(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】運転評価装置、運転評価システム、及び運転評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
G08G1/00 D
(21)【出願番号】P 2020161406
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2022-05-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 健揮
(72)【発明者】
【氏名】立花 亮介
(72)【発明者】
【氏名】川端 伸一朗
(72)【発明者】
【氏名】北川 敬
(72)【発明者】
【氏名】大橋 宗史
(72)【発明者】
【氏名】安田 利弘
(72)【発明者】
【氏名】嶽本 哲生
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-197308(JP,A)
【文献】国際公開第2017/158658(WO,A1)
【文献】特開2012-146195(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/00-21/13、21/34-21/38
B60W 10/00-10/30、30/00-60/00
G01C 21/00-21/36、23/00-25/00
G06N 3/00- 3/12、 7/08-99/00
G06T 7/00- 7/90
G06V 10/00-20/90、30/418、
40/16、40/20
G07C 1/00-15/00
G08G 1/00-99/00
G09B 23/00-29/14
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両の危険運転の検出結果、並びに、運転者の特性及び環境の特性
を含む付帯特性を示す特性情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得した前記検出結果を前記特性情報に応じてグルーピングし、グルーピングした前記検出結果に基づいて運転者毎の相対的な運転評価結果を導出する処理を行う導出部と、
を含
み、
前記導出部は、複数の運転者の危険運転のスコアの分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の双方の危険運転の頻度分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて前記頻度分布を切り替えて、前記スコアの分布に対する各運転者の評価スコアを前記相対的な運転評価結果として導出する運転評価装置。
【請求項2】
複数の車両の危険運転の検出結果、並びに、運転者の特性及び環境の特性を含む付帯特性を示す特性情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得した前記検出結果を前記特性情報に応じてグルーピングし、グルーピングした前記検出結果に基づいて運転者毎の相対的な運転評価結果を導出する処理を行う導出部と、
を含み、
前記導出部は、複数の運転者の危険運転のスコアの分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の双方の危険運転の頻度分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて前記頻度分布を切り替えて、前記スコアの分布に対する各運転者の評価スコアを導出し、かつ前記評価スコアを予め定めた方法で換算した換算スコアを前記相対的な評価結果として導出する運転評価装置。
【請求項3】
前記導出部は、
運転操作、運転マナー、及び注意力の分類に前記危険運転を分類し、それぞれについて前記換算スコアを更に導出する請求項2に記載の運転評価装置。
【請求項4】
車両に設けられた撮影部によって撮影された撮影画像を表す画像情報、及び車両に関する車両情報に基づいて前記危険運転を検出する危険運転検出部と、
請求項1~3の何れか1項に記載の運転評価装置と、
を含む運転評価システム。
【請求項5】
コンピュータを、請求項1~3の何れか1項に記載の運転評価装置の各部として機能させるための運転評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者の運転を評価する運転評価装置、運転評価システム、及び運転評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、横軸をドライバの危険運転挙動の度合い、縦軸を危険運転挙動の度合いに応じたドライバ数とし、記憶部に記憶されているドライバの走行履歴情報を用いて判定された安全ドライバ群と危険ドライバ群の分布と、診断対象ドライバの危険運転挙動についての診断結果とを含む画面情報を生成して出力する運転診断装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他の運転者の診断結果の分布に対して自身の診断結果が分かる画面情報を生成しているが、車種、年齢、性別、居住地、運転継続年数などの運転者の特性や、運転時の環境(天候や時間帯等)の特性などの付帯特性が考慮されておらず、診断結果に対するユーザの納得感が不足するため改善の余地がある。
【0005】
そこで、本発明は、運転車の特性及び運転時の環境の特性の少なくとも一方の付帯特性を考慮した運転評価結果を出力することが可能な運転評価装置、運転評価システム、及び運転評価プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載の運転評価装置は、複数の車両の危険運転の検出結果、並びに、運転者の特性及び環境の特性を含む付帯特性を示す特性情報を取得する取得部と、前記取得部によって取得した前記検出結果を前記特性情報に応じてグルーピングし、グルーピングした前記検出結果に基づいて運転者毎の相対的な運転評価結果を導出する処理を行う導出部と、含み、前記導出部は、複数の運転者の危険運転のスコアの分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の双方の危険運転の頻度分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて前記頻度分布を切り替えて、前記スコアの分布に対する各運転者の評価スコアを前記相対的な運転評価結果として導出する。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、取得部では、複数の車両の危険運転の検出結果、並びに、運転者の特性及び環境の特性を含む付帯特性を示す特性情報が取得される。
【0008】
そして、導出部では、取得部によって取得した検出結果を特性情報に応じてグルーピングし、グルーピングした検出結果に基づいて運転者毎の相対的な運転評価結果が導出される。すなわち、特性情報に応じてグルーピングして運転者毎の運転評価結果が導出されるので、付帯特性を考慮した運転評価結果の導出が可能となる。
【0009】
また、前記導出部は、複数の運転者の危険運転のスコアの分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の双方の危険運転の頻度分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて前記頻度分布を切り替えて、前記スコアの分布に対する各運転者の評価スコアを前記相対的な運転評価結果として導出する。このように、危険運転のスコアの分布に対する各運転者の評価スコアを導出することで、相対的な運転評価を確認できる。
【0010】
なお 前記導出部は、複数の運転者の危険運転のスコアの分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の双方の危険運転の頻度分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて前記頻度分布を切り替えて、前記スコアの分布に対する各運転者の評価スコアを導出し、かつ前記評価スコアを予め定めた方法で換算した換算スコアを前記相対的な評価結果として導出してもよい。このように、危険運転のスコアの分布に対する各運転者の評価スコアを導出して、換算スコアを導出することで、相対的な運転評価を確認できる。
【0011】
また、前記導出部は、前記スコアの分布として危険運転の頻度分布を作成してもよい。これにより、危険運転のスコアとして危険運転の程度を用いる場合に比べて、容易にスコアを集計できる。
【0012】
また、前記導出部は、前記頻度分布として、単位走行距離当たりの距離頻度、及び単位時間当たりの時間頻度の少なくとも一方の頻度の分布を作成してもよい。これにより、危険運転のスコアとして危険運転の回数や危険運転の程度を用いる場合に比べて、運転時間や距離による運転評価結果に対する不公平感を抑制できる。
【0013】
また、前記導出部は、前記頻度分布として、前記距離頻度及び前記時間頻度の各々の頻度の分布を作成し、走行距離または走行時間の状況に応じて距離頻度と時間頻度を切り替えることで、状況に応じた適切な運転評価結果を得ることが可能となる。
なお、前記導出部は、運転操作、運転マナー、及び注意力の分類に前記危険運転を分類し、それぞれについて前記換算スコアを更に導出してもよい。
【0014】
なお、車両に設けられた撮影部によって撮影された撮影画像を表す画像情報、及び車両に関する車両情報に基づいて前記危険運転を検出する危険運転検出部と、請求項1~3の何れか1項に記載の運転評価装置と、を含む運転評価システムとしてもよい。
【0015】
また、コンピュータを、請求項1~3の何れか1項に記載の運転評価装置の各部として機能させるための運転評価プログラムとしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明によれば、運転車の特性及び運転時の環境の特性の少なくとも一方の付帯特性を考慮した運転評価結果を出力することが可能な運転評価装置、運転評価システム、及び運転評価プログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る危険運転検出システムの概略構成を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る危険運転検出システムにおける車載器及び危険運転データ収集サーバの機能構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】車載器の制御部及び危険運転データ収集サーバの中央処理部の構成を示すブロック図である。
【
図4】危険運転評価部の機能構成を示すブロック図である。
【
図6】評価スコアの偏差値から換算スコアの導出方法の一例を示す図である。
【
図7】運転者毎の車間距離不保持の頻度、偏差値、及び換算スコアの一例を示す図である。
【
図8】運転者に提示する、運転者の相対的な運転評価結果の一例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る危険運転検出システムの危険運転データ収集サーバにおいて、中央処理部の危険運転評価部の機能で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る危険運転検出システムの概略構成を示す図である。
【0019】
本実施形態に係る危険運転検出システム10は、車両14に搭載された車載器16と、危険運転データ収集サーバ12とが通信ネットワーク18を介して接続されている。本実施形態に係る危険運転検出システム10では、複数の車載器16の撮影によって得られる画像情報及び各車両14の状態を表す車両情報を危険運転データ収集サーバ12に送信して、危険運転データ収集サーバ12が画像情報及び車両情報を蓄積する。また、危険運転データ収集サーバ12が、運転者を評価する処理等を行う。
【0020】
また、本実施形態では、車載器16において、乗員の危険運転を検出する処理を行って、危険運転の検出結果を危険運転データ収集サーバ12に送信する。そして、危険運転データ収集サーバ12が、各車両14の危険運転の検出結果を収集して、収集した危険運転の検出結果に基づいて、運転者を評価する処理を行う。
【0021】
図2は、本実施形態に係る危険運転検出システム10における車載器16及び危険運転データ収集サーバ12の機能構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
車載器16は、制御部20、車両情報検出部22、撮影部24、通信部26、及び表示部28を備えている。
【0023】
車両情報検出部22は、車両14に関する車両情報を検出する。車両情報の一例としては、例えば、車両14の位置情報、車速、加速度、舵角、アクセル開度、車両周辺の障害物までの距離、経路等の車両情報を検出する。車両情報検出部22は、具体的には、車両14の周辺環境がどのような状況かを表す情報を取得する複数種のセンサや装置を適用できる。センサや装置の一例としては、車速センサ、及び加速度センサなどの車両14に搭載されるセンサや、GNSS(Global Navigation Satellite System)装置、車載通信機、ナビゲーションシステム、及びレーダ装置などが挙げられる。GNSS装置は、複数のGNSS衛星からGNSS信号を受信して自車両14の位置を測位する。GNSS装置は受信可能なGNSS信号の数が多くなるに従って測位の精度が向上する。車載通信機は、通信部26を介して他の車両14との間の車車間通信及び路側機との間の路車間通信の少なくとも一方を行う通信装置である。ナビゲーションシステムは、地図情報を記憶する地図情報記憶部を含み、GNSS装置から得られる位置情報と地図情報記憶部に記憶された地図情報とに基づいて、自車両14の位置を地図上で表示したり、目的地迄の経路を案内したりする処理を行う。また、レーダ装置は、検出範囲が互いに異なる複数のレーダを含み、自車両14の周辺に存在する歩行者や他車両14等の物体を検出し、検出した物体と自車両14の相対位置及び相対速度を取得する。また、レーダ装置は周辺の物体の探知結果を処理する処理装置を内蔵している。当該処理装置は、直近の複数回の探知結果に含まれる個々の物体との相対位置や相対速度の変化等に基づき、ノイズやガードレール等の路側物等を監視対象から除外し、歩行者や他車両14等を監視対象物体として追従監視する。そしてレーダ装置は、個々の監視対象物体との相対位置や相対速度等の情報を出力する。なお、本実施形態では、車両情報として、少なくとも車速を検出する。
【0024】
撮影部24は、本実施形態では、車両14に搭載されて車両14の前方等の車両周辺を撮影し、動画像の撮影画像を表す動画像データを画像情報として生成する。撮影部24としては、例えば、ドライブレコーダ等のカメラを適用することができる。なお、撮影部24は、車両14の側方及び後方の少なくとも一方の車両周辺を更に撮影してもよい。また、撮影部24は、車室内を更に撮影してもよい。
【0025】
通信部26は、通信ネットワーク18を介して危険運転データ収集サーバ12と通信を確立して、撮影部24の撮影によって得られる画像情報や車両情報検出部22によって検出された車両情報等の情報の送受信を行う。
【0026】
表示部28は、情報を表示することにより、乗員に各種情報を提供する。本実施形態では、例えば、危険運転データ収集サーバ12から提供される情報等を表示する。
【0027】
制御部20は、
図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)20A、ROM(Read Only Memory)20B、RAM(Random Access Memory)20C、ストレージ20D、インタフェース(I/F)20E、及びバス20F等を含む一般的なマイクロコンピュータで構成されている。
【0028】
制御部20は、CPU20AがROM20Bに格納されたプログラムをRAM20Cに展開して実行することで、危険運転検出部21の機能を有する。また、制御部20は、撮影部24によって撮影された画像を表す動画像の画像情報、及び画像の撮影時に車両情報検出部22によって検出された車両情報を危険運転データ収集サーバ12にアップロードする制御等を行う。なお、画像情報及び車両情報をアップロードする際には、車両及び運転者の各々を識別する識別情報を付与して送信する。運転者を識別する情報は、例えば、運転者を撮影した撮影画像でもよいし、運転者が携帯するスマートキーの識別情報でもよいし、運転者を識別可能な他の情報でもよい。
【0029】
危険運転検出部21は、車両情報検出部22の検出結果、及び撮影部24によって撮影された撮影画像に基づいて、運転者の各種危険運転を検出する。危険運転検出部21は、例えば、操作系の予め定めた急激な操作、歩行者妨害、速度超過、車間距離不保持、信号無視、一時不停止、脇見運転などの危険運転を検出する。操作系の予め定めた急激な操作としては、急アクセル、急ブレーキ、及び急ハンドル等がある。例えば、加速方向の加速度またはアクセルの操作速度が予め定めた閾値以上である場合を急アクセルとして検出する。また、減速方向の加速度またはブレーキの踏力が予め定めた閾値以上である場合を急ブレーキとして検出する。また、舵角変化または車幅方向の加速度が予め定めた閾値以上である場合を急ハンドルとして検出する。また、歩行者妨害は、例えば、撮影画像から横断歩道付近の歩行者を検出して一時停止したか否か等を判定することにより検出する。また、速度超過は、例えば、撮影画像から制限速度の標識を検出し、車速が制限速度以上であるか否かを判定することにより検出する。また、車間距離不保持は、例えば、撮影画像から前方車両までの距離を検出して、予め定めた距離以内であるか否かを判定することにより検出する。また、信号無視は、例えば、撮影画像に基づいて検出する。また、一時不定は、例えば、撮影画像から一時停止位置を検出して一時停止位置で停止したか否かを判定することで検出する。また、脇見運転は、例えば、車室内のカメラの撮影画像に基づいて検出する。
【0030】
一方、危険運転データ収集サーバ12は、中央処理部30、中央通信部36、及びDB(データベース)38を備えている。
【0031】
中央処理部30は、
図3に示すように、CPU30A、ROM30B、及びRAM30C、ストレージ30D、インタフェース(I/F)30E、及びバス30F等を含む一般的なマイクロコンピュータで構成されている。
【0032】
中央処理部30は、CPU30AがROM30Bに格納されたプログラムをRAM30Cに展開して実行することで、車両情報収集部44、危険運転情報収集部46、及び動画データ収集部48の機能を有する。
【0033】
車両情報収集部44は、複数の車両14の車載器16の各々で検出された車両情報を収集して、DB38に蓄積する処理を行う。車両情報としては、車両14に搭載された各種センサ等によって検出された情報を収集する。
【0034】
危険運転情報収集部46は、複数の車両14の車載器16の各々で検出された危険運転情報を収集して、DB38に蓄積する処理を行う。危険運転情報としては、危険運転の種類、及び日時等を表す情報を収集する。また、危険運転の種類としては、本実施形態では、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、歩行者妨害、速度超過、車間距離不保持、信号無視、一時不停止、及び脇見運転等の危険運転が一例として収集される。
【0035】
危険運転評価部50は、危険運転情報収集部46が収集した危険運転情報に基づいて、運転者毎の運転を評価する処理を行う。なお、危険運転評価部50の詳細については後述する。
【0036】
動画データ収集部48は、複数の車両14の車載器16各々で撮影された動画像データを画像情報として収集して、DB38に蓄積する処理を行う。
【0037】
中央通信部36は、通信ネットワーク18を介して車載器16と通信を確立して、画像情報や車両情報等の情報の送受信を行う。
【0038】
DB38は、予め登録された運転者に関する運転者特性情報や、車両に関する情報を運転者及び車両の各々を識別する識別情報と対応付けて蓄積する。運転者特性情報の一例としては、本実施形態では、車種、年齢、性別、居住地、及び運転継続年数などの運転者の特性を表す特性情報を運転者の付帯情報として蓄積する。運転者特性情報、並びに、運転者及び車両の各々を識別する識別情報は、例えば、危険運転データ収集サーバ12が提供する運転評価サービス等のユーザ登録時に車載器16または運転者が操作する各種情報処理装置(例えば、パーソナルコンピュータや携帯端末等)を運転者が操作することにより登録する。
【0039】
また、DB38は、車両情報収集部44によって収集された車両情報、動画データ収集部48によって収集された動画像データ、及び危険運転情報収集部46によって収集された危険運転情報の各々と、車両及び運転者の各々を識別する識別情報とを対応付けて蓄積する。
【0040】
危険運転データ収集サーバ12は、DB38に蓄積された情報に基づいて、運転者を評価する処理等を行う。そして、危険運転データ収集サーバ12は、運転評価結果を運転者にフィードバックするサービスなどの各種サービスを提供する。
【0041】
なお、本実施形態では、車載器16側で危険運転を検出する形態を説明するが、危険運転データ収集サーバ12側で危険運転を検出する形態としてもよいし、他のサーバで危険運転を検出する形態としてもよい。
【0042】
続いて、危険運転データ収集サーバ12の中央処理部30における上述の危険運転評価部50の詳細な機能構成について説明する。
図4は、危険運転評価部50の機能構成を示すブロック図である。
【0043】
危険運転評価部50は、取得部52、グルーピング部54、運転スコア算出部56、スコア分布作成部58、及び評価結果導出部60の機能を有する。なお、グルーピング部54、運転スコア算出部56、スコア分布作成部58、及び評価結果導出部60は導出部の一例に対応する。
【0044】
取得部52は、危険運転情報収集部46によって収集されてDB38に格納された危険運転情報、及び運転者特性情報を取得する。取得する危険運転情報の一例としては、例えば、急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、歩行者妨害、速度超過、車間距離不保持、信号無視、一時不停止、及び脇見運転等の危険運転の検出結果を表す危険運転情報を取得する。また、運転者特性情報としては、例えば、車種、年齢、性別、居住地、及び運転継続年数などの運転者の特性を表す特性情報を取得する。
【0045】
グルーピング部54は、取得部52が取得した危険運転情報を、運転者特性情報に基づいて、車種、年齢、性別、居住地、運転継続年数などの運転者の特性に応じてグルーピングする。なお、運転者の特性以外に、時間帯や天候等の運転時の環境の特性に応じてグルーピングしてもよい。或いは、運転者の特性と環境の特性とを合わせてグルーピングしてもよい。
【0046】
運転スコア算出部56は、グルーピング部54によりグルーピングされたグループ毎に、危険運転情報に基づいて危険運転の頻度を各運転者の危険運転のスコアとして算出する。頻度としては、単位走行距離当たりの危険運転回数(距離頻度)、または単位時間当たりの危険運転回数(時間頻度)を算出する。なお、距離頻度と時間頻度の双方を算出してもよい。この場合、距離頻度と時間頻度は、走行距離や走行時間等の状況に応じて切り替えてもよい。例えば、走行距離が短い場合には時間頻度に切り替えたり、走行距離が平均より長い場合に距離頻度に切り替えたりする。状況に応じて距離頻度と時間頻度を切り替えることで、状況に応じた適切な運転評価結果を得ることが可能となる。
【0047】
スコア分布作成部58は、グルーピング部54によりグルーピングされたグループ毎に、全運転者の危険運転のスコアの分布を作成する。
【0048】
評価結果導出部60は、グルーピング部54によりグルーピングされたグループ毎に、全運転者の危険運転のスコアの分布に対する各運転者のスコアを評価した評価スコアとして偏差値を導出する。また、導出した評価スコアを予め定めた方法で換算した換算スコアを運転者の相対的な運転評価結果として導出する。なお、評価結果導出部60は、換算スコアは導出せずに評価スコアのみを導出してもよい。評価スコアは、全運転者の危険運転のスコアの分布に対する各運転者のスコア評価であるため、評価スコアを導出することで、運転者の相対的な運転評価結果を導出できる。従って、評価スコアから換算スコアを導出しても運転者の相対的な運転評価結果を導出できる。
【0049】
ここで、評価結果導出部60による運転評価結果の導出方法の一例について詳細に説明する。
【0050】
本実施形態では、理想的なスコアリング分布を求めるためには、
図5に示す正規分布のように、平均μ=約60、標準偏差σ=約10、スコアリングの最高が100となるような正規分布を想定してスコア分布作成部58がスコアの分布を作成するものとする。
【0051】
評価スコアを導出する式としては、w0、wiを任意に調整可能な計数として、以下の(1)式により導出する。
【0052】
【数1】
ここで、
i:急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、歩行者妨害、車間距離不保持
f:頻度(回/hourまたは回/km
μ:平均頻度
σ:標準偏差
である。
【0053】
また、評価スコア(score)が、以下の(2)式であるためには、fiが独立であると仮定すると、以下の(3)、(4)式を満たす必要がある。
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
本実施形態では、一例として5つの操作(急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、歩行者妨害、車間距離不保持)で評価スコアを算出する上で、fiも独立でないと期待されるため、wiを以下の(5)式と仮置きして調整するものとする。
【0058】
【0059】
なお、この係数を適切に定めるためには、多種多様な運転者の車両情報及び動画像データ等の運転データを分析する必要がある。
【0060】
本実施形態では、評価結果導出部60は、例えば、以下の(6)式により求めた評価スコアとしての偏差値を、予め定めた方法として、
図6に示す関係で5段評価に換算して換算スコアを導出する。すなわち、
図6では、車間距離不保持の偏差値分布において、μ-2.5σ未満を換算スコア20、μ-2.5以上μ-σ未満を換算スコア40、μ-σ以上μ未満を換算スコア60、μ以上μ+0.5σ未満を換算スコア80、μ+0.5σ以上を換算スコア100とした例を示す。なお、換算スコアを導出する予め定めた方法は、上記に限定されるものではない。例えば、3段評価や10段評価等のように他の段数としてもよい。或いは、他の方法で換算スコアを導出してもよい。
【0061】
【数6】
ここで、
i:急アクセル、急ブレーキ、急ハンドル、歩行者妨害、車間距離不保持
f:頻度(回/hourまたは回/km
μ:平均頻度
σ:標準偏差
である。
【0062】
このように算出したスコア(偏差値)及び換算スコアの一例を
図7に示す。
図7は、運転者毎の車間距離不保持の頻度、偏差値、及び換算スコアの一例を示す図である。
【0063】
図7の例では、ユーザIDがAの運転者は、車間距離不保持頻度が0回/15kmであり、これより偏差値56.87が算出され、スコア換算すると100となる。また、ユーザIDがBの運転者は、車間距離不保持頻度が1回/15kmであり、これより偏差値43.37が算出され、スコア換算すると60となる。また、ユーザIDがCの運転者は、車間距離不保持頻度が2回/15kmであり、これより偏差値28.39が算出され、スコア換算すると40となる。
【0064】
換算スコアは、例えば、5つの危険運転の換算スコアの平均を算出してもよい。また、5つの危険運転の平均の他に、運転操作、運転マナー、及び注意力等の分類に危険運転を分類して、それぞれについて換算スコアを算出して
図8に示すように運転者の相対的な運転評価結果として運転者に提示してもよい。運転者への提示は、例えば、運転者の携帯端末やパーソナルコンピュータ等の情報処理端末に運転評価結果を送信して情報処理端末に表示する。
図8の例では、5つの危険運転の換算スコアの平均が60で、運転操作(例えば、急アクセル、急ブレーキ、及び急ハンドルの危険運転)の換算スコアの平均、運転マナー(例えば、歩行者妨害及び車間距離不保持の危険運転)の換算スコアの平均、及び注意力(歩行者妨害の危険運転等)の換算スコアの平均をレベル表示した例を示す。
【0065】
続いて、上述のように構成された本実施形態に係る危険運転検出システム10の危険運転データ収集サーバ12において、中央処理部30の危険運転評価部50の機能で具体的に行われる処理について説明する。
図9は、本実施形態に係る危険運転検出システム10の危険運転データ収集サーバ12において、中央処理部30の危険運転評価部50の機能で行われる処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、
図9の処理は、例えば、予め定めた期間毎に開始する。或いは、車載器16から収集した車両情報から予め定めた距離走行毎に開始してもよい。
【0066】
ステップ100では、CPU30Aが、危険運転情報、及び運転者特性情報をDB38から取得してステップ102へ移行する。すなわち、取得部52が、危険運転情報収集部46によって収集されてDB38に格納された危険運転情報、及び運転者特性情報を取得する。
【0067】
ステップ102では、CPU30Aが、危険運転情報を運転者の特性に応じてグルーピングしてステップ104へ移行する。すなわち、グルーピング部54が、取得部52が取得した危険運転情報を、運転者特性情報に基づいて、車種、年齢、性別、居住地、運転継続年数などの運転者の特性に応じてグルーピングする。
【0068】
ステップ104では、CPU30Aが、グルーピングした1グループに注目してステップ106へ移行する。なお、以下の処理では、全グループについて運転評価を実施する例として説明するが、これに限るものではない。例えば、運転者からの要求に対応するグループに注目して、要求のグループについてのみ運転評価を実施してもよい。
【0069】
ステップ106では、CPU30Aが、運転スコアを算出してステップ108へ移行する。すなわち、運転スコア算出部56が、グルーピング部54によりグルーピングされたグループのうち注目のグループに対して、危険運転情報に基づいて危険運転の頻度を各運転者の危険運転のスコアとして算出する。頻度としては、単位走行距離当たりの危険運転回数(距離頻度)や、単位時間当たりの危険運転回数(時間頻度)を算出する。
【0070】
ステップ108では、CPU30Aが、算出した運転スコアのスコア分布を作成してステップ110へ移行する。すなわち、スコア分布作成部58が、グルーピングされてグループのうち注目のグループに対して、全運転者の危険運転のスコアの分布を作成する。
【0071】
ステップ110では、CPU30Aが、運転者毎の評価結果を導出してステップ112へ移行する。すなわち、評価結果導出部60が、注目のグループに対して、全運転者の危険運転のスコアの分布に対する各運転者のスコアを評価した評価スコアとして偏差値を導出する。また、評価結果導出部60が、導出した評価スコアを運転者の相対的な運転評価結果として換算した換算スコアを導出する。
【0072】
ステップ112では、CPU30Aが、全評価が終了したか否かを判定する。該判定は、グルーピングした全グループに対して評価結果の導出が終了したか否かを判定する。該判定が否定された場合にはステップ114へ移行し、肯定された場合には一連の処理を終了する。
【0073】
ステップ114では、CPU30Aが、他のグループに注目してステップ106に戻って上述の処理を繰り返す。
【0074】
このように処理を行うことで、運転者の特性に応じてグルーピングして運転者毎の運転評価結果を導出するので、運転者の特性を考慮した運転評価結果の導出が可能となる。
【0075】
また、危険運転のスコアの分布に対する各運転者の評価スコアを導出するので、運転者の相対的な運転評価を確認できる。また、評価スコアを導出することにより、危険運転のスコアとして危険運転の程度を用いる場合に比べて、容易にスコアを集計できる。また、危険運転のスコアとして危険運転の頻度を用いることにより、危険運転のスコアとして危険運転の回数や危険運転の程度を用いる場合に比べて、運転時間や距離による運転評価結果に対する不公平感を抑制できる。
【0076】
なお、上記の実施形態では、付帯情報として運転者の特性を適用した例を説明したが、これに限るものではなく、運転時の環境の特性を付帯情報として適用してもよい。或いは、運転者の特性と環境の特性を含めた付帯情報としてよい。この場合には、グルーピング部54が、運転者の特性及び環境の特性の少なくとも一方の付帯情報に応じてグルーピングすればよい。環境の特性を付帯情報として適用することにより運転時の環境を考慮した運転評価結果の導出が可能となる。
【0077】
また、上記の実施形態では、危険運転データ収集サーバ12に危険運転評価部50の機能を備える例を説明したが、これに限るものではない。例えば、車載器16の制御部20に危険運転評価部50の機能を備えて、
図9の処理を車載器16で行う形態としてもよい。或いは、危険運転データ収集サーバ12以外の他の運転評価を行う専用のサーバ等に危険運転評価部50の機能を備えて
図9の処理を行う形態としてもよい。
【0078】
また、上記の各実施形態における中央処理部30の危険運転評価部50の機能で行われる処理は、プログラムを実行することにより行われるソフトウエア処理として説明したが、これに限るものではない。例えば、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びFPGA(Field-Programmable Gate Array)等のハードウエアで行う処理としてもよい。或いは、ソフトウエア及びハードウエアの双方を組み合わせた処理としてもよい。また、ソフトウエアの処理とした場合には、プログラムを各種記憶媒体に記憶して流通させるようにしてもよい。
【0079】
さらに、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0080】
10 危険運転検出システム
12 危険運転データ収集サーバ
14 車両
16 車載器
20 制御部
21 危険運転検出部
22 車両情報検出部
24 撮影部
30 中央得処理部
38 DB
50 危険運転評価部
52 取得部
54 グルーピング部(導出部)
56 運転スコア算出部(導出部)
58 スコア分布作成部(導出部)
60 評価結果導出部(導出部)