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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用パーキングロック機構
(51)【国際特許分類】
   F16H 63/34 20060101AFI20230912BHJP
   B60T 1/06 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F16H63/34
B60T1/06 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020160232
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053402
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】森瀬 勝
【審査官】藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-541690(JP,A)
【文献】特開2018-141520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 63/34
B60T 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキングギヤと、
前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、該パーキングギヤと噛み合わされることにより該パーキングギヤの回転を阻止するパーキングポールと、
ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、該ロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、
前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、
を有し、前記カム機構は、前記ロック部材の移動方向に対して直角な軸心まわりに回転可能に該ロック部材に配設されたカムローラと、該カムローラと係合可能に前記パーキングポールに設けられたカム面とを備えており、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記カム面が前記カムローラと係合させられることにより前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させて噛み合わせるように構成されている、車両用パーキングロック機構において、
前記カムローラの軸心と平行な回動軸心まわりに回動可能に前記ロック部材に配設されているとともに、前記カムローラの外周面と転がり接触させられる円筒外周面を備えており、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記円筒外周面を介して前記カムローラの回転に伴って前記回動軸心まわりに回動させられ、前記パーキングロック状態において前記サポート部材側へ突き出す突出姿勢とされて該サポート部材と係合させられるストッパを有する
ことを特徴とする車両用パーキングロック機構。
【請求項2】
前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記サポート部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項3】
前記ストッパは、前記回動軸心と前記カムローラの軸心とが前記ロック部材の移動方向と直角な一直線上に位置するように該ロック部材に配設されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項4】
前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記サポート部材との係合部が前記ロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック解除位置側の部位を含んでいる
ことを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項5】
前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記サポート部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項6】
前記係合部において前記サポート部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜している
ことを特徴とする請求項4に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項7】
前記カムローラの外周面には、前記パーキングロック状態において前記ロック位置方向へ突出させられ、前記パーキングポールに所定の係合長さに亘って接触させられる固定部が設けられている
ことを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【請求項8】
前記ロック部材には、該ロック部材が前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動させられる際に前記ガイド部と係合させられて転がり回転させられることにより、該ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制するガイドローラが設けられている
ことを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の車両用パーキングロック機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用パーキングロック機構に係り、特に、Pレンジが選択された駐車中にパーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有し、(e) 前記カム機構は、前記ロック部材の移動方向に対して直角な軸心まわりに回転可能にそのロック部材に配設されたカムローラと、そのカムローラと係合可能に前記パーキングポールに設けられたカム面とを備えており、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記カム面が前記カムローラと係合させられることにより前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させて噛み合わせるように構成されている、車両用パーキングロック機構が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、スプラグ2がパーキングポールに相当し、一対のローラ7が設けられたロッド4がロック部材に相当し、押圧部材3がサポート部材に相当する。
【0003】
このような車両用パーキングロック機構は、シフトレバー等により駐車用のPレンジが選択された場合に、ロック部材をロック位置へ移動させてパーキングポールをパーキングギヤに噛み合わせることにより、パーキングギヤが設けられた回転軸を介して車輪を回転不能にロックする。その場合に、駐車した場所の路面勾配が大きいと、車両の重量でパーキングギヤに加えられる回転トルクに応じてパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重によりロック部材がロック解除位置側へ後退させられて、パーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けが生じる可能性がある。例えば、部品の寸法のばらつき等により、パーキングロック状態においてカムローラと係合させられるパーキングポールのロック側係合面が、パーキング解除位置側へ向かうに従ってガイド部材から離間する方向に傾くと、その傾斜に起因してカムローラにロック解除位置側へ転動するトルクが発生し、ロック部材にロック解除位置側へ後退する方向の力が加えられる場合がある。これに対し、特許文献2には、ロック部材(ウェッジ)の移動経路に進退可能にストッパ(ウェッジ規制手段)を設け、シフトレバーに連動してストッパを進退させることにより、ロック部材の後退を阻止してP抜けを防止する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-178891号公報
【文献】特開2018-141520号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の車両用パーキングロック機構においては、ロック部材の移動経路に突き出すストッパに対して横方向からロック部材が当接させられるため、ストッパには曲げ荷重が加えられ、ストッパを含む各部の必要強度が高くなり、装置が大型化して車両への搭載スペースが大きくなるなどの問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、装置の大型化を抑制しつつ坂路での駐車の際のP抜けが防止されるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) パーキングギヤと、(b) 前記パーキングギヤに対して接近離間可能に設けられて、そのパーキングギヤと噛み合わされることによりそのパーキングギヤの回転を阻止するパーキングポールと、(c) ロック位置とロック解除位置との間を往復移動可能に配設され、そのロック位置へ移動させられる際にカム機構を介して前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させ、前記ロック位置まで移動させられることにより前記パーキングポールによって前記パーキングギヤの回転が阻止されるパーキングロック状態とするロック部材と、(d) 前記ロック部材を挟んで前記パーキングポールと反対側に配設されており、前記ロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制しつつ前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動するように案内するガイド部が設けられているサポート部材と、を有し、(e) 前記カム機構は、前記ロック部材の移動方向に対して直角な軸心まわりに回転可能にそのロック部材に配設されたカムローラと、そのカムローラと係合可能に前記パーキングポールに設けられたカム面とを備えており、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記カム面が前記カムローラと係合させられることにより前記パーキングポールを前記パーキングギヤに接近させて噛み合わせるように構成されている、車両用パーキングロック機構において、(f) 前記カムローラの軸心と平行な回動軸心まわりに回動可能に前記ロック部材に配設されているとともに、前記カムローラの外周面と転がり接触させられる円筒外周面を備えており、前記ロック部材が前記ロック解除位置から前記ロック位置へ移動させられる際に前記円筒外周面を介して前記カムローラの回転に伴って前記回動軸心まわりに回動させられ、前記パーキングロック状態において前記サポート部材側へ突き出す突出姿勢とされてそのサポート部材と係合させられるストッパを有することを特徴とする。
【0008】
第2発明は、第1発明の車両用パーキングロック機構において、前記パーキングロック状態において、前記突出姿勢とされている前記ストッパと前記サポート部材との間の隙間は、前記ロック部材と前記ガイド部との間の隙間以下であることを特徴とする。
【0009】
第3発明は、第1発明または第2発明の車両用パーキングロック機構において、前記ストッパは、前記回動軸心と前記カムローラの軸心とが前記ロック部材の移動方向と直角な一直線上に位置するようにそのロック部材に配設されていることを特徴とする。
【0010】
第4発明は、第1発明~第3発明の何れかの車両用パーキングロック機構において、前記突出姿勢とされている前記ストッパは、前記サポート部材との係合部が前記ロック部材の移動方向において前記回動軸心よりも前記ロック解除位置側の部位を含んでいることを特徴とする。
【0011】
第5発明は、第4発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記ストッパと係合させられる前記サポート部材側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心から離間する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0012】
第6発明は、第4発明の車両用パーキングロック機構において、前記係合部において前記サポート部材と係合させられる前記ストッパ側の係合面は、前記ロック部材の移動方向と平行な直線に対して前記ロック位置側へ向かうに従って前記回動軸心に接近する方向へ傾斜していることを特徴とする。
【0013】
第7発明は、第1発明~第6発明の何れかの車両用パーキングロック機構において、前記カムローラの外周面には、前記パーキングロック状態において前記ロック位置方向へ突出させられ、前記パーキングポールに所定の係合長さに亘って接触させられる固定部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
第8発明は、第1発明~第7発明の何れかの車両用パーキングロック機構において、前記ロック部材には、そのロック部材が前記ロック位置と前記ロック解除位置との間を移動させられる際に前記ガイド部と係合させられて転がり回転させられることにより、そのロック部材が前記パーキングポールと反対側へ変位することを規制するガイドローラが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような車両用パーキングロック機構においては、ロック部材に配設されたストッパが、パーキングロック状態においてサポート部材側へ突き出す突出姿勢とされるため、坂路での駐車の際にパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポールからカムローラに加えられると、そのカムローラとサポート部材との間でストッパが挟圧される。そして、この挟圧力によりストッパの姿勢変化が制約されるため、そのストッパの円筒外周面と係合させられているカムローラの回転が抑制され、ロック部材をロック解除位置側へ後退させる方向のカムローラのトルクが低減されて、ロック部材の後退によりパーキングポールがパーキングギヤから抜け出すP抜けが抑制される。その場合に、ストッパはカムローラとサポート部材との間で挟圧されて圧縮荷重を受けるため、従来のように曲げ荷重が加えられる場合に比較してストッパ等の必要強度が低減され、小型化が可能である。
【0016】
第2発明では、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパとサポート部材との間の隙間が、ロック部材とガイド部との間の隙間以下であるため、カムローラに押出し荷重が加えられた場合に、そのカムローラとサポート部材との間でストッパが確実に挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0017】
第3発明では、ストッパの回動軸心とカムローラの軸心とがロック部材の移動方向と直角な一直線上に位置しているため、パーキングポールからカムローラに加えられる押出し荷重によりストッパが確実にサポート部材との間で挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0018】
第4発明では、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパとサポート部材との係合部が、ロック部材の移動方向においてストッパの回動軸心よりもロック解除位置側の部位を含んでいるため、カムローラに押出し荷重が作用してロック部材がロック解除位置側へ移動しようとすると、ストッパがサポート部材側の係合部を支点として姿勢変化する際に、そのストッパの回動軸心がパーキングポール側へ変位させられる。その場合に、その回動軸心の変位でロック部材やカムローラがパーキングポール側へ押し返されるが、パーキングポールに押出し荷重が加えられていると実質的にロック状態になり、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0019】
第5発明では、ストッパと係合させられるサポート部材側の係合面が、ロック位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜しているため、カムローラに押出し荷重が作用してストッパがサポート部材に押圧されると、サポート部材の係合面の傾斜に基づいてストッパの回動軸心にロック位置側へ向かう方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0020】
第6発明では、サポート部材と係合させられるストッパ側の係合面が、ロック位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜しているため、カムローラに押出し荷重が作用してストッパがサポート部材に押圧されると、ストッパの係合面の傾斜に基づいてストッパの回動軸心にロック位置側へ向かう方向のトルクが発生するとともに、そのストッパからロック部材にロック位置側へ向かう方向の力が加えられるため、ロック部材のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0021】
第7発明は、カムローラの外周面に固定部が設けられ、パーキングロック状態においてパーキングポールに所定の係合長さに亘って接触させられるようになっているため、坂路での駐車の際にパーキングポールからカムローラに押出し荷重が加えられると、相対的に固定部がパーキングポールに押圧されて滑り摩擦が発生し、その滑り摩擦に基づいてカムローラが転動し始めるまでの回転抵抗が大きくなる。これにより、そのカムローラの転動に伴ってロック部材に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減され、前記ストッパによるP抜け抑制作用と併せて、坂路での駐車時のP抜けが一層確実に抑制される。
【0022】
第8発明は、ガイド部と係合させられて転がり回転させられることによりロック部材がパーキングポールと反対側へ変位することを規制するガイドローラがロック部材に配設されている場合で、カムローラがカム面と係合させられるとともにガイドローラがガイド部と係合させられることにより、それ等のカムローラおよびガイドローラの回転でロック部材がロック位置とロック解除位置との間を円滑に移動させられる。この場合、坂路での駐車時にパーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生すると、その押出し荷重によってロック部材が容易にロック解除位置側へ移動してP抜けが生じる可能性があるため、ストッパを設けて坂路での駐車時のP抜けを抑制するという本発明の効果が顕著に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施例である車両用パーキングロック機構を説明する図で、パーキングロック状態における概略構成図である。
図2図1の車両用パーキングロック機構におけるロック部材の近傍部分を説明する図で、一部を切り欠いて示した正面図である。
図3図1の車両用パーキングロック機構のロック解除状態を説明する図で、図2に対応する正面図である。
図4図1の車両用パーキングロック機構が備えているロック部材の連結ヘッドを単独で示した正面図である。
図5図4の連結ヘッドの平面図である。
図6図5におけるVI-VI矢視部分の断面図である。
図7図1の車両用パーキングロック機構のロック部材に設けられたストッパが突出姿勢とされ、サポート部材と係合させられた状態を説明する図である。
図8】ストッパとサポート部材との係合態様の別の例を説明する図で、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図9】ストッパとサポート部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、係合部分の拡大図を併せて示した図である。
図10】ストッパとサポート部材との係合態様の更に別の例を説明する図で、図7に対応する図である。
図11】本発明の他の実施例を説明する図で、図2に対応する図である。
図12】本発明の更に別の実施例を説明する図で、パーキングロック状態におけるストッパ付近を示した図である。
図13】本発明の更に別の実施例を説明する図で、図7に対応する図である。
図14】本発明の更に別の実施例を説明する図で、パーキングロック状態時におけるカム機構部分を拡大して示した正面図である。
図15図14の実施例のロック解除状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の車両用パーキングロック機構は、例えばシフトレバーによってリンクやケーブル等の連動装置を介してシフトレンジが機械的に切り替えられる手動操作式のパーキングロック機構に適用されるが、シフトレバー等のシフトレンジ選択装置によって選択されたシフトレンジを、電動式や油圧式等のシフトアクチュエータにより電気的に成立させるシフトバイワイヤ(SBW)方式のパーキングロック機構にも適用され得る。シフトレンジとしては、少なくとも動力伝達を遮断するとともに出力軸の回転を機械的に阻止する駐車用のP(パーキング)レンジを有し、そのPレンジが選択された場合にパーキングロック機構がパーキングロック状態とされる。Pレンジの他には、例えば前進走行が可能なD(ドライブ)レンジや、後進走行が可能なR(リバース)レンジなどがある。車両としては、燃料の燃焼によって動力を発生するエンジン駆動車両や、電動モータによって駆動する電気自動車、或いは複数の動力源を備えているハイブリッド車両など、種々の車両に適用され得る。
【0025】
パーキングギヤは、車輪の回転に伴って機械的に回転させられる回転軸(出力軸など)に設けられ、そのパーキングギヤにパーキングポールが噛み合わされることにより、その回転軸の回転、更には車輪の回転が機械的に阻止される。ロック部材は、例えばパーキングロッドの先端部に配設されて、パーキングロッドと共にロック位置およびロック解除位置へ往復移動させられるが、ばね部材等の付勢装置によってロック解除位置側への後退可能とされる。
【0026】
パーキングロック状態におけるストッパの突出姿勢は、坂路等において車両の重量でパーキングギヤに回転トルクが加えられ、パーキングポールをパーキングギヤから押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポールからカムローラに加えられた場合に、その押出し荷重の少なくとも一部がストッパを介してサポート部材に伝達されれば良い。すなわち、押出し荷重が加えられるまでは、ストッパとサポート部材との間に隙間がある場合でも、押出し荷重が加えられた場合にロック部材が後退させられる前に各部の弾性変形等によりストッパがサポート部材に当接させられれば良い。パーキングロック状態におけるストッパとサポート部材との間の隙間が、ロック部材とガイド部との間の隙間以下であれば、押出し荷重が加えられた場合にストッパが確実にサポート部材に当接させられるが、ロック部材とガイド部との間の隙間よりも大きな隙間がある場合でも、ロック部材が後退させられる前に各部の弾性変形等によりストッパがサポート部材に当接させられれば良い。
【0027】
ストッパは、例えばカムローラの回転に伴って相対回転させられることにより、ロック部材がロック解除位置からロック位置へ移動させられた場合に突出姿勢とされ、ロック部材がロック位置からロック解除位置へ移動させられた場合にサポート部材との係合が解除され、ロック部材とガイド部との係合を許容する退避姿勢とされる。ストッパやカムローラがスリップする可能性がある場合は、ロック部材の移動に伴ってストッパを突出姿勢と退避姿勢とに確実に姿勢変化させるため、ばね等の付勢装置を用いてストッパを回動軸心まわりに回動させたり、ストッパと係合させられて姿勢変化させる案内面や当接面、リンク等をサポート部材に設けたりしても良い。
【0028】
ストッパおよびカムローラは、例えばロック部材に設定された一定の配設位置に回転可能に配設されるが、カムローラをロック部材の移動方向と直角な方向へ変位可能にロック部材に配設し、カムローラの外周面が確実にストッパの円筒外周面に接触させられるようにすることもできる。パーキングロック状態においてパーキングポールに加えられた押出し荷重はカムローラに伝達され、カムローラからストッパを介してサポート部材に伝達されるが、ストッパおよびカムローラが何れもロック部材の一定の配設位置に配設されている場合など、カムローラに加えられた押出し荷重の一部がロック部材を介してストッパに伝達されても良い。
【0029】
ストッパは、例えばその回動軸心とカムローラの軸心とがロック部材の移動方向と直角な一直線上に位置するようにロック部材に配設されるが、ストッパの回動軸心をカムローラの軸心よりもロック位置側、或いはロック解除位置側へずらして設定することもできる。例えばストッパの回動軸心をカムローラの軸心よりもロック位置側へずらすと、押出し荷重に基づいてカムローラがストッパに押圧された場合に、両者の軸心のずれに起因してカムローラにはロック位置側へ転動する方向のトルクが発生し、坂路での駐車時のP抜けが一層確実に抑制される。
【0030】
パーキングロック状態において突出姿勢のストッパとサポート部材との係合部は、例えばロック部材の移動方向において回動軸心と同じ位置を含んで定められるが、回動軸心よりもロック解除位置側の部位を含むことが望ましい。また、ストッパとサポート部材との係合部における両者の係合面は、例えばロック部材の移動方向と平行に定められるが、その係合部におけるサポート部材側の係合面をロック位置側へ向かうに従って回動軸心から離間する方向へ傾斜させたり、逆にストッパ側の係合面をロック位置側へ向かうに従って回動軸心に接近する方向へ傾斜させたりしても良いし、両方の係合面を傾斜させても良いなど、種々の態様が可能である。
【0031】
カムローラの外周面には、例えばパーキングロック状態においてロック位置方向へ突出させられてパーキングポールに所定の係合長さに亘って接触させられる固定部を設けることができるが、全周に亘って軸心を中心とする円筒面としても良い。また、ロック部材には、例えばロック部材がロック位置とロック解除位置との間を移動させられる際にガイド部と係合させられて転がり回転させられることにより、ロック部材がパーキングポールと反対側へ変位することを規制するガイドローラが設けられるが、ガイドローラを設けることなくロック部材の一部をガイド部に滑り接触させるだけでも良い。ガイドローラは、ロック部材の任意の位置に設けることができるが、例えばストッパと一体に設けることも可能である。
【実施例
【0032】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0033】
図1は、本発明の一実施例である車両用パーキングロック機構10を説明する概略構成図である。この車両用パーキングロック機構10は、シフトレバー12によってリンクやプッシュプルケーブル等の連動装置14を介してシフトレンジが機械的に切り替えられる手動操作式のパーキングロック機構である。シフトレバー12は運転席の近傍に配設されており、運転者のシフト操作に従ってP(パーキング)、R(リバース)、N(ニュートラル)、D(ドライブ)の4位置へ回動させられるようになっている。P位置は、動力伝達を遮断するとともに自動変速機の出力軸16の回転を機械的に阻止する駐車用のPレンジを選択するシフト操作位置で、R位置は、後進走行を可能とするRレンジを選択するシフト操作位置である。また、N位置は、動力伝達を遮断するNレンジを選択するシフト操作位置で、D位置は、前進走行を可能とするDレンジを選択するシフト操作位置である。
【0034】
シフトレバー12は、連動装置14を介してアウタレバー18に連結されている。アウタレバー18はマニュアルシャフト20に固定されているとともに、マニュアルシャフト20にはディテントプレート22が固設されている。したがって、シフトレバー12のシフト操作位置に応じて、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の軸心まわりに回動させられ、P位置、R位置、N位置、D位置の4つの回動位置に位置決めされる。ディテントプレート22の先端部には4箇所の位置決め凹所24を有する凹凸が設けられており、その位置決め凹所24に係止部26が係合させられるようになっている。係止部26は板ばね28の先端部を丸めたもので、その板ばね28の弾性変形により凹凸形状に倣って変位させられるとともに、P、R、N、Dの各回動位置でディテントプレート22に所定の節度(位置決め力)が付与される。板ばね28は、変速機ケース等に固設されたサポート部材30に取り付けられている。図1は、シフトレバー12がP位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の時計まわりに機械的に回動させられてP位置に保持された状態である。
【0035】
ディテントプレート22には連結穴32が設けられ、パーキングロッド34が相対回動可能に連結されており、ディテントプレート22の回動に伴ってパーキングロッド34が長手方向、すなわち図1における左右方向へ略直線的に往復移動させられ、図1の右方向であるロック位置と、左方向のロック解除位置とへ移動させられる。ロック位置は、図1に示されるようにシフトレバー12がP位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の時計まわりにP位置まで回動させられた場合の位置である。ロック解除位置は、シフトレバー12がR位置等の非P位置へシフト操作され、ディテントプレート22がマニュアルシャフト20の反時計まわりにR位置等の非P位置へ回動させられた場合の位置である。本実施例では、R位置~D位置の非P位置ではパーキングロッド34が一定のロック解除位置に保持されるように、シフトレバー12とパーキングロッド34との間に遊び機構が設けられている。言い換えれば、シフトレバー12がP位置へ操作されると、パーキングロッド34は図1における右方向のロック位置とされ、シフトレバー12がR位置へ操作されると、パーキングロッド34は図1における左方向のロック解除位置とされる。また、シフトレバー12がR位置~D位置の非P位置間で操作された場合は、そのシフト操作に拘らずパーキングロッド34は一定のロック解除位置に保持される。
【0036】
パーキングロッド34の先端部には、パーキングポール40と係合させられるロック部材42が配設されており、そのロック部材42がパーキングロッド34と共にロック位置へ移動させられることにより、パーキングポール40が図1の下方側へ回動させられ、噛合い歯40pがパーキングギヤ44と噛み合わされる。パーキングギヤ44は、自動変速機の出力軸16に相対回転不能に取り付けられている。パーキングポール40は、出力軸16と平行なポール軸46の軸心まわりに回動可能に変速機ケース等に配設されているとともに、付勢装置であるリターンスプリング48によって噛合い解除方向(図1における時計まわり方向)へ付勢されており、ロック部材42はリターンスプリング48の付勢力に抗してパーキングポール40を噛合い方向(図1における反時計まわり方向)へ回動させる。すなわち、パーキングポール40は、噛合い歯40pがパーキングギヤ44に対して接近離間可能に配設されており、パーキングポール40がロック部材42によって図1の下方側である噛合い方向へ回動させられると、噛合い歯40pがパーキングギヤ44に接近させられて噛み合わされ、そのパーキングギヤ44の回転、更には出力軸16および車輪の回転が機械的に阻止されるパーキングロック状態となる。図1は、このパーキングロック状態を示した図である。
【0037】
上記ロック部材42は、付勢装置であるばね部材(実施例では圧縮コイルスプリング)50によってパーキングロッド34の先端側へ付勢され、ロック位置側の先端位置に保持されてパーキングポール40を噛合い方向へ回動させるが、パーキングポール40とパーキングギヤ44とが干渉した場合にはばね部材50の付勢力に抗してロック部材42がパーキングロッド34に対して相対的にロック解除位置方向へ後退することが許容される。ロック部材42は、移動方向と直角な方向(図1における上下方向)に所定の遊びを有する状態すなわち変位可能な状態で、サポート部材30によってロック位置とロック解除位置との間を直線往復移動可能に支持されている。また、前記マニュアルシャフト20は出力軸16と平行な姿勢で、出力軸16を挟んでポール軸46と反対側に配設されており、ロック部材42は、パーキングポール40の先端側(図1における左側)からパーキングポール40に接近させられるようになっている。
【0038】
図2および図3は、上記ロック部材42およびその近傍部分を詳しく説明する図で、一部を切り欠いて示した正面図であり、図2図1と同じパーキングロック状態である。図3は、ロック部材42がロック解除位置へ移動させられて、パーキングポール40とパーキングギヤ44との噛合いが解除されたロック解除状態である。これ等の図において、ロック部材42は、連結ヘッド60、カムローラ62、ガイドローラ64、およびストッパ66を備えて構成されている。
【0039】
図4は、上記連結ヘッド60を単独で示した正面図で、図5は連結ヘッド60の平面図、図6図5におけるVI-VI矢視部分の断面図である。この連結ヘッド60は、略U字状の二股形状を成しており、前記パーキングロッド34が挿通させられる挿通穴70が設けられた連結部72と、その連結部72の両端から挿通穴70の軸方向へ延び出す互いに平行な一対の側壁部74とを備えている。パーキングロッド34は、図2図3に示されているように挿通穴70内を軸方向に相対移動可能に挿通させられているとともに、その挿通穴70から連結ヘッド60内に突き出す先端部にはナット76が固設されており、前記ばね部材50は挿通穴70の周縁部に係止されている。したがって、連結ヘッド60は、通常はばね部材50の付勢力に従って連結部72がナット76に当接させられるパーキングロッド34の先端位置に保持されているとともに、ばね部材50の付勢力に抗してナット76から離間させられ、パーキングロッド34に対して相対的にロック解除位置方向へ後退することが許容される。
【0040】
連結ヘッド60は、一対の側壁部74が出力軸16の軸心に対して垂直になる姿勢、すなわち図1図3において一対の側壁部74が紙面と平行で且つ紙面の表裏方向に離間して位置する姿勢で、サポート部材30によって保持されている。一対の側壁部74には、それぞれ同じ位置にカムローラ取付穴80、ガイドローラ取付穴82、およびストッパ取付穴84が設けられているとともに、連結部72と反対側の先端側部分には補強連結部86が設けられている。
【0041】
カムローラ取付穴80は、側壁部74の長手方向と直角方向すなわちロック部材42の移動方向と直角な上下方向に長い長穴で、図2図3に示されているように、前記カムローラ62を出力軸16と略平行になる姿勢で上下方向に所定の遊びを有する状態で保持している。すなわち、カムローラ62は、ロック部材42の移動方向に対して直角な軸心S1まわりに回転可能な状態で、両端部において一対の側壁部74のカムローラ取付穴80によって支持されている。ガイドローラ取付穴82は、カムローラ取付穴80よりも上方側で且つ連結部72側すなわちロック解除位置側にずれた位置に設けられており、図2図3に示されているように、前記ガイドローラ64を出力軸16と略平行になる姿勢で保持している。すなわち、ガイドローラ64は、ロック部材42の移動方向に対して直角な軸心S2まわりに回転可能な状態で、両端部において一対の側壁部74のガイドローラ取付穴82によって支持されている。ストッパ取付穴84は、カムローラ取付穴80の上方位置に設けられており、図2図3に示されているように、前記ストッパ66が取付ピン100を介してロック部材42の移動方向に対して直角な回動軸心S3まわりに回動可能に保持されている。すなわち、取付ピン100はストッパ66の両側部に突き出しており、両端部が一対の側壁部74のストッパ取付穴84内に挿入されて支持されることにより、ストッパ66が一対の側壁部74の間で出力軸16と平行な回動軸心S3まわりに回動可能な状態で保持されている。ストッパ66が取付ピン100に対して回動可能に取り付けられても良いし、取付ピン100が側壁部74に対して回動可能に取り付けられても良い。これ等のカムローラ62、ガイドローラ64、およびストッパ66の取付ピン100は、一対の側壁部74の外側面に密着するようにそれぞれねじ88によって取り付けられる一対の押え板90(図1参照)により、連結ヘッド60からの脱落が阻止されている。なお、カムローラ62およびガイドローラ64についても、ストッパ66と同様に取付ピンを介して連結ヘッド60に配設しても良い。
【0042】
上記カムローラ62は、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際に、パーキングポール40と係合させられて転がり回転させられることにより、そのパーキングポール40をパーキングギヤ44に接近させて噛み合わせるもので、パーキングポール40には、カムローラ62と係合させられることによりパーキングポール40を噛合い方向へ回動させるカム面(本実施例では傾斜面)92が設けられている。また、ガイドローラ64は、ロック部材42がロック位置とロック解除位置との間を移動させられる際に、サポート部材30に設けられたガイド部94と係合させられて転がり回転させられることにより、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制するためのものである。ガイド部94は、ロック部材42を挟んでパーキングポール40と反対側に、ロック部材42の移動方向と平行(図1図3における左右方向)に設けられており、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつロック位置とロック解除位置との間を略直線的に往復移動するように、ガイドローラ64を介してロック部材42を案内する。本実施例ではカムローラ62よりも小径のガイドローラ64が用いられているが、ガイドローラ64の径寸法は適宜定めることができる。
【0043】
これにより、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際には、カムローラ62およびガイドローラ64がそれぞれパーキングポール40、ガイド部94と係合させられ、軸心S1、S2まわりに転がり回転させられることにより、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制しつつ、カムローラ62とカム面92との係合によりパーキングポール40を噛合い方向へ回動させてパーキングギヤ44と噛み合わせることができる。そして、ロック部材42がロック位置まで移動させられたパーキングロック状態では、ロック部材42の移動方向と平行になるようにパーキングポール40に設けられたロック側係合面40a(図2参照)にカムローラ62が係合させられ、何れもロック部材42の移動方向と平行に設けられたロック側係合面40aとガイド部94との間にカムローラ62およびガイドローラ64が挟まれた状態となる。これにより、カムローラ62およびガイドローラ64の転がり抵抗と相まって、パーキングロック状態が安定的に維持される。本実施例では、上記カムローラ62およびカム面92を含んで、パーキングポール40をパーキングギヤ44に接近させて噛み合わせるカム機構96が構成されている。
【0044】
ここで、坂路での駐車の際に車両の重量でパーキングギヤ44に回転トルクが加えられると、その回転トルクに応じてパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生する。そして、このような押出し荷重がパーキングポール40からカムローラ62に加えられると、比較的安定的に維持されるパーキングロック状態においても、ロック部材42がロック解除位置側へ後退させられて、パーキングポール40の噛合い歯40pがパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが生じる可能性がある。例えば、部品の寸法のばらつき等により、カムローラ62と係合させられるパーキングポール40のロック側係合面40aが、パーキング解除位置側へ向かうに従ってガイド部94から離間する方向に傾くと、その傾斜に起因してカムローラ62にロック解除位置側へ転動するトルクが発生し、ロック部材42にロック解除位置側へ後退する方向の力が加えられる場合がある。
【0045】
これに対し、本実施例ではロック部材42に設けられた前記ストッパ66により上記P抜けが抑制されるようになっている。ストッパ66は、図7に拡大して示されているように、その回動軸心S3とカムローラ62の軸心S1とが、ロック部材42の移動方向であるガイド部94の延長線と直角な一直線である垂直線V1上に位置するようにロック部材42に配設されている。すなわち、連結ヘッド60に設けられた前記カムローラ取付穴80およびストッパ取付穴84の中心点が、垂直線V1上に位置するように設定されている。また、ストッパ66は、カムローラ62の外周面と転がり接触させられる円筒外周面102と、回動軸心S3まわりにおいて円筒外周面102と反対方向へ突き出す突出部104とを備えており、ロック部材42がロック解除位置とロック位置との間を移動させられる際に、円筒外周面102を介してカムローラ62の回転に伴って回動軸心S3まわりに回動させられ、図2に示されている突出姿勢と図3に示されている退避姿勢とに姿勢変化させられる。図7は、図2と同じパーキングロック状態であり、ストッパ66は、突出部104がサポート部材30側へ突き出す突出姿勢とされている。円筒外周面102は、回動軸心S3を中心とする円筒面で、突出部104を除いた所定の角度範囲(実施例では約280°)に設けられている。円筒外周面102の半径は、本実施例ではカムローラ62の半径と略同じであるが、例えば突出姿勢および退避姿勢に応じて適宜定めることができる。
【0046】
ストッパ66の突出姿勢は、突出部104の先端部に設けられた平坦な係合面104aが、サポート部材30に設けられた平坦な係合面30aに密着するように当接させられるとともに、それ等の係合面30a、104aが垂直線V1と直角になる垂直姿勢である。係合面30aは、ガイド部94と平行すなわちロック部材42の移動方向と平行な平坦面であるとともに、ロック部材42の移動方向において回動軸心S3を通る垂直線V1の両側を含む係合範囲L1で係合面104aと密着させられる。係合範囲L1は、目的とするP抜け抑制効果が得られるとともに、シフトレバー12のシフト操作に伴うP抜き動作が適切に行なわれるように、予め実験等により適当に定められる。ストッパ66は、連結ヘッド60の一対の側壁部74の内側寸法よりも僅かに小さい幅寸法(実施例では約12mm)を有し、係合面30a、104aは長方形の平坦面である。このストッパ66の先端部形状を、サポート部材30に対して略点接触となるように半球形状としたり、回動軸心S3と平行な線接触となるように断面が半円形の半円柱形状としたりするなど、必要強度が得られる範囲で適宜変更できる。サポート部材30側の係合面30aを半球形状や半円柱形状としても良い。
【0047】
図7のパーキングロック状態においてストッパ66が上記突出姿勢となるように、サポート部材30には、上記係合面104aのロック位置側にストッパ案内面106が設けられているとともに、係合面104aのロック解除位置側にストッパ当接面108が設けられている。すなわち、ストッパ66はカムローラ62の回転に伴って回動軸心S3まわりに回動させられるが、スリップ等により回転位相がずれる可能性があるため、ロック部材42がロック解除位置からロック位置へ移動させられる際にストッパ66の回転が遅れている場合には、ストッパ案内面106によりストッパ66を図7において反時計まわりに回動させ、ロック部材42がロック位置まで移動させられた時にストッパ66が確実にストッパ当接面108に当接させられて突出姿勢となるようにする。また、ストッパ66の回転が進んでいる場合には、ストッパ66がストッパ当接面108に当接させられることにより、ロック部材42がロック位置まで移動させられた時に突出姿勢に保持されるようにする。また、ストッパ66を取付ピン100の反時計まわり方向へ回動させるように付勢するねじりコイルスプリングや板ばね等の付勢装置を設けることもできる。
【0048】
そして、坂路等でパーキングポール40から図7において上向きの押出し荷重がカムローラ62に加えられると、ロック部材42がロック解除位置側へ後退させられる前に係合面104aと係合面30aとが係合させられるように、その押出し荷重が無い状態において、係合面104aと係合面30aとの間の隙間がガイドローラ64とガイド部94との間の隙間以下で、本実施例では何れの隙間も略0になるように、ストッパ66の寸法や配設位置等が定められている。この場合、坂路等でパーキングポール40に押出し荷重が加えられると、ロック部材42がロック解除位置側へ後退させられる前に係合面104aと係合面30aとが係合させられてストッパ66がカムローラ62とサポート部材30との間で挟圧され、この挟圧力によりストッパ66の姿勢変化(回動軸心S3まわりの回動)が制約される。本実施例では、係合面104aと係合面30aとが垂直線V1と直角な姿勢で面接触させられるため、ストッパ66の姿勢が安定して何れの方向への回動も抑制される。このため、そのストッパ66の円筒外周面102と係合させられているカムローラ62の回転が抑制され、押出し荷重によりカムローラ62に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルク、すなわちロック部材42をロック解除位置側へ後退させる方向のカムローラ62のトルクが低減されて、ロック部材42の後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。
【0049】
また、突出姿勢とされているストッパ66とサポート部材30とは、ロック部材42の移動方向において回動軸心S3を通る垂直線V1の両側を含む係合範囲L1で係合させられており、回動軸心S3よりもロック解除位置側の部位を含んでいる。このため、カムローラ62に押出し荷重が作用してロック部材42にロック解除位置側へ後退する方向(図7の左方向)の力が加えられると、係合範囲L1の中のロック解除位置側の係合点P1を支点としてストッパ66が姿勢変化させられ、取付ピン100は係合点P1を中心として図7の左下方向へ回動させられる。すなわち、ロック部材42には取付ピン100を介してパーキングポール40側へ押し返される方向の力が加えられ、パーキングポール40から加えられる押出し荷重との間で実質的にロック状態になり、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。本実施例では、上記係合範囲L1が係合部に相当する。
【0050】
一方、ロック部材42がロック位置からロック解除位置へ移動させられる際に、ストッパ66は、円筒外周面102を介してカムローラ62の回転に伴って回動軸心S3まわりに回動させられて退避姿勢とされる。この退避姿勢は、係合面104aが係合面30aから離間させられ、ガイド部94によるロック部材42の案内が可能となる姿勢で、ガイドローラ64をガイド部94に確実に接触させることができる姿勢であり、図3のロック解除位置におけるストッパ66の姿勢に限らない。図3は、ロック部材42がロック解除位置まで移動させられて、パーキングポール40とパーキングギヤ44との噛合いが解除されたロック解除状態で、カムローラ62はカム面92を通過し、ロック部材42の移動方向と略平行なロック解除側係合面40bに係合させられている。ロック部材42がロック解除位置側へ移動させられる際に、ストッパ66とカムローラ62との間、或いはカムローラ62とパーキングポール40との間でスリップが生じても、ロック部材42の移動に伴ってストッパ66はガイド部94に乗り上げるように姿勢変化させられ、ガイドローラ64をガイド部94に接触させることができる退避姿勢となる。ガイド部94は、ストッパ66の姿勢を変化させる姿勢変換部としても機能する。
【0051】
このように、本実施例の車両用パーキングロック機構10においては、ロック部材42に配設されたストッパ66が、パーキングロック状態においてサポート部材30側へ突き出す突出姿勢とされるため、坂路での駐車の際にパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生し、その押出し荷重がパーキングポール40からカムローラ62に加えられると、そのカムローラ62とサポート部材30との間でストッパ66が挟圧される。そして、この挟圧力によりストッパ66の姿勢変化が制約されるため、そのストッパ66の円筒外周面102と係合させられているカムローラ62の回転が抑制され、ロック部材42をロック解除位置側へ後退させる方向のカムローラ62のトルクが低減されて、ロック部材42の後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。その場合に、ストッパ66はカムローラ62とサポート部材30との間で挟圧されて圧縮荷重を受けるため、従来のように曲げ荷重が加えられる場合に比較してストッパ66やロック部材42の必要強度が低減され、それ等の小型化や軽量化が可能である。
【0052】
また、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパ66とサポート部材30との係合範囲L1が、ロック部材42の移動方向においてストッパ66の回動軸心S3よりもロック解除位置側の部位(係合点P1)を含んでいるため、カムローラ62に押出し荷重が作用してロック部材42がロック解除位置側へ移動しようとすると、ストッパ66が係合点P1を支点として姿勢変化する際に、そのストッパ66の回動軸心S3がパーキングポール40側へ変位させられる。この回動軸心S3の変位でロック部材42やカムローラ62がパーキングポール40側へ押し返されるが、パーキングポール40から加えられる押出し荷重との間で実質的にロック状態になり、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0053】
また、パーキングロック状態において突出姿勢とされているストッパ66とサポート部材30との間の隙間、すなわち係合面104aと係合面30aとの間の隙間が、ロック部材42のガイドローラ64とガイド部94との間の隙間以下で、本実施例では何れの隙間も略0とされるため、カムローラ62に押出し荷重が加えられた場合に、そのカムローラ62とサポート部材30との間でストッパ66が確実に挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0054】
また、ストッパ66の回動軸心S3とカムローラ62の軸心S1とがロック部材42の移動方向と直角な垂直線V1上に位置しているため、パーキングポール40からカムローラ62に加えられる押出し荷重によりストッパ66が確実にサポート部材30との間で挟圧され、坂路での駐車時のP抜けを抑制する効果が適切に得られる。
【0055】
また、ガイド部94と係合させられて転がり回転させられることによりロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制するガイドローラ64がロック部材42に配設されているため、カムローラ62がカム面92と係合させられるとともにガイドローラ64がガイド部94と係合させられることにより、それ等のカムローラ62およびガイドローラ64の回転でロック部材42がロック位置とロック解除位置との間を円滑に移動させられる。この場合、坂路での駐車時にパーキングポール40をパーキングギヤ44から押し出す押出し荷重が発生すると、その押出し荷重によってロック部材42が容易にロック解除位置側へ移動してP抜けが生じる可能性があるため、ストッパ66を設けて坂路での駐車時のP抜けを抑制するという効果が顕著に得られる。
【0056】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において前記実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
【0057】
図8は、パーキングロック状態におけるストッパ66の近傍部分を示した図で、ストッパ66とサポート部材30との係合部分の拡大図を併せて示した図であり、サポート部材30に設けられた係合面30bが、前記実施例の係合面30aと相違している。この係合面30bは、ロック部材42の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図8の右方向であるロック位置側へ向かうに従って回動軸心S3から離間する方向へ角度α1で傾斜している。角度α1は、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面30bと係合させられるストッパ66の係合面104aは、ストッパ66が突出姿勢とされた状態においてロック部材42の移動方向と平行であり、回動軸心S3よりもロック解除位置側の係合点P1のみでサポート部材30の係合面30bと係合させられる。本実施例では係合点P1が係合部である。
【0058】
本実施例によれば、押出し荷重によりカムローラ62とサポート部材30との間でストッパ66が挟圧されることにより、ストッパ66の姿勢変化が制約されるとともにカムローラ62の回転が抑制され、押出し荷重によりカムローラ62に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される、という前記実施例と同様の作用効果が得られる。加えて、サポート部材30の係合面30bがロック位置側へ向かうに従って回動軸心S3から離間する方向へ傾斜しているため、カムローラ62に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、サポート部材30の係合面30bの傾斜に基づいて、係合点P1まわりにおいてストッパ66の回動軸心S3がロック位置側へ向かう方向(図8における反時計まわり方向)のトルクが発生するとともに、そのストッパ66の取付ピン100を介してロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0059】
図9は、前記図8と同様にパーキングロック状態におけるストッパ66の近傍部分を示した図で、ストッパ66とサポート部材30との係合部分の拡大図を併せて示した図であり、ストッパ66に設けられた係合面104bが、図7の実施例の係合面104aと相違している。この係合面104bは、ロック部材42の移動方向と平行な直線、すなわちガイド部94と平行な直線に対し、図9の右方向であるロック位置側へ向かうに従って回動軸心S3に接近する方向へ角度β1で傾斜している。角度β1は、例えば0.5°~2°程度の範囲内で、本実施例では約1°である。係合面104bと係合させられるサポート部材30の係合面30aは、ロック部材42の移動方向と平行であり、係合点P1のみでストッパ66の係合面104bと係合させられる。本実施例では係合点P1が係合部である。
【0060】
本実施例によれば、押出し荷重によりカムローラ62とサポート部材30との間でストッパ66が挟圧されることにより、ストッパ66の姿勢変化が制約されるとともにカムローラ62の回転が抑制され、押出し荷重によりカムローラ62に生じるロック解除位置側へ転動する方向のトルクが低減されてP抜けが抑制される、という前記実施例と同様の作用効果が得られる。加えて、ストッパ66の係合面104bがロック位置側へ向かうに従って回動軸心S3に接近する方向へ傾斜しているため、ロック部材42に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、ストッパ66の係合面104bの傾斜に基づいて、係合点P1まわりにおいてストッパ66の回動軸心S3がロック位置側へ向かう方向(図9における反時計まわり方向)のトルクが発生するとともに、そのストッパ66の取付ピン100を介してロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられるため、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが一層適切に抑制される。
【0061】
図10は、前記図8の実施例に比較して、突出姿勢とされたストッパ66の係合面104aがサポート部材30の係合面30bに密着させられ、所定の係合範囲L1で係合させられる点が相違する。すなわち、回動軸心S3を通る係合面30b、104aの垂直線が、ロック部材42の移動方向と平行なガイド部94の延長線に対して直角な垂直線V1に対して角度α1だけロック解除位置側へ傾斜する姿勢が突出姿勢である。したがって、本実施例においても、カムローラ62に押出し荷重が作用してストッパ66がサポート部材30に押圧されると、係合面30bの傾斜に基づいてロック部材42にロック位置側へ向かう方向の力Frが加えられ、ロック部材42のロック解除位置側への移動が阻害されてP抜けが適切に抑制される。
【0062】
図11は、前記図2に対応する図で、前記実施例に比較してカムローラ62およびストッパ66に対するガイドローラ64の相対的な配設位置が相違し、ガイドローラ64が相対的に図11における下方側、すなわちサポート部材30から離間する位置に配設されている。この場合は、図11に示すパーキングロック状態、すなわちストッパ66が突出姿勢とされてサポート部材30に係合させられた状態において、ガイドローラ64とサポート部材30のガイド部94との間に隙間Cが生じ、カムローラ62に押出し荷重が加えられた場合に、その押出し荷重の全部がストッパ66を介してサポート部材30によって受け止められる。したがって、押出し荷重によりカムローラ62とサポート部材30との間でストッパ66が確実に挟圧されるようになり、坂路での駐車時のP抜けが適切に抑制される。
【0063】
図12は、パーキングロック状態におけるストッパ120の近傍部分を示した図で、このストッパ120は、前記円筒外周面102と同じ径寸法のガイドローラ122を一体に備えている。すなわち、ストッパ120の軸方向において前記突出部104に隣接する部分、実施例では図12の紙面の表側部分に、円筒形状のガイドローラ122が一体に設けられており、前記ガイドローラ64が省略される。一方、前記サポート部材30には、係合面30aやストッパ案内面106、ストッパ当接面108が設けられた凹所に隣接してガイド部124が一体に設けられており、ガイドローラ122は、ロック部材42がロック位置とロック解除位置との間を移動させられる際にガイド部124と係合させられて転がり回転させられることにより、ロック部材42がパーキングポール40と反対側へ変位することを規制する。この場合には、前記実施例と同様の作用効果が得られるのに加えて、前記実施例のようにガイドローラ64とストッパ66とを別個に設ける場合に比較して部品点数が少なくなる。
【0064】
図13は、前記図7に対応する図で、前記実施例に比較してカムローラ62の配設位置が相違している。すなわち、前記実施例ではストッパ66の回動軸心S3およびカムローラ62の軸心S1が、ロック部材42の移動方向であるガイド部94の延長線と直角な垂直線V1上に位置するようにストッパ66およびカムローラ62が配設されていたが、本実施例では回動軸心S3を通る垂直線V1に対してカムローラ62の軸心S1がロック解除位置側へ寸法dだけずれた位置となるようにカムローラ62が配設されている。この場合、図13において上向きの押出し荷重がカムローラ62に加えられ、ストッパ66の円筒外周面102に押圧されると、寸法dの位置ずれに起因してカムローラ62には時計まわり方向、すなわちロック部材42をロック位置側へ移動させる方向のトルクが発生するため、P抜けが適切に抑制される。
【0065】
図14は、パーキングロック状態時におけるカム機構96の近傍部分を拡大して示した正面図で、図15はロック解除状態時におけるカム機構96の近傍部分を拡大して示した正面図である。これ等の図において、カムローラ62の外周面には、パーキングロック状態においてロック位置方向、すなわち図14における右方向、へ突出させられた固定部130が設けられており、パーキングポール40のロック側係合面40aに所定の係合長さL2に亘って接触させられるようになっている。固定部130は、軸心S1と直角な断面が二等辺三角形状を成しているとともに、その二辺がカムローラ62の外周面の接線方向に突き出している。固定部130の二辺のうちロック側係合面40aと接触しない側の辺は適宜変更することが可能で、例えば外周面に対して垂直(法線方向)に設けても良い。なお、カムローラ62に示されている一点鎖線は真円で、固定部130の突出形状が明確になるように記載した補助線である。
【0066】
この場合、パーキングポール40に、図14において上向きの押出し荷重が加えられると、その押出し荷重によりパーキングポール40のロック側係合面40aがカムローラ62の固定部130に押圧され、その接触部で滑り摩擦が発生する。そして、その滑り摩擦および転がり抵抗に基づいて、カムローラ62が転動し始めるまでの回転抵抗が大きくなるため、カムローラ62の転動に伴ってロック部材42に加えられるロック解除位置側へ後退する方向の力が低減され、ロック部材42の後退によりパーキングポール40がパーキングギヤ44から抜け出すP抜けが抑制される。すなわち、カムローラ62とロック側係合面40aとの接触部が、押出し荷重に基づいて弾性変形させられることにより、カムローラ62が転動して固定部130がロック側係合面40aから離れるまでは、その接触部で滑り摩擦が生じて回転抵抗が大きくなるのである。前記所定の係合長さL2は、目的とするP抜け抑制効果が得られるように予め実験等により適当に定められ、例えばカムローラ62の直径の20%~40%程度の範囲とされる。
【0067】
本実施例においては、前記実施例と同様にストッパ66によってP抜け抑制作用が得られるのに加えて、カムローラ62に設けられた固定部130によってカムローラ62そのものの転動が抑制されるため、坂路での駐車時のP抜けが適切に抑制される。
【0068】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これ等はあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0069】
10:車両用パーキングロック機構 30:サポート部材 30a、30b、104a、104b:係合面 40:パーキングポール 42:ロック部材 44:パーキングギヤ 62:カムローラ 64、122:ガイドローラ 66、120:ストッパ 92:カム面 94、124:ガイド部 96:カム機構 102:円筒外周面 130:固定部 S1:カムローラの軸心 S3:ストッパの回動軸心 L1:係合範囲(係合部) P1:係合点(係合部) V1:垂直線(一直線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15