(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】成形用基材
(51)【国際特許分類】
B29B 15/12 20060101AFI20230912BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20230912BHJP
B29K 105/08 20060101ALN20230912BHJP
【FI】
B29B15/12
B32B5/28 A
B29K105:08
(21)【出願番号】P 2021508086
(86)(22)【出願日】2019-03-26
(86)【国際出願番号】 IB2019000337
(87)【国際公開番号】W WO2020194013
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】倉井 翔平
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/031111(WO,A1)
【文献】特開2011-121372(JP,A)
【文献】特開2011-84008(JP,A)
【文献】特開昭61-94726(JP,A)
【文献】特開2016-6131(JP,A)
【文献】特開2013-176876(JP,A)
【文献】特開2014-4797(JP,A)
【文献】国際公開第2017/115640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16、15/08-15/14
C08J 5/04-5/10、5/24
B32B 1/00-43/00
B29K 105:08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元に配向した強化繊維と、該強化繊維に含浸された樹脂と、を備えた成形用基材であって、
前記強化繊維は、互いに異なる3つ以上の配向角度で配向しており、
前記配向角度のうち1つまたは2つの配向角度で配向した前記強化繊維は連続繊維であり、
前記1つまたは2つの配向角度以外の配向角度で配向した前記強化繊維は、各繊維が前記成形用基材内において分断された状態で前記1つまたは2つの配向角度以外の配向角度で配向した不連続繊維であり、
前記連続繊維
が形成する全ての層の各々において、前記連続繊維は1つの配向角度で配向されている、成形用基材。
【請求項2】
前記配向角度のうち2つの配向角度で配向した前記強化繊維が連続繊維であり、前記2つの配向角度以外の配向角度で配向した前記強化繊維は不連続繊維であり、前記2つの配向角度の差の絶対値が85°以上95°以下である、請求項1に記載の成形用基材。
【請求項3】
前記不連続繊維である強化繊維は、各々の配向角度に対応する方向に引き揃えられ、前記樹脂とともに、前記連続繊維である強化繊維と交差しない層を形成している、請求項1または2に記載の成形用基材。
【請求項4】
互いに異なる配向角度で配向した前記不連続繊維である強化繊維は、それぞれ別の層を形成している、請求項3に記載の成形用基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形用基材に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2014-4797は、成形用複合材を開示している。この成形用複合材は、スキン層とコア層とを積層一体化して構成されている。スキン層は、強化繊維となる長繊維を面状に引き揃えてマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂材料により一体形成されている。
コア層は、面状に分布する短繊維をマトリックス樹脂となる熱可塑性樹脂材料により一体形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、二次元に配向した強化繊維に樹脂を含浸させてなる基材を三次元形状に賦形すると、少なくともその基材の一部が、強化繊維の配向に平行な面内でせん断変形する。この変形部分では、面内の主応力方向またはこれに近い方向に配向した強化繊維において、それ以外の方向に配向した強化繊維よりも大きな圧縮力または引張力が発生する。そして、せん断変形量がある限度を超えた場合には、上記圧縮力によって強化繊維が座屈したり、上記引張力によって基材表面に皺が生じたりして、成形品の見栄えが悪化する可能性がある。
【0004】
本発明の目的は、成形品の見栄えの悪化を抑制できる成形用基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様は、強化繊維が互いに異なる3つ以上の配向角度で配向した成形用基材である。この基材では、上記3つ以上の配向角度のうち1つまたは2つの配向角度で配向した強化繊維は連続繊維であり、それ以外の配向角度で配向した強化繊維は不連続繊維である。
【発明の効果】
【0006】
上記成形用基材によれば、成形品の見栄えの悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態にかかる成形用基材の分解斜視図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態のパターン要素を説明するための図である。
【
図3】
図3は、パターン要素がせん断変形した状態を示す図である。
【
図4】
図4は、成形品の見栄えを悪化させる要因を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態及びその変形例のパターン要素を示す図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態にかかる成形用基材の分解斜視図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態及びその変形例のパターン要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、いくつかの実施形態にかかる成形用基材について、図面を参照しながら説明する。
【0009】
<第1実施形態>
第1実施形態にかかる成形用基材M1は、二次元に配向した強化繊維Fと、強化繊維Fに含浸された樹脂Rと、を備えている。基材M1は、例えば、加熱プレス法、オートクレーブ法、熱成形法など、使用する樹脂Rの種類に応じた公知の成形方法で成形することで、所望の三次元形状を有する成形品に成形される。
【0010】
基材M1は、
図1に示すように、例えば8枚のプリプレグ1~8を積層して形成することができる。各プリプレグ1~8は、一方向に引き揃えられ実質的に互いに平行に配置された強化繊維Fに、マトリックス材としての樹脂Rを含浸させたシート状の複合材料である。各プリプレグ1~8の厚さは、特に限定されないが、例えば0.2mm~0.4mm程度である。
【0011】
プリプレグ1~8中の強化繊維Fは、プリプレグ1~8の積層方向と直交する方向、すなわち基材M1の厚さ方向と直交する方向(以下、面方向とも称する)に延びている。強化繊維Fの種類は、特に限定されず、例えば、炭素繊維、ガラス繊維、ポリアラミド繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維などを用いることができる。炭素繊維は、例えば、ポリアクリロニトリル(PAN系)、ピッチ系、セルロース系、炭化水素による気相成長系炭素繊維、黒鉛繊維などを用いることができる。これらの繊維を2種類以上組み合わせて用いてもよい。強化繊維Fの繊度、繊維本数、強度、弾性率等は、特に限定されない。各プリプレグ1~8における強化繊維Fの体積含有率は、特に限定されないが、成形時の強化繊維Fの過剰な流動を抑えつつ樹脂Rの適度な含浸状態を確保するべく、例えば30%~80%に設定することができる。
【0012】
マトリックス材としての樹脂Rは、特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂など公知の熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0013】
プリプレグ1~8の製法は、特に限定されず、使用する樹脂Rの種類等に応じて公知の方法を採用することができる。例えば、樹脂Rが熱硬化性樹脂である場合は、熱硬化性樹脂フィルムをシート状の繊維基材に積層成形して含浸させるホットメルト法や、熱硬化性樹脂を適当な溶媒を用いてワニス状にし、これを繊維基材に含浸させる溶剤法などを用いることができる。また、樹脂Rが熱可塑性樹脂である場合は、ホットメルト法、溶剤法、パウダー法、樹脂フィルム含浸法、コミングル法などを用いることができる。
【0014】
8枚のプリプレグ1~8は、
図1に示すように、プリプレグ1~8中の強化繊維Fが互いに異なる4つの配向角度で配向するように積層されている。プリプレグ1~8は、強化繊維Fが、例えば、
図1の上から順に0°/45°/90°/-45°/-45°/90°/45°/0°の配向角度で配向して、基材M1から得られる成形品が面方向において強度的に等方性を備えるように積層することができる。
【0015】
なお、「配向角度」とは、厚さ方向視における強化繊維Fの配向方向の角度である。すなわち、ある基準となる強化繊維Fの配向方向の角度を0°とし、この基準に対して、対象とする強化繊維Fの配向方向がなす角度である。角度の取り方は、基材M1の表側(
図1の上側)からみたときに、基準の配向方向から反時計回りを正とし、-90°より大きく90°以下の角度とする。
【0016】
また、強化繊維Fが「ある配向角度で配向した」状態とは、強化繊維Fの繊維配向パラメータfpが、0.95以上である状態をいう。繊維配向パラメータfpは、強化繊維Fの配向状態を表すパラメータであり、fp=1.0のとき、強化繊維Fが後述する基準線と平行に配向していることを意味し、fp=0.0のとき、強化繊維Fが完全にランダムに配向されていることを意味する。
【0017】
繊維配向パラメータfpは、次の方法で求めることができる。まず、基材M1から、評価対象となる強化繊維Fを含む、面方向に平行な面を切り出す。そして、この面を光学顕微鏡等で観察し、所定の測定領域で視認し得るすべての強化繊維F(繊維数:N本)の基準線に対する角度θiを測定する。ここで、角度θiは、基準線から反時計回りを正とし、-90°より大きく90°以下の角度とする。
【0018】
次に、得られた角度θiを、次式(1)に代入する。
fp=2×Σ(cos2θi/N)-1 ・・・式(1)
ただし、i=1~N
【0019】
基準線の方向は、評価対象となっている所定の測定領域内の強化繊維Fに対して、その繊維配向パラメータfpに最大値を与えるように選択される。選択された方向は、当該評価対象となっている強化繊維Fの配向方向として定義される。
【0020】
本実施形態では、
図1に示すように、4つの配向角度のうち、0°/90°の配向角度で配向した強化繊維Fが連続繊維CFである(2つの配向角度で配向した連続繊維CF同士の配向角度の差は90°である)。また、4つの配向角度のうち、0°/90°以外の45°/-45°の配向角度で配向した強化繊維Fが不連続繊維DFである。
図1における破線が不連続繊維DFを、実線が連続繊維CFを示している。
【0021】
ここで、「連続繊維CF」は、強化繊維Fを構成するフィラメントの平均繊維長が500mm以上の繊維であり、「不連続繊維DF」は、強化繊維Fを構成するフィラメントの平均繊維長が10mm以上500mm未満の繊維である。平均繊維長は、強化繊維Fを構成する各フィラメントの繊維長の二乗の総和を各フィラメントの繊維長の総和で除した値である。各フィラメントの繊維長は、フィラメントのそれぞれの長さを光学顕微鏡等で観察することにより測定することができる。本実施形態における不連続繊維DFのフィラメントの平均繊維長は、10mm以上200mm以下に設定するとよい。好ましくは、15mm以上100mm以下、さらに好ましくは、20mm以上100mm以下である。不連続繊維DFの平均繊維長を上記範囲内に設定することにより、基材M1の優れた賦形性を維持しつつ成形品の強度を良好なものとすることができる。
【0022】
不連続繊維DFである強化繊維Fは、各々の配向角度に対応する方向に引き揃えられ、樹脂Rとともに、連続繊維CFである強化繊維Fと交差しない層を形成してもよい。例えば、
図1に示すように、第2,4,5,7層目のプリプレグ2,4,5,7中の不連続繊維DFは、第1,3,6,8層目のプリプレグ1,3,6,8中の連続繊維CFと交差しない層を形成してもよい。また、互いに異なる配向角度で配向した不連続繊維DFである強化繊維Fは、それぞれ別の層を形成してもよい。例えば、
図1に示すように、第2,7層目のプリプレグ2,7中の不連続繊維DFである強化繊維Fは、第4,5層目のプリプレグ4,5中の不連続繊維DFである強化繊維Fと別の層を形成してもよい。
【0023】
ある配向角度で配向した不連続繊維DFは、例えば、以下の方法で得ることができる。すなわち、一方向に引き揃えられた連続繊維CFに樹脂Rを含浸させてなる一方向プリプレグに対し、例えば刃を押し付け、またはレーザー光を照射して、繊維と交差する角度に切込みを入れ、連続繊維CFを分断する方法である。これにより、一方向に引き揃えられ、実質的に互いに平行に配置された不連続繊維DFを得ることができる。各切込みの長さ、切込み同士の間の間隔は、必要とする不連続繊維DFの繊維長等に応じて適宜設定することができる。また、他の方法としては、例えば、予め繊維長を調整された不連続繊維DFと樹脂Rとを含む組成物を塑性域で押出成形し、これをシート状に加圧成形することで、不連続繊維DFが一定の方向に配向したプリプレグを得る方法などがある。
【0024】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。
【0025】
まず、説明の便宜のため、強化繊維Fの二次元配向の「パターン要素」を定義する。
図2は、4つの配向角度(0°/45°/90°/-45°)で配向した強化繊維Fから定義されるパターン要素を説明するための図である。同図においても、破線が不連続繊維DFを、実線が連続繊維CFを示している。いま、4つの配向角度(0°/45°/90°/-45°)のうち任意に3つの配向角度を選択すると、選択した配向角度の組み合わせから2つずつ三角形状のパターン要素を定義できる。例えば、0°/45°/90°を選択した場合は、パターン要素として三角形ABC及び三角形ACDを定義できる。また、0°/45°/-45°を選択した場合は、パターン要素として三角形ABE及び三角形CDEを定義できる。同様に他のパターン要素として、三角形ABD、BCD、BCE、及びADEを定義できる。すなわち、二次元に配向した強化繊維Fから定義されるパターン要素の最も単純な形状は、選択した3つの配向角度の強化繊維Fを辺とし、当該強化繊維F同士が交わる点を頂点とする三角形である。
【0026】
(1)4つの配向角度で配向した強化繊維Fがすべて連続繊維CFである基材(比較例)が三次元形状に賦形されるとき、各パターン要素は、
図3(特にU部)に示すように、強化繊維Fの配向に平行な面内でせん断変形しようとする。この変形部分では、三角形の角の大きさが変化し、三角形の辺を構成する強化繊維Fにおいて圧縮力または引張力が発生する。このため、せん断変形量がある限度を超えた場合には、
図4に示すように、圧縮力によって強化繊維Fが座屈したり(
図4のV部参照)、引張力によって基材表面に皺が生じたり(
図4のW部参照)して、成形品の見栄えが悪化する可能性がある。
【0027】
これに対し、本実施形態では、4つの配向角度のうち、2つの配向角度(0°/90°)で配向した強化繊維Fは連続繊維CFであり、それ以外の配向角度(45°/-45°)で配向した強化繊維Fは不連続繊維DFである。このため、いずれのパターン要素の三角形においても、少なくとも一辺が不連続繊維DFから構成されることとなる。不連続繊維DFは、分断された繊維同士が互いに繊維方向に相対移動できるため、連続繊維CFよりも軸力(圧縮力及び引張力)を伝えにくい。従って、パターン要素が面内せん断変形する際に、三角形の頂点すなわち不連続繊維DFとの交点を介して連続繊維CFに作用する力が低減される。このため、成形時、基材M1が三次元形状に賦形されるときに強化繊維Fに生じる軸力が低減され、強化繊維Fが座屈したり、基材M1表面に皺が生じたりすることが抑制される。これにより、成形品の見栄えの悪化が抑制される。また、強化繊維Fに生じる軸力が低減されることで、パターン要素の面内せん断変形を拘束する力が低減されるため、基材M1の賦形性が向上する。
【0028】
(2)また、本実施形態では、4つの配向角度のうち2つの配向角度で配向した強化繊維Fが連続繊維CFであり、それ以外の配向角度で配向した強化繊維Fが不連続繊維DFである。このため、1つの配向角度(例えば0°)で配向した強化繊維Fのみが連続繊維CFである場合と比較して、基材M1を成形して得られる成形品の引張強度が向上する。また、連続繊維CFの配向角度の差が90°であり、その差の絶対値が85°以上95°以下の範囲内にあるため、当該範囲外にある場合と比較して、成形品の機械的特性の等方性が向上する。
【0029】
(3)さらに、本実施形態では、不連続繊維DFである強化繊維Fが、各々の配向角度に対応する方向に引き揃えられ、樹脂Rとともに、連続繊維CFである強化繊維Fと交差しない層を形成している。従って、不連続繊維DFの層が連続繊維CFと交差する場合(例えば2軸織物プリプレグの経糸及び緯糸のうち一方のみに切込みを入れてこれを不連続繊維DFとした場合)と比較し、各々の不連続繊維DFがその繊維方向に移動しやすい。このため、不連続繊維DFから連続繊維CFに作用する力はさらに低減され、基材M1の賦形性がさらに向上する。
【0030】
(4)また、本実施形態では、互いに異なる配向角度で配向した不連続繊維DFである強化繊維Fが、それぞれ別の層を形成している。つまり、不連続繊維DFが配向角度ごとに別の層に配置される。従って、配向角度が異なる不連続繊維DFが同じ層に配置された場合(例えば2軸織物プリプレグの経糸及び緯糸の両方に切込みを入れてこれらを不連続繊維DFとした場合)と比較し、各々の不連続繊維DFが繊維方向に移動しやすい。このため、基材M1の賦形性がより一層向上する。
【0031】
なお、第1実施形態では、連続繊維CFが0°/90°に配向し、不連続繊維DFが45°/-45°に配向していたが、連続繊維CF及び不連続繊維DFの配向角度の組み合わせは、これに限定されない。例えば、
図5のパターンP1~P10に示すように、4つの配向角度のうちいずれか1つまたは2つの配向角度で配向した強化繊維Fを連続繊維CFとし、当該1つまたは2つの配向角度以外の配向角度で配向した強化繊維Fを不連続繊維DFとすることができる。
図5中、「CF」は連続繊維CFを表し、「DF」は不連続繊維DFを表す。「パターン要素」の欄の1列目が、
図2の三角形ABCのパターン要素を、2~4列目が三角形ABD、三角形ABE、三角形ADEのパターン要素をそれぞれ例示している。
図5から明らかなように、パターンP1~P10のいずれにおいてもパターン要素の三角形の少なくとも一辺が不連続繊維DFから構成されるため、上記の効果を得ることができる。なお、同図のパターンP2は、第1実施形態に相当している。
【0032】
<第2実施形態>
第2実施形態にかかる基材M2について、
図6及び
図7を参照して説明する。なお、第2実施形態では、第1実施形態と異なる構成について説明することとし、既に説明した構成と同様の機能を有する構成については、同様の符号を付して説明を省略する。
【0033】
第2実施形態にかかる成形用基材M2は、
図6に示すように、例えば6枚のプリプレグ11~16を積層して形成することができる。
【0034】
6枚のプリプレグ11~16は、
図6に示すように、プリプレグ11~16中の強化繊維Fが互いに異なる3つの配向角度で配向するように積層されている。プリプレグ11~16は、強化繊維Fが、例えば、
図6の上から順に、0°/60°/-60°/-60°/60°/0°の配向角度で配向して、基材M2から得られる成形品が面方向において強度的に等方性を備えるように積層することができる。
【0035】
本実施形態では、
図6に示すように、3つの配向角度のうち、0°/-60°の配向角度で配向した強化繊維Fが連続繊維CFである。また、3つの配向角度のうち、0°/-60°以外の60°の配向角度で配向した強化繊維Fが不連続繊維DFである。
図6における破線が不連続繊維DFを、実線が連続繊維CFを示している。
【0036】
また、本実施形態においても、不連続繊維DFである強化繊維Fは、各々の配向角度に対応する方向に引き揃えられ、樹脂Rとともに、連続繊維CFである強化繊維Fと交差しない層を形成してもよい。例えば、
図6に示すように、第2,5層目のプリプレグ12,15中の不連続繊維DFは、第1,3,4,6層目のプリプレグ11,13,14,16中の連続繊維CFと交差しない層を形成してもよい。また、互いに異なる配向角度で配向した不連続繊維DFである強化繊維Fは、それぞれ別の層を形成してもよい。例えば、
図6に示すように、第2層目のプリプレグ12中の不連続繊維DFは、第4層目のプリプレグ14中の不連続繊維DFと別の層を形成してもよい。
【0037】
以下、本実施形態の作用効果について説明する。本実施形態では、3つの配向角度(0°/60°/-60°)に配向した強化繊維Fから、正三角形状のパターン要素を定義できる。
【0038】
本実施形態では、3つの配向角度のうち、2つの配向角度(0°/-60°)で配向した強化繊維Fは連続繊維CFであり、それ以外の配向角度(60°)で配向した強化繊維Fは不連続繊維DFである。このため、パターン要素の三角形の少なくとも一辺は不連続繊維DFから構成される。従って、本実施形態においても、上記(1)の効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施形態では、不連続繊維DFである強化繊維Fが、各々の配向角度に対応する方向に引き揃えられ、樹脂Rとともに、連続繊維CFである強化繊維Fと交差しない層を形成している。さらに、互いに異なる配向角度で配向した不連続繊維DFである強化繊維Fが、それぞれ別の層を形成している。従って、本実施形態においても、上記(3)及び(4)の効果を得ることができる。
【0040】
なお、第2実施形態では、連続繊維CFが0°/-60°に配向し、不連続繊維DFが60°に配向していたが、連続繊維CF及び不連続繊維DFの配向角度の組み合わせは、これに限定されない。例えば、
図7のパターンP11~P16に示すように、3つの配向角度のうちいずれか1つまたは2つの配向角度で配向した強化繊維Fを連続繊維CFとし、当該1つまたは2つの配向角度以外の配向角度で配向した強化繊維Fを不連続繊維DFとすることができる。
図7中、「CF」は連続繊維CFを表し、「DF」は不連続繊維DFを表す。「パターン要素」の欄は、パターンP11~P16の各パターン要素を例示している。
図7から明らかなように、パターンP11~P16のいずれにおいてもパターン要素の三角形の少なくとも一辺が不連続繊維DFから構成されるため、上記の効果を得ることができる。なお、同図のパターンP12は、第2実施形態に相当している。
【0041】
以上の説明において、「二次元に配向した強化繊維F」とは、基材の面方向に配向した強化繊維Fを意味する。基材の厚さ方向に配向した強化繊維、及び、ランダムに配向した強化繊維は、「二次元に配向した強化繊維F」に含まない。「二次元に配向した強化繊維F」の形態は、特に限定されず、上記のように強化繊維Fを一方向に引き揃えてシート状に並べたものの他、2軸織物または3軸織物のように面方向に延びる強化繊維Fが互いに交錯している場合を含む。従って、上記実施形態及び変形例にかかる基材M1,M2のいずれか1つ以上の層における強化繊維Fの形態は、2軸織物または3軸織物であってもよい。2軸織物としては、例えば、平織、綾織、朱子織等の方法で製織した織物が挙げられる。
【0042】
さらに、基材M1,M2の各層の強化繊維Fの配向角度の順序は、上記実施形態及び変形例のものに限定されない。例えば、第1実施形態では、
図1の上から順に、0°/45°/90°/-45°/-45°/90°/45°/0°であったが、45°/-45°/0°/90°/90°/-45°/45°であってもよい。また、基材M1,M2の層数、またはプリプレグの枚数は、上記のものに限らない。さらに、基材M1,M2の各層は、成形品が面方向において強度的に異方性を備えるように積層してもよい。また、
図5及び
図7に示したパターンP1~P16は、いずれか2以上を組み合わせて採用してもよい。
【0043】
以上、いくつかの実施形態及び変形例について説明したが、これらの実施形態等は発明の理解を容易にするために記載された単なる例示に過ぎない。発明の技術的範囲は、上記実施形態等で開示した具体的な技術事項に限らず、そこから容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
成形用基材M1,M2は、所望の三次元形状を有する成形品に成形することができる。得られた成形品は、例えば、フード、フロアパネル、ドアパネル、バンパー、トランクリッド、リアゲート、フェンダパネル、サイドボディパネル、ルーフパネルなど自動車等車両の構成部材として利用することができる。また、成形品は、航空機、船舶、鉄道車両など輸送機、家庭用電気製品、発電設備、生産機械、住宅機材、家具、レジャー用品などの構成部材として利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
M1,M2 成形用基材
F 強化繊維
R 樹脂
CF 連続繊維
DF 不連続繊維