(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両制御装置及び車両制御用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
B60W 40/08 20120101AFI20230912BHJP
B60Q 1/44 20060101ALI20230912BHJP
B60Q 1/46 20060101ALI20230912BHJP
B60T 7/12 20060101ALI20230912BHJP
B60T 7/14 20060101ALI20230912BHJP
B60W 30/09 20120101ALI20230912BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B60W40/08
B60Q1/44 Z
B60Q1/46
B60T7/12 D
B60T7/14
B60T7/12 F
B60W30/09
G08G1/16 F
(21)【出願番号】P 2021008735
(22)【出願日】2021-01-22
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100135976
【氏名又は名称】宮本 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】桐木 純平
(72)【発明者】
【氏名】上島 太陽
【審査官】鶴江 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-020692(JP,A)
【文献】特開2019-123327(JP,A)
【文献】特開2008-037218(JP,A)
【文献】特開2000-289523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00ー60/00
G08G 1/00ー 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバの運転に対する関与レベルを判定するドライバ判定部と、
車両の速度と所定の基準速度との関係を判定する速度判定部と、
前記ドライバの運転に対する前記関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、前記車両の速度が前記基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯を点灯させずに前記車両を減速させる第1の運転計画を生成し、ドライバの運転に対する関与レベルが前記所定の基準よりも低く、且つ、前記車両の速度が前記基準速度以下であると判定された場合、前記第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて
制動灯を点灯させながら前記車両を減速させる第2の運転計画を生成する、運転計画部と、
を有する車両制御装置。
【請求項2】
前記第1の運転計画に基づいて前記車両の動作を制御する車両制御部を更に有し、
前記車両制御部は、前記第1の運転計画に基づいて制御されている前記車両の減速度が前記第1減速度よりも大きい場合、前記車両を加速して前記車両の減速度が前記第1減速度になるように前記車両を制御する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記運転計画部は、前記車両を、前記車両が走行している走行車線に隣接する路肩へ移動させて停車させるように前記第2の運転計画を生成する請求項1又は2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記運転計画部は、前記ドライバの運転に対する前記関与レベルが、前記所定の基準よりも低い第2の所定の基準よりも低く、且つ、前記車両の速度が前記基準速度以下であると判定された場合、非常点滅表示灯を点滅
するか、又は、前記ドライバの運転に対する前記関与レベルが前記第2の所定の基準よりも低いと判定され、且つ、制動装置が用いられる場合、制動灯を点灯し且つ前記非常点滅表示灯を消灯するように、前記第2の運転計画を生成する請求項1~3の何れか一項に記載の車両制御装置。
【請求項5】
ドライバの運転に対する関与レベルを判定し、
車両の速度と所定の基準速度との関係を判定し、
前記ドライバの運転に対する前記関与レベルが所定の基
準よりも低く、且つ、前記車両の速度が前記基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯を点灯させずに前記車両を減速させる第1の運転計画を生成し、前記ドライバの運転に対する前記関与レベルが前記所定の基準よりも低く、且つ、前記車両の速度が前記基準速度以下であると判定された場合、前記第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて
制動灯を点灯させながら前記車両を減速させる第2の運転計画を生成する、
ことをプロセッサに実行させる車両制御用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置及び車両制御用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載される自動制御装置は、車両の現在位置と、車両の目的位置と、地図情報とに基づいて、車両のナビルートを生成し、車両をこのナビルートに沿って走行するように制御する。
【0003】
自動制御装置は、車両と他の車両との間に安全な距離が維持されるように、車両の動作を制御する。そして、自動制御装置は、自動制御で車両と他の車両との間に安全な距離が維持できなくなると判定した場合、車両の制御をドライバに移管して、車両の運転を自動制御から手動制御へ変更する。
【0004】
また、自動制御装置は、ドライバに異常が生じた場合、車両が走行している走行車線上で停車するように車両を制御する。これは、自動制御装置が安全な走行が行えないと判定した時に、車両の制御をドライバに移管できないためである。
【0005】
例えば、特許文献1には、ドライバの覚醒度が制動開始覚醒度以下となった場合、直ぐに自動ブレーキ予告時間の間ブレーキランプの点滅を行った後、ブレーキ操作を開始して制動力を発生する車両用自動ブレーキ装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の車両用自動ブレーキ装置では、車両が比較的速い速度で走行している時でも、ドライバの運転の覚醒度が制動開始覚醒度以下となった場合、直ぐに制動灯を点灯させた後ブレーキが操作されるので、後続車両のドライバを驚かせて走行の妨げとなる可能性があった。
【0008】
そこで、本発明は、ドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定された場合、車両が比較的高速で走行している時には、直ぐに制動灯を点灯することなく後続車両の走行を妨げないように車両の速度を制御可能な車両制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一の実施形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、ドライバの運転に対する関与レベルを判定するドライバ判定部と、車両の速度と所定の基準速度との関係を判定する速度判定部と、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯を点灯させずに車両を減速させる第1の運転計画を生成し、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度以下であると判定された場合、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両を減速させる第2の運転計画を生成する、運転計画部と、を有することを特徴とする。
【0010】
この車両制御装置において、第1の運転計画に基づいて車両の動作を制御する車両制御部を更に有し、車両制御部は、第1の運転計画に基づいて制御されている車両の減速度が第1減速度よりも大きい場合、車両を加速して車両の減速度が第1減速度になるように車両を制御することが好ましい。
【0011】
また、この車両制御装置において、運転計画部は、車両を、車両が走行している走行車線に隣接する路肩へ移動させて停車させるように第2の運転計画を生成することが好ましい。
【0012】
更に、この車両制御装置において、運転計画部は、ドライバの運転に対する関与レベルが、所定の基準よりも低い第2の所定の基準よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度以下であると判定された場合、非常点滅表示灯を点滅し、ドライバの運転に対する関与レベルが第2の所定の基準よりも低いと判定され、且つ、制動装置が用いられる場合、制動灯を点灯し且つ非常点滅表示灯を消灯するように、第2の運転計画を生成することが好ましい。
【0013】
他の実施形態によれば、車両制御用コンピュータプログラムが提供される。この車両制御用コンピュータプログラムは、ドライバの運転に対する関与レベルを判定し、車両の速度と所定の基準速度との関係を判定し、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯を点灯させずに車両を減速させる第1の運転計画を生成し、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度以下であると判定された場合、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両を減速させる第2の運転計画を生成する、ことをプロセッサに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両制御装置は、ドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定された場合、車両が比較的高速で走行している時には、車両の速度が所定の基準速度以下になるまで制動灯を点灯させないで車両を減速させることにより、後続車両の走行を妨げないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両制御装置の一例である車両制御システムの動作の概要を説明する図である。
【
図2】本実施形態の車両制御システムが実装される車両の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の車両制御システムの減速計画処理に関する動作フローチャートである。
【
図4】車両制御システムの動作を説明する図である(その1)。
【
図5】車両制御システムの動作を説明する図である(その2)。
【
図6】車両制御システムの動作を説明する図である(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本実施形態の車両制御装置の一例である車両制御システム1の動作の概要を説明する図である。以下、
図1を参照しながら、本明細書に開示する車両制御システム1の減速計画処理に関する動作の概要を説明する。
【0017】
図1に示す例において、車両10は、2つの車線51、52及び路肩53を有する道路50の車線51上を走行している。車線51及び車線52は、車線区画線54により区画されており、車線51及び路肩53は、車線区画線55により区画されている。
【0018】
車両10に搭載される車両制御システム1は、車両10の運転を自動制御している。車両制御システム1は、車両10の運転を自動制御できなくなった時に車両の制御をドライバに移管可能か否かを判定するため、ドライバの運転に対する関与レベルを監視している。
【0019】
時刻T101で、車両10は車線51上を走行しており、車両制御システム1は、ドライバの運転に対する関与レベルは所定の基準以上である判定している。
【0020】
時刻T102で、車両制御システム1は、ドライバの運転に対する関与レベルは所定の基準よりも低いと判定し、ドライバに対して運転に関与することを求める警告を与える。そして、車両制御システム1は、車両10の速度は基準速度よりも速いので、後続車両の走行を妨げない程度に車両10を減速させる第1減速度を用いて、制動灯を点灯させず車両10を減速させるように、車両10の動作を制御する。
【0021】
時刻T103で、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低い状態が続いており、車両10の速度が基準速度以下となったので、車両制御システム1は、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両10を減速させるように、車両10の動作を制御する。その結果、車両10は制動装置を用いて制動灯を点灯させながら更に減速する。
【0022】
時刻T104で、ドライバに対して警告が与えられた後所定の時間が経過しても、ドライバの運転に対する関与レベルが低い状態が続いている。車両制御システム1は、ドライバに異常があると判定し、車両10を路肩53へ移動させて停車させる運転計画を生成する。その結果、車両10は車線51から路肩53へ移動し、時刻T108で路肩に停車する。
【0023】
上述したように、車両制御システム1は、ドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定された場合、車両10が比較的高速で走行している時には、車両10の速度が所定の基準速度以下になるまで制動灯を点灯させないで車両10を減速させることにより、後続車両の走行を妨げないようにできる。
【0024】
図2は、車両制御システム1が実装される車両10の概略構成図である。車両10は、カメラ2と、レーダセンサ3a~3fと、非常時点滅灯(方向指示灯)4a~4fと、制動灯5a、5bと、測位情報受信機6と、ナビゲーション装置7と、ユーザインターフェース(UI)8と、速度センサ9と、地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19等を有する。このうち、地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19は、車両制御システム1を構成する。なお、車両10は、道路特徴物又は他の物体を検出するためにLiDARセンサを有していてもよい。
【0025】
運転計画装置16と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19とは、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低いと判定された場合、車両10が比較的高速で走行している時には、後続車両の走行を妨げないように車両10の速度を減速させる運転計画を協働して生成する。
【0026】
カメラ2と、レーダセンサ3a~3fと、非常時点滅灯(方向指示灯)4a~4fと、制動灯5a、5bと、測位情報受信機6と、ナビゲーション装置7と、ユーザインターフェース(UI)8と、速度センサ9と、地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワーク22を介して通信可能に接続される。
【0027】
カメラ2は、車両10に設けられる撮像部の一例である。カメラ2は、車両10の前方を向くように、車両10に取り付けられる。カメラ2は、例えば所定の周期で、車両10の前方の所定の領域の環境が表されたカメラ画像を撮影する。カメラ画像には、車両10の前方の所定の領域内に含まれる道路と、その路面上の車線区画線等の道路特徴物が表わされ得る。カメラ2は、CCDあるいはC-MOS等、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する撮像光学系を有する。
【0028】
カメラ2は、カメラ画像を撮影する度に、カメラ画像及びカメラ画像が撮影されたカメラ画像撮影時刻を、車内ネットワーク22を介して、位置推定装置13及び物体検出装置14へ出力する。カメラ画像は、位置推定装置13において、車両10の位置を推定する処理に使用される。また、カメラ画像は、物体検出装置14において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0029】
レーダセンサ3a~3fは、車両10の前方、左側前方、右側前方、後方、左側後方、右側後方を向くように、例えば、車両10の外面に取り付けられる。レーダセンサ3a~3fのそれぞれは、所定の周期で設定される反射波情報取得時刻において、車両10の前方、左側前方、右側前方、後方、左側後方、右側後方に向けてミリ波を同期して発射し、反射物により反射された反射波を受信する。反射波が戻ってくるのに要する時間は、ミリ波が照射された方向に位置する他の物体と車両10との間の距離情報を有する。レーダセンサ3a~3fのそれぞれは、ミリ波の出射方向及び反射波が戻ってくるのに要する時間を含む反射波情報を、ミリ波を出射した反射波情報取得時刻と共に、車内ネットワーク22を介して物体検出装置14へ出力する。反射波情報は、物体検出装置14において、車両10の周囲の他の物体を検出する処理に使用される。
【0030】
非常時点滅灯(方向指示灯)4a~4fは、車両10の左側前方、左側、左側後方、右側前方、右側、右側後方を向くように、例えば、車両10の外面に取り付けられる。非常時点滅灯(方向指示灯)4a~4fは、車両制御システム1によって制御される。車両10の非常時には、全ての非常時点滅灯4a~4fが点灯する。また、車両10が左側へ方向を変える時には、方向指示灯4a~4cが点灯し、車両10が右側へ方向を変える時には、方向指示灯4d~4fが点灯する。
【0031】
制動灯5a、5bは、車両10の左側後方、右側後方を向くように、例えば、車両10の外面に取り付けられる。制動灯5a、5bは、車両制御システム1によって制御される。制動灯5a、5bは、車両10の制動装置(図示せず)が動作している時に点灯して、後続車両に対して制動装置が作動して減速していることを通知する。
【0032】
測位情報受信機6は、車両10の現在位置を表す測位情報を出力する。例えば、測位情報受信機6は、GNSS受信機とすることができる。測位情報受信機6は、所定の受信周期で測位情報を取得する度に、測位情報及び測位情報を取得した測位情報取得時刻を、ナビゲーション装置7及び地図情報記憶装置11等へ出力する。
【0033】
ナビゲーション装置7は、ナビゲーション用地図情報と、UI8から入力された車両10の目的位置と、測位情報受信機6から入力された車両10の現在位置を表す測位情報とに基づいて、車両10の現在位置から目的位置までのナビルートを生成する。ナビルートは、右折、左折、合流、分岐等の位置に関する情報を含む。ナビゲーション装置7は、目的位置が新しく設定された場合、又は、車両10の現在位置がナビルートから外れた場合などに、車両10のナビルートを新たに生成する。ナビゲーション装置7は、ナビルートを生成する度に、そのナビルートを、車内ネットワーク22を介して、位置推定装置13、走行車線計画装置15及び運転計画装置16等へ出力する。
【0034】
UI8は、通知部の一例である。UI8は、ナビゲーション装置7、監視装置12及び運転計画装置16等に制御されて、車両10の走行情報、運転に関与することを求める警告等をドライバへ通知する。また、UI8は、ドライバから車両10に対する操作に応じた操作信号を生成する。車両10の走行情報は、車両の現在位置、ナビルート等の車両の現在及び将来の経路に関する情報等を含む。UI8は、走行情報及び警告等を表示するために、液晶ディスプレイ又はタッチパネル等の表示装置81を有する。また、UI8は、走行情報及び警告等をドライバへ通知するための音響出力装置(図示せず)を有していてもよい。また、UI8は、ドライバから車両10への操作情報を入力する入力装置として、例えば、タッチパネル又は操作ボタンを有する。操作情報として、例えば、目的位置、経由地、車両速度及びその他の車両の制御情報等が挙げられる。UI8は、入力された操作情報を、車内ネットワーク22を介してナビゲーション装置7及び運転計画装置16等へ出力する。
【0035】
速度センサ9は、車両10の速度を表す速度情報を検知して、車内ネットワーク22を介して速度判定装置19等へ出力する。速度センサ9は、例えば、車両10のタイヤの回転数を検知し、回転数を表す速度情報を、速度判定装置19等へ出力する。
【0036】
地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置を含む相対的に広い範囲(例えば10~30km四方の範囲)の広域地図情報を記憶する。この広域地図情報は、路面の3次元情報と、道路上の車線区画線等の道路特徴物、構造物の種類及び位置を表す情報と、道路の法定速度等を含む高精度地図情報を有する。地図情報記憶装置11は、車両10の現在位置に応じて、車両10に搭載される無線通信装置(図示せず)を介した無線通信により、基地局を介して外部のサーバから広域地図情報を受信して記憶装置に記憶する。地図情報記憶装置11は、測位情報受信機6から測位情報を入力する度に、記憶している広域地図情報を参照して、測位情報により表される現在位置を含む相対的に狭い領域(例えば、100m~10km四方の範囲)の地図情報を、車内ネットワーク22を介して位置推定装置13、走行車線計画装置15及び運転計画装置16等へ出力する。
【0037】
監視装置12は、ドライバの状態を監視して、ドライバの運転に関与する動作が検知されなかった場合に、ドライバの運転に関与する動作が検知されなかったことを表す運転不関与信号を生成する。監視装置12は、運転不関与信号を、車内ネットワーク31を介して運転計画装置16へ出力する。監視装置12は、ドライバの頭部を含む頭部画像を撮影する監視カメラ121と、ドライバがステアリングを保持していることを検知するタッチセンサ122と、ステアリングのトルクを検知するトルクセンサ123とを有する。監視装置12は、所定の周期を有する監視時刻において撮影された頭部画像に基づいて、ドライバの視線方向、眼の開き度合い(以下、開眼度ともいう)及び口の開き度合い(以下、開口度ともいう)を検出し、検出された視線方向、開眼度及び開口度に基づいて、ドライバの運転に対する関与レベルを判定する。監視装置12は、視線方向が、車両10の前方を含む所定の範囲から外れている場合、ドライバの運転に対する関与レベルは低いと判定する。また、監視装置12は、開眼度が所定の開眼度基準値未満であるか、又は、開口度が所定の開口度基準値以上である場合、ドライバの運転に対する関与レベルは低いと判定する。一方、監視装置12は、視線方向が、車両10の前方を含む所定の基準範囲内にあるか、開眼度が所定の開眼度基準値以上であるか、又は、開口度が所定の開口度基準値未満である場合、ドライバの運転に対する関与レベルは高いと判定する。
【0038】
監視装置12は、ドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定した場合、UI8を介して、ドライバに対して運転に関与することを求める警告を与える。監視装置12は、ドライバに対して警告を与えたことを示す警告信号を、車内ネットワーク22を介してドライバ判定装置18にも出力する。監視装置12がドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定ことは、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いと判定することの一例である。監視装置12は、ドライバに対して警告を与えた後の所定の時間内に、検出された視線方向、開眼度及び開口度に基づいて、ドライバの運転に対する関与レベルが高いと判定された場合、ドライバは運転に関与していると判定する。また、監視装置12は、ドライバに対して警告を与えた後の所定の時間内に、タッチセンサ122によってドライバがステアリングを保持していることが検知された場合、又は、トルクセンサ123によってドライバによるステアリングの操作が検知された場合、ドライバは運転に関与していると判定する。また、監視装置12は、ドライバに対して警告を与えた後の所定の時間内に、ドライバによるアクセルペダル又はブレーキペダルの操作が検知された場合、ドライバは運転に関与していると判定する。一方、ドライバに対して警告を与えた後の所定の時間内に、ドライバの運転に対する関与レベルが高いと判定されず、且つ、タッチセンサ122によってドライバがステアリングを保持していることが検知されず、且つ、トルクセンサ123によってドライバによるステアリングの操作が検知されず、且つドライバによるアクセルペダル及びブレーキペダルの操作が検知されない場合、ドライバは運転に関与していないと判定する。そして、監視装置12は、ドライバの運転に関与する動作が検知されなかったことを表す運転不関与信号を生成する。監視装置12がドライバは運転に関与していないと判定することは、ドライバの運転に対する関与レベルが、所定の基準よりも低い第2の所定の基準よりも低いと判定することの一例である。監視装置12は、運転不関与信号をドライバ判定装置18及び運転計画装置16へ出力する。なお、上述したのは運転不関与信号を生成する一例であって、監視装置12は、他の方法を用いて運転不関与信号を生成するか否かを判定しても良い。
【0039】
位置推定装置13は、カメラ画像内に表された車両10の周囲の道路特徴物に基づいて、カメラ画像撮影時刻における車両10の位置を推定する。例えば、位置推定装置13は、カメラ画像内に識別した車線区画線と、地図情報記憶装置11から入力された地図情報に表された車線区画線とを対比して、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置及び推定方位角を求める。また、位置推定装置13は、地図情報に表された車線区画線と、車両10の推定位置及び推定方位角とに基づいて、車両10が位置する道路上の走行車線を推定する。位置推定装置13は、カメラ画像撮影時刻における車両10の推定位置、推定方位角及び走行車線を求める度に、これらの情報を、物体検出装置14、走行車線計画装置15、運転計画装置16及び車両制御装置17へ出力する。
【0040】
物体検出装置14は、カメラ画像及び反射波情報に基づいて、車両10の周囲の他の物体及びその種類(例えば、車両)を検出する。他の物体には、車両10の周囲を走行する他の車両が含まれる。物体検出装置14は、検出された他の物体を追跡して、他の物体の軌跡を求める。物体検出装置14は、地図情報に表された車線区画線と、他の物体位置とに基づいて、他の物体が走行している走行車線を特定する。物体検出装置14は、検出された他の物体の種類を示す情報と、その位置を示す情報及び走行車線を示す情報を含む物体検出情報を、走行車線計画装置15及び運転計画装置16等へ出力する。
【0041】
走行車線計画装置15は、所定の周期で設定される走行車線計画生成時刻において、ナビルートから選択された直近の運転区間(例えば、10km)において、地図情報と、ナビルート及び周辺環境情報と、車両10の現在位置とに基づいて、車両10が走行する道路内の車線を選択して、車両10が走行する予定走行車線を表す走行車線計画を生成する。走行車線計画装置15は、例えば、車両10が追い越し車線以外の車線を走行するように、走行車線計画を生成する。走行車線計画装置15は、走行車線計画を生成する度に、この走行車線計画を運転計画装置16へ出力する。
【0042】
また、走行車線計画装置15は、ナビルートから選択された直近の運転区間において、地図情報と、ナビルートと、車両10の現在位置とに基づいて、車線変更の要否を判定する。走行車線計画装置15は、車線変更の要否の判定に、周辺環境情報又は車両状態情報を更に利用してもよい。周辺環境情報は、車両の10の周囲を走行する他の車両の位置及び速度等を含む。車両状態情報は、車両10の現在位置、車両速度、加速度及び進行方向等を含む。具体的には、走行車線計画装置15は、ナビルートと車両10の現在位置とに基づいて、車両10の目的位置へ向かう車線へ移動するために、車線変更の要否を判定する。車両10が現在走行している走行道路から合流先の他の道路へ進入すること(合流)、及び、車両10が走行道路から分岐先の他の道路へ退出すること(分岐)の有無を判定する。合流及び分岐では、車両が走行道路の車線から他の道路の車線へ移動するので、車線変更が行われる。
【0043】
運転計画装置16は、所定の周期で設定される運転計画生成時刻において、走行車線計画と、地図情報と、車両10の現在位置と、周辺環境情報と、車両状態情報とに基づいて、所定の時間(例えば、5秒)先までの車両10の予定走行軌跡を表す運転計画を生成する運転計画処理を実行する。運転計画は、現時刻から所定時間先までの各時刻における、車両10の目標位置及びこの目標位置における目標車両速度の集合として表される。運転計画が生成される周期は、走行車線計画が生成される周期よりも短いことが好ましい。運転計画装置16は、走行車線計画が車両10の車線間を移動する車線変更を含む場合、車両10と他の車両との間に所定の距離を維持できるように、車線変更を含む運転計画を生成する。運転計画装置16は、走行車線計画が車両10の車線間を移動する車線変更を含んでいても、車両10と他の車両との間に所定の距離を確保できない場合、車両を停車するように運転計画を生成する。運転計画装置16は、運転計画を生成する度に、運転計画を車両制御装置17へ出力する。また、車両制御システム1の減速計画処理において、運転計画装置16は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低く、且つ、車両10の速度が基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯5a、5bを点灯させずに車両10を減速させる第1の運転計画を生成する。また、車両制御システム1の減速計画処理において、運転計画装置16は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低く、且つ、車両10の速度が基準速度以下であると判定された場合、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両10を減速させる第2の運転計画を生成する。運転計画装置16が、車両10が減速するように運転計画を生成することについては、車両制御システム1の減速計画処理の説明において後述する。
【0044】
車両制御装置17は、車両10の現在位置と、車両速度及びヨーレートと、運転計画装置16によって生成された運転計画とに基づいて、車両10がナビルートに沿って走行するように車両10の各部を制御する。例えば、車両制御装置17は、運転計画、車両10の車両速度及びヨーレートに従って、車両10の操舵角、加速度及び角加速度を求め、その操舵角、加速度及び角加速度となるように、操舵量、アクセル開度又はブレーキ量を設定する。そして車両制御装置17は、設定された操舵量に応じた制御信号を、車両10の操舵輪を制御するアクチュエータ(図示せず)へ出力する。また、車両制御装置17は、設定されたアクセル開度に従って燃料噴射量を求め、その燃料噴射量に応じた制御信号を車両10のエンジンなどの駆動装置(図示せず)へ出力する。あるいは、車両制御装置17は、設定されたブレーキ量に応じた制御信号を車両10のブレーキ(図示せず)へ出力する。
【0045】
車両制御システム1の減速計画処理において、ドライバ判定装置18は、ドライバの運転に対する関与レベルを判定し、速度判定装置19は、車両10の速度と所定の基準速度との関係を判定する。
【0046】
地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19は、通信インターフェース(図示せず)と、メモリ(図示せず)と、プロセッサ(図示せず)とを有する。通信インターフェースは、各装置を車内ネットワーク22に接続するためのインターフェース回路を有する。
【0047】
地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19とが有する機能の全て又は一部は、例えば、プロセッサ上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサが有する機能モジュールは、プロセッサに設けられる、専用の演算回路であってもよい。プロセッサは、1個又は複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサは、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路を更に有していてもよい。各装置が有するメモリは、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリは、各装置のプロセッサにより実行される情報処理において使用されるアプリケーションのコンピュータプログラム及び各種のデータを記憶する。
【0048】
地図情報記憶装置11と、監視装置12と、位置推定装置13と、物体検出装置14と、走行車線計画装置15と、運転計画装置16と、車両制御装置17と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19は、別々の装置として説明されているが、これらの装置の全て又は一部は、一つの装置として構成されていてもよい。
【0049】
運転計画装置16と、ドライバ判定装置18と、速度判定装置19は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低いと判定された場合、車両10が比較的高速で走行している時には、後続車両の走行を妨げないように車両10の速度を減速させる減速計画処理を協働して実行する。
【0050】
図3は、車両制御システム1の減速計画処理に関する動作フローチャートの一例である。
図3を参照しながら、車両制御システム1の処理について、以下に説明する。車両制御システム1は、車両10の走行中に、
図3に示される動作フローチャートに従って減速計画処理を繰り返して実行する。
【0051】
まず、車両制御システム1のドライバ判定装置18は、所定の周期で設定されるドライバ判定時刻において、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いか否かを判定する(ステップS101)。ドライバ判定装置18は、監視装置12から、警告信号又は運転不関与信号が入力された場合、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いと判定する(ステップS101-Yes)。監視装置12は、ドライバの視線方向が車両10の前方を含む所定の範囲から外れている場合、ドライバの開眼度が所定の開眼度基準値未満である場合、又は、ドライバの開口度が所定の開口度基準値以上である場合に、警告信号をドライバ判定装置18へ出力するので、ドライバ判定装置18は警告信号が入力されると、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いと判定する。また、監視装置12が運転不関与信号をドライバ判定装置18へ出力するのは、ドライバに対して警告を与えた後の所定の時間内にドライバの運転に対する関与レベルが高いと判定されない場合なので、ドライバ判定装置18は運転不関与信号が入力された場合ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いと判定する。
【0052】
一方、監視装置12から警告信号又は運転不関与信号が入力されていない場合、ドライバ判定装置18は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低くはない(異常なし)と判定して(ステップS101-No)、車両制御システム1の減速計画処理に関する動作は終了する。
【0053】
ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低いと判定された場合、車両制御システム1の速度判定装置19は、車両10の速度と基準速度との関係を判定する(ステップS102)。まず、速度判定装置19は、速度センサ9から入力された速度情報に基づいて、車両10の速度を求める。例えば、速度判定装置19は、速度情報の一例である車両10のタイヤの回転速度に基づいて、車両10の速度を求める。速度判定装置19の有するメモリ(図示せず)には、地域と、地域における基準速度との関係が記憶されている。速度判定装置19は、メモリから読み出した、車両10の現在位置が含まれる地域の基準速度に基づいて、車両10の速度が基準速度よりも低いか否かを判定する。速度判定装置19は、車両10の速度と基準速度との関係の判定結果を運転計画装置16へ通知する。
【0054】
車両10の速度が基準速度よりも速い場合(ステップS102-Yes)、車両制御システム1の運転計画装置16は、第1減速度を用いて制動灯5a、5bを点灯させずに車両10の速度を減速させる第1の運転計画を生成して(ステップS103)、この運転計画を車両制御装置17へ通知する。運転計画装置16は、第1減速度を用いて車両10を減速する期間と、減速していない期間とを含むように第1の運転計画を生成してもよい。また、運転計画装置16は、第1の運転計画の中で第1減速度を第2減速度よりも小さい範囲内で他の値に変化させるように第1の運転計画を生成してもよい。そして、車両制御システム1の減速計画処理に関する動作は終了する。
【0055】
一方、車両10の速度が基準速度以下の場合(ステップS102-No)、運転計画装置16は、車両の速度が基準速度よりも遅い第2の基準速度よりも速いか否かを判定する(ステップS104)。車両10の速度が第2の基準速度よりも速い場合(ステップS104-Yes)、運転計画装置16は、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両10の速度を減速させる第2の運転計画を生成する(ステップS105)。運転計画装置16は、第2減速度を用いて車両10を減速する期間と、減速していない期間とを含めて第2の運転計画を生成してもよい。また、運転計画装置16は、第2の運転計画の中で第2減速度を第1減速度よりも大きい範囲内で他の値に変化させるように第2の運転計画を生成してもよい。
【0056】
また、運転計画装置16は、車両の速度が基準速度以下であり、且つ、監視装置12から運転不関与信号が入力されている場合、車両10を、車両10が走行している車線51に隣接する路肩53へ移動させて停車させるように第2の運転計画を生成してもよい。具体的には、運転計画装置16は、車両10の現在位置と、地図情報と、車両10の車両速度とに基づいて、車両10の現在位置から所定の範囲内に車両10を停車可能な路肩53上の目標位置を決定する。そして、運転計画装置16は、車両10が方向指示灯を点灯させながら、車両10の現在位置から路肩53上の目標位置へ向かって減速して移動した後、路肩53上の目標位置で停車する第2の運転計画を生成する。ここで、運転計画装置16は、制動装置が用いられる場合、制動灯5a、5bを点灯し且つ非常点滅表示灯4a~4fを消灯するように、第2の運転計画を生成する。運転計画装置16は、第2の運転計画を車両制御装置17へ通知する。そして、車両制御システム1の減速計画処理に関する動作は終了する。
【0057】
一方、車両10の速度が第2の基準速度以下の場合(ステップS104-No)、車両制御システム1の減速計画処理に関する動作は終了する。この場合、運転計画装置16は、車両10が前方を走行する他の車両に追従して走行するように車両10の運転計画を生成してもよい。
【0058】
次に、上述された運転計画に基づいて制御される車両10の動作の一例について、
図4を参照しながら、以下に説明する。
【0059】
まず、時刻T101において、車両10は、道路50の車線51上を巡航速度で走行しており、ドライバ判定装置18は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準以上である(異常なし)と判定している。
【0060】
次に、時刻T102において、車両10は、警告をドライバへ与える。車両10は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両10の速度が基準速度よりも速いと判定する。車両10は、第1減速度を用いて制動灯5a、5bを点灯させずに車両10の速度を減速させなら車線51上を走行する。車両10は、第1減速度を実現する手段として、エンジンブレーキ(駆動装置が内燃機関を有する場合)、回生ブレーキ(駆動装置が電気モータを有する場合)、車両10の空気抵抗及びタイヤと路面との摩擦等を用いることができる。車両10の速度の低下量は、道路50を走行する車両の速度分布の標準偏差程度であるので、道路50を走行する車両の速度のばらつきの範囲内程度である。従って、車両10が第1減速度で速度を低下することが、車両10の後方に位置する後続車両の走行を妨げるおそれはないと考えられる。
【0061】
次に、時刻T103において、車両10は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両10の速度が基準速度以下であると判定する。車両10は、第2減速度を用いて、車両10を減速させなら車線51上を走行させる。車両10は、第2減速度を実現する手段として、タイヤの回転速度を摩擦力で低減する制動装置及び回生ブレーキ(車両10が駆動装置として電気モータを有する場合)を用いることができる。
図4に示す例では、車両10は、制動装置を用いて減速しているので、制動灯5a、5bが点灯させなら車線51上を走行している。
【0062】
次に、時刻T104において、車両10は、ドライバは運転に関与していないと判定する。車両10は、速度を一定に維持した状態で、非常点滅表示灯4a~4fを点灯させ、車両10の現在位置から所定の範囲内に車両10を停車可能な路肩53上の目標位置を探索しながら車線51上を走行する。
【0063】
次に、時刻T105において、車両10は、路肩53上の目標位置に移動するべく、車両10が左側へ方向を変えることを示す方向指示灯4a~4cを点灯させて車線51上を走行している。車両10は、第2減速度が得られるように制動装置を用いて減速しているので、制動灯5a、5bを点灯させ且つ非常点滅表示灯4a~4fを消灯している。また、車両10は、制動灯5a、5bを点灯させ且つ方向指示灯4a~4cを消滅させてもよい。
【0064】
制動灯5a、5bは車両10が減速することを後続車両のドライバへ報知し、非常点滅表示灯4a~4fは、車両10が非常事態にあることを周囲の他の車両のドライバへ報知することを目的としているので、どちらの灯も、灯を点灯した車両への注意を促すものである。これら2つの灯を同時に点灯すると、後続車両及び周囲の他の車両のドライバは、ランプを点灯した車両の状態を正確に把握できないおそれがある。そこで、車両10は、制動灯5a、5b及び非常点滅表示灯4a~4fのうちの一つの灯だけを点灯するように制御して、後続車両及び周囲の他の車両のドライバを混乱させないようにする。なお、地域よっては、2つの灯を点灯することが他の車両のドライバを混乱させないことがある。このような場合、車両10は、制動灯5a、5bを点灯させ且つ非常点滅表示灯4a~4fを点滅させてもよい。更に、車両10は、制動灯5a、5bを点灯させ且つ方向指示灯4a~4cを点灯させてもよい。
【0065】
次に、時刻T106において、車両10は、方向指示灯4a~4cを点灯させ、走行していた車線51から車線区画線55をまたいで路肩53へ進入していく。方向指示灯と非常点滅表示灯とは同じなので、方向指示灯の点灯中は、非常点滅表示灯は消灯する。
【0066】
次に、時刻T107において、車両10は、制動装置を用いて減速しているので、車両10は、制動灯5a、5bが点灯させ且つ非常点滅表示灯4a~4fを消灯させている。
【0067】
次に、時刻T108において、車両10は、路肩53上の目標位置で停車し、制動装置の動作が停止して非常点滅表示灯4a~4fを点灯させる。
【0068】
上述したように、車両10の車両制御装置17は、運転計画装置16が生成した運転計画に基づいて、第1減速度又は第2減速度で車両10を減速させる。車両制御装置17が車両10を減速させる方法の具体例を、
図6を参照しながら、以下に説明する。
【0069】
車両10の減速度は車両10が走行する道路の勾配によって大きな影響を受ける場合があるので、
図6では、道路の勾配に応じて、第1減速度を実現する減速方法及び第2減速度を実現する減速方法車が示されている。
【0070】
(第1減速度を実現する減速方法)
まず、道路の勾配が比較的小さい平坦な道路、小さな勾配の上り坂又は小さな勾配の下り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、第1減速度を実現する方法として、駆動装置への燃料の供給を停止してエンジンブレーキを用いるか、又は、タイヤの回転力を用いて電気モータで発電させて回生ブレーキを用いる。車両制御装置17は、車両10の減速度が第1減速度に満たない場合、シフトダウンしてさらに減速度を高めてもよい。また、第1減速度(及び第2減速度)を実現する方法として、車両制御装置17の制御可能な制動方法ではないが、車両10の空気抵抗及びタイヤと路面との摩擦も用いられる。
【0071】
次に、大きな勾配の上り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、当初、第1減速度を実現する方法としてエンジンブレーキ又は回生ブレーキを用いる。そして、車両10が道路の大きな傾斜により減速して、車両10の減速度が第1減速度よりも大きくなると、車両制御装置17は、駆動装置を用いて車両10を加速して、車両10の車両の減速度が第1減速度になるように車両10を制御する。なお、第1減速度(及び第2減速度)を実現する方法として、車両制御装置17の制御可能な制動方法ではないが、車両10の空気抵抗及びタイヤと路面との摩擦も用いられる。
【0072】
更に、大きな勾配の下り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、第1減速度を実現する方法として、エンジンブレーキ又は回生ブレーキを用いる。また、第1減速度(及び第2減速度)を実現する方法として、車両制御装置17の制御可能な制動方法ではないが、車両10の空気抵抗及びタイヤと路面との摩擦も用いられる。運転計画装置16は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両10の速度が基準速度よりも速い状態が所定の時間以上継続した場合、第2の運転計画を生成するようにしてもよい。なお、小さな勾配と大きな勾配の上り坂、又は、小さな勾配と大きな勾配の下り坂を車両10が走行している場合にも、車両制御装置17は、第1減速度が得られるように、車両10を生後する。
【0073】
(第2減速度を実現する減速方法)
まず、道路の勾配が比較的小さい平坦な道路、小さな勾配の上り坂又は小さな勾配の下り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、第2減速度を実現する方法として、制動装置を用いる。車両制御装置17は、制動装置を作動している間、制動灯5a、5bを点灯させる。なお、車両制御装置17は、回生ブレーキを用いてもよい。
【0074】
次に、大きな勾配の上り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、第2減速度を実現する方法として、エンジンブレーキ又は回生ブレーキを用いる。車両制御装置17は、車両10の減速度が第2減速度に満たない場合、シフトダウンしてさらに減速度を高めてもよい。また、第2減速度を実現する方法として、制御可能な制動方法ではないが、車両10の空気抵抗及びタイヤと路面との摩擦も用いられる。なお、車両制御装置17は、制動装置を用いてもよい。
【0075】
更に、大きな勾配の下り坂を車両10が走行している場合には、車両制御装置17は、第2減速度を実現する方法として、制動装置を用いる。車両制御装置17は、制動装置を作動している間、制動灯5a、5bを点灯させる。なお、車両制御装置17は、回生ブレーキを用いてもよい。なお、小さな勾配と大きな勾配の上り坂、又は、小さな勾配と大きな勾配の下り坂を車両10が走行している場合にも、車両制御装置17は、第2減速度が得られるように、車両10を生後する。
【0076】
以上に説明してきたように、この車両制御装置は、ドライバの運転に対する関与レベルを判定し、車両の速度と所定の基準速度との関係を判定する。車両制御装置は、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準値よりも低く、且つ、車両の速度が前記基準速度よりも速いと判定された場合、第1減速度を用いて制動灯を点灯させずに車両の速度を減速させる第1の運転計画を生成し、ドライバの運転に対する関与レベルが所定の基準よりも低く、且つ、車両の速度が基準速度以下であると判定された場合、第1減速度よりも大きい第2減速度を用いて車両の速度を減速させる第2の運転計画を生成する。これにより、車両制御装置は、ドライバの運転に対する関与レベルが低いと判定された場合、車両が比較的高速で走行している時には、車両の速度が所定の基準速度以下になるまで制動灯を点灯させないで車両を減速させることにより、後続車両の走行を妨げないようにできる。
【0077】
次に、車両制御システム1の減速計画処理に関する他の動作例を、
図6を参照しながら、以下に説明する。
【0078】
上述した車両制御システム1の減速計画処理に関する動作例では、車両10は、走行する車線51に隣接する路肩上に停車していたが、地形によっては、車両10を停車可能な路肩を見つけられない場合がある。この場合、車両10は、走行している車線上に停車する。車両10が走行している車線上に停車する動作例を、
図6を参照しながら、以下に説明する。
【0079】
図6に示す例では、時刻T201~時刻T203までの車両10の動作は、上述した動作例における時刻T101~時刻T103の動作と同様である。時刻T204において、車両10は、車両10の現在位置から所定の範囲内に車両10を停車可能な路肩53上の目標位置を探索したが見つけることはできなかった。そこで、車両10は、第2減速度で減速して停車する目標位置を車線51上に決定する。
【0080】
次に、時刻T204において、車両10は、速度を一定に維持した状態で、非常点滅表示灯4a~4fを点灯させながら、車線51上を走行する。次に、時刻T205において、車両10は、制動装置を用いて減速しているので、制動灯5a、5bが点灯させ且つ且つ非常点滅表示灯4a~4fを消灯させている。次に、時刻T206において、車両10は、車線51上の目標位置で停車し、制動装置の動作が停止して非常点滅表示灯4a~4fを点灯させる。
【0081】
本発明では、上述した実施形態の車両制御装置及び車両制御用コンピュータプログラムは、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0082】
例えば、上述した実施形態では、運転計画装置は、監視装置から警告信号が入力されると、車両10を減速させる運転計画を生成していたが、運転計画装置は、監視装置から運転不関与信号が入力されて、はじめて車両10を減速させる運転計画を生成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 車両制御システム
2 カメラ
3a~3f レーダセンサ
4a~4f 非常時点滅灯(方向指示灯)
5a、5b制動灯
6 測位情報受信機
7 ナビゲーション装置
8 ユーザインターフェース
9 速度センサ
10 車両
11 地図情報記憶装置
12 監視装置
13 位置推定装置
14 物体検出装置
15 走行車線計画装置
16 運転計画装置
17 車両制御装置
18 ドライバ判定装置
19 速度判定装置
22 車内ネットワーク