(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電動圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F04B39/00 101U
F04B39/00 101V
(21)【出願番号】P 2020065204
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】西森 規貴
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 崇行
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-211533(JP,A)
【文献】特開2013-194673(JP,A)
【文献】特開2014-9626(JP,A)
【文献】特開2000-124623(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する圧縮部と、
前記圧縮部を駆動する電動モータと、
前記電動モータを駆動するための駆動回路と、
前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路を収容する第1ハウジングと、
前記第1ハウジングの外側面の少なくとも一部を覆う第2ハウジングと、
前記第2ハウジングにおける前記第1ハウジングの外側面に対向する壁面と、前記第1ハウジングの外側面との間に配置される遮音性を有する防音材と、を備え、
前記防音材は、
前記第1ハウジングの外側面に接触するとともに前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングよりも硬度が低い吸音層と、
前記吸音層に積層され、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングよりも硬度が低く、且つ前記吸音層よりも硬度が高い遮音層と、を有し、
前記第1ハウジングの外側面と前記第2ハウジングの前記壁面との間には、前記遮音層を介することなく前記吸音層が前記第2ハウジングの前記壁面に接触する第1領域と、前記吸音層に積層された前記遮音層が前記第2ハウジングの前記壁面と接触しないように空気層が形成されている第2領域と、が形成されていることを特徴とする電動圧縮機。
【請求項2】
前記第2ハウジングは、締結部材により前記第1ハウジングに対して締結される締結部を有し、
前記防音材は、前記締結部と前記第1ハウジングとの間には配置されていないことを特徴とする請求項1に記載の電動圧縮機。
【請求項3】
前記電動圧縮機は、車両に搭載され、
前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに取り付けられる前記締結部を有するとともに車両の外部からの衝撃から前記第1ハウジングを保護する金属製のプロテクタを含み、
前記プロテクタの前記壁面と前記第1ハウジングの外側面との間には、前記第2領域が少なくとも形成されていることを特徴とする請求項2に記載の電動圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載される電動圧縮機が知られている。
上記の電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、圧縮部を駆動する電動モータと、電動モータを駆動するための駆動回路と、を備えている。電動圧縮機は、圧縮部、電動モータ、及び駆動回路を収容する第1ハウジングと、第1ハウジングの外側面を覆う第2ハウジングと、を備えている。電動圧縮機は、第2ハウジングにおける第1ハウジングの外側面と対向する壁面と第1ハウジングの外側面との間に配置される遮音性を有する防音材を備えている。上記の電動圧縮機では、圧縮部及び電動モータの駆動により第1ハウジングが振動することで発生する音を防音材により吸音できるため、電動圧縮機の騒音を抑制できる。
【0003】
ここで、電動圧縮機の防音効果を更に高めるために、特許文献2に記載される電動圧縮機のように、防音材を2層構造とすることが知られている。防音材は、吸音層と遮音層とにより構成されている。吸音層は、第1ハウジングの外側面を覆っている。遮音層は、吸音層に積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-211533号公報
【文献】特開2013-194673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、第2ハウジングの壁面と第1ハウジングの外側面との間において、遮音層が第2ハウジングに接触すると、遮音層と第2ハウジングとの接触によって音が発生する虞がある。
【0006】
本発明の目的は、防音効果を高めつつ防音材の接触音を抑制できる電動圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動圧縮機は、流体を圧縮する圧縮部と、前記圧縮部を駆動する電動モータと、前記電動モータを駆動するための駆動回路と、前記圧縮部、前記電動モータ、及び前記駆動回路を収容する第1ハウジングと、前記第1ハウジングの外側面の少なくとも一部を覆う第2ハウジングと、前記第2ハウジングにおける前記第1ハウジングの外側面に対向する壁面と、前記第1ハウジングの外側面との間に配置される遮音性を有する防音材と、を備え、前記防音材は、前記第1ハウジングの外側面に接触するとともに前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングよりも硬度が低い吸音層と、前記吸音層に積層され、前記第1ハウジング及び前記第2ハウジングよりも硬度が低く、且つ前記吸音層よりも硬度が高い遮音層と、を有し、前記第1ハウジングの外側面と前記第2ハウジングの前記壁面との間には、前記遮音層を介することなく前記吸音層が前記第2ハウジングの前記壁面に接触する第1領域と、前記吸音層に積層された前記遮音層が前記第2ハウジングの前記壁面と接触しないように空気層が形成されている第2領域と、が形成されている。
【0008】
これによれば、従来技術と同様に第1領域において、吸音層が第2ハウジングの壁面に接触しているため、圧縮部及び電動モータの駆動により第1ハウジングが振動することで発生する音は、吸音層に吸音される。吸音層を透過しようとする音は、第2ハウジングで反射して、吸音層に戻されるため、吸音層での吸音効果が高まる。
【0009】
また、第2領域において、第1ハウジングが振動することで発生する音は、吸音層に吸音される。吸音層を透過しようとする音は遮音層で反射して吸音層に戻されるため、吸音層での吸音効果が高まる。また、第2領域において、遮音層を透過しようとする音は、空気層に伝わり、空気層から第2ハウジングに伝達されるが、遮音層から第2ハウジングに振動が直接伝達されないため、第2ハウジングの振動を抑制できる。すなわち、第2領域において、第1ハウジングの振動により発生する音は、吸音層、遮音層、空気層、及び第2ハウジングの順に伝わるにつれて減衰されるため、防音効果が高まる。また、遮音層と第2ハウジングの壁面との間に空気層が形成されているため、遮音層が第2ハウジングの壁面に接触することによる接触音が発生し難い。したがって、防音効果を高めつつ防音材の接触音を抑制できる。
【0010】
上記の電動圧縮機において、前記第2ハウジングは、締結部材により前記第1ハウジングに対して締結される締結部を有し、前記防音材は、前記締結部と前記第1ハウジングとの間には配置されていないとよい。
【0011】
例えば、第2ハウジングの締結部と第1ハウジングとの間に防音材が配置された状態で、締結部材により第2ハウジングの締結部が第1ハウジングに締結されると、防音材が圧縮されてしまう虞がある。すると、第2ハウジングが第1ハウジングに対して締結される締結力が弱まるとともに防音材が圧縮されることにより電動圧縮機の設計時に定められた防音効果が得られない虞がある。
【0012】
そこで、第2ハウジングの締結部と第1ハウジングとの間には、防音材を配置しないようにした。これによれば、第2ハウジングの締結部と第1ハウジングとの締結力が安定するとともに防音材による防音効果を高めることができる。
【0013】
上記の電動圧縮機において、前記電動圧縮機は、車両に搭載され、前記第2ハウジングは、前記第1ハウジングに取り付けられる前記締結部を有するとともに車両の外部からの衝撃から前記第1ハウジングを保護する金属製のプロテクタを含み、前記プロテクタの前記壁面と前記第1ハウジングの外側面との間には、前記第2領域が少なくとも形成されているとよい。
【0014】
電動圧縮機を車両に搭載する場合、電動圧縮機を車両の外部からの衝撃から保護するためのプロテクタが採用されることがある。プロテクタが採用されると、第1ハウジングの振動による音の発生に加えて、車両の振動によりプロテクタが防音材の遮音層に接触することにより音が発生する虞がある。
【0015】
その点、これによれば、プロテクタの壁面と第1ハウジングの外側面との間には、第2領域が形成されるため、プロテクタが防音材の遮音層に接触し難くなる。よって、プロテクタにより電動圧縮機を保護しつつ、防音効果を高められ、且つ防音材の接触音を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、防音効果を高めつつ防音材の接触音を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、電動圧縮機を具体化した一実施形態を
図1~
図3にしたがって説明する。
図1に示すように、電動圧縮機1は、車両100に搭載され、車載用空調装置に用いられている。電動圧縮機1は、流体を圧縮する圧縮部10と、圧縮部10を駆動する電動モータ20と、電動モータ20を駆動するための駆動回路30と、を備えている。電動圧縮機1は、圧縮部10、電動モータ20、及び駆動回路30を密閉した状態で収容する長筒状の第1ハウジング40を備えている。
【0019】
圧縮部10、電動モータ20、及び駆動回路30は、従来技術において公知であるため、以下、概略構成について説明する。
圧縮部10は、例えば、第1ハウジング40の内周面に固定された固定スクロールと、固定スクロールに対向配置される可動スクロールとから構成されるスクロール式である。電動モータ20は、第1ハウジング40の内周面に固定されるステータと、ステータに巻回されたコイルと、ステータ内に配置されるロータと、ロータと一体回転する回転軸とから構成されている。駆動回路30は、周知のインバータ回路である。駆動回路30は、車両100に搭載された電源からの直流電力を交流電力に変換してコイルに供給することにより電動モータ20を駆動する。
【0020】
第1ハウジング40は、金属製であり、例えば、アルミニウム製である。第1ハウジング40は、第1ハウジング40の長手方向に延びる長筒状の周壁41と、第1ハウジング40の長手方向に位置する第1壁部42及び第2壁部43と、を有している。第1壁部42及び第2壁部43は、周壁41の両端それぞれに連続している。第1ハウジング40は、周壁41、第1壁部42、及び第2壁部43により区画される内部空間を有している。第1ハウジング40の内部空間には、圧縮部10、電動モータ20、及び駆動回路30が第1ハウジング40の長手方向においてこの順に並ぶように収容されている。第1壁部42は、第1ハウジング40の長手方向において圧縮部10寄りに位置し、第2壁部43は、第1ハウジング40の長手方向において駆動回路30寄りに位置している。なお、第1ハウジング40は、図示しない吸入口及び吐出口を有している。電動圧縮機1は、第1ハウジング40の吸入口から吸入する流体としての冷媒を圧縮部10で圧縮し、第1ハウジング40の吐出口から吐出する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、第1ハウジング40の外側面は、周壁41の外面41aと、第1壁部42の外面42aと、第2壁部43の外面43aとにより形成されている。
図2及び
図3に示すように、第1ハウジング40は、車体101に電動圧縮機1を固定するボルト93を挿通する一対の取付脚44を備えている。一対の取付脚44は、筒状をなしている。一対の取付脚44は、第1ハウジング40の径方向において対称的な位置に配置されている。一対の取付脚44は、第1ハウジング40の軸線方向に直交する方向に延びている。一対の取付脚44は、同じ方向に延びている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、第1ハウジング40の周壁41には、被取付部45が設けられている。被取付部45は、筒状をなしている。被取付部45の内周面には、雌ねじが形成されている。被取付部45は、周壁41の外面41aから一対の取付脚44と同じ方向に延びている。
【0023】
電動圧縮機1は、第1ハウジング40の外側面の一部を覆うように配置される第2ハウジング50を備えている。第2ハウジング50は、第1ハウジング40を車体101に固
定する金属製のブラケット60と、車両100の外部からの衝撃から第1ハウジング40を保護する金属製のプロテクタ70と、を有している。車体101は、車両100の内部に位置する車両取付部102を有している。電動圧縮機1は、車両取付部102よりも車両100の前方寄りに配置されているものとする。なお、第1ハウジング40は、車両100の前後方向に直交する方向である車両100の左右方向に延びている。また、一対の取付脚44は、車両100の前後方向に延び、被取付部45は、車両100の前方に延びている。
【0024】
図2に示すように、ブラケット60は、ブロック状をなしている。ブラケット60は、第1ハウジング40の長手方向に延びる溝部61を有している。溝部61は、車両100の左右方向においてブラケット60の両端をつなぐように延びている。溝部61の内面61aは、円弧状をなしている。ブラケット60は、溝部61が形成されることにより溝部61を挟み込むように形成された一対の取付部62を有している。ブラケット60の一対の取付部62は、車両取付部102に対してボルト91により締結されている。
図1に示すように、ブラケット60における周壁41の外面41aに対向する壁面である内面61aは、周壁41の外面41aから離間している。
【0025】
図2に示すように、一対の取付部62には、一対の取付部62それぞれから第1ハウジング40に向けて延びる締結台63を有している。締結台63は、筒状をなしている。締結台63の内周面には、雌ねじが形成されている。
【0026】
図2及び
図3に示すように、第1ハウジング40の一対の取付脚44には、ボルト93が挿通され、ボルト93は、締結台63の内周面に形成された雌ねじに螺合される。よって、第1ハウジング40がボルト93によりブラケット60に固定され、電動圧縮機1が車体101に固定される。すなわち、ブラケット60は、ボルト93により第1ハウジング40に対して締結される締結部としての締結台63を有している。
【0027】
図1及び
図2に示すように、プロテクタ70は、第1ハウジング40を基準としてブラケット60とは反対側に位置している。プロテクタ70は、電動圧縮機1において車両100の前方に位置している。
【0028】
図1に示すように、プロテクタ70は、第1ハウジング40の被取付部45に当接するとともに貫通孔73aが形成された取付板部73と、取付板部73と一体形成される第1保護部71及び第2保護部72と、を有している。取付板部73は、締結部材としてのボルト92により被取付部45に取り付けられている。ボルト92は、貫通孔73aを貫通し、被取付部45の内周面に形成された雌ねじに螺合される。なお、取付板部73のうち第1ハウジング40の被取付部45に当接している部分は、締結部の一例である。
【0029】
第1保護部71は、周壁41の外面41aに沿って取付板部73から第1壁部42に向けて延びる板状の第1保護壁71aと、第1保護壁71aにおける取付板部73とは反対側に位置する端部から第1壁部42と対向する位置まで延びる板状の第1延設壁71bと、を有している。第1保護壁71aにおける周壁41の外面41aと対向する壁面711は、周壁41の外面41aから離間している。第1保護壁71aは、周壁41の外面41aにおける車両取付部102と対向する部分は覆っていない。
【0030】
図1及び
図2に示すように、第1保護壁71aは、周壁41の外面41aにおける車両100の前方に位置する所定範囲の部分を覆っている。周壁41の外面41aにおける車両100の前方に位置する所定範囲とは、周壁41の外面41aの周方向における範囲である。第1保護壁71aは、周壁41の外面41aのうち取付板部73よりも第1壁部42寄りに位置する部分の一部を覆っている。第1延設壁71bにおける第1壁部42の外
面42aと対向する壁面712は、第1壁部42の外面42aから離間している。第1延設壁71bは、第1壁部42の外面42aの一部と対向している。第1延設壁71bは、第1壁部42の外面42aのうち車両100の前方に位置する一部分を覆っている。
【0031】
図1に示すように、第2保護部72は、周壁41の外面41aに沿って取付板部73から第2壁部43に向けて延びる板状の第2保護壁72aと、第2保護壁72aにおける取付板部73とは反対側に位置する端部から第2壁部43に対向する位置まで延びる板状の第2延設壁72bと、を有している。第2保護壁72aにおける周壁41の外面41aと対向する壁面721は、周壁41の外面41aから離間している。第2保護壁72aは、周壁41の外面41aにおける車両取付部102と対向する部分は覆っていない。
【0032】
図1及び
図2に示すように、第2保護壁72aは、周壁41の外面41aにおける車両100の前方に位置する所定範囲の部分を覆っている。第2保護壁72aは、周壁41の外面41aのうち取付板部73よりも第2壁部43寄りに位置する部分の一部を覆っている。第2延設壁72bにおける第2壁部43の外面43aと対向する壁面722は、第2壁部43の外面43aから離間している。第2延設壁72bは、第2壁部43の外面43aと対向している。第2延設壁72bは、第2壁部43の外面43aの全範囲を覆っている。
【0033】
電動圧縮機1は、防音材80を備えている。防音材80は、2つのカバー部材により形成されている。第1ハウジング40は、2つのカバー部材により覆われている。以下、防音材80の構成について詳細に説明するが、2つのカバー部材により第1ハウジング40を覆った状態における防音材80の構成を説明する。
【0034】
図1及び
図3に示すように、防音材80は、吸音層81と、遮音層82と、を有している。吸音層81は、吸音性を有する柔軟な素材で形成されている。吸音層81は、例えば、ウレタンフォームに代表される連続気泡性の発泡樹脂が用いられている。吸音層81は、第1ハウジング40及び第2ハウジング50よりも硬度が低い。遮音層82は、遮音性を有する柔軟な素材で形成されている。遮音層82は、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン系樹脂からなる遮音シートである。遮音層82は、第1ハウジング40及び第2ハウジング50よりも硬度が低く、且つ吸音層81よりも硬度が高い。
【0035】
図1に示すように、吸音層81は、第1吸音部811と、第2吸音部812と、を有している。第1吸音部811は、板状の底壁811aと、底壁811aの外縁から立設する筒状の周壁811bと、を有している。底壁811aは、第1壁部42の外面42aと接触している。底壁811aは、第1壁部42の外面42aの全域を覆っている。底壁811aは、第1延設壁71bの壁面712に接触している。底壁811aの外面のうち車両100の前方寄りに位置する一部分は、第1延設壁71bの壁面712により覆われている。
【0036】
第2吸音部812は、板状の底壁812aと、底壁812aの外縁から立設する筒状の周壁812bと、を有している。底壁812aは、第2壁部43の外面43aと接触している。底壁812aは、第2壁部43の外面43aの全域を覆っている。底壁812aは、第2延設壁72bの壁面722から離間している。周壁812bは、第2保護壁72aの壁面721から離間している。
【0037】
図1及び
図3に示すように、第1吸音部811の周壁811bと、第2吸音部812の周壁812bとは、第1ハウジング40の長手方向において連続している。第1吸音部811と第2吸音部812の境界部分には、第1ハウジング40の一対の取付脚44を避けるように形成された挿通部813と、吸音層81を厚さ方向に貫通する貫通孔814が形
成されている。貫通孔814には、第1ハウジング40の被取付部45が挿通されている。このように構成された吸音層81は、第1ハウジング40の外側面である外面41a,42a,43aに接触するとともに第1ハウジング40の外面41a,42a,43aを覆う長筒状をなしている。そして、吸音層81において、挿通部813及び814を基準として底壁811a寄りの部分が第1吸音部811であり、底壁812a寄りの部分が第2吸音部812である。
【0038】
図1に示すように、遮音層82は、第1遮音部821と、第2遮音部822と、を有している。第1遮音部821は、第1吸音部811の底壁811aに積層される板状の第1壁821aと、周壁811bに積層される板状の第2壁821bと、を有している。第1壁821aは、第1壁部42の外面42aのうち車両100の後方に位置する一部分を覆うように配置されている。第1壁821aは、底壁811aの外面のうち車両100の後方に位置する一部分を覆うように配置されている。第1壁821aの車両100の前方寄りの端部は、第1延設壁71bの車両100の後方寄りの端部に接触しないように配置されている。
【0039】
第2壁821bは、第1壁821aの車両100の後方寄りの端部から第1吸音部811の周壁811bに沿って延びている。
図1及び
図3に示すように、第2壁821bは、周壁811bの外面における車両100の後方に位置する所定範囲の部分を覆うように円弧状をなしている。周壁811bの外面における車両100の後方に位置する所定範囲とは、周壁811bの外面の周方向における範囲である。周壁811bの外面における車両100の後方に位置する所定範囲は、周壁811bの外面の周方向において、第2壁821bがプロテクタ70の第1保護部71に接触しないように設定されている。第2壁821bは、一対の取付脚44に接触しないように配置されている。第2壁821bは、ブラケット60の溝部61の内面61aに接触していない。
【0040】
図1に示すように、第2遮音部822は、板状の底壁822aと、底壁822aの外縁から立設する筒状の周壁822bと、を有している。底壁822aは、第2吸音部812の底壁812aに積層されている。底壁822aは、底壁812aの外面の全域を覆っている。底壁822aは、第2延設壁72bの壁面722から離間している。周壁822bは、周壁812bの外面に沿って延びている。周壁822bは、周壁812bに積層されている。周壁822bは、一対の取付脚44に接触しないように配置されている。周壁822bは、第2保護壁72aの壁面721に接触していない。周壁822bは、ブラケット60の溝部61の内面61aに接触していない。このように構成された遮音層82は、吸音層81に積層されている。なお、第1遮音部821と第2遮音部822とは、第1ハウジング40の長手方向において連続していない。
【0041】
このように構成された防音材80を備える電動圧縮機1では、第2ハウジング50の内面61a及び壁面711,712,721,722と、第1ハウジング40の外側面である外面41a,42a,43aとの間に遮音性を有する防音材80が配置されている。
【0042】
防音材80は、締結台63と第1ハウジング40との間、及び取付板部73の被取付部45に当接している部分と第1ハウジング40との間に配置されていない。そして、第2ハウジング50の内面61a及び壁面711,712,721,722と、第1ハウジング40の外面41a,42a,43aとの間には、遮音層82を介することなく吸音層81が第2ハウジング50の壁面711,712に接触する第1領域R1が形成されている。第1領域R1は、電動圧縮機1のうち、圧縮部10が収納される領域に形成される。第1領域R1は、第1ハウジング40の外面41aに対して、吸音層81、第2ハウジング50が遮音層82を介さずに積層された領域ともいえる。ブラケット60の内面61aと
第1ハウジング40の外面41aとの間には、遮音層82がブラケット60に接触しないように空気層Sが形成されている。つまり、遮音層82とブラケット60とは離間している。プロテクタ70の壁面721,722と第1ハウジング40の外面41a,43aとの間には、遮音層82がプロテクタ70に接触しないように空気層Sが形成されている。つまり、遮音層82とプロテクタ70とは離間している。すなわち、第2ハウジング50の内面61a及び壁面711,712,721,722と、第1ハウジング40の外面41a,42a,43aとの間には、吸音層81に積層された遮音層82が第2ハウジング50の内面61a及び壁面721,722に接触しないように空気層Sが形成されている第2領域R2が形成されている。第2領域R2は、電動圧縮機1のうち、駆動回路30が収納される領域と、圧縮部10が収容される領域とに形成される。第2領域R2は、第1ハウジング40の外面41aに対して、吸音層81、遮音層82、空気層S、第2ハウジング50が積層された領域ともいえる。また、車体101に対して反対側の領域、すなわち、電動圧縮機1に対して車両100の外側に向かって設けられている第2領域R2は、車両100の外側への電動圧縮機1の騒音を抑制する上で好適である。
【0043】
第1ハウジング40の外側面のうち第2ハウジング50により覆われていない部分、すなわち、第1領域R1及び第2領域R2以外の部分にも、吸音層81と遮音層82とが積層されている第3領域R3が形成されている。第3領域R3は、ブラケット60及びプロテクタ70を備えた電動圧縮機1の車両100への搭載都合により設定されたブラケット60及びプロテクタ70の形状により、第1ハウジング40の外側面を覆うことができなかった部分においても防音効果を高めるために形成されている。
【0044】
本実施形態の作用を説明する。
従来技術と同様に第1領域R1において、吸音層81が第2ハウジング50の壁面711,712に接触しているため、圧縮部10及び電動モータ20の駆動により第1ハウジング40が振動することで発生する音は、吸音層81に吸音される。吸音層81を透過しようとする音は、第1保護部71で反射して、吸音層81に戻されるため、吸音層81での吸音効果が高まる。また、第2領域R2において、第1ハウジング40が振動することで発生する音は、吸音層81に吸音される。吸音層81を透過しようとする音は遮音層82で反射して吸音層81に戻されるため、吸音層81での吸音効果が高まる。また、第2領域R2において、遮音層82を透過しようとする音は、空気層Sに伝わり、空気層Sから第2ハウジング50に伝達されるが、遮音層82から第2ハウジング50に振動が直接伝達されないため、第2ハウジング50の振動を抑制できる。すなわち、第2領域R2において、第1ハウジング40の振動により発生する音は、吸音層81、遮音層82、空気層S、及び第2ハウジング50の順に伝わるにつれて減衰される。また、遮音層82と第2ハウジング50の内面61a及び壁面721,722との間に空気層Sが形成されているため、遮音層82が第2ハウジング50の内面61a及び壁面721,722に接触し難い。
【0045】
本実施形態の効果を説明する。
(1)第1領域R1及び第2領域R2において、第1ハウジング40が振動することで発生する音は、吸音層81に吸音される。第1領域R1において、吸音層81を透過しようとする音は第1保護部71で反射して吸音層81に戻されるため、吸音層81での吸音効果が高まる。第2領域R2において、吸音層81を透過しようとする音は遮音層82で反射して吸音層81に戻されるため、吸音層81での吸音効果が高まる。また、第2領域R2において、第1ハウジング40の振動により発生する音は、吸音層81、遮音層82、空気層S、及び第2ハウジング50の順に伝わるにつれて減衰されるため、防音効果が高まる。また、空気層Sにより遮音層82が第2ハウジング50の内面61a及び壁面721,722に接触することによる接触音が発生し難い。したがって、防音効果を高めつつ防音材80の接触音を抑制できる。
【0046】
(2)締結台63と第1ハウジング40との間、及び取付板部73の被取付部45に当接している部分と第1ハウジング40との間には、防音材80を配置しないようにした。これによれば、締結台63と第1ハウジング40との締結力、及び取付板部73の被取付部45が当接している部分と第1ハウジング40との締結力が安定するとともに防音材80による防音効果を高めることができる。
【0047】
(3)プロテクタ70の壁面721,722と第1ハウジング40の外面41a,43aとの間には、第2領域R2が形成されるため、プロテクタ70が防音材80の遮音層82に接触し難くなる。よって、プロテクタ70により電動圧縮機1を保護しつつ、防音効果を高められ、且つ防音材80の接触音を抑制できる。
【0048】
(4)第3領域R3を形成することにより、電動圧縮機1の防音効果を更に高めることができる。
(5)プロテクタ70は、電動圧縮機1の車両100の前方に設けられている。電動圧縮機1の車両100の前方側には、第2吸音部812の周壁812b、第2遮音部822の周壁822b、空気層S、及びプロテクタ70の第2保護壁72aの4層構造が配置されているため、車両100の前方への電動圧縮機1の騒音を抑制できる。また、電動圧縮機1の車両100の側方側には、第2吸音部812の底壁812a、第2遮音部822の底壁822a、空気層S、及びプロテクタ70の第2延設壁72bの4層構造が配置されるため、車両100の側方への電動圧縮機1の騒音を抑制できる。したがって、車両100の外部への電動圧縮機1の騒音を抑制できる。
【0049】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○ 電動圧縮機1の適用対象及び圧縮対象の流体は任意である。例えば、電動圧縮機1は、車両100が燃料電池車両である場合には、電動圧縮機1は、燃料電池に空気を供給する空気供給装置に用いられてもよい。すなわち、圧縮対象の流体は、冷媒に限られず、空気など任意である。
【0050】
○ 第2ハウジング50のブラケット60は、電動圧縮機1を車体101に取り付けるために採用されているが、これに限らない。例えば、ブラケット60は、電動圧縮機1に設けられる配管やセンサ等の別部品を第1ハウジング40に取り付けるためのブラケットであってもよい。
【0051】
○ ブラケット60には、溝部61が形成されていたが、これに限らない。ブラケット60は、第1ハウジング40、ひいては電動圧縮機1を車体101に締結することができれば構成を適宜変更してもよい。このように変更する場合、ブラケット60における車両100の前方に位置する壁面と、遮音層82との間には、空気層Sが形成されるとよい。すなわち、ブラケット60における周壁41の外面41aに対向する壁面と遮音層82との間に空気層Sが形成されていればよい。
【0052】
○ 第2ハウジング50は、ブラケット60とプロテクタ70とにより構成されていたが、ブラケット60を設けずに、電動圧縮機1を車体101に取り付ける構成でもよい。
○ 第1領域R1は、電動圧縮機1のうち、圧縮部10が収納される領域に形成されていたが、これに限らない。例えば、駆動回路30が収納される領域に形成されていてもよいし、電動モータ20が収納される領域に形成されていてもよい。
【0053】
○ 第2領域R2は、電動圧縮機1のうち、駆動回路30が収納される領域に形成されていたが、これに限らない。例えば、圧縮部10が収納される領域に形成されていてもよ
いし、電動モータ20が収納される領域に形成されていてもよい。
【0054】
○ プロテクタ70の壁面721,722と第2吸音部812の周壁812bの外面とを接触させ、第1領域R1を形成してもよい。このように変更する場合、第2領域R2は、ブラケット60の内面61aと第1ハウジング40の外面41aとの間にのみ形成される。
【0055】
○ 第2ハウジング50は、ブラケット60とプロテクタ70とにより構成されていたが、第2ハウジング50は、第1ハウジング40を収容する1つの箱状部材で構成されていてもよい。すなわち、第2ハウジング50は、第1ハウジング40の外側面である外面41a,42a,43aの全てを覆うように構成を変更してもよい。
【0056】
○ 締結台63と第1ハウジング40との間、及び取付板部73の被取付部45に当接している部分と第1ハウジング40との間に防音材80が配置されてもよい。このように変更する場合、電動圧縮機1の設計時に定められた防音効果を得られる程度にボルト92,93の締結力を変更するとよい。
【0057】
○ 取付脚44及び締結台63の配置や数は、適宜変更してもよい。
○ 電動圧縮機1は、車両取付部102の車両100の前方側に配置されていたが、これに限らず、車両取付部102の車両100の側方側に配置されてもよい。
【0058】
○ 第1ハウジング40の内部において、圧縮部10、電動モータ20、及び駆動回路30の配置は、適宜変更してもよい。
○ 圧縮部10は、スクロール式に限らない。流体を圧縮することができれば構成を適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0059】
1…電動圧縮機、10…圧縮部、20…電動モータ、30…駆動回路、40…第1ハウジング、41a,42a,43a…外面、50…第2ハウジング、60…ブラケット、61a…内面、70…プロテクタ、63…締結台、73…取付板部、711,712,721,722…壁面、80…防音材、81…吸音層、82…遮音層、92…ボルト、100…車両、S…空気層、R1…第1領域、R2…第2領域。