(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】エンジンシステム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/20 20060101AFI20230912BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20230912BHJP
F01N 3/023 20060101ALI20230912BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F01N3/20 B
F01N3/08 A
F01N3/023 K
F01N3/023 A
F02D45/00 360Z
(21)【出願番号】P 2020093294
(22)【出願日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】成田 浩之
【審査官】畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-248762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/20
F01N 3/08
F01N 3/023
F02D 45/00
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーナビゲーションを具備した車両に搭載されるエンジンシステムにおいて、
エンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジン内で発生した排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路に配設され、前記排気ガスに含まれる大気汚染物質を浄化する排気浄化触媒と、
前記大気汚染物質の状態量に基づいて、前記排気浄化触媒における前記大気汚染物質の溜まり量を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量が閾値以上であるときに、前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御する制御部と、
前記カーナビゲーションの情報に基づいて、前記車両の走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかを判定する渋滞判定部と
、
前記渋滞判定部により前記走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときに、前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量と前記カーナビゲーションの情報とに基づいて、前記排気浄化触媒における渋滞区間走行時の前記大気汚染物質の溜まり量積算値を予測する積算値予測部とを備え、
前記制御部は、前記渋滞判定部により前記走行ルート上に渋滞が発生していると判定され
ると共に、前記積算値予測部により予測された前記渋滞区間走行時の前記大気汚染物質の溜まり量積算値が前記閾値以上であるときは、前記車両が渋滞区間に到達する前に前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を
事前に除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御するエンジンシステム。
【請求項2】
前記積算値予測部は、前記カーナビゲーションの情報に基づいて前記渋滞区間走行時の前記車両の車速を推定し、前記渋滞区間走行時の前記車両の車速を用いて、前記渋滞区間走行時に前記エンジンから排出される前記大気汚染物質の量を推定し、前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量と前記渋滞区間走行時に前記エンジンから排出される前記大気汚染物質の量とに基づいて、前記渋滞区間走行時の前記大気汚染物質の溜まり量積算値を予測する請求項
1記載のエンジンシステム。
【請求項3】
カーナビゲーションを具備した車両に搭載されるエンジンシステムにおいて、
エンジンと、
前記エンジンと接続され、前記エンジン内で発生した排気ガスが流れる排気通路と、
前記排気通路に配設され、前記排気ガスに含まれる大気汚染物質を浄化する排気浄化触媒と、
前記大気汚染物質の状態量に基づいて、前記排気浄化触媒における前記大気汚染物質の溜まり量を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量が閾値以上であるときに、前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御する制御部と、
前記カーナビゲーションの情報に基づいて、前記車両の走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかを判定する渋滞判定部と、
前記渋滞判定部により前記走行ルート上に渋滞が発生していないと判定されたときに、前記カーナビゲーションの情報に基づいて、前記車両が走行する道路が自動車専用道路であるかどうかを判別する道路判別部
とを備え、
前記制御部は、前記渋滞判定部により前記走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときは、前記車両が渋滞区間に到達する前に前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御し、
前記制御部は、前記道路判別部により前記車両が走行する道路が前記自動車専用道路でないと判別された場合は、前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量が第1閾値以上であるときに、前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御し、前記道路判別部により前記車両が走行する道路が前記自動車専用道路であると判別された場合は、前記推定部により推定された前記大気汚染物質の溜まり量が前記第1閾値よりも小さい第2閾値以上であるときに、前記排気浄化触媒に溜まった前記大気汚染物質を除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御す
るエンジンシステム。
【請求項4】
前記排気浄化触媒は、前記排気ガスに含まれるNOxを浄化するNOx吸蔵還元触媒であり、
前記推定部は、前記NOxの状態量に基づいて、前記NOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵量を推定し、
前記制御部は、前記推定部により推定された前記NOx吸蔵量が前記閾値以上であるときに、前記NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御する請求項1~
3の何れか一項記載のエンジンシステム。
【請求項5】
前記排気浄化触媒は、前記排気ガスに含まれるPMを浄化するディーゼル微粒子捕集フィルタであり、
前記推定部は、前記PMの状態量に基づいて、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタのPM捕集量を推定し、
前記制御部は、前記推定部により推定された前記PM捕集量が前記閾値以上であるときに、前記ディーゼル微粒子捕集フィルタに捕集されたPMを除去するように前記エンジンの燃焼状態を制御する請求項1~
3の何れか一項記載のエンジンシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のエンジンシステムとしては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載のエンジンシステムは、ディーゼルエンジンの排気ガス通路に配設されたNOx吸蔵還元型触媒と、このNOx吸蔵還元型触媒の上流側に配置された空気過剰率センサ及び第1NOxセンサと、NOx吸蔵還元型触媒の下流側に配置された第2NOxセンサと、再生制御装置とを備えている。再生制御装置は、第1NOxセンサ及び第2NOxセンサの検出値を用いてNOx吸蔵還元型触媒のNOx吸蔵量を推定し、NOx吸蔵量が所定の判定量を超えた場合、空気過剰率センサにより検出された酸素濃度が所定の判定範囲内であるときに、NOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されたNOxを還元除去するようにNOx再生制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、排気浄化触媒であるNOx吸蔵還元型触媒に吸蔵されたNOxを還元するためには、エンジンにおいてリッチ燃焼を行う必要があるが、リッチ燃焼が可能な運転領域は限られている。特に負荷が低い領域、つまり要求燃料噴射量が低い領域では、リッチ燃焼を行うことでトルクが発生してしまうため、NOxの還元を行うことは困難である。このため、渋滞のような低負荷状態が連続する状況においては、例えば補器の電気負荷を高くしたり強制的に発電を行ったりすることで、要求燃料噴射量を増加させるといった対策が実施されている。しかし、この場合には、エンジンに無駄な仕事をさせることになり、燃費の悪化を招いてしまう。
【0005】
本発明の目的は、燃費向上を図りつつ、排気の浄化性能を向上させることができるエンジンシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、カーナビゲーションを具備した車両に搭載されるエンジンシステムにおいて、エンジンと、エンジンと接続され、エンジン内で発生した排気ガスが流れる排気通路と、排気通路に配設され、排気ガスに含まれる大気汚染物質を浄化する排気浄化触媒と、大気汚染物質の状態量に基づいて、排気浄化触媒における大気汚染物質の溜まり量を推定する推定部と、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量が閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御する制御部と、カーナビゲーションの情報に基づいて、車両の走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかを判定する渋滞判定部とを備え、制御部は、渋滞判定部により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときは、車両が渋滞区間に到達する前に排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御する。
【0007】
このようなエンジンシステムにおいては、排気ガスに含まれる大気汚染物質の状態量に基づいて、排気浄化触媒における大気汚染物質の溜まり量が推定され、大気汚染物質の溜まり量が閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質が除去される。ここで、カーナビゲーションの情報に基づいて、車両の走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかが判定される。そして、走行ルート上に渋滞が発生しているときは、車両が渋滞区間に到達する前に、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質が除去される。従って、車両が低負荷の渋滞区間を走行するときには、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去する必要がないため、補器の電気負荷を高くする等といった無駄な仕事をエンジンにさせなくて済む。これにより、燃費向上を図りつつ、排気の浄化性能が向上する。
【0008】
エンジンシステムは、渋滞判定部により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときに、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量とカーナビゲーションの情報とに基づいて、排気浄化触媒における渋滞区間走行時の大気汚染物質の溜まり量積算値を予測する積算値予測部を更に備え、制御部は、積算値予測部により予測された渋滞区間走行時の大気汚染物質の溜まり量積算値が閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を事前に除去するようにエンジンの燃焼状態を制御してもよい。このような構成では、車両の走行ルート上に渋滞が発生している場合でも、車両の走行ルート上に渋滞が発生していない場合と同じ閾値を用いて、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質の除去タイミングを適切に設定することができる。
【0009】
積算値予測部は、カーナビゲーションの情報に基づいて渋滞区間走行時の車両の車速を推定し、渋滞区間走行時の車両の車速を用いて、渋滞区間走行時にエンジンから排出される大気汚染物質の量を推定し、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量と渋滞区間走行時にエンジンから排出される大気汚染物質の量とに基づいて、渋滞区間走行時の大気汚染物質の溜まり量積算値を予測してもよい。このような構成では、渋滞区間走行時の車両の車速を推定することにより、渋滞区間走行時の大気汚染物質の溜まり量積算値を精度良く予測することができる。
【0010】
制御部は、渋滞判定部により走行ルート上に渋滞が発生していないと判定された場合は、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量が第1閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御し、渋滞判定部により走行ルート上に渋滞が発生していると判定された場合は、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量が第1閾値よりも小さい第2閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御してもよい。このような構成では、車両の走行ルート上に渋滞が発生している場合でも、演算処理の簡素化を図りつつ、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質の除去タイミングを適切に設定することができる。
【0011】
エンジンシステムは、渋滞判定部により走行ルート上に渋滞が発生していないと判定されたときに、カーナビゲーションの情報に基づいて、車両が走行する道路が自動車専用道路であるかどうかを判別する道路判別部を更に備え、制御部は、道路判別部により車両が走行する道路が自動車専用道路でないと判別された場合は、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量が第1閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御し、道路判別部により車両が走行する道路が自動車専用道路であると判別された場合は、推定部により推定された大気汚染物質の溜まり量が第1閾値よりも小さい第2閾値以上であるときに、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質を除去するようにエンジンの燃焼状態を制御してもよい。このような構成では、車両が自動車専用道路を一定の時間安定した速度で走行しているときには、大気汚染物質の溜まり量が第1閾値に達する前であっても、排気浄化触媒に溜まった大気汚染物質が積極的に除去される。従って、大気汚染物質の除去が効果的に行われるため、更なる燃費向上を図ることができる。
【0012】
排気浄化触媒は、排気ガスに含まれるNOxを浄化するNOx吸蔵還元触媒であり、推定部は、NOxの状態量に基づいて、NOx吸蔵還元触媒のNOx吸蔵量を推定し、制御部は、推定部により推定されたNOx吸蔵量が閾値以上であるときに、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxを除去するようにエンジンの燃焼状態を制御してもよい。このような構成では、車両が渋滞区間に到達する前に、NOx吸蔵還元触媒に吸蔵されたNOxが除去される。
【0013】
排気浄化触媒は、排気ガスに含まれるPMを浄化するディーゼル微粒子捕集フィルタであり、推定部は、PMの状態量に基づいて、ディーゼル微粒子捕集フィルタのPM捕集量を推定し、制御部は、推定部により推定されたPM捕集量が閾値以上であるときに、ディーゼル微粒子捕集フィルタに捕集されたPMを除去するようにエンジンの燃焼状態を制御してもよい。このような構成では、車両が渋滞区間に到達する前に、ディーゼル微粒子捕集フィルタに捕集されたPMが除去される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、燃費向上を図りつつ、排気の浄化性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを概略的に示す構成図である。
【
図2】
図1に示されたエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示されたECUにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図4】NSR触媒におけるリッチ燃焼可能領域を示すグラフである。
【
図5】比較例として、NSR触媒における渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を予測しない場合におけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートである。
【
図6】
図2に示されたエンジンシステムにおけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートある。
【
図7】本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
【
図8】
図7に示されたECUにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図7に示されたエンジンシステムにおけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートある。
【
図10】本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
【
図11】
図10に示されたECUにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】
図1に示されたエンジンシステムの変形例を概略的に示す構成図である。
【
図13】
図12に示されたエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステムを概略的に示す構成図である。
図1において、本実施形態のエンジンシステム1は、カーナビゲーション2を具備した車両Sに搭載されている。カーナビゲーション2は、車両Sの走行時に、車両Sの現在位置を表示したり、目的地への経路案内を行う機器である。
【0018】
エンジンシステム1は、エンジン3と、吸気通路4と、排気通路5と、スロットルバルブ6と、インジェクタ7と、NSR触媒8(NOxStorage-Reduction触媒:NOx吸蔵還元触媒)とを備えている。
【0019】
エンジン3は、ディーゼルエンジンである。エンジン3は、特に図示はしないが、燃焼室を構成するシリンダを有している。吸気通路4及び排気通路5は、エンジン3に接続されている。吸気通路4は、吸入空気が流れる通路である。排気通路5は、エンジン3の燃焼室内で発生した排気ガスが流れる流路である。
【0020】
スロットルバルブ6は、吸気通路4に配設されている。スロットルバルブ6は、エンジン3に供給される吸入空気の流量を調整する流量調整弁である。インジェクタ7は、エンジン3の燃焼室内に向けて燃料を噴射する燃料噴射弁である。
【0021】
NSR触媒8は、排気通路5に配設されている。NSR触媒8は、排気ガスに含まれるNOxを浄化する排気浄化触媒である。NOxは、排気ガスに含まれる大気汚染物質である。NSR触媒8は、担持体に触媒貴金属及びNOx吸蔵材を担持させた構造を有している。
【0022】
また、エンジンシステム1は、上流側NOxセンサ9と、下流側NOxセンサ10と、ECU11(enginecontrol unit)とを備えている。
【0023】
上流側NOxセンサ9は、NSR触媒8の上流側に存在するNOxの状態量を検出するセンサである。下流側NOxセンサ10は、NSR触媒8の下流側に存在するNOxの状態量を検出するセンサである。NOxの状態量は、例えばNOx濃度またはNOx量である。
【0024】
ECU11は、CPU、RAM、ROM及び入出力インターフェース等により構成されている。ECU11は、カーナビゲーション2の情報(カーナビ情報)と上流側NOxセンサ9及び下流側NOxセンサ10の検出値とを取得し、所定の処理を実行し、インジェクタ7またはスロットルバルブ6を制御する。
【0025】
図2は、エンジンシステム1の制御系構成を示すブロック図である。
図2において、ECU11は、吸蔵量推定部12(推定部)と、渋滞判定部13と、吸蔵量積算値予測部14(積算値予測部)と、還元制御部15(制御部)とを有している。
【0026】
吸蔵量推定部12は、上流側NOxセンサ9により検出されたNSR触媒8の上流側に存在するNOxの状態量と下流側NOxセンサ10により検出されたNSR触媒8の下流側に存在するNOxの状態量とに基づいて、NSR触媒8のNOx吸蔵量を推定する。NSR触媒8のNOx吸蔵量は、NSR触媒8におけるNOxの溜まり量に相当する。
【0027】
渋滞判定部13は、カーナビ情報に基づいて、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかを判定する。カーナビ情報としては、位置情報、走行ルート情報及び渋滞情報等がある。
【0028】
吸蔵量積算値予測部14は、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときに、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量とナビ情報とに基づいて、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を予測する。NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値は、NSR触媒8における渋滞区間走行時のNOxの溜まり量積算値に相当する。
【0029】
還元制御部15は、渋滞判定部13の判定結果に基づいて、NSR触媒8に吸蔵されたNoxを除去(還元)するようにインジェクタ7を制御する。つまり、還元制御部15は、渋滞判定部13の判定結果に基づいて、NSR触媒8に溜まったNoxを除去するようにエンジン3の燃焼状態を制御する。
【0030】
具体的には、還元制御部15は、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していないと判定された場合は、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。還元制御部15は、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していると判定された場合は、吸蔵量積算値予測部14により予測されたNSR触媒8の渋滞区間走行時のNO吸蔵量積算値が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNoxを事前に還元するようにインジェクタ7を制御する。
【0031】
従って、還元制御部15は、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときは、走行ルート上に渋滞が発生していないと判定されたときに比べて、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するタイミングを早くするようにインジェクタ7を制御することとなる。このとき、還元制御部15は、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときは、車両Sが渋滞区間に到達する前にNSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。
【0032】
図3は、ECU11により実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。本処理は、例えばイグニッションスイッチがONされると実行される。
図3において、ECU11は、まず上流側NOxセンサ9及び下流側NOxセンサ10の検出値を取得する(手順S101)。
【0033】
続いて、ECU11は、上流側NOxセンサ9及び下流側NOxセンサ10の検出値に基づいて、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量を推定する(手順S102)。NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量は、例えばNSR触媒8の上流側に存在するNOx量からNSR触媒8の下流側に存在するNOx量を減ずることにより得られる。
【0034】
続いて、ECU11は、カーナビ情報を取得する(手順S103)。ECU11は、カーナビ情報に基づいて、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないかどうかを判断する(手順S104)。
【0035】
ECU11は、走行ルート上に渋滞が発生していないと判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が予め決められた閾値A以上であるかどうかを判断する(手順S105)。
【0036】
ECU11は、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値A以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S106)。このとき、ECU11は、エンジン3においてリッチ燃焼を行うようにインジェクタ7を制御する。つまり、ECU11は、吸入空気量に対する燃料噴射量が増加するようにインジェクタ7を制御する。ECU11は、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Aよりも少ないと判断したときは、手順S106を実行しない。
【0037】
ECU11は、手順S104で走行ルート上に渋滞が発生していると判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量とカーナビ情報とに基づいて、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を予測する(手順S107)。
【0038】
具体的には、まず渋滞情報から、車両Sの渋滞区間走行時の平均車速及び経過時間が推定される。そして、渋滞区間走行時の平均車速から、車両Sの渋滞区間走行時のエンジン回転数及び要求燃料噴射量(エンジン負荷)が推定される。なお、エンジン回転数及び要求燃料噴射量は、例えばマップ計算により得られる。そして、渋滞区間走行時のエンジン回転数及び要求燃料噴射量から、車両Sの渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量が推定される。なお、エンジン3から排出されるNOx量は、例えばマップ計算により得られる。そして、渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量から、車両Sの渋滞区間走行時に積算されるNSR触媒8のNOx吸蔵量が推定される。なお、NSR触媒8のNOx吸蔵量は、例えばマップ計算により得られる。
【0039】
そして、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量と渋滞区間走行時に積算されるNSR触媒8のNOx吸蔵量とに基づいて、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が推定される。このとき、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量と渋滞区間走行時に積算されるNSR触媒8のNOx吸蔵量とを加算することにより、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が得られる。
【0040】
続いて、ECU11は、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が閾値A以上であるかどうかを判断する(手順S108)。ECU11は、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が閾値A以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを事前に燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S109)。このとき、ECU11は、手順S106と同様に、エンジン3においてリッチ燃焼を行うようにインジェクタ7を制御する。ECU11は、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が閾値Aよりも少ないと判断したときは、手順S109を実行しない。
【0041】
以上において、吸蔵量推定部12は、上記の手順S101,S102を実行する。渋滞判定部13は、上記の手順S103,104を実行する。吸蔵量積算値予測部14は、上記の手順S107を実行する。還元制御部15は、上記の手順S105,S106,S108,S109を実行する。
【0042】
ここで、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元する際には、上述したようにリッチ燃焼が行われる。ただし、リッチ燃焼が可能な運転領域(リッチ燃焼可能領域X)は、
図4に示されるように限られている。具体的には、エンジン回転数がr1~r2の範囲内にあると共に、エンジン負荷に相当する要求連量噴射量がf1~f2の範囲内にあるときに、リッチ燃焼が可能である。従って、エンジン回転数が下限値r1よりも低いとき、及び要求連量噴射量が下限値f1よりも低いときには、リッチ燃焼を行うことができない。
【0043】
図5は、比較例として、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を予測しない場合におけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートである。
図5では、車両Sが高速道路を走行する場合についての例を示している。
【0044】
図5において、時刻t1では、車両Sが高速道路を法定速度で通常走行している(
図5(a)参照)。その状態では、エンジン回転数及び要求連量噴射量は、リッチ燃焼可能領域X内にある(
図5(b),(c)参照)。また、NSR触媒8のNOx吸蔵量は、徐々に増加する(
図5(e)参照)。
【0045】
車両Sが渋滞区間に到達すると、車両Sの車速が低下し、エンジン回転数が下がり、要求燃料噴射量が少なくなる(
図5(a)~(c)参照)。そして、車両Sが渋滞区間を走行中の時刻t2に、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aに達すると、NOxの還元要求が行われる(
図5(d),(e)参照)。これにより、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元されるため、NSR触媒8のNOx吸蔵量が減少していく。
【0046】
このとき、要求燃料噴射量がリッチ燃焼可能領域よりも少ないと、上述したようにリッチ燃焼を行うことができない。このため、
図5(c)に示されるように、補機(図示せず)の電気負荷を高くすることで、要求燃料噴射量を強制的にリッチ燃焼可能領域Xまで増加させている。しかし、この場合には、エンジン3に無駄な仕事をさせることになるため、燃費が悪化してしまう。
【0047】
図6は、本実施形態のエンジンシステム1におけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートであり、
図5に対応している。なお、
図6中の実線Pは実走行時の値であり、
図6中の破線Qは予測値である。
【0048】
図6において、まずカーナビゲーション2の渋滞情報に基づいて、車両Sの渋滞区間走行時の平均車速が推定される。このとき、渋滞区間において車両Sの平均車速が低下すると予測される(
図6(a)参照)。そして、渋滞区間走行時の平均車速から、車両Sの渋滞区間走行時のエンジン回転数及び要求燃料噴射量が推定される。このとき、渋滞区間において、エンジン回転数が下がると共に、要求燃料噴射量が少なくなると予測される(
図6(b),(c)参照)。
【0049】
そして、渋滞区間走行時のエンジン回転数及び要求燃料噴射量から、渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量が推定される。そして、渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量から、渋滞区間走行時に積算されるNSR触媒8のNOx吸蔵量が推定される。そして、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量と渋滞区間走行時に積算されるNSR触媒8のNOx吸蔵量とに基づいて、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が予測される(
図6(e)参照)。
【0050】
そして、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が閾値Aに達するときは、時刻t1において、NOxの還元要求が事前に行われる(
図6(d),(e)参照)。これにより、車両Sが渋滞区間に到達する前に、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。その結果、
図6(e)の1点鎖線Rで示されるように、NSR触媒8のNOx吸蔵量が減少する。
【0051】
このとき、
図6(b),(c)に示されるように、エンジン回転数及び要求連量噴射量はリッチ燃焼可能領域X内にあるため、補機(図示せず)の電気負荷を高くしなくて済む。これにより、燃費の悪化を防ぐことができる。
【0052】
以上のように本実施形態によれば、排気ガスに含まれるNOxの状態量に基づいて、NSR触媒8のNOx吸蔵量が推定され、NOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。ここで、カーナビゲーション2の情報に基づいて、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生しているかどうかが判定される。そして、走行ルート上に渋滞が発生しているときは、車両Sが渋滞区間に到達する前に、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。従って、車両Sが低負荷の渋滞区間を走行するときには、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元する必要がないため、補器の電気負荷を高くする等といった無駄な仕事をエンジン3にさせなくて済む。これにより、燃費向上を図りつつ、排気の浄化性能が向上する。
【0053】
また、本実施形態では、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときに、NSR触媒8のNOx吸蔵量とカーナビゲーション2の情報とに基づいて、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が予測される。そして、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が閾値A以上であるときには、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが事前に還元される。このため、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生している場合でも、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していない場合と同じ閾値Aを用いて、NSR触媒8に吸蔵されたNOxの還元タイミングを適切に設定することができる。
【0054】
また、本実施形態では、カーナビゲーション2の情報に基づいて渋滞区間走行時の車両Sの車速が推定され、その車速を用いて渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量が推定され、NSR触媒8のNOx吸蔵量と渋滞区間走行時にエンジン3から排出されるNOx量とに基づいて、渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値が予測される。このように渋滞区間走行時の車両Sの車速を推定することにより、渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を精度良く予測することができる。
【0055】
また、本実施形態では、NSR触媒8に吸蔵されたNOxの還元が適切なタイミングで行われるため、NOxの還元を頻繁に行う必要がない。従って、NOxの還元の頻度を下げるためにNSR触媒8の容量を大きくしなくて済む。これにより、NSR触媒8のコストを抑えることができる。
【0056】
図7は、本発明の第2実施形態に係るエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
図7において、本実施形態のエンジンシステム1は、上記の第1実施形態におけるECU11に代えて、ECU11Aを備えている。
【0057】
ECU11Aは、上記の吸蔵量推定部12と、上記の渋滞判定部13と、還元制御部15A(制御部)とを有している。ECU11Aは、上記の吸蔵量積算値予測部14を有していない。
【0058】
還元制御部15Aは、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないと判定された場合は、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。還元制御部15Aは、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判定された場合は、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値B以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。
【0059】
このとき、還元制御部15Aは、渋滞判定部13により走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときは、車両Sが渋滞区間に到達する前にNSR触媒8に貯蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。
【0060】
図8は、ECU11Aにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図8において、ECU11Aは、第1実施形態におけるECU11と同様に、上記の手順S101~S104を実行する。
【0061】
ECU11Aは、手順S104で車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないと判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値A以上であるかどうかを判断する(手順S105)。閾値Aは、予め決められた第1閾値である。
【0062】
ECU11Aは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値A以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S106)。ECU11Aは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Aよりも少ないと判断したときは、手順S106を実行しない。
【0063】
ECU11Aは、手順S104で車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値B以上であるかどうかを判断する(手順S111)。閾値Bは、予め決められた第2閾値である。閾値Bは、閾値Aよりも小さい値である。
【0064】
ECU11Aは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値B以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S106)。ECU11Aは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Bよりも少ないと判断したときは、手順S106を実行しない。
【0065】
以上において、吸蔵量推定部12は、上記の手順S101,S102を実行する。渋滞判定部13は、上記の手順S103,S104を実行する。還元制御部15Aは、上記の手順S105,S106,S111を実行する。
【0066】
図9は、本実施形態のエンジンシステム1におけるNOx還元処理の一例を示すタイムチャートであり、
図5に対応している。
図9において、車両Sが渋滞区間に到達する前の時刻t3に、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値Bに達すると、NOxの還元要求が行われる(
図9(d),(e)参照)。これにより、車両Sが渋滞区間に到達する前に、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。なお、
図9(d)中の2点鎖線Tは、時刻t3においてNOxの還元要求が行われない場合のNSR触媒8のNOx吸蔵量を示している。
【0067】
以上のように本実施形態においては、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していない場合は、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元され、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生している場合は、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値B以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。このため、NSR触媒8の渋滞区間走行時のNOx吸蔵量積算値を予測しなくて済む。従って、車両Sの走行ルート上に渋滞が発生している場合でも、ECU11Aによる演算処理の簡素化を図りつつ、NSR触媒8に吸蔵されたNOxの還元タイミングを適切に設定することができる。
【0068】
図10は、本発明の第3実施形態に係るエンジンシステムの制御系構成を示すブロック図である。
図10において、本実施形態のエンジンシステム1は、上記の第1実施形態におけるECU11に代えて、ECU11Bを備えている。
【0069】
ECU11Bは、上記の吸蔵量推定部12と、上記の渋滞判定部13と、道路判別部16と、上記の吸蔵量積算値予測部14と、還元制御部15B(制御部)とを有している。
【0070】
道路判別部16は、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないと判定されたときに、カーナビ情報に基づいて、車両Sが走行する道路が自動車専用道路であるかどうかを判別する。自動車専用道路としては、高速道路やバイパス道路等である。
【0071】
還元制御部15Bは、道路判別部16により車両Sが走行する道路が自動車専用道路でないと判別された場合は、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。還元制御部15Bは、道路判別部16により車両Sが走行する道路が自動車専用道路であると判別された場合は、吸蔵量推定部12により推定されたNSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値C以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを還元するようにインジェクタ7を制御する。
【0072】
図11は、ECU11Bにより実行される制御処理の手順の詳細を示すフローチャートである。
図11において、ECU11Bは、第1実施形態におけるECU11と同様に、上記の手順S101~S104を実行する。
【0073】
ECU11Bは、手順S104で車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないと判断したときは、カーナビ情報に基づいて、車両Sが自動車専用道路を走行しているかどうかを判断する(手順S121)。
【0074】
ECU11Bは、車両Sが自動車専用道路を走行していないと判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値A以上であるかどうかを判断する(手順S105)。ECU11Bは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値A以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S106)。ECU11Bは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Aよりも少ないと判断したときは、手順S106を実行しない。
【0075】
ECU11Bは、車両Sが自動車専用道路を走行していると判断したときは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値C以上であるかどうかを判断する(手順S122)。閾値Cは、予め決められた第2閾値である。閾値Cは、閾値Aよりも小さい値である。なお、閾値Cは、上記の閾値Bと等しくてもよいし、異なっていてもよい。
【0076】
ECU11Bは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値C以上であると判断したときは、NSR触媒8に吸蔵されたNOxを燃焼させて還元するようにインジェクタ7を制御する(手順S106)。ECU11Bは、NSR触媒8の現在のNOx吸蔵量が閾値Cよりも少ないと判断したときは、手順S106を実行しない。
【0077】
ECU11Bは、手順S104で車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判断したときは、第1実施形態におけるECU11と同様に、上記の手順S107~S109を実行する。
【0078】
以上において、吸蔵量推定部12は、上記の手順S101,S102を実行する。渋滞判定部13は、上記の手順S103,S104を実行する。道路判別部16は、上記の手順S121を実行する。吸蔵量積算値予測部14は、上記の手順S107を実行する。還元制御部15Bは、上記の手順S105,S106,S122,S108,S109を実行する。
【0079】
以上のように本実施形態においては、車両Sが走行する道路が自動車専用道路でない場合は、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値A以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元され、車両Sが走行する道路が自動車専用道路である場合は、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aよりも小さい閾値C以上であるときに、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが還元される。このため、車両Sが自動車専用道路を一定の時間安定した速度で走行しているときには、NSR触媒8のNOx吸蔵量が閾値Aに達する前であっても、NSR触媒8に吸蔵されたNOxが積極的に還元される。従って、NSR触媒8に吸蔵されたNOxの還元が効果的に行われるため、更なる燃費向上を図ることができる。
【0080】
図12は、
図1に示されたエンジンシステム1の変形例を概略的に示す構成図である。
図12において、本変形例のエンジンシステム1は、NSR触媒8に代えて、DPF20(DieselParticulate Filter:ディーゼル微粒子捕集フィルタ)を備えている。DPF20は、排気ガスに含まれるPM(粒子状物質)を浄化する排気浄化触媒である。PMは、排気ガスに含まれる大気汚染物質である。
【0081】
また、エンジンシステム1は、DPF20の上流側に存在するPMの状態量を検出する上流側PMセンサ21と、DPF20の下流側に存在するPMの状態量を検出する下流側PMセンサ22と、ECU23とを備えている。
【0082】
ECU23は、
図13に示されるように、捕集量推定部24(推定部)と、上記の渋滞判定部13と、捕集量積算値予測部25(積算値予測部)と、再生制御部26(制御部)とを有している。
【0083】
捕集量推定部24は、上流側PMセンサ21及び下流側PMセンサ22の検出値に基づいて、DPF20のPM捕集量を推定する。PM捕集量は、大気汚染物質の溜まり量に相当する。
【0084】
捕集量積算値予測部25は、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判定されたときに、捕集量推定部24により推定されたDPF20のPM捕集量とカーナビ情報とに基づいて、DPF20の渋滞区間走行時のPM捕集量積算値を予測する。PM捕集量積算値は、大気汚染物質の溜まり量積算値に相当する。
【0085】
再生制御部26は、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していないと判定された場合は、捕集量推定部24により推定されたDPF20のPM捕集量が閾値A以上であるときに、DPF20に捕集されたPMを燃焼させて除去するようにインジェクタ7を制御する。再生制御部26は、渋滞判定部13により車両Sの走行ルート上に渋滞が発生していると判定された場合は、捕集量積算値予測部25により予測されたDPF20の渋滞区間走行時のPM捕集量積算値が閾値A以上であるときには、DPF20に捕集されたPMを事前に燃焼させて除去するようにインジェクタ7を制御する。
【0086】
本変形例では、車両Sが渋滞区間に到達する前に、DPF20に捕集されたPMの除去、つまりDPF20の再生が行われる。従って、車両Sが低負荷の渋滞区間を走行するときには、DPF20を再生する必要がない。これにより、燃費向上を図りつつ、排気の浄化性能が向上する。
【0087】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、NOxの状態量を直接検出する上流側NOxセンサ9及び下流側NOxセンサ10の検出値に基づいて、NSR触媒8のNOx吸蔵量が推定されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、エンジン3の負荷(要求燃料噴射量)、エンジン3の回転数及び排気ガスの温度に基づいて、NSR触媒8の上流側及び下流側に存在するNOxの状態量を推定してもよい。また、同様の手法により、DPF20の上流側及び下流側に存在するPMの状態量を推定してもよい。
【0088】
また、上記実施形態では、NOxやPMの除去時に、エンジン3においてリッチ燃焼を行うようにインジェクタ7が制御されているが、特にその形態には限られず、リッチ燃焼を行うようにスロットルバルブ6を制御してもよい。
【符号の説明】
【0089】
1…エンジンシステム、2…カーナビゲーション、3…エンジン、5…排気通路、8…NSR触媒(排気浄化触媒)、12…吸蔵量推定部(推定部)、13…渋滞判定部、14…吸蔵量積算値予測部(積算値予測部)、15,15A,15B…還元制御部(制御部)、16…道路判別部、20…DPF(排気浄化触媒)、24…捕集量推定部(推定部)、25…捕集量積算値予測部(積算値予測部)、26…再生制御部(制御部)、A…閾値(第1閾値)、B…閾値(第2閾値)、C…閾値(第2閾値)、S…車両。