(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】過給機の遮熱構造
(51)【国際特許分類】
F02B 39/00 20060101AFI20230912BHJP
F02B 77/11 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
F02B39/00 B
F02B39/00 S
F02B77/11 D
(21)【出願番号】P 2020190404
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中島 崇宏
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-180396(JP,A)
【文献】特開2019-74039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/00
F02B 39/00
F02B 77/11
F01N 13/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、
前記内燃機関よりも後方に配置された過給機と、
前記過給機を覆うインシュレータと、
を備える車両に適用される遮熱構造であって、
前記インシュレータは、前記内燃機関と前記過給機との間において前記過給機を前方から覆っているとともに、前記過給機を上方、後方、及び下方から覆っており、
前記インシュレータは、前記過給機から視て上方且つ前方の位置に開口を有し、
前記開口は、前記インシュレータによって囲われる内域から視て前方を向いている
過給機の遮熱構造。
【請求項2】
前記開口を第1開口としたとき、
前記インシュレータは、前記第1開口から視て後方であって前記過給機から視て上方の位置に第2開口を有し、
前記第2開口は、前記内域から視て上方を向いている
請求項1に記載の過給機の遮熱構造。
【請求項3】
前記インシュレータから視て上方に壁部を備え、
前記壁部は、前方を向いており、
前記第2開口は、前記壁部から視て真下に位置している
請求項2に記載の過給機の遮熱構造。
【請求項4】
前記開口を第1開口としたとき、
前記インシュレータは、前記過給機から視て後方且つ下方の位置に第3開口を有し、
前記第3開口は、前記内域から視て下方を向いている
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の過給機の遮熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過給機の遮熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両は、内燃機関及び過給機を備えている。内燃機関及び過給機は、エンジンルーム内に位置している。過給機は、内燃機関よりも後方に位置している。また、車両は、過給機を覆うインシュレータを備えている。インシュレータは、過給機を、上方及び後方から覆っている。インシュレータは、開口を有している。開口は、過給機から視て後方に位置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の車両では、当該車両の走行中は、エンジンルームにおいて、おおよそ車両の前方から後方に向かって走行風が流れる。しかしながら、特許文献1のインシュレータの開口は、過給機から視て車両の後方を向いており、走行風がインシュレータの内部に導入されにくい。したがって、過給機に走行風が当たりにくく、過給機に対する冷却性能という点で、改善の余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、内燃機関と、前記内燃機関よりも後方に配置された過給機と、前記過給機を覆うインシュレータと、を備える車両に適用される遮熱構造であって、前記インシュレータは、前記内燃機関と前記過給機との間において前記過給機を前方から覆っているとともに、前記過給機を上方、後方、及び下方から覆っており、前記インシュレータは、前記過給機から視て上方且つ前方の位置に開口を有し、前記開口は、前記インシュレータによって囲われる内域から視て前方を向いている過給機の遮熱構造である。
【0006】
上記構成によれば、開口が車両の前方に向かって開口しているため、車両の前方から後方に流れる走行風が、インシュレータによって囲われる内域へと入りやすい。したがって、多くの走行風を過給機へと導くことが可能で、過給機を効率的に冷却できる。
【0007】
上記構成において、前記開口を第1開口としたとき、前記インシュレータは、前記第1開口から視て後方であって前記過給機から視て上方の位置に第2開口を有し、前記第2開口は、前記内域から視て上方を向いていてもよい。上記構成によれば、第2開口が上方を向いているため、インシュレータの上方の面に沿って流れてくる走行風を、インシュレータの内域に導入しやすい。
【0008】
上記構成において、前記インシュレータから視て上方に壁部を備え、前記壁部は、前方を向いており、前記第2開口は、前記壁部から視て真下に位置していてもよい。
上記構成によれば、前方から後方に向かって流れる走行風の一部は壁部に衝突し、下方に流れる。したがって、壁部から視て真下に位置する第2開口を介してインシュレータの内域に走行風が流入しやすい。
【0009】
上記構成において、前記開口を第1開口としたとき、前記インシュレータは、前記過給機から視て後方且つ下方の位置に第3開口を有し、前記第3開口は、前記内域から視て下方を向いていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、第1開口より導入され、インシュレータと過給機との間を通過する走行風は、第3開口を通過して、インシュレータの内域から外部へと排出される。そのため、インシュレータの内域を流れる走行風が滞留することが抑制され、過給機の効率的な冷却に寄与する。
【0011】
上記構成において、前記インシュレータは、前記過給機に向かって突出する凸部を有し、前記凸部は、前記開口から視て下方且つ前記過給機から視て前方に位置していてもよい。上記構成によれば、開口から導入された走行風が、凸部によって過給機へと案内される。したがって、過給機が走行風で冷却されやすい。
【0012】
上記構成において、前記凸部のうち上方を向く面を第1面としたとき、前記インシュレータは、前記第1面に向かい合う第2面を有し、前記第1面に直交する方向での前記第1面から前記第2面までの最短距離と最長距離との差は、前記最短距離の20%以下となっていてもよい。
【0013】
上記構成によれば、第1面から第2面までの距離は急激に変化しない。そのため、開口を通過して、第1面と第2面との間を流通する走行風の流れが安定する。したがって、開口周辺において乱流が発生して、その乱流により走行風がインシュレータの内域に流入しにくくなることを抑制できる。
【0014】
上記構成において、前記インシュレータは、前記過給機の前方を覆う第1インシュレータと、前記過給機の上方、後方、下方を覆う第2インシュレータとを有し、前記開口は、前記第1インシュレータの縁と前記第2インシュレータの縁とで区画されていてもよい。
【0015】
上記構成によれば、第1インシュレータ及び第2インシュレータの縁によって開口が形成されているため、開口を穴あけ加工等で加工する必要がなく、製造工数の増加を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】第1インシュレータ及び第2インシュレータの拡大斜視図。
【
図3】第2インシュレータにおける第2開口近傍の拡大図。
【
図4】第2インシュレータにおける第3開口近傍の拡大図。
【
図5】第1インシュレータ及び第2インシュレータの内域を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<概略構成>
車両前部の概略構成について説明する。なお、以下の説明において、車両Vの前後に延びる仮想の軸を前後軸、車両Vの左右に延びる仮想の軸を左右軸、車両Vの上下に延びる仮想の軸を上下軸と呼称する。
【0018】
図1に示すように、車両Vは、ボンネット100、カウル101、及びダッシュパネル102を備えている。ボンネット100の形状は、略板状である。ボンネット100は、概ね車両Vの前後軸に沿って延びている。カウル101は、ボンネット100の後縁に連結している。カウル101の形状は、例えば筒形状である。カウル101は、概ね車両Vの左右軸に沿って延びている。ダッシュパネル102は、カウル101の下端に連結している。ダッシュパネル102の形状は、略板状である。ダッシュパネル102は、概ね車両Vの上下軸に沿って延びている。
【0019】
ボンネット100及びダッシュパネル102は、エンジンルーム500を区画している。ボンネット100は、エンジンルーム500の上壁を構成している。ダッシュパネル102は、エンジンルーム500の後壁を構成している。すなわち、ダッシュパネル102は、エンジンルーム500と、車両Vの乗員が乗り込む車室103とを隔てている。
【0020】
車両Vは、内燃機関10と、過給機20と、カバー13と、インシュレータ50と、を備えている。
内燃機関10は、エンジンルーム500内に位置している。内燃機関10は、車両Vの駆動源である。図示は省略するが、内燃機関10は、出力軸としてのクランクシャフトを有している。内燃機関10のクランクシャフトは、車両Vの左右軸に沿っている。すなわち、内燃機関10は、いわゆる横置きの内燃機関である。なお、
図1では、内燃機関10の形状を簡略して図示している。
【0021】
カバー13は、エンジンルーム500内に位置している。カバー13は、内燃機関10から視て上方に位置している。カバー13の形状は、略板状である。カバー13は、車両Vの前後軸に沿って延びている。カバー13は、内燃機関10の全体を、上方から覆っている。
【0022】
過給機20は、内燃機関10に連結している。図示は省略するが、過給機20は、内燃機関10の吸気通路及び排気通路に跨って連結している。過給機20は、排気によって回転するタービンホイールと、吸気を圧縮するコンプレッサホイールと、タービンホイール及びコンプレッサホイールを連結するシャフトと、を有する。過給機20は、内燃機関10から視て後方に位置している。また、過給機20のシャフトは、車両Vの左右軸に沿っている。なお、各図面では、過給機20の形状を簡略して図示している。また、以下では、車両Vを左右軸に沿う方向から視たとき、過給機20のシャフトの位置を、過給機20の中心Gとして説明する。
【0023】
インシュレータ50は、内燃機関10に連結している。図示は省略するが、インシュレータ50は、内燃機関10から延びる金具等によって支持されている。インシュレータ50は、過給機20を、前方、上方、後方、下方から覆っている。
【0024】
<遮熱構造の構成>
以下、過給機20の遮熱構造について説明する。
インシュレータ50は、第1インシュレータ51、及び第2インシュレータ52を有している。なお、第1インシュレータ51、第2インシュレータ52、過給機20、及びカウル101によって、遮熱構造が構成されている。
【0025】
図2に示すように、第1インシュレータ51は、全体として長方形状の板材である。第1インシュレータ51の主面は、車両Vの前後軸に対して直交している。第1インシュレータ51の長辺は、車両Vの左右軸に沿っている。また、第1インシュレータ51の短辺は、車両Vの上下軸に沿っている。
図1に示すように、第1インシュレータ51は、車両Vの前後軸に沿う方向において、内燃機関10と、過給機20との間に位置している。すなわち、第1インシュレータ51は、過給機20の中心Gよりも前方に位置し、過給機を前方から覆っている。また、第1インシュレータ51の上端は、過給機20の中心Gよりも上方に位置している。
【0026】
図2に示すように、第2インシュレータ52は、全体として車両Vの後方に向かって凸の弧状の板材である。具体的には、第2インシュレータ52は、上縁及び下縁が前方に位置し、中央が後方に位置するように湾曲している。第2インシュレータ52の湾曲の内側は、車両Vの前方を向いている。第2インシュレータ52は、第1インシュレータ51と向かい合っている。すなわち、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52を合わせたインシュレータ50全体としては、略筒形状になっている。第2インシュレータ52は、過給機20の上方、後方、及び下方を覆っている。したがって、過給機20は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52で区画される内域A内に位置している。
【0027】
図2に示すように、第2インシュレータ52の上縁54は、概ね第1インシュレータ51の上縁53と平行に延びている。また、第2インシュレータ52の上縁54は、第1インシュレータ51の上縁53から視て上方に位置している。
【0028】
第2インシュレータ52は、湾曲部55を有する。湾曲部55は、第2インシュレータ52の上縁54の一部を含んでいる。湾曲部55は、概ね上方に向かって凸になっている。湾曲部55は、車両Vの左右軸に沿う方向において、第2インシュレータ52の略中央に位置している。上述のとおり、湾曲部55が、第2インシュレータ52の上縁54を含んでいる結果、第2インシュレータ52の上縁54のうち、湾曲部55の上縁56との間の距離が、他の箇所よりも大きくなっている。そして、上縁56と上縁53とによって、第1開口61が区画されている。
【0029】
図1に示すように、第2インシュレータ52は、第2開口62を有する。第2開口62は、第1開口61から視て後方に位置している。また、第2開口62は、過給機20から視て上方に位置している。ここで、カウル101の壁部のうち、車両Vの前方を向く面を前壁101Fとしたき、前壁101Fは、車両Vの上下軸に沿って延びている。そして、第2開口62は、前壁101Fの真下に位置している。
【0030】
図3に示すように、第2開口62の形状は、車両Vの左右軸に沿う方向に長い長方形状である。第2開口62は、車両Vの左右軸に沿う方向において、第2インシュレータ52の略中央に位置している。第2開口62は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aから視て上方を向いている。なお、ここで「第2開口62が上方を向いている」とは、第2開口62の向きが真上である場合に限らず、第2開口62の向きが上方の方向成分を有している場合を含む。
【0031】
図4に示すように、第2インシュレータ52は、2つの第3開口63を有する。
図1に示すように、2つの第3開口63は過給機20の中心Gから視て、後方且つ下方に位置している。2つの第3開口63は、車両Vの上下軸に沿う方向に並んでいる。また、2つの第3開口63は、第2インシュレータ52のうち最も後方の端から視て下方に位置している。
【0032】
図4に示すように、第3開口63の形状は、車両Vの左右軸に沿う方向に長い長方形状である。第3開口63は、車両Vの左右軸に沿う方向において、第2インシュレータ52の略中央に位置している。第3開口63は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aから視て下方を向いている。なお、ここで「第3開口63が下方を向いている」とは、第3開口63の向きが真下である場合に限らず、第3開口63の向きが下方の方向成分を有している場合を含む。
【0033】
第2インシュレータ52は、2つの整流板40を有している。各整流板40は、第3開口63を部分的に覆っている。具体的には、各整流板40は、第2インシュレータ52の内域Aと反対側の面から立ち上がる側壁を有している。当該側壁は、各第3開口63の縁のうちの上方の縁、左方の縁の半分、及び右方の縁半分を囲うように延びている。側壁の先端には、側壁と直交する主面板が接続されている。その結果、整流板40は、第3開口63の上方側の略半分を内域Aの外側から覆っている。
【0034】
図5に示すように、第1インシュレータ51は、凸部70を有している。凸部70は、過給機20の中心Gから視て、上方且つ前方の第1インシュレータ51に位置している。また、凸部70は、第1開口61から視て、真下に位置している。凸部70は、過給機20に向かって突出している。すなわち、凸部70は車両Vの後方に向かって突出している。凸部70は、左右軸に沿う方向から視たときに、第1インシュレータ51の主面に対して山型に突出している。そして、凸部70の外面のうち、上方を向く面及び下方を向く面は、いずれも平面になっている。
【0035】
ここで、凸部70の外面のうち上方を向く面を第1面71としたとき、第2インシュレータ52は、第1インシュレータ51の第1面71と向かい合う第2面72を有している。第2インシュレータ52の第2面72のうちの上方の一部は、第1面71と平行に延びている。ただし、第2面72のうち下方の一部は、下方に向かうほど、第1面71との距離が大きくなっている。
【0036】
図5に示すように、第1面71に直交する方向での第1面71から第2面72までの距離を距離Lとする。このとき、第1面71と第2面72とが平行になっている箇所での距離Lが最短距離L1である。また、第1面71の下縁から第2面の下縁までの距離Lが最長距離L2である。最長距離L2は、最短距離L1の1.2倍以下になっている。すなわち、最短距離L1と最長距離L2との差は、最短距離L1の20%以下になっている。
【0037】
<作用>
エンジンルーム500内では、車両Vの走行中等、車両Vの前方から後方に向かって走行風が流れている。この走行風の一部は、カバー13の上方を通過する。当該走行風は、第1開口61を通過して、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aへと流入する。
【0038】
また、エンジンルーム500内を流れる走行風で、第1開口61へ流入しなかったものは、第2インシュレータ52の上面に沿ってさらに車両Vの後方へと流れる。その場合、走行風の一部は、エンジンルーム500の後端に位置するカウル101に衝突する。カウル101に衝突した走行風は、下方へと流れ方向が変化する。カウル101に衝突し、下方に流れる走行風の一部は、第2開口62を通って第1インシュレータ51と第2インシュレータ52との内域Aへと流入する。
【0039】
また、第2開口62通過しなかった走行風は、第2インシュレータ52とダッシュパネル102との間の空間に流れる。第2インシュレータ52が、後方に凸となるように湾曲していることから、第2インシュレータ52とダッシュパネル102との間は、第2インシュレータ52の後方の端で最も距離が近くなっている。そして、当該箇所よりも、走行風の流れ方向の下流では、走行風の流速が大きくなる。
【0040】
さて、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aへと流入した走行風は、凸部70の第1面71及び第2面72に沿って、過給機20の周囲へと導かれる。ここで、
図5に示すように、走行風は、第1インシュレータ51と過給機20の前方との間を通る流路D1と、第2インシュレータ52と過給機20の上方、後方、下方との間を通る流路D2とに大別して流れる。上述のように、凸部70は、車両Vの後方に向かって突出している。そのため、走行風は、凸部70の突出にしたがって、車両Vの後方へと導かれやすくなっている。すなわち、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aへと流入した走行風は、流路D2へと流れやすくなっている。
【0041】
流路D2を通る走行風は、第2インシュレータ52の下方の縁から内域Aの外へと出ていく。また、流路D2の途中では、第2インシュレータ52に第3開口63が存在する。2つの第3開口63は、第2インシュレータ52のうち最も後方の端から視て下方に位置している。すなわち、第3開口63は、第2インシュレータ52の外部において走行風の流速が大きくなる箇所に対応して設けられている。
【0042】
<効果>
(1)上記実施形態において、第1開口61は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52によって囲われる内域Aから視て前方を向いている。そのため、カバー13の上方を通過して車両Vの後方に流れる走行風が、第1開口61を通過しやすい。そのため、多くの走行風を過給機20へと導き入れることが可能で、過給機20を効率的に冷却できる。
【0043】
(2)上記実施形態において、第2インシュレータ52は、第1開口61から視て後方であって過給機20から視て上方の位置に第2開口62を有している。また、第2開口62は、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aから視て上方を向いている。第2開口62が上方を向いているため、第1開口61を通過せず、第2インシュレータ52の上方の面に沿って流れてくる走行風を、第2開口62を介して内域Aに導入しやすい。
【0044】
(3)上記実施形態において、エンジンルーム500の前方から後方に向かって流れる走行風の一部は、カウル101の前壁101Fに衝突し、流れ方向が下方へと変化する。第2開口62は、カウル101の前壁101Fの真下に位置しているため、前壁101Fに衝突した走行風が第2開口62を介して内域Aに流入しやすい。
【0045】
(4)上記実施形態において、第2インシュレータ52は、過給機20から視て後方且つ下方の位置に第3開口63を有している。流路D2を流れる走行風は、第3開口63を通過して、第1インシュレータ51及び第2インシュレータ52の内域Aから排出される。そのため、インシュレータ50の内域Aを流れる走行風が滞留することが抑制され、過給機20の効率的な冷却に寄与する。
【0046】
(5)上記実施形態において、第3開口63は、第2インシュレータ52のうち最も後方の端から視て下方に位置している。上述したとおり、第2インシュレータ52のうち最も後方の端よりも走行風の流れ方向の下流側、つまり下方では、走行風の流速が比較的に大きい。その結果、インシュレータ50の内域Aよりも外部の方が、静圧が低くなる。このような圧力関係により、内域A内の走行風は、第3開口63を介して外部へと排出されやすい。
【0047】
(6)上記実施形態において、第1インシュレータ51は、凸部70を有している。凸部70は、過給機20に向かって突出している。したがって、第1開口61から導入された走行風は、凸部70によって過給機20へと案内される。そのため、過給機20が走行風で冷却されやすい。
【0048】
(7)上記実施形態において、凸部70の第1面71に直交する方向での第1面71から第2面72までの最短距離L1と最長距離L2との差は、最短距離L1の20%以下となっている。すなわち、第1面71から第2面72までの距離は、走行風の流れ方向において急激に変化していない。したがって、第1開口61を通過してインシュレータ50の内域Aへと流入した走行風の流れが安定する。すなわち、第1開口61周辺において乱流の発生が抑制され、走行風がインシュレータ50の内域Aに流入しにくくなることを抑制できる。また、第1開口61から内域Aへと流入する走行風の流量の増加が期待できる。
【0049】
(8)上記実施形態において、第1開口61は、第1インシュレータ51の縁と、第2インシュレータ52の縁とで区画されている。したがって、第1開口61を穴あけ加工で形成する必要がなく、製造工数の増加を抑制できる。
【0050】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態において、車両Vの内部の構成は上記実施形態の例に限定されない。例えば、カバー13は設けられていなくてもよい。
【0051】
・上記実施形態において、カウル101は、前方を向く壁部を有していれば、その形状は問わない。また、カウル101の前壁101Fが上下軸に沿って延びていなくてもよい。例えば、前壁101Fが、カウル101とボンネット100との連結位置から視て、下方且つ後方に斜めに延びていてもよい。その場合、第2開口62は、前壁101Fのいずれかの箇所の真下に位置していればよい。
【0052】
・第2開口62の真上に存在する壁部は、カウル101の壁部に限らない。第2開口62の真上に、前方を向く壁部が存在して入れば、上述した(3)と同様の効果が期待できる。
【0053】
・上記実施形態において、インシュレータ50の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、インシュレータ50が、第1インシュレータ51と第2インシュレータ52とに分かれていなくてもよい。その場合、第1開口61は、インシュレータ50に穴あけ加工等で形成すればよい。
【0054】
・上記実施形態において、第1開口61の数は問わない。すなわち、第1開口61が2個以上設けられていてもよい。
・上記実施形態において、第2開口62が2個以上設けられていてもよい。また、第2インシュレータ52における第2開口62の配置は、上記実施形態の例と異なっていてもよい。すなわち、第2開口62の位置は、カウル101の前壁101Fの真下でなくてもよい。第2開口62が、第1開口61よりも後方に設けられていれば、第2インシュレータ52に沿って流れる走行風の一部が、第2開口62を介して内域Aに流入する。さらに、第2開口62が設けられていなくてもよい。
【0055】
・上記実施形態において、第3開口63は1個でもよいし、3個以上設けられていてもよい。また、第2インシュレータ52における第3開口63の配置は、第1開口61及び第2開口62よりも後方であれば、上記実施形態の例と異なっていてもよい。また、第3開口63が設けられていなくてもよい。
【0056】
・上記実施形態において、凸部70の形状は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、半球状の突起であってもよい。その場合、車両Vに搭載した第1インシュレータ51を上方から視たときに、可視可能な面を第1面71とする。
【0057】
・上記実施形態において、凸部70の位置は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、第1インシュレータ51において、第1開口61から視たときに真下でなくてもよい。例えば、第1インシュレータ51が、車両Vの後方に向かって斜めに延びている場合、第1インシュレータ51は第1開口61よりも後方に位置していてもよい。また、凸部70はインシュレータ50に設けられていなくてもよい。
【0058】
・上記実施形態において、第1面71に直交する方向での第1面71から第2面72までの最短距離L1と最長距離L2との差は、最短距離L1の20%より大きくなっていてもよい。仮に、最短距離L1と最長距離L2との差が大きくても、距離の変化割合が急変しなければ、第1開口61近傍での乱流の発生を抑制できる。
【0059】
・上記実施形態において、整流板40と同様の構成の整流板が第2開口62の開口縁に取り付けられていてもよい。このような整流板を採用することで、第2開口62を介して内域Aに流入した走行風の向きを整えることができる。その場合、整流板の縁と第2インシュレータ52の外面とで囲まれる開口が、内域Aから視て前方又は後方を向いていることが好ましい。このような構成であれば、第2開口62へ流入しようとする走行風の流れを、整流板が妨げにくい。
【0060】
・上記実施形態において、第3開口63の開口縁に沿った整流板40が設けられていなくてもよい。例えば、内域Aから視た第3開口63の向きが、走行風を排出したい向きと一致しているのであれば、整流板40を省略しても構わない。
【符号の説明】
【0061】
10…内燃機関
20…過給機
50…インシュレータ
51…第1インシュレータ
52…第2インシュレータ
61…第1開口
62…第2開口
63…第3開口
70…凸部
71…第1面
72…第2面
101…カウル
500…エンジンルーム