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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】インフラセンサ装置の位置較正方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/91 20060101AFI20230912BHJP
   G01S 7/40 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01S13/91
G01S7/40 104
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020143585
(22)【出願日】2020-08-27
(65)【公開番号】P2022038880
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】弘畑 幹鐘
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2020/0264275(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0111358(US,A1)
【文献】特開2009-014481(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/51
G01S 13/00 - G01S 13/95
G01S 17/00 - G01S 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、
前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、を有するインフラセンサの位置較正方法であって、
前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出し、
前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を前記ローカル推定位置情報を入力とする推論器により算出し、
前記第1のグローバル推定位置情報と前記第2のグローバル推定位置情報との差分から求められる判断値が予め設定した閾値を超えたことに応じて、前記ローカル推定位置情報から算出される前記第2のグローバル推定位置情報を算出する前記推論器を、前記第1のグローバル推定位置情報を教師データとして機械学習させ、前記機械学習後の前記第2のグローバル推定位置情報から前記ローカル推定位置情報を減算した値により、前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を較正し、前記機械学習の学習結果に基づき前記閾値が小さくなるように更新する、インフラセンサ装置の位置較正方法。
【請求項2】
検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、
前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、を有するインフラセンサの位置較正方法であって、
前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出し、
前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を前記ローカル推定位置情報を入力とする推論器により算出し、
前記第1のグローバル推定位置情報に対する前記第2のグローバル推定位置情報の信頼度である判断値が予め設定した閾値よりも高い前記信頼度である場合には前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を維持し、前記判断値が前記閾値以下の前記信頼度である場合には前記ローカル推定位置情報から算出される前記第2のグローバル推定位置情報を前記第1のグローバル推定位置情報を教師データとして前記推論器を機械学習させ、
前記機械学習後の前記第2のグローバル推定位置情報から前記ローカル推定位置情報を減算した値により前記第3のグローバル推定位置情報を較正し、
前記機械学習の学習結果に基づき前記閾値が小さくなるように更新する、インフラセンサ装置の位置較正方法。
【請求項3】
前記センサユニットは、前記検出対象範囲内を撮影する光学カメラ、無線信号により前記移動体の位置情報を取得するミリ波レーダー、画像情報と距離情報とを含む情報を取得するLiDARの少なくともいずれか1つを含む請求項1又は2に記載のインフラセンサ装置の位置較正方法。
【請求項4】
前記移動体情報には、前記移動体を特定するデバイス識別情報が含まれ、
前記ローカル推定位置情報は、前記ローカル推定位置情報を算出する際に特定される前記移動体の種類と前記デバイス識別情報が一致した移動体に対して算出される請求項1又は2に記載のインフラセンサ装置の位置較正方法。
【請求項5】
前記第3のグローバル推定位置情報と、自機を特定するデバイス識別情報と、を紐付けて上位システムに送信する請求項1又は2に記載のインフラセンサ装置の位置較正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフラセンサ装置の位置較正方法、インフラセンサ装置、インフラセンサシステム及び位置較正プログラムに関し、例えば、道路を通行する移動体を検出するインフラセンサ装置の位置較正方法、インフラセンサ装置、インフラセンサシステム及び位置較正プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、道路等の状況を把握し、路状を移動する移動体に対して様々な通知を行う、或いは、交通渋滞の解消を目的とする各種制御を行うことが行われている。このような交通システムでは、道路の状況を把握するためにインフラセンサが用いられる。インフラセンサは、光学カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等を用いて検出対象範囲内の移動体を検出する。そして交通システムでは、インフラセンサを用いて収集した移動体の情報に基づき様々な制御を行う。このとき、移動体の位置を把握するためには、インフラセンサの位置を上位システムが正しく把握している必要がある。そこで、インフラセンサ等の設置センサの位置情報を自動的にキャリブレーションする技術が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1に開示されている移動体位置推定システムは、測定領域内を移動する移動体の位置を推定するシステムであって、測定領域内に互いに分散して配置され、互い移動体までの距離を3個以上の距離センサで計測し、位置推定算出装置にて、距離センサそれぞれから任意の時刻のセンサ計測値を取得し蓄積し、取得蓄積された各距離センサのセンサ計測値に対して距離に応じた信頼性の度合いを示す距離信頼度を付与し、取得蓄積されたセンサ計測値のうち信頼度の高い計測値を採用して距離センサ及び移動体それぞれの位置を推定するようにし、位置推定の処理は、移動体の移動前後の位置それぞれの2個以上の距離センサから得られるセンサ計測値を用いて各距離センサの位置のキャリブレーション及び前記移動体の移動位置の推定を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-127650号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、測定領域内に距離センサを分散して複数配置しなければない問題がある。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、インフラセンサ装置の設置位置情報の較正を容易にすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるインフラセンサ装置の位置較正方法の一態様は、検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、を有するインフラセンサの位置較正方法であって、前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出し、前記ローカル推定位置情報に基づき前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を算出し、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第2のグローバル推定位置情報との差分から求められる判断値が予め設定した閾値を超えたことに応じて、前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第3のグローバル推定位置情報との差分が少なくなるような較正処理の結果に基づき較正する。
【0008】
本発明にかかるインフラセンサ装置の一態様は、検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出する移動体抽出部と、前記ローカル推定位置情報に基づき前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を算出する移動体位置算出部と、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第2のグローバル推定位置情報との差分から求められる判断値が予め設定した閾値を超えたことに応じて、前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第3のグローバル推定位置情報との差分が少なくなるような較正処理の結果に基づき較正するセンサ位置算出部と、を有する。
【0009】
本発明にかかるインフラセンサシステムの一態様は、検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出する移動体抽出部と、前記ローカル推定位置情報に基づき前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を算出する移動体位置算出部と、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第2のグローバル推定位置情報との差分から求められる判断値が予め設定した閾値を超えたことに応じて、前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第3のグローバル推定位置情報との差分が少なくなるような較正処理の結果に基づき較正するセンサ位置算出部と、前記第3のグローバル推定位置情報と、自機を特定するデバイス識別情報とを、紐付けたインフラセンサ位置情報を保持し、上位システムに保持している前記インフラセンサ位置情報を送信するセンサ位置情報保持部と、を有する。
【0010】
本発明にかかる位置較正プログラムの一態様は、検出対象範囲内の移動体を検出するセンサユニットと、前記移動体と通信を行い、前記移動体から前記移動体が地理的位置として認識しているグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報を含む移動体情報を受信する無線受信部と、前記センサユニットの自己位置を算出する演算部と、を有するインフラセンサシステムの前記演算部において実行される位置較正プログラムであって、前記センサユニットにより取得された情報から前記移動体の前記検出対象範囲内の位置を示すローカル推定位置情報を抽出し、前記ローカル推定位置情報に基づき前記移動体の前記地理的位置として推定される第2のグローバル推定位置情報を算出し、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第2のグローバル推定位置情報との差分から求められる判断値が予め設定した閾値を超えたことに応じて、前記センサユニットの地理的位置として保持している第3のグローバル推定位置情報を、前記第1のグローバル推定位置情報と前記第3のグローバル推定位置情報との差分が少なくなるような較正処理の結果に基づき較正する。
【0011】
本発明にかかるインフラセンサ装置の位置較正方法、インフラセンサ装置、インフラセンサシステム及び位置較正プログラムは、検出対象範囲内を通過する移動体から得られるグローバル位置情報を用いてインフラセンサの地理的位置を示す位置情報を較正する。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるインフラセンサ装置の位置較正方法、インフラセンサ装置、インフラセンサシステム及び位置較正プログラムでは、インフラセンサ装置の位置情報の較正を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1にかかる交通システムのインフラセンサ装置に関する構成図である。
図2】実施の形態1にかかるインフラセンサシステムのブロック図である。
図3】実施の形態1にかかるインフラセンサ装置における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートである。
図4】実施の形態2にかかるインフラセンサシステムのブロック図である。
図5】実施の形態2にかかるインフラセンサ装置における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートである。
図6】実施の形態3にかかるインフラセンサシステムのブロック図である。
図7】実施の形態3にかかるインフラセンサ装置における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0015】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0016】
実施の形態1
まず、図1に実施の形態1にかかる交通システムのインフラセンサ装置に関する構成図を示す。以下の説明では、交通システムで道路状況を把握するインフラセンサシステムで利用されるインフラセンサの位置の較正方法に関するものである。
【0017】
図1に示すようにインフラセンサシステムでは、インフラセンサ装置10を用いる。インフラセンサ装置10は、道路の脇に設置される。そして、インフラセンサをシステム上利用する為には、設置場所の地理的位置を示す位置情報が正確でなければならない。このインフラセンサ装置10は、工事することで備え付けられるが、周辺環境や設置工事の工程上狙った位置に正確に設置できない問題がある。そのため、インフラセンサ装置10は、設置後に位置の較正をして、正確な位置情報をシステムに登録する必要がある。位置較正の1つの方法としては、道路を封鎖して較正機器を利用した較正を行うことが考えられるが、道路封鎖等の交通インフラを停止する必要ある問題がある。そこで、以下では、道路封鎖等行うことなくインフラセンサ装置10の較正を行う方法について説明する。
【0018】
図1に示すように、インフラセンサ装置10は、光学カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)等を用いて検出対象範囲DAに存在する人、自転車、自動車等の移動体を検出する。図1では、検出対象範囲DAに人H,自動車C1、C2が存在する例を示した。インフラセンサ装置10は、検出対象範囲DAに存在する移動体の位置情報及び移動体の特徴情報を上位システムに送信する。
【0019】
また、実施の形態1にかかるインフラセンサ装置10は、検出対象範囲DAに存在する人H、自動車C1、C2等の移動体から移動体が保有する推定自己位置情報を通信により取得する。この推定自己位置情報は、例えば、人Hが有するスマートフォン、自動車C1、C2が備えるカーナビゲーションシステムが有するGPSから取得した位置情報である。インフラセンサ装置10は、移動体から通信により得た推定自己位置情報と検出対象範囲DAで検出された移動体の情報に基づき自機の位置情報を較正する自己位置較正機能を有する。
【0020】
そこで、インフラセンサ装置10についてさらに詳細に説明する。図2に実施の形態1にかかるインフラセンサシステム1のブロック図を示す。インフラセンサ装置10は、インフラセンサシステム1の一部として利用されるもので有り、インフラセンサシステム1ではインフラセンサ装置10を複数有する。また、図2に示すように、インフラセンサシステム1は、インフラセンサ装置10、自己位置較正処理部20、上位システム30を有する。インフラセンサ装置10は、検出対象範囲DAに存在する移動体の検出と、移動体からの推定自己位置情報の受信処理とを行う。自己位置較正処理部20は、インフラセンサ装置10で得られた情報に基づきインフラセンサ装置10の推定自己位置の較正と、較正後の推定自己位置の保持を行う。上位システム30は、インフラセンサシステム1で実現する種々の機能に関する処理を行うもので、例えば、移動体の移動履歴の管理や移動体の行動予測に利用するダイナミックマップを有する。インフラセンサ装置10の位置はこのダイナミックマップ上にマッピングされる。なお、自己位置較正処理部20の物理的位置は、インフラセンサ装置10側にあっても、上位システム30側にあってもよい。
【0021】
インフラセンサ装置10は、少なくともセンサユニット11、無線受信部12を有する。センサユニット11は、光学カメラ、ミリ波レーダー、LiDAR等のセンサであり、検出対象範囲DA内の移動体の特徴とインフラセンサ装置10からの距離とを把握可能な情報を取得する。センサユニット11は取得した情報を自己位置較正処理部20の移動体抽出部21に送信する。無線受信部12は、例えば、携帯電話電波、無線LAN、Bluetooth(登録商標)等の無線信号を用いた通信手段により移動体が有する推定自己位置情報と推定自己位置情報に紐付けられたデバイス識別情報とを含む移動体情報MIを取得する。なお、以下の説明では、移動体が有する推定自己位置情報は、移動体の地理的位置を示すグローバル位置情報を示す第1のグローバル推定位置情報(例えば、移動体GPS情報G1)である。
【0022】
自己位置較正処理部20は、移動体抽出部21、移動体位置算出部22、センサ位置算出部23、センサ位置保持部24を有する。移動体抽出部21は、センサユニット11から送信された情報を解析して検出対象範囲DA中の移動体を抽出し、抽出した各移動体に関する移動体推定情報MIeを生成する。移動体推定情報MIeには、検出対象範囲DA内での移動体の位置を示すローカル推定位置情報Lと移動体の形状的特徴を示すデバイス特徴情報DFが含まれる。移動体推定情報MIeは、上位システム30に送信されると共に、自己位置較正処理部20におけるインフラセンサ推定位置情報G3の較正に用いられる。
【0023】
移動体位置算出部22は、ローカル推定位置情報Lに基づき第2のグローバル推定位置情報(例えば、移動体推定位置情報G2)を算出する。実施の形態1にかかる移動体位置算出部22は、ローカル推定位置情報Lにセンサ位置保持部24に保持されている第3のグローバル推定位置情報(例えば、インフラセンサ推定位置情報G3)を加算して移動体推定位置情報G2を算出する。
【0024】
センサ位置算出部23は、移動体GPS情報G1と移動体推定位置情報G2との差分から求められる判断値が予め設定した閾値αを超えたことに応じて、センサユニット11の地理的位置として保持しているインフラセンサ推定位置情報G3を較正する。より具体的には、センサ位置算出部23は、インフラセンサ推定位置情報G3を、移動体GPS情報G1と移動体推定位置情報G2との差分が少なくなるような較正処理の結果に基づき較正する。例えば、移動体推定位置情報G2は、インフラセンサ推定位置情報G3+ローカル推定位置情報Lで表され、移動体GPS情報G1と移動体推定位置情報G2との誤差をΔとすると、移動体GPS情報G1とインフラセンサ推定位置情報G3の関係は、G1=(G3+Δ)+Lとなる。そこで、新たなインフラセンサ推定位置情報G3として移動体GPS情報G1からローカル推定位置情報Lを引いた値を採用する。
【0025】
センサ位置保持部24は、センサ位置保持部24で較正されたインフラセンサ推定位置情報G3を保持し、上位システム30に保持しているインフラセンサ推定位置情報G3を出力する。なお、インフラセンサ装置10を設置した当初は、インフラセンサ推定位置情報G3として任意の初期値(例えば、設置場所として想定される地理的位置を示す位置情報)を入れておくことが好ましい。
【0026】
なお、移動体抽出部21、移動体位置算出部22、センサ位置算出部23及びセンサ位置保持部24は、例えば、CPU等のプログラムを実行可能な演算部においてこれらの処理ブロックの機能を実現する位置較正プログラムを実行することでも実現できる。
【0027】
続いて、実施の形態1にかかるインフラセンサ装置10におけるセンサ推定位置情報の較正処理について説明する。そこで、図3に実施の形態1にかかるインフラセンサ装置10における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートを示す。図3に示すフローチャートは、インフラセンサ装置10において行われる複数の処理のうち推定位置情報の較正に関する処理のみを表したものである。また、図3に示すフローチャートは、図2で説明した自己位置較正処理部20において行われるが、以下の説明では、自己位置較正処理部20を含むインフラセンサ装置10の動作として説明する。なお、実施の形態1にかかるインフラセンサシステム1では、インフラセンサ推定位置情報G3の初期値としてインフラセンサ装置10の設置予定場所の位置情報がセンサ位置保持部24に格納されているものとする。
【0028】
図3に示すように、実施の形態1にかかるインフラセンサ装置10では、無線受信部12が移動体から移動体GPS情報G1をとデバイス識別情報D1とを含む移動体情報MIを受信する(ステップS1)。そして、インフラセンサ装置10は、移動体抽出部21において、ステップS1で受信した移動体情報MIに含まれる移動体GPS情報G1を有する移動体がセンサユニット11の検出対象範囲DA内に存在するかを確認する(ステップS2)。このステップS2では、移動体抽出部21がセンサユニット11から受信した情報から移動体の検出対象範囲DA内の位置を示すローカル推定位置情報Lと移動体の特徴を示すデバイス特徴情報DFとを抽出する。そして、移動体抽出部21は、デバイス特徴情報DFと移動体GPS情報G1に紐付けられるデバイス識別情報D1とを関連度を算出し、関連度が高いと判断した場合に、検出対象範囲DA内に移動体GPS情報G1を有する移動体が検出対象範囲DA内に存在すると判断する。
【0029】
そして、ステップS2において、検出対象範囲DA内に移動体GPS情報G1を有する移動体が存在しないと判断した場合(ステップS2のNOの枝)、インフラセンサ装置10は処理をステップS1に戻す。一方、ステップS2において、検出対象範囲DA内に移動体GPS情報G1を有する移動体が存在すると判断した場合(ステップS2のYESの枝)、移動体位置算出部22が移動体推定位置情報G2を算出する(ステップS3)。ステップS3では、移動体位置算出部22が、センサユニット11が検出した移動体の検出対象範囲DA内での位置を示すローカル推定位置情報Lにセンサ位置保持部24に保持されているインフラセンサ推定位置情報G3を加算して移動体推定位置情報G2を算出する。
【0030】
続いて、センサ位置算出部23が移動体推定位置情報G2と移動体GPS情報G1とに基づきインフラセンサ推定位置情報G3を更新するかを判断する(ステップS4、S5)。ステップS4では、移動体推定位置情報G2と移動体GPS情報G1との誤差の大きさが予め設定した閾値αより大きいか否かを判断する。例えば、ステップS4の判断では、誤差の絶対値と閾値αとの差に基づき判断を行う。そして、ステップS4の判断において、誤差の大きさが閾値α以下であった場合、インフラセンサ装置10は、センサ位置保持部24に保持しているインフラセンサ推定位置情報G3の更新は行わずに処理をステップS1に戻す。一方、ステップS4の判断において、誤差の大きさが閾値αより大きいと判断した場合、インフラセンサ装置10は、移動体推定位置情報G2から算出されたインフラセンサ推定位置情報G3を用いてセンサ位置保持部24に保持しているインフラセンサ推定位置情報G3を較正する(ステップS5)。このステップS5では、移動体GPS情報G1からローカル推定位置情報Lを引いた値を新しい移動体推定位置情報G2としてセンサ位置保持部24に格納する。
【0031】
上記説明より、実施の形態1にかかる自己位置較正処理部20の機能を用いることで、インフラセンサ装置10は、検出対象範囲DAの範囲内を通過する移動体に基づきインフラセンサ装置10の地理的位置を示すインフラセンサ推定位置情報G3を較正することができる。つまり、実施の形態1にかかるインフラセンサシステム1では、道路封鎖等を行う事無くインフラセンサ装置10の設置位置を高精度に把握することが可能になる。
【0032】
実施の形態2
実施の形態2では、実施の形態1にかかるインフラセンサシステム1の別の形態となるについて説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1で説明した構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0033】
図4に実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2のブロック図を示す。図4に示すように、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2は、インフラセンサシステム1の自己位置較正処理部20を自己位置較正処理部40に置き換えたものである。自己位置較正処理部40は、移動体位置算出部22及びセンサ位置算出部23を移動体位置算出部42及びセンサ位置算出部43に置き換えたものである。
【0034】
移動体位置算出部42は、例えば、推論器であって、入力された値に対して所定の関係を有する出力値を出力するものである。より具体的には、移動体位置算出部42は、移動体抽出部21が出力する移動体推定情報MIeに含まれるローカル推定位置情報Lを入力とし、ローカル推定位置情報Lから推定される検出対象範囲DA内で検出された移動体のグローバル位置情報を示す移動体推定位置情報G2を出力する。
【0035】
センサ位置算出部43は、移動体推定位置情報G2と移動体GPS情報G1との誤差が閾値αよりも大きいか否かに基づきセンサ位置保持部24に格納されているインフラセンサ推定位置情報G3を較正するか否かを判断する。このセンサ位置算出部43では、閾値αが移動体位置算出部42の学習結果に基づき更新される点がセンサ位置算出部23との違いである。
【0036】
続いて、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2におけるセンサ推定位置情報の較正処理について説明する。そこで、図5に実施の形態2にかかるインフラセンサ装置10における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートを示す。図5に示すフローチャートは、インフラセンサ装置10において行われる複数の処理のうち推定位置情報の較正に関する処理のみを表したものである。また、図5に示すフローチャートは、図4で説明した自己位置較正処理部40において行われるが、以下の説明では、自己位置較正処理部40を含むインフラセンサ装置10の動作として説明する。なお、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2では、インフラセンサ推定位置情報G3の初期値としてインフラセンサ装置10の設置予定場所の位置情報がセンサ位置保持部24に格納され、かつ、閾値αとして任意の値が設定されているものとする。
【0037】
図5に示すように、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2におけるセンサ推定位置情報の構成処理は、図3のステップS3がステップS11に置き換えられ、図3のステップS5がステップS12~S14に置き換えられる。
【0038】
ステップS11では、移動体位置算出部42がセンサユニット11が検出対象範囲DAの移動体の位置を示すとして出力したローカル推定位置情報Lを入力として移動体推定位置情報G2を推定する。そして、ステップS4において、移動体推定位置情報G2と移動体GPS情報G1との誤差が閾値αよりも大きいと判断された場合に、ステップS12~S14の処理を行う。
【0039】
ステップS12では、移動体位置算出部42に対して移動体GPS情報G1を教師データ、ローカル推定位置情報Lを入力とする機械学習を行う。この機械学習により、移動体位置算出部42にローカル推定位置情報Lを入力した場合に算出される移動体推定位置情報G2が変化する。なお、この機械学習では、移動体GPS情報G1と移動体推定位置情報G2との誤差が元の閾値αよりも小さくなることを学習の終了条件とする。
【0040】
続いて、ステップS13では、ステップS12の機械学習の結果を用いて閾値αが小さくなるように更新する。その後、ステップS14において、センサ位置算出部43は、ステップS12で学習された後の移動体推定位置情報G2からローカル推定位置情報Lを減算して算出されるインフラセンサ推定位置情報G3により元のインフラセンサ推定位置情報G3を更新する。
【0041】
上記説明より、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2では、推論器を用いて移動体推定位置情報G2を算出すると共に、推論器に対する機械学習を行って閾値αを小さくしていく。これにより、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2では、移動体推定位置情報G2から算出されるインフラセンサ推定位置情報G3の精度を実施の形態1よりも高める事ができる。
【0042】
また、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2では、初期値として与えるインフラセンサ推定位置情報G3の精度が高くなくても速い速度でインフラセンサ推定位置情報G3の位置精度を高めることができる。これは、機械学習により閾値αを更新するためである。
【0043】
実施の形態3
実施の形態3では、実施の形態1にかかるインフラセンサシステム1の別の形態となるについて説明する。なお、実施の形態3の説明において、実施の形態1で説明した構成要素については、実施の形態1と同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
図6に実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3のブロック図を示す。図6に示すように、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3は、インフラセンサシステム1の自己位置較正処理部20を自己位置較正処理部50に置き換えたものである。自己位置較正処理部50は、移動体位置算出部22及びセンサ位置算出部23を移動体位置算出部52及びセンサ位置算出部53に置き換えたものである。
【0045】
移動体位置算出部52は、例えば、推論器であって、入力された値に対して所定の関係を有する出力値を出力するものである。より具体的には、移動体位置算出部52は、移動体抽出部21が出力する移動体推定情報MIeに含まれるローカル推定位置情報Lを入力とし、ローカル推定位置情報Lから推定される検出対象範囲DA内で検出された移動体のグローバル位置情報を示す移動体推定位置情報G2を出力する。
【0046】
センサ位置算出部53は、移動体GPS情報G1に対する移動体推定位置情報G2との信頼度が閾値βよりも大きいか否かに基づきセンサ位置保持部24に格納されているインフラセンサ推定位置情報G3を較正するか否かを判断する。
【0047】
続いて、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3におけるセンサ推定位置情報の較正処理について説明する。そこで、図7に実施の形態3にかかるインフラセンサ装置10における推定位置情報の較正処理を説明するフローチャートを示す。図7に示すフローチャートは、インフラセンサ装置10において行われる複数の処理のうち推定位置情報の較正に関する処理のみを表したものである。また、図7に示すフローチャートは、図6で説明した自己位置較正処理部50において行われるが、以下の説明では、自己位置較正処理部50を含むインフラセンサ装置10の動作として説明する。なお、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3では、インフラセンサ推定位置情報G3の初期値としてインフラセンサ装置10の設置予定場所の位置情報がセンサ位置保持部24に格納され、かつ、閾値βとして任意の値が設定されているものとする。
【0048】
図7に示すように、実施の形態2にかかるインフラセンサシステム2におけるセンサ推定位置情報の構成処理は、図3のステップS3以降の処理がステップS21~S25に置き換えられる。
【0049】
ステップS21では、移動体位置算出部52がセンサユニット11が検出対象範囲DAの移動体の位置を示すとして出力したローカル推定位置情報Lを入力として移動体推定位置情報G2を推定する。そして、ステップS22において、移動体位置算出部52が、移動体GPS情報G1に対する移動体推定位置情報G2の信頼度を算出し、この信頼度が閾値βよりも小さいと判断された場合に、ステップS23~S25の処理を行う。
【0050】
ステップS23では、移動体位置算出部52に対して移動体GPS情報G1を教師データ、ローカル推定位置情報Lを入力とする機械学習を行う。この機械学習により、移動体位置算出部52にローカル推定位置情報Lを入力した場合に算出される移動体推定位置情報G2が変化する。なお、この機械学習では、移動体GPS情報G1に対する移動体推定位置情報G2の信頼度が元の閾値βよりも大きくなることを学習の終了条件とする。
【0051】
続いて、ステップS24において、センサ位置算出部53は、ステップS23で学習された後の移動体推定位置情報G2からローカル推定位置情報Lを減算して算出されるインフラセンサ推定位置情報G3により元のインフラセンサ推定位置情報G3を更新する。その後、ステップS25では、ステップS23の機械学習の結果を用いて閾値βが大きくなるように閾値βを更新する。
【0052】
上記説明より、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3では、推論器を用いて移動体推定位置情報G2を算出すると共に、推論器に対する機械学習を行って閾値βを大きくしていく。これにより、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3では、移動体推定位置情報G2から算出されるインフラセンサ推定位置情報G3の精度を実施の形態1よりも高める事ができる。
【0053】
また、実施の形態3にかかるインフラセンサシステム3では、初期値として与えるインフラセンサ推定位置情報G3の精度が高くなくても速い速度でインフラセンサ推定位置情報G3の位置精度を高めることができる。これは、機械学習により閾値βを更新するためである。
【0054】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0055】
1~3 インフラセンサシステム
10 インフラセンサ装置
11 センサユニット
12 無線受信部
20、40、50 自己位置較正処理部
21 移動体抽出部
22、42、52 移動体位置算出部
23、43、53 センサ位置算出部
24 センサ位置保持部
30 上位システム
G1 移動体GPS情報
G2 移動体推定位置情報
G3 インフラセンサ推定位置情報
L ローカル推定位置情報
D1 デバイス識別情報
DF デバイス特徴情報
MI 移動体情報
MIe 移動体推定情報
C1 自動車
C2 自動車
H 人
DA 検出対象範囲
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7