(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】ホモセリン誘導体の吸着材料
(51)【国際特許分類】
B01J 20/22 20060101AFI20230912BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20230912BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20230912BHJP
A61K 31/785 20060101ALI20230912BHJP
A61M 1/36 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B01J20/22 C
B01J20/28 A
A61P31/00
A61K31/785
A61M1/36 165
(21)【出願番号】P 2020053879
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2019067549
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神田 峻吾
(72)【発明者】
【氏名】關谷 由美子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 博
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/049962(WO,A1)
【文献】特開2012-005827(JP,A)
【文献】国際公開第2012/057185(WO,A1)
【文献】特開2007-202635(JP,A)
【文献】特開2002-017850(JP,A)
【文献】特開平05-228209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/28,20/30-20/34
B01J 20/281-20/292
G01N 30/00-30/96
A61P 1/00-43/00
A61K 31/33-33/44
A61M 1/00-1/38,60/00-60/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料を含み、
アミノ基の含量は、前記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり7.4~12.0mmolであり、
アミド基の含量は、前記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり2.8~10.0mmolであり、
前記水不溶性材料は、直径が1~100μmの繊維からなる、ホモセリン誘導体の吸着材料。
R
1R
2N-X-NR
3R
4 ・・・(1)
[式(1)中、Xは、8~50個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~15個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換されていてもよいアニリド基であるが、R
3及びR
4が、同時に置換されていてもよいアニリド基を表すことはない。]
【請求項2】
前記一般式(1)中のXは、8~14個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~4個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R
1~R
4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である、請求項1記載の吸着材料。
【請求項3】
前記繊維は、ポリオレフィンを島成分とし、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体を海成分とする、海島型複合繊維である、請求項1又は2記載の吸着材料。
【請求項4】
前記直径は、20~50μmである、請求項1~3のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項5】
前記ホモセリン誘導体は、N-アシル化ホモセリンラクトン誘導体である、請求項1~4のいずれか一項記載の吸着材料。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホモセリン誘導体の吸着材料に関する。
【背景技術】
【0002】
細菌はオートインデューサーと呼ばれるフェロモン様の低分子化合物を細胞間コミュニケーション分子として利用し、クオラムセンシング機構を介して菌密度に応じて遺伝子発現を調節していることが知られている(非特許文献1)。
【0003】
オートインデューサーの濃度が増加すると、細菌が集団的にバイオフィルムの形成や各種病原因子の生産といった挙動をすることが知られており、生体内でのオートインデューサー濃度増大によるバイオフィルムの形成は、緑膿菌感染症等の各種感染症の難治化・慢性化要因になっていると指摘されている。
【0004】
そのため、これまでに細菌のクオラムセンシング機構と感染症の病態改善との関係性に着目した、クオラムセンシング阻害作用について研究がなされている。
【0005】
例えば、特許文献1には、所定の置換基で修飾したシクロデキストリン誘導体によって、オートインデューサーの一つであるN-アシル-L-ホモセリンラクトンを再現性よく、高い選択率でトラップし、グラム陰性細菌のクオラムセンシング機構を阻害する方法が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも1つの疎水性部分と少なくとも1つの親水性部分とを有し、物理架橋可能な重合体と、前記重合体内に、オートインデューサーを吸着するための吸着部を形成させたクオラムセンシング制御用担体が開示されている。
【0007】
非特許文献2には、緑膿菌性慢性気道感染症に有効性を示すマクロライド剤とクオラムセンシング機構との関係について開示されている。
【0008】
一方で、特許文献3には、感染症により血液中に産生される血液成分を吸着する材料として、基材にアミド基とアミノ基とを有するリガンドが結合した水不溶性材料であって、該アミド基と該アミノ基の含量に特徴がある吸着材料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-280736号公報
【文献】特開2016-214126号公報
【文献】国際公開第2018/047929号
【非特許文献】
【0010】
【文献】Nakayamaら、腸内細菌学雑誌、25,221-234(2011)
【文献】Tatedaら、日内会誌、99、2677-2681(2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1記載のシクロデキストリン誘導体を用いるクオラムセンシング機構を阻害する方法では、水溶性のシクロデキストリン誘導体を吸着材料として用いることから、水中や生体中からオートインデューサーを吸着する際に当該材料自体が溶出する恐れがあるという点で仕様に制限があり、改良の余地がある。
【0012】
特許文献2には、重合体が物理架橋によって3次元網目構造を形成し、該構造に存在する無数の空孔(吸着部)において存在するカルボキシル基等や疎水性部分がオートインデューサーと相互作用すると記載されている一方で、アミド基やアミノ基については、重合体に含まれる親水性部分としての一般的な例示のみで、当該親水性部分とオートインデューサーとの関係について一切開示や示唆はない。
【0013】
特許文献3記載の吸着材料は、水不溶性材料に含まれるアミド基の含量とアミノ基の含量をそれぞれ、3.0~7.0mmol/g、1.0~7.0mmol/gの範囲にすることで血液成分(インターロイキン-6やインターロイキン-8といったサイトカインや活性化白血球-活性化血小板複合体等)に対する吸着性能が発揮できるとしているが、細菌由来のオートインデューサーに対する吸着性能について一切開示や示唆はない。
【0014】
そこで本発明は、N-アシル-L-ホモセリンラクトン等のホモセリン誘導体に対する高い吸着性能を有する吸着材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を進めた結果、所定の式で表されるポリアミンを、アミド基を含むリンカーを介して基材に結合させた繊維状の水不溶性材料を含有させ、さらにその繊維の直径や該材料中に含まれるアミノ基量とアミド基量を所定の範囲とすることで、ホモセリン誘導体を高効率で吸着できることを見出した。
【0016】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)を提供する。
(1) 以下の一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料を含み、アミノ基の含量は、上記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり7.4~12.0mmolであり、アミド基の含量は、上記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり2.8~10.0mmolであり、上記水不溶性材料は、直径が1~100μmの繊維からなる、ホモセリン誘導体の吸着材料。
R1R2N-X-NR3R4 ・・・(1)
[式(1)中、Xは、8~50個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~15個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換されていてもよいアニリド基であるが、R3及びR4が、同時に置換されていてもよいアニリド基を表すことはない。]
(2) 上記一般式(1)中のXは、8~14個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~4個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基である、(1)記載の吸着材料。
(3) 上記繊維は、ポリオレフィンを島成分とし、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体を海成分とする、海島型複合繊維である、(1)又は(2)記載の吸着材料。
(4) 上記直径は、20~50μmである、(1)~(3)のいずれかに記載の吸着材料。
(5) 上記ホモセリン誘導体は、N-アシル化ホモセリンラクトン誘導体である、(1)~(4)のいずれかに記載の吸着材料。
(6) (1)~(5)のいずれかに記載の吸着材料を備える、吸着カラム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の吸着材料は、ホモセリン誘導体を高効率で吸着できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明のホモセリン誘導体の吸着材料は、以下の一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料を含み、アミノ基の含量は、上記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり7.4~12.0mmolであり、アミド基の含量は、上記水不溶性材料の乾燥重量1g当たり2.8~10.0mmolであり、上記水不溶性材料は、直径が1~100μmの繊維からなることを特徴としている。
R1R2N-X-NR3R4 ・・・(1)
[式(1)中、Xは、8~50個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~15個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換されていてもよいアニリド基であるが、R3及びR4が、同時に置換されていてもよいアニリド基を表すことはない。]
【0020】
「ポリアミン」とは、上記の一般式(1)で表されるアミノ基含有化合物を意味する。ポリアミンは、1種を単独で用いてもよく、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
一般式(1)において、Xは、例えば、8~50個(例えば、8~29個、8~14個)の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~15個(例えば、2~12個、2~4個)の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基(例えば、1~6個、1~4個の炭素原子を有する。)で置換されていてもよい。R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基(例えば、1~6個、1~4個の炭素原子を有する。)であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(例えば、1~6個、1~4個の炭素原子を有する。)又は置換されていてもよいアニリド基(例えば、アルキル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、カルボン酸基、ニトロ基、スルホン酸基で置換されたアニリド基)であるが、R3及びR4が、同時に置換されていてもよいアニリド基を表すことはない。
【0022】
吸着性能の観点から、上記一般式(1)で表されるポリアミンは、Xは、8~29個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~12個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1及びR2は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基又は置換されていてもよいアニリド基であるが、R3及びR4が、同時に置換されていてもよいアニリド基を表すことはない、ことが好ましい。上記一般式(1)で表されるポリアミンは、Xは、8~14個の炭素原子を有する飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基において2~4個の炭素原子を窒素原子で置き換えたヘテロ原子含有炭素鎖であり、該窒素原子に結合する水素原子は、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、R1~R4は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基であることがより好ましい。
【0023】
リンカーと結合するポリアミン中の窒素原子は、R1及びR2が結合する窒素原子であっても、Xに含まれる窒素原子であっても、R3及びR4が結合する窒素原子であってもよいが、R3又はR4の何れか一方が、置換されていてもよいアニリド基である場合は、R1及びR2が結合する窒素原子又はXに含まれる窒素原子とリンカーが結合することが好ましい。
【0024】
「アミノ基を有していてもよいアルキル基」の炭素原子数に特に制限はないが、アミノ基導入量の制御の容易さから、1~6個であることが好ましく、1~4個であることがより好ましい。
【0025】
R1~R4において、「アルキル基」の炭素原子数に特に制限はないが、アミノ基導入量の制御の容易さから、それぞれ独立して、1~6個であることが好ましく、1~4個であることがより好ましい。
【0026】
飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基は、いずれも直鎖状が好ましい。
【0027】
R3及びR4において、置換されていてもよいアニリド基とは、アニリド基中のベンゼン環上の水素原子が任意の置換基に置換されていてもいいことを意味し、アニリド基導入の制御の容易さから、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、スルホン酸基で置換されているアニリド基が好ましく、ハロゲン原子で置換されているアニリド基がより好ましく、塩素原子で置換されているアニリド基がさらに好ましい。
【0028】
置換されていてもよいアニリド基において、置換する官能基の位置、個数についても特に限定はないが、アミド結合のパラ位が置換されていることが好ましく、アミド結合のパラ位のみ1置換されていることがより好ましい。
【0029】
置換されていてもよいアニリド基としては、例えば、アニリド基、p-ヒドロキシアニリド基、o-ヒドロキシアニリド基、m-ヒドロキシアニリド基、p-フルオロアニリド基、o-フルオロアニリド基、m-フルオロアニリド基、p-クロロアニリド基、o-クロロアニリド基、m-クロロアニリド基、p-ブロモアニリド基、o-ブロモアニリド基、m-ブロモアニリド基、p-ニトロアニリド基、o-ニトロアニリド基、m-ニトロアニリド基、p-アニリドスルホン酸基、o-アニリドスルホン酸基、m-アニリドスルホン酸基が挙げられる。
【0030】
一般式(1)で表されるポリアミンは、下記一般式(1-1)~(1-3)のいずれかで表されるポリアミンであることが好ましい。
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH2 ・・・式(1-1)
[式(1-1)中、p1、p2及びp3は、それぞれ独立に、2~44(好ましくは2~5、2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3の和は48以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基又は置換されていてもよいアニリド基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH2 ・・・式(1-2)
[式(1-2)中、p1、p2、p3及びp4は、それぞれ独立に、2~41(好ましくは2~5、2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3及びp4の和は47以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基又は置換されていてもよいアニリド基で置換されていてもよい。]、
H2N-(CH2)p1-NH-(CH2)p2-NH-(CH2)p3-NH-(CH2)p4-NH-(CH2)p5-NH2 ・・・式(1-3)
[式(1-3)中、p1、p2、p3、p4及びp5は、それぞれ独立に、2~38(好ましくは2~5、2~4、2~3、2)の整数であり、p1、p2、p3、p4及びp5の和は46以下であり、2級アミノ基の水素原子は、それぞれ独立に、アミノ基を有していてもよいアルキル基で置換されていてもよく、両末端の1級アミノ基の水素原子のうち少なくとも1つはアルキル基又は置換されていてもよいアニリド基で置換されていてもよい。]
【0031】
一般式(1-1)~(1-3)において、2級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アミノ基を有していてもよいアルキル基」及び両末端の1級アミノ基の窒素原子に結合し得る「アルキル基」の炭素原子数に特に制限はないが、アミノ基導入量の制御の容易さから、それぞれ独立して1~6個であることが好ましく、1~4個であることがより好ましい。それぞれのアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐鎖状であってもよい。
【0032】
一般式(1)で表されるポリアミンとしては、例えば、エチレンイミン繰り返し構造を有するポリアミンが挙げられ、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。また、その他にも、以下のポリアミンが挙げられる。アミノブチルカダベリン;ノルスペルミン;テルモスペルミン;アミノプロピルホモスペルミジン;カナバルミン;ホモスペルミン;アミノペンチルノルスペルミジン;N,N-ビス(アミノプロピル)カダベリン;カルドペンタミン;ホモカルドペンタミン;テルモペンタミン;カルドヘキサミン;ホモカルドヘキサミン;テルモヘキサミン;ホモテルモヘキサミン;N4-アミノプロピルノルスペルミジン;N4-アミノプロピルスペルミジン;N4-アミノプロピルノルスペルミン。
【0033】
一般式(1)において、R1~R4の好ましい態様やXの好ましい態様や後述のアニリド基の含量の好ましい態様は任意に組み合わせることができる。
【0034】
「アミノ基」とは、水不溶性材料中に含まれるアミノ基を意味し、本発明におけるアミノ基は、一般式(1)で表されるポリアミン由来のアミノ基を含む。
【0035】
「アミド基」とは、水不溶性材料中に含まれるリンカー中のアミド基を意味し、1級アミド基、2級アミド基、3級アミド基のいずれのアミド基でもよいが、2級アミド基が好ましい。また、リンカーは少なくとも一つのアミド基を含み、リンカー中のアミド基がアルキレン基を介して基材に共有結合していることが好ましい。ここで、アニリド基に含まれるアミド結合は、上記アミド基には含まない。これは、ポリアミン末端の窒素原子とアニリド基中に含まれるアミド基とで尿素結合を形成するため、アニリド基由来のアミド基が含まれないためである。
【0036】
「基材」とは、ポリアミンが結合したアミド基を含むリンカーを化学修飾によって固定可能である材料を表し、吸着材料が海島型複合繊維形状の場合は、海成分が基材となる。基材の材質としては、例えば、芳香環、水酸基等、炭素カチオンとの反応性を有する官能基を繰り返し構造中に含むポリマーであり、ポリ(芳香族ビニル化合物)(例えば、ポリスチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリスルホン、ポリビニルアルコール等の合成ポリマーや、セルロース、コラーゲン、キチン、キトサン、デキストラン等の天然ポリマー、さらに、上記合成ポリマーや天然ポリマーにアルキル基、ハロゲン基、ハロゲン化アルキル基、アセタール基、エーテル基等が付与された誘導体でもよく、例えば、ポリスチレン誘導体であれば、ポリp-クロロメチルスチレン、ポリα-メチルスチレン、ポリβ-メチルスチレン、ポリp-tert-ブトキシスチレン、ポリp-アセトキシスチレン、ポリp-(1-エトキシエトキシ)スチレンが挙げられる。これらのポリマーの組成に、特に制限はないが、単独重合体、上記ポリマー同士の共重合体又は複数の上記ポリマーを物理的にブレンドして用いてもよい。特に、水酸基を有さない材料である、ポリ(芳香族ビニル化合物)(例えば、ポリスチレン)若しくはその誘導体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)若しくはその誘導体又はポリスルホン若しくはその誘導体が好ましく、ポリスチレン若しくはポリスルホン又はそれらの誘導体、つまりポリスチレン若しくはその誘導体又はポリスルホン若しくはその誘導体がより好ましい。中でも単位重量当たりの芳香環の数が多く、アミド基を含むリンカーを介して結合したポリアミンが導入しやすいことから、ポリスチレン又はその誘導体がさらに好ましく、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体が最も好ましい。
【0037】
基材に用いるポリマーの結晶性に限定はないが、運動性が高く、ホモセリン誘導体を吸着しやすいといった観点から非結晶性のポリマーを用いること好ましい。ここで非結晶性とは、ポリマーの結晶化度が20%未満であることを意味し、結晶性とは、ポリマーの結晶化度が20%以上であることを意味する。ポリマーの結晶化度は熱示差測定器を用いて公知の方法により測定できる。非結晶性のポリマーとしては、例えば、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体が挙げられる。
【0038】
ポリマーの結晶化度は、重合反応時の触媒設計を適切に選択して立体規則性を向上させる、水酸基をポリマー構造中に導入する、といった方法により向上させることができる。
【0039】
また、基材に用いるポリマーは、架橋構造を含んでいてもよい。架橋構造に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の二官能性モノマーを共重合することで架橋構造を導入したポリマーや、アルデヒドのような架橋剤をポリマー中の芳香環、水酸基等の官能基と反応させることで架橋構造を導入したポリマーが好ましく、調達の容易性から二官能性化合物をポリマー中の芳香環、水酸基等の官能基と反応させることで架橋構造を導入したポリマーがより好ましく、ホルムアルデヒドを架橋剤として用いるのがさらに好ましい。
【0040】
「吸着材料」とは、水不溶性材料を少なくとも材料の一部として含む材料を意味し、水不溶性材料単独のもの及び強度保持のために適当な補強材と水不溶性材料を混合等されたものを含む。混合等の操作は、目的とする形状に加工する前に行ってもよいし、加工した後に行ってもよい。
【0041】
「水不溶性材料」とは、水に不溶性の材料である。ここで、水に不溶とは、水不溶性材料を水に入れた前後の乾燥重量変化が1%以下であることを意味する。この乾燥重量変化は水不溶性材料を乾燥重量の10倍量の37℃の水に1時間浸漬した後にピンセット等で引き上げ、残った水を50℃以下で真空乾燥させた後に残った固形分の乾燥重量の浸漬前の材料乾燥重量に対する割合である。不溶化されていない場合は、実際に使用する場合の溶出物が多くなる危険性があり、安全上好ましくない。
【0042】
補強材に特に限定はないが、強度保持という目的を達成する観点から耐薬品性と強度が高いポリマーが好ましく、芳香環及び/又は水酸基を含まない化合物をモノマーとする重合体からなるポリマーが好ましい。具体的には、アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、ε―カプロラクタム及びメチルメタクリレートからなる群から選択される一種類以上をモノマーとする重合体、又は上記群から選ばれる一種類以上をモノマーとする重合体を二種類以上ブレンドした混合物からなるポリマーが挙げられる。中でも、基材との相溶性が低く、吸着性能に影響を及ぼしにくいことが知られているエチレン及び/又はプロピレンをモノマーとする重合体からなるポリマーが好ましく、特に加工性や強度の観点からプロピレンをモノマーとする重合体からなるポリマーがさらに好ましい。
【0043】
補強材の形状に特に限定はないが、吸着材料の強度を補強する観点から、基材と補強材で海島型複合繊維を形成していることが好ましく、特に海島型複合繊維の島成分が補強材として機能することが好ましい。
【0044】
「水不溶性材料の乾燥重量」とは、乾燥状態の水不溶性材料の重量を意味し、水不溶性材料に補強材が含まれている場合は、該補強材の重量は含まない。水不溶性材料に補強材が含まれている場合は、例えば水不溶性材料が溶解せず、補強材のみが溶解する溶媒に溶かす、又は補強材を目視判断で物理的に分離するといった手法により水不溶性材料のみを取り出す。ここで乾燥状態の水不溶性材料とは、当該水不溶性材料中に含まれる液体成分の量が1重量%以下の状態を表し、水不溶性材料の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した水不溶性材料の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該水不溶性材料は乾燥状態とみなす。
【0045】
水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量は、低すぎると吸着性能が十分発現せず、高すぎると導入反応自体が困難であることから、水不溶性材料の乾燥重量1g当たり7.4~12.0mmolであり、好ましくは7.7~11.0mmolである。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、上記の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量と後述の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量と後述の繊維の直径は、任意に組み合わせることができる。
【0046】
水不溶性材料のアミノ基の含量は、吸着材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かす、又は物理的に分離するといった手法により水不溶性材料のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性材料中のアミノ基を塩酸でイオン交換し、水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定することより決定することができる。固体の重量を測定した後に80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、残存した固体の重量減少量が乾燥前の重量の1重量%以下であるとき、当該固体は乾燥状態とみなす。また、重量減少量が1重量%を上回る場合は、再度80℃、大気圧で24時間加熱乾燥し、重量減少量が1重量%を下回るまで繰り返すことで乾燥状態にできる。補強材を含まない吸着材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。
【0047】
ホモセリン誘導体の吸着性能及び芳香環への置換率の限界の観点から、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量は、2.8~10.0mmolであり、好ましくは、3.1~9.5mmolである。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、上記の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量と上記の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量と後述の繊維の直径は、任意に組み合わせることができる。
【0048】
水不溶性材料のアミド基の含量は、吸着材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かす、又は物理的に分離するといった手法により水不溶性材料のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性材料を塩酸中で加熱することにより加水分解し、生成したアミノ基を塩酸でイオン交換し、水酸化ナトリウム水溶液で逆滴定することで決定することができる。補強材を含まない吸着材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。なお、ここで生成するアミノ基はリンカーのアミド基に由来し、アニリド基由来のアミン化合物は塩酸中に溶出するため、アミド基とアニリド基は切り分けて測定することができる。
【0049】
水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアニリド基の含量に特に限定はないが、水不溶性材料の乾燥重量1g当たり0.001mmol~4mmolであることが好ましく、0.01~2mmolであることがより好ましい。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。
【0050】
水不溶性材料のアニリド基の含量は、吸着材料に含まれる補強材を、補強材のみが溶解する溶媒に溶かす、又は物理的に分離するといった手法により水不溶性材料のみを取り出して、乾燥後に、乾燥重量を測定し、当該水不溶性材料を塩酸中で加熱することにより加水分解し、溶出したアニリド基由来のアミン化合物の濃度を吸光度計により測定することで決定できる。補強材を含まない吸着材料の場合は補強材を溶媒に溶かす操作は不要である。なお、アニリド基由来のアミン化合物は塩酸中に溶出し、アミド基由来のアミノ基は水不溶性材料中に残存するため、アミド基とアニリド基は切り分けて測定することができる。
【0051】
本実施形態に係る吸着材料において、各官能基の含量は、例えば、以下の観点で制御することができる。
【0052】
アミノ基の含量に関しては、本実施形態に係る吸着材料の製造工程の一つとして、一般式(1)で表されるポリアミンを含む溶液を、リンカー部位(例えば、クロロアセトアミドメチル基)を導入した基材に混合する工程がある。上記工程において、ポリアミンとリンカーを共有結合させる際、ポリアミンの添加量を増やす、溶液中に添加するポリアミンの単位分子量あたりの塩基性窒素原子の数を増やす、基材の溶解性が高い溶媒に変更するといった操作を行うことで、該水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量を増大させることができる。
【0053】
アミド基の含量に関しては、本実施形態に係る吸着材料の製造工程の一つとして、触媒存在下、基材をリンカー材料(例えば、N-メチロール-α-クロロアセトアミド)の溶液に含浸させる工程がある。上記工程において、リンカー材料の添加量を増やす、溶液中に添加する触媒の酸性度を上げる、基材の溶解性が高い溶媒に変更するといった操作を行うことで、該水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量を増大させることができる。
【0054】
アニリド基の含量に関しては、本実施形態に係る吸着材料の製造工程の一つとして、一般式(1)で表されるポリアミンを含む溶液とフェニルイソシアネート化合物(例えば、フエニルイソシアネート)を混合し、続けてリンカー部位(例えば、クロロアセトアミドメチル基)を導入した基材に混合する工程がある。上記工程において、フェニルイソシアネート化合物の添加量を増やす、ポリアミンの添加量を増やす、基材の溶解性が高い溶媒に変更するといった操作を行うことで該水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアニリド基の含量を増大させることができる。
【0055】
「ポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料」とは、ポリアミンが、アミド結合を含むリンカーと結合し、該リンカーが基材と結合した水不溶性材料を指す。ここで、各結合は共有結合が好ましい。
【0056】
「リンカー」とは、ポリアミンと基材とを結合する化学構造であり、該構造中にアミド基を含む。リンカーにはアミド基以外に電気的に中性の化学構造を含んでいてもよく、該化学構造としては、例えばアルキレン基、尿素結合、エーテル結合又はエステル結合等の電気的に中性の化学結合が挙げられるが、ポリアミンの運動性を高め、吸着性能を向上する観点から、アルキレン基が好ましい。リンカー中に含まれるアミド基の個数に特に限定はないが、例えば、アミド基の個数は1個であることが好ましく、アミド基の個数が1個であり、該アミド基の窒素原子とカルボニル炭素原子の両方にそれぞれアルキレン基(例えば、炭素原子数1~6個、1~3個、1個)が付与されていることがより好ましい。
【0057】
アルキレン基の炭素原子数に特に限定はないが、アミノ基導入量の制御性から、炭素原子数1~6個が好ましく、炭素原子数1~3個(メチレン基、エチレン基、プロピレン基)がより好ましく、炭素原子数1個(メチレン基)が特に好ましい。
【0058】
一実施形態において、ポリアミン中の末端窒素原子(NR3R4)とアニリド基中に含まれるアミド基とで尿素結合を形成する。なお、実際の反応においては、ポリアミン中の末端窒素原子とフェニルイソシアネート等とを反応させ、尿素結合を形成させる。
【0059】
アニリド基中に含まれるアミド結合は、2級アミド結合であることが好ましい。
【0060】
水不溶性材料は、直径が1~100μmの繊維からなる。繊維の中でも、繊維をさらに加工した、糸束、ヤーン、ネット、編地、織物等が好ましく、表面積や流路抵抗を考慮すると、糸束、編地、織物がより好ましく、特に、単位体積当たりの充填重量が多いことから、編地が好ましい。
【0061】
接触面積向上と材料の強度維持の観点から、繊維の直径(以下、繊維径とも称する。)は1~100μmであり、好ましくは5~80μmであり、より好ましくは10~60μmであり、さらに好ましくは20~50μmであり、さらに好ましくは20~40μmである。いずれの好ましい下限値もいずれの好ましい上限値と組み合わせることができる。なお、上記の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量と上記の水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量と上記の繊維の直径は、任意に組み合わせることができる。
【0062】
「繊維の直径」とは、繊維の小片サンプル10個をランダムに採取して、走査型電子顕微鏡を用いて1000~3000倍の写真をそれぞれ撮影し、各写真辺り10カ所(計100箇所)の繊維の直径を測定した値の平均値を意味する。
【0063】
繊維径は、紡糸時のポリマー吐出量の減少、巻取り速度高速化により細くすることができる。また、リガンドを導入する場合はリガンド導入時の溶媒含浸によって膨潤させることで繊維径を太くすることができるため、条件を適時調整することで繊維径を目的の範囲に制御することができる。
【0064】
繊維の断面構造としては、例えば、1種類のポリマーからなる単独繊維、海島型若しくはサイドバイサイド型の複合繊維又は2種類のポリマーを混練したアロイ繊維が挙げられるが、繊維強度と吸着性能を両立する発現する観点から複合繊維が好ましく、海島型複合繊維がより好ましい。海島型複合繊維の場合、海成分が基材、島成分が補強材として機能することが好ましい。
【0065】
海島型複合繊維とは、あるポリマーからなる島成分が他方のポリマーからなる海成分の中に点在する断面構造を有しているものである。芯鞘型繊維は、島成分数が1の海島型複合繊維とする。海島型複合繊維の断面形状に特に制限はないが、摩擦によるダメージを受けにくいことから円形であることが好ましい。島成分の断面形状については特に制限はない。
【0066】
海成分とは、海島型複合繊維の表面側に存在するポリマーを意味する。海成分の材質は吸着性能発現の観点から基材として機能することが好ましく、例えば、ポリ(芳香族ビニル化合物)(例えば、ポリスチレン)若しくはその誘導体、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)若しくはその誘導体又はポリスルホン若しくはその誘導体が好ましく、ポリスチレン若しくはポリスルホン又はそれらの誘導体、つまりポリスチレン若しくはその誘導体又はポリスルホン若しくはその誘導体がより好ましい。中でも単位重量当たりの芳香環の数が多く、アミド基を含むリンカーを介して結合したポリアミンが導入しやすいことから、ポリスチレン又はその誘導体がさらに好ましく、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体が最も好ましい。
【0067】
島成分とは、海島型複合繊維の海成分中に点在するポリマーを意味する。島成分の材質は強度保持の観点から補強材として機能することが好ましく、芳香環及び/又は水酸基を含まない化合物をモノマーとした重合反応により、得られるポリマーが好ましい。具体的には、アクリロニトリル、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン)、ε―カプロラクタム及びメチルメタクリレートからなる群から選択される一種類以上をモノマーとした重合反応により、得られるポリマー(例えば、ポリアクリロニトリル、ポリε-カプロラクタム、ポリメチルメタクリレート、ポリオレフィンであるポリエチレン、ポリプロピレン、コポリ(エチレン/プロピレン))、又は上記群から選ばれる一種類以上をモノマーとした重合反応により、得られるポリマーを、二種類以上ブレンドした混合物からなるポリマー(例えば、ポリエチレンとポリプロピレンのアロイ、コポリ(エチレン/プロピレン)とポリエチレンのアロイ、コポリ(エチレン/プロピレン)とポリエチレンのアロイ)が挙げられる。中でも、基材との相溶性が低く、吸着性能に影響を及ぼしにくいことが知られているオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン)をモノマーとした重合反応により、得られるポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、コポリ(エチレン/プロピレン)が好ましく、特に加工性や強度の観点からエチレン及び/又はプロピレンをモノマーとした重合反応により、得られるポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、コポリ(エチレン/プロピレン))がより好ましく、プロピレンをモノマーとした重合反応により、得られるポリマー(例えば、ポリプロピレン)がさらに好ましい。
【0068】
海島型複合繊維において、島成分と海成分の好ましい組み合わせの一例としては、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン及び/又はコポリ(エチレン/プロピレン)を島成分とし、非結晶性のポリスチレン又はその誘導体を海成分とする、海島型複合繊維が挙げられる。
【0069】
「ホモセリン誘導体」とは、ホモセリン中に含まれるカルボキシル基(-COOH)、ヒドロキシ基(-OH)、アミノ基(-NH2)の少なくとも一つの官能基に対して脱水縮合及び/又は水素原子の置換反応を行うことで得られる化合物及びホモセリンそのものを意味する。特に細菌由来の感染症治療に本実施形態の吸着材料を用いる場合は、アミノ基がアシル化され、且つ、分子内で脱水縮合することで得られる、N-アシル化ホモセリンラクトン誘導体(例えば、N-アシル-ホモセリンラクトン、N-アシル-L-ホモセリンラクトン)が吸着対象として好ましい。この場合、アシル基としては、例えば、3-ヒドロキシブチリル基、ブチリル基、ヘキシル基、3-オキソオクタノイル基、3-オキソドデカノイル基等が挙げられ、特に緑膿菌由来の感染症治療に用いる場合はブチリル基が好ましい。つまり、ホモセリン誘導体としては、N-アシル-ホモセリンラクトンが吸着対象として好ましい。
【0070】
「吸着」とは、ホモセリン誘導体が吸着材料に付着し、容易に剥離しない状態を意味する。具体的には静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等の分子間力によってホモセリン誘導体が吸着材料に付着した状態を指すが、吸着の様式はこれに限定されず、ホモセリン誘導体以外の成分が同時に吸着されていてもよい。
【0071】
吸着の様式に特に制限はないが、吸着材料に含まれる水不溶性材料中のアミド基とアミノ基に静電相互作用や水素結合及び基材との疎水性相互作用によって溶液中から水不溶性材料にホモセリン誘導体が吸着されることが好ましい。
【0072】
上記吸着材料は、吸着カラムに充填する担体として好ましく用いられる。上記吸着材料を用いた吸着カラムを体外循環用カラムとして血液浄化療法に用いる場合には、体外に導出した血液を直接カラムに通してもよいし、血漿分離膜等と組み合わせて使用してもよい。
【0073】
上記吸着材料は、例えば、以下の方法により製造することができるが、この方法に限られるものではない。
【0074】
水不溶性材料と補強材が混合された吸着材料は、まず基材と補強材をガラス転移温度以上に加熱して、混練(例えば、二軸混練押し出し機による溶融混練)、密着(例えば、プレス機による圧着、海島構造を有する溶融紡糸)させること、又は基材を良溶媒に溶解させた後に補強材にコーティングし、溶媒のみを留去させ、さらに、上記操作により得られた、基材と補強材を混合した材料に、後述の方法に従い、アミド基を含むリンカーを介して一般式(1)で表されるポリアミンを結合することで製造できる。補強材が混合されていない吸着材料は、基材に、後述の方法に従い、アミド基を含むリンカーを介して一般式(1)で表されるポリアミンを結合することで製造できる。
【0075】
基材と混合する補強材は、市販されているものを用いることができる。
【0076】
糸束、ヤーン、ネット、編地、織物等の加工形状は、繊維を原料として公知の方法により製造することができる。また、編地及びネットの製造方法としては、例えば、平織り法又は筒編み法が挙げられる。
【0077】
一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料のうち、R3又はR4の何れか一方が、置換されていてもよいアニリド基であるものは、例えば、一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料(R3又はR4の何れか一方が水素原子であり、NR3R4は塩基性窒素原子である。)とフェニルイソシアネート化合物(例えば、フェニルイソシアネート)とを反応させることにより製造することができる。この場合、ポリアミンとフェニルイソシアネート化合物とが反応することで、尿素結合(例えば、-NR3-CO-NH-Ph、又は、-NR4-CO-NH-Ph)を形成する。
【0078】
反応に用いるフェニルイソシアネート化合物は、市販されているものを用いることができる。
【0079】
反応溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0080】
反応液量は、ポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料(R3又はR4の何れか一方が水素原子であり、NR3R4は塩基性窒素原子である。)1gに対して、5~1000mLが好ましく、50~500mLがより好ましい。
【0081】
反応温度は、15~80℃が好ましく、20~60℃がより好ましい。
【0082】
反応時間は、30分~24時間が好ましく、30分~6時間が好ましい。
【0083】
一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料は、例えば、クロロアセトアミドメチル化された基材とポリアミンとの反応により製造することができる。この場合、アセトアミドメチル基が、アミド基を含むリンカーとなる。
【0084】
反応に用いるポリアミンは、市販されているものを用いることができる。
【0085】
反応溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0086】
塩基としては、例えば、トリエチルアミン若しくは1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等の有機塩基又は水酸化ナトリウム等の無機塩基が挙げられるが、トリエチルアミン等の有機塩基が好ましい。
【0087】
反応液中の塩基の濃度は、50~1000mMが好ましく、50~100mMがより好ましい。
【0088】
反応液量は、クロロアセトアミドメチル化された基材1gに対して、5~1000mLが好ましく、50~500mLがより好ましい。
【0089】
反応温度は、15~80℃が好ましく、40~60℃がより好ましい。
【0090】
反応時間は、30分~24時間が好ましく、1~8時間が好ましい。
【0091】
また、一般式(1)で表されるポリアミンがアミド基を含むリンカーを介して基材に結合した水不溶性材料のうち、R3又はR4の何れか一方が、置換されていてもよいアニリド基であるものの別の製造方法として、例えば、ポリアミンとフェニルイソシアネート化合物とを反応させて得られた反応生成物を、クロロアセトアミドメチル化された基材と反応させることにより製造することができる。
【0092】
反応に用いるポリアミンは、市販されているものを用いることができる。
【0093】
反応に用いるフェニルイソシアネート化合物は、市販されているものを用いることができる。
【0094】
反応溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン又はジメチルスルホキシドが挙げられるが、ジメチルスルホキシドが好ましい。
【0095】
反応液中のポリアミンの濃度は、フェニルイソシアネート化合物の濃度と同じモル濃度もしくはそれ以上のモル濃度になるよう添加することが好ましい。
【0096】
反応液量は、クロロアセトアミドメチル化された基材1gに対して、5~1000mLが好ましく、50~500mLがより好ましい。
【0097】
反応温度は、15~80℃が好ましく、20~60℃がより好ましい。
【0098】
反応時間は、30分~24時間が好ましく、30分~6時間が好ましい。
【0099】
クロロアセトアミドメチル化された基材は、例えば、触媒存在下、基材へのN-メチロール-α-クロロアセトアミドの導入によって製造することができる。
【0100】
基材及びN-メチロール-α-クロロアセトアミドは、市販されているものを用いることができる。なお、基材は、繊維に成形されたものが好ましく、ポリスチレン又はその誘導体を含む繊維がより好ましい。ポリスチレン又はその誘導体は公知の方法又はそれに準じる方法で製造することができる。
【0101】
反応溶媒としては、例えば、ニトロベンゼン、ニトロプロパン、クロロベンゼン、トルエン又はキシレンが挙げられるが、ニトロベンゼン又はニトロプロパンが好ましい。
【0102】
触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、硝酸又はハロゲン化アルミニウム(III)(例えば、塩化アルミニウム(III))若しくはハロゲン化鉄(III)(例えば、塩化鉄(III))等のルイス酸が挙げられ、硫酸又は塩化鉄(III)が好ましい。
【0103】
反応液中の触媒の濃度は、5~80wt%が好ましく、30~70wt%がより好ましい。
【0104】
反応温度は、0~90℃が好ましく、5~40℃がより好ましい。
【0105】
反応時間は、1分~120時間が好ましく、5分~24時間がより好ましい。
【0106】
また、反応液中に基材を添加する前に、パラホルムアルデヒドを溶解させた溶液(以下、パラホルムアルデヒド溶液とも称する)を反応液に添加してもよい。パラホルムアルデヒドを溶解させる溶媒に制限はないが、反応液の溶媒組成と同じであることが好ましい。パラホルムアルデヒド溶液を添加してから基材を添加するまでの時間は1~30分が好ましく、1~5分がより好ましい。
【0107】
また、本発明は、上記吸着材料を備える吸着カラムを提供することを特徴としている。
【0108】
「吸着カラム」とは、溶液から吸着対象を吸着、分離する機能を有するカラムを指し、本発明における吸着カラムはホモセリン誘導体を吸着する。
【0109】
吸着カラムの容器形状としては、血液の入口と出口を有する容器であればよいが、例えば、円柱状容器又は三角柱状、四角柱状、六角柱状若しくは八角柱状等の角柱状容器が挙げられ、血液成分吸着用担体を積層状に充填できる容器、血液成分吸着用担体を円筒状に巻いたものを充填できる容器又は血液が円筒の外周より入り内側へと流れて容器外に出る容器が好ましい。
【0110】
さらに、上記吸着材料を備える吸着カラムは、細菌由来の感染症治療に用いる体外循環用として細菌由来の感染症の治療に好適に用いることができる。細菌由来の感染症治療用として使用する場合、上記吸着材料を備える吸着カラムと患者とを血液回路で接続し、当該患者から取り出した体液を上記吸着カラムに通過させ、これを患者に戻すという体外循環方法が好ましい。体液等の処理時間としては、血液成分によるさらなる炎症誘発を抑制する観点から、持続的な処理が好ましく、4時間以上がより好ましく、24時間以上がさらに好ましい。
【0111】
上記吸着材料を備える吸着カラムは、他の体液処理方法や医療機器と併用しても構わない。他の体液処理方法や医療機器としては、例えば、血漿交換、腹膜透析、血漿分離器、ヘモフィルター、人工心肺又はECMOが挙げられる。
【0112】
「細菌由来の感染症」とは、細菌に起因して発生する感染症全体を表し、治療できる疾患に特に制限はないが、例えば敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺傷害(ALI)、緑膿菌性由来慢性感染症(例えば呼吸器、肝・胆道系、消化管、尿路)、膵炎等が挙げられる。炎症性疾患の中でも、血液中に細菌混入が発生する疾患であり、血液浄化による治療効果が特に期待できる敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、緑膿菌性由来慢性感染症(例えば呼吸器、肝・胆道系、消化管、尿路)が対象として好ましく、特に細菌由来で疾患が進行する敗血症(例えば、グラム陰性菌由来の敗血症、グラム陽性菌由来の敗血症、培養陰性敗血症、真菌性敗血症)、緑膿菌性由来慢性感染症(例えば呼吸器、肝・胆道系、消化管、尿路)がより好ましい。
【0113】
上記吸着材料の吸着性能の評価方法としては、例えばホモセリン誘導体の一種である、N-ブチリルホモセリンラクトン(以下、C4-HSLとも称する。)を溶解した生理食塩水に吸着材料を含浸し、含浸後の生理食塩水中に残存するC4-HSL濃度を評価し、含浸前後の濃度の差分からその吸着率を算出する方法が挙げられる。C4-HSLは、非特許文献1や2に記載の通り、緑膿菌由来感染症の病態改善のために血液中から除去されることが好ましい物質であるため、含浸することによる濃度変化が大きいほど、上記吸着材料のホモセリン誘導体に対する吸着性能が高いと判断できる。
【0114】
上記吸着材料へのホモセリン誘導体の吸着は静電相互作用、疎水性相互作用、水素結合、ファンデルワールス力等の分子間力に由来する平衡反応であると考えられることから、ホモセリン誘導体の濃度に依存せず、4時間程度吸着処理を実施すれば吸着平衡に達すると考えられる。
【0115】
上記理由より、ホモセリン誘導体の吸着率は、4時間で100%に達することが好ましいため、ホモセリン誘導体の吸着率は、2時間で50%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の吸着材料について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
【0117】
なお、実施例中、wt%は、重量%の意味である。Mは、mol/L、mMは、mmol/Lを表す。なお、特に指定がない場合、編地、吸着材料、水不溶性材料の重量は乾燥重量を表す。総繊度とは、繊維10000m当たりの重さ(グラム)を表し、dtexと表記される。酸塩基滴定におけるpH測定は、HORIBA社製卓上型pHメーターF―74BW(スタンダード ToupH 電極 9615S-10D付属)の電極を25℃の溶液に浸すことで行った。また、測定前には中性リン酸塩標準液(リン酸一カリウム水溶液(3.40g/L)、和光純薬工業(株)社製)及びフタル酸塩標準液(フタル酸水素カリウム水溶液(10.21g/L)、和光純薬工業(株)社製)を用いて校正を行った。吸光度は、(株)島津製作所製紫外可視分光光度計(UV-1280)を用いて、室温下で測定した。吸光度測定の前に事前にブランク測定を行い、バックグラウンドのピークは差し引いた。全反射赤外吸収スペクトルは、Thermo Scientific社製のNicolet iS5 FT-IR(iD5 ダイヤモンドATRアクセサリ付属)を用いて測定した。また、赤外分光測定の前に事前にブランク測定を行い、バックグラウンドのピークは差し引いた。
【0118】
(繊維Aの作製)
海成分としてアタクチック(非結晶性)ポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり704の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度が7.1dtex(直径30μm)である海島型複合繊維A(以下、繊維A)を採取した。
【0119】
(繊維Bの作製)
海成分としてアタクチック(非結晶性)ポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり704の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度が50dtex(直径80μm)である海島型複合繊維B(以下、繊維B)を採取した。
【0120】
(繊維Cの作製)
海成分としてシンジオタクチック(結晶性)ポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり704の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度が7.1dtex(直径30μm)である海島型複合繊維C(以下、繊維C)を採取した。
【0121】
(繊維Dの作製)
アタクチック(非結晶性)ポリスチレンに10wt%のポリプロピレンが溶融混練されたアロイポリマーを一穴の口金から溶融吐出し、単繊度が7.1dtex(直径30μm)であるアロイ繊維D(以下、繊維D)を採取した。
【0122】
(繊維Eの作製)
海成分としてアタクチック(非結晶性)ポリスチレン、島成分としてポリプロピレンを用いて別々に溶融計量し、1つの吐出孔当たり704の島成分用分配孔が穿設された海島複合口金が組み込まれた紡糸パックに流入させて、海島複合流とし、溶融吐出した。島比率を50wt%に制御し、単繊度が110dtex(直径120μm)である海島型複合繊維E(以下、繊維E)を採取した。
【0123】
(編地Aの作製)
繊維Aを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地A(以下、編地A)を作製した。
【0124】
(編地Bの作製)
繊維Bを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地B(以下、編地B)を作製した。
【0125】
(編地Cの作製)
繊維Cを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地C(以下、編地C)を作製した。
【0126】
(編地Dの作製)
繊維Dを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地D(以下、編地D)を作製した。
【0127】
(編地Eの作製)
繊維Eを用いて、筒編み機(機種名:丸編み機 MR-1、丸善産業株式会社)の度目調整目盛りを調整し、目付けが0.0039g/cm2、嵩密度が0.22g/cm3の筒編み編地E(以下、編地E)を作製した。
【0128】
(吸着材料1の作製)
N-メチロール-α-クロロアセトアミド(以下、NMCA)2.4gをニトロベンゼン31gと98重量%硫酸31gの混合溶液に添加、NMCAが溶解するまで10℃で攪拌して、NMCA溶液とした。次に、ニトロベンゼン2.0g、98重量%硫酸2.0gにパラホルムアルデヒド(以下、PFA)0.2gを添加し、PFAが溶解するまで20℃で攪拌し、PFA溶液とした。PFA溶液4.2gを5℃に冷却し、NMCA溶液に混合、5分間攪拌し、編地A1gを添加して2時間含浸した。含浸後の編地Aを0℃のニトロベンゼン200mL中に浸して反応を停止させた後、当該編地に付着しているニトロベンゼンをメタノールで洗浄した。
【0129】
トリエチルアミン0.2gとDMSO51gの混合溶液にテトラエチレンペンタミン(以下、TEPA)の添加濃度が0.8Mになるように溶解し、メタノールで洗浄した後の編地Aをそのまま添加し、40℃で3時間含浸させた。ガラスフィルター上に当該編地をろ別し、500mLのDMSOで洗浄した。60mLの蒸留水でさらに洗浄し、加えてそれぞれ3Lの蒸留水及び生理食塩水で洗浄して、TEPA化編地1(以下、吸着材料1)を得た。
【0130】
吸着材料1がアミド基とアミノ基を含んでいる事は、全反射赤外吸収スペクトルでアミド基由来のピーク(1650cm-1)と、アミノ基由来のピーク(1540cm-1)の出現により確認した。具体的には、あらかじめ乾燥機により60℃で4時間静置することで乾燥させた吸着材料1を、赤外分光装置のプリズムに押しつけることで実施した。
【0131】
(吸着材料1中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1中の水不溶性材料のアミノ基の含量は、当該水不溶性材料中のアミノ基量を、酸塩基逆滴定することより決定した。200mLナスフラスコに吸着材料1を5.0g、100mLのトルエンを添加し、150℃で24時間還流し、添加されているポリプロピレンを除去した。還流後の溶液を、100℃に加温した2Lのトルエンにすみやかに添加、洗浄し、不溶成分のみ濾紙でそのままろ別、メタノールで洗浄して乾燥機にて80℃で48時間静置することで水不溶性材料を得た。次に、ポリプロピレン製容器に対し、水不溶性材料を1.0g、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して30分攪拌し、濾紙を用いて水不溶性材料をろ別した。次にイオン交換水50mLにろ別した水不溶性材料を添加して30分間攪拌し、濾紙を用いてろ別した。水不溶性材料を添加したイオン交換水のpHが7になるまでイオン交換水に添加、ろ別を繰り返すことで脱塩後の水不溶性材料を得た。脱塩後の水不溶性材料を80℃常圧条件で48時間静置した後、ポリプロピレン製容器に当該水不溶性材料を1.0gと0.1M塩酸を30mL添加し、10分間攪拌した。攪拌後、溶液のみを5mL抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。次に、得られた溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。滴下後10分間の攪拌、pHの測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を越えた際の水酸化ナトリウム水溶液滴下量を1g当たりの滴定量とした。1g当たりの滴定量と以下の式2を用いて、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量を算出した。結果を表1に示す。
【0132】
水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量(mmol/g)={添加した0.1M塩酸の液量(30mL)/抜き取った塩酸の液量(5mL)}×1g当たりの滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1M) ・・・式2
【0133】
(吸着材料1中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1中の水不溶性材料のアミド基の含量は、当該水不溶性材料中のアミド基を加水分解することで生成したアミノ基量を、酸塩基逆滴定により測定することで決定した。水不溶性材料のアミノ基の含量測定と同様の操作で、吸着材料1中の水不溶性材料を得た。次に、当該水不溶性材料を1.0gと6Mの塩酸100mLを200mLナスフラスコに添加し、24時間130℃で還流した。還流後、濾紙でろ別することで水不溶性材料を回収し、分解後の水不溶性材料を得た。次に、ポリプロピレン製容器に対し、得られた分解後の水不溶性材料を全量、6M水酸化ナトリウム水溶液50mLを添加して30分攪拌し、濾紙を用いてろ別した。次にイオン交換水50mLにろ別した分解後の水不溶性材料を添加して30分間攪拌し、濾紙を用いてろ別した。当該水不溶性材料を添加したイオン交換水のpHが7になるまでイオン交換水に添加、ろ別を繰り返し、80℃常圧条件で48時間静置した。次に、ポリプロピレン製容器に当該水不溶性材料を全量と0.1M塩酸を60mL添加し、10分間攪拌した。攪拌後、溶液のみを5mL抜き取って、ポリプロピレン製容器に移した。次に、得られた溶液に対して、0.1Mの水酸化ナトリウム水溶液を0.1mL滴下した。滴下後10分間攪拌し、溶液のpHを測定した。滴下後10分間の攪拌、pHの測定を同様に100回繰り返した。溶液のpHが8.5を越えた際の水酸化ナトリウム水溶液滴下量を1g当たりの滴定量とした。1g当たりの滴定量と以下の式3を用いて、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量を算出した。結果を表1に示す。
【0134】
水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量(mmol/g)={添加した0.1M塩酸の液量(60mL)/抜き取った塩酸の液量(5mL)}×1g当たりの滴定量(mL)×水酸化ナトリウム水溶液濃度(0.1M) ・・・式3
【0135】
(吸着材料2の作製)
NMCA添加量を4.9gに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地2(以下、吸着材料2)を得た。
【0136】
(吸着材料2中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0137】
(吸着材料2中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料2中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0138】
(吸着材料3の作製)
NMCA添加量を5.8g、TEPAの添加濃度を1.5Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TAPA化編地3(以下、吸着材料3)を得た。
【0139】
(吸着材料3中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料3中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0140】
(吸着材料3中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料3中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0141】
(吸着材料4の作製)
用いる編地を編地Aから編地Bに、NMCA添加量を3.4gに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地4(以下、吸着材料4)を得た。
【0142】
(吸着材料4中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料4中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0143】
(吸着材料4中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料4中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0144】
(吸着材料5の作製)
用いる編地を編地Aから編地Cに、NMCA添加量を4.0gに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地5(以下、吸着材料5)を得た。
【0145】
(吸着材料5中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料5中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0146】
(吸着材料5中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料5中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0147】
(吸着材料6の作製)
用いる編地を編地Aから編地Dに、NMCA添加量を4.9gに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地6(以下、吸着材料6)を得た。
【0148】
(吸着材料6中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料6中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0149】
(吸着材料6中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料6中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0150】
(吸着材料7の作製)
NMCAの添加量を4.9g、用いるポリアミンをTEPAからポリエチレンイミン(重量平均分子量600g/mol, 以下PEI600)にし、PEI600の添加濃度を0.4Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、PEI化編地7(以下、吸着材料7)を得た。
【0151】
(吸着材料7中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料7中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0152】
(吸着材料7中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料7中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0153】
(吸着材料8の作製)
NMCA添加量を1.6gに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地8(以下、吸着材料8)を得た。
【0154】
(吸着材料8中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料8中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0155】
(吸着材料8中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料8中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0156】
(吸着材料9の作製)
NMCA添加量を4.9g、TEPAの添加濃度を0.6Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地9(以下、吸着材料9)を得た。
【0157】
(吸着材料9中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料9中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0158】
(吸着材料9中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料9中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0159】
(吸着材料10の作製)
用いる編地を編地Aから編地Eに、NMCA添加量を2.9g、TEPAの添加濃度を0.6Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、TEPA化編地10(以下、吸着材料10)を得た。
【0160】
(吸着材料10中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料10中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0161】
(吸着材料10中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料10中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0162】
(吸着材料11の作製)
NMCA添加量を4.9g、TEPAをアンモニアにして添加濃度を10Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、アンモニア化編地11(以下、吸着材料11)を得た。
【0163】
(吸着材料11中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料11中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0164】
(吸着材料11中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料11中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0165】
(吸着材料12の作製)
NMCA添加量を4.9g、TEPAをトリエチレンテトラミンにして添加濃度を1.5Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料であるトリエチレンテトラミン化編地12(以下、吸着材料12)を得た。
【0166】
(吸着材料12中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料12中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0167】
(吸着材料12中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料12中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0168】
(吸着材料13の作製)
NMCAの添加量を4.9g、用いるポリアミンをTEPAからポリエチレンイミン(重量平均分子量1000g/mol, 以下PEI1000)にし、PEI1000の添加濃度を0.2Mに変更した以外は吸着材料1と同様の操作を行うことで、PEI化編地13(以下、吸着材料13)を得た。
【0169】
(吸着材料13中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料13中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0170】
(吸着材料13中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料13中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表1に示す。
【0171】
(吸着材料14の作製)
NMCA4.9gをニトロベンゼン31gと98重量%硫酸31gの混合溶液に添加し、NMCAが溶解するまで10℃で攪拌して、NMCA溶液とした。次に、ニトロベンゼン2.0g、98重量%硫酸2.0gにPFA0.2gを添加し、PFAが溶解するまで20℃で攪拌し、PFA溶液とした。PFA溶液4.2gを5℃に冷却し、NMCA溶液に混合、5分間攪拌し、編地A1gを添加して2時間含浸した。含浸後の編地Aを0℃のニトロベンゼン200mL中に浸して反応を停止させた後、当該編地に付着しているニトロベンゼンをメタノールで洗浄した。DMSO51gにTEPAの添加濃度が0.8Mになるように溶解し、さらにイソシアン酸-4-クロロフェニルが0.01Mになるように添加して30分撹拌した。さらにトリエチルアミン0.2gを溶解し、メタノールで洗浄した後の編地Aをそのまま添加し、40℃で3時間含浸させた。ガラスフィルター上に当該編地をろ別し、500mLのDMSOで洗浄した。
【0172】
DMSO51gにTEPAの添加濃度が0.8Mになるように溶解し、さらにイソシアン酸-4-クロロフェニルが0.01Mになるように添加して30分撹拌した。さらにトリエチルアミン0.2gを溶解し、メタノールで洗浄した後の編地Aをそのまま添加し、40℃で3時間含浸させた。ガラスフィルター上に当該編地をろ別し、500mLのDMSOで洗浄した。
【0173】
60mLの蒸留水でさらに洗浄し、加えてそれぞれ3Lの蒸留水及び生理食塩水で洗浄して、TEPA-p-クロロアニリド化編地14(以下、吸着材料14)を得た。吸着材料14がアミド基とアミノ基、アミド結合を含んでいる事は、全反射赤外吸収スペクトルでアミド基及びアミド結合由来のピーク(1650cm-1)と、アミノ基由来のピーク(1540cm-1)の出現により確認した。測定はあらかじめ乾燥機により60℃で4時間静置することで乾燥させた吸着材料14を、赤外分光装置のプリズムに押しつけることで測定した。
【0174】
(吸着材料14中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料14中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0175】
(吸着材料14中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料14中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0176】
(吸着材料14中の水不溶性材料中のアニリド基の含量測定)
吸着材料14中の水不溶性材料のアニリド基の含量は、当該水不溶性材料中の尿素結合を加水分解することで生成したアニリド基由来化合物であるパラクロロアニリン濃度を測定することで決定した。水不溶性材料のアミノ基の含量測定と同様の操作で、吸着材料14中の水不溶性材料を得た。得られた水不溶性材料を、2cm2ずつ4枚切り出して乾燥させ、乾燥重量を測定した。その後、耐圧ガラス瓶中に6M塩酸4mLと切り出した当該材料4枚を添加し、110℃で20時間加熱した。20時間後、耐圧ガラス瓶中の溶液を1mL採取してサンプル管に移し取った。当該サンプル管に硝酸ナトリウム塩5mg含有0.5M塩酸12mL、スルファミン酸アンモニウム塩36mg含有0.5wt%TWEEN(登録商標)20水溶液12mL、1-ナフチルエチレンジアミン・二塩酸塩8mg含有0.5wt%TWEEN(登録商標)20水溶液12mLを逐次添加して赤色に発色させた。得られた赤色溶液の545nmにおける吸光度を測定した。濃度既知のパラクロロアニリン水溶液を同様の方法で発色させて検量線を作成し、加水分解溶液中のパラクロロアニリン濃度を定量した。さらに、式4を用いてアニリド基の含量を算出した。結果を表2に示す。
アニリド基の含量(mmol/g)=加水分解溶液中のパラクロロアニリン濃度(mmol/mL)×加水分解溶液量(4mL)×測定溶液希釈倍率(37倍)/添加した水不溶性材料の乾燥重量(g) ・・・式4
【0177】
(吸着材料15の作製)
イソシアン酸-4-クロロフェニルの添加濃度を0.01Mから0.05Mに変更した以外は吸着材料14と同様の操作を行うことで、TEPA-p-クロロアニリド化編地15(以下、吸着材料15)を得た。
【0178】
(吸着材料15中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料15中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0179】
(吸着材料15中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料15中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0180】
(吸着材料15中の水不溶性材料中のアニリド基の含量測定)
吸着材料14と同様の操作を行うことで、吸着材料15中の水不溶性材料中のアニリド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0181】
(吸着材料16の作製)
イソシアン酸-4-クロロフェニルの添加濃度を0.01Mから0.2Mに変更した以外は吸着材料14と同様の操作を行うことで、TEPA-p-クロロアニリド化編地16(以下、吸着材料16)を得た。
【0182】
(吸着材料16中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料16中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0183】
(吸着材料16中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料16中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0184】
(吸着材料16中の水不溶性材料中のアニリド基の含量測定)
吸着材料14と同様の操作を行うことで、吸着材料16中の水不溶性材料中のアニリド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0185】
(吸着材料17の作製)
用いるポリアミンをTEPAからPEI600にし、PEI600の添加濃度を0.4Mに変更した以外は吸着材料14と同様の操作を行うことで、吸着材料であるPEI-p-クロロアニリド化編地17(以下、吸着材料17)を得た。
【0186】
(吸着材料17中の水不溶性材料のアミノ基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料17中の水不溶性材料のアミノ基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0187】
(吸着材料17中の水不溶性材料のアミド基の含量測定)
吸着材料1と同様の操作を行うことで、吸着材料17中の水不溶性材料のアミド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0188】
(吸着材料17中の水不溶性材料中のアニリド基の含量測定)
吸着材料14と同様の操作を行うことで、吸着材料17中の水不溶性材料中のアニリド基の含量を測定した。結果を表2に示す。
【0189】
(実施例1)
吸着材料1の吸着性能を確認するため、N-ブチリルホモセリンラクトン(C4-HSL)の水溶液に吸着材料1を所定時間含浸して取り出し、含浸前後の溶液中のC4-HSL減少量を測定、吸着率を算出した。以下に測定及び算出方法を示す。
【0190】
吸着材料1を直径6mmの円板状に切り抜いた後、これを3枚ずつポリプロピレン製の容器に入れた。この容器に、ホモセリン誘導体の一種であるC4-HSLの濃度が20μg/mLになるように調製した生理食塩水を、吸着材料1(1cm3)に対して0.88mLとなるように添加し、37℃のインキュベータ内で2時間転倒混和した。濃度既知のC4-HSL水溶液中の吸収波長190nmにおける吸光度を測定して検量線を作成した。転倒混和前のC4-HSL溶液と転倒混和後のC4-HSL溶液の190nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、上記検量線から、転倒混和前のC4-HSL濃度と転倒混和後のC4-HSL濃度を算出した。得られた転倒混和前のC4-HSL濃度、転倒混和後のC4-HSL濃度から、以下の式5によりC4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0191】
吸着材料1のC4-HSL吸着率(%)=100×{転倒混和前のC4-HSL濃度(μg/mL)-転倒混和後のC4-HSL濃度(μg/mL)}/転倒混和前のC4-HSL濃度(μg/mL) ・・・式5
【0192】
(実施例2)
吸着材料2について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0193】
(実施例3)
吸着材料3について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0194】
(実施例4)
吸着材料4について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0195】
(実施例5)
吸着材料5について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0196】
(実施例6)
吸着材料6について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0197】
(実施例7)
吸着材料7について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0198】
(実施例8)
吸着材料14について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0199】
(実施例9)
吸着材料15について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0200】
(実施例10)
吸着材料16について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0201】
(実施例11)
吸着材料17について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表2に示す。
【0202】
(比較例1)
吸着材料8について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0203】
(比較例2)
吸着材料9について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0204】
(比較例3)
吸着材料10について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0205】
(比較例4)
吸着材料11について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0206】
(比較例5)
吸着材料12について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0207】
(比較例6)
吸着材料13について、実施例1と同様の操作を行い、C4-HSL吸着率を算出した。結果を表1に示す。
【0208】
【0209】
【0210】
表1及び表2中、「アミン名」は、吸着材料中の基材に結合しているポリアミンの名称を、「アミド基含量」は、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミド基の含量を、「アミノ基含量」は、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアミノ基の含量を、「繊維直径」は、吸着材料に含まれる水不溶性材料の繊維の直径を、「非晶ポリスチレン」は、非結晶性のポリスチレンを、「結晶ポリスチレン」は、シンジオタクチック性結晶化ポリスチレンを、「海島」は、海島型複合繊維を、「アロイ」は、アロイ繊維を、「C4-HSL吸着率」は、N-ブチリルホモセリンラクトンの吸着率を、「アニリド基含量」は、水不溶性材料の乾燥重量1g当たりのアニリド基の含量を示す。
【0211】
表1及び表2の結果から、本願の吸着材料は、ホモセリン誘導体の吸着性能に優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本発明の吸着材料は、ホモセリン誘導体を高効率で吸着できるため、細菌由来の感染症治療に用いる体外循環用の吸着担体として利用できる。