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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】センサ及びセンサシステム
(51)【国際特許分類】
   G01S 17/42 20060101AFI20230912BHJP
   G01S 13/42 20060101ALI20230912BHJP
   G01S 13/86 20060101ALI20230912BHJP
   G01S 17/86 20200101ALI20230912BHJP
   G01S 7/41 20060101ALI20230912BHJP
   G01S 13/931 20200101ALN20230912BHJP
   G01S 17/931 20200101ALN20230912BHJP
【FI】
G01S17/42
G01S13/42
G01S13/86
G01S17/86
G01S7/41
G01S13/931
G01S17/931
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020071706
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167796
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104765
【弁理士】
【氏名又は名称】江上 達夫
(74)【代理人】
【識別番号】100131015
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 浩誉
(72)【発明者】
【氏名】山川 猛
【審査官】山下 雅人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-195490(JP,A)
【文献】特開2002-341022(JP,A)
【文献】特開平11-023263(JP,A)
【文献】特開平11-183601(JP,A)
【文献】特開平10-142324(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0373260(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0123045(US,A1)
【文献】実開昭53-027776(JP,U)
【文献】特開平08-261753(JP,A)
【文献】特開2017-222309(JP,A)
【文献】特開2011-164082(JP,A)
【文献】特開平10-104355(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00-17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、
前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、
物体において前記ビームが反射されることにより生じる反射波を受信することにより、前記ビームが反射された点である観測点を取得する取得手段と、
目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、
を備え、
前記複数の観測点には、前記目標物体において前記ビームの少なくとも一部が反射されることにより生じる反射波に起因する、第1反射強度の第1種観測点と、前記出射手段から見て前記目標物体よりも奥に存在する物体において前記ビームの他の部分が反射されることにより生じる反射波に起因する、前記第1反射強度よりも弱い第2反射強度の第2種観測点とが含まれており、
前記推定手段は、前記代表点を推定することに加えて、前記第1種観測点の前記第1反射強度と前記第2種観測点の前記第2反射強度との差分から、前記目標物体の形状を推定する
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
第1センサと、
前記第1センサより角度分解能の高い第2センサと、
備え、
前記第2センサは、
観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、
前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、
物体において前記ビームが反射されることにより生じる反射波を受信することにより、前記ビームが反射された点である観測点を取得する取得手段と、
目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、
を有し、
前記複数の観測点には、前記目標物体において前記ビームの少なくとも一部が反射されることにより生じる反射波に起因する、第1反射強度の第1種観測点と、前記出射手段から見て前記目標物体よりも奥に存在する物体において前記ビームの他の部分が反射されることにより生じる反射波に起因する、前記第1反射強度よりも弱い第2反射強度の第2種観測点とが含まれており、
前記推定手段は、前記代表点を推定することに加えて、前記第1種観測点の前記第1反射強度と前記第2種観測点の前記第2反射強度との差分から、前記目標物体の形状を推定する
ことを特徴とするセンサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ、及び、該センサを備えるセンサシステムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のセンサとして、例えばマルチビーム方式をとるレーダ装置が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-187071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、レーダ装置を搭載する車両の前方障害物についての各チャンネルCHi(i=1,2,…,n)の位置(xi,yi)のデータに基づいて、X方向及びY方向に最短となる点が割り出される。ここで、特許文献1に記載の技術では、複数のX成分のなかから最短のX成分の値が抽出されるとともに、複数のY成分のなかから最短のY成分の値が抽出される。そして、最短のX成分の値と最短のY成分の値とにより示される位置が、便宜上前方障害物の位置とされる。このため、特許文献1の図12に示されるように、前方障害物が実際には存在しない位置が、前方障害物の位置として特定されるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、観測精度を向上することができるセンサ及びセンサシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るセンサは、観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、物体において前記ビームが反射されることにより生じる反射波を受信することにより、前記ビームが反射された点である観測点を取得する取得手段と、目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、を備え、前記複数の観測点には、前記目標物体において前記ビームの少なくとも一部が反射されることにより生じる反射波に起因する、第1反射強度の第1種観測点と、前記出射手段から見て前記目標物体よりも奥に存在する物体において前記ビームの他の部分が反射されることにより生じる反射波に起因する、前記第1反射強度よりも弱い第2反射強度の第2種観測点とが含まれており、前記推定手段は、前記代表点を推定することに加えて、前記第1種観測点の前記第1反射強度と前記第2種観測点の前記第2反射強度との差分から、前記目標物体の形状を推定するというものである。
【0007】
本発明の一態様に係るセンサシステムは、第1センサと、前記第1センサより角度分解能の高い第2センサと、備え、前記第2センサは、観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、物体において前記ビームが反射されることにより生じる反射波を受信することにより、前記ビームが反射された点である観測点を取得する取得手段と、目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、を有し、前記複数の観測点には、前記目標物体において前記ビームの少なくとも一部が反射されることにより生じる反射波に起因する、第1反射強度の第1種観測点と、前記出射手段から見て前記目標物体よりも奥に存在する物体において前記ビームの他の部分が反射されることにより生じる反射波に起因する、前記第1反射強度よりも弱い第2反射強度の第2種観測点とが含まれており、前記推定手段は、前記代表点を推定することに加えて、前記第1種観測点の前記第1反射強度と前記第2種観測点の前記第2反射強度との差分から、前記目標物体の形状を推定するというものである。
【発明の効果】
【0008】
当該センサ及び当該センサシステムによれば、上記所定角度よりもビーム幅が大きくなるように出射手段が制御されることにより、単位面積当たりの観測点(言い換えれば、ビーム本数)を増やすことができる。この結果、例えば、センサのビーム出射部に汚れが付着している場合、目標物体が低反射物体である場合、目標物体の大きさが比較的小さい場合、等の観測に不向きな場合であっても観測精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ビーム幅とビーム間隔との関係の一例を示す図である。
図2】分解能の概念を示す概念図である。
図3】実施形態に係るセンサの構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係るセンサが適用される場面の一例を示す図である。
図5】実施形態に係るセンサシステムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<センサ>
センサに係る実施形態について説明する。実施形態に係るセンサは、観測波としてのビーム(光、電磁波等)の出射方向を所定角度ずつ変えながら、該ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段を備える。ここで「ビーム」は、指向性が比較的高い観測波を意味する。「ビーム」の具体例としては、光ビーム(即ち、レーザビーム)、ペンシルビーム等が挙げられる。尚、所定角度は、一定の角度であってもよいし、走査方向毎に異なっていてもよい(例えば、水平走査時の所定角度と、垂直走査時の所定角度とが異なっていてもよい)。
【0011】
当該センサは、上記出射手段を制御する制御手段を備える。該制御手段は、具体的には、ビームの走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、所定角度より大きくなるように出射手段を制御する。
【0012】
ビーム幅は、角度(指向角等)で表されてもよいし、出射手段から所定距離におけるビームのビームスポットの幅(即ち、距離の単位)で表されてもよい。ビーム幅が、出射手段から所定距離におけるビームスポットの幅で表される場合、出射手段から所定距離における、一のビームのビームスポットの中心と、該一のビームとは上記所定角度だけ異なる方向に出射される他のビームのビームスポットの中心との間隔が、上記所定角度に相当する値として用いられてよい。
【0013】
当該センサは、目標物体に照射された複数のビームに夫々対応する複数の観測点から、目標物体に係る代表点を推定する推定手段を備える。「ビームに対応する観測点」は、ビームの反射波を観測することにより特定されるビームが反射された反射点を意味する。観測点は、目標物体の一部に相当する反射点に限らず、目標物体とは異なる物体の一部に相当する反射点であってよい。つまり、目標物体に照射された複数のビームの一部は、目標物体で反射されずに、該目標物体とは異なる物体で反射されてよい。尚、一のビームに対応する観測点は、一つに限らず2以上であってよい。
【0014】
複数の観測点のうち、目標物体で反射されたビームの反射波を観測することにより得られる複数の観測点は、当該センサからの距離が同程度であるので、点群を形成する。推定手段は、該点群から目標物体に係る代表点を推定する。「目標物体に係る代表点」は、例えば目標物体の中心や重心等に対応する点であってよい。目標物体が奥行きのある物体である場合、上記代表点は、目標物体の一の面の中心や重心等に対応する点であってよい。尚、点群から目標物体に係る代表点を推定する方法には、既存の各種態様を適用可能であるが、例えば、点群が、ガウス分布に従って分布していると仮定して、目標物体に係る代表点が推定されてよい。
【0015】
ところで、センサによる観測精度を向上するために、センサの分解能の向上が図られる。このとき、例えば図1(a)に示すように、観測対象が存在するだろう距離において、ビームスポットが互いに重ならないようにビームが絞られることが多い。この場合、図1(a)に示すように、ビームスポットの幅w1は、隣接するビームスポットの中心間の距離dより小さい。このような関係は、ビーム幅(即ち、ビームの走査方向の広がり)が、上述の所定角度(ここでは、1度)より小さいときに成立する。センサの分解能を向上するときに、図1(a)に示すようにビームが絞られる理由は、複数のビームで同じ場所が観測されることを回避するため、及び、一つの観測位置で一つの反射点を取得して目標物体を認識する手法が採用されるためである。
【0016】
このような観測手法によれば、比較的簡素な構成で、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)を実現することができる。その一方で、目標が、例えば低コントラストの物体、平板等である場合や、例えば強反射物と低反射物とが混在する環境の場合では、例えば隣接する2つの物体の識別が難しい等、誤検知が生じる可能性がある。また、ビームが比較的シャープに絞られているため、センサにおいてビームが通過する光学窓に汚れが付着した場合、汚れが付着した部分の面積が比較的小さい場合であっても、汚れによりビームが遮られる(即ち、センサの観測性能が著しく低下する)ことがある。
【0017】
これに対して、実施形態に係るセンサでは、上述したように、出射手段から出射されるビーム幅が所定角度より大きい。この場合、例えば図1(b)に示すように、観測対象が存在するだろう距離において、ビームスポットが互いに重なる。この場合、図1(b)に示すように、ビームスポットの幅w2は、隣接するビームスポットの中心間の距離dより大きくなる。ビームが比較的広がっているため、先ず、上記光学窓に多少の汚れが付着していたとしても、ビームが汚れにより遮られることを抑制することができる。
【0018】
次に、分解能について図2を参照して説明する。センサに係る分解能は、単位面積当たりの観測点数(即ち、観測密度)により評価できる。図1(a)及び(b)に示す態様では、隣接するビームスポットの中心間の距離は互いに“d”であり同じである。このため、図2に示す目標物体Tに照射されるビーム本数は、互いに16本となる(図2(a)及び(b)参照)。つまり、図1(a)及び(b)のいずれの態様においても、目標物体Tについて16個の観測点が取得される。分解能は、上述したように、単位面積当たりの観測点数により評価できる。このため、図1(a)に示す態様の分解能と、実施形態に係るセンサに相当する図1(b)に示す態様の分解能とは同等であると言える。
【0019】
分解能の評価は、単位面積当たりの観測点数が増えるほど(言い換えれば、観測密度が高くなるほど)高くなる。このため、距離dを小さくすれば、観測密度が高くなり、分解能を向上させることができる。ここで、図1(a)に示す態様では、ビームスポットが互いに重ならないように距離dが設定されるため、距離dの最小値は、幅w1に等しくなる。このため、図1(a)に示す態様では、その分解能は幅w1により制限される。他方で、実施形態に係るセンサに相当する図1(b)に示す態様では、距離dは幅w2より小さい。このため、実施形態に係るセンサは、幅w2に制限されることなく、距離dを小さくすることにより、その分解能の向上を図ることができる。
【0020】
また、実施形態に係るセンサでは、出射手段から出射されるビームが比較的広がっているので、目標物体Tが当該センサにより観測される際に、目標物体Tの一の部分にビームが複数回照射される(図2(b)参照)。つまり、当該センサは、該一の部分について複数回の観測が可能である。当該センサでは、同一部分(又は同一目標)について複数回の観測結果が得られるので、目標が、例えば低コントラストの物体、平板等である場合や、例えば強反射物と低反射物とが混在する環境であっても、当該センサは、例えば誤検知や目標のロストを抑制しつつ、目標を適切に観測することができる。
【0021】
以上説明したように、実施形態に係るセンサによれば、観測精度を向上することができる。
【0022】
実施形態に係るセンサの一具体例としてのセンサ10について図3及び図4を参照して説明する。図3において、センサ10は、観測部11、走査部12、制御部13及び探知部14を備える。
【0023】
観測部11は、ビームを出射するとともに、出射されたビームの反射波を受信することにより観測情報を取得する。走査部12は、観測部11から出射されるビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、該ビームを走査方向に沿って走査させる。走査部12は、例えば観測部11を所定の回転軸回りに回転させることにより、該観測部11から出射されるビームを走査してもよいし、例えば観測部11から出射されるビームの位相を制御して該ビームの出射方向を変えることにより、該ビームを走査してもよい。
【0024】
制御部13は、観測部11及び操作部12各々に係る観測パラメータ等を設定する。このとき、制御部13は特に、観測部11から出射されるビームのビーム幅が、上記所定角度より大きくなるように、上記観測パラメータを設定する。探知部14は、観測部11から観測情報を受信して、例えば、該観測情報を点群や物標に変換したり、物体を識別したりする。探知部14は特に、上述した複数の観測点の一例に相当する点群から、目標物体に係る代表点を推定する。
【0025】
センサ10においても、観測部11から出射されるビームのビーム幅が、上記所定角度より大きいので、センサ10は、上述した実施形態に係るセンサと同様に、観測精度を向上することができる。尚、「観測部11」及び「操作部12」は、上述した「出射手段」の一例に相当する。「制御部13」及び「探知部14」は、夫々、上述した「制御手段」及び「推定手段」の一例に相当する。
【0026】
ここで、センサ10が車載センサとして用いられる場合を一例として挙げ、センサ10の更なる利点について図4等を参照して説明する。図4において、センサ10は車両1に搭載されているものとする。図4中の複数の破線各々は、センサ10から出射されるビームを示している。図4では、車両1の前方を車両2が走行しており、該車両2の前方を車両3が走行している。また、車両1が走行している車線に隣接する隣接車線を対向車両4が走行している。
【0027】
センサ10から出射されるビームのビーム幅は比較的広い。ここで、ビーム幅が比較的広い場合、例えば図2(b)に示すように、目標物体Tの縁部近傍に照射されるビームの一部は、目標物体Tでは反射されずに、ビームの出射側から見て目標物体Tより奥に照射される。つまり、図4に示すビームb1が車両2に照射された場合、ビームb1の一部が車両2により反射されるとともに、ビームb1の他の部分が、例えば車両3に照射される。同様に、ビームb2が車両2に照射された場合、ビームb2の一部が車両2により反射されるとともに、ビームb2の他の部分が、例えば対向車両4に照射される。
【0028】
この結果、観測部11がビームb1の反射波を受信することにより、観測部11は観測情報として、車両2に係る観測点(反射点)の情報と、車両3に係る観測点の情報とを取得することができる。同様に、観測部11がビームb2の反射波を受信することにより、観測部11は観測情報として、車両2に係る観測点の情報と、対向車両4に係る観測点の情報とを取得することができる。
【0029】
つまり、センサ10は、目標物体(ここでは、車両2)で反射されたビームの反射波だけでなく、センサ10から見て該目標物体より奥に位置する物体で反射されたビームの反射波も観測することができる。従って、目標物体に照射された複数のビームに夫々対応する複数の観測点には、目標物体においてビームが反射されることにより生じる反射波に起因する第1種観測点と、ビームの出射側から見て該目標物体よりも奥においてビームが反射されることにより生じる反射波に起因する第2種観測点(例えば車両3や対向車両4に係る観測点)とが含まれる。
【0030】
ここで、ビームb1の一部が車両2により反射されたときの反射強度は、ビームb1の他の部分が車両3により反射されたときの反射強度よりも明確に強い。同様に、ビームb2の一部が車両2により反射されたときの反射強度は、ビームb2の他の部分が対向車両4により反射されたときの反射強度よりも明確に強い。
【0031】
そこで、探知部14は、一のビームについて、例えば2つの観測点がある場合、両者の反射強度の差分が所定値より大きいことを条件に、該一のビームが照射された目標物体の部分を、該目標物体の縁部(即ち、エッジ)として抽出してよい。
【0032】
尚、「所定値」は、例えば、センサ10に係る観測誤差や、一のビームの一部が目標物体の一部で反射されたときの反射強度と、該一のビームの他の部分が、目標物体の該一部より奥側の他の部分で反射されたときの反射強度との差分(即ち、目標物体の表面に凹凸がある場合に、目標物体の縁部が誤認されないための指標)、等を考慮して設定すればよい。
【0033】
このように構成すれば、探知部14は、ビームb1の照射により取得された車両2の観測点と車両3の観測点との反射強度の差分に基づいて、車両2の一の縁部を抽出することができる。同様に、探知部14は、ビームb2の照射により取得された車両2の観測点と対向車両4の観測点との反射強度の差分に基づいて、車両2の他の縁部を抽出することができる。探知部14は更に、抽出された車両2の複数の縁部から、車両2の形状(例えばセンサ10から見た車両2の形状等)を推定してよい。
【0034】
実施形態に係るセンサは、出射方向を機械的に所定角度(スキャンステップ角に相当)ずつ変えながらビームを出射する、例えば走査型のLiDARや、ビームを夫々出射する複数の放射素子がアレイ状に配置されている、例えばフェーズドアレイレーダ、フェーズドアレイ方式のLiDAR等に適用可能である。
【0035】
実施形態に係るセンサによれば、出射されるビームのビーム幅が上記所定角度より小さい比較例に比べて、目標物体の位置の検出精度も向上することができる。特に、目標物体が低コントラストの物体である場合や、悪環境の場合において、当該実施形態に係るセンサの効果は大きい。つまり、当該実施形態に係るセンサによれば、目標物体の形状に加えて、その位置も精度よく推定することができる。
【0036】
<センサシステム>
センサシステムに係る実施形態について説明する。実施形態に係るセンサシステムは、第1センサと、該第1センサより角度分解能の高い第2センサとを備える。ここで、第2センサは、第1センサより角度分解能が高い限りにおいて、第1センサと同一種別のセンサであってもよいし、第1センサとは異なる種別のセンサであってもよい。尚、第1センサは、一つに限らず複数であってよい。第2センサも、一つに限らず複数であってよい。
【0037】
センサの分解能は、センサにより識別可能な最小の距離又は角度により表される。識別可能な最小の距離又は角度が小さいほど、分解能(即ち、対象を識別する能力)は高くなる。「角度分解能」は、分解能を、識別可能な最小の角度で表した指標である。「第1センサより角度分解能が高い」とは、「第1センサが識別可能な最小の角度より小さい角度まで識別可能である」ことを意味する。
【0038】
例えば、複数の検出素子が2次元に配列された検出部を有し、該検出部の視野範囲を一時に観測するセンサ(例えば、カメラ等)では、一つの検出素子の視野角(即ち、瞬時視野)が「角度分解能」の一具体例に相当する。例えば、観測波(光、電波等)を出射し、出射された観測波の反射波を観測するセンサの一具体例としてのLiDARの場合、一の面までの距離を“x”、該一の面におけるレーザスポット間の距離を“d”とすると、「角度分解能」は、おおよそ“d・2tan-1(1/2x)”と表される(この値は、スキャンステップ角に対応する)。該センサの他の具体例としてのレーダの場合、角度で表されたビーム幅が「角度分解能」の一具体例に相当する。
【0039】
第2センサは、観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、該ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、ビームの走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、所定角度より大きくなるように出射手段を制御する制御手段と、目標物体に照射された複数のビームに夫々対応する複数の観測点から、目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、を有する。つまり、第2センサは、上述した実施形態に係るセンサと同様の構成を有している。
【0040】
当該センサシステムにおいて、第1センサ及び第2センサは連携して動作してよい。具体的には例えば、第1センサにより検出された物体が、該第1センサより角度分解能の高い第2センサで高精度に観測されてよい。当該センサシステムは、上述した実施形態に係るセンサに相当する第2センサを備えるので、観測精度を向上することができる。
【0041】
実施形態に係るセンサシステムの一具体例としてのセンサシステム100について図5を参照して説明する。図5において、センサシステム100は、センサ10、センサ20、データ処理部30及びデータ処理部40を備えて構成されている。ここで、センサ20は、上述した第1センサの一例に相当し、センサ10は、上述した第2センサの一例に相当する。尚、センサ10は、図3を参照して説明したセンサ10と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0042】
センサ20は、観測部21、制御部22及び探知部23を備える。観測部21は、観測情報を取得する。センサ20が、例えばカメラである場合、観測情報は画像や輝度値情報等であってよい。センサ20が、例えばLiDAR、レーダ等である場合、観測情報は、反射波(例えば光、電磁波等)が観測部21により受信されることにより取得される情報(例えば距離、反射強度等)であってよい。制御部22は、観測部21に係る観測パラメータを設定する。探知部23は、観測部11から観測情報を受信して、例えば、該観測情報を点群や物標に変換したり、物体を識別したりする。これらの処理の結果、探知部23は探知データを生成する。
【0043】
データ処理部30の探知データ受信部31は、探知部23から探知データを受信する。探知データ受信部31は、受信した探知データを、管理部32に送信する。管理部32は、探知データを蓄積する。このとき、管理部32は、探知データに付与されている時刻情報に基づいて、時系列順に探知データを蓄積してよい。
【0044】
管理部32は、蓄積された探知データのうち、例えば最新の探知データをデータ処理部40の観測計画部42に送信する。また、管理部32は、センサ20による観測に係る指示を、観測制御部33に送信する。尚、該指示の具体的な内容は、センサシステム100が用いられる目的や用途に応じて適宜設定されてよい。観測制御部33は、管理部32からの指示に応じて、制御部22が観測パラメータを設定するための情報を、制御部22に送信する。
【0045】
データ処理部40の観測計画部42は、管理部32から受信した探知データに基づいて、例えばセンサ10の観測目標を決定する。観測計画部42は、複数の観測目標が存在する場合、複数の観測目標各々の観測順序を設定してよい。観測計画部42は、決定された観測目標を示す情報等を含む観測計画を生成する。そして、観測計画部42は、該生成された観測計画を、観測制御部42に送信する。
【0046】
観測制御部42は、観測計画に基づいて、センサ10による観測に係る指示を、制御部13に送信する。尚、該指示の具体的な内容は、センサシステム100が用いられる目的や用途に応じて適宜設定されてよい。探知データ受信部41は、探知部14からデータを受信する。具体的には、探知データ受信部41は、上記データとして、例えば探知部14により推定された観測目標に係る代表点、探知部14により推定された観測目標の形状、等を受信する。
【0047】
実施形態に係るセンサシステムによれば、上述した実施形態に係るセンサと同様に、目標物体の形状に加えて、その位置も精度よく推定することができる。
【0048】
以上に説明した実施形態から導き出される発明の各種態様を以下に説明する。
【0049】
発明の一態様に係るセンサは、観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、を備えるというものである。
【0050】
当該センサの一態様では、前記複数の観測点には、前記目標物体において前記ビームが反射されることにより生じる反射波に起因する第1種観測点と、前記出射手段から見て前記目標物体よりも奥において前記ビームが反射されることにより生じる反射波に起因する第2種観測点とが含まれており、前記推定手段は、前記第1種観測点及び前記第2種観測点から、前記目標物体の形状を推定する。
【0051】
本発明の一態様に係るセンサシステムは、第1センサと、前記第1センサより角度分解能の高い第2センサと、備え、前記第2センサは、観測波としてのビームの出射方向を所定角度ずつ変えながら、前記ビームを走査方向に沿って走査させる出射手段と、前記ビームの前記走査方向の広がりを示す指標であるビーム幅が、前記所定角度より大きくなるように前記出射手段を制御する制御手段と、目標物体に照射された複数の前記ビームに夫々対応する複数の観測点から、前記目標物体に係る代表点を推定する推定手段と、を有するというものである。
【0052】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うセンサ及びセンサシステムもまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0053】
10、20…センサ、11、21…観測部、12…操作部、13、22…制御部、14、23…探知部、30、40…データ処理部、31、41…探知データ受信部、32…管理部、33、42…観測制御部、42…観測計画部、100…センサシステム
図1
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図3
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図5