(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】エアバッグ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2165 20110101AFI20230912BHJP
B60R 21/205 20110101ALI20230912BHJP
【FI】
B60R21/2165
B60R21/205
(21)【出願番号】P 2020157331
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】戸谷 千春
(72)【発明者】
【氏名】高井 一
(72)【発明者】
【氏名】小林 由佳
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-045970(JP,A)
【文献】実開昭55-099836(JP,U)
【文献】特開2009-220633(JP,A)
【文献】特開平09-156445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグを収容し、かつ前記エアバッグが展開及び膨張する際に通過するエアバッグ開口部を一端部に有する筒状壁部が設けられたリテーナと、前記エアバッグの展開方向前方において前記筒状壁部に隣接して配置されたエアバッグドアとを備え、
前記筒状壁部の前記エアバッグドア側の端部には、前記エアバッグにより押されて傾動して前記エアバッグ開口部を開放する一対のドア部が並設され、
前記エアバッグドアが、基材と、前記基材上にクッション層を介して積層されたファブリック層とを備え、
前記クッション層は、前記基材及び前記ファブリック層に対しそれぞれ接着され、
前記基材には、両ドア部により押された際に破断の起点となるテアラインが設けられたエアバッグ装置であり、
前記クッション層のうち、両ドア部の並設方向に対し直交する方向における前記エアバッグ開口部の両側であって前記エアバッグ開口部に隣接する領域には、細孔を有していて、細孔を有しない場合よりも脆弱な脆弱部が形成されて
おり、
前記エアバッグ開口部に隣接する前記領域は、前記エアバッグ開口部から遠ざかるに従い、前記並設方向の寸法が縮小する三角形状の領域を含んでおり、
前記脆弱部は、少なくとも前記三角形状の領域を含む形状に形成されているエアバッグ装置。
【請求項2】
エアバッグを収容し、かつ前記エアバッグが展開及び膨張する際に通過するエアバッグ開口部を一端部に有する筒状壁部が設けられたリテーナと、前記エアバッグの展開方向前方において前記筒状壁部に隣接して配置されたエアバッグドアとを備え、
前記筒状壁部の前記エアバッグドア側の端部には、前記エアバッグにより押されて傾動して前記エアバッグ開口部を開放する一対のドア部が並設され、
前記エアバッグドアが、基材と、前記基材上にクッション層を介して積層されたファブリック層とを備え、
前記クッション層は、前記基材及び前記ファブリック層に対しそれぞれ接着され、
前記基材には、両ドア部により押された際に破断の起点となるテアラインが設けられたエアバッグ装置であり、
前記クッション層のうち、両ドア部の並設方向に対し直交する方向における前記エアバッグ開口部の両側であって前記エアバッグ開口部に隣接する領域には、細孔を有していて、細孔を有しない場合よりも脆弱な脆弱部が形成されており、
前記細孔は、前記クッション層の厚み方向に延びていて、同厚み方向における前記クッション層の少なくとも一方の面において開口されて
おり、
前記細孔は針刺し痕であり、
前記ファブリック層は、同ファブリック層を厚み方向に貫通する針刺し痕を有しており、
前記ファブリック層の前記針刺し痕は、前記クッション層の前記針刺し痕に繋がっているエアバッグ装置。
【請求項3】
前記エアバッグドアは、自動車のインストルメントパネルの一部により構成され、
前記筒状壁部は上下方向へ延び、かつ前記エアバッグ開口部を上端部に有し、
一対の前記ドア部は、前後方向に並設された前ドア部及び後ドア部により構成され、
前記前ドア部は、同前ドア部の前端部に設けられた前ヒンジ部により前記筒状壁部の上端部に連結され、
前記後ドア部は、同後ドア部の後端部に設けられた後ヒンジ部により前記筒状壁部の上端部に連結されており、
前記脆弱部は、前記クッション層のうち、前記エアバッグ開口部に対し、車幅方向における両側に隣接する領域に形成されている請求項
1又は2に記載のエアバッグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグを展開及び膨張させて乗員を衝撃から保護するエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前面衝突等により自動車に対し前方から衝撃が加わった場合に、助手席の乗員を衝撃から保護する手段の1つに助手席用のエアバッグ装置がある。
このエアバッグ装置として、リテーナ及びエアバッグドアを備えるものが知られている。リテーナは、上下方向へ延びる筒状をなし、かつエアバッグが収容される筒状壁部を備えている。筒状壁部は、エアバッグが展開及び膨張する際に通過するエアバッグ開口部を上端部に有している。
【0003】
エアバッグドアは、自動車のインストルメントパネルの一部によって構成されており、筒状壁部に対し、上方に隣接する箇所に配置されている。エアバッグドアは、テアラインが設けられた基材と、基材上に接着されたクッション層と、クッション層上に接着されたファブリック層とを備えている。ファブリック層は、織布又は編物によって構成されており、エアバッグドアを加飾している。筒状壁部の上端部には、エアバッグにより押されて傾動することでエアバッグ開口部を開放する一対のドア部が前後方向に並設されている。
【0004】
上記エアバッグ装置によれば、自動車に対し前方から衝撃が加わると、エアバッグが膨張用ガスにより展開及び膨張を開始する。この展開及び膨張の過程で、エアバッグの押圧力が両ドア部に加わる。両ドア部が傾動し、エアバッグ開口部が開放され始める。また、エアバッグドアが両ドア部によって押されて破断される。その際、テアラインが破断の起点となり、基材がテアラインに沿って破断される。また、クッション層及びファブリック層が、上記基材に追従して破断されて開口する。
【0005】
エアバッグは、開放されたエアバッグ開口部と、エアバッグドアの破断により生じた開口部とを通って、インストルメントパネルと助手席の乗員との間で引き続き展開及び膨張し、同乗員に加わる衝撃を緩和する。
【0006】
上記エアバッグ装置では、両ドア部によるエアバッグ開口部の開放に伴い、ファブリック層を、エアバッグ開口部よりも車幅方向に大きなフィッシュマウス形状に開口させることが、エアバッグの展開性能を確保するうえで望ましい。しかし、車幅方向におけるエアバッグ開口部の両側に隣接する領域で、ファブリック層を車幅方向に破断させることは難しい。その原因の1つとして、上記領域では、ファブリック層を基材から安定して離間させることが難しいことが挙げられる。
【0007】
そこで、特許文献1では、クッション層の上記領域に接着力調節部が形成されている。接着力調節部では、基材及びクッション層の間の互いに離間した複数箇所に接着剤が、帯状又は点状に塗布されていて、基材及びクッション層の間の他の箇所よりも接着面積が小さくされている。こうすることで、接着力調節部では、単位面積当りの接着強度が他の領域よりも低くされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、エアバッグ装置の製造工程で、クッション層の基材に対する接着強度、ひいては破断強度を適切に管理することは、煩雑であり、大変である。接着力調節部において、クッション層が基材に対し所定の接着強度で接着されるように接着剤を帯状又は点状に塗布することが難しいからである。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、クッション層の煩雑な破断強度の管理を不要にすることのできるエアバッグ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するエアバッグ装置は、エアバッグを収容し、かつ前記エアバッグが展開及び膨張する際に通過するエアバッグ開口部を一端部に有する筒状壁部が設けられたリテーナと、前記エアバッグの展開方向前方において前記筒状壁部に隣接して配置されたエアバッグドアとを備え、前記筒状壁部の前記エアバッグドア側の端部には、前記エアバッグにより押されて傾動して前記エアバッグ開口部を開放する一対のドア部が並設され、前記エアバッグドアが、基材と、前記基材上にクッション層を介して積層されたファブリック層とを備え、前記クッション層は、前記基材及び前記ファブリック層に対しそれぞれ接着され、前記基材には、両ドア部により押された際に破断の起点となるテアラインが設けられたエアバッグ装置であり、前記クッション層のうち、両ドア部の並設方向に対し直交する方向における前記エアバッグ開口部の両側であって前記エアバッグ開口部に隣接する領域には、細孔を有していて、細孔を有しない場合よりも脆弱な脆弱部が形成されている。
【0012】
上記の構成によれば、クッション層に形成された脆弱部は、細孔を有している。脆弱部は細孔により弱体化され、細孔を有しない場合よりも脆弱になる。
上記脆弱部は、クッション層のうち、両ドア部の並設方向に対し直交する方向(直交方向)におけるエアバッグ開口部の両側であって、同エアバッグ開口部に隣接する領域に形成されている。従って、エアバッグドアが両ドア部によって押されてテアラインに沿って上記直交方向へ破断された後、クッション層の脆弱部が引き続き破断される。この破断に伴い、ファブリック層が基材から離間する際の抵抗力が小さくなる。上記領域では、ファブリック層が上記直交方向に沿って破断されて、上記並設方向に2つの分断部に分断される。基材から両分断部が、上記並設方向であって互いに反対方向へ離間されると、ファブリック層の両分断部間に開口部が形成される。その結果、ファブリック層は、エアバッグ開口部だけでなく、上記直交方向におけるエアバッグ開口部の両側でも開口する。ファブリック層は、エアバッグ開口部よりも上記直交方向に大きなフィッシュマウス形状に開口する。
【0013】
また、各脆弱部の破断強度は細孔によって管理される。従って、特許文献1とは異なり、クッション層の基材に対する接着強度を管理することで、クッション層の破断強度を管理する必要はない。エアバッグ装置の製造工程では、細孔を形成するだけでよく、煩雑な破断強度の管理を行なわなくてもすむ。
【0014】
上記エアバッグ装置において、前記エアバッグ開口部に隣接する前記領域は、前記エアバッグ開口部から遠ざかるに従い、前記並設方向の寸法が縮小する三角形状の領域を含んでおり、前記脆弱部は、少なくとも前記三角形状の領域を含む形状に形成されていることが好ましい。
【0015】
ここで、上記直交方向におけるエアバッグ開口部の両側に隣接する領域では、ファブリック層は、エアバッグ開口部から上記直交方向へ遠ざかるに従い上記並設方向の寸法が縮小するように開口しようとする。
【0016】
この点、上記領域では、各脆弱部が、エアバッグ開口部から遠ざかるに従い、上記並設方向の寸法が縮小する三角形状の領域を含む形状をなしている。そのため、エアバッグ開口部の隣の各領域ではファブリック層を、上記三角形を上記並設方向に2分割した2つの分断部に分断させることが可能である。そして、両分断部を上記並設方向であって互いに反対方向へ離間させると、ファブリック層は、エアバッグ開口部から上記直交方向へ遠ざかるに従い上記並設方向の寸法が縮小する三角形状に開口する。
【0017】
上記エアバッグ装置において、前記細孔は、前記クッション層の厚み方向に延びていて、同厚み方向における前記クッション層の少なくとも一方の面において開口されていることが好ましい。
【0018】
細孔は、例えば、上記の構成によるように、クッション層の厚み方向に延びて、同厚み方向におけるクッション層の少なくとも一方の面において開口するものであってもよい。脆弱部は、このような細孔を有することで、細孔を有しない場合よりも脆弱となる。
【0019】
上記エアバッグ装置において、前記細孔は針刺し痕であることが好ましい。
ここで、針刺し痕は、クッション層に針を刺して抜き出した後にクッション層に残る痕である。
【0020】
上記の構成によれば、クッション層の厚み方向における一方の面から他方の面に向けて針を刺し、その後、針を抜き出す。すると、クッション層の厚み方向に延びて、同厚み方向におけるクッション層の少なくとも一方の面において開口する針刺し痕を有する脆弱部が形成される。
【0021】
各脆弱部の破断強度は針刺し痕によって管理される。エアバッグ装置の製造工程では、針を刺して抜くだけで、破断強度を管理された各脆弱部が形成される。従って、煩雑な破断強度の管理を行なわなくてもすむ。
【0022】
上記エアバッグ装置において、前記ファブリック層は、同ファブリック層を厚み方向に貫通する針刺し痕を有しており、前記ファブリック層の前記針刺し痕は、前記クッション層の前記針刺し痕に繋がっていることが好ましい。
【0023】
上記の構成によれば、基材上にクッション層を介してファブリック層が積層された状態で、ファブリック層及びクッション層の順に針を刺し、その後にクッション層及びファブリック層から針を抜き出すことで、クッション層に針刺し痕を形成することが可能である。
【0024】
この場合には、クッション層に加え、ファブリック層にも針刺し痕が形成される。この針刺し痕は、エアバッグドアの表面において開口するため、ファブリック層に針刺し痕が形成されない場合に比べ、エアバッグドアの外観を低下させるおそれがある。しかし、ファブリック層が、織布又は編物によって構成されている場合、同ファブリック層は表面に織目又は編目を有している。そのため、上記織目又は編目により、針刺し痕の開口が目立ちにくくされ、この開口に起因する、ファブリック層ひいてはエアバッグドアの外観低下が抑制される。
【0025】
上記エアバッグ装置において、前記エアバッグドアは、自動車のインストルメントパネルの一部により構成され、前記筒状壁部は上下方向へ延び、かつ前記エアバッグ開口部を上端部に有し、一対の前記ドア部は、前後方向に並設された前ドア部及び後ドア部により構成され、前記前ドア部は、同前ドア部の前端部に設けられた前ヒンジ部により前記筒状壁部の上端部に連結され、前記後ドア部は、同後ドア部の後端部に設けられた後ヒンジ部により前記筒状壁部の上端部に連結されており、前記脆弱部は、前記クッション層のうち、前記エアバッグ開口部に対し、車幅方向における両側に隣接する領域に形成されていることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、展開及び膨張するエアバッグの押圧力が前ドア部及び後ドア部にそれぞれ加わると、前ドア部が前ヒンジ部を支点として上前方へ傾動し、後ドア部が後ヒンジ部を支点として上後方へ傾動し、エアバッグ開口部を開放しようとする。こうした前ドア部及び後ドア部によってエアバッグドアが押される。テアラインが破断の起点となり、基材が同テアラインに沿って車幅方向に破断される。また、クッション層及びファブリック層が、上記基材の破断に追従して車幅方向に破断される。
【0027】
クッション層の脆弱部は、車幅方向におけるエアバッグ開口部の両側に隣接する領域に形成されている。従って、エアバッグドアが車幅方向に沿って破断された後、脆弱部が引き続き破断される。上記領域では、ファブリック層が車幅方向に沿って破断されて、前後方向に2つの分断部に分断される。基材から両分断部が、前後方向であって互いに反対方向へ離間されると、ファブリック層の両分断部間に開口部が形成される。その結果、ファブリック層は、エアバッグ開口部よりも車幅方向に大きなフィッシュマウス形状に開口する。
【発明の効果】
【0028】
上記エアバッグ装置によれば、クッション層の煩雑な破断強度の管理を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】助手席用のエアバッグ装置に具体化した一実施形態を示す図であり、同エアバッグ装置が設けられたインストルメントパネルの概略斜視図。
【
図2】一実施形態を示す図であり、インストルメントパネルのうち、エアバッグドア及びその周辺箇所を示す部分平面図。
【
図3】
図2の3-3線に沿ったエアバッグ装置の部分断面図。
【
図5】一実施形態のエアバッグ装置において、エアバッグドアにおける脆弱部及びその周辺箇所を示す部分断面図。
【
図6】一実施形態のエアバッグ装置において、針刺し具が用いられて、クッション層及びファブリック層に対しそれぞれ針刺し痕が形成される前のエアバッグドアの部分断面図。
【
図7】一実施形態のエアバッグ装置において、針刺し具が用いられて、クッション層及びファブリック層に針が刺されたエアバッグドアの部分断面図。
【
図8】一実施形態において、ファブリック層がフィッシュマウス形状に開口した状態を示す部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、自動車における助手席用のエアバッグ装置に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下の説明では、自動車の前進方向を前方と記載し、それを基準に前、後、上、下、左、右を規定している。左右方向は、自動車の幅方向(車幅方向)と合致している。
【0031】
図1及び
図3に示すように、自動車10において図示しない運転席及び助手席の前方には、左右方向に延びるインストルメントパネル11が配置されている。インストルメントパネル11において助手席の前方となる箇所には、助手席用のエアバッグ装置12が設けられている。エアバッグ装置12は、エアバッグドア13及びエアバッグモジュールABMを備えている。次に、エアバッグ装置12の各構成部材について説明する。
【0032】
<エアバッグドア13について>
エアバッグドア13は、インストルメントパネル11の一部によって構成されている。
図3及び
図4に示すように、エアバッグドア13は、基材14と、基材14上に積層されたクッション層18と、クッション層18上に積層されたファブリック層19とを備えている。
【0033】
基材14は、エアバッグドア13の骨格部分を構成しており、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリプロピレン(PP)等の樹脂材料によって形成されている。
クッション層18は、エアバッグドア13の触感向上のために用いられており、エアバッグドア13に必要なクッション性(弾力性)を付与している。クッション層18は、基材14に対し接着されている。クッション層18は、PP、ポリウレタン、ポリエチレン(PE)等の発泡材によって形成されている。これらの発泡材には、気泡が連通していて柔らかく、復元性を有するという特徴がある。
【0034】
ファブリック層19は、エアバッグドア13の質感、触感、外観等の向上を図る目的で設けられている。ファブリック層19は、織布又は織物からなる生地を加工することによって形成されており、クッション層18に対し接着されている。ファブリック層19の上面は、エアバッグドア13の意匠面を構成している。
【0035】
上記構成のエアバッグドア13は、後述するエアバッグ35の展開方向前方において、筒状壁部22に隣接する箇所に位置している。エアバッグドア13には、その開放のための破断を惹起させるための破断予定線としてテアライン15が設けられている。このテアライン15については後述する。
【0036】
<エアバッグモジュールABMの概略構成について>
図3に示すように、エアバッグモジュールABMは、エアバッグドア13の下方に配置されている。エアバッグモジュールABMは、リテーナ21、エアバッグ35及びインフレータ36を備えている。
【0037】
リテーナ21は、筒状壁部22、前ドア部27及び後ドア部31を備えており、上記TPO等の樹脂材料によって形成されている。
筒状壁部22は、上下方向へ延びる四角筒状をなしている。筒状壁部22は、前後方向に対向する前壁部23及び後壁部24と、左右方向に対向する一対(
図3では一方のみ図示)の側壁部25とを備えている。筒状壁部22の上下両端部は開放されている。両側壁部25の間隔は、前壁部23及び後壁部24の間隔よりも大きく設定されている。
【0038】
図2及び
図3に示すように、筒状壁部22の上下両端の開放部分のち、エアバッグドア13側である上側の開放部分は、エアバッグ35が展開及び膨張する過程で通過する開口部(以下「エアバッグ開口部26」という)を構成している。
【0039】
前ドア部27及び後ドア部31のそれぞれは、前後方向に対するよりも左右方向に細長い長方形の板状をなしている。前ドア部27及び後ドア部31は前後方向に並べられた状態で、上記エアバッグ開口部26に配置されている。前ドア部27及び後ドア部31は、両者の間に、左右方向に延びる間隙G1をおいて前後方向に離れている。前ドア部27及び後ドア部31の並設方向は、自動車10の前後方向と合致している。左右方向は、上記並設方向に対し直交している。
【0040】
前ドア部27の前端部は、前ヒンジ部28を介して前壁部23の上端部に連結されている。後ドア部31の後端部は、後ヒンジ部32を介して後壁部24の上端部に連結されている。
【0041】
上記リテーナ21は、前ドア部27、後ドア部31等において、エアバッグドア13における上記基材14に対し振動溶着法等により固着されているが、振動溶着法とは異なる方法、例えばホットメルト等の接着剤を使用した接着によって基材14に接合されてもよい。
【0042】
エアバッグ35は、折り畳まれることによりコンパクトにされた状態で筒状壁部22内に収容されている。エアバッグ35は、強度が大きく、かつ可撓性を有していて容易に折り畳むことのできる素材、例えばポリエステル糸、ポリアミド糸等を用いて形成した織布等によって形成されている。エアバッグ35は、インストルメントパネル11と助手席の乗員との間で展開及び膨張し得る大きさを有している。
【0043】
インフレータ36は、上記エアバッグ35内に配置されている。インフレータ36の内部にはガス発生剤(図示略)が収容されており、このガス発生剤の反応によって膨張用ガスが生成される。なお、インフレータ36としては、上記ガス発生剤を用いたタイプに代えて、高圧ガスの充填された高圧ガスボンベの隔壁を火薬等によって破断して膨張用ガスを噴出させるタイプが用いられてもよい。
【0044】
<テアライン15について>
テアライン15は、エアバッグドア13が破断される際の破断の起点となる。テアライン15は、エアバッグドア13の上方から見えにくくするために、同エアバッグドア13の構成部材のうちファブリック層19よりも下方の部材に設けられている。本実施形態では、テアライン15は、基材14のみに設けられている。
【0045】
図1~
図3に示すように、テアライン15は、左右方向に延びる1本の横ライン部16と、2本の縦ライン部17とを備えている。横ライン部16は、前ドア部27及び後ドア部31の間の上記間隙G1の上方となる箇所に位置している。左方の縦ライン部17は、横ライン部16の左端部を基点として前後両方向へ延びている。右方の縦ライン部17は、横ライン部16の右端部を基点として前後両方向へ延びている。
【0046】
横ライン部16及び各縦ライン部17は、単一の長い開裂溝又は複数の短い開裂溝によって構成されている。複数の開裂溝は、互いに離間した状態で列をなすように、一定間隔毎に形成されている。
【0047】
単一の長い開裂溝の場合も、複数の短い開裂溝の場合も、開裂溝は基材14の下面から上方へ向けて凹んでいる。なお、複数の短い開裂溝の場合、それらの開裂溝は基材14を厚み方向に貫通してもよい。そして、基材14において、開裂溝の形成された箇所では、形成されていない箇所よりも破断強度が低くなっている。
【0048】
なお、テアライン15が複数の短い開裂溝によって構成される場合には、隣り合う開裂溝間に厚みの大きな箇所が断続的に残される。従って、開裂溝間の厚みの大きな箇所は、テアライン15の剛性を確保したいときに有効である。開裂溝間の厚みが適切に設定されると、例えば、乗員がインストルメントパネル11に手を着いて体重をかけた場合に生ずる押付力等の外的要因によって、テアライン15が変形するのを抑制することが可能である。
【0049】
開裂溝は、基材14の成形時に一緒に形成されてもよい。また、開裂溝は、基材14の成形後の後工程において、レーザ加工、超音波加工等によって形成されてもよい。
次に、本実施形態の特徴部分について説明する。
【0050】
図2及び
図5に示すように、クッション層18のうち、左右方向におけるエアバッグ開口部26の両側であって、同エアバッグ開口部26に隣接する2つの領域には、それぞれ脆弱部41が形成されている。各領域は、ファブリック層19をフィッシュマウス形状に開口させるために、左右方向におけるエアバッグ開口部26の両側であって、基材14からファブリック層19を離間させたい領域である。この領域は、エアバッグ開口部26から左右方向へ遠ざかるに従い、前後方向の寸法が縮小する三角形状の領域Z1を含んでいる。各脆弱部41は、少なくとも三角形状の上記領域Z1を含む形状に形成されている。本実施形態では、各脆弱部41は、領域Z1と同一形状に形成されている。
【0051】
図5に示すように、各脆弱部41は、細孔としての針刺し痕42を複数有している。各針刺し痕42は、各クッション層18の厚み方向である上下方向に延びていて、同クッション層18の上面において開口されている。ファブリック層19は、複数の針刺し痕43を有している。各針刺し痕43は、ファブリック層19をその厚み方向である上下方向に貫通している。ファブリック層19の針刺し痕43は、クッション層18の針刺し痕42の上方に位置していて、同針刺し痕42に繋がっている。脆弱部41は、針刺し痕42を有することで、針刺し痕42を有しない場合よりも脆弱になっている。
【0052】
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について状況毎に分けて説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
<脆弱部41の形成について>
クッション層18に脆弱部41を形成する場合には、
図6に示す針刺し具44が用いられる。この針刺し具44は、昇降可能に設けられた基台45と、複数本の針46とを備えている。これらの針46は、等間隔に配置されることが好ましいが、非等間隔で配置されてもよい。複数の針46はそれぞれ上下方向に延びており、上端部において基台45に固定されている。各針46は、下端部に針先を有している。
【0053】
エアバッグ装置12が取付けられた状態のインストルメントパネル11が、図示しない治具等によって固定される。そして、
図7に示すように、各領域Z1の上方から基台45が針46を伴って下降される。下降する複数本の針46がファブリック層19及びクッション層18の順に刺される。各針46の下端部が基材14の上面よりも若干上方に達したところで、針刺し具44の下降が停止される。その後に、基台45が針46を伴って上昇されることで、針46がクッション層18及びファブリック層19から抜き出される。すると、
図5に示すように、クッション層18に複数の針刺し痕42が残り、針刺し痕42が形成される前(
図6参照)よりも弱体化された脆弱部41が形成される。また、ファブリック層19に複数の針刺し痕43が、クッション層18の針刺し痕42に連通した状態で残る。
【0054】
なお、
図5では、針刺し痕42は、針46が抜き出された直後に採る形状で図示されているが、実際には、クッション層18の弾性復元力により針刺し痕42は
図5よりも細くなる。ファブリック層19の針刺し痕43についても同様である。
【0055】
上記の作業を行なうことで、クッション層18の各領域Z1に正確に針46を刺すことができる。表現を変えると、クッション層18の狙った箇所に、針刺し痕42を有し、かつ狙った形状である三角形状の脆弱部41を正確に形成することができる。
【0056】
また、上記の場合には、クッション層18の針刺し痕42に加え、ファブリック層19にも針刺し痕43が形成される。針刺し痕43は、エアバッグドア13の表面において開口するため、同エアバッグドア13の外観を低下させるおそれがある。しかし、ファブリック層19は、織布又は編物によって構成されており、表面に織目又は編目を有している。そのため、上記織目又は編目により、針刺し痕43の開口が目立ちにくくされ、この開口が原因で、ファブリック層19ひいてはエアバッグドア13の外観が低下することは起こりにくい。
【0057】
また、脆弱部41では、上述したように、針46が刺されて抜き出されることによって針刺し痕42が形成され、この針刺し痕42によって、脆弱部41の破断強度が管理されている。従って、特許文献1とは異なり、クッション層18の基材14に対する接着強度を管理することで、クッション層18の破断強度を管理する必要はない。エアバッグ装置12の製造工程では、針刺し痕42の径、ピッチ等が適切に設定されていることを前提に、針46を刺して抜くだけでよく、煩雑な破断強度の管理を行なわなくてもすむ。
【0058】
また、特許文献1では、接着力調節部において、接着剤を帯状又は点状に塗布することにより、クッション層を基材に対し所定の接着強度で接着させている。しかし、このように、接着剤を塗布する箇所と塗布しない箇所とを形成して、接着力調節部全体の接着力を所定の値となるように管理することは難しい。
【0059】
この点、本実施形態では、脆弱部41の全体を対象として針刺し痕42を形成している。そのため、脆弱部41では、どの箇所でも破断強度が均一になり、破断強度の管理が容易となる。
【0060】
なお、上記針刺し痕42の形成のために、針刺し具44に代えてエアバッグドア13(インストルメントパネル11)が移動させられてもよい。また、針刺し具44及びエアバッグドア13(インストルメントパネル11)が上下方向とは異なる方向、例えば水平方向に相対移動させられてもよい。
【0061】
<エアバッグ装置12の非作動時について>
図1~
図4に示すように、自動車10に対し前方から衝撃が加わらないときには、エアバッグ装置12では、膨張用ガスがインフレータ36から噴出されず、エアバッグ35に供給されない。そのため、エアバッグ35は膨張せず、折り畳まれた状態に保持される。エアバッグ開口部26は、前ドア部27及び後ドア部31によって塞がれ続ける。
【0062】
<エアバッグ装置12の作動時について>
これに対し、前面衝突等により自動車10に対し前方からの衝撃が加わった場合には、インフレータ36から膨張用ガスが噴出され、これがエアバッグ35に供給される。この供給により、エアバッグ35は、折り状態の解消(展開)を伴いながら膨張を開始する。
【0063】
上記展開及び膨張の過程で、エアバッグ35の押圧力の一部が、前ドア部27及び後ドア部31にそれぞれ加わる。前ドア部27が前ヒンジ部28によって支持されながら上側に向けて押し広げられようとする。また、後ドア部31が後ヒンジ部32によって支持されながら上側に向けて押し広げられようとする。
【0064】
このとき、前ドア部27及び後ドア部31を介して基材14が上側へ押圧されることにより、同基材14が、まず横ライン部16に沿って左右方向に破断されるとともに、同基材14の前ドア部27及び後ドア部31に対応する部分が上側に向けて押し広げられる。
【0065】
また、クッション層18及びファブリック層19のそれぞれの前後方向における中央部が同前後方向に引っ張られる。クッション層18及びファブリック層19の前後方向における中央部分は、それぞれ横ライン部16に対応する部位を起点として左右方向に破断されるとともに、上側に向けて押し広げられる。
【0066】
このようにして基材14、クッション層18及びファブリック層19のそれぞれの破断が、左右方向における横ライン部16の両端まで進行すると、エアバッグ35の膨張する力によって、各縦ライン部17が破断し始める。
【0067】
図3における二点鎖線、及び
図8における矢印で示すように、前ドア部27が、破断された基材14と、破断されたクッション層18及びファブリック層19とを伴い、前ヒンジ部28を支点として上前方へ向けて傾動する。また、後ドア部31が、破断された基材14と、破断されたクッション層18及びファブリック層19とを伴い、後ヒンジ部32を支点として上後方へ向けて傾動する。前ドア部27及び後ドア部31が上記のように傾動することにより、エアバッグ開口部26が開放される。前ドア部27の前ヒンジ部28とは反対側の縁部と、後ドア部31の後ヒンジ部32とは反対側の縁部との間隔は、エアバッグ開口部26の前後方向における寸法よりも大きくなる。
【0068】
なお、
図8では、エアバッグ35及びインフレータ36の図示が省略されている。
エアバッグ35は、開放されたエアバッグ開口部26と、エアバッグドア13の破断された箇所とを通過した後に、インストルメントパネル11と助手席の乗員との間で引き続き展開及び膨張し、同乗員に前方から加わる衝撃を緩和する。
【0069】
ここで、本実施形態では、
図5に示すように、クッション層18における脆弱部41が針刺し痕42を有していて、針刺し痕42を有しない場合よりも脆弱であって、低い破断強度を有している。
【0070】
上記脆弱部41は、クッション層18のうち、左右方向におけるエアバッグ開口部26の両側に隣接する領域に形成されている。従って、エアバッグドア13が前ドア部27及び後ドア部31によって押されてテアライン15に沿って左右方向へ破断された後、クッション層18の脆弱部41が引き続き破断される。例えば、脆弱部41は、内部で平面状に渡って破壊される。上記平面状の破壊により、ファブリック層19が基材14から離間する際の抵抗が小さくなる。クッション層18の上層部分はファブリック層19に付着したままになり、下層部分は基材14に接着したままになる。ファブリック層19は、クッション層18の上層部を伴い、同クッション層18の下層部が接着されて残った基材14から離間する。
【0071】
図2及び
図8に示すように、上述した各領域では、ファブリック層19が左右方向に沿って破断されて、前後方向に2つの分断部19a,19bに分断される。基材14から両分断部19a,19bが、前後方向であって互いに反対方向へ離間されると、ファブリック層19の両分断部19a,19b間に開口部47が形成される。その結果、ファブリック層19は、エアバッグ開口部26だけでなく、左右方向におけるエアバッグ開口部26の両側でも開口する。ファブリック層19は、エアバッグ開口部26に比べ前後方向にも左右方向にも大きなフィッシュマウス形状に開口する。その結果、エアバッグ35の展開及び膨張を安定して行なわせること、すなわち、エアバッグ35の展開性能の向上を図ることができる。
【0072】
ここで、左右方向におけるエアバッグ開口部26の両側に位置する領域では、ファブリック層19は、エアバッグ開口部26から左右方向へ遠ざかるに従い前後方向の寸法が縮小するように開口しようとする。
【0073】
この点、本実施形態では、各脆弱部41が、エアバッグ開口部26から遠ざかるに従い、前後方向の寸法が縮小する三角形状の領域Z1と同一形状に形成されている。そのため、上記領域Z1ではファブリック層19を、上記三角形を前後方向に2分割した形状(三角形状)の分断部19a,19bに分断させることができる。そして、両分断部19a,19bを前後方向であって互いに反対方向へ離間させると、分断部19a,19bは、エアバッグ開口部26から左右方向へ遠ざかるに従い前後方向の寸法が縮小するように開口する。両分断部19a,19b間に三角形状の開口部47が形成される。
【0074】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
・各脆弱部41が三角形状の領域Z1と同一形状に形成されている。そのため、基材14からファブリック層19を三角形状に離間させるのに必要な箇所にのみ針刺し痕42を形成することができる。ファブリック層19の離間に関与しない針刺し痕42を少なくすることができる。
【0075】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0076】
<テアライン15について>
・
図4において二点鎖線で示すように、基材14のテアライン15に加え、クッション層18においてテアライン15の上方に対応する箇所にテアライン50が形成されてもよい。
【0077】
図4では、テアライン50がクッション層18の下面に形成されているが、これに代えて、又は加えて上面に形成されてもよい。
<クッション層18について>
・クッション層18は、クッション性(弾力性)を有する材料であることを条件に非発泡材によって形成されてもよい。
【0078】
<前ドア部27及び後ドア部31について>
・上記実施形態とは異なり、
図3に示す前ドア部27及び後ドア部31が、それらの間の間隙G1に設けられた連結部によって分離可能に連結されてもよい。この場合、連結部にテアラインが形成されてもよい。
【0079】
・前ドア部27及び後ドア部31の左右の側縁部は、それらの下方に位置する側壁部25の上端部から離れていてもよいし、同上端部に対し、連結部を介して分離可能に連結されてもよい。
【0080】
<針刺し痕42,43について>
・
図5中のファブリック層19における針刺し痕43が省略されてもよい。この場合、針刺し痕42は、クッション層18の厚み方向である上下方向に延びるように形成される。針刺し痕42は、クッション層18を貫通していて、上下方向における両面で開口されてもよい。また、針刺し痕42は、クッション層18の上下方向に貫通せず、同方向における一方の面においてのみ開口してもよい。
【0081】
例えば、基材14及びファブリック層19のいずれに対しても接着される前の単体のクッション層18を対象とし、その厚み方向における一方の面から他方の面に向けて針46を刺し、その後、針46を抜き出す。このようにすることで、クッション層18の厚み方向に延びて、同方向におけるクッション層18の少なくとも一方の面において開口する針刺し痕42を形成することができる。
【0082】
また、基材14及びファブリック層19のうち、基材14にのみ接着された状態のクッション層18を対象とし、その厚み方向における基材14から遠い側の面から針46を刺して抜き出す。このようにすることで、クッション層18の厚み方向に延びて、基材14から遠い側の面においてのみ開口する針刺し痕42を形成することができる。
【0083】
さらに、基材14及びファブリック層19のうち、ファブリック層19にのみ接着された状態のクッション層18を対象とし、その厚み方向におけるファブリック層19から遠い側の面から針46を刺して抜き出す。このようにすることで、クッション層18の厚み方向に延びて、ファブリック層19から遠い側の面においてのみ開口する針刺し痕42を形成することができる。
【0084】
上記各変形例では、ファブリック層19に針刺し痕43による開口が生じないので、エアバッグドア13(ファブリック層19)の外観がさらに向上する効果が得られる。
・複数の針刺し痕42は、一部がクッション層18を貫通するものによって構成され、残部が、貫通せず、クッション層18の厚み方向における一方の面においてのみ開口するものによって構成されてもよい。
【0085】
<脆弱部41>
・上記実施形態では、針刺し痕42により脆弱部41を形成しているが、各脆弱部41に形成されている細孔の形成方法としては針刺しだけに限らず、射出成形等でクッション層18を形成する際には金型に細孔形状を構成する凸部を予め準備しておき、材料の注入とともに細孔を形成するようにしてもよい。
【0086】
・各脆弱部41は、上記三角形の領域Z1を含むことを条件に、三角形とは異なる形状、例えば四角形状以上の多角形状、円形状、楕円形状等に形成されてもよい。
<その他>
・上記エアバッグ装置は、助手席用のエアバッグ装置とは異なるエアバッグ装置にも適用可能である。
【0087】
・上記エアバッグ装置は、自動車用内装品のうち、インストルメントパネル以外の箇所にエアバッグドアが設けられるエアバッグ装置にも適用可能である。
・上記エアバッグ装置は、リテーナにおける一対のドア部が前後方向とは異なる方向、例えば左右方向(車幅方向)に並設されたエアバッグ装置にも適用可能である。
【0088】
・上記エアバッグ装置は、自動車以外の乗物におけるエアバッグ装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0089】
10…自動車
11…インストルメントパネル
12…エアバッグ装置
13…エアバッグドア
14…基材
15…テアライン
18…クッション層
19…ファブリック層
21…リテーナ
22…筒状壁部
26…エアバッグ開口部
27…前ドア部(ドア部)
28…前ヒンジ部
31…後ドア部(ドア部)
32…後ヒンジ部
35…エアバッグ
41…脆弱部
42…針刺し痕(細孔)
43…針刺し痕
Z1…領域