(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】電子楽器、電子楽器の制御方法及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
G10H 1/18 20060101AFI20230912BHJP
G10G 1/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G10H1/18 Z
G10G1/02
(21)【出願番号】P 2021162747
(22)【出願日】2021-10-01
(62)【分割の表示】P 2017184740の分割
【原出願日】2017-09-26
【審査請求日】2021-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 克
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-061015(JP,A)
【文献】特開2016-164591(JP,A)
【文献】特開平06-250655(JP,A)
【文献】特開平07-013569(JP,A)
【文献】特開平08-297487(JP,A)
【文献】特開昭62-094898(JP,A)
【文献】特開昭61-182096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10H 1/00-7/12
G10G 1/00-7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行する、電子楽器。
【請求項2】
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、前記操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行する、電子楽器。
【請求項3】
前記制御部は、
操作された操作子が複数である場合に、前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合は前記第2出力処理を実行し、前記判断処理により前記第1条件を満たさないと判断された場合は前記第1出力処理を実行する、
請求項1または2に記載の電子楽器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記グループ分け処理によりグループ分けされた、
第1グループ及び
第2グループのいずれかに属する複数の操作子について前記判断処理による判断を実行する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子楽器。
【請求項5】
前記制御部は、
前記判断処理による判断を
前記第1グループ及び前記第2グループに属する複数の操作子についてそれぞれ実行し、
前記第1グループ及び前記第2グループのいずれかのグループに対して前記第1条件を満たすと判断された場合は前記第2出力処理を実行し、
前記第1グループ及び前記第2グループの全てのグループに対して前記第1条件を満たさないと判断された場合は前記第1出力処理を実行する、請求項4に記載の電子楽器。
【請求項6】
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行する、電子楽器。
【請求項7】
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行する、電子楽器。
【請求項8】
前記制御部は、
前記第1出力処理において、操作された操作子に対応する音高と操作の強度に対応する音量とに基づいた第1波形データを生成し、生成した前記第1波形データを音源に出力させ、
前記第2出力処理において、操作された操作子に対応する音高と操作の強度に対応する音量との少なくとも一方に基づかない第2波形データを生成し、生成した前記第2波形データを前記音源に出力させる、
請求項1乃至
5のいずれか一項に記載の電子楽器。
【請求項9】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器が、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行する、電子楽器の制御方法。
【請求項10】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器のコンピュータに、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行させる、電子楽器のプログラム。
【請求項11】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器が、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、前記操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行する、電子楽器の制御方法。
【請求項12】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器のコンピュータに、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、前記操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、
を実行させる、電子楽器のプログラム。
【請求項13】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器が、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行する、電子楽器の制御方法。
【請求項14】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器のコンピュータに、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行させる、電子楽器のプログラム。
【請求項15】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器が、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行する、電子楽器の制御方法。
【請求項16】
音高を指定するための複数の操作子を備える電子楽器のコンピュータに、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる通常発音処理と、
前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子を発光させる通常点灯処理と、
同時に操作された操作子が複数である場合に、
同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、
前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内である第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、
前記通常点灯処理と異なる発光パターンで前記操作子を発光させる特殊処理と、
を実行させる、電子楽器のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子楽器、電子楽器の制御方法及びそのプログラムに関する。
【0002】
近年では情操教育に良いとの理由から幼児期において子供に楽器を習わせることも多い。電子楽器には、楽曲の演奏のためのレッスン機能を有するものもあるが、子供ではいまだ手指や知能が未発達なこともあり、正しく楽器を演奏する以前に、例えば、電子鍵盤楽器であれば鍵盤を叩く等乱暴な取り扱いをすることも多い。
【0003】
一方、電子鍵盤楽器などの電子楽器は、音楽を演奏することを目的とするものであるから、それぞれの鍵に対応した音高で楽音が発音されるのは当然である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、従来の鍵盤楽器では、複数の鍵をでたらめに叩いたりした場合であっても、複数の押鍵した鍵に対応する音高が発音される。また、和音を意図している場合であっても、鍵盤をでたらめに叩いているので、音楽的に正しい和音は発音されず、でたらめな不協和音が発音される。
指導者がいれば、次第に正しい弾き方や和音を覚えていくが、そうでない場合は正しい演奏の仕方も分からずに子供は次第に楽器に飽きてしまい、楽器そのものに興味を失ってしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、子供がどのような操作をしても、子供に親しみをもってもらえる電子楽器、電子楽器の制御方法及びそのプログラムを提供することを利点とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態によれば、音高を指定するための複数の操作子と、制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の操作子のいずれかが操作された場合に、操作された操作子に対応する音高の音であって、かつ、操作の強度に対応する音量の音、を出力させる第1出力処理と、同時に操作された操作子が複数である場合に、同時に操作された複数の操作子を操作した手に応じてグループ分けするグループ分け処理と、前記グループ分け処理による同一グループ内の複数の操作子に対応する複数の音高の組み合わせが不協和音に該当する第1条件を満たすか否かを判断する判断処理と、前記判断処理により前記第1条件を満たすと判断された場合に、操作された操作子に対応しない音高の音、または、操作の強度に対応しない音量の音、を出力させる第2出力処理と、を実行する、電子楽器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、子供がどのような操作をしても、子供に親しみをもってもらえる電子楽器、電子楽器の制御方法及びそのプログラムを提供することができることを利点とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係る電子鍵盤楽器100の外観を示す図である。
【
図2】実施形態に係る電子鍵盤楽器100の制御システム200のハードウェアを示す図である。
【
図3】子供が両手(左手LH及び右手RH)で鍵盤101をでたらめに叩いた場合を説明するための図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図5】
図4のS16の押鍵グループ分け処理について説明するためのフローチャートである。
【
図6】
図4のS17の押鍵密集判定処理を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図8】
図7のS52のベロシティ情報判定を説明するためのフローチャートである。
【
図9】本発明の第3実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明するためのフローチャートである。
【
図10】S70の不協和音判定処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子楽器について説明する。
【0011】
実施形態の電子楽器は、光鍵を有する電子鍵盤楽器であり、手指や知能が未発達な子供がでたらめに鍵盤を押鍵したり、乱暴に鍵盤を叩くなどしても、押鍵に対応した音高に基づいてそのまま発音処理する通常発音処理(第1条件を満たす場合の処理)とは異なる特殊発音処理(第2条件を満たす場合の処理)をする。これにより、子供に電子鍵盤楽器に対する楽しさや親しみをもってもらえるようにするものである。
1 電子鍵盤楽器100について
以下、実施形態に係る電子鍵盤楽器について
図1及び
図2を参照して説明する。なお、
図1及び
図2に示す電子鍵盤楽器100は、後述する第1実施形態乃至第3実施形態の電子鍵盤楽器100の動作において使用される。
【0012】
図1は、実施形態に係る電子鍵盤楽器100の外観を示す図である。
【0013】
同図に示すように、電子鍵盤楽器100は、音高を指定する演奏操作子としての複数の鍵からなりそれぞれの鍵が光る機能を有する鍵盤101と、音量の指定、自動演奏のテンポ設定、自動演奏開始等の各種設定を指示する第1のスイッチパネル102と、本実施形態に係る特殊発音処理の選択、自動演奏曲の選曲や音色の選択などを行なう第2のスイッチパネル103と、自動演奏時の歌詞や各種設定情報を表示するLCD104(Liquid Crystal Display)等を備える。また、電子鍵盤楽器100は、特に図示しないが、演奏により生成された楽音を放音するスピーカを裏面部、側面部、又は背面部などに備える。
【0014】
図2は、実施形態に係る電子鍵盤楽器100の制御システム200のハードウェアを示す図である。同図において、制御システム200は、CPU201、ROM202、RAM203、音源LSI204、音声合成LSI205、
図1の鍵盤101、第1のスイッチパネル102、及び第2のスイッチパネル103が接続されるキースキャナ206、
図1の鍵盤101の各鍵を光らせるための各LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)を発光制御するLEDコントローラ207、及び
図1のLCD104が接続されるLCDコントローラ208が、それぞれシステムバス209に接続される。
【0015】
CPU201は、RAM203をワークメモリとして使用しながらROM202に記憶された制御プログラムを実行することにより、電子鍵盤楽器100の後述する第1実施形態乃至第3実施形態の制御動作を実行する。CPU201は、制御プログラムにしたがって、音源部に含まれる音源LSI204及び音声合成LSI205に対して指示を出す。これにより、音源LSI204及び音声合成LSI205がデジタル楽音波形データ及びデジタル歌声音声データを生成し、出力する。
【0016】
音源LSI204及び音声合成LSI205からそれぞれ出力されるデジタル楽音波形データ及びデジタル歌声音声データは、D/Aコンバータ211、212によりそれぞれアナログ楽音波形信号及びアナログ歌声音声信号に変換される。アナログ楽音波形信号及びアナログ歌声音声信号は、ミキサ213で混合され、その混合信号がアンプ214で増幅された後に、特には図示しないスピーカ又は出力端子から出力される。
【0017】
また、CPU201は、キースキャナ206から知らされた鍵盤101の鍵の状態を示す情報に含まれるベロシティ情報を鍵番号に関連付けてRAM203に保存する。ここで、「ベロシティ」とは、押鍵された鍵の「音の強弱」を表わす。なお、この音の強弱は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)では鍵盤の鍵が押下された時の速度を検出してそれを音の強さとして表わしており、1から127の数値で表現される。
【0018】
さらに、CPU201には、自動演奏のシーケンスを制御するために使用されるタイマ210が接続される。
【0019】
ROM202は、実施形態に係る処理を行なう制御プログラム、各種固定データのほか、自動演奏曲データを記憶する。自動演奏曲データは、演奏者によって演奏されるメロディデータと、メロディデータに対応する伴奏曲データが含まれる。メロディデータには、各音の音高情報、前記各音の発音タイミング情報を含む。伴奏曲データは、メロディデータに対応する伴奏曲のみならず、歌声、人間の音声などのデータであっても良い。
【0020】
各音の発音タイミングは、各発音間の間隔時間でもよく、自動演奏曲の開始時からの経過時間であっても良い。なお、時間の単位は、一般的なシーケンサーで用いられるティックと呼ばれるテンポを基準とした時間を単位とする。例えば、シーケンサーの分解能が480である場合は、4分音符の時間の1/480が1ティックとなる。なお、自動演奏曲データは、ROM202に格納される場合に限らず、図示しない情報記憶装置や情報記憶媒体に記憶されていても良い。
【0021】
また、自動演奏曲データのフォーマットは、MIDI用ファイルフォーマットに準拠していてもよい。
ROM202には、上述のように、実施形態に係る処理を実現するための制御プログラムの他、実施形態に係る処理に使用されるデータが記憶される。例えば、後述する第3実施形態において使用される和音の音高の組み合わせであるパターンデータが記憶される。 和音には、三和音、四和音及び五和音があるが、実施形態では三和音に関する音高の組み合わせのデータが記憶される。和音の種類としては、三和音であれば、長三和音、短三和音、減三和音、増三和音がある。ROM202には、これら三和音の長三和音、短三和音、減三和音、増三和音の音高の組み合わせのデータがパターンデータとして記憶される。
【0022】
音源LSI204は、図示しない波形ROMから楽音波形データを読み出し、D/Aコンバータ211に出力する。音源LSI204は、同時に最大256ボイスを発振させる能力を有する。
【0023】
音声合成LSI205は、CPU201から、歌詞のテキストデータと音高と音長を与えられると、それに対応する歌声の音声データを合成し、D/Aコンバータ212に出力する。
【0024】
キースキャナ206は、
図1の鍵盤101の押鍵/離鍵状態、第1のスイッチパネル102、及び第2のスイッチパネル103のスイッチ操作状態を定常的に操作し、CPU201に割り込みをかけて状態変化を伝える。
【0025】
LEDコントローラ207は、CPU201からの指示により鍵盤101の鍵を光らせて演奏者の演奏をナビゲートするIC(集積回路)である。
【0026】
LCDコントローラ208は、LCD104の表示状態を制御するICである。
【0027】
次に、本発明の実施形態にかかる電子鍵盤楽器100の制御方法について説明する。以下に説明する第1実施形態乃至第3実施形態に係る電子鍵盤楽器100の制御方法は、
図1及び
図2に示した電子鍵盤楽器100において実現される。
【0028】
次に、本発明の第1実施形態の実施形態に係る電子鍵盤楽器100の制御動作について説明する。実施形態では、
図3に示すように、子供が両手(左手LH及び右手RH)で鍵盤101をでたらめに叩いた場合を想定する。
2 第1実施形態
2-1 第1実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作
図4は、本発明の第1実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作を説明するためのフローチャートである。
【0029】
本実施形態の電子鍵盤楽器100の動作が開始されると、まず、最初に、キースキャナ206により鍵盤101の鍵盤スキャンが行なわれる(S10)。この動作の開始は、第2のスイッチパネル103のうち、実施形態に係る特殊発音処理のスイッチ(図示せず)が選択されている場合に開始されてもよいし、電子鍵盤楽器100の電源投入後、ROM202に記憶された制御プログラムにより自動的に実行されても良い。
【0030】
S10による鍵盤スキャンの結果、次に、鍵盤101に押鍵があったか否かの判断が行なわれる(S11)。S11において、押鍵がないと判断された場合、S10の処理に戻る。
【0031】
一方、押鍵があったと判断された場合、鍵盤スキャンの結果から同時押鍵数を取得する(S12)。そして、S12において取得された同時押鍵数が4以上であるか否かの判断が行なわれる(S13)。この同時押鍵数は、例えば、S10において実施された鍵盤スキャンで取得された押鍵された鍵の数であるが、所定時間内に押鍵された鍵の数であっても良い。同時押鍵数を4としたのでは、同時押鍵数が4以上であれば、子供が鍵盤101に含まれる鍵を指定した演奏動作をしているわけではなく、子供が鍵盤101を叩いている可能性があるためである。
【0032】
S13において、同時押鍵数が4未満であると判断された場合(第1条件を満たす場合)、通常発音処理を実施する(S14)。S14の通常発音処理では、押鍵された鍵に従った音高を発音する通常の楽器としての発音である。
【0033】
具体的には、CPU201から押鍵された鍵に従った音高を発音させるための指示を音源部に含まれる音源LSI204に行なうと、音源LSI204は対応する音高の波形データを図示しない波形ROMから読み出し、読み出された音高の波形データ(第1波形データ)をD/Aコンバータ211に出力する。通常発音処理に続き、通常点灯処理(S15)が行なわれ、S10の処理に戻る。通常点灯処理は、押鍵された鍵を発光させる処理である。
【0034】
一方、S13において、同時押鍵数が4以上であると判断された場合、押鍵グループ分け処理に進む(S16)。
【0035】
S16の押鍵グループ分け処理では、左手及び右手で鍵盤101が叩かれた場合に、左手で叩かれた鍵の第1グループと、右手で叩かれた鍵の第2グループとに分ける処理である。このS16の押鍵グループ分け処理については、
図5の説明において後述する。
【0036】
S16において押鍵グループ分け処理が行なわれた後、押鍵密集判定が行なわれる(S17)。この押鍵密集判定処理は、第1グループ及び第2グループそれぞれにおける押鍵された鍵の状態が密集状態又は分散情報にあるかの判定を行なう処理である。この押鍵密集判定処理については、
図6の説明において後述する。
【0037】
S17において押鍵状態が密集状態又は分散状態であるかの判定が行なわれ、密集状態であると判定された場合には、でたらめな演奏であると判断し(第2条件を満たす場合)、S19の特殊発音処理に移る(S18のYES)。一方、S17において押鍵状態が分散状態であると判定された場合には、S14の通常発音処理(S18のNO)に移る。S19の特殊発音処理では、押鍵された鍵に対応する音高で発音するS14の通常発音処理の代わりに、「やめて~」、「こわれちゃうよ~」などのフレーズの音声データがROM202から読み出されて、発音される。
【0038】
もっとも、CPU201から該当するフレーズを発音させるための指示を音源部に含まれる音声合成LSI205にフレーズのテキストデータと音高と音長を与えることにより、音声合成LSI205は対応する音声データを合成し、合成した音声データの波形(第2波形データ)をD/Aコンバータ212に出力してもよい。
【0039】
S19における特殊発音処理の後、特殊点灯処理が行なわれる(S20)。この特殊点灯処理では、S15における通常点灯処理と異なり、押鍵された鍵に対応する鍵の発光は実施しない。
代わりに、S20の特殊点灯処理では、押鍵された鍵を中心に光が左右の鍵に拡がっていく爆発に見えるような発光等、S15における通常点灯処理と異なる発光パターンが実施される。このS20における特殊点灯処理は、通常点灯処理と異なる種々の発光パターンが考えられる。また、具体的な特殊点灯処理の実現方法としては、例えば、LEDコントローラ207がいくつかの発光パターンを有しており、CPU201が、LEDコントローラ207に押鍵された鍵の番号と発光パターンを指示することにより、特殊点灯処理が行なわれる。
例えば、上述の爆発に見えるような発光を行なわせる処理では、CPU201がLEDコントローラ207に押鍵された鍵の番号と、当該爆発に見えるような発光パターンをLEDコントローラ207に指示することにより、LEDコントローラ207が押鍵された鍵を中心に、押鍵された鍵に隣り合う左右の鍵、押鍵された鍵に対して1鍵空けた左右の鍵、押鍵された鍵に対して2鍵空けた左右の鍵、押鍵された鍵に対して3鍵空けた左右の鍵...を順次点灯消灯することにより、光が左右の鍵に拡がっていく爆発に見えるような発光処理が実現される。
また、CPU201からLEDコントローラ207に直接、特殊点灯処理に対応して点灯されるLEDの鍵番号をLEDコントローラ207に知らせても良い。S20における特殊点灯処理の後、S10の処理に戻る。
【0040】
次に、S16の押鍵グループ分け処理について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
押鍵グループ分け処理は、
図3に示すように、左手(LH)及び右手(RH)で鍵盤101が叩かれた場合、左手(LH)で叩かれた鍵の第1グループと右手(RH)で叩かれた鍵の第2グループとに分け、それぞれのグループにおいて本当にでたらめに押鍵されたものなのかを判断するための前処理である。
【0042】
まず、押鍵された鍵を音高でソートする(S30)。音高のソートは、例えば、押鍵された各鍵に対応する音高情報を、最低音の音高から最高音の音高に向けて順番に並ぶようにソートされる。この処理により、後述の隣接する各音高の音高差が判断しやすくなる。
【0043】
その後、S30にてソートされた各音高の音高差が長3度以上になっているものがあるかを検索する(S31)。長3度以上の音高差があるということは、少なくとも白鍵1鍵分の隙間があるということであり、第1実施形態ではこの隙間が左手と右手との境界であると判断する。
【0044】
S31において、長3度以上の音高差が検索された場合(S32のYES)、当該音高差を有する隙間よりも下側の押鍵を第1グループ、上側の押鍵を第2グループとする(S33)。長3度以上の音高差が検索されなかった場合(S32のNO)、全ての押鍵を第1グループ(S34)とする。
【0045】
なお、長3度以上の音高差が複数検索された場合、最も大きい音高差を有する隙間を左手と右手との境界であると判断しても良い。
【0046】
押鍵をグループした後は、それぞれのグループについて押鍵状態の密集判定を実施する。
図6は、S17の押鍵密集判定処理を説明するためのフローチャートである。
【0047】
まず、第1グループ内の全ての隣り合う押鍵同士の音高差が全て長2度以内にあるかを判断する(S40)。長2度以内ということは、隣り合う白鍵や黒鍵が隙間なく押鍵されているということであるから、第1実施形態ではでたらめな演奏であると判断する。
【0048】
S40において、隣り合う押鍵鍵同士の音高差が全て長2度以内であると判定された場合、押鍵密集判定の結果を密集状態であるとする(S44)。一方、隣り合う押鍵鍵同士の音高差が全て長2度以内でないと判定された場合、第2グループがあるか否かが判断される(S41)。
【0049】
S41において、第2グループがあると判断された場合、第2グループについてもS40の第1グループに対する処理と同様に、第2グループ内の全ての音高について、隣接する各音高の音高差が全て長2度以内にあるかを判断する(S42)。一方、S41において、第2グループがないと判断された場合、押鍵密集判定の結果を分散状態であるとする(S43)。
【0050】
S42において、隣接する各音高の音高差が全て長2度以内であると判定された場合、押鍵密集判定の結果を密集状態であるとする(S44)。一方、隣り合う押鍵鍵同士の音高差が全て長2度以内でないと判定された場合、押鍵密集判定の結果を分散状態であるとする(S43)。
2-2 第1実施形態の変形例
2-2-1 特殊発音処理(S19)の変形例1
上述の第1実施形態では、S19の特殊発音処理において、「やめて~」、「こわれちゃうよ~」などのフレーズを発音する場合について説明したが、特殊発音処理において発音される音はこれに限られるものではない。
【0051】
例えば、S19の特殊発音処理において、音声による正しい押鍵の方法の指示、爆発音、通常の楽器の発音とは明らかに異なる音を発音させても良い。
【0052】
また、でたらめな演奏が続いていると判断できる場合、特殊発音において、発音する音を次第に変えていき、盛り上げるような処理としても良い。でたらめな演奏が続いていると判断できる場合とは、例えば、CPU201が、S17の押鍵密集判定処理の結果が密集状態であると判断した回数が、所定時間内に所定回数以上であると判断した場合である。
【0053】
さらに、S14の通常発音処理(S14)において発音される音と音量が異なる音を発音させても良い。例えば、特殊発音処理(S19)で発音される音は、通常発音処理(S14)において発音される音よりも低くしても良い。
【0054】
具体的には、特殊発音処理(S19)において音源部から出力される波形データ(第2波形データ)の音量が、通常発音処理(S14)において音源部から出力される波形データ(第1波形データ)の音量よりも小さくする。
2-2-2 特殊発音処理(S19)の変形例2
第1実施形態では、同時に押鍵された鍵の数(第1条件)及び押鍵された鍵の密集状態(第2条件)に応じて、通常発音処理(S14)又は特殊発音処理(S19)を行なう場合について説明したがこれに限られるものではない。例えば、同時押件数が所定の数以上であって、特殊発音処理(S19)を行なう場合でも、特殊発音処理(S19)に加えて、通常発音処理を行なっても良い。すなわち、音源部は、第1波形データに加えて、第2波形データを出力しても良い。
2-2-3 特殊発音処理(S19)の変形例3
第1実施形態では、第1グループ(左手)又は第2グループ(右手)のいずれかで隣接する押鍵の音高差が長2度以内である場合には、密集状態であると判定され、特殊発音処理(S19)を行なう場合について説明した。
【0055】
しかしながら、密集状態であると判定された第1グループ(左手)又は第2グループ(右手)については特殊発音処理(S19)を行ない、分散状態であると判定された第1グループ(左手)又は第2グループ(右手)については、押鍵された鍵に対応する音高を発音する通常発音処理(S14)を特殊発音処理と合わせて行なっても良い。
2-2-4 特殊発音処理の条件
第1実施形態では、同時に押鍵された鍵の数(第1条件)及び押鍵された鍵の密集状態(第2条件)に応じて、通常発音処理(S14)又は特殊発音処理(S19)を行なう場合について説明したが、他の条件(第3条件)を加えても良い。第3条件としては、例えば、後述する第2実施形態において説明する押鍵された鍵のベロシティ情報を加えても良い。
2-2-5 同時押鍵数
第1実施形態では、S12における同時押鍵数の判断は、4つの場合について説明したが、3つであっても良い。
2-3 第1実施形態の効果
本発明の第1実施形態の電子鍵盤楽器100によれば、所定の数以上の押鍵を行ない、押鍵状態の密集判定が行なわれると、通常の発音とは異なる特殊な発音が行なわれるので、子供にとっては、実施形態の電子鍵盤楽器100の演奏を飽きることなく、楽しむことができる。すなわち、子供などのユーザにとって親しみの持てる電子鍵盤楽器100を提供することができる。
【0056】
また、特殊発音の音量を通常発音の音量よりも低くすることができるので、子供がでたらめに鍵盤101の鍵をでたらめに押下しても、周囲の人間に迷惑を与えることがないようにすることができる。
【0057】
さらに、特殊発音に加えて、特殊な点灯処理を行なうことにより、子供にとっては、さらに興味が増し、より親しみがもてる電子鍵盤楽器100を提供することができる。
3 第2実施形態
3-1 第2実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作
次に、本発明の第2実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明する。
【0058】
第2実施形態では、押鍵された鍵のベロシティ情報に基づいて、特殊発音処理を行なうものである。
【0059】
図7は、本発明の第2実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明するためのフローチャートである。
【0060】
なお、
図4に示した第1実施形態のフローチャートの
図4のS10~S16、S19、S20の処理については、第1実施形態において述べた動作と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0061】
図7に示すように、S16において押鍵グループ分け処理が行なわれると、CPU201は、RAM203に格納された押鍵された複数の鍵のそれぞれのベロシティ情報を取得する(S51)。
次に、S51において取得された押鍵された複数の鍵のそれぞれのベロシティ情報判定処理が行なわれる(S52)。このベロシティ情報判定処理は、
図4のS16においてグループ分けされた押鍵グループに対して行なわれるものである。S52におけるベロシティ情報判定処理については後述する。
【0062】
次に、S52のベロシティ情報判定処理の結果、押鍵された複数の鍵のベロシティ情報の値全てが閾値に達していると判断された場合(S53のYES)、
図4のS19の特殊発音処理に移る。一方、押鍵された複数の鍵のベロシティ情報の値全てが閾値に達していないと判断された場合(S53のNO)、S14の通常発音処理に移る。
【0063】
図8は、S52のベロシティ情報判定を説明するためのフローチャートである。
【0064】
同図に示すように、まず、第1グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値全てが閾値に達しているかが判断される(S60)。第2実施形態では、押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が全て閾値に達している場合(S60のYES)、でたらめな演奏であると判断する。
【0065】
S60において、第1グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が閾値に達していると判定された場合、ベロシティ情報判定の結果をベロシティ情報≧閾値であるとする(S61)。一方、第1グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が閾値に達していないと判定された場合(S60のNO)、第2グループがあるか否かが判断される(S62)。
【0066】
S62において、第2グループがあると判断された場合、第2グループについてもS60の第1グループに対する処理と同様に、第2グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が閾値に達しているかを判断する(S63)。一方、S62において、第2グループがないと判断された場合、ベロシティ情報判定の結果をベロシティ情報<閾値であるとする(S64)。
【0067】
S63において、第2グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が閾値に達していると判定された場合、ベロシティ情報判定の結果をベロシティ情報≧閾値であるとする(S61)。一方、第2グループ内の押鍵された鍵の全てのベロシティ情報の値が閾値に達していないと判定された場合、ベロシティ情報判定の結果をベロシティ情報<閾値であるとする(S64)。
3-2 第2実施形態の変形例
3-2-1 ベロシティ情報の判定
第2実施形態では、第1グループ及び第2グループの全ての押鍵された鍵のベロシティ情報の値が閾値に達しているか否かで判断する場合について説明したがこれに限られるものではない。例えば、押鍵された鍵のうち、所定数以上のベロシティ情報の値が閾値を超えてれば、ベロシティ判定の結果をベロシティ情報≧閾値として特殊発音処理を行なっても良い。例えば、押鍵された鍵が7つであり、3つ以上の押鍵のベロシティ情報の値が閾値を超えていれば、特殊発音処理を行なっても良い。
3-3 第2実施形態の効果
本発明の第2実施形態の電子鍵盤楽器100によれば、押鍵された鍵のベロシティ情報に基づくので、より子供の感情に配慮した特殊発音処理を行なうことができ、子供にとっては、実施形態の電子鍵盤楽器100の演奏をより飽きることなく、楽しむことができる。
4 第3実施形態
第3実施形態では、子供が意識的に不協和音を含むテンションコードを演奏することはないものとして、押鍵された鍵の組み合わせに不協和音が含まれていれば、でたらめな演奏であると判断する。
4-1 第3実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作
本発明の第3実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明する。
【0068】
図9は、本発明の第3実施形態に係る電子鍵盤楽器100の動作について説明するためのフローチャートである。
【0069】
なお、
図4に示した第1実施形態のフローチャートの
図4のS10~S16、S19、S20の処理については、第1実施形態において述べた動作と同じであるので、ここではその説明を省略する。
【0070】
図9に示すように、S16において押鍵グループ分け処理が行なわれると、押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であるかの判断が行なわれる(S70)。このS70における不協和音判定処理は、
図4のS16においてグループ分けされた押鍵グループに対して行なわれるものである。このS70における不協和音処理については後述する。
【0071】
次に、S70の不協和音判定処理の結果、押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であると判断された場合(S71のYES)、
図4のS19の特殊発音処理に移る。一方、押鍵された鍵の組み合わせが不協和音でないと判断された場合、S14の通常発音処理に移る。
【0072】
図10は、S70の不協和音判定処理を説明するためのフローチャートである。
【0073】
同図に示すように、まず、第1グループ内の押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であるかが判断される(S80)。
【0074】
具体的には、この押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であるか否かは、第1グループ内の押鍵された鍵の音高の組み合わせが、ROM202に記憶された和音の音高データの組み合わせであるパターンデータに合致するかを判断し、合致していれば不協和音に該当せず、合致していれば不協和音に該当する。
【0075】
S80において、押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であると判断された場合(S80のYES)、不協和音判定の結果を不協和音とする(S81)。一方、第1グループ内の押鍵された鍵の組み合わせが不協和音でないと判断された場合(S80のNO)、第2グループがあるか否かが判断される(S82)。
【0076】
S82において、第2グループがあると判断された場合(S82のYES)、第2グループについてもS80の第1グループに対する処理と同様に、第2グループ内の押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であるかを判断する(S83)。一方、第2グループがないと判断された場合(S82のNO)、不協和音判定の結果を和音とする(S84)。
【0077】
S83において、第2グループ内の押鍵された鍵の組み合わせが不協和音であると判断された場合(S83のYES)、不協和音判定の結果を不協和音とする(S81)。一方、第2グループ内の押鍵された鍵の組み合わせが不協和音でないと判断された場合(S83のNO)、不協和音判定の結果を和音とする(S84)。
4-2 第3実施形態の変形例
4-2-1 特殊発音処理(S19)の変形例1
上述の第1実施形態では、S19の特殊発音処理において、「やめて~」、「こわれちゃうよ~」などのフレーズを発音する場合について説明したが、第3実施形態では、押鍵された鍵の音高に関わらず、協和音を発音してもよい。
また、不協和音を構成する押鍵された鍵の組み合わせの一番低い音高を根音とした協和音を発音しても良い。
4-2-2 特殊発音処理(S19)の変形例2
第3実施形態では、第1グループ又は第2グループで押鍵された鍵の組み合わせに不協和音がある場合、特殊発音処理(S19)を行なう場合について説明したが、これに限られるものではない。
【0078】
例えば、第1グループ(左手)及び第2グループ(右手)に不協和音がある場合、第1グループにおいて不協和音を構成する押鍵された鍵の組み合わせの一番低い音高を根音とした協和音を発音するとともに、第2グループに対しては、第1グループの協和音よりも1オクターブ高い協和音を発音しても良い。
【0079】
また、第1グループ(左手)及び第2グループ(右手)に不協和音がある場合、第2グループにおいて不協和音を構成する押鍵された鍵の組み合わせの一番低い音高を根音とした協和音を発音するとともに、第1グループに対しては、第2グループの和音よりも1オクターブ低い協和音を発音しても良い。
4-2-3 和音のパターンデータ
第3実施形態では、ROM202に格納される和音のパターンデータは、三和音にパターンデータの場合について説明したが、四和音及び五和音についてのパターンデータについても記憶しても良い。
4-3 第3実施形態の効果
本発明の第3実施形態の電子鍵盤楽器100によれば、押鍵された鍵が不協和音であるかを判断し、不協和音である場合には、通常発音処理とは異なる特殊発音処理が行なわれるので、子供にとって、実施形態の電子鍵盤楽器100の演奏を飽きることなく、楽しむことができる。
【0080】
また、特殊発音処理にておいて、正しい和音を発音する場合、でたらめな押鍵を認識させる効果は軽減するが、どのような演奏をしてもある程度正しく鳴るため、子供に楽器と音楽を親しみを持ってもらう効果が期待できる。
【0081】
以上詳記したように、本発明の実施形態によれば、演奏を習得していない幼児や子供がでたらめに鍵盤101を叩いた場合に、単音の押鍵や不協和音にならない複数の押鍵では正しく発音され、そうでない場合は特殊な効果音や光鍵の効果を演出する。これにより、子供が電子楽器に親しみを持つと共に、どのようにすると正しく鍵盤が鳴るのかを子供が独力で習得することができる。
【0082】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0083】
なお、上記実施形態は、以下の付記を含むものである。
[付記1]
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備え、前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量とに基づいた第1波形データを作るための第1条件及び前記第1条件とは異なる第2条件のいずれかを満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により、前記第1条件を満たすと判断された場合に、前記第1波形データを音源に出力させる第1出力処理と、
前記判断処理により、前記第2条件を満たすと判断された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量との少なくとも一方に基づかない第2波形データを前記音源に出力させる第2出力処理と、
を実行することを特徴とする電子楽器。
[付記2]
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、前記指定された指定数を取得する指定数取得処理と、
前記指定された前記複数の操作子夫々に対応する複数のベロシティ情報を取得するベロシティ情報取得処理と、
を実行し、
前記第1条件を満たすと判断された場合は、前記第2条件を満たさないと判断された場合であり、
前記第2条件を満たすと判断された場合は、前記指定数取得処理により取得された前記指定数が所定数以上あり、かつ、前記ベロシティ情報取得処理により取得された前記複数のベロシティ情報が或る閾値に達している場合であることを特徴とする付記1に記載の電子楽器。
[付記3]
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、前記指定された前記複数の操作子の組み合わせが不協和音に該当するか否かを判断する不協和音判断処理、
を実行し、
前記第1条件を満たすと判断された場合は、前記第2条件を満たさないと判断された場合であり、
前記第2条件を満たすと判断された場合は、前記指定された前記複数の操作子の組み合わせが前記不協和音に該当する場合であることを特徴とする付記1に記載の電子楽器。[付記4]
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、前記指定された前記複数の操作子夫々に対応する複数の音高における夫々の音高差が、いずれも或る音高差以内であるか否かを判断する音高差判断処理、
を実行し、
前記第1条件を満たすと判断された場合は、前記第2条件を満たさないと判断された場合であり、
前記第2条件を満たすと判断された場合は、前記音高差判断処理により前記いずれも或る音高差以内であると判断された場合であることを特徴とする付記1に記載の電子楽器。[付記5]
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、指定された前記複数の操作子を少なくとも第1グループ及び第2グループのいずれかに分けるグループ分け処理、
を実行し、
前記音高差判断処理は、前記グループ分け処理によりグループ分けされた、前記第1グループ及び前記第2グループのいずれかに属する複数の操作子についての夫々の音高差を判断することを特徴とする付記4に記載の電子楽器。
[付記6]
前記制御部は、
前記第1条件及び前記第2条件のいずれかを満たすか否かを判断する前記判断処理により、前記第2条件を満たすと判断された場合に、或るパターンに基づいて、前記複数の操作子を光らせる点灯処理、
を実行することを特徴とする付記1乃至5のいずれかに記載の電子楽器。
[付記7]
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備える電子楽器の制御方法において、
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量とに基づいた第1波形データを作るための第1条件及び前記第1条件とは異なる第2条件のいずれかを満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により、前記第1条件を満たすと判断された場合に、前記第1波形データを音源に出力させる第1出力処理と、
前記判断処理により、前記第2条件を満たすと判断された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量との少なくとも一方に基づかない第2波形データを前記音源に出力させる第2出力処理と、
を実行することを特徴とする電子楽器の制御方法。
[付記8]
音高を指定するための複数の操作子と、
制御部と、
を備える電子楽器の制御を行なうプログラムにおいて、
前記制御部は、
前記複数の操作子が指定された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量とに基づいた第1波形データを作るための第1条件及び前記第1条件とは異なる第2条件のいずれかを満たすか否かを判断する判断処理と、
前記判断処理により、前記第1条件を満たすと判断された場合に、前記第1波形データを音源に出力させる第1出力処理と、
前記判断処理により、前記第2条件を満たすと判断された場合に、指定された操作子に応じた音高と指定にしたがった音量との少なくとも一方に基づかない第2波形データを前記音源に出力させる第2出力処理と、
を実行させることを特徴とする電子楽器のプログラム。
【符号の説明】
【0084】
100…電子鍵盤楽器、
101…鍵盤、
102…第1のスイッチパネル
103…第2のスイッチパネル、
104…LCD、
200…制御システム、
201…CPU、
202…ROM、
203…RAM、
204…音源LSI、
205…音声合成LSI、
206…キースキャナ、
207…LEDコントローラ、
208…LCDコントローラ、
209…システムバス、
210…タイマ、
211、212…D/Aコンバータ、
213…ミキサ、
214…アンプ