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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】領域検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/60 20170101AFI20230912BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230912BHJP
   G06T 7/12 20170101ALI20230912BHJP
【FI】
G06T7/60 300
G06T7/00 660Z
G06T7/12
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020557543
(86)(22)【出願日】2019-05-09
(86)【国際出願番号】 JP2019018647
(87)【国際公開番号】W WO2020110347
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】62/773,512
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】723005698
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【審査官】笠田 和宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-146182(JP,A)
【文献】特開平08-194825(JP,A)
【文献】特開2017-113176(JP,A)
【文献】国際公開第2014/033842(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/60
G06T 7/00
G06T 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
爪を含む指先の指先画像を取得する取得部と、
前記指先画像を、前記指先画像における前記爪の内側の一の点を極とする極座標画像に変換する変換部と、
前記極座標画像を用いて前記爪の領域を検出する検出部と、
を備え
前記検出部は、
前記極座標画像における画素のうち、前記爪の輪郭に位置する画素の候補となる複数の輪郭候補画素を抽出し、
前記複数の輪郭候補画素のうち、前記極座標画像における距離方向を除く方向において列状に隣接する輪郭候補画素群からなる1以上の輪郭候補線分を抽出し、
抽出した前記1以上の輪郭候補線分に基づいて、前記爪の領域を検出する
領域検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の抽出において複数の輪郭候補線分を抽出した場合に、
抽出した前記複数の輪郭候補線分の中から、前記極座標画像における距離方向において互いに重ならない1以上の輪郭候補線分を選択し、
選択した前記1以上の輪郭候補線分に基づいて、前記爪の領域を検出する
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分が存在する場合に、前記択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分のそれぞれに対して、より長い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをして、前記択一的な選択を行う
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分が存在する場合に、前記択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分のそれぞれに対して、前記極からの距離がより短い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをして、前記択一的な選択を行う
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において複数の輪郭候補線分を選択した場合に、
選択した前記複数の輪郭候補線分を結合して結合輪郭線分を算出し、
算出した結合輪郭線分に基づいて、前記爪の領域を検出する
請求項2~4のいずれか1項に記載の領域検出装置。
【請求項6】
前記検出部は、
前記結合輪郭線分に対して、前記変換の逆変換を行い、
逆変換した前記結合輪郭線分に基づいて、前記爪の領域を抽出する
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項7】
前記検出部は、
逆変換した前記結合輪郭線分に凹部が存在する場合に、当該結合輪郭線分に対して凸包処理を行って前記爪の輪郭を算出し、
算出した前記爪の輪郭に基づいて、前記爪の領域を抽出する
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項8】
さらに、前記指先画像から、前記一の点を特定する特定部を備える
請求項1~のいずれか1項に記載の領域検出装置。
【請求項9】
前記特定部は、
前記指先画像から、前記指先の輪郭を抽出し、
抽出した前記指先の輪郭に外接する長方形を算出し、
算出した前記長方形の中心を、前記一の点として特定する
請求項に記載の領域検出装置。
【請求項10】
さらに、画像を撮像する撮像部を備え、
前記取得部は、前記撮像部により撮像された画像を、前記指先画像として取得する
請求項1~のいずれか1項に記載の領域検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、領域検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出対象となる領域に予め他の領域と区別しやすい色でマーキングを行い、その色を検出することで、検出対象となる領域を検出する領域検出装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-146182号公報
【文献】国際公開第2012/124686号
【文献】特開2018-55364号公報
【文献】特開2015-13002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、爪にマーキングを行わない場合や、マーキングを兼ねるベースコートが透明な場合には、色による爪の領域の検出は難しい。
【0005】
そこで、本発明は、爪の領域を検出することができる領域検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る領域検出装置は、爪を含む指先の指先画像を取得する取得部と、前記指先画像を、前記指先画像における前記爪の内側の一の点を極とする極座標画像に変換する変換部と、前記極座標画像を用いて前記爪の領域を検出する検出部と、を備える。
【0007】
爪の輪郭は、閉構造である。このため、爪の内側の一の点を極とする極座標画像において、爪の輪郭は、角度方向に伸びる線分として現れる。このため、爪の内側の一の点を極とする極座標画像を用いることで、比較的簡易かつ比較的的確に爪の領域を検出することができる。
【0008】
このように、上記構成の領域検出装置によると、爪の領域を検出することができる。
【0009】
例えば、前記検出部は、前記極座標画像における画素のうち、前記爪の輪郭に位置する画素の候補となる複数の輪郭候補画素を抽出し、前記複数の輪郭候補画素のうち、前記極座標画像における距離方向を除く方向において列状に隣接する輪郭候補画素群からなる1以上の輪郭候補線分を抽出し、抽出した前記1以上の輪郭候補線分に基づいて、前記爪の領域を検出するとしてもよい。
【0010】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0011】
例えば、前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の抽出において複数の輪郭候補線分を抽出した場合に、抽出した前記複数の輪郭候補線分の中から、前記極座標画像における距離方向において互いに重ならない1以上の輪郭候補線分を選択し、選択した前記1以上の輪郭候補線分に基づいて、前記爪の領域を検出するとしてもよい。
【0012】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0013】
例えば、前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分が存在する場合に、前記択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分のそれぞれに対して、より長い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをして、前記択一的な選択を行うとしてもよい。
【0014】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0015】
例えば、前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分が存在する場合に、前記択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分のそれぞれに対して、前記極からの距離がより短い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをして、前記択一的な選択を行うとしてもよい。
【0016】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0017】
例えば、前記検出部は、前記1以上の輪郭候補線分の選択において複数の輪郭候補線分を選択した場合に、選択した前記複数の輪郭候補線分を結合して結合輪郭線分を算出し、算出した結合輪郭線分に基づいて、前記爪の領域を検出するとしてもよい。
【0018】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0019】
例えば、前記検出部は、前記結合輪郭線分に対して、前記変換の逆変換を行い、逆変換した前記結合輪郭線分に基づいて、前記爪の領域を抽出するとしてもよい。
【0020】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0021】
例えば、前記検出部は、逆変換した前記結合輪郭線分に凹部が存在する場合に、当該結合輪郭線分に対して凸包処理を行って前記爪の輪郭を算出し、算出した前記爪の輪郭に基づいて、前記爪の領域を抽出するとしてもよい。
【0022】
これにより、より精度よく爪の領域を検出することができる。
【0023】
例えば、さらに、前記指先画像から、前記一の点を特定する特定部を備えるとしてもよい。
【0024】
これにより、一の点を特定することができる。
【0025】
例えば、前記特定部は、前記指先画像から、前記指先の輪郭を抽出し、抽出した前記指先の輪郭に外接する長方形を算出し、算出した前記長方形の中心を、前記一の点として特定するとしてもよい。
【0026】
これにより、より精度よく一の点を特定することができる。
【0027】
例えば、さらに、画像を撮像する撮像部を備え、前記取得部は、前記撮像部により撮像された画像を、前記指先画像として取得するとしてもよい。
【0028】
これにより、指先画像を自装置で撮像することができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によると、爪の領域を検出することができる領域検出装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、実施の形態1に係る領域検出装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、実施の形態1に係る指先画像の一例である。
図3図3は、実施の形態1に係る第1輪郭強調画像の一例である。
図4図4は、実施の形態1に係るマスク画像の一例である。
図5図5は、実施の形態1に係る第2輪郭強調画像の一例である。
図6図6は、実施の形態1に係る変換部が座標変換処理を行う様子の一例を示す模式図である。
図7図7は、実施の形態1に係る極座標画像の一例である。
図8図8は、実施の形態1に係る検出部が複数の輪郭候補画素を抽出する様子の一例を示す模式図である。
図9図9は、実施の形態1に係る、抽出された1以上の輪郭候補線分の一例である。
図10図10は、実施の形態1に係る、選択された1以上の輪郭候補線分の一例である。
図11図11は、実施の形態1に係る結合輪郭線の一例である。
図12図12は、実施の形態1に係る逆変換線の一例である。
図13図13は、凹部が存在する逆変換線に取り囲まれた領域の一例を示す模式図である。
図14図14は、凸包処理後の逆変換線に取り囲まれた領域の一例を示す模式図である。
図15図15は、実施の形態1に係る爪の輪郭の一例である。
図16図16は、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理のフローチャートである。
図17図17は、実施の形態2に係る領域検出装置の構成を示すブロック図である。
図18図18は、実施の形態2に係る撮像部の斜視図である。
図19図19は、実施の形態2に係る第2爪領域検出処理のフローチャートである。
図20図20は、実施の形態3に係る領域検出装置の構成を示すブロック図である。
図21図21は、実施の形態3に係る第3爪領域検出処理のフローチャートである。
図22図22は、実施の形態4に係る領域検出装置の構成を示すブロック図である。
図23図23は、実施の形態3に係る第4爪領域検出処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0032】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1に係る領域検出装置について説明する。この領域検出装置は、爪を含む指先の指先画像から、爪の領域を検出する装置である。ここで、指先画像とは、指先を、爪のある面の正面上方から見下ろしで撮影した画像である。
【0033】
[構成]
図1は、実施の形態1に係る領域検出装置1の構成を示すブロック図である。
【0034】
図1に示されるように、領域検出装置1は、取得部10と、特定部20と、変換部30と、検出部40とを含んで構成される。
【0035】
領域検出装置1は、例えば、プロセッサとメモリとを含んで構成されるコンピュータによって実現されてもよい。この場合、領域検出装置1の各構成要素は、プロセッサがメモリに記憶されるプログラムを実行することで実現される。また、領域検出装置1は、例えば、ロジック回路によって実現されてもよいし、また、例えば、ロジック回路とコンピュータとの組み合わせによって実現されてもよい。
【0036】
取得部10は、爪を含む指先の指先画像を取得する。取得部10は、例えば、外部の撮像装置との間で有線又は無線による通信が可能となる通信インターフェースを備え、通信可能に接続される撮像装置から指先画像を取得してもよい。また、取得部10は、例えば、USB(Universal Serial Bus)ポートを備え、USBポートに装着されたUSBメモリから指先画像を取得してもよい。
【0037】
図2は、取得部10によって取得された指先画像の一例である。
【0038】
特定部20は、取得部10によって取得された指先画像から、爪の内側の一の点を特定する。一の点は、爪の内側の点であれば、必ずしもその位置は限定されないが、爪の中央付近の位置が望ましい。特定部20は、例えば、指先画像から指先の輪郭を抽出し、抽出した指先の輪郭に外接する長方形を算出し、算出した長方形の中心を、一の点として特定してもよい。
【0039】
変換部30は、取得部10によって取得された指先画像を、特定部20によって特定された一の点を極とする極座標画像に変換する。ここで、極座標画像とは、指先画像を構成する各画素の位置が、極を中心とする極座標系で定義される極からの距離(動径)と極を中心とする角度(偏角)とをそれぞれ縦軸、横軸とする平面上の位置となるように指先画像を変換(以下、この変換を行う処理のことを「座標変換処理」ともいう。)することで得られる画像のことをいう。
【0040】
以下、変換部30の行う極座標画像への変換の一具体例について、図3図7を用いて説明する。
【0041】
変換部30は、まず、指先画像に対して、輪郭を強調する輪郭強調処理を行い、指先画像を第1輪郭強調画像へと加工する。
【0042】
図3は、変換部30によって加工された第1輪郭強調画像の一例である。
【0043】
次に、変換部30は、指先画像から指先の輪郭を抽出し、抽出した指先の輪郭に基づいて、指先以外の領域をマスクするためのマスク画像を生成する。
【0044】
図4は、変換部30によって生成されたマスク画像の一例である。
【0045】
次に、変換部30は、マスク画像を用いて、指先以外の領域をマスクするマスク処理を行い、第1輪郭強調画像を、指先以外の領域がマスクされた第2輪郭強調画像へと加工する。
【0046】
図5は、変換部30によって加工された第2輪郭強調画像の一例である。
【0047】
次に、変換部30は、第2輪郭強調画像に対して座標変換処理を行い、第2輪郭強調画像を極座標画像へと変換する。
【0048】
図6は、変換部30が、第2輪郭強調画像に対して座標変換処理を行う様子の一例を示す模式図である。
【0049】
図6に示されるように、変換部30は、第2輪郭強調画像に対して、一の点80を極とし、極を中心として12時の方向を始点とする時計周りに、各画素の極からの距離(動径)と、極を中心とする角度(偏角)とを走査する。(走査する方向は、反時計回りでもよい。)そして、変換部30は、走査により得られた、各画素の極からの距離と極を中心とする角度とを用いて座標変換処理を行うことで、第2輪郭強調画像を極座標画像へと変換する。
【0050】
図7は、変換部30によって変換された極座標画像の一例である。図7に例示される極座標画像は、左側から右側へと、偏角「0°」側の画素から偏角「360°」側の画素へと画素が並び、上側から下側へと、動径「0」側の画素から動径の大きい側の画素へと画素が並ぶ画像である。
【0051】
再び図1に戻り、領域検出装置1の説明を続ける。
【0052】
検出部40は、変換部30によって変換された極座標画像を用いて爪の領域を検出する。
【0053】
以下、検出部40が行う爪の領域の検出の一具体例について、図8図15を用いて説明する。
【0054】
検出部40は、まず、極座標画像における画素のうち、爪の輪郭に位置する画素の候補となる複数の輪郭候補画素を抽出する。
【0055】
図8は、検出部40が、複数の輪郭候補画素を抽出する様子の一例を示す模式図である。図8中の黒い点のそれぞれが、複数の輪郭候補画素のそれぞれを示す。
【0056】
図8に示されるように、検出部40は、一例として、極座標画像の画素のうち、輪郭強調処理において強調された輪郭の部分に位置する画素のそれぞれを、輪郭候補画素のそれぞれとして抽出する。
【0057】
次に、検出部40は、抽出した複数の輪郭候補画素のうち、極座標画像における距離方向(図8に例示される輪郭候補画像においては、上下方向)を除く方向において列状に隣接する輪郭候補画素群からなる1以上の輪郭候補線分を抽出する。ここで、輪郭候補線分の抽出対象から、極座標画像における距離方向において列状に隣接する輪郭候補画素群を除外する理由は、極が爪の輪郭の内側に位置するために、極座標画像では、爪の輪郭が距離方向において列状となる線分として現れることがないからである。
【0058】
図9は、検出部40によって抽出された1以上の輪郭候補線分の一例である。
【0059】
検出部40は、1以上の輪郭候補線分の抽出において複数の輪郭候補線分を抽出した場合に、極座標画像における距離方向に重ならない1以上の輪郭候補線分を選択する。
【0060】
図10は、検出部40によって選択された1以上の輪郭候補線分の一例である。図10において、強調された線分のそれぞれが、選択された1以上の輪郭候補線分のそれぞれを示す。
【0061】
検出部40は、1以上の輪郭候補線分の選択において、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分が存在する場合に、択一的な選択の対象となる複数の輪郭候補線分のそれぞれに対して重み付けをして、上記択一的な選択を行う。この重み付けは、爪の輪郭に対応する線分として、よりもっともらしいと推定される輪郭候補線分により重みが重くなるように重み付けすることが望ましい。
【0062】
検出部40は、例えば、より長い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをしてもよい。また、検出部40は、例えば、より極からの距離が短い輪郭候補線分の方が、より重みが重くなるように重み付けをしてもよい。
【0063】
検出部40は、1以上の輪郭候補線分の選択において複数の輪郭候補線分を選択した場合に、選択した複数の輪郭候補線分を結合して結合輪郭線を算出する。ここで、検出部40は、第1の輪郭候補線分と第2の輪郭候補線分とを結合する際には、第1の輪郭候補線分の2つの線分端のうちの、第2の輪郭候補線分に近い側の線分端と、第2の輪郭候補線分の2つの線分端のうちの、第1の輪郭候補線分に近い側の線分端との間を、直線で補間することで、第1の輪郭候補線分と第2の輪郭候補線分とを結合する。
【0064】
図11は、検出部40によって結合された結合輪郭線の一例である。図11において、図中の左側面から右側面へと続く1本の強調された線が、結合輪郭線を示す。
【0065】
検出部40は、1以上の輪郭候補線分の選択において1の輪郭候補線分を選択した場合に、選択した1の輪郭候補線分を結合輪郭線と算出する。
【0066】
次に、検出部40は、算出した結合輪郭線に対して、座標変換処理における変換の逆変換を行い、逆変換線を算出する。
【0067】
図12は、検出部40によって算出された逆変換線の一例である。図12において、逆変換線は、座標変換処理が実行される前の第2輪郭強調画像(図5参照)に重ね合わせられた状態で図示されている。図12において、点の集合からなる閉曲線が、逆変換線を示す。
【0068】
検出部40は、逆変換線に対して凸包処理を行って、爪の輪郭を算出する。逆変換線に対して凸包処理を行う理由は、一般に、爪は凹状にえぐれておらず凸形状であるため、逆変換線の凹部は、爪の輪郭ではなく、例えば、爪に当たった光が反射してできた爪のテカリ等に起因するものであると推定されるためである。
【0069】
図13は、凹部が存在する逆変換線に取り囲まれた領域の一例を示す模式図である。
【0070】
図14は、凸包処理後の逆変換線に取り囲まれた領域の一例を示す模式図である。
【0071】
図15は、検出部40によって算出された爪の輪郭の一例である。図15において、爪の輪郭は、取得部10によって取得された指先画像(図2参照)に重ね合わせられた状態で図示されている。
【0072】
検出部40は、爪の輪郭を算出すると、爪の輪郭で取り囲まれた領域を、爪の領域と検出する。そして、検出部40は、検出した爪の領域を特定する信号を出力する。
【0073】
[動作]
以下、上記構成の領域検出装置1の行う動作について、図面を用いて説明する。
【0074】
領域検出装置1は、爪を含む指先の指先画像を取得し、取得した指先画像から爪の領域を検出する第1爪領域検出処理を行う。
【0075】
図16は、第1爪領域検出処理のフローチャートである。
【0076】
第1爪領域検出処理は、例えば、領域検出装置1に対して、第1爪領域検出処理を開始する旨の操作がなされることで開始される。
【0077】
第1爪領域検出処理が開始されると、取得部10は、爪を含む指先の指先画像を取得する(ステップS10)。
【0078】
指先画像が取得されると、特定部20は、爪の内側の一の点を特定する(ステップS15)。この際、特定部20は、指先画像から指先の輪郭を抽出し、抽出した指先の輪郭に外接する長方形を算出し、算出した長方形の中心を、一の点として特定する。一方、変換部30は、指先画像に対して、輪郭強調処理とマスク処理とを行い、指先画像を、第2輪郭強調画像へと加工する(ステップS20)。
【0079】
次に、変換部30は、第2輪郭強調画像に対して、特定された一の点を極とする座標変換処理を行い、第2輪郭強調画像を極座標画像へと変換する(ステップS25)。
【0080】
極座標画像へと変換されると、検出部40は、極座標画像から、複数の輪郭候補画素を抽出する(ステップS30)。そして、検出部40は、抽出した複数の輪郭候補画素のうち、極座標画像における距離方向を除く方向において列状に隣接する輪郭候補画素群からなる1以上の輪郭候補線分を抽出する(ステップS35)。
【0081】
一以上の輪郭候補線分が抽出されると、検出部40は、各輪郭候補線分に重み付けをして(ステップS40)、極座標画像における距離方向に重ならない1以上の輪郭候補線分を選択し(ステップS45)、選択した各輪郭候補線分を結合して結合輪郭線を算出する(ステップS50)。
【0082】
結合輪郭線が算出されると、検出部40は、算出した結合輪郭線に対して、座標変換処理における変換の逆変換を行い、逆変換線を算出する(ステップS55)。
【0083】
逆変換線が算出されると、検出部40は、逆変換線に対して凸包処理を行って(ステップS65)、爪の輪郭を算出する(ステップS70)。
【0084】
爪の輪郭が算出されると、検出部40は、爪の輪郭で取り囲まれた領域を、爪の領域と検出する(ステップS75)。
【0085】
ステップS75の処理が終了すると、領域検出装置1は、その第1爪領域検出処理を終了する。
【0086】
[考察]
以上説明した通り、上記構成の領域検出装置1は、上記第1爪領域検出処理を行うことで、指先画像を、爪の内側の一の点を極とする極座標画像に変換し、変換した極座標画像を用いて爪の領域を検出する。一般に、爪の輪郭は、閉構造であるため、爪の内側の一の点を極とする極座標画像において、爪の輪郭は、角度方向に伸びる線分として現れる。このため、領域検出装置1は、比較的簡易かつ比較的的確に爪の領域を検出することができる。
【0087】
(実施の形態2)
以下、実施の形態1に係る領域検出装置1から、その構成の一部が変更された実施の形態2に係る領域検出装置について説明する。
【0088】
[構成]
図17は、実施の形態2に係る領域検出装置1Aの構成を示すブロック図である。以下では、領域検出装置1Aについて、領域検出装置1と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、領域検出装置1との相違点を中心に説明する。
【0089】
図17に示されるように、領域検出装置1Aは、実施の形態1に係る領域検出装置1に対して、取得部10が取得部10Aに変更され、特定部20が特定部20Aに変更され、撮像部50が追加されている点で異なる。
【0090】
撮像部50は、画像を撮像する。より具体的には、爪を含む指先の画像を撮像する。
【0091】
図18は、撮像部50の斜視図である。
【0092】
図18に示されるように、撮像部50は、撮像装置51と指先載置台52とを含んで構成される。
【0093】
指先載置台52は、撮像対象となる指先を載置する台であって、指先を載置する状態において、その指先が、撮像装置51の画角内の所定の位置に収まるように指先を保持する。指先載置台52は、撮像対象となる指先が撮像装置51の画角内の所定の位置に収まるように指先を保持することができれば、例えば、図18に示されるように、載置される指先を、その先端及び左右から包む側壁を有する構造であってもよいし、他の構造であってもよい。
【0094】
撮像装置51は、イメージセンサ、光学系等を含み、指先載置台52に載置された指先の画像を撮像する。撮像装置51は、指先載置台52に載置された指先が、画角内の所定の位置に収まるように、指先載置台52に固定されている。より具体的には、撮像装置51は、撮像する画像の中心点が、撮像対象となる指先の爪の内側に位置するように、指先載置台52に固定されている。これにより、撮像装置51によって撮像された指先画像は、その中心点が撮像対象となる指先の爪の内側に位置する画像となる。
【0095】
取得部10Aは、撮像部50により撮像された画像を、爪を含む指先の指先画像として取得する。
【0096】
特定部20Aは、取得部10Aによって取得された指先画像から、爪の内側の一の点を特定する。より具体的には、特定部20Aは、その指先画像の中心点を、一の点として特定する。
【0097】
[動作]
以下、上記構成の領域検出装置1Aの行う動作について、図面を用いて説明する。
【0098】
領域検出装置1Aは、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理から、その処理の一部が変更された第2爪領域検出処理を行う。
【0099】
図19は、第2爪領域検出処理のフローチャートである。
【0100】
第2爪領域検出処理において、ステップS120の処理~ステップS175の処理は、それぞれ、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理における、ステップS20の処理~ステップS75の処理と同様の処理である。このため、以下では、ステップS120の処理~ステップS175の処理は、既に説明済みであるとしてそれらの詳細な説明を省略し、ステップS105の処理~ステップS115の処理を中心に説明する。
【0101】
第2爪領域検出処理は、例えば、指先載置台52に指先が載置された状態において、領域検出装置1Aに対して、第2爪領域検出処理を開始する旨の操作がなされることで開始される。
【0102】
第2爪領域検出処理が開始されると、撮像部50は、指先載置台52に載置された指先を撮像対象として、爪を含む指先の画像を撮像する(ステップS105)。
【0103】
爪を含む指先の画像が撮像されると、取得部10Aは、撮像部50から、その画像を指先画像として取得する(ステップS110)。
【0104】
指先画像が取得されると、特定部20Aは、爪の内側の一の点を特定する(ステップS115)。この際、特定部20Aは、指先画像の中心点を、一の点として特定する。
【0105】
ステップS115の処理が終了すると、領域検出装置1Aは、ステップS120の処理に進む。そして、ステップS175の処理が終了すると、領域検出装置1Aは、その第2爪領域検出処理を終了する。
【0106】
[考察]
以上説明した通り、上記構成の領域検出装置1Aは、実施の形態1に係る領域検出装置1と同様に、比較的簡易かつ比較的的確に爪の領域を検出することができる。
【0107】
(実施の形態3)
以下、実施の形態1に係る領域検出装置1から、その構成の一部が変更された実施の形態3に係る領域検出装置について説明する。
【0108】
[構成]
図20は、実施の形態3に係る領域検出装置1Bの構成を示すブロック図である。以下では、領域検出装置1Bについて、領域検出装置1と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、領域検出装置1との相違点を中心に説明する。
【0109】
図20に示されるように、領域検出装置1Bは、実施の形態1に係る領域検出装置1に対して、検出部40が検出部40Bに変更されている点で異なる。
【0110】
検出部40Bは、実施の形態1に係る検出部40から、輪郭候補線分の択一的な選択方法を行う際の選択方法が変更されて構成される。検出部40Bは、指先画像における爪の輪郭が、一般に爪の縦方向の中心線を対象軸として略線対称であることを利用して、輪郭候補線分の択一的な選択を行う。より具体的には、検出部40Bは、輪郭候補線分の択一的な選択において、選択対象とする複数の輪郭候補線分のうち、指先画像において爪の縦方向の中心線を対象軸とする線対称の場所に位置する輪郭候補線分に最も類似している輪郭候補線分を選択する。
【0111】
[動作]
以下、上記構成の領域検出装置1Bの行う動作について、図面を用いて説明する。
【0112】
領域検出装置1Bは、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理から、その処理の一部が変更された第3爪領域検出処理を行う。
【0113】
図21は、第3爪領域検出処理のフローチャートである。
【0114】
第3爪領域検出処理において、ステップS210の処理~ステップS235の処理、及び、ステップS245の処理~ステップS275の処理は、それぞれ、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理における、ステップS10の処理~ステップS35の処理、及び、ステップS45の処理~ステップS75の処理と同様の処理である。このため、以下では、ステップS210の処理~ステップS235の処理、及び、ステップS245の処理~ステップS275の処理は、既に説明済みであるとしてそれらの詳細な説明を省略し、ステップS245の処理を中心に説明する。
【0115】
ステップS235の処理において、1以上の輪郭候補線分が抽出されると、検出部40は、選択対象とする輪郭候補線分のうち、指先画像において爪の縦方向の中心線を対象軸とする線対称の場所に位置する輪郭候補線分に最も類似している輪郭候補線分を選択するように、極座標画像における距離方向に重ならない1以上の輪郭候補線分を選択する(ステップS245)。
【0116】
ステップS245の処理が終了すると、領域検出装置1Bは、ステップS250の処理に進む。そして、ステップS275の処理が終了すると、領域検出装置1Bは、その第3爪領域検出処理を終了する。
【0117】
[考察]
以上説明した通り、上記構成の領域検出装置1Bは、実施の形態1に係る領域検出装置1と同様に、比較的簡易かつ比較的的確に爪の領域を検出することができる。
【0118】
(実施の形態4)
以下、実施の形態1に係る領域検出装置1から、その構成の一部が変更された実施の形態4に係る領域検出装置について説明する。
【0119】
[構成]
図22は、実施の形態4に係る領域検出装置1Cの構成を示すブロック図である。以下では、領域検出装置1Cについて、領域検出装置1と同様の構成要素については、既に説明済みであるとして同じ符号を振ってその詳細な説明を省略し、領域検出装置1との相違点を中心に説明する。
【0120】
図22に示されるように、領域検出装置1Cは、実施の形態1に係る領域検出装置1に対して、変換部30が変換部30Cに変更されている点で異なる。
【0121】
変換部30Cは、実施の形態1に係る変換部30から、極座標画像を算出する算出工程が変更されて構成される。より具体的には、変換部30Cは、指先画像に対して、先に座標変換処理を行って極座変換された指先画像を算出し、算出した極座標変換された指先画像に対して輪郭強調処理を行って、極座標画像に加工する。
【0122】
変換部30Cは、上記構成により、輪郭強調処理における輪郭の強調を、極座標変換された指先画像における角度方向に限定することができるようになる。
【0123】
[動作]
以下、上記構成の領域検出装置1Cの行う動作について、図面を用いて説明する。
【0124】
領域検出装置1Cは、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理から、その処理の一部が変更された第4爪領域検出処理を行う。
【0125】
図23は、第4爪領域検出処理のフローチャートである。
【0126】
第4爪領域検出処理において、ステップS310の処理~ステップS315の処理、及び、ステップS330の処理~ステップS375の処理は、それぞれ、実施の形態1に係る第1爪領域検出処理における、ステップS10の処理~ステップS15の処理、及び、ステップS30の処理~ステップS75の処理と同様の処理である。このため、ステップS310の処理~ステップS315の処理、及び、ステップS330の処理~ステップS375の処理は、既に説明済みであるとしてそれらの詳細な説明を省略し、ステップS320の処理~ステップS325の処理を中心に説明する。
【0127】
ステップS315の処理において、爪の内側の一の点が特定されると、変換部30Cは、指先画像に対して、特定された一の点を極とする極座標変換処理を行い、極座標変換された指先画像を算出する(ステップS320)。
【0128】
極座標変換された指先画像が算出されると、変換部30Cは、極座標変換された指先画像に対して輪郭強調処理を行って、極座標画像に加工する(ステップS330)。
【0129】
ステップS325の処理が終了すると、領域検出装置1Cは、ステップS330の処理に進む。そして、ステップS375の処理が終了すると、領域検出装置1Cは、その第4爪領域検出処理を終了する。
【0130】
[考察]
以上説明した通り、上記構成の領域検出装置1Cは、実施の形態1に係る領域検出装置1と同様に、比較的簡易かつ比較的的確に爪の領域を検出することができる。
【0131】
(補足)
以上、本発明に係る入力装置について、実施の形態1~実施の形態4に基づいて説明したが、本発明は、これら実施の形態及び変形例に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形をこれら実施の形態に施したものや、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構成される形態も、本発明の態様の範囲内に含まれてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明は、領域を検出する装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0133】
1、1A、1B、1C 領域検出装置
10、10A 取得部
20、20A 特定部
30、30C 変換部
40、40B 検出部
50 撮像部
51 撮像装置
52 指先載置台
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
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図16
図17
図18
図19
図20
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図22
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