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特許7347369車両用ミラー装置及び車両用ミラー制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用ミラー装置及び車両用ミラー制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20230912BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230912BHJP
【FI】
B60R1/04 C
B60W60/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020140432
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035848
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2022-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰弥
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060628(JP,A)
【文献】特開2019-185496(JP,A)
【文献】特開2002-283914(JP,A)
【文献】特開2014-019241(JP,A)
【文献】特開2019-081450(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0221452(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
B60W 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員の運転操作を介して車両が走行している第1運転モード、及び乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モードの何れの運転モードであるかを取得する運転モード取得部と、
前記運転モード取得部が取得した運転モードが前記第1運転モードである場合には、車両後方へ向けられた車両用ミラーの反射率を該車両用ミラーに対する車両前方側の光量と車両後方側の光量との光量差に応じて変化させる自動防眩状態とし、前記運転モード取得部が取得した運転モードが前記第2運転モードである場合には、前記車両用ミラーの反射率を乗員が後方を視認し得る範囲で最も低い反射率である最低反射率に維持する防眩維持状態とするミラー制御部と、
前記防眩維持状態において、乗員の操作により一時的に前記自動防眩状態に切替え、所定時間後に前記防眩維持状態へ戻す一時解除部と、
を有する車両用ミラー装置。
【請求項2】
前記ミラー制御部は、自車両に対して後続車両が所定の距離よりも近づいてきた場合に防眩機能をOFFにする請求項1に記載の車両用ミラー装置。
【請求項3】
前記ミラー制御部は、前記運転モードが前記第2運転モードから前記第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミングで前記防眩維持状態から前記自動防眩状態に切替える請求項1又は2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項4】
前記ミラー制御部は、前記運転モードが前記第2運転モードから前記第1運転モードへ移行する場所よりも所定の距離だけ手前で前記防眩維持状態から前記自動防眩状態に切替える請求項1又は2に記載の車両用ミラー装置。
【請求項5】
前記ミラー制御部は、前記車両用ミラーとして車室前部の天井部に設けられたインナミラーを含む車両用ミラーの反射率を変化させる請求項1~4の何れか1項に記載の車両用ミラー装置。
【請求項6】
前記ミラー制御部は、前記車両用ミラーとして車両幅方向両側の側部に設けられた一対のアウタミラーを含む車両用ミラーの反射率を変化させる請求項1~5の何れか1項に記載の車両用ミラー装置。
【請求項7】
乗員の運転操作を介して車両が走行している第1運転モード、及び乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モードの何れの運転モードであるかを取得し、
取得した運転モードが前記第1運転モードである場合には、車両後方へ向けられた車両用ミラーの反射率を該車両用ミラーに対する車両前方側の光量と車両後方側の光量との光量差に応じて変化させる自動防眩状態とし、
取得した運転モードが前記第2運転モードである場合には、前記車両用ミラーの反射率を乗員が後方を視認し得る範囲で最も低い反射率である最低反射率に維持する防眩維持状態とし、
前記防眩維持状態において、乗員の操作により一時的に前記自動防眩状態に切替え、所定時間後に前記防眩維持状態へ戻す、
車両用ミラー制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ミラー装置及び車両用ミラー制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、後方視認用のミラーにエレクトロクロミックセルが内蔵された防眩ミラー装置が開示されている。この特許文献1の防眩ミラー装置は、車両前方と車両後方の光量差に応じた電圧をエレクトロクロミックセルに印加することで、ミラーの反射率を変化させる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-283914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運転支援機能などを備えた車両及び自動運転車両などでは、乗員の運転操作を介さずに車両が走行するため、乗員が車両後方の視認する必要がない。このような車両に上記特許文献1の構成を適用した場合、ミラーの反射率を変化させるまでの間は乗員が眩しさを感じることとなり、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、運転操作を行っていない乗員が眩しさを感じるのを抑制することができる車両用ミラー装置及び車両用ミラー制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る車両用ミラー装置は、乗員の運転操作を介して車両が走行している第1運転モード、及び乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モードの何れの運転モードであるかを取得する運転モード取得部と、前記運転モード取得部が取得した運転モードが前記第1運転モードである場合には、車両後方へ向けられた車両用ミラーの反射率を該車両用ミラーに対する車両前方側の光量と車両後方側の光量との光量差に応じて変化させる自動防眩状態とし、前記運転モード取得部が取得した運転モードが前記第2運転モードである場合には、前記車両用ミラーの反射率を乗員が後方を視認し得る範囲で最も低い反射率である最低反射率に維持する防眩維持状態とするミラー制御部と、前記防眩維持状態において、乗員の操作により一時的に前記自動防眩状態に切替え、所定時間後に前記防眩維持状態へ戻す一時解除部と、を有する。
【0007】
請求項1に係る車両用ミラー装置では、運転モード取得部は、車両の運転モードを取得する。ここでは、運転モード取得部は、乗員の運転操作を介して車両が走行している第1運転モード、及び乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モードの何れの運転モードであるか取得する。
【0008】
また、ミラー制御部は、車両後方へ向けられた車両用ミラーの反射率を変化する。ここで、運転モードが第1運転モードである場合、ミラー制御部は、車両用ミラーに対する車両前方側の光量と車両後方側の光量との光量差に応じて車両用ミラーの反射率を変化させる自動防眩状態とする。これにより、乗員が運転操作をしている場合に、後続車のヘッドライトなどに照らされた場合であっても、乗員が眩しく感じるのを抑制することができる。
【0009】
一方、運転モードが第2運転モードである場合、ミラー制御部は、車両用ミラーの反射率を光量差が所定範囲内である通常状態よりも低い状態に維持する防眩維持状態とする。これにより、車両後方の光量にかかわらず車両用ミラーを防眩状態とすることができる。また、車両用ミラーの反射率が変化しないため、乗員に対して煩わしさを与えずに済む。なお、ここでいう「乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モード」とは、乗員が操舵及び加減速を含む全ての操作を行うことなく車両が走行する自動運転モードに限定されない。すなわち、乗員が後方の視認を必要としない範囲で車両の運転支援機能の作動状態を維持するために所定の操作を行っている運転モードを含む。例えば、第2運転モードは、運転支援機能の作動状態を維持するために乗員がステアリングホイールを把持している運転モードを含む。また、例えば、第2運転モードは、運転支援機能の作動状態を維持するために乗員がアクセルペダルを踏んでいる運転モードを含む。
【0011】
さらに、自動防眩状態において、車両用ミラーの反射率が通常反射率と最低反射率との間で連続的に変化するため、車両用ミラーの反射率が極端に下がることがない。これにより、車両用ミラーの反射率が二段階で変化する構成などと比較して、後方視認性能と防眩性能の両立を図ることができる。また、乗員が後方を視認する必要がない防眩維持状態では、車両用ミラーの反射率を最低反射率に維持することで、乗員が後続車両を意識せずに済む。
さらに、車両用ミラーが防眩維持状態の場合であっても、一時解除部が一時的に自動防眩状態に切替えることで、後席を含む後方の状況を確認することができる。
請求項2に係る車両用ミラー装置は、請求項1において、前記ミラー制御部は、自車両に対して後続車両が所定の距離よりも近づいてきた場合に防眩機能をOFFにする。
【0012】
請求項3に係る車両用ミラー装置は、請求項1又は2において、前記ミラー制御部は、前記運転モードが前記第2運転モードから前記第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミングで前記防眩維持状態から前記自動防眩状態に切替える。
【0013】
請求項3に係る車両用ミラー装置では、乗員が運転操作を行う第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミングで自動防眩状態に切替えることにより、運転操作を行う前に後方の状況を視認することができる。
【0014】
請求項4に係る車両用ミラー装置は、請求項1又は2において、前記ミラー制御部は、前記運転モードが前記第2運転モードから前記第1運転モードへ移行する場所よりも所定の距離だけ手前で前記防眩維持状態から前記自動防眩状態に切替える。
【0015】
請求項4に係る車両用ミラー装置では、乗員が運転操作を行う第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の距離だけ手前で自動防眩状態に切替えることにより、運転操作を行う前に後方の状況を視認することができる。
【0018】
請求項に係る車両用ミラー装置は、請求項1~の何れか1項において、前記ミラー制御部は、前記車両用ミラーとして車室前部の天井部に設けられたインナミラーを含む車両用ミラーの反射率を変化させる。
【0019】
請求項に係る車両用ミラー装置では、運転モードが第1運転モードである場合、ミラー制御部は、車両前方と車両後方の光量差に応じてインナミラーの反射率を変化させる自動防眩状態とする。一方、運転モードが第2運転モードである場合、ミラー制御部は、インナミラーを防眩維持状態とすることで、例えば、後続車両のヘッドライトの光がインナミラーに反射して乗員が眩しく感じるのを抑制することができる。
【0020】
請求項に係る車両用ミラー装置は、請求項1~の何れか1項において、前記ミラー制御部は、前記車両用ミラーとして車両幅方向両側の側部に設けられた一対のアウタミラーを含む車両用ミラーの反射率を変化させる。
【0021】
請求項に係る車両用ミラー装置では、運転モードが第1運転モードである場合、ミラー制御部は、車両前方と車両後方の光量差に応じてアウタミラーの反射率を変化させる自動防眩状態とする。一方、運転モードが第2運転モードである場合、ミラー制御部は、アウタミラーを防眩維持状態とすることで、例えば、後続車両のヘッドライトの光がアウタミラーに反射して乗員が眩しく感じるのを抑制することができる。
【0022】
請求項に係る車両用ミラー制御方法は、乗員の運転操作を介して車両が走行している第1運転モード、及び乗員の運転操作を介さずに車両が走行している第2運転モードの何れの運転モードであるかを取得し、取得した運転モードが前記第1運転モードである場合には、車両後方へ向けられた車両用ミラーの反射率を車両前方と車両後方の光量差に応じて変化させる自動防眩状態とし、取得した運転モードが前記第2運転モードである場合には、前記車両用ミラーの反射率を乗員が後方を視認し得る範囲で最も低い反射率である最低反射率に維持する防眩維持状態とし、前記防眩維持状態において、乗員の操作により一時的に前記自動防眩状態に切替え、所定時間後に前記防眩維持状態へ戻す。
【0023】
請求項に係る車両用ミラー制御方法では、乗員が運転操作をしている第1運転モードでは、車両用ミラーを自動防眩状態とすることで、後続車のヘッドライトなどに照らされた場合であっても、乗員が眩しく感じるのを抑制することができる。また、乗員が運転操作をしない第2運転モードでは、車両用ミラーを防眩維持状態とすることで、車両後方の光量にかかわらず車両用ミラーを防眩状態とすることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係る車両用ミラー装置及び車両用ミラー制御方法によれば、運転操作を行っていない乗員が眩しさを感じるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】実施形態に係る車両用ミラー装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】実施形態における車両の車室前部を車両後方側から見た状態を概略的に示す概略図である。
図3】実施形態に係る車両用ミラー装置の機能構成を示すブロック図である。
図4】実施形態におけるミラー制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】実施形態におけるミラー制御処理の流れの他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態に係る車両用ミラー装置10について、図面を参照して説明する。
【0027】
(車両用ミラー装置10のハードウェア構成)
図1に示されるように、本実施形態の車両用ミラー装置10は、ミラーECU(Electronic Control Unit)12を含んで構成されている。
【0028】
ミラーECU12は、CPU(Central Processing Unit:プロセッサ)14、ROM(Read Only Memory)16、RAM(Random Access Memory)18、ストレージ20及び入出力インターフェース22を含んで構成されている。各構成は、内部バス24を介して相互に通信可能に接続されている。
【0029】
CPU14は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU14は、ROM16又はストレージ20からプログラムを読み出し、RAM18を作業領域としてプログラムを実行する。また、CPU14は、ROM16又はストレージ20に記録されているプログラムに従って、上記各構成の制御および各種の演算処理を行う。
【0030】
ROM16は、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAM18は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ20は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを格納する非一時的記録媒体である。本実施形態では、ROM16又はストレージ20には、ミラー制御処理を行うためのミラー制御プログラム等が格納されている。また、入出力インターフェース22には各種の入出力装置が接続される。
【0031】
ここで、ミラーECU12は、自動運転ECU30と電気的に接続されている。自動運転ECU30は、ミラーECU12と同様に、図示しないCPU、ROM、RAM、ストレージ及び入出力インターフェースなどを含んで構成されている。
【0032】
自動運転ECU30には、車両の現在の状況を検出するセンサ群32および車両の走行を制御するアクチュエータ群34が接続されている。センサ群32には、カメラ、レーダ、ライダ(LIDAR;Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)、GPS(global positioning system)センサなどの各種センサのうちの複数のセンサが含まれる。カメラは、車両の周辺を撮影する。レーダは、電波により車両の周辺の物体との距離および方向を検出する。ライダは、レーザ光により車両の周辺の物体との距離および方向を検出する。GPSセンサは、車両の現在位置を検出する。この他に、センサ群32は、乗員の状態を検出するセンサを含んで構成されている。例えば、乗員の心拍数及び覚醒度などを検出する生体センサを含んでセンサ群32を構成してもよい。
【0033】
アクチュエータ群34は、車両の加減速を調整する加減速アクチュエータおよび車両の操舵装置を駆動する操舵アクチュエータを含んでいる。自動運転ECU30には、センサ群32によって検出された車両の現在の状況に応じてアクチュエータ群34の作動を制御することで、車両の自動運転を行う。なお、自動運転ECU30の記憶部には、車両が走行を予定している経路を表す予定経路が記憶されており、自動運転ECU30は、記憶部に記憶された予定経路に沿って車両を走行させる。
【0034】
ミラーECU12には、車両用ミラーとしてのインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48が接続されている。また、ミラーECU12には、前側光量検出センサ36及び後側光量検出センサ38が接続されている。
【0035】
図2に示されるように、インナミラー40は、車室前部の天井部に設けられており、車両後方へ向けられている。また、本実施形態のインナミラー40は一例として、下部に第1インジケータ40A及び第2インジケータ40Bを備えている。第1インジケータ40Aは、インナミラー40が自動防眩状態である場合に点灯するように構成されている。また、第2インジケータ40Bは、インナミラー40が防眩維持状態である場合に点灯するように構成されている。自動防眩状態及び防眩維持状態については後述する。
【0036】
右アウタミラー44は、車両の右側部に設けられており、車両後方へ向けられている。一方、左アウタミラー48は、車両の左側部に設けられており、車両後方へ向けられている。
【0037】
図1に示されるように、インナミラー40には、反射率切替機構42が設けられている。また、右アウタミラー44には、反射率切替機構46が設けられている。さらに、左アウタミラー48には、反射率切替機構50が設けられている。
【0038】
反射率切替機構42、反射率切替機構46及び反射率切替機構50は、同様の構造とされており、例えば、ガラス面と反射面との間に設けたエレクトロクロミック材料に電圧を印加することで、無段階にミラーの反射率を変化させる構造とされている。この構造では、車両前方側の光量と車両後方側の光量との光量差に応じてエレクトロクロミック材料に印加する電圧を変化させることで、防眩の度合いを変化させることができる。
【0039】
なお、他の構造を採用してミラーの反射率を切替えてもよく、例えば、ミラーの裏面反射を利用して、ミラーの表面で光を反射させる場合と、ミラーの裏面で光を反射させる場合とを切替える構成としてもよい。
【0040】
前側光量検出センサ36は、例えば、インナミラー40の車両前方側の面に設けられており、車両前方側の光量を検出する。また、後側光量検出センサ38は、例えば、インナミラー40の車両後方側の面に設けられており、車両後方側の光量を検出する。
【0041】
なお、本実施形態では一例として、前側光量検出センサ36及び後側光量検出センサ38からの検出結果に基づいて、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を切替える構成としたがこれに限定されない。例えば、インナミラー40右アウタミラー44及び左アウタミラー48のそれぞれに前側光量検出センサと後側光量検出センサとを設けてもよい。
【0042】
(車両用ミラー装置10の機能構成)
車両用ミラー装置10は、上記のハードウェア資源を用いて、各種の機能を実現する。車両用ミラー装置10が実現する機能構成について図3を参照して説明する。
【0043】
図3に示されるように、車両用ミラー装置10は、機能構成として、運転モード取得部52、光量差取得部54、反射率切替部56、ミラー制御部58及び一時解除部60を含んで構成されている。各機能構成は、ミラーECU12のCPU14がプログラムを読み出して実行することにより実現される。
【0044】
運転モード取得部52は、車両の運転モードが第1運転モード及び第2運転モードの何れの運転モードであるか取得する。ここで、本実施形態における第1運転モードは、乗員の運転操作を介して車両が走行している運転モードを指す。また、本実施形態における第2運転モードは、乗員の運転操作を介さずに車両が走行している運転モードを指す。
【0045】
光量差取得部54は、車両前方と車両後方の光量差を取得する。具体的には、光量差取得部54は、前側光量検出センサ36の検出結果及び後側光量検出センサ38の検出結果から算出された光量差を取得する。
【0046】
反射率切替部56は、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を切替える。具体的には、反射率切替部56は、光量差取得部54が取得した光量差が大きくなるほど、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を下げる。すなわち、反射率切替部56は、光量差取得部54が取得した光量差が大きくなるほど、防眩の度合いを高める。このように、光量差に応じてインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を切替える状態を自動防眩状態とする。
【0047】
一方、反射率切替部56は、光量差にかかわらずに、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を光量差が所定範囲内である通常状態よりも低い状態に維持する場合がある。この状態を防眩維持状態とする。本実施形態では一例として、自動防眩状態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を防眩度合いが低い通常反射率と防眩度合いが高い最低反射率との間で連続的に変化させる。また、防眩維持状態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を最低反射率に維持する。ここでいう最低反射率とは、乗員が後方を視認し得る範囲で最も低い反射率を指しており、最低反射率であってもインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の機能を備えている。
【0048】
ミラー制御部58は、運転モード取得部52が取得した運転モードが第1運転モードである場合には、自動防眩状態とし、運転モード取得部52が取得した運転モードが第2運転モードである場合には、防眩維持状態とする。
【0049】
また、本実施形態では一例として、ミラー制御部58は、運転モードが第2運転モードから第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミングで防眩維持状態から自動防眩状態に切替える。例えば、自動運転ECU30の記憶部に記憶されている予定経路に基づいて、自動運転を終了する場合、自動運転を終了する予定時刻よりも所定の時間だけ前のタイミングで防眩維持状態から自動防眩状態に切替える。
【0050】
なお、これに限らず、ミラー制御部58は、運転モードが第2運転モードから第1運転モードへ移行する場所よりも所定の距離だけ手前で防眩維持状態から自動防眩状態に切替える構成としてもよい。このようにすれば、乗員が運転操作を行う前に後方の状況を視認することができる。
【0051】
一時解除部60は、防眩維持状態で車両が走行している場合において、乗員の操作により一時的にインナミラー40を自動防眩状態に切替える。具体的には、ステアリングホイールの周辺又はインストルメントパネルの周辺に図示しないスイッチが設けられており、乗員がこのスイッチを操作することで、防眩維持状態を解除する信号がミラーECU12へ送られる。そして、一時解除部60は、ミラー制御部58によって一時的にインナミラー40を防眩維持状態から自動防眩状態へ切替える。本実施形態では一例として、インナミラー40を自動防眩状態に切替えた後、所定の時間が経過すると、再び防眩維持状態に戻すように構成されている。
【0052】
(作用)
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0053】
(ミラー制御処理の一例)
図4は、車両用ミラー装置10によるミラー制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。このミラー制御処理は、ミラーECU12のCPU14がROM16又はストレージ20からプログラムを読み出して、RAM18に展開して実行することによって実行される。また、本実施形態のミラー制御処理は、車両の運転が開始されてから終了するまでの間、所定の間隔で実行される。
【0054】
図4に示されるように、CPU14は、ステップS102で車両の運転モードを取得する。具体的には、CPU14は、運転モード取得部52の機能により車両の運転モードを取得する。
【0055】
次に、CPU14は、ステップS104で運転モードが第2運転モードであるか否かについて判定する。CPU14は、自動運転ECU30によって乗員の運転操作を介さずに車両が走行している場合は、ステップS104の判定が肯定されてステップS206の処理へ移行する。一方、CPU14は、自動運転ECU30による走行が行われていない場合は、ステップS104の判定が否定されてステップS112の処理へ移行する。
【0056】
CPU14は、ステップS106で防眩維持状態へ移行する。具体的には、CPU14は、ミラー制御部58の機能により、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を最低反射率に維持する。このとき、図2に示されるインナミラー40の第2インジケータ40Bが点灯されるため、乗員は、防眩維持状態であることを視認することができる。また、既に防眩維持状態に設定されている場合には、この防眩維持状態を継続する。
【0057】
図4に示されるように、CPU14は、ステップS104の判定が否定された場合は、ステップS112の処理へ移行して自動防眩状態へ移行する。具体的には、CPU14は、ミラー制御部58の機能により、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を光量差に応じて切替える。このとき、図2に示されるインナミラー40の第1インジケータ40Aが点灯されるため、乗員は、自動防眩状態であることを視認することができる。また、既に自動防眩状態に設定されている場合には、この自動防眩状態を継続する。
【0058】
図4に示されるように、CPU14は、ステップS108で一時解除の操作が有ったか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、乗員の操作によって防眩維持状態を一時的に解除する操作が行われたことを検知した場合には、ステップS108の判定が肯定されてステップS110の処理へ移行する。一方、CPU14は、一時解除の操作を検知しなかった場合には、ミラー制御処理を終了する。
【0059】
CPU14は、ステップS110で所定時間だけ自動防眩状態へ移行する。具体的には、CPU14は、一時解除部60の機能により、一時的にインナミラー40を防眩維持状態から自動防眩状態へ切替える。また、所定時間後にインナミラー40を自動防眩状態から防眩維持状態へ戻す。そして、CPU14は、ミラー制御処理を終了する。
【0060】
以上のように、本実施形形態に係る車両用ミラー装置10では、運転モードが第1運転モードである場合、ミラー制御部58は、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48を自動防眩状態とする。これにより、乗員が運転操作をしている場合に、後続車のヘッドライトなどに照らされた場合であっても、乗員が眩しく感じるのを抑制することができる。
【0061】
一方、運転モードが第2運転モードである場合、ミラー制御部は、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48を防眩維持状態とする。これにより、車両後方の光量にかかわらずインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48を防眩状態とすることができる。また、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率が変化しないため、乗員に対して煩わしさを与えずに済む。このように、運転操作を行っていない乗員が眩しさを感じるのを抑制することができる。
【0062】
また、本実施形態では、自動防眩状態において、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率が通常反射率と最低反射率との間で連続的に変化する。このため、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率が二段階で変化する構成などと比較して、後方視認性能と防眩性能の両立を図ることができる。一方、乗員が後方を視認する必要がない防眩維持状態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を最低反射率に維持することで、乗員が後続車両を意識せずに済む。
【0063】
さらに、本実施形態では、ミラー制御部58は、乗員が運転操作を行う第1運転モードへ移行するタイミングよりも所定の時間だけ前のタイミングで自動防眩状態に切替えるため、乗員が運転操作を行う前に後方の状況を視認することができる。
【0064】
さらにまた、本実施形態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48が防眩維持状態の場合であっても、一時解除部60が一時的に自動防眩状態に切替えることで、前席の乗員が後席を含む後方の状況を確認することができる。
【0065】
以上、実施形態に係る車両用ミラー装置10について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、図5に示されるミラー制御処理を行ってもよい。
【0066】
(変形例)
図5は、車両用ミラー装置10によるミラー制御処理の流れの他の例を示すフローチャートである。このミラー制御処理は、ミラーECU12のCPU14がROM16又はストレージ20からプログラムを読み出して、RAM18に展開して実行することによって実行される。また、本実施形態のミラー制御処理は、車両の運転が開始されてから終了するまでの間、所定の間隔で実行される。
【0067】
図5に示されるように、ステップS102、ステップS104及びステップS106は第1実施形態と同様の処理となっている。次に、CPU14は、ステップS202で後続車との距離が近いか否かについて判定する。具体的には、CPU14は、自動運転ECU30を通じてセンサ群32で検出された車両周辺の情報に基づいて、後続車両と自車両との距離を取得する。そして、CPU14は、自車両に対して後続車両が所定の距離よりも近づいてきた場合、ステップS202の判定が肯定されてステップS204の処理へ移行する。一方、CPU14は、自車両に対して後続車両が所定の距離よりも離れた位置を走行している場合、ミラー制御処理を終了する。
【0068】
CPU14は、ステップS204で防眩機能をOFFにする。このとき、図2に示される第1インジケータ40A及び第2インジケータ40Bの両方が消灯した状態となる。そして、CPU14は、ミラー制御処理を終了する。
【0069】
以上の変形例に係るミラー制御処理では、後続車両が近づいた場合に防眩機能をOFFにすることで、後続車両のヘッドライトからの光がインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48に反射して乗員が眩しさを感じる。これにより、乗員が後続車両の接近を直感的に把握することができる。すなわち、アラームなどの音声のみで知らせる場合と比較して、後面衝突の可能性があることを直感的に知らせることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、防眩維持状態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を最低反射率に維持したが、これに限定されない。例えば、防眩維持状態で、インナミラー40の反射率のみを最低反射率に維持する構成としてもよい。
【0071】
さらに、防眩維持状態では、インナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を最低反射率よりも高い反射率に維持してもよい。すなわち、防眩維持状態では、乗員が眩しくない程度にインナミラー40、右アウタミラー44及び左アウタミラー48の反射率を下げた状態を維持すればよく、通常反射率と最低反射率との中間の反射率に維持してもよい。
【0072】
さらにまた、上記実施形態でCPU14がソフトウェア(プログラム)を読み込んで実行した処理を、CPU14以外の各種のプロセッサが実行してもよい。この場合のプロセッサとしては、FPGA(Field-Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なPLD(Programmable Logic Device)、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが例示される。また、ミラー制御処理を、これらの各種のプロセッサのうちの1つで実行してもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGA、及びCPUとFPGAとの組み合わせなど)で実行してもよい。また、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路である。
【0073】
また、上記実施形態では、ストレージ20を非一時的記録媒体であるメモリとしたが、これに限定されない。例えば、CD(Compact Disk)、DVD(Digital Versatile Disk)、及びUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの非一時的記録媒体を記録部としてもよい。この場合、これらの記録媒体に各種プログラムを格納してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10 車両用ミラー装置
40 インナミラー(車両用ミラー)
44 右アウタミラー(車両用ミラー)
48 左アウタミラー(車両用ミラー)
52 運転モード取得部
58 ミラー制御部
60 一時解除部
図1
図2
図3
図4
図5