(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】仕切具及び建築物の基礎の製造方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/01 20060101AFI20230912BHJP
E04G 11/06 20060101ALI20230912BHJP
E04G 15/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
E02D27/01 C
E04G11/06 A
E04G15/02 Z
(21)【出願番号】P 2021102539
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117101
【氏名又は名称】西木 信夫
(74)【代理人】
【識別番号】100120318
【氏名又は名称】松田 朋浩
(72)【発明者】
【氏名】平野 成志
(72)【発明者】
【氏名】松原 由幸
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027493(JP,A)
【文献】実開平06-082291(JP,U)
【文献】特開平09-100626(JP,A)
【文献】実開平05-014233(JP,U)
【文献】特開2002-097648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/01
E04G 11/06
E04G 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の基礎の型枠に取り付けられる仕切具であって、
対向する上記型枠の上端部に取り付けられる第1取付部、及び当該第1取付部から下方へ延びて上記型枠の内面と直交する方向に主面が拡がっており、対向する上記型枠の内部空間の上部を区画する平板形状の仕切部を有する仕切部材と、
対向する上記型枠の上端部に取り付けられる第2取付部、当該第2取付部から下方へ延びる接続部、及び当該接続部から水平方向へ延びる平板形状の抑制部を有する抑制部材とを備え、
上記仕切部材が上記第1取付部を介して上記型枠に取り付けられ、且つ上記抑制部材が上記第2取付部を介して上記型枠に取り付けられた状態において、上記抑制部の延出端が上記仕切部の下端部に当接
し、
上記仕切部は、対向する上記型枠の内部空間の上部を、上記抑制部と同じ側に位置するコンクリート非打設空間と、上記抑制部の反対側に位置するコンクリート打設空間とに区画するものである仕切具。
【請求項2】
上記抑制部は、上記延出端に開口するスリットを有する請求項1に記載の仕切具。
【請求項3】
型枠と仕切具とを用いた建築物の基礎の製造方法であって、
建築物の基礎の型枠に請求項1又は2に記載の仕切具を取り付けるステップと、
上記型枠の内部空間に上記仕切具の抑制部材の高さまでコンクリートを打設する第1打設ステップと、
上記仕切部によって区画された上記型枠の内部空間の上部の一方
である上記コンクリート打設空間に所定の高さまでコンクリートを打設する第2打設ステップとを備えた建築物の基礎の製造方法。
【請求項4】
上記第2打設ステップの後に、上記仕切部材を残して上記抑制部材を上記型枠から取り外すステップと、
上記抑制部材を取り外したことにより露出したコンクリートの上面に対して処理を行うステップと、
上記仕切部材を上記型枠から取り外すステップとをさらに備えた請求項3に記載の建築物の基礎の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の基礎の型枠に取り付けられる仕切具、及び建築物の基礎の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅等の建築物の基礎は、鋼製の型枠に生コンクリートを打設することにより形成される。この工程において、型枠に仕切板を取り付け、仕切板を用いて生コンクリートを堰き止めることにより、建築物の基礎に段差を形成することができる。
【0003】
特許文献1には、一度の生コンクリートの打設で天端に段差を形成できる仕切機具が記載されている。特許文献2には、打ち込んだばかりのコンクリート基礎に圧入することにより、基礎の風窓用網を取り付けるための型枠が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-097790号公報
【文献】実全昭49-062321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
型枠内に密実に生コンクリートを打設するためには、型枠内に流し込んだ生コンクリートにバイブレータ等を用いて振動を与える必要がある。しかしながら、振動を与えると、まだ十分に硬化していない生コンクリートが流動化する。このため、従来の仕切板を用いて段差を形成した場合、段差の下段面において生コンクリートの吹き上がりが発生する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、段差形成時に段差の下段面に発生する生コンクリートの吹き上がりを抑制できる手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る仕切具は、建築物の基礎の型枠に取り付けられる仕切具である。この仕切具は、対向する上記型枠の上端部に取り付けられる第1取付部、及び当該第1取付部から下方へ延びて上記型枠の内面と直交する方向に主面が拡がっており、対向する上記型枠の内部空間の上部を区画する平板形状の仕切部を有する仕切部材と、対向する上記型枠の上端部に取り付けられる第2取付部、当該第2取付部から下方へ延びる接続部、及び当該接続部から水平方向へ延びる平板形状の抑制部を有する抑制部材とを備えている。上記仕切部材が上記第1取付部を介して上記型枠に取り付けられ、且つ上記抑制部材が上記第2取付部を介して上記型枠に取り付けられた状態において、上記抑制部の延出端が上記仕切部の下端部に当接する。
【0008】
仕切部材の仕切部によって、対向する型枠の内部空間の上部が区画されるので、型枠の内部空間の上部に基礎の上端の位置が異なる段差を形成できる。型枠の内部空間に生コンクリートを流し込み、仕切部で区画された内部空間のうち基礎の上端の位置が高い側からバイブレータ等によって生コンクリートに振動を与えたときに、基礎の上端の位置が低い側において生コンクリートが吹き上がることを、抑制部が抑制する。また、生コンクリートが硬化する前に、仕切部材を型枠に取り付けたまま、抑制部材を型枠から取り外せるので、生コンクリートが硬化する前に、基礎の上端の位置が低い側の生コンクリートの上面に対して必要な処理を行える。
【0009】
(2) 上記抑制部は、上記延出端に開口するスリットを有してもよい。
【0010】
仕切具がアンカーボルト付近に設置されているときには、スリットを通じてアンカーボルトを避けつつ、抑制部材が型枠に取り付けられる。
【0011】
(3) 本発明に係る建築物の基礎の製造方法は、型枠と仕切具とを用いた建築物の基礎の製造方法であって、建築物の基礎の型枠に上記(1)又は(2)の仕切具を取り付けるステップと、上記型枠の内部空間に上記仕切具の抑制部材の高さまでコンクリートを打設する第1打設ステップと、上記仕切部によって区画された上記型枠の内部空間の上部の一方に所定の高さまでコンクリートを打設する第2打設ステップとを備えている。
【0012】
(4) 上記建築物の基礎の製造方法は、上記第2打設ステップの後に、上記仕切部材を残して上記抑制部材を上記型枠から取り外すステップと、上記抑制部材を取り外したことにより露出したコンクリートの上面に対して処理を行うステップと、上記仕切部材を上記型枠から取り外すステップとをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、段差形成時に段差の下段面に発生する生コンクリートの吹き上がりを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、段差及び型枠を示す斜視図であり、
図1(A)は形成すべき段差1を示し、
図1(B)は建築物の基礎の型枠80を示す。
【
図2】
図2は、実施形態に係る仕切具の斜視図であり、
図2(A)は仕切部材10を示し、
図2(B)は抑制部材20を示す。
【
図3】
図3は、実施形態に係る仕切具を型枠80に取り付けた状態を示す図であり、
図3(A)は取り付けた状態を示す斜視図であり、
図3(B)は仕切部材10と抑制部材20とを示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係る建築物の基礎の製造方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態の効果を説明するための模式図であり、
図5(A)は生コンクリート90の吹き上がり92が発生する様子を示し、
図5(B)は吹き上がりが抑制される様子を示す。
【
図6】
図6は、第1変形例に係る仕切具の斜視図であり、
図6(A)は仕切部材30を示し、
図6(B)は抑制部材40を示す。
【
図7】
図7は、第2変形例に係る仕切具の斜視図であり、
図7(A)は仕切部材50を示し、
図7(B)は抑制部材60を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る仕切具、及び建築物の基礎の製造方法が説明される。なお、以下に説明される実施形態は、本発明の一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、本発明の実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
【0016】
[製造すべき建築物の基礎]
以下では、
図1(A)に示される段差1を有する建築物の基礎を製造する場合について説明される。段差1は、下段面2、上段面3、及び垂直面4を有する。以下、垂直面4の高さ方向を高さ方向5、垂直面4の幅方向を幅方向6、高さ方向5及び幅方向6と直交する方向を長さ方向7という。
【0017】
建築物の基礎は、
図1(B)に示される鋼製の型枠80の内部空間に生コンクリートを打設することにより製造される。型枠80は、所定の間隔を空けて対向する。対向する型枠80は、それぞれ、仕切具が取り付けられる上端部81を有する。建築物の基礎の工法は、鋼製の型枠80を用いたコンクリート工事であれば任意でよい。建築物の基礎の工法は、例えば、布基礎でも、べた基礎でもよい。
【0018】
[仕切具の構成]
図2に示されるように、本実施形態に係る仕切具は、仕切部材10、及び抑制部材20を備えている。抑制部材20は、仕切部材10とは別の部材である。仕切部材10及び抑制部材20は、鋼製である。仕切部材10は、取付部11a、11b、仕切部12、及び側面部13a、13bを有する。抑制部材20は、取付部21、接続部22、及び抑制部23を有する。取付部11a、11bは、第1取付部の一例である。取付部21は、第2取付部の一例である。
【0019】
仕切具は、段差1を有する建築物の基礎を製造するときに型枠80に取り付けられる。仕切部材10は、仕切部12が形成すべき段差1の垂直面4に沿うように型枠80に取り付けられる。抑制部材20は、抑制部23が形成すべき段差1の下段面2に沿うように型枠80に取り付けられる。仕切具の高さ方向、幅方向、及び長さ方向は、それぞれ、高さ方向5、幅方向6、及び長さ方向7である。
【0020】
取付部11a、11bは、幅方向6及び長さ方向7に拡がる平板形状を有する。取付部11bは、取付部11aと同じ形状及び同じ寸法を有する。取付部11a、11bの長さ方向7の寸法は、側面部13a、13bの長さ方向7の寸法よりも長い。取付部11a、11bは、それぞれ、取り付け用の貫通孔14a、14bを有する。なお、取付部11a、11bは、貫通孔14a、14bを有していなくてもよい。
【0021】
仕切部12は、高さ方向5及び幅方向6に拡がる平板形状を有する。仕切部12の高さ方向5の寸法は、段差1の高さ(垂直面4の高さ方向5の寸法)よりも大きい。仕切部12の幅方向6の寸法は、段差1の幅(垂直面4の幅方向6の寸法)に等しいか、或いはそれよりも少し小さい。仕切部12は、下端付近に下端部19を有する。
【0022】
側面部13a、13bは、高さ方向5及び長さ方向7に拡がる平板形状を有する。側面部13bは、側面部13aと同じ形状及び同じ寸法を有する。側面部13a、13bの高さ方向5の寸法は、仕切部12の高さ方向5の寸法に等しいか、或いはそれよりも少し小さい。側面部13a、13bは、それぞれ、対向する型枠80の内面に当接し得る。
【0023】
取付部11aは、長さ方向7に延伸する一方の端において側面部13aと直交して連結する。取付部11bは、長さ方向7に延伸する一方の端において側面部13bと直交して連結する。仕切部12は、高さ方向5に延伸する一方の端において側面部13aと直交して連結し、高さ方向5に延伸する他方の端において側面部13bと直交して連結する。
【0024】
取付部11a、11bは、対向する型枠80の上端部81に取り付けられる。取付部11a、11bが上端部81に取り付けられた状態において、仕切部12は、取付部11a、11bから下方へ延びて型枠80の内面と直交する方向(幅方向6)に主面が拡がっており、対向する型枠80の内部空間の上部を区画する。
【0025】
取付部11a、11bは、任意の方法で上端部81に取り付けられる。例えば、取付部11a、11bは、貫通孔14a、14bにボルト等の部材を通して上端部81に取り付けられてもよい。或いは、取付部11a、11bは、万力等の固定部材を用いて上端部81に取り付けられてもよい。
【0026】
取付部21は、幅方向6及び長さ方向7に拡がる平板形状を有する。取付部21の幅方向6の寸法は、段差1の幅よりも大きい。
【0027】
接続部22は、高さ方向5及び幅方向6に拡がる逆T字の平板形状を有する。接続部22は、抑制部23よりも幅方向6の寸法が小さい上側部分と、抑制部23と同じ幅方向6の寸法を有する下側部分とを有する。接続部22の上側部分は、上端において取付部21と直交して連結する。接続部22の下側部分は、下端において抑制部23と直交して連結する。
【0028】
抑制部23は、幅方向6及び長さ方向7に拡がる平板形状を有する。抑制部23の幅方向6の寸法は、仕切部12の幅方向6の寸法に等しいか、或いはそれよりも少し小さい。抑制部23の長さ方向7の寸法は、側面部13a、13bの長さ方向7の寸法に等しいか、或いはそれよりも少し小さい。取付部21と抑制部23は、接続部22を含む平面を挟んで反対側に位置する。抑制部23が有する幅方向6に延伸する端のうち、接続部22に接続されていないほうの端は、延出端29と称される。
【0029】
取付部21は、対向する型枠80の上端部81に取り付けられる。取付部21は、例えば、万力等の固定部材を用いて上端部81に取り付けられる。取付部21が上端部81に取り付けられた状態において、接続部22は取付部21から下方へ延び、抑制部23は接続部22から水平方向へ延びる。
【0030】
仕切部材10及び抑制部材20は、1枚の金属板に対して切断、折り曲げ、及び孔空けを行うことにより形成される。
【0031】
本実施形態に係る仕切具は、
図3(A)に示されるように、仕切部12が形成すべき段差1の垂直面4に沿い、且つ抑制部23が形成すべき段差1の下段面2に沿うように、型枠80に取り付けられる。仕切部材10が取付部11a、11bを介して型枠80に取り付けられ、且つ抑制部材20が取付部21を介して型枠80に取り付けられた状態において、抑制部23の延出端29は仕切部12の下端部19に当接する(
図3(B)を参照)。なお、図面の理解を容易にするために、
図3(B)には側面部13a、13bは記載されていない。
【0032】
[建築物の基礎の製造方法]
図4が参照されて、型枠80及び本実施形態に係る仕切具を用いて、段差1を有する建築物の基礎の製造方法が説明される。
図4に示される製造方法を実行する前に、製造すべき建築物の基礎の位置に型枠80が設置される。
【0033】
図4に示される製造方法では、まず、型枠80に本実施形態に係る仕切具を取り付ける(S11)。S11において、取付部11a、11b、21は、対向する型枠80の上端部81に取り付けられる。仕切部12は、形成すべき段差1の垂直面4に沿って配置される。抑制部23は、形成すべき段差1の下段面2に沿って配置される。仕切部材10が取付部11a、11bを介して型枠80の上端部81に取り付けられ、抑制部材20が取付部21を介して型枠80の上端部81に取り付けられた状態において、抑制部23の延出端29は仕切部12の下端部19に当接する。
【0034】
次に、抑制部23の高さまでコンクリートを打設する(S12)。S12では、コンクリートは、型枠80の内部空間に抑制部23の下面の高さまで打設される。抑制部23の下面の高さは、形成すべき段差1の下段面2の高さとなる。S12では、型枠80の内部空間に生コンクリートが流し込まれ、流し込まれた生コンクリートにバイブレータ等を用いて振動が与えられる。
【0035】
次に、仕切部12の一方の側に所定の高さまでコンクリートを打設する(S13)。S13では、コンクリートは、仕切部12によって区画された型枠80の内部空間の上部の一方に打設される。所定の高さは、形成すべき段差1の上段面3の高さとなる。S12のみでコンクリートが打設された部分は、段差1の低い部分になる。S12及びS13でコンクリートが打設された部分は、段差1の高い部分になる。S13では、型枠80の内部空間の上部の一方に生コンクリートが流し込まれ、流し込まれた生コンクリートにバイブレータ等を用いて振動が与えられる。
【0036】
次に、仕切部材10を残して、抑制部材20を型枠80から取り外す(S14)。S14では、仕切部材10が型枠80に取り付けられたまま、抑制部材20が型枠80から取り外される。抑制部材20は仕切部材10とは別の部材であるので、S14は実行可能である。S14を実行すると、抑制部23によって覆われていたコンクリートの上面(段差1の下段面2の一部)が露出する。
【0037】
次に、露出したコンクリートの上面を含め、段差1の下段面2に対して必要な処理を行う(S15)。S15では、例えば、下段面2に対して、コンクリートの上面を揃える処理や、レベリング剤を施工する処理等が行われる。次に、段差1の上段面3に対して必要な処理を行う(S16)。S16では、例えば、上段面3に対してS15と同じ処理が行われる。
【0038】
次に、S12、S13で打設されたコンクリートが硬化するまで待つ(S17)。次に、抑制部材20を型枠80から取り外す(S18)。
図4に示される製造方法を実行した後、設置された型枠80は撤去される。
【0039】
[実施形態の効果]
本実施形態に係る仕切具及び建築物の基礎の製造方法によれば、仕切部材10の仕切部12によって、対向する型枠80の内部空間の上部が区画される。したがって、型枠80の内部空間の上部に基礎の上端の位置が異なる段差1を形成できる。基礎の上端の位置が低いほうが、段差1の低い部分になる。基礎の上端の位置が高いほうが、段差1の高い部分になる。
【0040】
また、
図5(A)に示される従来の仕切板70を用いた場合、型枠内に流し込んだ生コンクリート90にバイブレータ91を用いて振動を与えると、まだ十分に硬化していない生コンクリート90が流動化する。このため、上段面3の側から下段面2の側に仕切板70の下端の下側を経由して生コンクリート90が侵入し、段差1の下段面2において生コンクリート90の吹き上がり92が発生する。
【0041】
本実施形態に係る仕切具を用いる場合、
図5(B)に示されるように、抑制部材20の抑制部23は形成すべき段差1の下段面2に沿って配置され、抑制部23の延出端29は仕切部12の下端部19に当接する。したがって、上段面3の側から下段面2の側に仕切部12の下端部19の下側を経由して生コンクリート90が侵入することを抑制し、段差1の下段面2において生コンクリート90が吹き上がることを抑制できる。
【0042】
このように型枠80の内部空間に生コンクリート90を流し込み、仕切部12で区画された内部空間のうち基礎の上端の位置が高い側からバイブレータ91等によって生コンクリート90に振動を与えたときに、基礎の上端の位置が低い側において生コンクリート90が吹き上がることを、抑制部23が抑制する。
【0043】
また、吹き上がった生コンクリート90の処理が不要になるので、施工を省力化できる。また、作業者は、生コンクリート90の吹き上がり92を意識せずに、バイブレータ91等を用いて生コンクリート90に十分な振動を与えることができる。このため、生コンクリート90を密実に打設して、硬化後のコンクリートの品質を向上させることができる。また、通常よりも流動性が高い生コンクリート(従来の仕切板70では、段差1を形成できないほど流動性が高い生コンクリート)を打設することも可能となる。
【0044】
また、抑制部材20が型枠80に取り付けられた状態では、段差1の下段面2に対して必要な処理を行えないが、抑制部材20が型枠80から取り外された後は、段差1の下段面2に対して必要な処理を行える。本実施形態では、生コンクリート90が硬化する前に、仕切部材10を型枠80に取り付けたまま、抑制部材20を型枠80から取り外せる。したがって、生コンクリート90が硬化する前に、段差1の下段面2(基礎の上端の位置が低い側の生コンクリートの上面)に対して必要な処理を行える。
【0045】
また、仕切部材10は側面部13a、13bを備えており、側面部13a、13bは対向する型枠80の内面に当接し得る。したがって、仕切部材10を型枠80に正しい方向に沿って取り付けることができる。
【0046】
また、抑制部材20の接続部22は、逆T字の平板形状を有する。したがって、抑制部材20を軽量化し、抑制部材20を撤去するときに型枠80との干渉を軽減できる。接続部22を単純な平板形状にした場合、作業者は、仕切部材10と抑制部材20とで区画された空間内の状態を目視確認できず、当該空間内で生コンクリート90の吹き上がりが発生したとしても、吹き上がりを認識できない。接続部22を逆T字の平板形状にすることにより、作業者は、当該空間内の状態を目視確認でき、当該空間内で生コンクリート90の吹き上がりが発生した場合に、吹き上がりを認識できる。
【0047】
[変形例]
本実施形態に係る仕切具については、各種の変形例を構成できる。以下、上記実施形態に係る仕切具との相違点を説明する。
【0048】
図6に示される第1変形例に係る仕切具は、仕切部材30、及び抑制部材40を備えている。仕切部材30は、取付部31、仕切部12、及び側面部13a、13bを有する。取付部31は、H字状の平板形状を有する。取付部11aは、仕切部12、側面部13a、及び側面部13bと直交して連結する。仕切部材30は、例えば、金属板を切断して得られる取付部31と、金属板を切断、及び折り曲げて得られる仕切部12、及び側面部13a、13bとを溶接等により連結することにより形成される。
【0049】
抑制部材40は、取付部21、接続部42、及び抑制部23を有する。接続部42は、高さ方向5及び幅方向6に拡がる平板形状を有する。接続部42の幅方向6の寸法は、一定であり、抑制部23の幅方向6の寸法と同じである。抑制部材40は、例えば、金属板を切断、及び折り曲げることにより形成される。
【0050】
図7に示される第2変形例に係る仕切具は、仕切部材50、及び抑制部材60を備えている。仕切部材50は、取付部51a、51b、仕切部12、及び側面部53a、53bを有する。取付部51a、51bの長さ方向7の寸法は、側面部53a、53bの長さ方向7の寸法よりも大きい。側面部53a、53bの長さ方向7の寸法は、仕切部材10の側面部13a、13bの長さ方向7の寸法よりも大きい。
【0051】
抑制部材60は、取付部61、接続部62、及び抑制部63を有する。取付部61は、角を有するC字状の平板形状を有する。接続部62は、高さ方向5及び幅方向6に拡がる平板形状を有する。接続部62の幅方向6の寸法は、抑制部63の幅方向6の寸法と同じである。軽量化のために、接続部62は開孔64を有する。接続部22は、上端において取付部61の幅方向6に延伸する部分と直交して連結し、下端において抑制部63と直交して連結する。
【0052】
抑制部63は、幅方向6及び長さ方向7に拡がる平板形状を有する。抑制部63の長さ方向7の寸法は、側面部53a、53bの長さ方向7の寸法に等しいか、或いはそれよりも少し小さい。建築物の基礎に設けられるアンカーボルトとの干渉を避けるために、抑制部63は、延出端69に開口する2個のスリット65を有する。スリット65の個数及び位置は、アンカーボルトの配置位置に応じて決定される。
【0053】
第2変形例に係る仕切具がアンカーボルト付近に設置されているときには、スリット65を通じてアンカーボルトを避けつつ、抑制部材60が型枠80に取り付けられる。また、接続部62が開孔64を有するので、接続部62が軽量になるだけでなく、作業者は開孔64から手を入れて、仕切部材50と抑制部材60とによって形成される空間内で作業(例えば、アンカーボルトに対する作業)を行える。
【0054】
抑制部材60は、生コンクリート90の打設直後に撤去されることが好ましい。しかしながら、型枠80の上部に位置するアンカープレートにアンカーボルトが固定されているので、生コンクリート90の打設直後に、スリット65を有しない抑制部材60を型枠80の上方向に抜き取ることは不可能である。抑制部材60にスリット65を設けることにより、生コンクリート90の打設直後に、アンカープレートを撤去することなく、抑制部材60を水平方向に抜き取ることが可能となる。
【0055】
なお、
図7に示す第2変形例では、取付部51a、51b、61は取り付け用の貫通孔を有するが、取付部51a、51b、61は貫通孔を有していなくてもよい。
【0056】
また、仕切部材として、
図5(A)に示される公知の仕切板70等を用いてもよい。抑制部材の幅方向6の寸法が大きいほど、生コンクリート90の吹き上がり92をより良く抑制できる。一方、抑制部材の幅方向6の寸法を必要以上に大きくしても、生コンクリートの吹き上がりを抑制できる効果はあまり大きくならない。これらの点を考慮して、抑制部材の幅方向6の寸法は、好適に決定される。
【符号の説明】
【0057】
10、30、50・・・仕切部材
11a、11b、31、51a、51b・・・取付部(第1取付部)
12・・・仕切部
19・・・下端部
20、40、60・・・抑制部材
21、61・・・取付部(第2取付部)
22、42、62・・・接続部
23、63・・・抑制部
29、69・・・延出端
65・・・スリット