(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用センサ搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60R 16/02 20060101AFI20230912BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20230912BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20230912BHJP
H02G 3/30 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60R16/02 620Z
B60R11/02 A
B60R11/02 Z
H02G3/22
H02G3/30
(21)【出願番号】P 2020131910
(22)【出願日】2020-08-03
【審査請求日】2022-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】早坂 祥一
(72)【発明者】
【氏名】保海 佳佑
(72)【発明者】
【氏名】浦野 博充
(72)【発明者】
【氏名】吉川 秀一
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/074215(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0369106(US,A1)
【文献】米国特許第10099630(US,B1)
【文献】特開2003-142911(JP,A)
【文献】特開2020-030200(JP,A)
【文献】特開2005-238965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0307026(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102019126043(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
B60R 11/00 - 11/06
H02G 3/22 - 3/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GNSSアンテナと車両の外部状況を検出するためのライダーとを前記車両のルーフ上に搭載する車両用センサ搭載構造であって、
前記ルーフに形成され、前記ライダーのセンサ配線が前記ルーフの下へ入り込むための第一の配線穴と、
前記ルーフに形成され、前記GNSSアンテナのアンテナ配線が前記ルーフの下へ入り込むための第二の配線穴と、
をそれぞれ備え、
前記ライダーは、前記センサ配線と異なるセンサ電源配線を介して前記ルーフの下の電源と接続され、
前記GNSSアンテナは、アンテナ電源配線を介して前記電源と接続され、
前記センサ電源配線は、前記第一の配線穴を通って前記ライダー及び前記電源を接続しており、前記アンテナ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置され、
前記アンテナ電源配線は、前記第二の配線穴を通って前記GNSSアンテナ及び前記電源を接続しており、前記センサ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置され、
センサ曇り止め用のヒーター電力線が前記センサ配線及び前記アンテナ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置されている、車両用センサ搭載構造。
【請求項2】
前記第一の配線穴と前記第二の配線穴とは、穴用干渉低減距離以上離れて形成されている、請求項1に記載の車両用センサ搭載構造。
【請求項3】
前記ライダーと前記GNSSアンテナとは、センサ用干渉低減距離以上離れて配置されている、請求項1又は2に記載の車両用センサ搭載構造。
【請求項4】
前記センサ配線と前記アンテナ配線とは、配線用干渉低減距離以上離れて配置されている、請求項1~3のうち何れか一項に記載の車両用センサ搭載構造。
【請求項5】
前記車両のルーフはシールドとして機能するように導電材を通してグランド接続されている、請求項1~4のうち何れか一項に記載の車両用センサ搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用センサ搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用センサ搭載構造に関する技術文献として、特開2011-055694号公報が知られている。この公報には、車両のルーフ周縁の骨格部に沿ってセンサ用の配線を配置することで補強及び配置作業の効率化を図ることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両のルーフ上にセンサ等を設ける場合には、車内の演算装置や電源と接続するために配線を車内からルーフ上に通すこととなる。しかしながら、様々な配線を一まとめにしてルーフ上に通すと電気的な干渉が起き、ノイズによりセンサ精度を低下させるおそれがあった。
【0005】
そこで、本技術分野では、ルーフ上にセンサ等を設ける車両においてルーフ通過時における配線間の電気的な干渉を抑制することができる車両用センサ搭載構造を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、GNSS[Global Navigation Satellite System]アンテナと車両の外部状況を検出するためのライダーとを車両のルーフ上に搭載する車両用センサ搭載構造であって、ルーフに形成され、ライダーのセンサ配線がルーフの下へ入り込むための第一の配線穴と、ルーフに形成され、GNSSアンテナのアンテナ配線がルーフの下へ入り込むための第二の配線穴と、をそれぞれ備え、ライダーは、センサ電源配線を介してルーフの下の電源と接続され、GNSSアンテナは、アンテナ電源配線を介して電源と接続され、センサ電源配線は、第一の配線穴を通ってライダー及び電源を接続しており、アンテナ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置され、アンテナ電源配線は、第二の配線穴を通ってGNSSアンテナ及び電源を接続しており、センサ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置され、センサ曇り止め用のヒーター電力線がセンサ配線及びアンテナ配線から配線用干渉低減距離以上離間して配置されている。
【0007】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造によれば、外部センサのセンサ配線がルーフの下へ入り込むための第一の配線穴と、外部センサと比べて微弱な信号を扱うGNSSアンテナのアンテナ配線がルーフの下へ入り込むための第二の配線穴と、をそれぞれ備えるので、外部センサの配線とアンテナ配線を同じ穴に通す従来の構造と比べて、ルーフ通過時における配線間の電気的な干渉を抑制することができる。
【0008】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造において、第一の配線穴と第二の配線穴とは、穴用干渉低減距離以上離れて形成されていてもよい。
この車両用センサ搭載構造によれば、第一の配線穴と第二の配線穴とが穴用干渉低減距離以上離れて形成されているので、GNSSアンテナの微弱な信号が外部センサの信号に干渉されることを適切に抑制することができる。
【0009】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造において、外部センサとGNSSアンテナとは、センサ用干渉低減距離以上離れて配置されていてもよい。
この車両用センサ搭載構造によれば、外部センサとGNSSアンテナとがセンサ用干渉低減距離以上離れて形成されているので、GNSSアンテナの微弱な信号が外部センサの信号に干渉されることを適切に抑制することができる。
【0010】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造において、センサ配線とアンテナ配線とは、配線用干渉低減距離以上となるように配置されていてもよい。
この車両用センサ搭載構造によれば、センサ配線とアンテナ配線とが配線用干渉低減距離以上となるように配置されているので、第一の配線穴及び第二の配線穴以外の場所で配線間の電気的な干渉が生じることを抑制することができる。
【0011】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造において、車両のルーフはシールドとして機能するように導電材を通してグランド接続されていてもよい。
この車両用センサ搭載構造によれば、車両のルーフがシールドとして機能することで、センサ配線とアンテナ配線とがルーフの上下で近接する場合であっても、配線間の電気的な干渉が生じることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る車両用センサ搭載構造によれば、ルーフ上に外部センサ及びGNSSアンテナを設ける車両においてルーフ通過時における配線間の電気的な干渉を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】車両のルーフ上の外部センサの配線及びGNSSアンテナのアンテナ配線の配置の一例を示す図である。
【
図3】車内における外部センサの配線及びGNSSアンテナのアンテナ配線の配置の一例を示す図である。
【
図4】ルーフ上下の配線の関係を説明するための図である。
【
図5】外部センサのセンサ電源配線及びGNSSアンテナのアンテナ電源配線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、車両のルーフの一例を示す図である。
図1に車両(車体)1とルーフ10を示す。本実施形態に係る車両用センサ搭載構造では、例えば
図1に示すような車両のルーフ上に、GNSSアンテナと車両の外部状況を検出するための少なくとも一つの外部センサとを搭載する。
図1では外部センサ等は図示していない。車両は十分な広さのルーフを有していれば特に限定されず、乗用車であっても貨物車であってもよい。
【0017】
GNSSアンテナは、GNSS[Global Navigation Satellite System]の信号を受信可能なアンテナであれば特に限定されない。GNSS信号の周波数帯としては、例えばL1周波数(1575.42MHz)、L2周波数(1227.60MHz)、L5周波数帯(1176.45MHz)が知られている。
【0018】
外部センサとしては、カメラ、ライダー[Light Detectionand Ranging]、狭角ミリ波レーダ、全方位ミリ波レーダなどが挙げられる。カメラは画像検出によって車両の外部状況を検出するセンサである。ライダーは、光を利用して車両の外部の物体を検出する検出機器である。狭角ミリ波レーダ及び全方位ミリ波レーダは、電波(例えばミリ波)を利用して車両の外部の物体を検出する検出機器である。狭角ミリ波レーダと全方位ミリ波レーダとは検出範囲が異なっており、狭角ミリ波レーダは全方位ミリ波レーダより狭い角度の検出範囲となっている。
【0019】
外部センサとGNSSアンテナとの間で信号の干渉が生じることが知られている。外部センサの信号がGNSS信号の周波数帯の近傍となることで干渉が生じる。具体的に、カメラ及びライダーの信号として一般的に用いられるLVDS信号基準クロックを例とすると、LVDS信号基準クロックが65MHzであるとき、65MHzの18倍の周波数である1170MHzがGNSS信号のL5周波数(1176.45MHz)の近傍となるため干渉が生じ得る。65MHzの19倍の周波数である1235MHzもL2周波数(1227.60MHz)の近傍となるため干渉が生じ得る。LVDS信号基準クロックが112MHzであるとき、112MHzの14倍の周波数である1568MHzは、GNSS信号のL1周波数(1575.42MHz)の近傍となるため干渉が生じ得る。このように、車両1のルーフ10上に外部センサとGNSSアンテナとを設ける場合には信号の干渉が問題となる。
【0020】
図2は、車両のルーフ上の外部センサの配線及びGNSS[Global NavigationSatellite System]アンテナのアンテナ配線の配置の一例を示す図である。
図2に、車両1の前方向をF、車両1の右方向をRとした座標系を示す。
【0021】
図2において、ルーフ10上に設けられた外部センサの一例として、前方カメラCf、前方右側カメラCfr、前方左側カメラCfl、後方カメラCr、後方右側ライダーLrr、後方左側ライダーLrl、第1の前方右側狭角ミリ波レーダMfra、第2の前方右側狭角ミリ波レーダMfrb、第3の前方右側狭角ミリ波レーダMfrc、第1の前方左側狭角ミリ波レーダMfla、第2の前方左側狭角ミリ波レーダMflb、第3の前方左側狭角ミリ波レーダMflc、後方右側狭角ミリ波レーダMrr、及び後方左側狭角ミリ波レーダMrlを示す。また、ルーフ10上に設けられたGNSSアンテナの一例として、前方GNSSアンテナGfと後方GNSSアンテナGrとを示す。以後、外部センサを総称する場合には符号の記載を省略する。
【0022】
続いて、
図2における配線穴と配線の配置について説明する。
図2に示すように、外部センサの配線がルーフ10の下に入り込むための第一の配線穴として、前方配線穴11a、前方右側配線穴11b、前方左側配線穴11c、後方配線穴11d、後方右側配線穴11e、後方左側配線穴11fがルーフ10に設けられている。
【0023】
前方配線穴11aには、前方カメラCfに接続されたセンサ配線21fが通されている。前方右側配線穴11bには、前方右側カメラCfr、第1の前方右側狭角ミリ波レーダMfra、第2の前方右側狭角ミリ波レーダMfrb、及び第3の前方右側狭角ミリ波レーダMfrcに接続されたセンサ配線21frが通されている。
【0024】
前方左側配線穴11cには、前方左側カメラCfl、第1の前方左側狭角ミリ波レーダMfla、第2の前方左側狭角ミリ波レーダMflb、及び第3の前方左側狭角ミリ波レーダMflcに接続されたセンサ配線21flが通されている。以後、センサ配線を総称する場合には符号の記載を省略する。センサ配線は、センサ配線21frのように各センサへ向かう配線の一部が束ねられていてもよく、センサ配線21flのようにセンサ毎に分けて配置されていてもよい。
【0025】
後方配線穴11dには、後方カメラCrに接続されたセンサ配線21rが通されている。後方右側配線穴11eには、後方右側ライダーLrr及び後方右側狭角ミリ波レーダMrrに接続されたセンサ配線21rrが通されている。後方左側配線穴11fには、後方左側ライダーLrl及び後方左側狭角ミリ波レーダMrlに接続されたセンサ配線21rlが通されている。
【0026】
また、ルーフ10には、GNSSアンテナ(前方GNSSアンテナGf及び後方GNSSアンテナGr)のアンテナ配線がルーフ10の下に入り込むための第二の配線穴として中央配線穴12が設けられている。中央配線穴12には、前方GNSSアンテナGfに接続された第1アンテナ配線Gfと後方GNSSアンテナGrに接続された第2アンテナ配線Grとが通されている。
【0027】
図2に示すように、中央配線穴12と前方右側配線穴11bとは、穴用干渉低減距離DH以上離れて形成されている。前方右側配線穴11bは、センサ配線の通る第一の配線穴のうち最も第二の配線穴(中央配線穴12)に近い穴である。すなわち、本実施形態では、センサ配線の通る第一の配線穴(前方右側配線穴11bなど)とアンテナ配線が通る第二の配線穴(中央配線穴12)とは、穴用干渉低減距離DH以上離れて形成されている。
図2に、中央配線穴12を中心として穴用干渉低減距離DHを半径とする仮想円Hを示す。
【0028】
穴用干渉低減距離DHは予め決められた距離であり、例えば平面視における直線距離として計測される。穴用干渉低減距離DHは例えば127mmとすることができる。穴用干渉低減距離DHは安全係数を見込んで254mmとしてもよい。数値について例えば米国規格協会(ANSI:American National Standards Institute)の定めるTIA/EIA569を参考とすることができる。穴用干渉低減距離DHは、例えば静電誘導及び電磁誘導の影響を適切に抑制できる距離としてセンサ配線及びアンテナ配線の信号強度に応じて変更されてもよい。
【0029】
図2に示すように、前方GNSSアンテナGfと第3の前方左側狭角ミリ波レーダMflcとは、センサ用干渉低減距離DS以上離れて配置されている。第3の前方左側狭角ミリ波レーダMflcは、ルーフ10上において前方GNSSアンテナGfに最も近い外部センサである。なお、後方GNSSアンテナGrからセンサ用干渉低減距離DS未満の位置に外部センサは存在しない。すなわち、本実施形態では、外部センサ(第3の前方左側狭角ミリ波レーダMflcなど)とGNSSアンテナ(前方GNSSアンテナGf及び後方GNSSアンテナGr)とがセンサ用干渉低減距離DS以上離れて配置されている。
【0030】
センサ用干渉低減距離DSは、例えば穴用干渉低減距離DHと同じ距離とすることができる。センサ用干渉低減距離DSは、例えば外部センサのうちGNSSアンテナに最も近い端部とGNSSアンテナのうち当該外部センサに最も近い端部との直線距離として計測される。センサ用干渉低減距離DSは、穴用干渉低減距離DHより長い距離であってもよく、穴用干渉低減距離DHより短い距離であってもよい。
【0031】
図2に示すように、センサ配線21frとアンテナ配線22fとは、配線用干渉低減距離DC以上離れて配置されている。センサ配線21frは、ルーフ10上でアンテナ配線22f,22rに最も近いセンサ配線である。すなわち、本実施形態では、外部センサのセンサ配線(センサ配線21frなど)とアンテナ配線22f,22rとは、ルーフ10上の全範囲において配線用干渉低減距離DC以上離れて配置されている。
【0032】
配線用干渉低減距離DCは、例えば穴用干渉低減距離DHと同じ距離とすることができる。配線用干渉低減距離DCは、センサ配線とアンテナ配線との最短距離として計測される。配線用干渉低減距離DCは、穴用干渉低減距離DHより長い距離であってもよい。
【0033】
図3は、車内における外部センサの配線及びGNSSアンテナのアンテナ配線の配置の一例を示す図である。
図3においてルーフ10上の要素(外部センサ、センサ配線、GNSSアンテナ、アンテナ配線)は破線で示している。
【0034】
図3において、ルーフ10より下の位置に設けられた外部センサの一例として、前方ライダーLf、前方右側ライダーLfr、前方左側ライダーLfl、後方ライダーLr、前方右側全方位ミリ波レーダAMfr、前方狭角ミリ波レーダMf、後方狭角ミリ波レーダMr、前方左側全方位ミリ波レーダAMfl、後方右側全方位ミリ波レーダAMrr、及び後方左側全方位ミリ波レーダAMrlを示す。
【0035】
また、
図3に、ECU[Electronic Control Unit]30と、外部センサをECU30に接続するための車体側センサ配線31a、31b、31cと、GNSSアンテナをECU30に接続するための車体側アンテナ配線32とを示す。
【0036】
ECU30は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などを有する電子制御ユニットである。ECU30では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の演算を行う。ECU30は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0037】
ECU30は、GNSSアンテナの受信した信号を受け取るGNSS受信機の機能を有している。ECU30は、例えばGNSSアンテナの受信した信号に基づいて、車両の地図上の位置を推定する自車位置推定処理を実行する。ECU30は、外部センサの信号を演算用の信号に変換する信号変換器としての機能を有していてもよい。ECU30は、例えば外部センサの信号に基づいて、車両外部の他車両の位置などを認識する外部環境認識処理を行う。
【0038】
車体側センサ配線31aは、ルーフ10上の全ての外部センサとECU30とを接続する配線である。車体側センサ配線31aは、前方配線穴11aを通じてルーフ10上のセンサ配線21fと繋がっている。車体側センサ配線31aは、前方右側配線穴11bを通じてルーフ10上のセンサ配線21frと繋がっている。車体側センサ配線31aは、前方左側配線穴11cを通じてルーフ10上のセンサ配線21flと繋がっている。同様に、車体側センサ配線31aは、後方配線穴11d、後方右側配線穴11e、及び後方左側配線穴11fを通じて、センサ配線21r、センサ配線21rr、及びセンサ配線21rlとそれぞれ繋がっている。
【0039】
また、車体側センサ配線31aは、ルーフ10の下に位置する外部センサのうち、前方ライダーLf、前方右側ライダーLfr、前方左側ライダーLfl、前方右側全方位ミリ波レーダAMfr、前方狭角ミリ波レーダMf、及び前方左側全方位ミリ波レーダAMflと接続されている。
【0040】
車体側センサ配線31b,31cは、何れの配線穴も通らず、ルーフ10の下に位置する外部センサとのみ接続している。車体側センサ配線31bは、ECU30の右後方に延びて、ECU30と後方右側全方位ミリ波レーダAMrrとを接続する配線である。車体側センサ配線31cは、ECU30の後方に延びて、ECU30と後方狭角ミリ波レーダMr、後方ライダーLr、及び後方左側全方位ミリ波レーダAMrlとを接続する配線である。
【0041】
車体側アンテナ配線32は、GNSSアンテナGf,GrをECU30に接続する配線である。車体側アンテナ配線32は、中央配線穴12を通じてルーフ10上のアンテナ配線22f,22rと繋がっている。
【0042】
車体側アンテナ配線32は、車体側センサ配線31a、31b、31cと離間して配置されている。車体側アンテナ配線32は、車体側センサ配線31a、31b、31cから配線用干渉低減距離DC以上離間するように配置されていてもよい。
図3において、例えば高さ方向にも距離をとることで、車体側アンテナ配線32と最も近い車体側センサ配線31cとを配線用干渉低減距離DC以上離間するように配置させることができる。或いは、車体側アンテナ配線32又は車体側センサ配線31cにおいて部分的に配線間の干渉を低減するシールド部位を設けてもよい。
【0043】
次に、ルーフ10をシールドとして機能させる態様について説明する。例えば
図1に示す車両(車体)1においてルーフ10及びタイヤに繋がる部位(ピラー、サイドメンバーその他)に導電材を用いることで、ルーフ10をグランド接続させることができる。ルーフ10は、例えばスポット溶接によりフロントボディピラー及びセンターボディーピラー、クォーターパネルなどに接続されている。
【0044】
また、ルーフ10はシールドとして機能させるため導電材を用いて形成される。導電材とは、金属や導電性樹脂などの導電性を有する材料である。導電材は、ルーフ10をシールドとして機能させる程度の導電性を有していれば特に限定されない。
【0045】
図4は、ルーフ10の上下の配線の関係を説明するための図である。
図4では、説明のための例示として、センサ配線21と車体側アンテナ配線32とがルーフ10を挟んで位置する場合を示している。この場合において、ルーフ10の厚さThは、例えば1mm以上とすることができる。ルーフ10の厚さThが厚いほど減衰効果を得ることができる。ルーフ10の厚さThは、配線被覆の絶縁体の厚さと信号の周波数を踏まえて決められてもよい。
【0046】
続いて、電源配線について説明する。
図5は、外部センサのセンサ電源配線及びGNSSアンテナのアンテナ電源配線の一例を示す図である。
図5に、車体側(ルーフ10より下)に配置された電源40と、電源40に接続された車体側センサ電源配線41と、ルーフ10上の外部センサに接続されたセンサ電源配線42と、電源40に接続された車体側アンテナ電源配線43と、前方GNSSアンテナGfに接続されたアンテナ電源配線44fと、後方GNSSアンテナGrに接続されたアンテナ電源配線44rとを示す。電源40は、例えば車両1の蓄電器である。
【0047】
車体側センサ電源配線41は、前方右側配線穴11bを介してルーフ10上のセンサ電源配線42に繋がっている。センサ電源配線42は、
図4において一例として、前方右側カメラCfr、第1の前方右側狭角ミリ波レーダMfra、第2の前方右側狭角ミリ波レーダMfrb、及び第3の前方右側狭角ミリ波レーダMfrcに接続されている。なお、センサ毎に個別のセンサ電源配線が設けられていてもよい。
【0048】
センサ電源配線42は、前方GNSSアンテナGf及び後方GNSSアンテナGrの信号に対して電気的に干渉することを低減するため、アンテナ配線22f,22rから所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置されていてもよい。同様に、車体側センサ電源配線41は、車体側アンテナ配線32から所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置されていてもよい。
【0049】
車体側アンテナ電源配線43は、中央配線穴12を介してルーフ10上のアンテナ電源配線44f,44rと繋がっている。車体側アンテナ電源配線43は、外部センサの信号に対して電機的に干渉することを低減するため、車体側センサ配線31から所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置されていてもよい。同様に、アンテナ電源配線44f,44rは、センサ配線21frから所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置されていてもよい。アンテナ電源配線44f,44rは、全てのセンサ配線(センサ配線21fなど)から所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置されていてもよい。
【0050】
その他、電源配線のような大きい電流を扱う配線として、センサ曇り止め用のヒーター電力線を用いる場合には、ヒーター電力線をセンサ配線及びアンテナ配線22f,22rから所定距離(例えば配線用干渉低減距離DC)以上離間して配置させてもよい。
【0051】
以上説明した本実施形態に係る車両用センサ搭載構造によれば、外部センサのセンサ配線がルーフ10の下へ入り込むための第一の配線穴11a~11fと、外部センサと比べて微弱な信号を扱うGNSSアンテナGf,Grのアンテナ配線22f,22rがルーフの下へ入り込むための第二の配線穴(中央配線穴)12と、をそれぞれ備えるので、外部センサの配線とアンテナ配線22f,22rを同じ穴に通す従来の構造と比べて、ルーフ10の通過時における配線間の電気的な干渉を抑制することができる。
【0052】
また、この車両用センサ搭載構造によれば、第一の配線穴11a~11fと第二の配線穴12とが穴用干渉低減距離DH以上離れて形成されているので、GNSSアンテナGf,Grの微弱な信号が外部センサの信号に干渉されることを適切に抑制することができる。更に、この車両用センサ搭載構造によれば、ルーフ10上で外部センサとGNSSアンテナGf,Grとがセンサ用干渉低減距離DS以上離れて形成されているので、GNSSアンテナGf,Grの微弱な信号が外部センサの信号に干渉されることを適切に抑制することができる。
【0053】
この車両用センサ搭載構造によれば、ルーフ10上でセンサ配線とアンテナ配線22f,22rとが配線用干渉低減距離DC以上となるように配置されているので、第一の配線穴11a~11f及び第二の配線穴12以外の場所で配線間の電気的な干渉が生じることを抑制することができる。
【0054】
この車両用センサ搭載構造によれば、車両1のルーフ10がシールドとして機能することで、センサ配線とアンテナ配線22f,22rとがルーフ10の上下で近接する場合であっても、配線間の電気的な干渉が生じることを抑制することができる。
【0055】
更に、この車両用センサ搭載構造によれば、外部センサのセンサ電源配線41、42が第一の配線穴(
図4では11b)を通り、GNSSアンテナGf,Grのアンテナ電源配線43,44f,44rが第二の配線穴12を通るので、センサ電源配線41、42が第二の配線穴12を通るときと比べてセンサ電源配線41、42によるアンテナ配線22f,22rへの電気的な干渉を抑制することができると共に、アンテナ電源配線43,44f,44rが第一の配線穴11a~11fを通るときと比べてアンテナ電源配線43,44f,44rによるセンサ配線への電気的な干渉を抑制することができる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0057】
ルーフ10に対する第一の配線穴及び第二の配線穴の位置は特に限定されない。第二の配線穴はルーフ10の中央付近に位置する中央配線穴である必要はない。第二の配線穴は、ルーフ10の外周側に設けられていてもよく、第一の配線穴がルーフ10の中央付近に設けられていてもよい。
【0058】
図2,3,5に示す外部センサ、GNSSアンテナ、及び各配線の配置は一例であり、外部センサの数、種類、位置は特に限定されない。GNSSアンテナは一つでもよく、ルーフ10上の位置も限定されない。各配線は、適切な絶縁性を備えた被覆処理が施されていればセンサ用干渉低減距離DS以上離れて配置される必要はない。この場合には、第一の配置穴及び第二の配置穴についても、穴用干渉低減距離DH以上離れて形成されることは必須ではない。外部センサ又はGNSSアンテナについても、電気的な干渉を十分に抑制する構造が採用されている場合などにはセンサ用干渉低減距離DS以上離れて配置される必要はない。
【0059】
電源配線についても、設計上の必要があれば、センサ電源配線41、42が第二の配線穴12を通ってもよく、アンテナ電源配線43,44f,44rが第一の配線穴11a~11fを通ってもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…車両(車体)、10…ルーフ、11a~11f…第一の配線穴、12…第二の配線穴、21,21f,21fl,21fr,21r,21rl,21rr…センサ配線、22f,22r…アンテナ配線、40…電源、41,42…センサ電源配線、43,44f,44r…アンテナ電源配線、DS…センサ用干渉低減距離、DC…配線用干渉低減距離、DH…穴用干渉低減距離、Gf…前方GNSSアンテナ、Gr…後方GNSSアンテナ。