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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】折り畳み式ヘルメット
(51)【国際特許分類】
   A42B 3/32 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A42B3/32
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020175851
(22)【出願日】2020-10-20
(65)【公開番号】P2022067241
(43)【公開日】2022-05-06
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】500272347
【氏名又は名称】DICプラスチック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山村 浩之
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-234562(JP,A)
【文献】特開平08-325824(JP,A)
【文献】登録実用新案第3017336(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分割体で構成された帽体を含む折り畳みヘルメットであって、
前記複数の分割体は、
鍔部環状体と、
頭頂部椀状体と、
前記鍔部環状体と前記頭頂部椀状体との間に位置する1以上の中間環状体と、を含み、
前記帽体は、
前記鍔部環状体のなかの前部に位置し、左右方向に延びる1つの軸を中心として前記鍔部環状体に対して前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とを回転可能とする軸構造を備え、
前記鍔部環状体に対する前記中間環状体の回転と前記頭頂部椀状体の回転とにより、前記鍔部環状体に前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とが積み重なる帽子状態と、前記鍔部環状体の内側に前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とが配置される折り畳み状態と、に遷移可能に構成され
前記中間環状体として、第1中間環状体と第2中間環状体とを含み、
前記軸構造において、
前記第1中間環状体の軸部は、前記鍔部環状体の軸部および前記頭頂部椀状体の軸部を内挿により軸支するとともに、前記頭頂部椀状体の軸部を軸支する部分に対する外挿により前記第2中間環状体の軸部を軸支する
折り畳み式ヘルメット。
【請求項2】
前記軸構造は、
前記左右方向に直交する面を対称面として対称配置されている
請求項に記載の折り畳み式ヘルメット。
【請求項3】
前記帽体は、左右で一対となる前記軸構造を備え、
前記鍔部環状体の軸部は、当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造に向かって延びる突出部を有し、
前記頭頂部椀状体の軸部は、当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造とは反対側に向かって延びる突出部を有し、
前記第1中間環状体の軸部は、前記鍔部環状体の突出部および前記頭頂部椀状体の突出部が内挿される軸孔と、前記軸孔の一部を含むとともに当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造に向かって延びる突出部を有し、
前記第2中間環状体の軸部は、前記第1中間環状体の突出部に外挿される軸孔を有する
請求項に記載の折り畳み式ヘルメット。
【請求項4】
前記帽体の側面視において、
前記帽子状態における前記帽体の高さの最大値が帽体高さであり、
前記軸と前記鍔部環状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記鍔部環状体の高さの最大値が前記鍔部環状体の最大高さであり、
前記軸と前記頭頂部椀状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記頭頂部椀状体の高さの最大値が前記頭頂部椀状体の最大高さであり、
前記鍔部環状体の最大高さと前記頭頂部椀状体の最大高さとの差が前記帽体高さの25%以下である
請求項1~3のいずれか一項に記載の折り畳み式ヘルメット。
【請求項5】
前記帽体の側面視において、
前記帽子状態における前記帽体の高さの最大値が帽体高さであり、
前記軸と前記頭頂部椀状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記頭頂部椀状体の高さの最大値が前記頭頂部椀状体の最大高さであり、
前記頭頂部椀状体の最大高さが前記帽体高さの2/3以下である
請求項1~4のいずれか一項に記載の折り畳み式ヘルメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み式ヘルメットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1のように、頭部を保護する中空半球状の帽体が折り畳み可能に構成された折り畳み式ヘルメットが知られている。折り畳み式ヘルメットは、帽体を折り畳み状態にすることにより収納性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-234562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
折り畳み式ヘルメットにおいては、その収納性を向上させるべく、折り畳み状態における帽体の高さを低くすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決する折り畳み式ヘルメットは、複数の分割体で構成された帽体を含む折り畳みヘルメットであって、前記複数の分割体は、鍔部環状体と、頭頂部椀状体と、前記鍔部環状体と前記頭頂部椀状体との間に位置する1以上の中間環状体と、を含み、前記帽体は、前記鍔部環状体のなかの前部に位置し、左右方向に延びる1つの軸を中心として前記鍔部環状体に対して前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とを回転可能とする軸構造を備え、前記鍔部環状体に対する前記中間環状体の回転と前記頭頂部椀状体の回転とにより、前記鍔部環状体に前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とが積み重なる帽子状態と、前記鍔部環状体の内側に前記中間環状体と前記頭頂部椀状体とが配置される折り畳み状態と、に遷移可能に構成されている。
【0006】
上記構成によれば、鍔部環状体の前方部分において、中間環状体と頭頂部椀状体とが1つの軸で回転可能に軸支されるため、軸構造の軸をより低い位置に配置することができる。その結果、軸構造の軸が低い分だけ折り畳み状態における帽体の高さを低くすることができる。
【0007】
上記構成の折り畳み式ヘルメットにおいて、前記中間環状体として、第1中間環状体と第2中間環状体とを含み、前記軸構造において、前記第1中間環状体の軸部は、前記鍔部環状体の軸部および前記頭頂部椀状体の軸部を内挿により軸支するとともに、前記頭頂部椀状体の軸部を軸支する部分に対する外挿により前記第2中間環状体の軸部を軸支することが好ましい。上記構成によれば、前記頭頂部椀状体の軸部と第2中間環状体の軸部とが軸の径方向において重なるため、軸方向において軸構造が占有する領域を小さくすることができる。
【0008】
上記構成の折り畳み式ヘルメットにおいて、前記軸構造は、前記左右方向に直交する面を対称面として対称配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、鍔部環状体に対する中間環状体と頭頂部椀状体との回転を安定させることができる。
【0009】
上記構成の折り畳み式ヘルメットにおいて、前記帽体は、左右で一対となる前記軸構造を備え、前記鍔部環状体の軸部は、当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造に向かって延びる突出部を有し、前記頭頂部椀状体の軸部は、当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造とは反対側に向かって延びる突出部を有し、前記第1中間環状体の軸部は、前記鍔部環状体の突出部および前記頭頂部椀状体の突出部が内挿される軸孔と、前記軸孔の一部を含むとともに当該軸部を含む軸構造以外の他方の軸構造に向かって延びる突出部を有し、前記第2中間環状体の軸部は、前記第1中間環状体の突出部に外挿される軸孔を有することが好ましい。
【0010】
上記構成によれば、左右方向で対称配置された一対の軸構造において、鍔部環状体の軸支部分をより遠くの位置に配置することができる。これにより、鍔部環状体による第1中間環状体の軸支を安定させることができる。
【0011】
上記構成の折り畳み式ヘルメットは、前記帽体の側面視において、前記帽子状態における前記帽体の高さの最大値が帽体高さであり、前記軸と前記鍔部環状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記鍔部環状体の高さの最大値が前記鍔部環状体の最大高さであり、前記軸と前記頭頂部椀状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記頭頂部椀状体の高さの最大値が前記頭頂部椀状体の最大高さであり、前記鍔部環状体の最大高さと前記頭頂部椀状体の最大高さとの差が前記帽体高さの25%以下であることが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、折り畳み状態において鍔部環状体の高さと頭頂部椀状体の高さとの差を小さくすることができる。これにより、鍔部環状体に対して頭頂部椀状体を折り畳んだ状態の高さを小さくすることができる。
【0013】
上記構成の折り畳み式ヘルメットは、前記帽体の側面視において、前記帽子状態における前記帽体の高さの最大値が帽体高さであり、前記軸と前記頭頂部椀状体の後方端とを結ぶ仮想線を基準とした前記頭頂部椀状体の高さの最大値が前記頭頂部椀状体の最大高さであり、前記頭頂部椀状体の最大高さが前記帽体高さの2/3以下であることが好ましい。上記構成によれば、折り畳み状態における頭頂部椀状体の最大高さを帽体高さの2/3以下にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】折り畳み式ヘルメットの一実施形態における帽子状態の概略構成を示す斜視図。
図2】折り畳み式ヘルメットの一実施形態における折り畳み状態の概略構成を示す斜視図。
図3】帽子状態にある折り畳み式ヘルメットの一例を示す背面図。
図4】帽子状態にある折り畳み式ヘルメットの一例を示す断面図であって、左右方向における中央の断面図。
図5】折り畳み状態にある折り畳み式ヘルメットの一例を示す断面図であって、左右方向における中央の断面図。
図6】軸構造の一例を示す斜視図。
図7】第1軸部の一例を示す斜視図。
図8】第2軸部の一例を示す斜視図。
図9】第3軸部の一例を示す斜視図。
図10】第4軸部の一例を示す斜視図。
図11】左側に配置された軸構造の内部の一例を示す断面図。
図12】帽体の一例を模式的に示す側面図。
図13】変形例において、軸構造の一例を示す断面図。
図14】変形例において、軸構造の一例を示す断面図。
図15】変形例において、軸構造の一例を示す断面図。
図16】変形例において、軸構造の一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1図12を参照して、折り畳み式ヘルメットの一実施形態について説明する。
図1に示すように、折り畳み式ヘルメット10は、着用者の頭部を保護する帽体11と顎紐12とを備える。帽体11は、図1に示す帽子状態と図2に示す折り畳み状態とに遷移可能に構成されている。帽体11は、帽子状態では中空半球状をなしている。折り畳み式ヘルメット10は、折り畳み状態から帽子状態へと帽体11が遷移されることにより着用可能な状態となる。顎紐12は、左右一対の耳紐13に架け渡されている。各耳紐13は、その両端部が帽体11に接続されている。折り畳み式ヘルメット10は、着用者の頭部を帽体11の内側に入れた状態で顎紐12の長さが調整されることにより着用者の頭部に固定される。折り畳み式ヘルメット10は、産業用ヘルメット、スポーツ用ヘルメット、及び緊急時の避難用ヘルメットなどとして利用することができる。折り畳み式ヘルメット10は、例えばJIS規格(JIS T8131)の産業用ヘルメットに定める耐貫通性試験や衝撃吸収性試験の規定を帽子状態において満たすように設計される。なお、折り畳み式ヘルメット10においては、着用者を基準として各種方向が規定されている。具体的には、着用者の顔面が向く方向を前として、後、右、左、上、下が規定される。
【0016】
図1図5を参照して、帽体11の概略構成について説明する。
図1図3に示すように、帽体11は、第1分割体100、第2分割体200、第3分割体300、第4分割体400を備えている。第1分割体100、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400は、帽体11の外殻を構成する。これらの部材は、例えばアクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体等の合成樹脂によって形成される。
【0017】
第1分割体100は、鍔部環状体である。第1分割体100は、帽体11の入口開口面14を形成する下側開口部101を有する。第1分割体100は、下側開口部101よりも小さな開口を形成する上側開口部102を有する。第1分割体100は、鍔部103を有する。鍔部103は、ひさしを形成する。鍔部103は、第1分割体100の前部104から前方に張り出している。鍔部103は、例えば雨や落下物から着用者の顔面を保護する。
【0018】
第2分割体200は、第1中間環状体である。第2分割体200は、第1分割体100の上側開口部102よりも小さな開口を形成する下側開口部201を有する。第2分割体200は、下側開口部201よりも小さな開口を形成する上側開口部202を有する。第2分割体200は、帽子状態においては第1分割体100に積み重なるとともに折り畳み状態においては第1分割体100の内側に配置される。
【0019】
第3分割体300は、第2中間環状体である。第3分割体300は、第2分割体200の上側開口部202よりも小さな開口を形成する下側開口部301を有する。第3分割体300は、下側開口部301よりも小さな開口を形成する上側開口部302を有する。第3分割体300は、帽子状態においては第2分割体200に積み重なるとともに折り畳み状態においては第2分割体200の内側に配置される。
【0020】
第4分割体400は、頭頂部椀状体である。第4分割体400は、第3分割体300の上側開口部302よりも小さな開口を形成する下側開口部401を有する。第4分割体400の上部は、閉塞されている。第4分割体400は、帽子状態では第3分割体300に積み重なるとともに折り畳み状態では第3分割体300の内側に配置される。
【0021】
帽体11は、第1分割体100に対して、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400を回転可能にする一対の軸構造20を備えている。一対の軸構造20は、第1分割体100の前部104の後方において左右方向に延びる1つの軸20Aを有している。一対の軸構造20は、左右方向に直交する面を対称面として対称配置されている。帽体11は、軸20Aを中心として、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400が第1分割体100に対して回転することにより、帽子状態と折り畳み状態とに遷移可能に構成されている。軸20Aを中心とした各分割体200,300,400の回転方向のうち、帽体11が折り畳み状態から帽子状態に遷移するときに各分割体200,300,400が回転する方向は展開方向である。帽体11が帽子状態から折り畳み状態に遷移するときに各分割体200,300,400が回転する方向は折り畳み方向である。
【0022】
帽子状態において、第2分割体200は、第2分割体200の前部204が第1分割体100の前部104に上方から係合することにより展開方向への回転が規制される。第3分割体300は、第3分割体300の前部304が第2分割体200の前部204に上方から係合することにより展開方向への回転が規制される。第4分割体400は、第4分割体400の前部404が第3分割体300の前部304に上方から係合することにより展開方向への回転が規制される。
【0023】
図3に示すように、第1分割体100の後部には、係止部105が設けられている。係止部105は、第1分割体100に形成された操作用凹部106に配設されている。係止部105は、操作用凹部106を通じて後方へ回動操作可能に構成されている。係止部105は、帽子状態において第1分割体100に対する第2分割体200の折り畳み方向への回転を規制する。この回転規制は、係止部105が後方に回動操作されることにより解除される。
【0024】
第2分割体200の後部には、係止部205が設けられている。係止部205は、第2分割体200に形成された操作用凹部206に配設されている。係止部205は、操作用凹部206を通じて後方へ回動操作可能に構成されている。係止部205は、帽子状態において第2分割体200に対する第3分割体300の折り畳み方向への回転を規制する。この回転規制は、係止部205が後方に回動操作されることにより解除される。
【0025】
第3分割体300の後部には、係止部305が設けられている。係止部305は、第3分割体300に形成された操作用凹部306に配設されている。係止部305は、操作用凹部306を通じて後方へ回動操作可能に構成されている。係止部305は、帽子状態において第3分割体300に対する第4分割体400の折り畳み方向への回転を規制する。この回転規制は、係止部305が後方に回動操作されることにより解除される。
【0026】
図4に示すように、係止部105は、係止片107を有する。係止片107は、第2分割体200の後方端209の回転経路上に配設される。後方端209は、第2分割体200のうちで軸20Aから最も離れた位置を移動する。係止片107は、折り畳み状態における位置関係を基準として第1分割体100に対して第2分割体200を展開方向へ所定量だけ回転させると、後方へと弾性変形したのちに復元して後方端209に係合する。これにより、第2分割体200の折り畳み方向への回転が規制される。係止片107は、係止部105が後方に回動操作されることにより後方端209の回転経路に干渉しない位置に移動する。
【0027】
係止部205は、係止片207を有する。係止片207は、第3分割体300の後方端309の回転経路上に配設される。後方端309は、第3分割体300のうちで軸20Aから最も離れた位置を移動する。係止片207は、折り畳み状態における位置関係を基準として第2分割体200に対して第3分割体300を展開方向へ所定量だけ回転させると、後方へと弾性変形したのちに復元して後方端309に係合する。これにより、第3分割体300の折り畳み方向への回転が規制される。係止片207は、係止部205が後方に回動操作されることにより後方端309の回転経路に干渉しない位置に移動する。
【0028】
係止部305は、係止片307を有する。係止片307は、第4分割体400の後方端409の回転経路上に配設される。後方端409は、第4分割体400のうちで軸20Aから最も離れた位置を移動する。係止片307は、折り畳み状態における位置関係を基準として第3分割体300に対して第4分割体400を展開方向へ所定量だけ回転させると、後方へと弾性変形したのちに復元して後方端409に係合する。これにより、第4分割体400の折り畳み方向への回転が規制される。係止片307は、係止部305が後方に回動操作されることにより後方端409の回転経路に干渉しない位置に移動する。
【0029】
なお、図4に示すように、帽子状態にある帽体11の側面視において、帽体11の高さの最大値を帽体高さHという。帽体高さHは、入口開口面14と入口開口面14から最も離れた部位である最頂部15との距離である。
【0030】
図4および図5に示すように、帽体11は、ヘッドバンド500、ライナー501,502,503、および、ハンモック504を有する。
ヘッドバンド500は、着用者の頭部に対して帽体11の位置を固定する周状の部材である。ヘッドバンド500は、第1分割体100に取り付けられている。ヘッドバンド500は、着用者の頭部の大きさに合わせて調整可能に構成されている。
【0031】
各ライナー501,502,503は、帽体11の外殻と頭部との間に配置される。各ライナー501,502,503は、外部からの衝撃を吸収することで頭部への衝撃を小さくする。各ライナー501,502,503は、発泡ポリプロピレンや発泡ポリスチレンなどで形成されている。
【0032】
ライナー501は、第4分割体400の内面に取り付けられている。ライナー501は、第4分割体400の形状に合わせた略椀状に形成されている。ライナー501は、帽子状態において、着用者の前頭部および頭頂部を覆うように配置される。
【0033】
ライナー502は、第3分割体300の内面に取り付けられている。ライナー502は、第4分割体400の移動経路に干渉しない形状に形成されている。ライナー502は、帽子状態において、着用者の頭頂部を後方から覆うように配置される。
【0034】
ライナー503は、第2分割体200の内面に取り付けられている。ライナー503は、第3分割体300の移動経路に干渉しない形状に形成されている。ライナー503は、帽子状態において、着用者の後頭部を後方から覆うように配置される。
【0035】
ハンモック504は、各ライナー501,502,503と頭部との間に配置される。ハンモック504は、ポリエチレンなどの弾性を有する樹脂材料で形成されている。ハンモック504は、帽体11と着用者の頭部との隙間を所定の間隔に維持する。また、ハンモック504は、帽体11に衝撃が加わったときにその間隔を維持しようとすることで頭部への衝撃を小さくする。
【0036】
ハンモック504は、ハンモック本体505と後方接続部506とを有する。ハンモック本体505は、第4分割体400の内面に接続されている。ハンモック本体505は、ライナー501の前部から後部に架け渡されるように配置される。ハンモック本体505は、帽子状態において、着用者の前頭部および頭頂部を覆うように配置される。
【0037】
後方接続部506は、ハンモック本体505の後方に配置される。後方接続部506は、一対の連結部507を介してハンモック本体505に一体的に連結されている。一方の連結部507は、ハンモック本体505の左端部から後方に延びている。他方の連結部507は、ハンモック本体505の右端部から後方に延びている。後方接続部506は、接続ベルト508を介して第1分割体100の後部に接続されている。後方接続部506は、帽子状態においては、一対の連結部507が湾曲することで着用者の後頭部を覆う位置に配置される。後方接続部506は、折り畳み状態においては、その下面が入口開口面14に沿うように配置される。後方接続部506は、折り畳み状態において、第2分割体200の後方端209、第3分割体300の後方端309、第4分割体400の後方端409が上方から当接する。これにより、後方接続部506は、折り畳み状態において、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400の折り畳み方向への回転を規制する。折り畳み状態において、後方端209,309,409は、上下方向において入口開口面14と軸20Aとの間に配置される。
【0038】
また、図5に示すように、折り畳み状態にある帽体11の側面視において、第1分割体100の高さの最大値を第1高さH1、第2分割体200の高さの最大値を第2高さH2、第3分割体300の高さの最大値を第3高さH3、第4分割体400の高さの最大値を第4高さH4という。これらの高さH1,H2,H3,H4は、対応する分割体において、入口開口面14と入口開口面14から最も離れた部位との距離である。第1高さH1、第2高さH2、第3高さH3、および、第4高さH4のうちで最も高い高さは、折り畳み状態における帽体11の高さの最大値である折り畳み高さである。折り畳み高さは、帽体高さHの2/3以下、好ましくは半分以下である。第1高さH1、第2高さH2、第3高さH3、および、第4高さH4のなかから任意に選択される2つ高さの差は、帽体高さHの25%以下、より好ましくは10%以下である。この差は、帽体高さHの5%以下であることがさらに好ましい。特に、第1高さH1と第4高さH4との差は、帽体高さHの25%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。また、第1高さH1と第4高さH4との差は、帽体高さHの5%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
図6図11を参照して、軸構造20について詳しく説明する。なお、以下では、左右方向に沿う方向であって、左右方向における帽体11の中心へと向かう方向を内方、帽体11の中心とは反対に向かう方向を外方という。換言すれば、各軸構造20において、他方の軸構造20に向かう方向を内方であり、他方の軸構造20の反対側に向かう方向が外方である。
【0040】
図6に示すように、各軸構造20は、第1分割体100、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400の各々に軸部を有する。各軸構造20は、第1分割体100に第1軸部110、第2分割体200に第2軸部210、第3分割体300に第3軸部310、第4分割体400に第4軸部410を有する。
【0041】
図7に示すように、第1軸部110は、左右方向における第1分割体100の前部104の端部に設けられている。
図7および図11に示すように、第1軸部110は、一対の第1連結片111,112を有する。第1連結片111,112は、第1分割体100の前部104に一体的に形成されている。第1連結片111は、第1連結片112の外方に位置している。第1連結片111,112は、左右方向が厚さ方向となる板状の形状を有する。第1連結片111,112は、第1分割体100の前部104から後方に向かって延びている。第1連結片111,112は、先端が半円形状に形成されている。
【0042】
一対の第1連結片111,112の間の空間は、第1軸部110、第2軸部210、第3軸部310、および、第4軸部410が組み付けられる組付空間である。第1連結片111は、第2軸部210、第3軸部310、および、第4軸部410の外方への移動を規制する。第1連結片112は、第2軸部210、第3軸部310、および、第4軸部410の内方への移動を規制する。
【0043】
第1軸部110は、第1連結片111に第1突出部113有する。第1突出部113は、内方に向かって延びている。第1突出部113の突出長さは、一対の第1連結片111,112の間の間隔の1/3程度である。第1突出部113は、その中心軸を中心とした円上に配置される外周面を有する。第1突出部113の中心軸は、軸構造20の軸20Aである。第1突出部113は、先端上部を切り欠く第1ガイド面115を有する。
【0044】
図8に示すように、第2軸部210は、左右方向における第2分割体200の前部204の端部に設けられている。
図8および図11に示すように、第2軸部210は、第2連結片211と第2突出部213とを有する。第2連結片211は、第2分割体200の前部204に一体的に形成されている。第2連結片211は、左右方向が厚さ方向となる板状の形状を有する。第2連結片211の厚さは、一対の第1連結片111,112の間隔の1/3よりもやや小さい。第2連結片211は、第1連結片111の内方を第2分割体200の前部204から軸20Aに向かって組付空間まで延びている。組付空間において、第2連結片211は、第1連結片111に隣接するように配置される。第2連結片211は、先端が半円形状に形成されている。
【0045】
第2突出部213は、第2連結片211のうちで組付空間に配置される部分に一体的に形成されている。第2突出部213は、第2連結片211から内方に向かって延びている。第2突出部213の突出長さは、一対の第1連結片111,112の間隔の1/3よりもやや小さい。第2突出部213は、その中心軸を中心とした円上に配置される外周面を有する。また、第2突出部213は、先端部のうちで帽子状態において後側上方に配置される部分を切り欠く第2ガイド面215を有する。
【0046】
第2軸部210は、第2連結片211および第2突出部213を貫通する円形孔である第2軸孔214を有する。第2軸孔214は、左右方向に沿って延びている。第2軸孔214の中心軸は、第2突出部213の中心軸に一致する。第2軸孔214のうちで第2連結片211が形成する部分は、第1突出部113が配設される部分である。第2軸孔214のうちで第2突出部213が形成する部分は、後述する第4軸部410の第4突出部413が配設される部分である。
【0047】
図9に示すように、第3軸部310は、左右方向における第3分割体300の前部304の端部に設けられている。
図9および図11に示すように、第3軸部310は、第3連結片311を有する。第3連結片311は、第3分割体300の前部304に一体的に形成されている。第3連結片311は、左右方向が厚さ方向となる板状の形状を有する。第3連結片311の厚さは、一対の第1連結片111,112の間隔の1/3よりもやや小さく、第2突出部213の突出長さと略等しい。第3連結片311は、第2連結片211の内方を第3分割体300の前部304から軸20Aに向かって組付空間まで延びている。第3連結片311は、先端が半円形状に形成されている。第3軸部310は、第3連結片311のうちで組付空間に配置される部分に円形孔である第3軸孔314を有する。第3軸孔314は、左右方向に沿って第3連結片311を貫通している。
【0048】
図10に示すように、第4軸部410は、左右方向における第4分割体400の前部404の端部に設けられている。
図10および図11に示すように、第4軸部410は、第4連結片411を有する。第4連結片411は、第4分割体400の前部404に一体的に形成されている。第4連結片411は、左右方向が厚さ方向となる板状の形状を有する。第4連結片411の厚さは、一対の第1連結片111,112の間隔の1/3よりもやや小さい。第4連結片411は、左右方向における第3連結片311と第1連結片112との間を第4分割体400の前部404から軸20Aに向かって組付空間まで延びている。組付空間において、第4連結片411は、第1連結片112に隣接するように配置される。第4連結片411は、先端が半円形状に形成されている。
【0049】
第4軸部410は、第4連結片411のうちで組付空間に配置される部分に第4突出部413を有する。第4突出部413は、第4連結片411に一体的に形成されている。第4突出部413は、第4連結片411から外方に向かって延びている。第4突出部413の突出長さは、一対の第1連結片111,112の間隔の1/3よりもやや小さく、第2突出部213の突出長さと略等しい。第4突出部413は、その中心軸を中心とした円上に配置される外周面を有する。第4突出部413は、先端部のうちで帽子状態において前側下方に配置される部分を切り欠く第4ガイド面415を有する。
【0050】
第4分割体400は、連接板416を有する。連接板416は、一対の第4連結片411を連接する。連接板416は、一対の第4連結片411に一体的に形成されている。連接板416は、第2分割体200の前部204および第3分割体300の前部304の後方に配置される。連接板416は、一対の第4連結片411の前端部に沿うようにして第4分割体400の前部404付近から組付空間の手前まで延びている。
【0051】
上述した軸構造20の組立手順について説明する。
まず、第1軸部110に第2軸部210が組み付けられる。第2軸部210は、入口開口面14を通じて第1分割体100の内側に配置された状態で第1軸部110の第1突出部113に内方から第2軸孔214を嵌め込むことにより、第1軸部110に組み付けられる。このとき、第1突出部113の第1ガイド面115が第2軸部210のガイドとして機能する。第2軸部210が第1軸部110に組み付けられると、第2分割体200は、軸20Aを中心として回転可能に第1分割体100に支持される。
【0052】
次に、第2軸部210に第3軸部310が組み付けられる。第3軸部310は、入口開口面14を通じて第1分割体100の内側に配置された状態で第2軸部210の第2突出部213に内方から第3軸孔314を嵌め込むことにより、第2軸部210に組み付けられる。このとき、第2突出部213の第2ガイド面215が第3軸部310のガイドとして機能する。第3軸部310が第2軸部210に組み付けられると、第3分割体300は、軸20Aを中心として回転可能に第2分割体200に支持される。また、第3分割体300は、第2分割体200を介して、軸20Aを中心として回転可能に第1分割体100に支持される。
【0053】
次に、第2軸部210に第4軸部410が組み付けられる。第4軸部410は、入口開口面14を通じて第1分割体100の内側に配置された状態で第2軸部210の第2軸孔214に内方から第4突出部413を嵌め込むことにより、第2軸部210に組み付けられる。このとき、第4突出部413の第4ガイド面415が第4軸部410のガイドとして機能する。第4軸部410が第2軸部210に組み付けられると、第4分割体400は、軸20Aを中心として回転可能に第2分割体200に支持される。また、第4分割体400は、第2分割体200を介して、軸20Aを中心として回転可能に第1分割体100に支持される。
【0054】
このようにして組み立てられた軸構造20において、第1軸部110は、第2軸部210を外挿により軸支する。第2軸部210は、第1軸部110および第4軸部410を内挿により軸支する。また第2軸部210は、第3軸部310を外挿により軸支する。第3軸部310は、第2軸部210を内挿により軸支する。第4軸部410は、第2軸部210を外挿により軸支する。
【0055】
上述した帽体11の折り畳み状態から帽子状態への遷移方法の一例について説明する。
帽体11は、第1分割体100の鍔部103が保持された状態で、第4分割体400が展開方向に回転することにより、折り畳み状態から帽子状態へと遷移する。
【0056】
第4分割体400が展開方向に回転すると、第4分割体400の後方端409が第3分割体300の係止片307に下方から当接する。その後、第4分割体400に追従するように第3分割体300が展開方向へ回転する。
【0057】
続いて、第3分割体300の後方端309が第2分割体200の係止片207に下方から当接する。その後、第3分割体300に追従するように第2分割体200が展開方向へ回転する。すなわち、第4分割体400に追従するように第3分割体300および第2分割体200が回転する。そして、第2分割体200の後方端209が第1分割体100の係止片207に下方から当接する。
【0058】
この状態から第4分割体400が展開方向にさらに回転すると、第4分割体400は、後方端409で第3分割体300の係止片307を弾性変形させながら回転したのち、後方端409が係止片307と係合する。また、第3分割体300は、後方端309で第2分割体200の係止片207を弾性変形させながら回転したのち、後方端309が係止片207と係合する。また、第2分割体200は、後方端209が第1分割体100の係止片107を弾性変形させながら回転したのち、後方端209が係止片107と係合する。このようにして各後方端409,309,209が係止片307,207,107に係合することにより、帽体11は帽子状態となる。
【0059】
帽体11の帽子状態から折り畳み状態への遷移方法の一例について説明する。
帽体11は、係止部105,205,305の回動操作と分割体200,300,400の折り畳み方向への回転とにより帽子状態から折り畳み状態へ遷移する。
【0060】
具体的には、まず、第3分割体300の係止部305を後方へ回動操作したのち、その回動操作した状態を保持したまま、第4分割体400を折り畳み方向へ少し回転させる。これにより、係止片307と第4分割体400の後方端409との係合が解除される。その後、第4分割体400を折り畳み方向へ回転させて第3分割体300の内側に第4分割体400を配置する。
【0061】
次に、第2分割体200の係止部205を後方へ回動操作したのち、その回動操作した状態を保持したまま、第3分割体300を折り畳み方向へ少し回転させる。これにより、係止片207と第3分割体300の後方端309との係合が解除される。その後、第3分割体300および第4分割体400を折り畳み方向へと回転させて、第2分割体200の内側に第3分割体300および第4分割体400を配置する。
【0062】
次に、第1分割体100の係止部105を後方へ回動操作したのち、その回動操作した状態を保持したまま、第2分割体200を折り畳み方向へ少し回転させる。これにより、係止片107と第2分割体200の後方端209との係合が解除される。その後、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400を折り畳み方向へ回転させて、第1分割体100の内側に、第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400を配置する。これにより、帽体11は、折り畳み状態となる。
削除
図12を参照して、4つの分割体100,200,300,400で構成される帽体11について、その分割位置の設計方法の一例について説明する。
【0063】
折り畳み式ヘルメット10は、例えばJIS規格(JIS T8131)の産業用ヘルメットに定める耐貫通性試験や衝撃吸収性試験の規定を帽子状態において満たすように設計される。そのため、折り畳み式ヘルメット10の帽体11は、その外殻の形状がおおよそ定まる。すなわち、帽子状態での帽体高さHがおおよそ定まる。
【0064】
また、帽体11の機械的な強度を考慮すると、左右方向の中央における第3分割体300と第4分割体400との繋ぎ目は、帽子状態にある帽体11の最頂部15の後側に配置される。換言すれば、第4分割体400の後方端409は、帽子状態にある帽体11の最頂部15の後側に配置される。そのため、第4分割体400の第4高さH4は、折り畳み状態にある帽体11において最も高くなりやすい高さである。
【0065】
図12に示すように、まず、軸20Aの位置を設定する。軸20Aの位置は、鍔部103の後方の領域において、鍔部103により近く、より低い位置に設定される。
なお、左右方向における帽体11の中央において、軸20Aと第1分割体100の後方端109とを結ぶ仮想線L1を基準とした第1分割体100の高さの最大値を第1分割高さH1aという。軸20Aと第2分割体200の後方端209とを結ぶ仮想線L2を基準とした第2分割体200の高さの最大値を第2分割高さH2aという。軸20Aと第3分割体300の後方端309とを結ぶ仮想線L3を基準とした第3分割体300の高さの最大値を第3分割高さH3aという。軸20Aと第4分割体400の後方端409とを結ぶ仮想線L4を基準とした第4分割体400の高さの最大値を第4分割高さH4aという。これらの分割高さH1a、H2a,H3a,H4aは、左右方向における中央において、仮想線L1,L2,L3,L4から最も離れた部位との距離である。
【0066】
次に、第4分割高さH4aが暫定的に設定される。第4分割高さH4aは、帽体高さHの2/3以下、好ましくは半分以下となるように設定される。第4分割高さH4aは、第4高さH4よりも僅かに低い高さである。
【0067】
次に、第1分割高さH1aが暫定的に設定される。第1分割高さH1aは、帽体高さHの2/3以下、好ましくは半分以下となるように、また、第4分割高さH4aとの差(=|H4a-H1a|)が帽体高さHの25%以下、好ましくは10%以下となるように設定される。第1分割高さH1aは、第1高さH1よりも僅かに低いものの、第1高さH1とほぼ等しい高さである。
【0068】
次に、第2分割高さH2aおよび第3分割高さH3aが暫定的に設定される。第2分割高さH2aおよび第3分割高さH3aの各々は、第1分割高さH1aおよび第4分割高さH4aの双方よりも低い高さに設定される。第2分割高さH2aおよび第3分割高さH3aは、ほぼ等しい高さに設定される。
【0069】
分割高さH1a,H2a,H3a,H4aが暫定的に設定されると、分割体100,200,300,400の分割位置が暫定的に定まる。そして、その分割位置に基づく帽体11のモデルを作成し、その作成したモデルを用いたシミュレーションで各部材の干渉や帽体11の機械的な強度を確認する。
【0070】
こうした一連の手順を軸20Aの位置や第4分割高さH4aを変更しながら繰り返し行うことで、機械的な強度を満足しつつ折り畳み高さが低くなるように分割体100,200,300,400の分割位置が定められる。
【0071】
本実施形態の作用及び効果について説明する。
(1)帽体11は、第1分割体100における前側下部に位置する1つの軸20Aを中心として、第1分割体100に対して第2分割体200、第3分割体300、および、第4分割体400を回転可能に軸支する軸構造20を備える。こうした構成によれば、軸20Aをより低い位置に配置することが可能である。その軸20Aの位置が低い分だけ折り畳み状態での帽体11の高さを小さくすることができる。
【0072】
(2)軸構造20において、第2軸部210は、第1軸部110および第4軸部410を内挿により軸支しているとともに、第4軸部410を軸支している部分に対する外挿により第3軸部310を軸支している。こうした構成によれば、軸20Aの径方向において第3軸部310の軸支部分と第4軸部410の軸支部分とが重なるため、左右方向において軸構造20が占有する領域を小さくすることができる。
【0073】
(3)軸構造20が左右方向において対称配置されている。こうした構成によれば、左右方向における2つの箇所で分割体100,200,300,400を軸支することができる。これにより、第1分割体100に対する分割体200,300,400のがたつきが抑えられることから、第1分割体100に対する分割体200,300,400の回転を安定させることができる。
【0074】
(4)軸構造20において、第1軸部110は、内方に向かって延びる第1突出部113を有する。第4軸部410は、外方に向かって延びる第4突出部413を有する。第2軸部210は、第1突出部113および第4突出部413が内挿される第2軸孔214と、第2軸孔214の一部を形成するとともに内方に向かって延びる第2突出部213を有する。第3軸部310は、第2突出部213に外挿される第3軸孔314を有する。
【0075】
こうした構成によれば、第1軸部110の軸支部分である第1突出部113をより遠くの位置に配置することができる。これにより、第1分割体100による第2分割体200の軸支を安定させることができる。
【0076】
また、例えば軸部110、210,310,410を貫通するように配設される軸部材が不要であることから、少ない部品点数で軸構造20を構成することができる。
また、軸構造20が、第1分割体100に対して下側開口部の大きい順に分割体200,300,400を組み付ける構造となるため、帽体11の組立作業および分割体の取り外し作業を容易にすることができる。取り外し作業が容易となることで、例えば第4分割体400の交換など、帽体11のメンテナンス性を向上させることができる。
【0077】
(5)第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとの差が帽体高さHの25%以下であることにより、第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとの差を小さくすることができる。これにより、第1分割高さH1aおよび第4分割高さH4aは、これら第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとの合計値をほぼ二等分した値に近づけることができる。その結果、第1分割体100に対して第4分割体400を折り畳んだ状態において、これら第1分割体100および第4分割体400が占有する高さを小さくすることができる。
【0078】
また、第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとの差が帽体高さHの10%以下であることにより、第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとを略等しくすることができる。すなわち、第1分割高さH1aおよび第4分割高さH4aは、これら第1分割高さH1aと第4分割高さH4aとの合計値をほぼ二等分した値とすることができる。これにより、第1分割体100に対して第4分割体400を折り畳んだ状態において、これら第1分割体100および第4分割体400が占有する高さをほぼ最小の値とすることができる。
【0079】
(6)第4分割高さH4aが帽体高さHの2/3以下、好ましくは半分以下である。こうした構成によれば、折り畳み状態における帽体11の折り畳み高さが第4分割体400によって大きくなることが抑えられる。また、第4分割体400の後方端409の回転経路がより前方側に配置されるため、他の部材を配設可能な領域を大きくすることができる。
【0080】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・頭頂部椀状体である第4分割体400の第4分割高さH4aは、帽体高さHの2/3を超える程度であってもよい。
【0081】
・鍔部環状体である第1分割体100の第1分割高さH1aと頭頂部椀状体である第4分割体400の第4分割高さH4aとの差が帽体高さHの25%を超える程度であってもよい。
【0082】
・軸構造20は、左右方向に延びる軸20Aを中心として、第1分割体100に対して分割体200,300,400が回転可能であればよく、上述した構造に限られない。例えば、軸構造20は、軸部110,210,310,410に軸孔が形成され、それらの軸孔に棒状の軸部材が挿入される構成であってもよい。また例えば、第1軸部110は、第1連結片112に外方に向かって延びる突出部を有する構成であってもよい。
【0083】
また、軸構造20は、以下のような構成であってもよい。
例えば、図13に示すように、第1軸部110は、内方に向かって延びる第1突出部123を有する。第2軸部210は、左右方向に沿って延びる貫通孔である第2軸孔224を有する。第3軸部310は、外方に向かって延びる第3突出部323aと内方に向かって延びる第3突出部323bとを有する。第4軸部410は、内方に向かって延びる第4軸孔424を有する。
【0084】
第1軸部110は、第2軸部210の第2軸孔224が第1突出部123に嵌め込まれることより第2軸部210を軸支する。第2軸部210は、第2軸孔224に第3突出部323aが嵌め込まれることにより第3軸部310を軸支する。第3軸部310は、第3突出部323bに第4軸部410の第4軸孔424が嵌め込まれることにより第4軸部410を軸支する。
【0085】
例えば、図14に示すように、第1軸部110は、左右方向に沿って外方に向かって延びる第1軸孔134を有する。第2軸部210は、左右方向に沿って延びる貫通孔である第2軸孔234を有する。第3軸部310は、外方に向かって延びる第3突出部333と外方に向かって延びる第3軸孔334とを有する。第4軸部410は、内方に延びる第4突出部433を有する。
【0086】
第1軸部110は、第1軸孔134に内方から第3軸部310の第3突出部333が嵌め込まれることにより第3軸部310を軸支する。この第3軸部310には、予め第3突出部333に対して外方から第2軸部210の第2軸孔234が嵌め込まれている。すなわち、第3軸部310は、第2軸部210を軸支した状態で第1軸部110に組み付けられる。また、第3軸部310は、第3軸孔334に第4軸部410の第4突出部433が嵌め込まれることにより第4軸部410を軸支する。
【0087】
例えば、図15に示すように、第1軸部110は、内方に向かって延びる第1突出部143を有する。第1突出部143は、外方に向かって延びる第1軸孔144を有する。第2軸部210は、左右方向に沿って延びる貫通孔である第2軸孔244を有する。第3軸部310は、外方に向かって延びる第3突出部343と外方に向かって延びる第3軸孔344とを有する。第3突出部343は、基端側の大径部343aと先端側の小径部343bとを有する。第4軸部410は、外方に向かって延びる第4突出部443を有する。
【0088】
第1軸部110は、第1突出部143に第2軸部210の第2軸孔244が内方から嵌め込まれることにより第2軸部210を軸支する。第1軸部110は、第1突出部143の第1軸孔144に第3突出部343の小径部343bが内方から嵌め込まれることにより第3軸部310を軸支する。第2軸部210は、第2軸孔244に第3突出部343の大径部343aが内方から嵌め込まれることにより第3軸部310を軸支する。第3軸部310は、第3軸孔344に第4軸部410の第4突出部443が内方から嵌め込まれることにより、第4軸部410を軸支する。
【0089】
例えば、図16に示すように、第1軸部110は、内方に向かって延びる第1突出部153を有する。第2軸部210は、内方に向かって延びる第2突出部253と左右方向に沿って延びる貫通孔である第2軸孔254とを有する。第3軸部310は、左右方向に沿って延びる貫通孔である第3軸孔354を有する。第4軸部410は、外方に向かって延びる第4突出部453を有する。
【0090】
第1軸部110は、第1突出部153に第2軸部210の第2軸孔254が内方から嵌め込まれることにより第2軸部210を軸支する。第2軸部210は、第2突出部253に第3軸部310の第3軸孔354が内方から嵌め込まれることにより第3軸部310を軸支する。また、第2軸部210は、第2軸孔254に第4軸部410の第4突出部453が内方から嵌め込まれることにより第4軸部410を軸支する。
【0091】
・帽体11は、軸構造を1つ以上有していればよい。
例えば、帽体11が軸構造を1つ有する場合、その軸構造は、軸部110,210,310,410に軸孔が形成され、それらの軸孔に棒状の軸部材が挿入される構成であることが好ましい。また例えば、帽体11が3以上の軸構造を有する場合、それらの軸構造は、左右方向の両端に配置される軸構造が上述した軸構造20であり、それ以外の軸構造が軸部110,210,310,410に形成された軸孔に棒状の軸部材が挿入される構成であることが好ましい。
【0092】
・帽体11は、鍔部環状体、頭頂部椀状体、1つ以上の中間環状体で構成されるものであればよい。そのため、帽体11は、1つの中間環状体を有する構成であってもよいし、3以上の中間環状体を有する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0093】
10…折り畳み式ヘルメット
11…帽体
12…顎紐
13…耳紐
14…入口開口面
15…最頂部
20…軸構造
20A…軸
100…第1分割体
101…下側開口部
102…上側開口部
103…鍔部
104…前部
105…係止部
106…操作用凹部
107…係止片
109…後方端
110…第1軸部
111,112…第1連結片
113…第1突出部
115…第1ガイド面
123…第1突出部
134…第1軸孔
143…第1突出部
144…第1軸孔
153…第1突出部
200…第2分割体
201…下側開口部
202…上側開口部
204…前部
205…係止部
206…操作用凹部
207…係止片
209…後方端
210…第2軸部
211…第2連結片
213…第2突出部
214…第2軸孔
215…第2ガイド面
224,234,244…第2軸孔
253…第2突出部
254…第2軸孔
300…第3分割体
301…下側開口部
302…上側開口部
304…前部
305…係止部
306…操作用凹部
307…係止片
309…後方端
310…第3軸部
311…第3連結片
314…第3軸孔
323a,323b,333…第3突出部
334…第3軸孔
343…第3突出部
343a…大径部
343b…小径部
344,354…第3軸孔
400…第4分割体
401…下側開口部
404…前部
409…後方端
410…第4軸部
411…第4連結片
413…第4突出部
415…第4ガイド面
416…連接板
424…第4軸孔
433,443,453…第4突出部
500…ヘッドバンド
501,502,503,504…ハンモック
505…ハンモック本体
506…後方接続部
507…連結部
508…接続ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
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図16