(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車載サイネージシステム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0241 20230101AFI20230912BHJP
【FI】
G06Q30/0241
(21)【出願番号】P 2020054724
(22)【出願日】2020-03-25
【審査請求日】2022-03-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 将弘
(72)【発明者】
【氏名】塚岸 健司
(72)【発明者】
【氏名】兼子 貴久
(72)【発明者】
【氏名】木越 絵理奈
(72)【発明者】
【氏名】宮本 愛子
【審査官】山崎 誠也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-138243(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105217(WO,A1)
【文献】特開2020-052908(JP,A)
【文献】特開2011-053767(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0138988(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0222885(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の車両と、
前記車両に設けられ、前記車両の外部から視認可能な1以上の表示エリアに前記車両に割り当てられた画像を表示する表示器と、
サイネージコントローラと、
を備え、前記サイネージコントローラは、
前記車両に割り当て可能な複数の候補画像を記憶する画像データベースと、
予めユーザ登録された登録端末の識別情報および前記登録端末の所有者情報を記憶する端末データベースと、
前記登録端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、
前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて、前記車両の走行ルート、および、前記車両に割り当てる画像の少なくとも一方を選択して、前記車両に送信する選択部と、
前記車両に表示された画像に対して、前記登録端末の所有者からのフィードバックがあった場合に、前記車両の所有者および前記登録端末の所有者の少なくとも一方に特典を付与する特典付与部と、
して機能するように構成されて
おり、
前記特典付与部は、前記フィードバックの形態および前記登録端末の所有者の属性の内の少なくとも1つに基づいて、前記付与する特典の内容を決定する、
ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の車載サイネージシステムであって、
前記選択部は、前記車両に割り当てられた画像に適した人が多い地域を、前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて推定し、推定された地域に基づいて前記車両の走行ルートを選択するルート選択部を含む、ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車載サイネージシステムであって、
前記選択部は、現在または将来の車両位置の周辺に位置する前記登録端末の前記所有者情報に基づいて、前記車両位置の周辺の人の傾向を推定し、この推定結果に基づいて前記車両に割り当てる画像を選択する画像選択部を含む、ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項4】
請求項3に記載の車載サイネージシステムであって、
前記車両は、前記車両の一定範囲内に位置する前記登録端末と直接通信するV2P通信部を有し、
前記端末位置取得部は、前記V2P通信部により前記車両と直接通信した登録端末の位置を、前記車両の周辺とみなす、ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項5】
請求項
1から4のいずれか1項に記載の車載サイネージシステムであって、
前記車両は、前記車両の一定範囲内に位置する前記登録端末と直接通信するV2P通信部を有し、
前記フィードバックは、前記登録端末が前記車両と直接通信することを含む、
ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項6】
請求項
1から5のいずれか1項に記載の車載サイネージシステムであって、
前記車両は、当該車両で表示している画像の詳細情報に前記登録端末がアクセスするためのアクセス情報を前記登録端末に提供し、
前記フィードバックは、前記詳細情報に前記登録端末がアクセスすることを含む
ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項7】
請求項
5または6に記載の車載サイネージシステムであって、
前記車両に表示される画像、または、前記車両の前記表示エリアの近傍には、前記車両の識別情報が付与されており、
前記サイネージコントローラは、インターネット上にアップロードされたSNSの投稿コンテンツを収集し、前記識別情報を含む画像に関する投稿コンテンツを反響投稿コンテンツとして分析し、前記反響投稿コンテンツをSNSへ投稿することを
前記フィードバックとして扱う、ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【請求項8】
1以上の車両と、
前記車両に設けられ、前記車両の外部から視認可能な1以上の表示エリアに前記車両に割り当てられた画像を表示する表示器と、
サイネージコントローラと、
を備え、前記サイネージコントローラは、
前記車両に割り当て可能な複数の候補画像を記憶する画像データベースと、
予めユーザ登録された登録端末の識別情報および前記登録端末の所有者情報を記憶する端末データベースと、
前記登録端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、
前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて、前記車両の走行ルート、および、前記車両に割り当てる画像の少なくとも一方を選択して、前記車両に送信する選択部と、
して機能するように構成されており、
前記選択部は、前記画像の累積掲示時間、前記画像を表示した状態での前記車両の走行距離、または、前記車両に表示された画像に対する前記登録端末の所有者からのフィードバックの量、が所定値未満である場合、前記車両の走行ルートを再び選択する、
ことを特徴とする車載サイネージシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、車両に設けられるとともに前記車両の外部から視認可能なディスプレイに、画像を表示する車載サイネージシステムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両の外面にディスプレイを設け、当該ディスプレイに画像を表示することで、車両を移動可能なデジタルサイネージとして利用する技術が知られている。例えば、特許文献1には、車両の外装面に、ディスプレイを設け、当該ディスプレイに、広告宣伝用の映像を表示する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、表示する映像をどのように選択するかが不明であった。
【0005】
ところで、近年、車両のIT化が進み、車両が、特定の管理センタだけでなく、様々なものと通信可能なコネクティッドカーが提案されている。コネクティッドカーでは、例えば、車両と他の車両との通信である車車間通信(V2V)や、車両と道路に設けられたインフラ設備との通信である車路間通信(V2I)、車両と歩行者が持つ端末との通信である車歩行者間通信(V2P)等を行う。こうしたコネクティッド技術で得られる情報を、有効利用することについて、従来、充分に検討されていなかった。
【0006】
そこで、本明細書では、コネクティッド技術で得られる情報を利用して、宣伝効果をより向上できる車載サイネージシステムを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する車載サイネージシステムは、1以上の車両と、前記車両に設けられ、前記車両の外部から視認可能な1以上の表示エリアに前記車両に割り当てられた画像を表示する表示器と、サイネージコントローラと、を備え、前記サイネージコントローラは、前記車両に割り当て可能な複数の候補画像を記憶する画像データベースと、予めユーザ登録された登録端末の識別情報および前記登録端末の所有者情報を記憶する端末データベースと、前記登録端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて、前記車両の走行ルート、および、前記車両に割り当てる画像の少なくとも一方を選択して、前記車両に送信する選択部と、前記車両に表示された画像に対して、前記登録端末の所有者からのフィードバックがあった場合に、前記車両の所有者および前記登録端末の所有者の少なくとも一方に特典を付与する特典付与部と、して機能するように構成されており、前記特典付与部は、前記フィードバックの形態および前記登録端末の所有者の属性の内の少なくとも1つに基づいて、前記付与する特典の内容を決定する、ことを特徴とする。
【0008】
登録端末の位置情報および所有者情報に基づいて、車両の走行ルート、および、割り当てる画像の少なくとも一方を選択することで、宣伝効果をより向上できる。また、車両の所有者に特典を付与することで、車両は、フィードバックがより得られやすい行動をとりやすくなる。また、登録端末の所有者に特典を付与することで、登録端末の所有者は、積極的に、フィードバックを返す。その結果、画像の宣伝効果をより向上できる。
【0009】
この場合、前記選択部は、前記車両に割り当てられた画像に適した人が多い地域を、前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて推定し、推定された地域に基づいて前記車両の走行ルートを選択するルート選択部を含んでもよい。
【0010】
かかる構成とすることで、宣伝対象の人が多い地域に車両が積極的に行くことができるため、宣伝効果をより向上できる。
【0011】
また、前記選択部は、現在または将来の車両位置の周辺に位置する前記投稿端末の前記所有者情報に基づいて、前記車両位置の周辺の人の傾向を推定し、この推定結果に基づいて前記車両に割り当てる画像を選択する画像選択部を含んでもよい。
【0012】
かかる構成とすることで、車両の周囲の人に適した画像を掲示できるため、宣伝効果をより向上できる。
【0013】
この場合、前記車両は、前記車両の一定範囲内に位置する前記登録端末と直接通信するV2P通信部を有し、前記端末位置取得部は、前記V2P通信部により前記車両と直接通信した登録端末の位置を、前記車両の周辺とみなしてもよい。
【0014】
かかる構成とすることで、登録端末が定期的に自身の位置情報を発信する必要がなく、登録端末の通信量を低減できる。また、登録端末の位置情報は、比較的、高度な個人情報と言える。かかる個人情報を、定期的に送信しない構成とすることで、登録端末の所有者の個人情報をより高度に保護できる。
【0017】
この場合、前記車両は、前記車両の一定範囲内に位置する前記登録端末と直接通信するV2P通信部を有し、前記フィードバックは、前記登録端末が前記車両と直接通信することを含んでもよい。
【0018】
かかる構成において、車両の所有者に特典を付与した場合、車両の所有者には、登録端末と通信しやすい走行形態(例えば、低速かつ歩道寄りの位置での走行等)を選択するモチベーションが生まれる。また、登録端末の所有者に特典を付与した場合、登録端末の所有者に、車両に積極的に近づき、車両に表示された画像を見るモチベーションが生まれる。その結果、宣伝効果をより向上できる。
【0019】
また、前記車両は、当該車両で表示している画像の詳細情報に前記登録端末がアクセスするためのアクセス情報を前記登録端末に提供し、前記フィードバックは、前記詳細情報に前記登録端末がアクセスすることを含んでもよい。
【0020】
かかる構成において、車両の所有者に特典を付与した場合、車両の所有者には、登録端末にアクセス情報を提供しやすい走行形態(例えば、低速かつ歩道寄りの位置での走行等)を選択するモチベーションが生まれる。また、登録端末の所有者に特典を付与した場合、登録端末の所有者に、詳細情報に積極的にアクセスするモチベーションが生まれる。その結果、宣伝効果をより向上できる。
【0021】
また、前記フィードバックは、前記車両または前記車両に表示された画像に関する投稿コンテンツをSNSへ投稿することを含んでもよい。
【0022】
かかる構成において、車両の所有者に特典を付与した場合、車両の所有者には、SNSへ投稿されやすい走行形態(例えば、低速かつ歩道寄りの位置での走行等)を選択するモチベーションが生まれる。また、登録端末の所有者に特典を付与した場合、登録端末の所有者に、SNSへ投稿するモチベーションが生まれる。そして、SNSに画像に関する投稿コンテンツが投稿され、拡散されることで、宣伝効果がより向上する。
また、本明細書で開示する車載サイネージシステムは、1以上の車両と、前記車両に設けられ、前記車両の外部から視認可能な1以上の表示エリアに前記車両に割り当てられた画像を表示する表示器と、サイネージコントローラと、を備え、前記サイネージコントローラは、前記車両に割り当て可能な複数の候補画像を記憶する画像データベースと、予めユーザ登録された登録端末の識別情報および前記登録端末の所有者情報を記憶する端末データベースと、前記登録端末の位置情報を取得する端末位置取得部と、前記登録端末の位置情報および前記登録端末の所有者情報に基づいて、前記車両の走行ルート、および、前記車両に割り当てる画像の少なくとも一方を選択して、前記車両に送信する選択部と、して機能するように構成されており、前記選択部は、前記画像の累積掲示時間、前記画像を表示した状態での前記車両の走行距離、または、前記車両に表示された画像に対する前記登録端末の所有者からのフィードバックの量、が所定値未満である場合、前記車両の走行ルートを再び選択する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本明細書で開示する車載サイネージシステムによれば、宣伝効果をより向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】車載サイネージシステムの構成を示すイメージ図である。
【
図2】車載サイネージシステムで用いられる車両の外観図である。
【
図5】車載サイネージシステムの物理的構成を示すブロック図である。
【
図6】車載サイネージシステムの機能的構成を示すブロック図である。
【
図7】投稿DBに記憶されるデータの一例を示す図である。
【
図8】画像DBに記録されているデータの一例を示す図である。
【
図9】第一の運用形態における車載サイネージシステムでの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】第二の運用形態における車載サイネージシステムでの処理の流れを示すフローチャートである。
【
図11】登録端末からのフィードバックの形態を示すイメージ図である。
【
図12】他の車載サイネージシステムの機能的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、車載サイネージシステム10の構成について図面を参照して説明する。
図1は、車載サイネージシステム10の構成を示すイメージ図である。また、
図2は、車載サイネージシステム10で用いられる車両12の外観図である。
【0026】
車載サイネージシステム10は、宣伝のために、車両12に様々な画像を表示させた状態で当該車両12を走行させるシステムである。ここで、「宣伝」とは、組織または個人が、一般大衆に対して情報を伝播する活動のことを意味しており、商業目的の広報活動はもちろんのこと、公共福祉のための広報活動も含まれる。したがって、本願の「宣伝」には、例えば、企業の商品またはサービスのための広報活動や、災害発生時の避難情報の広報活動等も含まれる。
【0027】
この車載サイネージシステム10は、1以上の車両12と、当該車両12と通信可能な管理センタ14と、を有している。車両12は、
図2に示すように、外部から視認可能な位置に表示エリア17を有しており、車両12に割り当てられた画像が当該表示エリア17に表示される。表示エリア17に、画像を表示することで、車両12が、移動可能なデジタルサイネージとして機能する。
【0028】
また、車両12は、管理センタ14と通信可能である。本例では、車両12はインターネット回線110を通じて管理センタ14と接続されている。ただし、車両12は、インターネット回線110を介することなく、直接、または、各種インフラ設備(例えば、信号機等)に設けられた中継器を介して、管理センタ14と通信するのでもよい。また、車両12は、車両12の一定範囲内に位置する登録端末100と、インターネット回線110を介することなく、直接通信可能である。
【0029】
管理センタ14は、公衆通信回線網(すなわちインターネット回線110)に接続される。インターネット回線110には、複数の登録端末100も接続されている。登録端末100は、事前に車載サイネージシステム10に登録されており、車載サイネージシステム10は、登録端末100の識別情報と所有者情報を対応付けて記憶する端末DB70(
図6参照)を有している。所有者情報には、所有者の属性、例えば、所有者の年齢や性別等が含まれる。登録端末100は、いずれも、位置センサ(例えばGPS等)を有している。また、各登録端末100には、予め、サイネージシステムのためのアプリケーションがインストールされている。このアプリケーションを起動した場合、登録端末100は、位置センサの検知結果を自己の位置情報として、定期的に管理センタ14に送信する。これにより管理センタ14は、複数の登録端末100の位置を把握することができる。
【0030】
管理センタ14は、取得された登録端末100の位置情報と、端末DB70(
図6)に記録されている登録端末100の所有者情報と、に基づいて、車両12の走行ルート、および、車両12に割り当てる画像の少なくとも一方を選択し、選択された走行ルートまたは画像を車両12に送信する。
【0031】
こうした車載サイネージシステム10の具体的な構成を説明する前に、当該車載サイネージシステム10の運用形態について簡単に説明する。本例の車載サイネージシステム10の運用形態は、大きく二つに分かれる。第一の運用形態は、車両12に表示する画像が予め決まっており、管理センタ14は、当該画像の宣伝効果が高くなる走行ルートを選択する。この場合、車両12は、宣伝を主目的としており、人および物の輸送は、原則として、目的にしていない。この場合、管理センタ14は、車両12に割り当てられた画像の掲示に適した地域を登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて推測し、推定された地域に基づいて車両12の走行ルートを選択する。
【0032】
図3は、第一の運用形態のイメージ図である。管理センタ14は、複数の登録端末100の位置情報を取得するとともに、端末DB70に記録されている登録端末100の所有者情報を確認することで、どの地域に、どのような属性の人が多いかを把握できる。こうした登録端末100の位置情報および所有者情報を管理センタ14が分析した結果、
図3に示すように、第一エリアE1には、20代および30代の女性が多く、第二エリアE2には、30代~50代の男性が多く、第三エリアE3には、60代から80代の男性および女性が多いことが分かったとする。一方、車両12には、予め、女性向けの画像、例えば、化粧品の広告画像が割り当てられているとする。
【0033】
この場合、管理センタ14は、車両12が、割り当てられた画像に適したルート、具体的には、女性の多いエリアを通るルートを走行するように、車両12の走行ルートを決定する。
図3の例では、第一エリアE1に女性が多いため、管理センタ14は、第一エリアをより長時間走行するルートを選択し、車両12に送信する。車両12は、この送信されたルートに従って、走行する。
【0034】
第二の運用形態では、管理センタ14は、車両12の走行ルートの決定には関与せず、車両12に割り当てる画像を決定する。この場合、車両12の走行ルートは、もっぱら、車両12側で決定され、車両12は、人または物の輸送を主目的としている。この場合、管理センタ14は、車両12の現在または将来の位置である車両位置を車両12側から受信し、この車両位置の周辺の傾向を登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて推測する。そして、管理センタ14は、推測された傾向に基づいて、車両位置に適した画像を選択し、車両12に送信する。
【0035】
図4は、第二の運用形態のイメージ図である。
図4において、人々の分布状況は、
図3と同じとする。一方、車両12は、出発地P1から目的地P2まで移動のために、第一エリアE1、第二エリアE2、第三エリアE3を順次、通過していくとする。このとき管理センタ14は、車両12が、20代および30代の女性が多い第一エリアE1を走行している際には、女性向けの画像、例えば、化粧品の広告画像を車両12に割り当てる。また、車両12が、第一エリアE1を通過して、30代~50代の男性が多い第二エリアE2に進入すれば、管理センタ14は、男性向けの画像、例えば、ひげそりの広告画像を車両12に割り当てる。さらに、車両12が、60代~80代の男女が多い第三エリアE3に進入すれば、管理センタ14は、シニア向けの画像、例えば、シニア向けの旅行の広告画像を車両12に割り当てる。割り当てられた画像は、随時、車両12に送信され、車両12の表示エリア17に表示される。
【0036】
次に、こうした車載サイネージシステム10の具体的構成について
図5、
図6を参照して説明する。
図5は、車載サイネージシステム10の物理的構成を示すブロック図である。また、
図6は、車載サイネージシステム10の機能的構成を示すブロック図である。
【0037】
車載サイネージシステム10は、物理的には、1以上の車両12と、当該車両12に設けられた表示器16と、サイネージコントローラ18と、を備える。サイネージコントローラ18は、車載サイネージシステム10の各動作を制御するためのコントローラである。このサイネージコントローラ18は、後に詳説するように、車両12に設けられた車両コントローラ20と、管理センタ14に設けられたセンタコントローラ22と、で構成される。
【0038】
車両12は、外部から視認可能な位置に表示エリア17を有するのであれば、その種類や形状は、特に限定されない。したがって、車両12は、
図2に示すような乗用車でもよいし、荷物の輸送を主目的とするトラックでもよいし、不特定多数の人の輸送を主目的とするバスでもよい。また、車両12は、人および物の輸送を主目的として運用されているもの、例えば、自家用車や輸送トラック、乗り合いバス等でもよいし、宣伝を主目的として運用されている、いわゆる、広告宣伝車として運用されているものでもよい。さらに、車両12は、その加減速および操舵の制御の殆どを運転手が行うものでもよいし、加減速および操舵の制御の一部または全てを車両12が行う運転支援車両または自動運転車両でもよい。いずれの場合であっても、車載サイネージシステム10には、これら車両12およびその所有者が、事前に登録されており、車両12および所有者の情報が、管理センタ14のユーザDB74に記録されている。
【0039】
各車両12には、表示器16が設けられている。表示器16は、車両12の外部から視認可能な表示エリア17に画像を表示させる。かかる表示器16としては、例えば、車両12の外表面に配置されたディスプレイを用いることができる。この場合、ディスプレイが表示エリア17として機能する。表示器16がディスプレイの場合、表示器16は、車両12の外表面に取り付けられてもよいし、車両12のウィンドウガラスの内面に取り付けられてもよい。さらに、
図2に示すように、表示器16を透明ディスプレイで構成し、当該透明ディスプレイを車両12のウィンドウガラスに替えて、車両12の窓に配置してもよい。なお、窓にディスプレイが配置されることで、乗員が外部風景を窓から見ることができない場合には、車両12に外部風景を撮像するカメラを設けるとともに、車室の内面に、当該カメラの撮像映像を表示するディスプレイを設けてもよい。
【0040】
また、表示器16は、車両12の一部(例えばボンネットフードやトランクフード等)または路面に、画像を投影するプロジェクタでもよい。この場合、プロジェクタで画像が投影されるエリアが、表示エリア17となる。
【0041】
表示エリア17は、一つの車両12に、一つだけ設けられるのでもよいし、複数、設けられてもよい。例えば、表示エリア17は、
図2に示すように、車両12の後面および側面に設けられてもよい。この場合、後面の表示エリア17および側面の表示エリア17には、互いに同じ画像が表示されてもよいし、互いに異なる画像が表示されてもよい。
【0042】
サイネージコントローラ18は、車両コントローラ20とセンタコントローラ22とで構成される。車両コントローラ20は、プロセッサ24と、記憶装置26と、通信I/F28と、ビデオコントローラ30と、I/Oコントローラ32と、を有したコンピュータである。この「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ24とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU:Graphics Processing Unit、ASIC:Application Specific Integrated Circuit、FPGA:Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0043】
また、記憶装置26は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。
【0044】
通信I/F28は、車両12の外部の様々な機器との通信を可能にする。この通信I/F28は、複数種類の通信規格に対応してもよい。したがって、通信I/F28は、例えば、WiFi(登録商標)等の無線LANや、携帯電話会社等がサービス提供するモバイルデータ通信を介して、インターネット通信する通信設備を有してもよい。また、通信I/F28は、インターネットを介することなく、他の車両や道路上のインフラ設備と通信する、DSRC(狭域通信)のための通信設備(アンテナ等)を有してもよい。さらに、通信I/F28は、近距離または中距離無線通信で、車両周辺の登録端末100と直接通信するための規格、いわゆるV2P通信(Vehicle to Pedestrian)のための通信規格に対応していてもよい。V2P通信のための通信規格は、例えば、ブルートゥース(登録商標)である。車両コントローラ20は、この通信I/F28を介して、管理センタ14および登録端末100と様々なデータの送受を行う。
【0045】
ビデオコントローラ30は、プロセッサ24の制御の下で表示器16の表示を制御する。I/Oコントローラ32は、車両12に搭載され他の機器、例えば、位置センサやナビゲーション装置との間でのデータの授受を制御する。
【0046】
なお、
図5では、車両コントローラ20を単一のコンピュータとして図示しているが、車両コントローラ20は、物理的に分離された複数のコンピュータで構成されてもよい。したがって、車両コントローラ20は、複数のプロセッサ24を有してもよい。
【0047】
センタコントローラ22も、車両コントローラ20と同様に、プロセッサ34と、記憶装置36と、通信I/F38と、ビデオコントローラ40と、I/Oコントローラ42と、を有したコンピュータである。「コンピュータ」には、コンピュータシステムを一つの集積回路に組み込んだマイクロコントローラも含まれる。また、プロセッサ34とは、広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサや、専用のプロセッサを含む。ものである。
【0048】
また、記憶装置36は、半導体メモリ(例えばRAM、ROM、ソリッドステートドライブ等)および磁気ディスク(例えば、ハードディスクドライブ等)の少なくとも一つを含んでもよい。また、この記憶装置36は、その全てが、プロセッサ34等と、物理的に同じ場所にある必要はなく、クラウド上の記憶装置を含んでもよい。通信I/F38は、管理センタ14の外部の様々な機器との通信を可能にするもので、例えば、インターネット通信する通信設備を有してもよい。また、センタコントローラ22も、単一のコンピュータである必要はなく、センタコントローラ22は、有線または無線で通信可能な複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0049】
車両12は、機能的には、
図6に示すように、表示器16と、表示制御部48と、位置提供部50と、V2P通信部52と、を有する。表示器16は、上述した通り、表示エリア17に画像を表示させるものである。表示制御部48は、管理センタ14から送られた割り当て画像を表示器16に表示させる。
【0050】
位置提供部50は、管理センタ14からのリクエストがあった場合に、車両12の現在または将来の車両位置を示す位置情報を管理センタ14に送信する。管理センタ14に送信される車両位置は、例えば、車両12に搭載された位置センサ(例えばGPS等)での検知結果でもよい。また、車両12に搭載されたナビゲーション装置によってルート案内が実行されている場合、当該ナビゲーション装置で設定された走行ルートを車両位置として管理センタ14に送信してもよい。
【0051】
次に、管理センタ14の構成について説明する。管理センタ14の端末位置取得部54は、端末DB70に登録された複数の登録端末100の位置情報を取得する。すなわち、上述した通り、登録端末100には、予め、サイネージシステムのためのアプリケーションがインストールされている。このアプリケーションが起動している期間中、登録端末100は、定期的に、当該登録端末100の位置を、当該登録端末100の識別情報とともに、管理センタ14に送信する。端末位置取得部54は、受信した位置情報を、端末DB70に記録する。
【0052】
端末DB70は、複数の登録端末100の識別情報を、当該登録端末100の所有者情報および位置情報と対応付けて記録している。所有者情報は、登録端末100の所有者に関する情報であり、少なくとも、所有者の属性情報を含む。属性情報は、所有者の性別、年齢、居住地、生年月日の少なくとも一つを含み、さらに、所有者の職業や家族構成等を含んでもよい。また、所有者情報は、所有者の属性情報に加え、さらに、所有者の行動履歴(例えばクレジットカードを用いた商品購入履歴やインターネットでの検索履歴等)や嗜好(例えば所有者の趣味等)等を含んでもよい。こうした所有者情報は、登録端末100をサイネージシステムに新規登録または登録内容を変更する際に、所有者が入力するのでもよいし、所有者が許可した場合には登録端末100の操作履歴等から自動的に収集するようにしてもよい。
【0053】
図7は、端末DB70に記録されているデータの一例を示す図である。
図7の例では、登録端末100のIDが、当該登録端末100の位置、および、所有者情報に対応付けられて、テーブル形式で記録されている。この端末DB70における各登録端末100の位置は、端末位置取得部54により定期的に更新される。
【0054】
画像DB72には、複数の候補画像と、当該候補画像の選択条件と、が対応付けて記憶されている。候補画像は、車両12に割り当てる画像、すなわち、車両12の表示エリア17に表示される画像の候補である。候補画像は、静止画でもよいし、動画でもよい。また、候補画像は、商用目的で掲示される広告画像でもよいし、災害時に必要な情報を伝達するための防災画像でもよい。こうした候補画像は、車載サイネージシステム10による宣伝を希望する依頼者から提供されてもよいし、管理センタ14側で生成してもよい。
【0055】
各候補画像には、当該候補画像の選択条件が紐づけられている。選択条件は、対応する候補画像を車両12に割り当てる画像として選択する際の条件である。この選択条件には、例えば、候補画像を見せたい相手、すなわち、対象者の条件を規定したターゲット条件が含まれる。より具体的には、ターゲット条件は、例えば、対象者の属性(例えば、年齢、性別、家族構成、職業等)を含む。例えば、髭剃りの広告画像には、ターゲット条件として、「性別:男性」が設定されてもよい。
【0056】
また、選択条件は、さらに、対応する候補画像の時間条件や地域条件、表示期間、優先度等を含んでもよい。時間条件は、候補画像を表示させる時間帯を規定したもので、例えば、夜間にのみ表示させたい候補画像には、時間条件として「夜間」が設定される。また、地域条件は、候補画像を表示させたい地域を規定したもので、例えば、特定の町「***町」だけで表示させたい候補画像には、地域条件として「***町」が設定される。また、表示期間は、候補画像を表示させる期間を規定したもので、例えば、店舗の開店を宣伝するための候補画像には、当該店舗の開店日の前後数週間が、表示期間として設定される。
【0057】
優先度は、対応する候補画像の優先度を示している。優先度が高い候補画像ほど、優先的に選択される。優先度は、例えば、候補画像を表示した際に得られる報酬や、候補画像の緊急性や公益性の高さ等に基づいて決定される。例えば、報酬が高い候補画像ほど、優先度が高くなるようにしてもよい。また、災害時には、防災画像の優先度が高くなるようにしてもよい。さらに、各候補画像には、その表示実績、例えば累積表示時間等が紐づけられていてもよい。
図8は、画像DB72に記録されているデータの一例を示す図である。
図8の例では、候補画像のIDが、様々な選択条件に対応付けられて、テーブル形式で記憶されている。
【0058】
選択部58は、ルート選択部60と、画像選択部62と、を有する。ルート選択部60は、第一の運用形態で利用される部位であり、車両12に割り当てられた画像に適した走行ルートを選択する。走行ルートを選択する際、ルート選択部60は、車両12に割り当てられた画像のIDを画像DB72に照らし合わせ、当該画像の選択条件を取得する。そして、ルート選択部60は、端末DB70に記録された登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて、選択条件に合致した人が多い地域を、推定し、推定された地域を走行するように、走行ルートを選択する。この地域の推定の方法は、特に限定されないが、例えば、車両12に割り当てられた画像のターゲット条件との関連度合いに応じて、端末DB70に記録された複数の登録端末100それぞれに点数を付け、その点数の合計が高い地域を、選択条件に合致した人が多い地域として選択してもよい。
【0059】
画像選択部62は、第二の運用形態で利用される部位であり、画像DB72に記録された複数の候補画像の中から、車両12に割り当てる画像を選択し、選択した画像を車両12に送信する。画像を選択する際、画像選択部62は、車両12に対して、当該車両12の現在または将来の車両位置を要求する。この要求に対して、車両12は、車両位置を管理センタ14に送信する。画像選択部62は、得られた車両位置を、端末DB70に照らし合わせ、当該車両位置の周辺に位置する登録端末100を抽出する。そして、画像選択部62は、抽出された登録端末100の所有者情報に基づいて、車両位置の周辺の人の傾向を推定し、この推定された傾向に基づいて車両12に割り当てる画像を選択する。
【0060】
管理センタ14は、さらに、特典付与部64を有する。特典付与部64は、車両12が表示する画像に対して登録端末100の所有者から所定のフィードバックが得られた場合に、車両12の所有者および登録端末100の所有者の少なくとも一方に、特典を付与する。特典は、車両12の所有者または登録端末100の所有者にとって、有益となるものであれば、特に限定されない。したがって、特典は、例えば、金銭でもよいし、ショッピングやプレゼント応募に利用できるポイントでもよいし、特定のメンバーズクラブ(例えばファンクラブ等)でのランク値でもよい。
【0061】
所有者からのフィードバックの形態は、登録端末100の所有者が画像を見たことを示すものであれば、特に限定されない。本例では、所有者からのフィードバックとして三つの形態がある。一つは、車両12と登録端末100とのV2P通信の成立である。二つ目のフィードバック形態は、宣伝の詳細情報を登録端末100に表示させることである。車両12は、登録端末100に詳細情報を表示させるためのアクセス情報を登録端末に提供する。三つ目のフィードバック形態は、登録端末100の所有者が、車両12または車両12に表示されている画像に関するコンテンツをSNSに投稿することである。こうしたフィードバックの具体的な形態と、これに関する車載サイネージシステム10の詳細な処理については、後述する。
【0062】
ユーザDB74には、登録端末100の所有者および車両12の所有者の情報が記録されている。具体的には、ユーザDB74には、これら所有者の属性や連絡先、現在付与されている特典の値が記録されている。また、車両12の所有者については、さらに、対応する車両12の識別情報が記録されている。また、登録端末100の所有者については、さらに、対応するSNSのアカウントが対応づけられている。特典付与部64は、このユーザDB74を参照して、特典の付与対象を特定するとともに、必要に応じて、記録されている特典の値等を更新する。
【0063】
投稿収集部66および投稿分析部68は、特典の付与のために、インターネット上にアップロードされたSNSの投稿コンテンツを収集し、分析する。具体的には、投稿収集部66は、インターネット回線110を介してSNSサーバにアクセスし、様々なユーザからアップロードされた投稿コンテンツをダウンロードする。この投稿収集部66の機能は、例えば、クローラー、ボット、スパイダー、ロボット等と呼ばれるプログラムを実行することにより実現できる。
【0064】
投稿分析部68は、収集された投稿コンテンツを分析し、車両12または車両12に表示された画像に関する投稿コンテンツを特定する。この投稿コンテンツの分析方法は、公知のテキストマイニング技術、音声解析技術、画像解析技術を利用することができる。また、こうした投稿コンテンツの分析には、ニューラルネットワーク等の機械学習を用いたAIを利用してもよい。いずれにしても、投稿分析部68は、車両12または車両12に表示された画像に関する投稿コンテンツが特定できれば、これを反響投稿コンテンツとして、特典付与部64に送る。特典付与部64は、この反響投稿コンテンツを、ユーザDB74に照らし合わせ、必要に応じて、登録端末100の所有者および車両12の所有者の少なくとも一方に特典を付与する。
【0065】
次に、こうした車載サイネージシステム10での処理の流れについて説明する。
図9は、第一の運用形態における車載サイネージシステム10での処理の流れを示すフローチャートである。第一の運用形態では、上述した通り、最初に、車両12に割り当てられる画像が決定される(S10)。この画像の決定は、人によって行われてもよいし、画像DB72に記録された優先度に基づいて管理センタ14が自動的に行ってもよい。
【0066】
車両12に割り当てられる画像が決まれば、続いて、管理センタ14は、走行可能エリアに位置する登録端末100を抽出する(S12)。すなわち、第一の運用形態では、車両12の目的地等が決まっていないとはいえ、車両12が走行可能なエリアはある程度限定される。そこで、管理センタ14は、端末DB70から車両12の走行可能エリアに位置する登録端末100を抽出する。
【0067】
続いて、管理センタ14は、抽出された登録端末100の所有者情報に基づいて、割り当てられた画像の掲示に適した地域を推定する(S14)。すなわち、管理センタ14は、割り当てられた画像の選択条件に合致する所有者情報をもつ登録端末100を特定し、これら登録端末100の位置分布を取得する。そして、得られた位置分布から画像の選択条件に合致する人が多い地域を、画像の掲示に適した地域として推定する。
【0068】
掲示に適した地域が推定できれば、管理センタ14は、推定された地域を通る走行ルートを選択し、車両12に送信する(S16)。これにより、車両12が、送信された走行ルートに従って走行し、推定された地域に画像が掲示される。
【0069】
上記の処理の結果、予め設定された目標を達成できれば(S18でYes)、処理は終了となる。ここで、目標は、時間で規定されてもよいし、距離で規定されてもよい。例えば、画像の累積掲示時間、または、画像を表示した状態での車両12の走行距離が、目標値に達すれば、目標達成と判断してもよい。また、登録端末100の所有者からのフィードバックが、一定量、得られた場合に、目標達成と判断してもよい。一方、目標が達成できない場合には(S18でNo)、ステップS14に戻り、再び地域の推定と走行ルートの選択・送信を行う。
【0070】
以上の通り、本例では、登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて、画像の掲示に適した地域を推定し、当該地域を通るように車両12の走行ルートを選択する。この場合、当然ながら、車両12は、画像の宣伝対象となる人が多い地域に、積極的に出向いて宣伝することになる。かかる構成とすることで、画像の宣伝効果をより向上できる。
【0071】
次に、第二の運用形態における車載サイネージシステム10での処理の流れを説明する。
図10は、第二の運用形態における車載サイネージシステム10での処理の流れを示すフローチャートである。第二の運用形態では、上述した通り、管理センタ14は、車両12の走行ルート決定に関与できない。そのため、管理センタ14は、最初に、車両12の現在または将来の車両位置を取得する(S20)。具体的には、管理センタ14は、車両12に対して、車両位置の送信をリクエストする。このリクエストを受けた車両12は、現在または将来の車両位置を管理センタ14に送信する。ここで、送信される車両位置は、位置センサで検知された車両12の現在位置でもよい。また、ナビゲーションシステムがルート案内を実行中の場合には、送信される車両位置は、ナビゲーションシステムが車両12に提供する走行ルートでもよい。
【0072】
車両位置が得られれば、管理センタ14は、この車両位置の周辺に位置する登録端末100の情報を端末DB70から抽出する(S22)。そして、管理センタ14は、抽出された登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて、車両位置の周辺の人の傾向を推定する(S24)。そして、管理センタ14は、この推定された傾向に基づいて、車両12に割り当てる画像を選択し、送信する(S26)。
【0073】
画像を車両12に送信した後、車両12が、目的地に到達すれば(S28でYes)、処理は終了となる。一方、車両12が目的地に到達せず、走行を続けている場合には(S28でNo)、管理センタ14は、ステップS20に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0074】
以上の通り、本例では、登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて、車両位置の周辺の傾向を推定し、その推定結果に基づいて、車両12に割り当てる画像を選択している。かかる構成とすることで、より適切な画像を掲示することができ、画像の広告効果をより向上できる。
【0075】
次に、登録端末100の所有者からのフィードバックの形態とその処理内容について
図11を参照して説明する。
図11は、登録端末100の所有者からのフィードバックの形態を示すイメージ図である。
【0076】
本例では、
図11における登録端末100aのように、画像を表示している車両12とV2P通信することを、登録端末100の所有者からのフィードバックの一形態として取り扱う。V2P通信は、インターネット回線を介することなく、車両12と登録端末100aとが直接通信することである。このV2P通信は、近距離または中距離無線通信の通信規格、例えば、ブルートゥース(登録商標)等を利用することで実現できる。本例では、車両12は、一般にビーコンと呼ばれるブルートゥース発信機を用いて、車両12の周辺の登録端末100aにPush型のメッセージを配信する。このメッセージを受信した登録端末100aは、自己の識別情報を車両12に返信する。
【0077】
ここで、このV2P通信によるメッセージは、車両12の周囲一定範囲に位置する登録端末100aのみが受信できる。したがって、V2P通信が成立した登録端末100aは、車両12の近傍に位置しており、登録端末100aの所有者は、車両12に表示された画像を見ていると推測できる。そのため、車両12は、登録端末100aから識別情報の返信を受け取れば、これを管理センタ14に送信する。管理センタ14は、得られた識別情報から登録端末100aの所有者を特定し、登録端末100aの所有者および車両12の所有者の少なくとも一方に、特典を付与する。
【0078】
このように、V2P通信の成立をフィードバックとして取り扱う場合において、登録端末100aの所有者に特典を付与すれば、登録端末100aの所有者が、車両12の近傍に近づいて、画像を見ようとすることのモチベーションが生まれる。また、車両12の所有者に特典を付与することで、車両12の所有者には、V2P通信が成立しやすいような走行(例えば低速での走行や、歩道寄り位置での走行等)を行うモチベーションが生まれる。その結果、画像の宣伝効果をより向上できる。また、V2P通信の成立をフィードバックとして取り扱う場合、登録端末100aの所有者が特別な操作をする必要がないため、登録端末100aの所有者の煩わしさを軽減できる。
【0079】
なお、V2P通信の成立をフィードバックとして取り扱った場合、表示画像が想定する対象者以外の人からもフィードバックが得られることになる。例えば、女性用化粧品の広告画像を表示する車両12の周囲に、男性の登録端末100が位置していれば、当該登録端末100との間でもV2P通信が成立することになる。しかし、こうした男性の登録端末100からのフィードバックは、広告主の期待したフィードバックではない。そこで、フィードバックを返した所有者の属性と、車両12に表示されている画像の選択条件との適合度合いに応じて、登録端末100および車両12の所有者に付与される特典を変えてもよい。例えば、女性用化粧品の広告画像を表示する車両12に対して、男性が所有する登録端末100および女性が所有する登録端末100それぞれからフィードバック(すなわちV2P通信成立)があった場合、女性に与える特典を、男性に与える特典よりも有益になるようにしてもよい。
【0080】
次に、他のフィードバックの形態を説明する。
図11における登録端末100bのように、車両12で表示している画像の詳細情報にアクセスすることを、登録端末100の所有者からのフィードバックとして取り扱ってもよい。この場合、詳細情報を表示させるために、車両12は、所定のアクセス情報を登録端末100bに提供する。アクセス情報としては、例えば、詳細情報が記載されたインターネット上のWebサイトのURL、あるいは、URLのコード画像90(例えば、QRコード(登録商標)等)が含まれる。また、アクセス情報がURLの場合、このアクセス情報は、V2P通信により、車両12から登録端末100bにデータ送信されてもよい。また、アクセス情報がコード画像90の場合、このコード画像90は、車両12で表示する画像に組み込まれており、登録端末100bのカメラで読み取ることで、登録端末100が詳細情報にアクセスできる。
【0081】
登録端末100bが詳細情報にアクセスしたことは、例えば、登録端末100b自身で検知して、車両12または管理センタ14に送信するようにしてもよい。また、別の形態として、詳細情報を掲載しているWebサイトのサーバ側で、登録端末100bからのアクセスを検知し、管理センタ14に送信するようにしてもよい。いずれにしても、管理センタ14は、登録端末100bが詳細情報にアクセスした場合、当該登録端末100bの所有者およびアクセス情報を提供した車両12の所有者の少なくとも一方に特典を付与する。
【0082】
このように、登録端末100bの詳細情報へのアクセスをフィードバックとして取り扱う場合において、登録端末100bの所有者に特典を付与すれば、登録端末100bの所有者が、詳細情報にアクセスするためのモチベーションが生まれる。また、車両12の所有者に特典を付与することで、車両12の所有者には、アクセス情報を提供しやすいような走行(例えば低速での走行や、歩道寄り位置での走行等)を行うモチベーションが生まれる。その結果、画像の宣伝効果をより向上できる。
【0083】
次に、他のフィードバックの形態を説明する。
図11における登録端末100cのように、車両12または車両12で表示されている画像に関する投稿コンテンツをSNSに投稿することを、フィードバックとして取り扱ってもよい。このフィードバックを得るために、管理センタ14は、上述した通り、インターネット上にアップロードされたSNSの投稿コンテンツを収集、分析し、車両12または車両12に表示されている画像に関する投稿コンテンツを反響投稿コンテンツとして特定する。この反響投稿コンテンツには、通常、車両12または車両12に表示されている画像を登録端末100のカメラで撮像した撮像画像が含まれる。管理センタ14は、反響投稿コンテンツの投稿者のアカウントを、ユーザDB74に照らし合わせ、投稿者を特定する。また、反響投稿コンテンツに含まれる撮像画像に基づいて、対象となる車両12を特定する。この特定を容易にするために、車両12に表示される画像または車両12の表示エリア17の近傍に、車両12の識別情報を付してもよい。
【0084】
いずれにしても、車両12または車両12で表示されている画像に関する投稿コンテンツ、すなわち反響投稿コンテンツをSNSにアップロードすることを、フィードバックとして取り扱う。この場合において、投稿者に特典を付与することで、車両12で行っている宣伝が積極的に拡散される。また、車両12の所有者に特典を付与することで、車両12の所有者には、SNSへの投稿がされやすいような走行(例えば低速での走行や、歩道寄り位置での走行等)を行うモチベーションが生まれる。その結果、画像の宣伝効果をより向上できる。
【0085】
なお、ここで説明したフィードバックの形態は、一例であり、適宜変更されてもよい。例えば、上述の説明では、フィードバックの形態として三つを挙げているが、車載サイネージシステム10で取り扱うフィードバックの形態は、より少なくてもよいし、より多くてもよい。また、フィードバックの形態によって、付与する特典の内容を変えてもよい。例えば、V2P通信の成立というフィードバックよりも、反響投稿コンテンツの投稿というフィードバックのほうが、宣伝の依頼主からみて宣伝効果をより実感できる有益なフィードバックと言える。そこで、V2P通信が成立した場合よりも、反響投稿コンテンツが投稿された場合の方が、より有益な特典が付与されるようにしてもよい。
【0086】
次に、他の車載サイネージシステム10について説明する。
図12は、他の車載サイネージシステム10の機能的な構成を示すブロック図である。この車載サイネージシステム10の物理的構成は、
図5とほぼ同じであるため、説明を省略する。この車載サイネージシステム10は、第2の運用形態、すなわち、管理センタ14は、車両12の走行ルートの決定に関与せず、車両12に割り当てる画像を選択する運用形態に適している。
【0087】
この車載サイネージシステム10は、車両12に設けられたV2P通信部52が、端末位置取得部54として機能する点で、
図6に示したシステムと相違する。V2P通信部52により車両と直接通信した登録端末100は、車両12の一定範囲内にあり、これらの登録端末100の所有者は、車両12に表示された画像を見る可能性が高いと判断できる。そのため、本例では、V2P通信が成立した登録端末100の所有者に適した画像を選択し、車両12に表示する。
【0088】
具体的には、車両12に設けられた端末位置取得部54は、このV2P通信により、周囲に位置する登録端末100の識別情報を取得する。そして、端末位置取得部54は、これら登録端末100の位置を、車両12の周辺とみなし、車両12の位置とともに、得られた識別情報を管理センタ14に送信する。管理センタ14は、受信した登録端末100の識別情報を端末DB70に照らし合わせ、当該登録端末100の所有者の属性から車両12に適した画像を選択する。選択された画像は、車両12に送信され、表示エリア17に表示される。
【0089】
この車載サイネージシステム10によれば、管理センタ14が膨大な数の登録端末100の位置を把握する必要がなく、管理センタ14で取り扱うデータ量および通信量を低減できる。また、本例によれば、登録端末100の所有者は、自身の位置情報を定期的に管理センタ14に送信する必要がないため、登録端末100の通信量を軽減できる。また、自己の位置は、比較的、重要な個人情報と言える。上記の構成によれば、登録端末100が、個人情報である位置情報を管理センタ14に送信する必要がないため、個人情報をより確実に保護できる。
【0090】
なお、これまで説明した車載サイネージシステム10は、一例であり、少なくとも、登録端末100の位置情報および所有者情報に基づいて、車両12の走行ルート、および、車両12に割り当てる画像の少なくとも一方を選択して、車両12に送信するのであれば、その他の構成は、適宜変更されてもよい。例えば、上記の例では、車両12に設けられた車両コントローラ20および管理センタ14に設けられたセンタコントローラ22で、サイネージコントローラ18を構成しているが、いずれか一方のみで、サイネージコントローラ18を構成してもよい。したがって、例えば、管理センタ14を設けず、車両12が、登録端末100の位置情報の取得から画像または走行ルートの選択までの全てを、行うようにしてもよい。
【0091】
また、端末DB70や画像DB72、ユーザDB74に記録される情報の形態も、適宜変更されてもよい。また、特典付与部64や投稿収集部66、投稿分析部68は、適宜、省略されてもよい。また、車両12の構成も適宜変更可能であり、例えば、車両12は、画像を表示する表示器16に加え、さらに、宣伝用の音声を出力するマイクを有してもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 車載サイネージシステム、12 車両、14 管理センタ、16 表示器、17 表示エリア、18 サイネージコントローラ、20 車両コントローラ、22 センタコントローラ、24,34 プロセッサ、26,36 記憶装置、28,38 通信I/F、30,40 ビデオコントローラ、32,42 I/Oコントローラ、48 表示制御部、50 位置提供部、52 V2P通信部、54 端末位置取得部、58 選択部、60 ルート選択部、62 画像選択部、64 特典付与部、66 投稿収集部、68 投稿分析部、70 端末DB、72 画像DB、74 ユーザDB、90 コード画像、100 登録端末、110 インターネット回線。