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特許7347322フェノール樹脂及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】フェノール樹脂及びその製造方法、並びにエポキシ樹脂組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 8/12 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
C08G8/12
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020085127
(22)【出願日】2020-05-14
(62)【分割の表示】P 2019566373の分割
【原出願日】2019-03-25
(65)【公開番号】P2020117734
(43)【公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-03-17
(31)【優先権主張番号】P 2018060488
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】岡本 慎司
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150975(JP,A)
【文献】特開2007-126683(JP,A)
【文献】国際公開第2004/020492(WO,A1)
【文献】特開2005-329420(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00 - 8/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるo-位置換型フェノール樹脂であり、150℃での溶融粘度が0.01Pa・s以上0.20Pa・s以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が、500以上700以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、樹脂中のn=0成分が26%以上28%以下であり、軟化点が65℃以下である、フェノール樹脂。
【化1】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、nは0以上の整数である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェノール樹脂及びその製造方法に関する。また本発明は、該フェノール樹脂を含むエポキシ樹脂組成物及び該エポキシ樹脂組成物の硬化物に関する。更に本発明は、該硬化物を含む半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂組成物は作業性及びその硬化物の優れた電気特性、耐熱性、接着性、耐湿性等により電気・電子部品、構造用材料、接着剤、塗料等の分野で幅広く用いられている。
【0003】
近年、半導体パッケージの細線化、薄型化が進んでいることに伴って、基盤実装のリフロー工程による加熱でパッケージが高温にさらされるようになった。パッケージが吸湿した場合に、リフロー工程で、クラックが発生し半導体の信頼性に影響を与える。このため、半田耐熱性(耐リフロー性)に優れた封止材料の開発が望まれている。したがって、封止材料として、低吸水に加えて、熱時の応力が低く、密着性の高い封止材料が求められる。従来、そのような封止材料の一つに、硬化剤にフェノールアラルキル樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物が用いられている(特許文献1)。しかしながら、フェノールアラルキル樹脂を硬化剤として用いたエポキシ樹脂組成物は、現在市場から求められる低コスト化の要求に対応できない。また、そのコストに見合った半田耐熱性(耐リフロー性)も十分でない。
【0004】
さらに近年では、1パッケージ内にチップを積層する構造、あるいは従来よりもワイヤ線径をより細くした半導体装置が登場している。このような半導体装置では、従来よりも樹脂封止部分の肉厚が薄くなることで未充填が発生しやすい、あるいは成形中のワイヤ流れが発生しやすいなど、封止工程の歩留まりを低下させる懸念がある。そこで、樹脂組成物の流動特性を向上させるために、低分子量のフェノール樹脂硬化剤を用いる手法が容易に想起されるが、同手法によって、フェノール樹脂そのものの固着(ブロッキング)による保存上の不良や、エポキシ樹脂組成物としたときの樹脂組成物(タブレット)同士の固着による成形工程中の搬送不良、設備停止を起こしやすい(ハンドリング性の低下)、硬化性低下によって耐半田性、難燃性、成形性(成型性という場合もある)のいずれかの特性が損なわれる、などの不具合が発生する場合がある。
【0005】
以上のように、半導体パッケージの細線化、薄型化によって、樹脂組成物は、従来以上に流動性を向上させつつ、ハンドリング性、耐半田性、難燃性、成形性を確保し、バランスさせること、及びそれらを低コストで実現させることが重要課題となってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平8-258077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、エポキシ樹脂の硬化剤としたときに得られる硬化物が、低吸水性であり、熱時の弾性率が低く、更には良好な硬化性、成形性、難燃性をバランス良く有する、フェノール樹脂を低コストで提供することにある。また、該フェノール樹脂を含む耐熱性(耐リフロー性)、ハンドリング性に優れたエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を提供することにある。更に該硬化物を有する半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の事項に関する。
1.下記一般式(1)で示されるo-位置換型フェノール樹脂であり、150℃での溶融粘度が0.20Pa・s以下であるフェノール樹脂。
【化1】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、nは0以上の整数である。)
2.一般式(1)の置換基Rがメチル基である前記1に記載のフェノール樹脂。
3.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析による重量平均分子量(Mw)が1000以下であり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、樹脂中のn=0成分が12~30%である前記1または2に記載のフェノール樹脂。
4.ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が、500以上700以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、樹脂中のn=0成分が26%以上28%以下である、前記1~3の何れか1項に記載のフェノール樹脂。
5.一般式(1)の置換基Rがメチル基であり、150℃での溶融粘度が0.01Pa・s以上0.04Pa未満であり、軟化点が60℃以上65℃以下である、前記4に記載のフェノール樹脂。
6.前記1~5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂とエポキシ樹脂とを含むエポキシ樹脂組成物。
7.前記4に記載のフェノール樹脂を含み、ビフェニル型エポキシ樹脂を含む、前記6に記載のエポキシ樹脂組成物。
8.前記5に記載のフェノール樹脂を含み、ビフェニル型エポキシ樹脂を含む、前記6に記載のエポキシ樹脂組成物。
9.前記4に記載のフェノール樹脂を含み、270℃における貯蔵弾性率が0.2GPa以上0.7GPa以下である硬化物を与える、前記6に記載のエポキシ樹脂組成物。
10.前記5に記載のフェノール樹脂を含み、270℃における貯蔵弾性率が0.2GPa以上0.7GPa以下である硬化物を与える、前記6に記載のエポキシ樹脂組成物。
11.前記6~10の何れか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
12.前記11に記載の硬化物を含む半導体装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によって、エポキシ樹脂の硬化剤としたときに得られる硬化物が、低吸水性であり、熱時の弾性率が低く、更には良好な硬化性、成形性、難燃性をバランス良く有する、フェノール樹脂を低コストで得ることができる。また、該フェノール樹脂を含む耐熱性(耐リフロー性)、ハンドリング性に優れたエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を得ることが出来る。更に該硬化物を有する半導体装置を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔フェノール樹脂〕
本発明のフェノール樹脂は、下記一般式(1)で示されるo-位置換型フェノール樹脂であり、150℃での溶融粘度が0.20Pa・s以下であることを特徴とする。
【化2】
(式中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、nは0以上の整数である。)
【0011】
本発明のフェノール樹脂は、フェノール性水酸基に対しオルソ位(o-位)に置換基Rを有する。そのため、本発明フェノール樹脂は、オルソ位(o-位)に置換基を有さないフェノール樹脂と比較して、軟化点に対する溶融粘度が低くなる。置換基Rを有さない(無置換の)フェノール樹脂であると、分子量を小さくし溶融粘度を低下させると、軟化点も低下する。軟化点が低いと、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性に問題が生じる。
【0012】
一方、o-位以外のメタ位(m-位)やパラ位(p-位)に置換基Rを有するフェノール樹脂は、o-位に置換基Rを有するフェノール樹脂と比較して、低分子量の2核体成分(n=0)が多くなる。そのため、エポキシ樹脂組成物としたときの成形性や、得られる硬化物の曲げ強度などの硬化物性に問題が生じる。
【0013】
本発明のフェノール樹脂は、フェノール性水酸基に対しオルソ位(o-位)に置換基Rを有することにより、エポキシ樹脂組成物としたときに、高い流動性と成形性を有する。また、エポキシ樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物は、曲げ強度などの硬化物性が良好であり且つ難燃性を有する。
【0014】
本発明のフェノール樹脂は、150℃での溶融粘度の上限値が0.20Pa・s以下である。150℃での溶融粘度が0.20Pa・s以下であることにより、エポキシ樹脂組成物としたときに、高い流動性(低粘度)を有する。150℃での溶融粘度の上限値は、より好ましくは、0.10Pa・s以下であり、最も好ましくは0.05Pa・s以下である。
【0015】
なお、150℃での溶融粘度の下限値は、エポキシ樹脂組成物とした時の流動性の観点からは低い程好ましいが、0.01Pa・s以上であることが、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性の点から好ましい。よって、本発明のフェノール樹脂は、150℃での溶融粘度の範囲としては、好ましくは0.01Pa・s以上0.20Pa・s以下であり、より好ましくは0.01Pa・s以上0.10Pa・s以下であり、最も好ましくは0.01Pa・s以上0.05Pa・s以下である。なお、150℃での溶融粘度は下記の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0016】
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂において、置換基Rは、直鎖又は分枝鎖の炭素数1~4のアルキル基である。置換基Rは、限定はされないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n‐ブチル基、sec‐ブチル基、iso‐ブチル基、及びtert‐ブチル基が挙げられる。フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性、及び入手のし易さ等の観点からは、置換基Rは好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、又はn‐ブチル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、最も好ましくはメチル基である。前記一般式(1)における上述の置換基Rは、本発明の効果の範囲内であれば、同一の置換基であってもよく、それぞれ異なる置換基であってもよい。
【0017】
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂において、nは、繰り返し数を表し、0以上の整数である。前記一般式(1)で表されるフェノール樹脂は、様々な繰り返し数nを有する化合物の集合体なので、nの値は、該集合体における平均値n’として表すことができる。
【0018】
前記平均値n’は、フェノール樹脂の150℃における溶融粘度が0.20Pa・s以下となるような値である。前記平均値n’の範囲は、好ましくは0.01Pa・s以上0.20Pa・s以下、より好ましくは0.01Pa・s以上0.15Pa・s以下、さらに好ましくは0.01Pa・s以上0.10Pa・s以下、最も好ましくは0.01Pa・s以上0.05Pa・s以下となるような値であることが好ましい。平均値n’は、後述する重量平均分子量(Mw)に基づいて算出することができる。
【0019】
本発明のフェノール樹脂において、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による標準ポリスチレン換算値での重量平均分子量(Mw)は、好ましくは400以上1000以下、より好ましくは500以上800以下、最も好ましくは500以上700以下である。重量平均分子量(Mw)を前記範囲とすることが、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性や、エポキシ樹脂組成物としたときの無機充填材等との混練作業のハンドリング性の点から好ましい。なお、重量平均分子量(Mw)はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定され、下記の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0020】
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂において、2核体(n=0)の含有量(すなわち前記一般式(1)においてn=0である化合物の含有量)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、好ましくは12%以上30%以下であり、より好ましくは15%以上30%以下であり、さらに好ましくは22%以上30%以下であり、特に好ましくは26%以上29%以下であり、最も好ましくは26%以上28%以下である。また、本発明のフェノール樹脂において、2核体(n=0)の含有量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析により、好ましくは12重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは15重量%以上30重量%以下であり、さらに好ましくは22重量%以上30重量%以下であり、最も好ましくは26重量%以上29重量%以下である。2核体含有量を前記範囲とすることが、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性、およびエポキシ樹脂組成物としたときの高い流動性(低粘度)の点から好ましい。なお、2核体の含有率はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって測定され、下記の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0021】
本発明のフェノール樹脂において、軟化点は好ましくは50℃以上90℃以下、より好ましくは60℃以上80℃以下、最も好ましくは60℃以上70℃以下である。軟化点を前記範囲とすることが、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性や、エポキシ樹脂組成物としたときの無機充填材等との混練作業のハンドリング性の点から好ましい。軟化点は、重量平均分子量(Mw)を前記範囲とすることによって調整することができる。
【0022】
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂において、好ましい態様の一つは、置換基Rがメチル基であり、150℃での溶融粘度が0.20Pa・s以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が、1000以下であり、かつ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、樹脂中のn=0成分が12%以上30%以下であるフェノール樹脂である。前記の好ましい態様では、フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性及びエポキシ樹脂組成物としたときの無機充填材等との混練作業のハンドリング性と、エポキシ樹脂組成物としたときの高い流動性(低粘度)と、を両立できる、さらに、エポキシ樹脂組成物としたときの成形性や、得られる硬化物の曲げ強度などの機械特性が高くなり、加えて、硬化物の吸水性が低くなり、難燃性が高くなる。
【0023】
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂において、特に好ましい態様の一つは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による重量平均分子量(Mw)が、500以上700以下であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)分析の面積比率で、樹脂中のn=0成分が26%以上28%以下であるフェノール樹脂であり、更に一層好ましくは、当該条件において、置換基Rがメチル基であり、150℃での溶融粘度が0.01Pa・s以上0.04Pa未満であり、軟化点が60℃以上65℃以下である、フェノール樹脂である。この特に好ましい態様では、エポキシ樹脂組成物としたときの成形性、低吸水性、難燃性、耐熱性、低貯蔵弾性率をバランスよく良好なものとしながら、エポキシ樹脂組成物としたときの流動性(低粘度)を特に優れたものとすることができる。
【0024】
以上は本発明のフェノール樹脂に関する説明であったところ、以下にフェノール樹脂の好適な製造方法を説明する。
【0025】
〔フェノール樹脂の製造方法〕
<フェノール化合物(a1)>
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂は、下記一般式(2)で示されるフェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とを、酸性触媒下で縮重合反応させることで得ることができる。つまり、本発明のフェノール樹脂は、フェノールノボラック型の樹脂である。
【0026】
【化3】
(一般式(2)中、Rは、前記一般式(1)における定義と同じである。)
【0027】
前記一般式(2)で示されるフェノール化合物(a1)としては、特に限定はないが、例えば、2-メチルフェノール(オルソクレゾール)、2-エチルフェノール、2-プロピルフェノール、2-イソプロピルフェノール、2-n-ブチルフェノール、2-sec-ブチルフェノール、及び2-tert-ブチルフェノールが挙げられる。フェノール樹脂そのものやエポキシ樹脂組成物としたときのブロッキング等による取扱い上のハンドリング性、及び入手のし易さ等の観点からは、前記一般式(2)で示されるフェノール化合物は好ましくは2-メチルフェノール、2-エチルフェノール、2-プロピルフェノール、又は2-n-ブチルフェノールであり、より好ましくは、2-メチルフェノール又は2-エチルフェノールであり、最も好ましくは2-メチルフェノールである。これらのフェノール化合物は、本発明の効果の範囲内で、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
<ホルムアルデヒド(a2)>
また、ホルムアルデヒド(a2)としては、特に制限はないが、ホルムアルデヒド水溶液を用いてもよく、また、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなど酸存在下で分解してホルムアルデヒドとなる重合物を用いてもよい。好ましくは、取り扱いの容易なホルムアルデヒド水溶液であり、例えば市販の42%ホルムアルデヒド水溶液をそのまま好適に使用することができる。
【0029】
<フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とのモル比(a2/a1)>
前記一般式(1)で表される本発明のフェノール樹脂の製造において、フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とを反応させる際には、フェノール化合物(a1)1モルに対して、ホルムアルデヒド(a2)を、好ましくは0.4~1.0モル、より好ましくは0.5~0.8モル、さらに好ましくは0.5~0.7モルとする。フェノール化合物(a1)とホルムアルデヒド(a2)とのモル比を前記範囲とすることで、本発明のフェノール樹脂の150℃での溶融粘度や重量平均分子量(Mw)を所定の範囲とすることができる。
【0030】
<酸触媒>
フェノール樹脂の製造方法において、縮重合反応は酸性触媒下で行うことが出来る。縮重合反応に用いる酸触媒としては特に限定はなく、塩酸、シュウ酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸など公知のものを単独であるいは2種以上併用して使用することができるが、硫酸、シュウ酸又はパラトルエンスルホン酸が特に好ましい。
【0031】
<反応溶媒>
フェノール樹脂の製造方法において、反応を円滑にする目的で溶媒を使用する場合もある。このときの溶媒としては、水や、低級アルコール(炭素数1~6の脂肪族アルコール)等が挙げられる。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、及びシクロヘキサノール等が挙げられる。溶媒の使用量については特に制限はないが、溶媒の除去コストや回収コストからフェノール化合物に対し50重量%以下共存させることが好ましく、30重量%以下共存させることがより好ましく、10重量%未満が更に好ましい。一方、溶媒の量はフェノール化合物に対し0.1重量%以上であることが、溶媒を使用することによる効果を十分発揮する点で好ましい。
【0032】
<反応温度>
縮重合反応の反応温度は、特に限定されず、通常50~200℃、好ましくは70~180℃、より好ましくは80~170℃である。50℃以上であれば反応を進行しやすくすることができ、また200℃以下であれば反応の制御が行いやすく、目的とする本発明のフェノール樹脂を安定的に得ることができる。
【0033】
<反応時間、反応圧力>
縮重合反応の反応時間は、反応温度にもよるが、通常は0.1~20時間程度である。また、縮重合反応の反応圧力は、通常は常圧下で行われるが、加圧下或いは減圧下で行ってもよい。
【0034】
<後処理>
縮重合反応終了後の後処理としては、反応を完全に停止するために塩基を添加して酸触媒を中和し、続いて酸触媒を除去するために水を加えて水洗を行うことが好ましい。
【0035】
酸触媒の中和のための塩基としては、特に限定されることはなく、酸触媒を中和し、水に可溶となる塩を形成するものであれば使用可能である。金属水酸化物や金属炭酸塩などの無機塩基、有機アミンなどの有機塩基、又はアンモニア等が挙げられる。無機塩基としては、具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウムなどが挙げられる。有機アミンの具体例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、トリブチルアミンなどが挙げられる。これらのうち、好ましくは有機アミンが使用される。使用量は、酸触媒の量にもよるが、酸触媒を中和した後の反応系内のpHが4~8の範囲に入るような量で使用することが好ましい。
【0036】
水洗で用いる水の量及び水洗の回数は特に限定されないが、経済的観点も含めて、酸触媒を実使用に影響ない程度の量まで除去するために、水洗回数としては1~5回程度が好ましい。また、水洗で用いる水の温度は、特に限定されないが、触媒種除去の効率と作業性の観点から40~95℃で行うのが好ましい。水洗中、フェノール樹脂と水洗水との分離が不十分である場合は、混合液の粘度を低下させるために、水洗で用いる水の温度を上昇させるか、又は水以外の溶媒の添加を行うことが効果的である。水以外の溶媒種は特に限定されないが、フェノール樹脂を溶解し、粘度を低下させるものであれば使用することができる。
【0037】
酸触媒を除去した後は、通常は、反応系の温度を130~230℃に上げて、例えば20~50torrの減圧下、反応混合物中に残存している未反応原料や、有機溶媒などの揮発分を留去することによって、目的のフェノール樹脂を好適に分離回収することができる。
【0038】
〔エポキシ樹脂組成物及びその硬化物〕
本発明のエポキシ樹脂組成物は、上述した本発明のフェノール樹脂を、エポキシ樹脂の硬化剤として含む。
【0039】
エポキシ樹脂としては、例えばビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ハロゲン化エポキシ樹脂などの分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂が挙げられる。これらエポキシ樹脂は単独で又は2種以上を混合して使用することができる。これらのうち、好ましいエポキシ樹脂としては、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂が挙げられ、特に好ましいエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0040】
フェノール樹脂は、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられるところ、本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のフェノール樹脂以外の他の硬化剤を含んでもよい。本発明のフェノール樹脂以外の他の硬化剤の種類に特に限定はなく、エポキシ樹脂組成物の使用目的に応じて種々の硬化剤を用いることができる。例えば、一般式(1)以外の他のフェノール樹脂、アミン系硬化剤、アミド系硬化剤、酸無水物系硬化剤などを用いることができる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物において、全ての硬化剤に占める、本発明のフェノール樹脂組成物の割合は、該エポキシ樹脂組成物から得られる硬化物の熱時弾性率及び成型収縮率を十分に高くする観点から、より高い割合であることが好ましい。具体的には、全ての硬化剤に占める、本発明のフェノール樹脂組成物の割合は、好ましくは30質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、一層好ましくは70質量%以上、更に一層好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100質量%である。
【0042】
フェノール樹脂を硬化剤とするエポキシ樹脂組成物において、フェノール樹脂の水酸基当量数と、エポキシ樹脂のエポキシ基当量数との比(水酸基当量数/エポキシ基当量数)が0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.8以上1.2以下であることがより好ましく、1であることが最も好ましい。なお、水酸基当量数やエポキシ基当量数などの官能基当量数は、当該官能基当量をA(g/eq)、仕込み量をB(g)としたときに、B/A(当該化合物の純度がC%の場合には[B×C/100]/A)によって求めることができる。すなわち、水酸基当量やエポキシ基当量などの官能基当量とは、官能基1個当たりの化合物の分子量を表し、官能基当量数とは、化合物質量(仕込み量)当たりの官能基の個数(当量数)を表す。
【0043】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂をフェノール樹脂で硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができる。例えば、有機ホスフィン化合物及びそのボロン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、イミダゾール類及びのテトラフェニルボロン塩などを挙げることができるが、この中でも硬化性や耐湿性の面からトリフェニルホスフィンが好ましい。また、より流動性を高めるためには、加熱処理にて活性が発現する熱潜在性の硬化促進剤が好ましく、テトラフェニルホスフォニウム・テトラフェニルボレートなどのテトラフェニルホスフォニウム誘導体が好ましい。エポキシ樹脂組成物への硬化促進剤の添加の割合は、公知のエポキシ樹脂組成物における割合と同様とすることができ、例えばエポキシ樹脂100質量部に対して0.1質量部以上10質量部以下とすることができる。
【0044】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、有機又は無機充填材を好適に含有することができる。充填剤としては、特に限定するものではなく用途に応じて選択されるが、例えば非晶性シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、マイカ、硫酸バリウム、酸化マグネシウムなどの無機充填材を好適に挙げることができる。特にエポキシ樹脂組成物を半導体封止材として用いる場合には、無機充填材として非晶性シリカや結晶性シリカなどが好適に用いられる。
【0045】
無機充填材を配合する場合のエポキシ樹脂組成物中の配合割合[無機充填材の質量/無機充填材を含むエポキシ樹脂組成物の質量×100]は、限定するものではないが、30~98質量%、好ましくは40~95質量%程度が好適である。半導体素子の封止材として用いる場合などの用途では、無機充填材の配合割合は60~95質量%、好ましくは70~95質量%、より好ましくは75~90質量%、更に好ましくは80~90質量%であり、無機充填材の配合割合を高いものとすることもできる。無機充填材の割合が前記範囲の下限以上であるとエポキシ樹脂組成物の硬化物の吸水率を低下させることができる。また、無機充填材の割合が前記範囲の上限以下であることで半導体封止用エポキシ樹脂組成物の流動性が得やすい。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、更に通常のエポキシ樹脂組成物で用いられる離型剤、着色剤、カップリング剤、難燃剤等の添加剤、更に溶媒などを含有することができる。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂とフェノール樹脂とを、例えば二軸ニーダや二本ロールなどの混合装置を用い、必要に応じて溶融して、混合することによって好適に得ることができる。得られたエポキシ樹脂組成物は、粉砕機によって好適に粉末化される。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、例えば100℃~350℃で0.01~20時間加熱処理することによって硬化反応させて、その硬化物を得ることができる。硬化反応の温度は、100℃以上とすることで容易に硬化でき、350℃以下とすることで熱分解による性能低下を防止できる。また、硬化反応の時間は0.01時間以上とすることで反応を完結しやすく、20時間以下とすることで生産性を向上できる。
【0049】
本発明のフェノール樹脂を硬化剤としたエポキシ樹脂の硬化物は、熱時の弾性率(270℃における貯蔵弾性率)が低くなる。熱時の弾性率(270℃における貯蔵弾性率)は好ましくは0.2GPa以上0.7GPa以下であり、より好ましくは0.3GPa以上0.6GPa以下である。硬化物の270℃における貯蔵弾性率が前記範囲であることで、優れた半田耐熱性(耐リフロー性)を有し、更には高い難燃性を達成することが出来る。また、本発明のフェノール樹脂は、例えば、該フェノール樹脂と、該フェノール樹脂と等当量数の下記式で表されるエポキシ樹脂と、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して83質量%の無機充填材((株)龍森製、高純度真球状シリカ MSR-2212(Top size 75μm、平均粒径25.5μm、比表面積3.0m2/g、フルイON 75μ ON 0.0%))と、エポキシ樹脂組成物の全質量に対して0.33質量%の硬化促進剤(北興化学株式会社製 トリフェニルホスフィン)とを混錬して得られるエポキシ樹脂組成物の硬化物に、250℃において上記範囲の貯蔵弾性率を与えることが好ましい。
【0050】
【化4】
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、無機充填材を高い割合で配合でき、流動性、成形性が優れ、その硬化物が、優れた低吸水性及び難燃性を有する。このため、本発明のエポキシ樹脂組成物は、半導体封止材として半導体装置に特に好適に用いることができる。
【実施例
【0052】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0053】
[1]フェノール樹脂の合成及び評価
以下の例で用いた樹脂の分析方法及び評価方法について説明する。
【0054】
[溶融粘度の測定]
以下の機器を用いて150℃溶融粘度(Pa・s)を測定した。
使用機器:BROOKFIELD製B型粘度計 DV2T 英弘精機株式会社
測定温度:150℃
測定方法:B型粘度計の炉内温度を150℃に設定し、カップに試料を所定量秤量する。
炉内に試料を秤量したカップを投入して樹脂を溶融させ、上部からスピンドルを入れる。スピンドルを回転させて、表示された粘度値が安定になったところを溶融粘度として読み取る。
【0055】
[軟化点の測定]
以下の機器を用いて軟化点を測定した。
使用機器:FP83HT滴点・軟化点測定システム メトラー・トレド株式会社製
測定条件:昇温速度 2℃/min
測定方法:サンプルカップに溶融した試料を注ぎ入れ、冷やし固める。カ-トリッジをサンプルの充填したカップの上下をはめ込み、炉に挿入する。レジンが軟化してオリフィスを流下し、下端が光路を通過したときの温度を軟化点(℃)としてフォトセルで検出する。
【0056】
[重量平均分子量(Mw)、2核体(n=0)の含有率]
以下の機器を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。また、2核体(n=0)の含有率(%)を、GPC測定による面積比率(2核体(n=0)のピーク面積/フェノール樹脂全体のピーク面積×100)により求めた。
2核体の面積比率の算出は、ピーク前後の直線部分をベースライン(0値)とし、各成分のピーク間は最も低くなるところでの縦切りでピークを分けた。
【0057】
使用機器:Waters Alliance 2695 (ゲル浸透クロマトグラフ分析)
カラム: SHODEX製
KF-804×1本
KF-803×1本
KF-802×1本
KF-802.5×1本
KF-801×1本
ガードカラム:SHODEX製KF-G
溶解液:テトラヒドロフラン(THF)
検出器:UV計 波長254nm
フローレート:1mL/min
カラムオーブン温度:40℃
解析ソフト:Empower3 Waters社製
【0058】
[水酸基当量]
JIS K0070に準じた水酸基当量測定によって、水酸基当量(g/eq)を求めた。
【0059】
[融点の測定]
以下の機器を用いて融点を測定した。
使用機器:TAインスツルメント社製 Q-2000
測定温度領域:-20℃~150℃、昇温速度10℃/min
測定環境:N2(50mL/min)雰囲気
測定方法:溶融が開始する温度を融点(℃)とした。
【0060】
〔実施例1〕
[樹脂Aの合成]
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量500mLのガラス製フラスコに、2-メチルフェノール(o-Cr)216質量部(2.0モル)、92質量%パラホルムアルデヒド(以下、パラホルムともいう。)39.1質量部(1.2モル)、水0.47質量部、シュウ酸0.65質量部を入れた。還流下に、100℃で7時間反応させた後に、内温を160℃まで昇温し、減圧-スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、樹脂A187質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例2〕
[樹脂Bの合成]
実施例1で使用した92質量%パラホルムの配合量を42.78質量部(1.3モル)にした以外は、全て実施例1と同様の操作にて樹脂B204質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0062】
〔実施例3〕
[樹脂Cの合成]
実施例1で使用した92質量%パラホルムの配合量を48.91質量部(1.5モル)にした以外は、全て実施例1と同様の操作にて樹脂C222質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0063】
〔比較例1〕
[樹脂Dの合成]
実施例1で使用した92質量%パラホルムの配合量を51.46質量部(1.6モル)にした以外は、全て実施例3と同様の操作にて樹脂D242質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0064】
〔比較例2〕
[樹脂Eの合成]
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、3-メチルフェノール(m-Cr)864質量部(8.0モル)、92質量%パラホルム39.1質量部(1.2モル)、水46.6質量部、シュウ酸0.86質量部を入れた。還流下に、100℃で7時間反応させた後に、内温を160℃まで昇温し、減圧-スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、樹脂E243質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0065】
〔比較例3〕
[樹脂Fの合成]
温度計、仕込み・留出口、冷却器及び攪拌機を備えた容量1000mLのガラス製フラスコに、4-メチルフェノール(p-Cr)432質量部(4.0モル)、92質量%パラホルム40.4質量部(1.2モル)、水21.0質量部、シュウ酸0.42質量部を入れた。還流下に、100℃で7時間反応させた後に、内温を160℃まで昇温し、減圧-スチーミング処理を行い、未反応成分を除去することで、樹脂F187質量部を得た。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0066】
〔比較例4〕
樹脂Gとして、フェノールノボラック樹脂「HF-1M」(明和化成株式会社製)を用いた。樹脂Gは、無置換型フェノール樹脂である。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0067】
〔比較例5〕
樹脂Hとして、フェノールアラルキル樹脂「MEHC-7800SS」(明和化成株式会社製)を用いた。樹脂Hは、無置換型フェノール樹脂である。本樹脂の評価結果を表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
[2]エポキシ樹脂組成物及び硬化物の調製及び評価
以下のエポキシ樹脂組成物及び硬化物の評価で用いた分析方法及び評価方法について説明する。
【0070】
[成形性の評価]
エポキシ樹脂組成物を対象として、以下の評価基準にて評価した。
〇:トランスファー成形で寸法通りの成形体が得られた。
×:トランスファー成形で寸法通りの成形体が得られなかった。
【0071】
[流動性の測定]
エポキシ樹脂組成物を対象として、以下の機器を用いて流動性を測定した。
使用機器:株式会社多加良製作所製 60tトランスファー成形機
測定条件:金型温度175℃、注入圧力6.8MPa、保持時間120秒
測定方法:エポキシ樹脂組成物をEMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型に注入し、流動長(cm)を測定した。流動長が200cm以上となったものは、「200over」とした。
【0072】
[機械特性(曲げ強度)の測定]
エポキシ樹脂組成物の硬化物の試験片を対象として、JIS K 7171に準拠して、曲げ強度(MPa)を測定した。
試験片サイズ:80mm×10mm×4mm
【0073】
[耐水性(吸水率)の測定]
エポキシ樹脂組成物の硬化物の試験片を対象として、JIS C6481に準拠して吸水率(%)を測定した。
試験片サイズ:直径50mm×厚さ3mm
【0074】
[燃焼性の判定]
エポキシ樹脂組成物の硬化物の試験片を対象として、UL-94に準拠して判定した。
試験片サイズ:127mm×13mm×1mm
【0075】
[耐熱性・貯蔵弾性率の測定]
エポキシ樹脂組成物の硬化物の試験片を対象として、以下の機器を用いてガラス転移点(Tg)及び貯蔵弾性率を測定した。
使用機器:TAインスツルメント社製 RSA-G2
測定条件:30℃~270℃ 昇温速度3℃/min
測定方法:寸法が40mm×12mm×1mmのエポキシ樹脂硬化物の試験片を用いて動的粘弾性測定装置にて測定を行い、270℃での貯蔵弾性率(GPa)を求めた。またTanδのピーク温度をTg(℃)とした。
【0076】
〔実施例4~6〕及び〔比較例6~10〕
実施例1~3及び比較例1~5で得られた樹脂A~Hを硬化剤として、該硬化剤と、エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製 YX-4000,エポキシ基当量:187g/eq)と、フィラー(龍森株式会社製 キクロスMSR-2212)と、硬化促進剤(北興化学工業株式会社製 TPP)とを表2に示す割合にて配合して、2軸ニーダで混練した後、冷却、粉砕することにより、エポキシ樹脂組成物を得た。このエポキシ樹脂組成物を使用し、流動性の測定を行った。また、得られたエポキシ樹脂組成物を用いて作成した40Φタブレットを用いてトランスファー成形機にて試験片を作成した。この際の成形性を前記評価基準にて評価した。更に、試験片について180℃×8時間ポストキュアを行うことでエポキシ樹脂硬化物を得た。このエポキシ樹脂硬化物を用いて物性評価を行った。これら評価結果を表3に示す。
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
表1及び3に示す結果から明らかなとおり、o-位に置換基を有し、特定の分子量及び二核体含有率で調整された本発明のフェノール樹脂(実施例1~3)を用いて得られたエポキシ樹脂組成物(実施例4~6)は、各比較例と比較して成形性等の諸物性を満足するものであることが判る。また、エポキシ樹脂組成物の硬化物(実施例4~6)は、比較例9及び10と同等以下の耐水性(低吸水性)を有し、また、熱時の弾性率が低いものであることが判る。
【0080】
一方、本発明のフェノール樹脂の好適な範囲を超える分子量を有する比較例6では、流動性の低下や、燃焼性及び耐熱性に劣る結果が得られた。また、m-位又はp-位に置換基を有するフェノール樹脂を使用した比較例7及び8では、著しく成形性が低下し、エポキシ樹脂硬化物を得ることができなかった。エポキシ樹脂硬化物を得るためには高分子量化の必要がある為、粘度・軟化点の上昇により高流動性エポキシ樹脂組成物を得ることは出来ない。したがって、本発明のフェノール樹脂を用いることで、良好な硬化性、成形性をバランス良く有する、高流動性のエポキシ樹脂組成物が得られ、また該組成物を硬化させることによって、低吸水性であり、且つ熱時の弾性率が低い硬化物が得られることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のとおり、本発明のフェノール樹脂を用いることで、成型性、硬化物性が良好で且つ高流動性を併せ持つエポキシ樹脂組成物及びその硬化物を得ることができる。したがって本発明によれば、軽薄短小化が進行する半導体封止材を含む半導体装置用のエポキシ樹脂組成物に好適に用いることができるフェノール樹脂を提供することができる。