(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】火格子式廃棄物焼却炉及び火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物焼却方法
(51)【国際特許分類】
F23G 5/50 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
F23G5/50 C ZAB
F23G5/50 G
F23G5/50 Q
(21)【出願番号】P 2020098393
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】薄木 太一
(72)【発明者】
【氏名】中山 剛
(72)【発明者】
【氏名】戸村 啓二
(72)【発明者】
【氏名】狩野 真也
(72)【発明者】
【氏名】田口 昇
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-116252(JP,A)
【文献】特開昭63-021412(JP,A)
【文献】特開2017-145980(JP,A)
【文献】特開2012-057809(JP,A)
【文献】特開2010-216990(JP,A)
【文献】特開2018-105590(JP,A)
【文献】特開平07-004629(JP,A)
【文献】特開昭57-098719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、
前記燃焼室の下流側壁面に設けられ前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得する赤外線カメラと、
前記熱画像情報から前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を得るデータ処理装置と、
前記実測層厚値に基づき廃棄物の燃焼のための操業条件を制御する制御装置と
、を備え、
前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させ
、
前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、過去における安定燃焼期間の廃棄物の単位体積当りの保有熱量と廃棄物の層厚との対応関係から設定される
火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項2】
前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子上の廃棄物の保有熱量が所定範囲となるように設定されている
請求項1に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項3】
前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉の出熱から算出される焼却炉への入熱に基づいて求められる
請求項
1または2に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項4】
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、
前記燃焼室の下流側壁面に設けられ前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得する赤外線カメラと、
前記熱画像情報から前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を得るデータ処理装置と、
前記実測層厚値に基づき廃棄物の燃焼のための操業条件を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させ、
前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子上の廃棄物の保有熱量が所定範囲となるように設定されており、
前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉の出熱から算出される焼却炉への入熱に基づいて求められる
火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項5】
前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉へ廃棄物を投入するシュートに設けられた水分計で得られる廃棄物の水分率に基づいて求められる
請求項
1~4の
いずれか1
項に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項6】
前記制御装置により制御される操業条件は、
前記プッシャのストローク幅
および前記プッシャの送り速度
を含
む
請求項1
~5のいずれか1項に記載の火格子式廃棄物焼却炉。
【請求項7】
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物処理方法において、
前記燃焼室の下流側壁面に設けられた赤外線カメラで前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得し、
前記熱画像情報からデータ処理装置により前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を取得し、
前記実測層厚値に基づき制御装置により廃棄物の燃焼のための操業条件を制御し、
前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させ
、
前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、過去における安定燃焼期間の廃棄物の単位体積当りの保有熱量と廃棄物の層厚との対応関係から設定される火格子式廃棄物焼却炉を用いる
廃棄物焼却方法。
【請求項8】
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物処理方法において、
前記燃焼室の下流側壁面に設けられた赤外線カメラで前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得し、
前記熱画像情報からデータ処理装置により前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を取得し、
前記実測層厚値に基づき制御装置により廃棄物の燃焼のための操業条件を制御し、
前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させ、
前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子上の廃棄物の保有熱量が所定範囲となるように設定されており、
前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉の出熱から算出される焼却炉への入熱に基づいて求められる火格子式廃棄物焼却炉を用いる
廃棄物焼却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火格子式廃棄物焼却炉及び火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物焼却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から都市ごみ等の廃棄物を焼却処理する焼却炉として、火格子式廃棄物焼却炉が広く用いられている。
【0003】
この火格子式廃棄物焼却炉において、例えば、特許文献1では、炉内を赤外線カメラで撮像し、撮像された炉内画像から廃棄物の層厚情報を取得するとともに、廃棄物の乾燥情報を取得し、層厚情報と乾燥情報のうちの少なくとも一方を用いて焼却炉の操作条件を調整することで、廃棄物を安定的に燃焼させることができる。
【0004】
また、特許文献1に開示された技術によれば、廃棄物を安定的に燃焼させるための操作条件として、給塵機のプッシャによる廃棄物供給速度、火格子の廃棄物搬送速度、一次燃焼用空気の空気量及び温度を挙げている。これらの操作条件を適切に調整することで、火格子上の廃棄物の層厚、乾燥状態が所定範囲に収められるようになっている。
【0005】
ところで、特許文献1に開示された技術では、廃棄物の層厚情報に基づいて給塵機を制御する場合、給塵機による廃棄物供給速度のみ、すなわち、プッシャの往復動の速度のみを制御している。また、プッシャの送り距離(ストローク幅)は一定で、固定された二位置間を前後に往復動し、前進している間に受床上の廃棄物を押し出して燃焼室へ供給するが、プッシャの最前位置は受床前端より後方に設定されているため、プッシャの前端が最前位置まで達してもプッシャの前方の受床上には廃棄物が残存してしまうという構造的な課題を有していた。そのため、燃焼室における廃棄物の安定した燃焼状態を確保するためには、プッシャによる燃焼室への廃棄物の供給量、すなわち、火格子上の上流側に堆積した廃棄物の層厚を常に適切な範囲に維持することが求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示された技術では、プッシャの最前位置が受床前端より後方に設定されているため、廃棄物の供給量の調整は容易ではない。例えば、プッシャが最前位置に達した時点で、火格子上の上流側に堆積した廃棄物の量が適切な量よりも過小となっている場合、すなわち、廃棄物層厚が小さくなっている場合には、さらなる廃棄物の供給が早期に必要となるが、プッシャは最前位置から一旦後退するので、廃棄物を早期に供給することができない。一方、プッシャが最前位置に達する前の時点で、火格子上の上流側に堆積した廃棄物の量が適切な量に達した場合、すなわち、廃棄物層厚が適切な厚さに達した場合には、しばらくの間はそれ以上の廃棄物の供給が不要であるが、プッシャは最前位置まで前進し続けるので、廃棄物が火格子上に必要以上に供給されて、廃棄物の量が過大となってしまうおそれがある。つまり、火格子上への廃棄物の安定供給に課題を有していた。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、廃棄物の火格子上への供給状況に応じてプッシャを作動させ、適切な廃棄物層の層厚を安定して得ることができる火格子式廃棄物焼却炉及び火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物焼却方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、前述の課題は、次の火格子式廃棄物焼却炉、廃棄物焼却方法により解決される。
【0010】
<火格子式廃棄物焼却炉>
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉において、前記燃焼室の下流側壁面に設けられ前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得する赤外線カメラと、前記熱画像情報から前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を得るデータ処理装置と、前記実測層厚値に基づき廃棄物の燃焼のための操業条件を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させることとする火格子式廃棄物焼却炉。
【0011】
本発明において、前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子上の廃棄物の保有熱量が所定範囲となるように設定されていてもよい。
【0012】
本発明において、前記目標層厚範囲は、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、過去における安定燃焼期間の単位体積当りの熱量と廃棄物の層厚との対応関係から設定されていてもよい。
【0013】
本発明において、前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉の出熱から算出される焼却炉への入熱に基づいて求められるようになっていてもよい。
【0014】
本発明において、前記廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉へ廃棄物を投入するシュートに設けられた水分計で得られる廃棄物の水分率に基づいて求められるようになっていてもよい。
【0015】
本発明において、前記制御装置により制御される操業条件には、プッシャのストローク幅に加え、プッシャの送り速度も含まれていてもよい。
【0016】
<廃棄物焼却方法>
火格子を備え火格子上の廃棄物を燃焼する燃焼室と、前記燃焼室よりも上流側の位置にあり、火格子上へ向け廃棄物を押し出すプッシャを備えた給塵機とを有する火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物処理方法において、前記燃焼室の下流側壁面に設けられた赤外線カメラで前記火格子上の廃棄物の熱画像情報を取得し、前記熱画像情報からデータ処理装置により前記火格子上の上流側における廃棄物層の厚さの実測値としての実測層厚値を取得し、前記実測層厚値に基づき制御装置により廃棄物の燃焼のための操業条件を制御し、前記制御装置は、前記実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より高い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過大になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を減少させ、前記実測層厚値が前記目標層厚範囲より低い場合は、前記火格子上の廃棄物量が過小になっていると判定し、前記操業条件としての前記プッシャのストローク幅を増大させることとする火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物焼却方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、廃棄物の火格子上への供給状況に応じて給塵機のプッシャを作動させ、適切な廃棄物層の層厚を安定して得ることができる火格子式廃棄物焼却炉及び火格子式廃棄物焼却炉を用いる廃棄物焼却方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉の概要構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づき説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に係る火格子式廃棄物焼却炉の概要構成を示す縦断面図である。
図1に示される火格子式廃棄物焼却炉1(以下、「焼却炉1」という)では、燃焼室2内での廃棄物の移動方向(炉長方向)において、
図1の左側が上流側であり、
図1の右側が下流側である。
【0021】
焼却炉1は、燃焼室2と、この燃焼室2の廃棄物の移動方向の上流側(
図1の左側)で上方に配置された、廃棄物を燃焼室2内に投入するためのシュート4と、シュート4の上端に開口形成された廃棄物投入口3と、燃焼室2での廃棄物の移動方向における下流側(
図1の右側)の上方で燃焼室2に連設される廃熱ボイラ(図示せず)とを備える火格子式廃棄物焼却炉である。シュート4の下端に位置する受床4Aには、後述の給塵機4Bが設けられている。シュート4の内壁には、投入された廃棄物の水分率を測定するための水分計4Dが設けられている。
【0022】
燃焼室2の底部には、廃棄物を移動させながら燃焼させる火格子(ストーカ)5が設けられている。この火格子5は、廃棄物投入口3に近い方から、すなわち、上流側から乾燥火格子5a、燃焼火格子5b、後燃焼火格子5cの順に設けられていて、主に乾燥火格子5aと燃焼火格子5bの上に廃棄物層Wが形成されている。これらの火格子5a~5cは駆動機構(図示せず)により連動して廃棄物を前方へ向け下流側へ搬送するようになっている。
【0023】
乾燥火格子5aでは主として廃棄物の乾燥と着火が行われる。燃焼火格子5bでは主として廃棄物の熱分解、部分酸化が行われ、熱分解により発生した可燃性ガスと可燃固形分の燃焼が行われ、可燃性ガスが燃焼する際に火炎を形成する。後燃焼火格子5c上では、残った廃棄物中の可燃固形分の未燃分を完全に燃焼させる。廃棄物中の固形分が燃焼する際には、火炎は発生せず熾燃焼する。完全に燃焼した後の焼却灰は、後燃焼火格子5cよりも下流側に位置する灰排出口6より排出される。
【0024】
燃焼室2内の乾燥火格子5a、燃焼火格子5b及び後燃焼火格子5cの下部には、風箱7a,7b,7cを有する風箱群7が設けられている。ブロワ8により供給される燃焼用一次空気Pは、燃焼用一次空気供給管9を通って各風箱7a,7b,7cに供給され、各火格子5a,5b,5cを通って燃焼室2内に供給される。燃焼室2内に供給される燃焼用一次空気Pの供給量は、燃焼用一次空気供給管9に設けられた一次空気供給量調整用のダンパ11により調整される。燃焼用一次空気Pの温度は、一次空気加熱装置16における、例えばボイラで発生させた蒸気との熱交換条件を制御して調整される。火格子下から供給される燃焼用一次空気Pは、火格子5a,5b,5c上の廃棄物の乾燥及び燃焼に使われるほか、火格子5a,5b,5cの冷却作用、廃棄物の攪拌作用を有する。
【0025】
燃焼室2の下流側における出口には廃熱ボイラ(図示せず)が連設され、廃熱ボイラの入口近傍が燃焼室2から排出されるガス中の可燃性ガスの未燃分(未燃ガス)を燃焼する二次燃焼室10となっている。廃熱ボイラの一部である二次燃焼室10内では、二次燃焼用ガスが吹き込まれ、未燃ガスが二次燃焼する。二次燃焼により生じた燃焼排ガスは、廃熱ボイラにて熱回収される際に蒸気を発生させ、この蒸気が発電機での発電に用いられる。熱回収された後、廃熱ボイラから排出された燃焼排ガスは、図示しない排ガス処理装置系で消石灰等による酸性ガスの中和と、活性炭によるダイオキシン類の吸着が行われ、さらに図示しない除塵装置に送られ、中和反応生成物、活性炭、ダストなどが回収される。除塵装置で除塵され、無害化された後の燃焼排ガスは、図示しない誘引ファンにより誘引され、煙突から大気中に放出される。
【0026】
このような本実施形態に係る焼却炉1は、火格子5の下方から燃焼用一次空気Pを炉内へ供給する一次空気吹込手段、廃棄物投入口3から投入された廃棄物を受床4A上から火格子5へ向けて送り出すプッシャを備えた給塵機4B、火格子5の駆動機構(図示せず)、火格子5上の廃棄物の熱画像情報を取得する赤外線カメラ13、赤外線カメラ13が取得した熱画像情報から火格子5上の上流側における廃棄物層Wの厚さの実測値としての実測層厚値を得るデータ処理装置14、及び実測層厚値と所定の目標層厚範囲とを比較して給塵機4Bのプッシャを制御する制御装置15を有している。
【0027】
ここで、「目標層厚範囲」とは、燃焼室2内での廃棄物の安定した燃焼状態を維持するための廃棄物層Wの適正な層厚の範囲であり、予め目標範囲として設定される。目標層厚範囲は、廃棄物投入口3から投入される廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子5上の廃棄物の保有熱量が所定範囲となるように設定することができる。このとき、目標層厚範囲は、例えば、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量に基づき、火格子5上での過去における安定燃焼期間の廃棄物の単位体積当りの保有熱量と廃棄物の層厚との対応関係から設定することができる。また、廃棄物の単位体積当りの推定保有熱量は、焼却炉1の出熱から算出される焼却炉1への入熱に基づいて求めることもできるし、シュート4に設けられた水分計4Dで得られる廃棄物の水分率に基づいて求めることもできる。
【0028】
給塵機4Bは、
図1に見られるように、シュート4の下端に位置する受床4Aの直上で前後方向(
図1にて右方そして左方)に往復動するロッド状のプッシャを有している。プッシャは、押出始点(左端位置)と押出終点(右端位置)の間のストローク幅をもって往復動を繰り返しており、往動(燃焼室2へ向けた前進)時に廃棄物を押し出して燃焼室2内の上流部(
図1における左端側部分)の乾燥火格子5a上に落下供給するようになっている。給塵機4Bは、制御装置15により制御されるプッシャ駆動装置4Cに接続されている。本実施形態では、プッシャ駆動装置4Cが制御装置15により制御されることにより給塵機4Bのプッシャのストローク幅が可変となっていて、ストローク幅の変更(増減)により乾燥火格子5aへの廃棄物の供給量を調整可能となっている。
【0029】
赤外線カメラ13は、燃焼室2の下流側の側壁2Aに配設されている。この赤外線カメラ13は、側壁2Aに設けられた監視窓に近接して炉外に配設されてもよいし、水冷構造を有して炉内に配設されてもよい。赤外線カメラ13は、炉の上下方向そして炉幅方向(紙面に対して直角方向)に拡がる測定視野を有し、この測定視野における火格子上の廃棄物層Wのサーモグラフィ情報を熱画像情報として得ることができる。廃棄物層Wから放射される赤外線の波長と空間における高温ガスそして火炎から放射される赤外線の波長は異なるので、赤外線カメラ13では、測定する赤外線波長を適切に選定することにより測定視野内に火炎が存在していても廃棄物層Wのみについての温度分布に対応する熱画像情報を得ることができる。また、赤外線カメラ13による炉長方向の測定範囲を設定して、廃棄物層W全域における乾燥火格子5a上の廃棄物層Wについての熱画像情報を得ることができる。
【0030】
赤外線カメラ13には、得られた熱画像情報を処理するためのデータ処理装置14が接続されている。データ処理装置14は、赤外線カメラ13から受けた熱画像情報をデータ処理して、火格子5上の廃棄物層Wの表面位置を認識し、廃棄物層Wの形状及び寸法から廃棄物層Wの実測層厚値を得る。
【0031】
データ処理装置14は制御装置15に接続されている。制御装置15は、データ処理装置14から廃棄物層Wの実測層厚値を受けて、この実測層厚値が所定の目標層厚範囲にあるかどうかを判定し、その判定結果にしたがい、焼却炉1の操業条件を制御する。制御装置15は、プッシャ駆動装置4C、火格子5の駆動機構(図示せず)、一次空気吹込手段のダンパ11、一次空気加熱装置16を制御するための指令信号を送るように、プッシャ駆動装置4C、火格子5の駆動機構、ダンパ11、一次空気加熱装置16に接続されている。本実施形態では、制御装置15により制御される焼却炉1の操業条件として、給塵機4Bのプッシャのストローク幅、火格子5による送り速度、ダンパ11の開度、一次空気加熱装置16における熱交換条件が設定されている。
【0032】
次に、このように構成される本実施形態の装置における廃棄物層の実測層厚値の取得、給塵機等の制御について説明する。
【0033】
先ず、廃棄物投入口3からシュート4内へ廃棄物を投入すると、受床4A上に落下した廃棄物は、給塵機4Bのプッシャの往復動によりその往動時に燃焼室2内の乾燥火格子5a上に供給されて堆積される。堆積した廃棄物は、各火格子5a~5cの往復動作の往動時に、燃焼火格子5b上そして後燃焼火格子5c上へと順次移動し、各火格子上に廃棄物層Wを形成する。各火格子5a~5cの下方からは、ダンパ11で流量制御されるとともに一次空気加熱装置16で加熱された燃焼用一次空気Pが風箱7a,7b,7cを経て供給されており、これにより各火格子上の廃棄物は乾燥そして燃焼される。
【0034】
赤外線カメラ13は、廃棄物層W全域における火格子5上の廃棄物層Wの熱画像情報(サーモグラフィ情報)を得る。既述したように、廃棄物層Wから放射される赤外線の波長と空間における高温ガスそして火炎から放射される赤外線の波長は異なるので、赤外線カメラ13では、測定する波長の選定により測定視野内に火炎が存在していても廃棄物層Wのみについての温度分布に対応する熱画像情報を得ることができる。
【0035】
赤外線カメラ13で得られた測定視野における熱画像情報がデータ処理装置14へ送られると、データ処理装置14は、この熱画像情報を炉の上下方向軸(縦軸)と炉幅方向軸(横軸)による直交座標上に展開し、廃棄物層Wと空間との境界から廃棄物層Wの表面位置の炉幅方向分布を、炉長方向での全域にわたる範囲について求める。次に、データ処理装置14は、火格子5上の廃棄物層Wの表面位置の炉幅方向分布を、廃棄物層の厚さ(廃棄物層厚)の実測値としての実測層厚値に変換する。このとき、実測層厚値は、例えば、廃棄物層Wの表面位置の炉幅方向分布についての炉幅方向での平均値として算出される。
【0036】
データ処理装置14で得られた廃棄物層Wの実測層厚値は、制御装置15に送られる。制御装置15は、火格子5上の上流側における廃棄物層Wの実測層厚値に基づいて、実測層厚値が目標層厚範囲に収まるように、プッシャ駆動装置4Cを制御し、給塵機4Bのプッシャのストローク幅を調整する。
【0037】
このとき、制御装置15は、データ処理装置14で得られた実測層厚値と予め設定されている適正な目標層厚範囲とを比較し、実測層厚値が目標層厚範囲より高い場合は、火格子5上の廃棄物量が過大になっていると判定し、プッシャ駆動装置4Cを制御することで、操業条件としてのプッシャのストローク幅を減少させるように変更する。したがって、プッシャが前進中(往動中)であった場合、プッシャは変更後のストローク幅の前端位置に達すると直ちに、すなわち変更前のストローク幅の前端位置に達することなく、後退(復動)を開始する。この結果、燃焼室2への廃棄物の供給量を早期に減少させて、実測層厚値を目標層厚範囲内に収めることができる。一方、実測層厚値が目標層厚範囲より低い場合、制御装置15は、火格子5上の廃棄物量が過小になっていると判定し、操業条件としてのプッシャのストローク幅を増大させる。したがって、プッシャが前進中(往動中)であった場合、プッシャは変更後のストローク幅の前端位置に達するまで、すなわち変更前のストローク幅の前端位置に達した後も、さらに前進し続ける。この結果、燃焼室2への廃棄物の供給量を早期に増大させて、実測層厚値を目標層厚範囲内に収めることができる。
【0038】
制御装置15により制御される操業条件に、給塵機4Bのプッシャのストローク幅に加え、プッシャの送り速度も含めることとしてもよい。このようにプッシャの送り速度も制御することにより、さらに早期に実測層厚値を目標層厚範囲内に収めることが可能となる。このプッシャの送り速度は、制御装置15がプッシャ駆動装置4Cを制御することにより調整される。具体的には、実測層厚値が目標層厚範囲より高い場合、すなわち火格子5上の廃棄物量が過大となっている場合には、燃焼室2への廃棄物の供給量を減少させるために、プッシャの送り速度は減速される。一方、実測層厚値が目標層厚範囲より低い場合、すなわち火格子5上の廃棄物量が過小となっている場合には、燃焼室2への廃棄物の供給量を増大させるために、プッシャの送り速度は増速される。
【0039】
本実施形態では、制御装置15が、火格子5上の上流側における廃棄物層Wの実測層厚値に基づいて、給塵機4Bのプッシャのストローク幅以外の操業条件としての、火格子5による送り速度、ダンパ11の開度、一次空気加熱装置16における熱交換条件も制御するようなっているので、さらに早期に実測層厚値を目標層厚範囲内に収めることが可能となる。
【0040】
具体的には、実測層厚値が目標層厚範囲より高い場合、すなわち火格子5上の廃棄物量が過大となっている場合には、制御装置15は、火格子5上の廃棄物量を減少させるために、火格子5による送り速度を増速する。また、火格子5上の廃棄物の燃焼を促進するために、ダンパ11の開度ひいては一次燃焼用空気の供給量を増大させるとともに、一次空気加熱装置16における一次燃焼用空気を昇温させる。一方、実測層厚値が目標層厚範囲より低い場合、すなわち火格子5上の廃棄物量が過小となっている場合には、制御装置15は、火格子5上の廃棄物量を増大させるために、火格子5による送り速度を減速する。また、火格子5上の廃棄物の燃焼を抑制するために、ダンパ11の開度ひいては一次燃焼用空気の供給量を減少させるとともに、一次空気加熱装置16における一次燃焼用空気を降温させる。なお、火格子5による送り速度、ダンパ11の開度、一次空気加熱装置16における熱交換条件の全てが制御されることは必須ではなく、これらのうちの一部のみが制御されるようになっていてもよい。
【0041】
本実施形態では、目標層厚範囲は一定の幅をもつ範囲として設定されることとしたが、この「目標層厚範囲」は上限値と下限値が等しい場合も含んでいる。したがって、目標層厚範囲は、幅をもたない一定の目標層厚値として設定されてもよい。この場合、制御装置は、目標層厚値に対する実測層厚値の高低に基づいて火格子上の廃棄物の過大・過小を判定する。
【符号の説明】
【0042】
1 焼却炉
2 燃焼室
4 シュート
4B 給塵機
4D 水分計
13 赤外線カメラ
14 データ処理装置
15 制御装置