(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用ドアロック構造
(51)【国際特許分類】
E05B 77/04 20140101AFI20230912BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E05B77/04
B60J5/00 M
B60J5/00 Q
(21)【出願番号】P 2020080074
(22)【出願日】2020-04-30
【審査請求日】2022-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 直
(72)【発明者】
【氏名】田島 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】北川 友紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 秀
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭63-083365(JP,U)
【文献】特開2018-095103(JP,A)
【文献】実開昭62-040164(JP,U)
【文献】特開2014-224438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ドアのドアアウタパネルに回動可能に設けられたドアハンドルと、
前記ドアハンドルの回動に連動して下方に移動することにより前記車両用ドアのロックを開錠するオープンロッドと、
前記オープンロッドの下端部よりも下方の位置から前記ドアアウタパネル側の斜め上方へ向かって傾斜する板状の傾斜部を有して、前記傾斜部が前記オープンロッドの下端部に対向するように前記車両用ドア内に配置されたドア部材に固定されるロッド押上部材と、
を備え、
前記ロッド押上部材は、
前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の端縁が、前記オープンロッドの下端部よりも上方に位置するように前記ドア部材に固定されている、
車両用ドアロック構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用ドアロック構造において、
前記ドア部材は、前記車両用ドアのドアインナパネルに取り付けられるドアロワフレームを含み、
前記ロッド押上部材は、前記ドアロワフレームに固定されている、
車両用ドアロック構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用ドアロック構造において、
前記ロッド押上部材は、
前記傾斜部の前記ドアロワフレームに対向する側縁から直角上方へ延出される第1延出部を有し、
前記第1延出部が前記ドアロワフレームに固定されている、
車両用ドアロック構造。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の車両用ドアロック構造において、
前記ドアアウタパネルと前記ロッド押上部材との間に配置されて車両前後方向に延びる補強部材を備え、
前記補強部材は、前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の前記端縁に対向するように配置されている、
車両用ドアロック構造。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用ドアロック構造において、
前記ドア部材は、前記ドアアウタパネルと前記ロッド押上部材との間に配置されて車両前後方向に延びる補強部材を含み、
前記ロッド押上部材は、
前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の前記端縁から全幅に渡って前記補強部材まで延出されて、更に、前記補強部材に沿って下方に延出される側面視逆L字状の第2延出部を有し、
前記第2延出部が前記補強部材に固定されている、
車両用ドアロック構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック構造に関する技術が種々提案されている。例えば、下記特許文献1に記載されたドアロック構造では、回動する把持部を含むドアハンドルと、把持部の回動に連動して下方に移動することによりドアを開放するオープンロッドと、キーシリンダに連結され上方に移動することによりドアをロックするキーロッドと、オープンロッド及びキーロッドに、それぞれの移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第1係合部材及び第2係合部材と、第1係合部材及び第2係合部材より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材と、を備えている。
【0003】
そして、変位規制部材は、オープンロッド及びキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ下方及び上方に移動すると第1係合部材及び第2係合部材の両方と干渉する形状を有するように構成されている。従って、ドアに側方から衝撃荷重が作用する側面衝突が生じると、オープンロッド及びキーロッドが車両内側に移動し、それぞれ下方及び上方に移動しようとしても、変位規制部材が第1係合部材と第2係合部材の両方と干渉する。これにより、オープンロッド及びキーロッドの両方が動きを規制され、側面衝突時にドアは開放されることもないし、ロックされることもない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたドアロック構造では、オープンロッド及びキーロッドに第1係合部材及び第2係合部材を取り付けて上下方向に移動させる必要があるため、その可動部分の上下方向のスペースが必要になる。また、側面衝突時に、オープンロッド及びキーロッドに取り付けられた第1係合部材及び第2係合部材が、ドアアウタパネルによって車両内側に移動されて、変位規制部材を上下方向において挟む必要があるため、構造が複雑となって組み立て時の位置調整が難しく、組立工数が多くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、簡易な構成で、側面衝突時に車両用ドアの開放を防止することができる車両用ドアロック構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両用ドアのドアアウタパネルに回動可能に設けられたドアハンドルと、前記ドアハンドルの回動に連動して下方に移動することにより前記車両用ドアのロックを開錠するオープンロッドと、前記オープンロッドの下端部よりも下方の位置から前記ドアアウタパネル側の斜め上方へ向かって傾斜する板状の傾斜部を有して、前記傾斜部が前記オープンロッドの下端部に対向するように前記車両用ドア内に配置されたドア部材に固定されるロッド押上部材と、を備え、前記ロッド押上部材は、前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の端縁が、前記オープンロッドの下端部よりも上方に位置するように前記ドア部材に固定されている、車両用ドアロック構造である。
【0008】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る車両用ドアロック構造において、前記ドア部材は、前記車両用ドアのドアインナパネルに取り付けられるドアロワフレームを含み、前記ロッド押上部材は、前記ドアロワフレームに固定されている、車両用ドアロック構造である。
【0009】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る車両用ドアロック構造において、前記ロッド押上部材は、前記傾斜部の前記ドアロワフレームに対向する側縁から直角上方へ延出される第1延出部を有し、前記第1延出部が前記ドアロワフレームに固定されている、車両用ドアロック構造である。
【0010】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明乃至第3の発明のいずれか1つに係る車両用ドアロック構造において、前記ドアアウタパネルと前記ロッド押上部材との間に配置されて車両前後方向に延びる補強部材を備え、前記補強部材は、前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の前記端縁に対向するように配置されている、車両用ドアロック構造である。
【0011】
次に、本発明の第5の発明は、上記第1の発明に係る車両用ドアロック構造において、前記ドア部材は、前記ドアアウタパネルと前記ロッド押上部材との間に配置されて車両前後方向に延びる補強部材を含み、前記ロッド押上部材は、前記傾斜部の前記ドアアウタパネル側の前記端縁から全幅に渡って前記補強部材まで延出されて、更に、前記補強部材に沿って下方に延出される側面視逆L字状の第2延出部を有し、前記第2延出部が前記補強部材に固定されている、車両用ドアロック構造である。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明によれば、車両用ドアに側方から衝撃荷重が作用する側面衝突が生じると、ドアアウタパネルを介してドア部材に固定されたロッド押上部材が、車幅方向内側へ押し込まれて、板状の傾斜部がオープンロッドの下端部に当接した状態で、更に、押し込まれる。これにより、オープンロッドは、板状の傾斜部に沿って上方へ押し上げられて、下方への移動を規制され、側面衝突時に、簡易な構成で、車両用ドアの開放を防止することができる。
【0013】
また、側面衝突時に、車両用ドアの開錠、施錠に関わらないドア部材に固定された固定部品であるロッド押上部材がドアアウタパネル等に当たるので、側面衝突時における部品の衝突モードの管理を行いやすい。また、オープンロッドに対して板状の傾斜部が斜めに当たるため、ロッド押上部材のドア部材に対する取り付け位置のバラツキだけでなく、他の部品の変形具合のバラツキや変形タイミングのバラツキ等も容易に吸収できる。また、オープンロッドに部品を取り付ける必要がなく、オープンロッドが上下方向に移動するために必要なスペースの省スペース化を図ることができる。
【0014】
第2の発明によれば、ロッド押上部材は、車両用ドアのドアインナパネルに取り付けられるドアロワフレームに固定されている。ドアロワフレームは、内側に嵌め込まれたゴム製のガラスランを介して、車両用ドアの窓ガラスの前縁部と後縁部を上下方向にスライド可能に支持する金属製の窓枠部材であり、オープンロッドに対して近接した位置にあるため、ロッド押上部材を取り付けるのに好都合である。
【0015】
第3の発明によれば、ロッド押上部材は、板状の傾斜部のドアロワフレームに対向する側縁から直角上方へ延出される第1延出部がドアロワフレームに固定されている。これにより、ロック押上部材を断面L字状に形成することによって、容易に溶接等によってドアロワフレームに固定することができる。
【0016】
第4の発明によれば、側面衝突時に、ドアアウタパネルとロッド押上部材との間に配置された補強部材が、傾斜部のドアアウタパネル側の端縁に当接した状態で、ロッド押上部材を押し込む。これにより、オープンロッドは、ロッド押上部材の板状の傾斜部に沿って上方へ押し上げられて、下方への移動を規制され、側面衝突時に、車両用ドアの開放を防止することができる。
【0017】
第5の発明によれば、側面衝突時に、ロッド押上部材が補強部材と共に車幅方向内側へ押し込まれる。これにより、オープンロッドは、ロッド押上部材の板状の傾斜部に沿って上方へ押し上げられて、下方への移動を規制され、側面衝突時に、車両用ドアの開放を防止することができる。また、補強部材のオープンロッドに対向する位置に、ロッド押上部材を溶接等によって容易に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る車両用ドアを車両外側から見た一部透視図である。
【
図2】
図1のII部分を車両後方側から見た部分拡大図である。
【
図3】
図1のII部分を拡大した部分拡大図である。
【
図4】ドアロック構造の側面衝突時における変形を説明する説明図である。
【
図5】他の第1実施形態に係るドアロック構造の一例を示す図である。
【
図7】
図5のドアロック構造の側面衝突時における変形を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両用ドアロック構造を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、車両用ドア1の概略構成について
図1乃至
図3に基づいて説明する。尚、実線矢印によって各図に適宜に示されるUPRは、車両の上方向を示し、FRは車両の前方向を示し、OUTは車幅方向外側を示している。
【0020】
図1に示すように、車両用ドア1は、右側前部ドアであり、不図示の車体に対して前側(
図1中、右側)の側縁が上下方向の回転軸回りに回転可能に支持される。車両用ドア1の約下半分を構成する車幅方向外側面は、金属板からなるドアアウタパネル3より構成されている。ドアアウタパネル3の上部にはドアサッシュ5が設けられ、ドアアウタパネル3の上端部とドアサッシュ5とによって強化ガラスからなる窓ガラス6によって開閉される窓部7が形成されている。
【0021】
ドアサッシュ5の後方側の後部サッシュ5Aの下方には、車両用ドア1を閉じた際に、不図示のセンターピラーにロックするドアロック構造11が配設されている。また、ドアアウタパネル3の車幅方向内側面には、車両用ドア1を補強する断面ハット形のアッパリインフォース8(補強部材)(
図2参照)と帯板状のロワリインフォース9が、上下に配置され、車両用ドア1の幅方向(車両前後方向)に沿ってほぼ全幅に渡って延びるように設けられている。ここで、アッパリインフォース8は、補強部材の一例として機能する。
【0022】
図1及び
図2に示すように、断面ハット形のアッパリインフォース8は、車幅方向内側に向かって凸形状を有する補強部材であって、各フランジ8Aにおいて、ドアアウタパネル3にスポット溶接等によって溶接接合されている。そして、アッパリインフォース8の車両後方側の端部は、車幅方向において、ドアロック構造11の下方部分に対向する位置に配置されている。また、ロワリインフォース9は、アッパリインフォース8の下側に配置され、車両後方側に向かって下方側へ傾斜して配置され、ドアアウタパネル3にスポット溶接等によって溶接接合されている。また、後部サッシュ5Aの下部には、金属製のドアロワフレーム13の上端部が接続されている。
【0023】
図2及び
図3に示すように、このドアロワフレーム13は、車両の前方向に開口する断面略コの字状に形成され、不図示の断面略コの字状に形成されたゴム製のガラスランが内側に嵌め込まれて、窓ガラス6の後縁部を上下方向にスライド可能に支持する。ドアロワフレーム13の下端部の車両後方側の底面部13Aには、車両平面視略L字状に形成された金属板からなる取付ブラケット15の一端部15Aが、スポット溶接等により溶接接合(固定)されている。
図2において、×印により溶接箇所を示している。取付ブラケット15の他端部15Bには、車幅方向外側面にナット16が溶接接合され、車両用ドア1の約下半分の車幅方向内側面を構成する金属板からなるドアインナパネル18にボルト止めにより固定されている。
【0024】
図2及び
図3に示すように、ドアロック構造11は、ドアアウタパネル3に配置されたドアハンドル21と、ドアハンドル21の下方でドアロワフレーム13よりも車室側に配置されるドアロック装置22と、ドアロック装置22のロックを開錠するオープンレバー23と、オープンレバー23とドアハンドル21とを連結する棒状のオープンロッド25と、オープンロッド25の下端部25Aの車両下方側に対向するように配置された金属製のロッド押上部材26と、を備えている。
【0025】
また、ドアハンドル21の車両後方側の端部には、キーシリンダ27が組み込まれている。ドアロック構造11は、キーシリンダ27とドアロック装置22の上端部とを連結して、キーシリンダ27に不図示のキーを差し込んで行う回動に連動して回動する棒状のキーロッド28を備えている。キーシリンダ27に不図示のキーを差し込んで、例えば、反時計方向に回動することにより、キーロッド28が回動されて、車両用ドア1をロックする。
【0026】
ドアロック装置22は、車両用ドア1を閉めると不図示のセンターピラーに両端部が固定された略U字形状のストライカ31に係合して、車両用ドア1を全閉位置にロックするように構成されている。また、ドアロック装置22は、ドアロワフレーム13とドアインナパネル18との間に配置され、ドアロワフレーム13に対向する車両前方側の約半分の部分の厚さが薄くなるように形成され、ドアロック装置22とドアロワフレーム13との間には、車幅方向において、距離L1の隙間が形成されている。
【0027】
オープンロッド25は、略車両上下方向に延びる棒状の部材であり、上端部がドアハンドル21のキーシリンダ27よりも車両前方側の上端縁部から車幅方向内側に突出する支持リブ21Aの先端部に回動可能に連結されている。そして、オープンロッド25は、ドアロワフレーム13とドアアウタパネル3との間を通過して、下端部がドアロワフレーム13の車両後方側の底面部13Aよりも車両後方側の近傍に位置するように、車幅方向内側へ折り曲げられた後、更に、車両下方側へ折り曲げられている。
【0028】
そして、オープンロッド25の車両下方側へ折り曲げられた部分は、合成ゴム等で形成されたリング状の弾性部材32が嵌挿されて、オープンレバー23の車幅方向外側の端部に形成された不図示の貫通孔に車両上方から挿通されている。これにより、オープンロッド25は、車両下方側へ折り曲げられた角部が、リング状の弾性部材32を介してオープンレバー23の車幅方向外側の端部に当接して連結されている。また、オープンロッド25の下端部25Aは、オープンレバー23の車幅方向外側の端部から車両下方側へ所定長さ突出している。
【0029】
これにより、ドアハンドル21を車外側から引き上げる(矢印35方向へ回動する)開操作を行うと、これに伴ってオープンロッド25が車両下方側(矢印36方向)へ移動し、オープンレバー23を下方へ回動させる。これにより、ドアロック装置22とストライカ31との係合が解除され、車両用ドア1のロックが開錠される。
【0030】
オープンレバー23は、ドアロック装置22の後端部から、ドアロワフレーム13の底面部13Aに対して車両後方側の近傍を通って車幅方向外側へ突出して、ロック解除方向(矢印36方向)へ揺動可能に支持された板状の本体部23Aを有している。また、オープンレバー23は、この本体部23Aの車幅方向外側の端部からロック解除方向(矢印36方向)と交差する方向(
図3中、車両後方側の方向)に突出された平板部23Bを有している。
【0031】
この平板部23Bには、オープンロッド25の車両下方側へ折り曲げられた部分が挿通される不図示の貫通孔が形成されている。また、オープンレバー23の本体部23Aは、不図示の捩りコイルバネ等の付勢部材によって車両上方側へ回動するように付勢されており、弾性部材32を介して、オープンロッド25を車両上方側へ移動するように付勢する。
【0032】
ロッド押上部材26は、ドアハンドル21の開操作によって車両下方側へ移動するオープンロッド25の下端部25Aよりも下方の位置からドアアウタパネル3側の斜め上方へ向かって傾斜する平板状の傾斜部38を有している。傾斜部38は、略矩形状でドアロワフレーム13の底面部13Aから車両後方側へ突出するように配置され、車両上下方向の下端縁38Aは、ドアロワフレーム13の下端部に取り付けられた取付ブラケット15の近傍に位置している。尚、傾斜部38は、オープンロッド25の最下点25Bよりも下側の位置からドアアウタパネル3側の斜め上方へ向かって傾斜するように設けられるのが好ましい。つまり、傾斜部38は、下方に移動するオープンロッド25の可動領域を避けるように設けられている。
【0033】
また、傾斜部38の車両上下方向の上端縁38B、つまり、ドアアウタパネル3側の上端縁38Bは、オープンロッド25の下端部25Aよりも車両上下方向上方に位置し、断面ハット形のアッパリインフォース8の一対の縦壁部8Bを接続する底面部8Cに対向するように配置されている。好ましくは、傾斜部38の車両上下方向の上端縁38Bは、アッパリインフォース8の底面部8Cの車両上下方向の中央部に対向するように配置されるのが望ましい。また、傾斜部38の車両上下方向の上端縁38Bとアッパリインフォース8の底面部8Cとは所定距離だけ離間している。
【0034】
また、ロッド押上部材26は、傾斜部38のドアロワフレーム13に対向する側縁から略直角上方へ正面視略三角形状に延出されて(
図2参照)、ドアロワフレーム13の底面部13Aにスポット溶接等によって溶接接合されて固定される固定部(第1延出部)39を有している。固定部39の車幅方向内側の側縁は、ドアロワフレーム13の底面部13Aの車幅方向内側の側縁に沿うように形成されている。
図2において、固定部39の溶接箇所を×印により示している。ここで、ドアロワフレーム13は、ドア部材の一例として機能する。固定部39は、第1延出部の一例として機能する。
【0035】
従って、ロッド押上部材26は、傾斜部38と固定部39とによって、側面視L字状に形成され、ドアロック装置22と固定部39との間には、車幅方向において、距離L1の隙間が形成されている。また、ロッド押上部材26は、傾斜部38と固定部39とによって形成される稜線を長手方向に略3分割する位置に、それぞれ上方へ窪む一対の補強リブ41が形成されている。
【0036】
また、
図2に示すように、オープンロッド25の下端部25Aからロッド押上部材26の傾斜部38までの車幅方向における距離L2は、ドアロック装置22とドアロワフレーム13との間の車幅方向における距離L1よりも所定長さ(例えば、約5mm~20mm)だけ短い距離に設定されている。これにより、後述するように、側面衝突時に、ロッド押上部材26の傾斜部38がオープンロッド25の下端部25Aに当接した際に、ドアロック装置22とドアロワフレーム13との間に、所定距離(例えば、約5mm~20mm)の隙間を形成することができる(
図4の中央の図参照)ように構成されている。
【0037】
次に、上記のように構成された車両用ドア1が側面衝突を受けた際の、ドアロック構造11の変形の一例について
図4に基づいて説明する。
図4の左の図は、ドアアウタパネル3が側面衝突を受ける前の状態を示す。
図4の中央の図は、側面衝突を受けてロッド押上部材26の傾斜部38にオープンロッド25の下端部25Aが当接した状態を示す。
図4の右の図は、側面衝突を受けた後の状態を示す。
【0038】
図4の左の図、及び、
図4の中央の図に示すように、車両用ドア1が側面衝突を受けると、ドアアウタパネル3と共にアッパリインフォース8が車幅方向内側へ移動する。その結果、アッパリインフォース8の底面部8Cが、ロッド押上部材26の傾斜部38の上端縁38Bに当接して、ロッド押上部材26、及び、このロッド押上部材26が固定されたドアロワフレーム13を一体的に車幅方向内側へ押し込む。
【0039】
これにより、ドアアウタパネル3の変形により僅かに下方へ移動したオープンロッド25の下端部25Aに、車幅方向内側へ押し込まれたロッド押上部材26の傾斜部38が当接して、当該オープンロッド25の下方への移動が阻止される。つまり、オープンレバー23の下方への回動が阻止されて、ドアロック装置22とストライカ31との係合が維持され、車両用ドア1のロック状態が維持される。
【0040】
続いて、
図4の中央の図、及び、
図4の右の図に示すように、ドアアウタパネル3及びアッパリインフォース8を介して、ロッド押上部材26、及び、このロッド押上部材26が固定されたドアロワフレーム13が一体的に、更に車幅方向内側へ押し込まれる。その結果、ロッド押上部材26の傾斜部38に当接したオープンロッド25の下端部25Aは、当該ロッド押上部材26の車幅方向内側への移動に伴って、傾斜部38上に沿って車両上方側へ押し上げられる。
【0041】
これにより、オープンロッド25及びオープンレバー23の車両下方側への移動が規制され、側面衝突時に、簡易な構成で、車両用ドア1の開放を防止することができる。また、側面衝突時に、車両用ドア1の開錠、施錠に関わらないドアロワフレーム13に固定された固定部品であるロッド押上部材26が、ドアアウタパネル3に取り付けられたアッパリインフォース8に当たるので、側面衝突時における部品の衝突モードの管理を行いやすい。
【0042】
また、オープンロッド25に対してロッド押上部材26の平板状の傾斜部38が斜めに当たるため、ロッド押上部材26のドアロワフレーム13に対する取り付け位置のバラツキだけでなく、取付ブラケット15やドアインナパネル18等の他の部品の変形具合のバラツキや変形タイミングのバラツキ等も容易に吸収できる。また、オープンロッド25に部品を取り付ける必要がなく、オープンロッド25が上下方向に移動するために必要なスペースの省スペース化を図ることができる。
【0043】
本発明の車両用ドアロック構造は、前記実施形態で説明した構成、構造、外観、形状、処理手順等に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変更、改良、追加、削除が可能である。尚、以下の説明において上記
図1~
図4の前記実施形態に係る車両用ドア1等と同一符号は、前記実施形態に係る車両用ドア1等と同一あるいは相当部分を示すものである。
【0044】
[他の第1実施形態]
(A)例えば、他の第1実施形態に係る車両用ドア51のドアロック構造53の概略構成について
図5及び
図6に基づいて説明する。
図5及び
図6に示すように、車両用ドア51のドアロック構造53は、前記実施形態に係る車両用ドア1のドアロック構造11とほぼ同じ構成である。但し、ロッド押上部材26に替えて、金属製のロッド押上部材55を備えている点で異なっている。
【0045】
具体的には、ロッド押上部材55は、ドアハンドル21の開操作(矢印35方向へ回動する操作)によって車両下方側(矢印36方向)へ移動するオープンロッド25の下端部25Aよりも下方の位置からドアアウタパネル3側の斜め上方へ向かって傾斜する平板状の傾斜部38を有している。傾斜部38は、略矩形状に形成されて、車両前方側の側縁がドアロワフレーム13の底面部13Aから離間した状態で、底面部13Aの近傍に位置し、ドアロワフレーム13の底面部13Aに対して交差するように配置されている。また、傾斜部38の車両上下方向の下端縁38Aは、ドアロワフレーム13の下端部に取り付けられた取付ブラケット15の近傍に位置している。
【0046】
また、傾斜部38の車両上下方向の上端縁38B、つまり、ドアアウタパネル3側の上端縁38Bは、オープンロッド25の下端部25Aよりも車両上下方向上方に位置している。そして、ロッド押上部材55は、傾斜部38の上端縁38Bから全幅に渡ってアッパリインフォース8(補強部材)の底面部8Cまで車幅方向外側へ延出されて、更に、車幅方向外側の端縁から全幅に渡って底面部8Cに沿って略直角下方に延出された側面視逆L字状の固定部(第2延出部)57を有している。ここで、固定部57は、第2延出部の一例として機能する。アッパリインフォース8は、ドア部材の一例として機能する。
【0047】
固定部(第2延出部)57の車幅方向外側の端縁から底面部8Cに沿って略直角下方に延出された取付壁部57Aは、アッパリインフォース8(補強部材)の底面部8Cにスポット溶接等によって溶接接合されて固定されている。
図6において、固定部(第2延出部)57の溶接箇所を×印により示している。これにより、車両用ドア51が側面衝突を受けた際に、ドアアウタパネル3とアッパリインフォース8が車幅方向内側へ移動すると共に、アッパリインフォース8とロッド押上部材55が一体的に車幅方向内側へ移動する。
【0048】
また、
図5に示すように、オープンロッド25の下端部25Aからロッド押上部材55の傾斜部38までの車幅方向における距離L2は、ドアロワフレーム13とアッパリインフォース8の底面部8Cとの間の車幅方向における距離L3よりも所定長さ(例えば、約5mm~20mm)だけ短い距離に設定されている。これにより、後述するように、側面衝突時に、ロッド押上部材55の傾斜部38がオープンロッド25の下端部25Aに当接した際に、ドアロワフレーム13とアッパリインフォース8の底面部8Cとの間に、所定距離(例えば、約5mm~20mm)の隙間を形成することができる(
図7の中央の図参照)。
【0049】
次に、上記のように構成された車両用ドア51が側面衝突を受けた際の、ドアロック構造53の変形の一例について
図7に基づいて説明する。
図7の左の図は、ドアアウタパネル3が側面衝突を受ける前の状態を示す。
図7の中央の図は、側面衝突を受けてロッド押上部材55の傾斜部38にオープンロッド25の下端部25Aが当接した状態を示す。
図7の右の図は、側面衝突を受けた後の状態を示す。
【0050】
図7の左の図、及び、
図7の中央の図に示すように、車両用ドア1が側面衝突を受けると、ドアアウタパネル3と共にアッパリインフォース8が車幅方向内側へ押し込まれる。その結果、ロッド押上部材55は、固定部57の取付壁部57Aがアッパリインフォース8の底面部8Cに溶接接合されているため、アッパリインフォース8と一体的に車幅方向内側へ押し込まれる。
【0051】
これにより、ドアアウタパネル3の変形により僅かに下方へ移動したオープンロッド25の下端部25Aに、車幅方向内側へ押し込まれたロッド押上部材55の傾斜部38が当接して、当該オープンロッド25の下方への移動が阻止される。つまり、オープンレバー23の下方への回動が阻止されて、ドアロック装置22とストライカ31との係合が維持され、車両用ドア1のロック状態が維持される。
【0052】
また、
図7の中央の図に示すように、側面衝突時に、ロッド押上部材55の傾斜部38がオープンロッド25の下端部25Aに当接した際に、ドアロワフレーム13とアッパリインフォース8の底面部8Cとの間に、所定距離(例えば、約5mm~20mm)の隙間を形成することができる。これにより、オープンロッド25の下端部25Aが、ロッド押上部材55の傾斜部38に当接した後、ロッド押上部材55及びアッパリインフォース8が一体的に、更に車幅方向内側へスムーズに移動することができる。
【0053】
続いて、
図7の中央の図、及び、
図7の右の図に示すように、ドアアウタパネル3及びアッパリインフォース8を介して、ロッド押上部材55及びアッパリインフォース8が一体的に、更に車幅方向内側へ押し込まれる。その結果、ロッド押上部材55の傾斜部38に当接したオープンロッド25の下端部25Aは、当該ロッド押上部材55の車幅方向内側への移動に伴って、傾斜部38上に沿って車両上方側へ押し上げられる。
【0054】
これにより、オープンロッド25及びオープンレバー23の車両下方側への移動が規制され、側面衝突時に、簡易な構成で、車両用ドア51の開放を防止することができる。また、側面衝突時に、車両用ドア51の開錠、施錠に関わらないアッパリインフォース8に固定された固定部品であるロッド押上部材55の傾斜部38が、オープンロッド25の下端部25Aに当たるので、側面衝突時における部品の衝突モードの管理を行いやすい。
【0055】
また、オープンロッド25に対してロッド押上部材55の平板状の傾斜部38が斜めに当たるため、ロッド押上部材55のアッパリインフォース8に対する取り付け位置のバラツキだけでなく、取付ブラケット15やドアインナパネル18等の他の部品の変形具合のバラツキや変形タイミングのバラツキ等も容易に吸収できる。また、オープンロッド25に部品を取り付ける必要がなく、オープンロッド25が上下方向に移動するために必要なスペースの省スペース化を図ることができる。
【0056】
[他の第2実施形態]
(B)また、例えば、前記実施形態に係る車両用ドア1において、アッパリインフォース8の底面部8Cが、ロッド押上部材26の傾斜部38の上端縁38Bよりも車両上下方向において下方に位置する場合には、次のようにしてもよい。例えば、正面視縦長矩形状の金属板からなる「当接板」を、アッパリインフォース8の底面部8Cの上端縁から上方へ延びるように、且つ、ロッド押上部材26の傾斜部38の上端縁38Bに対向するように、スポット溶接等によって溶接接合して固定するようにしてもよい。「当接板」の車両前後方向の幅は、傾斜部38の上端縁38Bの車両前後方向の幅とほぼ等しい幅に形成するのが好ましい。
【0057】
これにより、車両用ドア1が側面衝突を受けると、ドアアウタパネル3と共にアッパリインフォース8が車幅方向内側へ押し込まれる。その結果、アッパリインフォース8の底面部8Cから上方へ延びる「当接板」が、ロッド押上部材26の傾斜部38の上端縁38Bに当接して、ロッド押上部材26、及び、このロッド押上部材26が固定されたドアロワフレーム13を一体的に車幅方向内側へ押し込むことができる。そして、ドアアウタパネル3の変形により僅かに下方へ移動したオープンロッド25の下端部25Aに、車幅方向内側へ押し込まれたロッド押上部材26の傾斜部38が当接して、当該オープンロッド25の下方への移動が阻止される。
【0058】
続いて、ドアアウタパネル3と共にアッパリインフォース8が車幅方向内側へ、更に移動すると、アッパリインフォース8の底面部8Cから上方へ延びる「当接板」を介して、ロッド押上部材26、及び、このロッド押上部材26が固定されたドアロワフレーム13が一体的に、更に車幅方向内側へ押し込まれる。その結果、ロッド押上部材26の傾斜部38に当接したオープンロッド25の下端部25Aは、当該ロッド押上部材26の車幅方向内側への移動に伴って、傾斜部38上に沿って車両上方側へ押し上げられる。
【0059】
これにより、オープンロッド25及びオープンレバー23の車両下方側への移動が規制され、側面衝突時に、簡易な構成で、車両用ドア1の開放を防止することができる。また、側面衝突時に、車両用ドア1の開錠、施錠に関わらないドアロワフレーム13に固定された固定部品であるロッド押上部材26が、アッパリインフォース8の底面部8Cから上方へ延びる「当接板」に当たるので、側面衝突時における部品の衝突モードの管理を行いやすい。
【0060】
[他の第3実施形態]
(C)また、例えば、前記実施形態に係る車両用ドア1及び車両用ドア51は、右側前部ドアとしたが、各ドアロック構造11、53は、左側前部ドア、右側後部ドア、左側後部ドア等に適用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1、51 車両用ドア
3 ドアアウタパネル
8 アッパリインフォース
13 ドアロワフレーム
18 ドアインナパネル
21 ドアハンドル
25 オープンロッド
25A 下端部
26、55 ロッド押上部材
38 傾斜部
38B 上端縁
39、57 固定部