(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 50/262 20210101AFI20230912BHJP
H01M 50/271 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230912BHJP
H01M 50/342 20210101ALI20230912BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20230912BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20230912BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20230912BHJP
H01G 11/12 20130101ALI20230912BHJP
H01G 11/78 20130101ALI20230912BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20230912BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/271 S
H01M50/233
H01M50/284
H01M50/342 201
H01M10/613
H01M10/6568
H01M10/625
H01G11/12
H01G11/78
H01M50/271 B
H01M10/6557
(21)【出願番号】P 2021569774
(86)(22)【出願日】2020-12-07
(86)【国際出願番号】 JP2020045536
(87)【国際公開番号】W WO2021140808
(87)【国際公開日】2021-07-15
【審査請求日】2022-06-08
(31)【優先権主張番号】P 2020002182
(32)【優先日】2020-01-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140682
【氏名又は名称】妙摩 貞茂
(72)【発明者】
【氏名】秋山 泰有
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/172157(WO,A1)
【文献】特開2013-084459(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0244393(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M50/20-50/298
H01G 2/10
H01G11/12
H01G11/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電極を含む蓄電モジュールを少なくとも1つ含むモジュール積層体と、
前記モジュール積層体を収容する第1の密閉空間を構成する筐体と、を備え、
前記筐体は、
前記モジュール積層体における積層方向に沿って延在する筒状の側壁、及び、側壁の一端を閉塞する板状の底壁を含む筐体本体と、前記側壁の他端に接合される蓋体と、を有しており、
前記第1の密閉空間の内外の気圧差によって、前記底壁と前記蓋体との少なくとも一部が互いに近付くように変形することにより前記第1の密閉空間内で前記モジュール積層体を前記電極の積層方向に拘束している、
蓄電装置。
【請求項2】
前記筐体の内壁面と前記モジュール積層体との間に配置される中間部材をさらに備え、
前記中間部材は、内側に第2の密閉空間を有する変形可能なパッケージを有し、
前記第2の密閉空間には流体が含まれている、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記流体は、少なくとも気体を含み、
前記第1の密閉空間の気圧は、前記第2の密閉空間の気圧よりも小さい、請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記蓋体は、板状の中央部と、前記中央部の周縁に形成される易変形部とを含み、
前記易変形部は、前記中央部よりも剛性が小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記蓋体は、前記易変形部の周縁を囲む周縁部を含み、
前記易変形部は、前記周縁部の内縁から前記中央部の外縁にかけて
前記積層方向において前記筐体本体から離れる方向に傾斜している、請求項4に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記第1の密閉空間内には、ガスを吸着する吸着剤が設けられている、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第1の密閉空間内には、前記モジュール積層体に電気的に接続された電子機器が配置されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記電子機器の前記積層方向の寸法は、前記底壁及び前記蓋体における前記モジュール積層体を拘束する部分間の前記積層方向の寸法よりも小さい、請求項7に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記筐体の側壁には、前記電子機器に隣接する第1の側壁を含み、
前記第1の側壁は、前記蓋体及び前記底壁に比べて厚くなっている、請求項7又は8に記載の蓄電装置。
【請求項10】
前記底壁の内面は、前記電子機器が設けられた位置よりもモジュール積層体が設けられた位置を低くする段差を有する、請求項7~9のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項11】
前記電子機器には、前記モジュール積層体に接続される複数の第1端子と、前記筐体の外部に接続される複数の第2端子とが接続され、
前記複数の第2端子の本数は、前記複数の第1端子を合計した本数より少ない、請求項7~10のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項12】
前記筐体の側壁には、前記第1の密閉空間の圧力が大気圧以上になったときに開口する弁が設けられている、請求項1~11のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項13】
前記モジュール積層体が設けられた位置における前記底壁の厚さは、前記底壁の他の部分の厚さよりも薄くなっている、請求項1~12のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項14】
前記筐体には、前記第1の密閉空間を大気圧に対して減圧するための減圧ポンプが設けられている、請求項1~13のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項15】
前記モジュール積層体は、冷却用流体が通る流路を含む熱交換器を有し、
前記流路は、前記筐体を通した供給管に接続され、
前記供給管を流れる前記冷却用流体は、前記熱交換器と前記筐体の外部との間で循環する、請求項1~14のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のバイポーラ電池を備えた蓄電装置が知られている(例えば特許文献1)。この蓄電装置では、複数のバイポーラ電池が集電体を挟んで互いに積層されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電モジュールがバイポーラ電池によって構成されている場合、積層された複数の蓄電モジュールを積層方向に所定の押圧力で拘束することが考えられる。この場合、積層された複数の蓄電モジュールを拘束するのに手間がかかることがある。より簡便に複数の蓄電モジュールを拘束する技術が求められている。
【0005】
本開示は、複数の蓄電モジュールが積層された積層体を容易に拘束できる蓄電装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る蓄電装置は、積層された複数の電極を含む蓄電モジュールを少なくとも1つ含むモジュール積層体と、モジュール積層体を収容する第1の密閉空間を構成する筐体と、を備え、筐体は、モジュール積層体における積層方向に沿って延在する筒状の側壁、及び、側壁の一端を閉塞する板状の底壁を含む筐体本体と、側壁の他端に接合される蓋体と、を有しており、第1の密閉空間の内外の気圧差によって、底壁と蓋体との少なくとも一部が互いに近付くように変形することにより第1の密閉空間内でモジュール積層体を電極の積層方向に拘束している。
【0007】
上記の蓄電装置では、第1の密閉空間の内外の気圧差によって底壁と蓋体との少なくとも一部が互いに近付くように変形し、この変形した筐体によってモジュール積層体が拘束される。すなわち、第1の密閉空間にモジュール積層体が配置された状態で、第1の密閉空間の内外で気圧差を生じさせるだけで、モジュール積層体が拘束される。
【0008】
蓄電装置は、筐体の内壁面とモジュール積層体との間に配置される中間部材をさらに備え、中間部材は、内側に第2の密閉空間を有する変形可能なパッケージを有し、第2の密閉空間には少なくとも気体が含まれており、第1の密閉空間の気圧は、第2の密閉空間の気圧よりも低くてもよい。この構成では、筐体の内壁面とモジュール積層体との間に配置される中間部材が、第1の密閉空間と第2の密閉空間との気圧差によって膨張するように変形する。これにより、中間部材がダンパーとして機能し得る。
【0009】
蓋体は、板状の中央部と、中央部の周縁に形成される易変形部とを含み、易変形部は、中央部よりも剛性が小さくてもよい。この構成では、剛性の小さい易変形部によって筐体の変形性が確保されつつ、板状の中央部と板状の底壁とによってモジュール積層体を適切に挟持することができる。
【0010】
第1の密閉空間内には、ガスを吸着する吸着剤が設けられていてもよい。この構成では、吸着剤によって、第1の密閉空間内のガスが吸着されることで、第1の密閉空間内の気圧の変動を抑制できる。
【0011】
第1の密閉空間内には、モジュール積層体に電気的に接続された電子機器が配置されていてもよい。この構成では、筐体内から外に出る配線数が少なくなるため、筐体内の気密性が保持されやすい。
【0012】
電子機器の積層方向の寸法は、底壁及び蓋体におけるモジュール積層体を拘束する部分間の積層方向の寸法よりも小さくてもよい。この構成では、モジュール積層体に拘束荷重が付与される際に、電子機器に拘束荷重が付与されることが抑制される。
【0013】
筐体の側壁は、電子機器に隣接する第1の側壁を含み、第1の側壁は、蓋体及び底壁に比べて厚くなっていてもよい。この構成では、筐体のうちの電子機器に対応する部分が変形し難いことにより、電子機器の損傷が低減される。
【0014】
底壁の内面は、電子機器が設けられた位置よりもモジュール積層体が設けられた位置を低くする段差を有してもよい。この構成では、モジュール積層体及び電子機器を所定の位置に配置しやすい。
【0015】
筐体の側壁には、第1の密閉空間の圧力が大気圧以上になったときに開口する弁が設けられていてもよい。この構成では、安価な弁を用いて、筐体内の圧力調整を行うことができる。
【0016】
モジュール積層体が設けられた位置における底壁の厚さは、底壁の他の部分の厚さよりも薄くなっていてもよい。この場合、底壁は、モジュール積層体が設けられた位置において変形しやすくなっている。
【0017】
筐体には、第1の密閉空間を大気圧に対して減圧するための減圧ポンプが設けられていてもよい。この構成では、筐体内が減圧された状態を維持することができる。
【発明の効果】
【0018】
本開示によれば、複数の蓄電モジュールが積層された積層体を容易に拘束できる蓄電装置が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、一例に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の蓄電装置に含まれる蓄電モジュールの概略断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の蓄電装置において、筐体内が大気圧である状態を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、他の例に係る蓄電装置を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら本開示の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0021】
図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられ得る。蓄電装置1は、モジュール積層体2と、モジュール積層体2を収容する筐体4と、を備える。以下、筐体4内におけるモジュール積層体2の積層方向をZ方向とし、Z方向と交差(例えば直交)する方向をX方向とし、Z方向及びX方向と交差(例えば直交)する方向をY方向とする。一例において、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向(鉛直方向)であってよい。
【0022】
モジュール積層体2は、蓄電モジュール11と、正極集電板31と、負極集電板33と、熱交換器30とを含んでいる。一例では、複数(図示例では2つ)の蓄電モジュール11のそれぞれが正極集電板31と負極集電板33とに挟まれている。蓄電モジュール11は熱交換器30間に挟まれた位置に配置されている。モジュール積層体2を構成する各部材(蓄電モジュール11、正極集電板31、負極集電板33、熱交換器30)同士は、例えば互いに離間可能に積層されていてもよい。
【0023】
蓄電モジュール11は、Z方向から見て例えば略矩形状を呈する。蓄電モジュールは、
図2に示されるように、Z方向に積層された複数の単電池を含む。蓄電モジュール11は、略直方体形状を呈する。蓄電モジュール11は、例えば、ニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池である。蓄電モジュール11は、電気二重層キャパシタでもよい。蓄電モジュール11は、全固体電池でもよい。本実施形態の蓄電モジュール11は、バイポーラ型のリチウムイオン二次電池である。
【0024】
蓄電モジュール11は、積層体14と、封止部材15と、を備える。積層体14は、複数のバイポーラ電極(電極)16と複数のセパレータ17とを含む電極群114と、正極終端電極(終端電極)18と、負極終端電極(終端電極)19と、を有する。複数のバイポーラ電極16と、複数のセパレータ17とは、Z方向に沿って交互に配置されている。積層体14は、Z方向に交差する一対の主面及び主面をつなぐ外周面(側面)を有する。
【0025】
複数のバイポーラ電極16のそれぞれは、電極体21と、正極層22と、負極層23とを備える。電極体21は、Z方向に交差する一対の主面21a,21bを有する。電極体21の主面(一方の面)21a上には正極層22が設けられ、電極体21の主面(他方の面)21b上には負極層23が設けられる。このため、電極体21は、Z方向に沿って正極層22と負極層23とによって挟まれている。
【0026】
電極体21は、シート状の導電部材である。電極体21は、積層方向から見て略矩形状を呈している。電極体21は、例えば、電極体21の主面21aを構成する正極層22が設けられる金属箔と電極体21の主面21bを構成する負極層23が設けられる金属箔とを含む複数の金属箔が一体化された構造を有する。複数の金属箔は、複数の金属箔の正極層22又は負極層23が設けられていない面同士が互いに接合又は当接することで一体化されている。各金属箔は、例えば、銅箔、アルミニウム箔、チタン箔、もしくはニッケル箔である。各金属箔は、例えば、ステンレス鋼箔(例えばJIS G 4305:2015にて規定されるSUS304、SUS316、SUS301等)、メッキ処理が施された鋼箔(例えばJIS G 3141:2005にて規定される冷間圧延鋼箔(SPCC等))、又はメッキ処理が施されたステンレス鋼箔であってもよいし、銅、アルミニウム、チタン及びニッケルからなる群から選ばれる2種以上の金属を含む合金箔であってもよい。機械的強度を確保する観点から、電極体21はアルミニウム箔を含んでもよい。金属箔の表面にはアルミニウムが被覆されていてもよい。電極体21の厚みは、例えば、5μm以上70μm以下である。なお、電極体21は、複数の金属箔が一体化された構造に限定されず、例えば一枚の金属箔によって構成されてもよい。
【0027】
正極層22は、正極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。正極層22は、略矩形状を呈している。本実施形態の正極活物質は、例えば、複合酸化物、金属リチウム、及び硫黄等である。複合酸化物の組成には、例えば、鉄、マンガン、チタン、ニッケル、コバルト、及びアルミニウムの少なくとも1つと、リチウムとが含まれる。複合酸化物の例には、オリビン型リン酸鉄リチウム(LiFePO4)が挙げられる。結着剤は、活物質又は導電助剤を電極体21の表面に繋ぎ止め、電極中の導電ネットワークを維持する役割を果たすものである。結着剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂、ポリイミド、ポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、アクリル酸やメタクリル酸などのモノマー単位を含むアクリル系樹脂、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム等のアルギン酸塩、水溶性セルロースエステル架橋体、デンプン-アクリル酸グラフト重合体を例示することができる。これらの結着剤は、単独で又は複数で採用され得る。
【0028】
導電助剤は、例えば、アセチレンブラック、カーボンブラック、グラファイト等である。粘度調整溶媒は、例えば、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等である。
【0029】
負極層23は、負極活物質と導電助剤と結着剤とを含む層状部材である。負極層23は、略矩形状を呈している。本実施形態の負極活物質は、例えば、黒鉛、人造黒鉛、高配向性グラファイト、メソカーボンマイクロビーズ、ハードカーボン、ソフトカーボン等のカーボン、金属化合物、リチウムと合金化可能な元素もしくはその化合物、ホウ素添加炭素等である。リチウムと合金化可能な元素の例としては、シリコン(ケイ素)及びスズが挙げられる。導電助剤及び結着剤は正極層22と同様のものを用いることができる。
【0030】
正極終端電極18は、積層体14のZ方向における一方の端部に設けられている。正極終端電極18は、電極体21の一方の主面21aにのみ上記の正極層(活物質)22が設けられた電極である。すなわち、Z方向において積層体14の一端に配置される電極体21の主面21b上には、負極層23が配置されていない。
【0031】
負極終端電極19は、積層体14のZ方向における他方の端部に設けられている。負極終端電極19も、正極終端電極18と同様に、電極体21の一方の主面21bにのみ負極層(活物質)23が設けられた電極である。すなわち、Z方向において積層体14の他端に配置される電極体21の主面21a上には、正極層22が配置されていない。
【0032】
セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間のそれぞれを隔てる層状部材である。セパレータ17は、積層方向から見て略矩形状を呈している。セパレータ17は、隣り合うバイポーラ電極16,16の間、バイポーラ電極16と正極終端電極18との間、及びバイポーラ電極16と負極終端電極19との間の短絡を防止する部材である。セパレータ17の厚みは、例えば、1μm以上20μm以下である。
【0033】
セパレータ17は、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルムである。セパレータ17は、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等でもよい。セパレータ17は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されてもよい。
【0034】
封止部材15は、積層体14に含まれる複数のバイポーラ電極16、複数のセパレータ17、正極終端電極18、及び負極終端電極19を保持する部材である。封止部材15は、絶縁性を有している。より詳細には、封止部材15は、各電極が有する電極体21の間隔を保持することで、バイポーラ電極16、正極終端電極18、及び負極終端電極19を構成する電極体21を保持している。封止部材15は、積層体14の外周面(側面)を封止するように略矩形枠形状を呈する。封止部材15は、積層体14内のバイポーラ電極16同士の短絡、バイポーラ電極16と正極終端電極18との短絡、及び、バイポーラ電極16と負極終端電極19との短絡を防止し得る。
【0035】
封止部材15を形成する材料の例には、耐熱性を示す樹脂部材等が含まれ得る。耐熱性を示す樹脂部材の例には、ポリイミド、ポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)及びPA66等が含まれる。封止部材15の厚みは、例えば、10μm以上20μm以下である。
【0036】
封止部材15によって封止された空間Sには、電解液が収容されている。電解液の例は、カーボネート系又はポリカーボネート系の電解液である。電解液に含まれる支持塩は、例えばリチウム塩である。リチウム塩は、例えば、LiBF4、LiPF6、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2C2F5)2、もしくはこれらの混合物である。
【0037】
再び
図1を参照する。蓄電モジュール11の一方面には正極集電板31が配置されている。蓄電モジュール11の他方面には負極集電板33が配置されている。正極集電板31は、蓄電モジュール11を構成する正極終端電極18に対面している。正極集電板31は、正極終端電極18に電気的に接続される。負極集電板33は、蓄電モジュール11を構成する負極終端電極19に対面している。負極集電板33は、負極終端電極19に電気的に接続される。正極集電板31及び負極集電板33は、蓄電モジュール11の正極端子及び負極端子として機能する。以下の説明において、正極集電板31及び負極集電板33の総称として集電板35を用いる場合がある。
【0038】
Z方向において互いに隣り合う集電板35同士の間には熱交換器30が配置されている。また、Z方向を上下方向とした場合、上端に配置された集電板35の上部、及び、下端に配置された集電板35の下部には、熱交換器30が配置されている。図示例では、Z方向において互いに隣り合う正極集電板31同士の間、Z方向の上端に配置された負極集電板33の上部、及び、Z方向の下端に配置された負極集電板33の下部に、それぞれ熱交換器30が配置されている。
【0039】
熱交換器30は、正極集電板31又は負極集電板33を介して隣り合う蓄電モジュール11と熱交換を行う。熱交換器30は、例えば蓄電モジュール11において発生した熱を蓄電装置1の外部に放出する放熱板である。熱交換器30は、Z方向から見て略矩形状を呈する。熱交換器30の内部には、例えば水、油、空気等の冷却用流体が通る流路(図示省略)が形成されている。
【0040】
本実施形態において、互いに隣り合う蓄電モジュール11では、対面する終端電極(正極終端電極18、負極終端電極19)が同極となるように配置されている。そのため、互いに隣り合う蓄電モジュール11同士の間に配置される一対の集電板35も同極となっている。図示例では、一方の蓄電モジュール11の正極終端電極18と他方の蓄電モジュール11の正極終端電極18とが互いに対面している。そのため、一対の蓄電モジュール11同士の間には一対の正極集電板31が配置されている。一対の蓄電モジュール11間において、熱交換器30は、一方の蓄電モジュール11に当接された正極集電板31と他方の蓄電モジュール11に当接された正極集電板31との間に配置されている。
【0041】
正極集電板31及び負極集電板33は、例えば、銅板、アルミニウム板、チタン板、もしくはニッケル板等の導電板である。正極集電板31は、Z方向から見てバイポーラ電極16及びセパレータ17に重なっている。正極集電板31は、略矩形状を呈している。正極集電板31の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。また、負極集電板33は、Z方向から見て例えば略矩形状を呈している。負極集電板33の厚みは、例えば、1mm以上5mm以下である。
【0042】
一例のモジュール積層体2では、蓄電モジュール11同士の間において、互いに隣り合う部材(蓄電モジュール11、正極集電板31、負極集電板33、熱交換器30)の少なくとも一つのペアが互いに離間可能に積層されている。本実施形態では、蓄電モジュール11と当該蓄電モジュール11に隣接される集電板35とは、接着剤等によって互いに接着(固定)されていない。また、負極集電板33と熱交換器30との間にも接着剤等の接着(固定)手段が設けられていない。
【0043】
一例の筐体4は、ケース(筐体本体)3と、カバー(蓋体)5とを有する。ケース3及びカバー5は、例えば、ステンレス鋼等の金属材料又は樹脂材料によって形成されていてよい。なお、一例では、ケース3及びカバー5は、気体又は液体の透過率を低くするために、表面又は内部に金属層を有していてもよい。ケース3は、Z方向から見て略矩形状をなす有底筒状を有し、Z方向の一方の端部(図示例では上端)に開口3aを有する。ケース3の内側に形成された空間SPには、モジュール積層体2が収容され得る。図示例のケース3は、側壁3bと、底壁3cと、鍔3dとを有する。一例の側壁3bは、内側に直方体状の空間SPが形成されるように、Z方向から見て矩形状をなしている。すなわち、側壁3bは、モジュール積層体2における積層方向(Z方向)に沿って延在する。図示例において、Z方向における側壁3bの長さは、モジュール積層体2よりも小さくなっているが、大きくなっていてもよい。
【0044】
なお、図示例の側壁3bには、圧力調整部3eが形成されていてもよい。一例において、圧力調整部3eは、上下方向(Z方向)において、側壁3bの中央よりも上側に配置されている。圧力調整部3eは、例えば、後述する中間部材45の上端よりも上側であって、鍔3dよりも下側に位置している。圧力調整部3eは、筐体4内にガスが発生して筐体4の内圧が所定の大きさを超えたときに、筐体4内のガスを外部に排出し得る。一例の圧力調整部3eは、筐体4内の圧力が大気圧以上になったときに開口する弁である。
【0045】
底壁3cは、Z方向における側壁3bの他方の端部を閉塞している。図示例では、側壁3bの下端に底壁3cが形成されている。底壁3cは、側壁3bの下端に接続されている。底壁3cは、XY平面に延在する板状をなしている。鍔3dは、Z方向における側壁3bの他方の端部に形成されている。鍔3dは、Z方向から見て、側壁3bの外形よりも大きな矩形状をなしている。鍔3dは、側壁3bの上端を基端として、XY平面に沿って、側壁3bの外側に向かって突出している。
【0046】
カバー5は、ケース3の開口3aを閉塞する部材である。一例のカバー5は、Z方向から見てケース3と同様に略矩形状をなしている。カバー5は、鍔3dと略同じ大きさの外形を有する。カバー5は、鍔3dに対面する周縁部5aと、カバー5の中央を構成する矩形板状をなす中央部5bと、周縁部5aと中央部5bとを接続する接続部(易変形部)5cとを含む。周縁部5aは、Z方向から見て、鍔3dと同じ外形を有する矩形枠状をなしている。周縁部5aの内縁は、Z方向から見て、側壁3bの内周よりも内側に位置している。一例においては、周縁部5aと鍔3dとが溶着されることによって、ケース3とカバー5とが接続されている。これにより、筐体4の内側に密閉空間(第1の密閉空間)SSが形成される。
【0047】
一例において、密閉空間SS内の気圧(内圧)は、密閉空間SS外の気圧(外圧)よりも低くなっている。本実施形態における蓄電装置は、大気圧下での使用が想定されているため、密閉空間SS内の気圧は大気圧未満である。例えば、密閉空間SSは、真空引きされていてもよい。一例においては、真空引きされたチャンバ内でケース3の鍔3dとカバー5の周縁部5aとが溶着されてもよい。なお、図示例では、密閉空間SS内には、ガス及び水分を吸着する吸着剤7が設けられている。例えば、蓄電モジュール11からガス及び水分が密閉空間SS内に排出された場合、当該ガス及び水分は吸着剤7によって吸着される。吸着剤7は、例えばシリカゲル、活性アルミナ、活性炭などによって形成されていてもよい。
【0048】
中央部5bは、Z方から見て、モジュール積層体2と略同じ大きさを有している。一例の中央部5bは、周縁部5aよりも、Z方向において上側に位置している。接続部5cは、中央部5bの外縁と周縁部5aの内縁とを接続している。図示例では、接続部5cは、周縁部5aの内縁から中央部5bの外縁にかけて上向きに傾斜している。なお、中央部5bは、周縁部5aよりも、Z方向において下側に位置していてもよい。その場合、接続部5cは、周縁部5aの内縁から中央部5bの外縁にかけて下向きに傾斜する。一例においては、接続部5cの弾性は、筐体4の他の部分に比べて大きくなっていてもよい。換言すれば、接続部5cの剛性は、筐体4の他の部分に比べて小さくなっていてもよい。すなわち、接続部5cは、筐体4の他の部分に比べて、外力の影響によって変形しやすくてもよい。例えば、接続部5cの板厚は、中央部5b及び周縁部5aの板厚よりも小さくてもよい。なお、接続部5cの板厚とは、接続部5cのZ方向に交差する面に直交する方向(すなわちZ方向を接続部5cの傾斜分だけ傾斜させた方向)における厚みである。また、中央部5b及び周縁部5aの板厚とは、中央部5b及び周縁部5aのZ方向に交差する面に直交する方向(すなわちZ方向)における厚みである。接続部5cは、密閉空間SSの内外の気圧差によって、撓むように変形し得る。一例では、密閉空間SSの内圧が外部の気圧よりも低くなっているため、中央部5bがZ方向の下側に移動するように、接続部5cが撓み得る。
【0049】
一例のモジュール積層体2は、中間部材40を介して、一対の中央部3f,5bに挟持されている。ケース3の底壁3cとモジュール積層体2との間には中間部材41が配置されている。カバー5に形成された中央部5bとモジュール積層体2との間には中間部材43が配置されている。また、図示のように、側壁3bとモジュール積層体2との間には、モジュール積層体2及び側壁3bの内面(内壁面)の両方に接触するように中間部材45が配置されていてもよい。例えば、中間部材45は、2つの蓄電モジュール11に接触するように、Z方向において、一方の蓄電モジュール11の位置と他方の蓄電モジュール11の位置とを含むように延在している。
【0050】
中間部材40は、内側に密閉空間(第2の密閉空間)SS2を形成するパッケージ40aと、パッケージ40aの密閉空間SS2に封入された流体40bと、を含む。パッケージ40aは、拘束荷重に応じて変形可能な柔軟な材質によって構成されている。パッケージ40aの材質は、例えば樹脂であって、一例として、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等の絶縁性を有するポリオレフィン系樹脂等である。流体40bは、気体、液体、ゲル、又は、それらの混合物であってよい。さらに、流体40bは、気体、液体、ゲル、又はそれらの混合物に対して、粉末(一例として消火剤)が混合されたものとされ得る。流体40bの材料は、例えば、使用環境で凍結、気化しない液体で例えばオイル、またはクーラントで使用しているLLC(不凍液)とすることができる。このように、中間部材40は、ガスパック、液パック、又はゲルパックとして構成されている。
【0051】
一例において、流体40bは、空気等の気体を含んでいる。密閉空間SSの気圧は、密閉空間SS2の気圧よりも低くなっている。そのため、密閉空間SSと密閉空間SS2との気圧差によって、パッケージ40aは自然状態(無負荷状態)にあるときよりも、膨張している。
【0052】
図3は、自然状態、すなわち、密閉空間SSの内圧が大気圧と同じ状態のときの蓄電装置1を示す。
図3に示すように、自然状態では、気圧差の影響がないことによって、接続部5cに外力が加わっていない。一例の中央部5bは、
図1の状態に比べて、(上下方向Z方向)において上側に位置していてもよい。また、自然状態では、気圧差の影響がないことによって、パッケージ40aが膨張していなくてもよい。一例のパッケージ40aは、
図1の状態に比べて、萎んでいてもよい。
【0053】
図1に示すように、ケース3に形成された底壁3cと、カバー5に形成された中央部5bとは、筐体4の空間SPを挟んで互いに対面している。上述のとおり、密閉空間SS内が低圧に調整されていることで、底壁3cと中央部5bとの距離が小さくなるように、筐体4が変形し得る。これにより、底壁3cと中央部5bとによってモジュール積層体2が挟持されることで、モジュール積層体2は筐体4の密閉空間SS内に拘束されている。底壁3cと中央部5bとによってモジュール積層体2が挟持されている状態では、例えば、カバー5の接続部5cに応力が加わっている。
【0054】
以上説明した蓄電装置1では、密閉空間SSの内外の気圧差によって底壁3cとカバー5との少なくとも一部が互いに近付くように変形し、この変形した筐体4によってモジュール積層体2が拘束されている。すなわち、密閉空間SSにモジュール積層体2が配置された状態で、密閉空間SSの内外で気圧差を生じさせるだけで、筐体4によってモジュール積層体2が拘束される。
【0055】
また、中間部材40は、内側に密閉空間SS2を有する変形可能なパッケージ40aを有する。密閉空間SS2には少なくとも気体が含まれている。密閉空間SSの気圧は、密閉空間SS2の気圧よりも低くてもよい。この構成では、筐体4の内壁面とモジュール積層体2との間に配置された中間部材40が、密閉空間SSと密閉空間SS2との気圧差によって膨張している。これにより、中間部材40がダンパーとして機能し得る。中間部材として膨張しない部材を用いる場合、筐体4の内壁面とモジュール積層体2との間に中間部材を配置しようとすると、例えばモジュール積層体2と中間部材とが互いに干渉することで、中間部材を適切な位置に配置し難いことが考えられる。しかしながら、気圧差を利用して膨張する中間部材40を配置する場合、気圧差がない状態であれば容易に配置することができる。
【0056】
また、カバー5の周縁部5aは、中央部5bよりも剛性が小さくてもよい。この構成では、剛性の小さい周縁部5aによって筐体4の変形性が確保されつつ、板状の中央部5bと板状の底壁3cとによってモジュール積層体2を適切に挟持することができる。
【0057】
また、密閉空間SS内には、ガスを吸着する吸着剤7が設けられている。この構成では、吸着剤7によって、密閉空間SS内のガスが吸着されることで、密閉空間SS内の気圧の変動を抑制できる。
【0058】
また、筐体4のケース3には、筐体4内(密閉空間SS)の圧力が大気圧以上になったときに開口する圧力調整部3eが設けられている。一例の蓄電装置1では、密閉空間SSの通常時の圧力が大気圧よりも低いため、大気圧以上で開弁する安価な弁を利用することができる。
【0059】
以上、本開示の一例について詳細に説明されたが、本開示は上記実施形態に限定されない。
【0060】
例えば、2つの蓄電モジュールが積層されたモジュール積層体を示したが、モジュール積層体は、3つ以上の蓄電モジュールを含んでいてもよいし、1つの蓄電モジュールだけで構成されてもよい。
【0061】
また、封止部材15によって封止された空間Sに電解質としての電解液が収容されている例について説明したが、電解質は、固体又はゲル状であってもよい。この場合、封止部材は、電解質が蓄電モジュールの外部に漏出しない程度に電極体間を封止していればよい。また、電解質がゲル状である場合には、電解質は、不織布等によって形成されるセパレータに含浸されて半固体状をなしていてもよく、また、固体電解質であってもよい。また、電解質が電解液でなく固体電解質である場合には、セパレータは、固体電解質によって構成されてもよい。セパレータが固体電解質によって構成される場合、セパレータは、略矩形板形状を呈してもよい。
【0062】
また、モジュール積層体が中間部材を介して、一対の押圧部に挟持されている例を示したが、中間部材は必ずしも必要ではない。中間部材が配置されない場合、モジュール積層体は、筐体を構成する上下一対の押圧部によって挟持され得る。
【0063】
図4は、蓄電装置の一例を示す概略的な断面図である。なお、上記実施形態と同一又は相当する要素について、重複する説明を省略する場合がある。
図4に示す蓄電装置102は、車両100の下部に取付けられている。車両100は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車又は電気自動車等であってよい。
図4に示すように、車両100は、一対のサイドメンバ(リブ部材)111と、フロアパネル(パネル部材)112と、ロアケース(別のパネル部材)113とを備えている。
【0064】
一対のサイドメンバ111は、車両100の骨格となるシャシの一部である。一対のサイドメンバ111は、車両100の車室CSに対して下方に設けられている。一対のサイドメンバ111は、車両100の幅方向(左右方向、X方向)において車両100における両サイドに設けられている。一対のサイドメンバ111は、車両100の前後方向(Y方向)に沿って延びている。
【0065】
フロアパネル112は、車両100のボディの一部である。フロアパネル112は、車両100の車室CSに対して下方に設けられている。フロアパネル112は、一対のサイドメンバ111に対して下方に設けられている。フロアパネル112は、水平方向(XY面)において広がっている板状部材である。フロアパネル112は、左右一対のサイドメンバ111間にわたって延在する部分を含んでいる。ロアケース113は、フロアパネル112とは別のパネル部材であって、車両100のボディの一部である。ロアケース113は、フロアパネル112に対して下方に設けられている。ロアケース113は、車両100の高さ方向(Z方向)においてフロアパネル112から離れている。ロアケース113は、水平方向において広がっている板状部材である。
【0066】
蓄電装置102は、筐体120を備えている。筐体120の内部空間S1には、モジュール積層体130と、中間部材160と、周辺機器170(電子機器)と、供給管180とが配置されている。モジュール積層体130は、X方向及びY方向に対して単体に配置されている。つまり、筐体120内に配置されるモジュール積層体130は1つのみである。モジュール積層体130は、Z方向から見た場合に、車両100のX軸方向の中心線Lと重なるように筐体120内に配置されている。具体的には、一対のサイドメンバ111のX方向の中心線及び内部空間S1のX方向の中心線のそれぞれは、車両100の中心線Lと一致している。モジュール積層体130は、Z方向から見た場合に、内部空間S1の中央に配置されている。Z方向から見た場合に、モジュール積層体130のX方向の中心線及びY方向の中心線のそれぞれは、内部空間S1のX方向の中心線及びY方向の中心線のそれぞれと一致している。
【0067】
モジュール積層体130は、Z方向に積層された複数の蓄電モジュール140と、複数の熱交換器150とを含んで構成されている。ここでは、モジュール積層体130は、2体の蓄電モジュール140と、3体の熱交換器150とを有している。熱交換器150間に蓄電モジュール140が挟まれるように、熱交換器150と蓄電モジュール140とがZ方向において交互に配置されている。蓄電モジュール140及び熱交換器150の配置数は、
図4の例に限られず、より多数の蓄電モジュール140及び熱交換器150を交互に配置してもよい。あるいは、モジュール積層体130は、1つの蓄電モジュール140と、この蓄電モジュール140を挟むように配置される熱交換器150とによって構成されてもよい。
【0068】
Z方向から見た場合における蓄電モジュール140の面積は、X方向又はY方向から見た場合における蓄電モジュール140の面積よりも大きい。Z方向から見た場合における蓄電モジュール140の面積は、例えば1m2以上である。Z方向から見た場合に、蓄電モジュール140の面積は、例えば内部空間S1の面積の1/2よりも大きい。Z方向から見た場合に、X方向における蓄電モジュール140の幅は、例えば一対のサイドメンバ111間の距離の1/2又はX軸方向における内部空間S1の幅の1/2よりも大きい。Z方向から見た場合に、Y方向における蓄電モジュール140の幅は、例えば一対のサイドメンバ111間の距離の1/2又はY方向における内部空間S1の幅の1/2よりも大きい。
【0069】
熱交換器150は、蓄電モジュール140の冷却を行う部分である。熱交換器150は、例えば内部に冷却用流体が通る流路を有する板状部材である。Z方向から見た場合に、熱交換器150の外縁は、蓄電モジュール140の外縁よりも内側に位置している。流路は、板状部材を面内方向に貫通する貫通孔によって構成されている。流路には、ケース121を通した供給管180が接続され、ケース121の外部との間で冷却用流体の循環が行われる。冷却用流体としては、例えば空気、水、油などが用いられる。冷却用流体は、電気絶縁性を有するものであってもよい。冷却用流体が導電性を有するものである場合、熱交換器150は、冷却用流体に対して絶縁されていることが好ましい。
【0070】
本実施形態において、熱交換器150は集電板としての機能を兼ねている。 モジュール積層体130におけるZ方向の上端に配置された熱交換器150は、Z方向の上側に配置された蓄電モジュール140の正極終端電極に電気的に接続されている。モジュール積層体130におけるZ方向の下端に配置された熱交換器150は、Z方向の下側に配置された蓄電モジュール140の負極終端電極に電気的に接続されている。2つの蓄電モジュール140の間に配置された熱交換器150は、Z方向の上側に配置された蓄電モジュール140の負極終端電極及びZ方向の下側に配置された蓄電モジュール140の正極終端電極に電気的に接続されている。したがって、モジュール積層体130におけるZ方向の上端に配置された熱交換器150は、複数の蓄電モジュール140の正極端子として機能する。また、モジュール積層体130におけるZ方向の下端に配置された熱交換器150は、複数の蓄電モジュール140の負極端子として機能する。
【0071】
中間部材160は、中間部材40と同様である。中間部材160は、モジュール積層体130と共に筐体120内に配置されている。中間部材160は、筐体120の内面とモジュール積層体130との間に配置されている。具体的には、中間部材160は、モジュール積層体130における積層方向(Z方向)の両端にそれぞれ配置されている。中間部材160は、後述するケース121の底壁121bとモジュール積層体130との間及び後述するシート状部材122の平板部122aとモジュール積層体130との間にそれぞれ位置している。Z方向から見た場合に、中間部材160の外縁は、熱交換器150の外縁よりも外側に位置している。
【0072】
周辺機器170(電子機器)は、蓄電装置102の充放電制御、異常検知制御等を行う制御機器を含む。制御機器は、各種電源、制御回路等を含んでよく、一例として、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及び入出力インターフェース等を含んでいてもよい。また、周辺機器170は、供給管180における冷却用流体を循環させるためのポンプ等を含み得る。周辺機器170には、モジュール積層体130に接続される端子131,132及び複数の端子133が接続されている。端子131は、モジュール積層体130におけるZ方向の上端に配置された熱交換器150に電気的に接続されている。端子132は、モジュール積層体130におけるZ方向の下端に配置された熱交換器150に電気的に接続されている。端子131,132は、モジュール積層体130から電力を取り出すための電力端子である。複数の端子133は、各蓄電モジュール140に含まれる複数の電極のそれぞれに電気的に接続され得る。複数の端子133は、例えば、複数の電極のそれぞれの電圧を取得するための電圧計測端子である。周辺機器170は、複数の端子171によって筐体120の外部と電気的に接続されている。複数の端子171からは、端子131,132から取り出されたモジュール積層体130の電力が筐体120の外部に取り出され得る。複数の端子171からは、複数の端子133から取得された電圧又は当該電圧に基づく情報が筐体120の外部に取り出され得る。複数の端子171の本数は、端子131,132及び複数の端子133を合計した本数よりも少ない。本実施形態において、周辺機器170の積層方向の寸法は、モジュール積層体130の積層方向の寸法と中間部材160の積層方向の寸法との和よりも小さい。
【0073】
筐体120には、減圧ポンプ124が設けられ得る。減圧ポンプ124は、内部空間S1を減圧するためのポンプが設けられたバルブであってよい。減圧ポンプ124は、周辺機器170に電気的に接続されている。すなわち、減圧ポンプ124は、周辺機器170によって動作制御される。一例の蓄電装置102は、内部空間S1が減圧された状態で筐体が封止されてもよい。減圧ポンプ124は、筐体120の内部空間S1の気体を吸引することによって、筐体120の内圧を大気圧に対して減圧された状態に維持する。例えば、周辺機器170は、筐体120内の気圧を計測する気圧計を含んでいてもよい。周辺機器170によって筐体120内の気圧の上昇が検出された場合(内圧が所定の閾値を超えた場合)、周辺機器170は、筐体120内を減圧するように減圧ポンプ124を動作させてもよい。
【0074】
筐体120の内部空間S1には、ガス及び水分を吸着する吸着部材125が設けられている。吸着部材125は、例えば、吸着剤7と同様である。
【0075】
筐体120には、圧力開放弁126が設けられていてもよい。この圧力開放弁126は、蓄電モジュール140の劣化時或いは異常時に発生する高温の気体によって筐体120の内圧が上昇した場合に作動する弁である。圧力開放弁126の作動により、筐体120の内部空間S1の気体が筐体120の外部に放出されることで、筐体120の内圧が所定値を上回らないように圧力緩和が行われる。圧力開放弁126の種類には、特に制限はないが、例えば圧力が所定の閾値を超えたときに破断する破断タイプの弁であってもよく、温度が所定の閾値を超えたときに溶融する溶栓タイプの弁であってもよい。一例の圧力開放弁126は、内部空間S1の圧力が大気圧以上になったときに開口する。
【0076】
蓄電装置102について更に詳細に説明する。
図4に示されるように、筐体120は、ケース121(筐体本体)と、シート状部材122(蓋体)とを有している。ケース121は、例えばステンレスといった金属によって形成され、直方体形状をなしている。ケース121は、一面側に開口部121dが設けられた有底箱型をなしている。ケース121の開口部121d回りには、フランジ121cが設けられている。ケース121は、底壁121bと、底壁121bの四辺の縁にそれぞれ立設された側壁121aとを有している。
【0077】
側壁121aは、周辺機器170に隣接する第1の側壁121a1を含む。なお、隣接とは、周辺機器170と第1の側壁121a1とが互いに接触している場合のほかに、周辺機器170と第1の側壁121a1との間に間隙が形成されている場合を含む。第1の側壁121a1の板厚は、シート状部材122及び底壁121bの板厚に比べて厚くなっている。また、底壁121bの内面には、段部(段差)121eが形成されている。底壁121bにおいて、段部121eは、モジュール積層体130が設けられた位置を囲んでいる。段部121eは、モジュール積層体130(中間部材160)に対面してモジュール積層体130を囲う段差面を有する。周辺機器170が設けられた位置は、段部121eで囲まれた範囲の外側である。この段部121eによって、周辺機器170が設けられた位置よりもモジュール積層体130が設けられた位置が低くなっている。底壁121bにおいて、段部121eで囲まれた範囲の板厚は、その他の部分、すなわち、段部121eで囲まれた範囲の外側における板厚よりも薄くなっている。
【0078】
ケース121は、一対のサイドメンバ111の間の空間には、配置されておらず、フロアパネル112における車室CSとは反対側の平坦面に対して下方に配置されている。ケース121は、フロアパネル112とロアケース113との間に配置されている。Z方向から見た場合に、X方向におけるケース121の幅は、一対のサイドメンバ111間の距離(一対のサイドメンバ111の互いに対向するそれぞれの内面間の距離)よりも大きい。X方向におけるケース121の両側のフランジ121cは、シート状部材122及びフロアパネル112を介して一対のサイドメンバ111の下方に配置されている。
【0079】
ケース121は、フロアパネル112及び一対のサイドメンバ111の下方において一対のサイドメンバ111から垂下した状態で一対のサイドメンバ111に対して固定されている。具体的には、ケース121は、一対のサイドメンバ111の下側から一対のサイドメンバ111に対して固定されている。ケース121は、一対のサイドメンバ111から吊り下がっている。ケース121のフランジ121cは、例えば複数のボルト(図示省略)及びナット(図示省略)等によってシート状部材122及びフロアパネル112を介して一対のサイドメンバ111に締結されている。これにより、蓄電装置102は、一対のサイドメンバ111及びフロアパネル112の下方において、車両100に取付けられている。なお、複数のボルトは、フランジ121cに対してサイドメンバ111とは反対側から、フランジ121c及びサイドメンバ111に挿入されてもよいし、サイドメンバ111に対してフランジ121cとは反対側から、サイドメンバ111及びフランジ121cに挿入されてもよい。
【0080】
シート状部材122は、ケース121の開口部121dを閉塞している。シート状部材122は、平板部122aと、バネ部122bと、外縁部122cとを含んでいる。平板部122a、バネ部122b及び外縁部122cは、同一の材料によって一体的に形成されている。平板部122aは、モジュール積層体130に対向する平板状の部材である。平板部122aは、Z方向から見て、モジュール積層体130と略同じ大きさを有している。平板部122aは、水平方向において広がっている。平板部122aは、Z方向から見て矩形状をなしている。バネ部122bは、平板部122aの外縁に繋がっている。バネ部122bは、Z方向から見て矩形環状をなしている。外縁部122cは、バネ部122bの外縁に繋がっている。外縁部122cは、Z方向から見て矩形環状をなしている。バネ部122bは、シート状部材122における平板部122aと外縁部122cとの間の部分を複数回折り曲げることによって形成されている。これにより、シート状部材122は、面内方向にバネ性を有することになっている。バネ部122bの弾性係数は、平板部122a及び外縁部122cの弾性係数よりも小さい。バネ部122bの剛性は、平板部122a及び外縁部122cの剛性よりも小さい。
【0081】
シート状部材122は、フロアパネル112とケース121との間に配置されている。Z方向から見た場合に、平板部122aの外縁は、中間部材160の外縁よりも外側に位置している。Z方向から見た場合に、バネ部122bは、中間部材160を囲んでいる。外縁部122cは、フロアパネル112とケース121のフランジ121cとの間に配置されている。外縁部122cは、シール部材123によってフランジ121cに対して気密に固定されている。これにより、筐体120には、内部を気密に維持する内部空間S1が形成されている。
【0082】
内部空間S1は、製造時に減圧された状態で気密に封止され、上述したように減圧ポンプ124の吸引によって大気圧に対して減圧された状態が維持されている。内部空間S1の内圧は、ケース121の外部の大気圧よりも小さい。そのため、ケース121にはケース121の外側から内側に向かった力が作用する。これにより、シート状部材122及びケース121の底壁121bによって挟み込まれているモジュール積層体130は、Z方向において拘束されることになる。したがって、強い締結力を必要とせず、モジュール積層体130及びフロアパネル112を容易に拘束できる。また、シート状部材122とケース121との締結による拘束荷重を低減できるため、フロアパネル112にかかる応力を低減できる。
【0083】
シート状部材122はバネ部122bによって、面内方向にバネ性を有している。この場合、シート状部材122が変形し易くなるため、中間部材160に対するシート状部材122の追従性、及びシート状部材122による緩衝吸収性を向上できる。また、内部空間S1が減圧される場合に、シート状部材122を中間部材160に追従させることで、ケース121の変形を抑制することができる。これにより、ケース121の薄化を図ることができる。また、モジュール積層体130への振動又は車両100側のうねりの影響をシート状部材122によって吸収できる。
【0084】
内部空間S1内には、モジュール積層体130に電気的に接続された周辺機器170が配置されている。減圧した筐体120内にモジュール積層体130の動作に必要な周辺機器170を入れることで、筐体120内から外に出る配線数が少なくなる。そのため、筐体120内の気密性が保持されやすい。
【0085】
積層方向において、周辺機器170の寸法は、モジュール積層体130の積層方向の寸法と中間部材160の積層方向の寸法との和よりも小さい。すなわち、周辺機器170の積層方向の寸法は、底壁121b及びシート状部材122におけるモジュール積層体130を拘束する部分間の積層方向の寸法よりも小さい。この構成では、モジュール積層体130に拘束荷重が付与される際に、周辺機器170に拘束荷重が付与されることが抑制される。これにより、周辺機器170の損傷が抑制される。なお、中間部材160が配置されない場合には、周辺機器170の積層方向の寸法はモジュール積層体130の積層方向の寸法よりも小さいことが好ましい。
【0086】
筐体120の側壁121aは、周辺機器170に隣接する第1の側壁121a1を含み、第1の側壁121a1は、シート状部材122及び底壁121bに比べて厚くなっている。筐体120のうちの周辺機器170に対応する部分が変形し難いことにより、周辺機器170の損傷が低減される。
【0087】
底壁121bの内面121b1は、周辺機器170が設けられた位置よりもモジュール積層体130が設けられた位置を低くする段部121eを有する。この構成では、モジュール積層体130及び周辺機器170を所定の位置に正確に配置することができる。また、モジュール積層体130の水平方向における位置ずれを抑制できる。そのため、モジュール積層体130と周辺機器170との接触が抑制される。これにより、蓄電モジュール140の損傷やショートが低減される。
【0088】
モジュール積層体130が設けられた位置における底壁121bの厚さは、底壁121bの他の部分の厚さよりも薄くなっている。この場合、底壁121bは、モジュール積層体130が設けられた位置において変形しやすくなっている。そのため、内部空間S1の内外の圧力差に起因する筐体120の変形により、モジュール積層体130を拘束しやすくなっている。
【0089】
筐体120には、内部空間S1を大気圧に対して減圧するための減圧ポンプ124が設けられている。蓄電装置102は、内部空間S1内が減圧された状態でパッケージングされ得る。しかし、経年変化等により内部空間S1内の減圧状体が維持できなくなり、モジュール積層体130に付与される拘束荷重が低減することが考えられる。一例の蓄電装置102では、減圧ポンプ124によって内部空間S1内の減圧状体が維持されるため、モジュール積層体130に付与される拘束荷重を維持することができる。
【符号の説明】
【0090】
1…蓄電装置、2…モジュール積層体、3…ケース(筐体本体)、3b…側壁、3c…底壁、4…筐体、5…カバー(蓋体)、5b…中央部、5c…接続部(易変形部)、11…蓄電モジュール、40…中間部材、SS…密閉空間(第1の密閉空間)、SS2…密閉空間(第2の密閉空間)。