
【0015】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施形態における乗物用シートの模式的な側面図である。
図2図2は、図1のスライド装置の模式図である。
図3図3は、図2のIII-III線での模式的な切断部端面図である。
図4図4Aは、図2のスライド装置における送り機構の模式的な分解斜視図であり、図4Bは、送り機構のギアの位置関係を示す模式的な斜視図である。
図5図5は、図2のスライド装置における送り機構及び制動機構の動作を説明する模式図である。
図6図6は、図2のスライド装置における制動機構の模式的な分解斜視図である。
図7図7は、図2のスライド装置における駆動突起部の形状と制動突起部との形状を比較する模式図である。
図8図8は、図2のスライド装置における制御部が実行する処理を概略的に示すフロー図である。
図9図9は、図2とは異なる実施形態におけるスライド装置の固定レールの模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シート11と、スライド装置1とを備える。
【0018】
本実施形態のシート11は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、シート11を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0019】
スライド装置1は、シート11をシート前後方向にスライド可能に支持している。スライド装置1は、図2に示すように、可動レール2と、固定レール3と、駆動ユニット4と、制動ユニット5と、制御部6を備える。
【0020】
<可動レール>
可動レール2は、いわゆるアッパレールであり、シート11に図示しないブラケット等によって取り付けられている。
【0021】
可動レール2は、シート前後方向に延伸し、固定レール3に対しシート前後方向にスライド可能に構成されている。図3に示すように、可動レール2は、中央部21と、第1内壁22Aと、第2内壁22Bとを有する。
【0022】
中央部21は、下部が固定レール3の内部に配置されると共に、上部が固定レール3よりも上方に突出している。中央部21には、後述する駆動ユニット4の送り機構41及び制動ユニット5の制動機構51が取り付けられている。
【0023】
第1内壁22Aは、中央部21の下端部からレール幅方向外側(つまり右側)かつ上方に向かって折り返すように延伸している。第1内壁22Aは、固定レール3内に配置されている。
【0024】
ここで、「レール幅方向」とは、上下方向と可動レール2のスライド方向とに直交する方向を意味する。なお、本実施形態では、レール幅方向はシート幅方向に一致している。
【0025】
第2内壁22Bは、中央部21の下端部からレール幅方向外側(つまり左側)かつ上方に向かって折り返すように延伸している。第2内壁22Bは、固定レール3内に配置されている。
【0026】
<固定レール>
図2に示す固定レール3は、いわゆるロアレールであり、乗物用シート10が配置された乗物のフロアFに直接又は間接的に固定されている。
【0027】
固定レール3は、シート前後方向に延伸し、可動レール2を上下方向と直交する方向にスライド可能に支持している。固定レール3は、底壁31と、第1外側壁32Aと、第2外側壁32Bと、第1天壁33Aと、第2天壁33Bと、第1内壁34Aと、第2内壁34Bと、複数の駆動用開口36とを有する。
【0028】
底壁31は、可動レール2のスライド方向に延伸している。第1外側壁32Aは、底壁31の右端部から上方に延伸している。第2外側壁32Bは、底壁31の左端部から上方に延伸している。
【0029】
第1天壁33Aは、第1外側壁32Aの上端部からレール幅方向内側(つまり、左側)に延伸している。第1天壁33Aは、可動レール2の第1内壁22Aを上方から覆っている。
【0030】
第2天壁33Bは、第2外側壁32Bの上端部からレール幅方向内側(つまり、右側)に延伸している。第2天壁33Bは、可動レール2の第2内壁22Bを上方から覆っている。
【0031】
第1内壁34Aは、第1天壁33Aの左端部から下方に延伸している。第1内壁34Aは、レール幅方向において可動レール2の中央部21の下部と第1内壁22Aとの間に配置されている。第1内壁34Aは、可動レール2の中央部21と対向している。
【0032】
第2内壁34Bは、第2天壁33Bの右端部から下方に延伸している。第2内壁34Bは、レール幅方向において可動レール2の中央部21の下部と第2内壁22Bとの間に配置されている。第2内壁34Bは、可動レール2の中央部21と対向している。
【0033】
外側壁32A,32Bと天壁33A,33Bと内壁34A,34Bとにより、下側が開放され、かつスライド方向に延伸する溝状の2つの空間が形成されている。可動レール2における内壁22A,22Bの上端部は、固定レール3に形成された上記溝状の空間に挿入されている。
【0034】
複数の駆動用開口36は、第1内壁34Aに、可動レール2のスライド方向に並んで配置されている。本実施形態では、複数の駆動用開口36のスライド方向の長さ、間隔、及び、上下方向の位置は全て等しい。
【0035】
<駆動ユニット>
駆動ユニット4は、可動レール2をスライドさせるように構成されている。駆動ユニット4は、送り機構41と、第1アクチュエータ42とを有する。
【0036】
(送り機構)
送り機構41は、可動レール2を固定レール3に対して送るように構成されている。送り機構41は、可動レール2に取り付けられている。送り機構41は、図4A,4Bに示すように、駆動回転体411と、第1連結ギア412と、第2連結ギア413と、を有する。
【0037】
駆動回転体411は、上下方向と平行な軸を中心に回転する複合歯車である。駆動回転体411は、第1ハウジング414Aと第2ハウジング414Bとで構成されるケーシング内に収納されている。
【0038】
駆動回転体411は、ピニオン411Aと、第1ヘリカルギア411Bとを有する。ピニオン411Aと第1ヘリカルギア411Bとは軸方向に連結されている。ピニオン411Aの中心軸と第1ヘリカルギア411Bの中心軸とは一致する。
【0039】
ピニオン411Aは、複数の駆動突起部411Cを有する。複数の駆動突起部411Cは、ピニオン411Aの歯を構成しており、ピニオン411Aの周方向に等間隔で配置されている。また、複数の駆動突起部411Cの形状は同一である。なお、本実施形態では、駆動回転体411は7つの駆動突起部411Cを有しているが、駆動突起部411Cの数は7に限定されない。
【0040】
駆動回転体411は、複数の駆動突起部411Cが固定レール3の複数の駆動用開口36への嵌まり込みと複数の駆動用開口36からの離脱とを順に行うように回転する。図5に示すように、駆動突起部411Cは、ピニオン411Aの回転に伴って、シート幅方向内側(つまり左側)から駆動用開口36に着脱自在に嵌まり込んだ後、駆動用開口36から離脱する。
【0041】
駆動回転体411は、常に少なくとも1つの駆動突起部411Cが少なくとも1つの駆動用開口36の縁に当接するように回転する。これにより、送り機構41は、少なくとも1つの駆動突起部411Cを介して、固定レール3から反力を受ける。その結果、駆動回転体411の回転によって、送り機構41が取り付けられた可動レール2が固定レール3に対して送られる。
【0042】
駆動回転体411は、可動レール2をシート前方にスライドさせる際に上方から視て反時計回りに回転し、可動レール2をシート後方にスライドさせる際に上方から視て時計回りに回転する。
【0043】
図4Bに示すように、第1ヘリカルギア411Bは、第1連結ギア412と噛み合っており、第1連結ギア412から伝達される回転をピニオン411Aに伝達する。
【0044】
第1連結ギア412は、スライド方向と平行な軸を中心に回転する複合歯車である。第1連結ギア412は、図4Aに示す第1ベアリング415A、第2ベアリング415B及びカバー416によって軸回転可能に支持されている。第1連結ギア412は、駆動回転体411と共に、第1ハウジング414Aと第2ハウジング414Bとで構成されるケーシング内に収納されている。
【0045】
第1連結ギア412は、第2ヘリカルギア412Aと、ウォームギア412Bとを有する。第2ヘリカルギア412Aとウォームギア412Bとは、軸方向に連結されている。第2ヘリカルギア412Aの中心軸とウォームギア412Bの中心軸とは一致する。
【0046】
第2ヘリカルギア412Aは、第2連結ギア413と噛み合っている。ウォームギア412Bは、第1ヘリカルギア411Bと噛み合っている。第1連結ギア412は、第2連結ギア413から伝達される回転を駆動回転体411に伝達する。
【0047】
第2連結ギア413は、レール幅方向と平行な軸を中心に回転するヘリカルギアである。第2連結ギア413は、ブッシュ417及びカバー418によって軸回転可能に支持されている。第2連結ギア413は、駆動回転体411と共に、第1ハウジング414Aと第2ハウジング414Bとで構成されるケーシング内に収納されている。
【0048】
第2連結ギア413には、第1アクチュエータ42の回転を伝達するロッド(図示省略)が軸方向に連結される。第2連結ギア413は、第1アクチュエータ42が発生させた回転を第1連結ギア412に伝達する。
【0049】
(第1アクチュエータ)
図2に示す第1アクチュエータ42は、送り機構41を駆動させる。第1アクチュエータ42は、可動レール2に取り付けられている。第1アクチュエータ42は、電動式、空気式及び油圧式のいずれであってもよい。
【0050】
<制動ユニット>
制動ユニット5は、停止している可動レール2を制動するように構成されている。制動ユニット5は、制動機構51と、第2アクチュエータ52とを有する。
【0051】
(制動機構)
制動機構51は、可動レール2に取り付けられている。制動機構51は、図6に示すように、制動回転体511と、第1連結ギア412と、第2連結ギア413とを有する。
【0052】
制動機構51の第1連結ギア412及び第2連結ギア413は、送り機構41の第1連結ギア412及び第2連結ギア413と同じものである。第2連結ギア413には、第2アクチュエータ52が発生させた回転が入力される。第2連結ギア413に入力された回転は、第1連結ギア412を介して制動回転体511に伝達される。
【0053】
制動回転体511は、上下方向と平行な軸を中心に回転する複合歯車である。制動回転体511は、第1ハウジング514Aと第2ハウジング514Bとで構成されるケーシング内に収納されている。
【0054】
制動回転体511は、ピニオン511Aと、第1ヘリカルギア511Bとを有する。ピニオン511Aと第1ヘリカルギア511Bとは軸方向に連結されている。ピニオン511Aの中心軸と第1ヘリカルギア511Bの中心軸とは一致する。
【0055】
ピニオン511Aは、複数の制動突起部511Cを有する。複数の制動突起部511Cは、ピニオン511Aの歯を構成しており、ピニオン511Aの周方向に等間隔で配置されている。また、複数の制動突起部511Cの形状は同一である。本実施形態では、制動突起部511Cの数は、駆動突起部411Cの数と同じである。
【0056】
図7に示すように、複数の制動突起部511Cの制動回転体511の回転方向における幅(つまり制動回転体511のピニオン511Aの歯厚)は、複数の駆動突起部411Cの駆動回転体411の回転方向における幅(つまり駆動回転体411のピニオン411Aの歯厚)よりも小さい。
【0057】
制動回転体511は、複数の制動突起部511Cが固定レール3の複数の駆動用開口36への出入りを順に行うように回転する。図5に示すように、制動突起部511Cは、ピニオン511Aの回転に伴って、シート幅方向内側(つまり左側)から駆動用開口36に進入した後、駆動用開口36から離脱する。
【0058】
制動回転体511は、制動突起部511Cが駆動用開口36の縁に当接しないように(つまり固定レール3に対し空振りするように)駆動回転体411と同じ速度かつ同じ方向に回転する。本実施形態では、制動回転体511における制動突起部511Cの位相は、駆動回転体411における駆動突起部411Cの位相とずれている。
【0059】
具体的には、1つの駆動突起部411Cが1つの駆動用開口36に嵌まり込んでいるときに、2つの制動突起部511Cが隣接する2つの駆動用開口36に1つずつ挿入されるように位相がずらされている。
【0060】
(第2アクチュエータ)
図2に示す第2アクチュエータ52は、制動機構51を駆動させる。第2アクチュエータ52は、可動レール2に取り付けられている。第2アクチュエータ52は、電動式、空気式及び油圧式のいずれであってもよい。
【0061】
<制御部>
制御部6は、着席者によるスライド操作に基づいて駆動ユニット4及び制動ユニット5を制御することで、可動レール2をスライドさせるように構成されている。なお、スライド操作は、例えば、乗物又は乗物用シート10に取り付けられた物理的又は電子的なスイッチ、レバー等によって行われる。
【0062】
制御部6は、例えば、プロセッサと、RAM、ROM等の記憶媒体と、入出力部とを備えるコンピュータにより構成される。制御部6は、予め記憶されたプログラムを実行することで、駆動ユニット4及び制動ユニット5を制御する。なお、制御部6は、乗物に搭載されるエレクトロニックコントロールユニット(ECU)に組み込まれてもよい。
【0063】
制御部6は、可動レール2をスライドさせるスライド処理と、可動レール2を停止させる停止処理と、スライド処理の前に実行される予備処理とを実行するように構成されている。
【0064】
スライド処理では、制御部6は、駆動回転体411及び制動回転体511の第1方向D1への回転により可動レール2をスライドさせる。なお、図5では、シート後方へのスライドを例にとって第1方向D1は時計回りとしているが、シート前方へのスライドでは、第1方向D1は反時計回りとなる。
【0065】
停止処理では、制御部6は、駆動回転体411及び制動回転体511の回転の停止により可動レール2のスライドを停止させる。また、制御部6は、駆動回転体411の回転の停止後、制動回転体511を第1方向D1とは反対の第2方向D2に回転させることで、複数の駆動用開口36の縁に複数の制動突起部511Cの少なくとも1つを当接させる。
【0066】
具体的には、制御部6は、可動レール2が停止した後に、図5に二点鎖線で示すように制動突起部511Cが駆動用開口36の縁に当接する位置まで制動回転体511を第2方向D2に回転させる。この間、駆動回転体411は回転させない。
【0067】
図5の例では、制御部6の停止処理によって、1つの駆動突起部411Cが駆動用開口36の縁にシート前方から当接すると共に、2つの制動突起部511Cが駆動用開口36の縁にシート後方から当接する。
【0068】
予備処理では、制御部6は、スライド処理を開始する前に、駆動回転体411を停止したまま制動回転体511を第1方向D1に回転させ、制動突起部511Cを駆動用開口36の縁から離間させる。
【0069】
[1-2.処理]
以下、図8のフロー図を参照しつつ、制御部6がシート11をスライドさせるときに実行する処理について説明する。
【0070】
制御部6は、着席者からスライド開始の入力を受けると、予備処理を実行する(ステップS110)。予備処理の実行後、制御部6は、続けてスライド処理を実行する(ステップS120)。
【0071】
スライド処理の実行後、制御部6は、停止フラグがあるか否かを判定する(ステップS130)。停止フラグとは、目的のスライド位置に到達した場合、スライド限界位置に到達した場合、着席者からスライド停止の入力を受けた場合等に生成される。
【0072】
停止フラグがある場合(S130:YES)、制御部6は、停止処理を実行して(ステップS140)、処理を終了する。停止フラグがない場合(S130:NO)、制御部6は、スライド処理(S120)を継続する。
【0073】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)スライドの停止後に、制動突起部511Cのいずれかが固定レール3の駆動用開口36の縁に可動レール2がスライドしていた前進方向とは反対の後退方向から当接する。これにより、可動レール2の後退方向への移動が規制される。その結果、駆動回転体411を用いた駆動ユニット4を備えるスライド装置1において、スライド方向の位置に関わらず、停止している可動レール2のガタツキを抑制できる。
【0074】
(1b)制動突起部511Cの数が駆動突起部411Cの数と同じであることで、駆動回転体411と制動回転体511とを同期させ易くなるため、これらの回転体の回転制御が容易となる。
【0075】
(1c)制動突起部511Cの幅が駆動突起部411Cの幅よりも小さいことで、可動レール2のスライド時に駆動用開口36の縁への制動突起部511Cの接触を抑制しつつ、制動突起部511Cを駆動用開口36に出し入れすることができる。そのため、共通の駆動用開口36に駆動突起部411Cと制動突起部511Cとを出し入れすることができる。
【0076】
(1d)ウォームギアと複数のヘリカルギアとを組み合わせて駆動回転体411及び制動回転体511を回転させることで、駆動回転体411及び制動回転体511の逆転が防止される。そのため、可動レール2の停止時に駆動回転体411及び制動回転体511が回転することによるガタツキが抑制される。
【0077】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0078】
(2a)上記実施形態のスライド装置1において、制動突起部511Cの数は、必ずしも駆動突起部411Cの数と同じでなくてもよい。また、制動突起部511Cの幅は、必ずしも駆動突起部411Cの幅よりも小さくなくてもよい。駆動回転体411による固定レール3の送り機能が阻害されなければ、制動突起部511Cの幅は、駆動突起部411Cの幅以上であってもよい。
【0079】
(2b)上記実施形態のスライド装置1において、図9に示すように、固定レール3は、複数の駆動用開口36とは別に、スライド方向に並んで配置された複数の制動用開口37を有してもよい。制動突起部511Cは、駆動用開口36の代わりに制動用開口37に出入りしてもよい。
【0080】
(2c)上記実施形態の乗物用シート10は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0081】
(2d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0082】
1…スライド装置、2…可動レール、3…固定レール、4…駆動ユニット、
5…制動ユニット、6…制御部、10…乗物用シート、11…シート、
34A…第1内壁、34B…第2内壁、36…駆動用開口、37…制動用開口、
41…送り機構、42…第1アクチュエータ、51…制動機構、
52…第2アクチュエータ、411…駆動回転体、411A…ピニオン、
411B…第1ヘリカルギア、411C…駆動突起部、412…第1連結ギア、
412A…第2ヘリカルギア、412B…ウォームギア、413…第2連結ギア、
414A…第1ハウジング、414B…第2ハウジング、511…制動回転体、
511A…ピニオン、511B…第1ヘリカルギア、511C…制動突起部、
514A…第1ハウジング、514B…第2ハウジング。
図1
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図9