(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】車両用ボックス装置
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
B60R7/04 C
(21)【出願番号】P 2022048425
(22)【出願日】2022-03-24
(62)【分割の表示】P 2018163562の分割
【原出願日】2018-08-31
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 直行
(72)【発明者】
【氏名】小澤 悦雄
【審査官】神田 泰貴
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-038983(JP,A)
【文献】特開平04-176743(JP,A)
【文献】特開2007-237974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 7/14
F16C 11/00 - 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を上方に向けた内部空間を有するボックスと、
リッド本体部と、前記リッド本体部に一体化され前記ボックスに対して枢支される枢支 軸と、を有し前記ボックスの前記開口を開閉する2つのリッドと、を有し、
2つの前記リッドは、前記リッド本体部が前記ボックスの上方に配置され前記開口を閉じる閉位置と、前記リッド本体部が前記ボックスの対向する2つの側部に対して側方に各々配置され前記開口を開く開位置と、の間を位置変化し、
前記ボックスの周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に各々設けられている凹部を有し、
前記リッド本体部のうち前記開位置において下端部に位置する開下端部は、前記開位置において前記凹部に入り込
み、
前記周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に、前記内部空間側かつ上方から前記側方かつ下方に向けて傾斜する傾斜面と、前記傾斜面から下側に連続し上下方向に伸びるストレート面と、を有する車両用ボックス装置。
【請求項2】
開口を上方に向けた内部空間を有するボックスと、
リッド本体部と、前記リッド本体部に一体化され前記ボックスに対して枢支される枢支 軸と、を有し前記ボックスの前記開口を開閉する2つのリッドと、を有し、
2つの前記リッドは、前記リッド本体部が前記ボックスの上方に配置され前記開口を閉じる閉位置と、前記リッド本体部が前記ボックスの対向する2つの側部に対して側方に各々配置され前記開口を開く開位置と、の間を位置変化し、
前記ボックスの周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に各々設けられている凹部を有し、
前記リッド本体部のうち前記開位置において下端部に位置する開下端部は、前記開位置において前記凹部に入り込
み、
前記周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に、前記開位置において前記リッド本体部の下側に配置される底斜面を有し、前記底斜面は前下がりに傾斜する、車両用ボックス装置。
【請求項3】
前記周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に、前記内部空間側かつ上方から前記側方かつ下方に向けて傾斜する傾斜面と、前記傾斜面から下側に連続し上下方向に伸びるストレート面と、を有する請求項
2に記載の車両用ボックス装置。
【請求項4】
前記周壁は、前記開口よりも下方において前記2つの側部に、前記リッド本体部のうち前記閉位置において下面となる閉下面部の形状に対応する形状を有し、前記開位置において前記閉下面部に当接する、請求項1
~請求項3の何れか一項に記載の車両用ボックス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボックスと当該ボックスを開閉するリッドとを有し車両に搭載される車両用ボックス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ボックスと当該ボックスを開閉するリッドとを有し車両に搭載される、センターコンソールボックス等の車両用ボックス装置として、開口を開く開位置と開口を閉じる閉位置との間をリッドが位置変化するものが知られている(例えば、特許文献1)。
この種の車両用ボックス装置は、乗員の側方に配置されるのが一般的である。乗員の側方に配置される都合上、この種の車両用ボックス装置のリッドは、閉位置において、乗員のアームレストとして用いられる場合がある。
【0003】
近年、車両用の内装品には多くの機能が求められている。アームレストとして使用可能な車両用ボックス装置についても、そのアームレストとしての機能の更なる向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、アームレストとしての機能が向上した車両用ボックス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の車両用ボックス装置は、
開口を上方に向けた内部空間を有するボックスと、
リッド本体部と、前記リッド本体部に一体化され前記ボックスに対して枢支される枢支軸と、を有し前記ボックスの前記開口を開閉する2つのリッドと、
前記2つのリッドを接続し前記2つのリッドの位置を同期させるリンク要素と、を有し、
2つの前記リッドは、前記リッド本体部が前記ボックスの上方に配置され前記開口を閉じる閉位置と、前記リッド本体部が前記ボックスの対向する2つの側方に各々配置され前記開口を開く開位置と、の間を位置変化し、
前記リッド本体部は、弾性変形可能なクッション部と、前記クッション部よりも硬質の基材部と、を有し、
前記リッド本体部のうち、前記開位置における上面となる開上面部と、前記閉位置における上面となる閉上面部とは、前記クッション部で構成されている、車両用ボックス装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用ボックス装置は、アームレストとしての機能が向上した車両用ボックス装置である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の車両用ボックス装置を分解した様子を模式的に表す図である。
【
図2】リッド本体部が閉位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を模式的に表す図である。
【
図3】リッド本体部が開位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を模式的に表す図である。
【
図4】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図5】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図6】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図7】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図8】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図9】実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図10】実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図11】実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図12】実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図13】実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【
図14】実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の車両用ボックス装置は、運転席と助手席との間に配設されるセンターコンソールボックスとして具現化できるが、これに限定されない。例えば本発明の車両用ボックス装置は、サイドコンソールボックスや、後部座席において乗員席の側方に配置され飲料用の容器を収容保持する容器ホルダ装置として具現化することもできる。
【0010】
本発明の車両用ボックス装置は、ボックスと、2つのリッドと、リンク要素とを有する。
ボックスは、内部空間を有し、当該内部空間と外界との境界となる開口を上方に向ける。
【0011】
各リッドは、リッド本体部と枢支軸とを有する。
このうちリッド本体部は、閉位置において開口を閉じ、開位置において開口を開く部分であり、枢支軸は、リッドのうちボックスに対して枢支される部分である。各リッドは、枢支軸を中心としてボックスに対して回動するといえる。
【0012】
リッドが回動することで、リッド本体部が閉位置と開位置との間を位置変化する。本発明の車両用ボックス装置は、2つのリッドが各々閉位置と開位置との間を位置変化する、所謂観音開き型のボックス装置といえる。
【0013】
リッドが回動し、リッド本体部が閉位置と開位置との間を位置変化すると、ボックスに対するリッド本体部の向きが変化する。具体的には、2つのリッドの2つのリッド本体部は、閉位置においては、閉上面部を上面として並び連ねられる。また、当該2つのリッドの2つのリッド本体部は、開位置においては、開上面部を上面とし、開口を挟んで対向する。
【0014】
リッド本体部は、弾性変形可能なクッション部と、当該クッション部よりも硬質の基材部と、を有する。また、リッド本体部の閉上面部及び開上面部は、各々、クッション部である。したがって、閉位置又は開位置にあるリッド本体部には、クッション部に由来するクッション性が付与される。このため、本発明の車両用ボックス装置によると、当該リッド本体部の開上面部や閉上面部をアームレストとして利用することが可能となる。
【0015】
また、閉上面部及び開上面部がクッション部であれば、閉上面部及び開上面部に腕や肘をぶつけた乗員に与える不快感は、非常に小さいか、又はない。このため、本発明の車両用ボックス装置は、車両室内という限られたスペースに搭載する車両用ボックス装置として好適である。
【0016】
以下、本発明の車両用ボックス装置を構成要素毎に説明する。
【0017】
本発明の車両用ボックス装置におけるボックスは、既述したように、内部空間を有し、当該内部空間と外界との境界となる開口を上方に向ける。したがってボックスの内部空間は、少なくとも側方において外界から区画される。本明細書では、ボックスの内部空間と外界とを区画する当該側方の部分を、ボックスの周壁と称する。
ボックスの周壁は、ボックスの内部空間を全周にわたって連続的に取り囲んでも良いし、断続的に取り囲んでも良い。
ボックスの内部空間の用途は特に問わない。例えば、内部空間は、物品を収容するための収容室として利用しても良いし、オーディオ機器等を配設するための空間として利用しても良い。
【0018】
2つのリッドは、各々、ボックスに対して直接的又は間接的に枢支される。つまり、2つのリッドはボックスに直接枢支されても良いし、他部材を介してボックスに間接的に枢支されても良い。或いは、リッドは、ボックスに非接触でありかつボックスに対して位置変化しない他部材に枢支されても良い。
【0019】
リッド本体部は、既述したように、弾性変形可能なクッション部と、当該クッション部よりも硬質の基材部と、を有する。クッション部は基材部に比べて軟質ともいえる。
本発明の車両用ボックス装置におけるリッド本体部は、乗員のアームレストとして使用可能なものである。したがってリッド本体部には、アームレストとして使用されたときに作用する荷重に耐え得る程度の強度と、アームレストとして使用されたときに乗員に快適な使用感を付与できる程度の柔らかさが求められる。
【0020】
基材部は、リッド本体部の強度に関わる部分である。したがって、基材部の材料としては、比較的強度の高い材料を選択するのが好ましい。例えば、基材部の材料としては、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS等の樹脂等を挙げることができる。
【0021】
クッション部は、リッド本体部の柔らかさに関わる部分である。クッション部は弾性変形可能であることで、この要件を満たす。クッション部は中実形状であっても良いし、中空形状であっても良いが、クッション部に優れたクッション性を付与するためには、クッション部は発泡ポリウレタン等の多孔体であるのが好ましい。なお、クッション部は、表面に中実形状すなわち無孔の表皮部を有する多層構造であっても良い。
【0022】
クッション部は、既述したように、リッド本体部の閉上面部及び開上面部を構成すれば良く、当該部分にのみあっても良いが、基材部の表面を連続的に覆うのが好ましい。ここでいう基材部の表面とは、基材部のうち開位置および閉位置において外方を向く、意匠側の表面を意味する。
【0023】
リッド本体部は、開口を閉じることができ、かつ、開口を開くことができる形状であれば良く、例えば平板状であっても良いし、湾曲形状、屈曲形状等の立体形状であっても良い。
【0024】
ところで、アームレストとして使用する都合上、リッド本体部の閉上面部及び開上面部は、ある程度の大きさであるのが良い。このうち閉上面部は、開口を閉じる必要上、十分に大きいが、車両室内に配置すべく車両用ボックス装置を小型化することを考慮すると、リッド本体部の開上面部は閉上面部よりも小さくする必要がある。このため、閉上面部の寸法には、好ましい範囲があると考えられる。
【0025】
具体的には、開上面部の幅は、20mm以上であるのが好ましく、25mm以上であるのがより好ましく、30mm以上であるのがさらに好ましい。当該開上面部の幅とは、開位置において、開口を挟んで対向する2つのリッド本体部をむすぶ方向における、各開上面部の長さを意味する。例えば、2つのリッド本体部が、開位置において、開口を挟んで車幅方向に対向する場合には、当該開上面部の幅を、開位置にあるリッド本体部における車幅方向の長さと言い換えることもできる。
【0026】
枢支軸は、上記したリッド本体部に一体化され、ボックスに対して枢支される部分である。したがって、リッドは枢支軸を中心として回動し、開位置と閉位置との間を位置変化する。
【0027】
枢支軸は、リッド本体部に直接的又は間接的に一体化されれば良い。例えば、枢支軸をリッド本体部に直接設けても良いし、リッド本体部に一体化された脚部に枢支軸を設けても良い。脚部は、単一部材からなっても良いし、複数の分体からなっても良い。例えば、脚部を2つの分体で構成し、一方の分体をリッド本体部に固着し、当該一方の分体に他方の分体を枢支させ、更に当該他方の分体に枢支軸を設けて、当該枢支軸をボックスに枢支させても良い。この場合、リッド本体部が二軸的に回動するため、開位置と閉位置との間のリッド本体部の移動軌跡をコンパクトにできる利点がある。
【0028】
本発明の車両用ボックス装置は、リッド本体部を閉位置から開位置に向けて付勢する付勢要素を有するのが好ましい。この場合には、付勢要素によりリッド本体部を閉位置から開位置に自動的に位置変化させることができる。またこの場合、本発明の車両用ボックス装置は、更に、当該付勢要素の付勢力に抗してリッド本体部を閉位置にロックするロック要素を有するのが好ましい。
【0029】
付勢要素及びロック要素は、特に限定されず、一般的なものを用いれば良い。
例えば、付勢要素としては金属性のねじりコイルバネ等を使用できるし、ロック要素としてはハートカム等を使用できる。
【0030】
本発明の車両用ボックス装置におけるリッド本体部は、既述したように、開位置及び閉位置においてアームレストとして使用可能である。このため、本発明の車両用ボックス装置は、開位置及び閉位置において各々リッド本体部を位置規制するストッパ部を有するのが好ましい。当該ストッパ部のうち開位置においてリッド本体部を位置規制するものを開ストッパ部と称する。また、当該ストッパ部のうち閉位置においてリッド本体部を位置規制するものを閉ストッパ部と称する。
【0031】
リッド本体部を効率よく位置規制するためには、開ストッパ部及び閉ストッパ部は、リッドの回動中心すなわち枢支軸から離れた位置にあるのが好ましい。当該開ストッパ部及び閉ストッパ部は、車両用ボックス装置におけるリッド本体部以外の部分に設けることができるが、当該開ストッパ部及び/又は閉ストッパ部をボックスに設ける場合には、車両用ボックス装置の部品点数を増大させないため、製造コストを低減できる利点がある。
【0032】
開ストッパ部は、例えば、開位置においてリッド本体部自体に当接して当該リッド本体部を位置規制するものであっても良いし、開位置において脚部に当接して当該脚部を介してリッド本体部を位置規制するものであっても良いし、リッドのその他の構成要素に当接してリッド本体部を位置規制するものであっても良い。閉ストッパ部についても同様である。
【0033】
何れの場合にも、開ストッパ部及び閉ストッパ部はリッドの枢支軸から離れた位置にあるのが好ましい。更に、上記したように、脚部を2以上の複数の分体で構成する場合等、リッド本体部が多軸的に回動する場合には、開ストッパ部及び閉ストッパ部は全ての枢支軸から離れた位置にあるのが好ましい。
【0034】
なお、ここでいう「離れた位置」とは枢支軸と物理的に接触しない位置を意味するが、開ストッパ部及び閉ストッパ部と枢支軸との距離は大きい方が好ましい。具体的には、開ストッパ部と枢支軸との好ましい距離として、2cm以上、3cm以上、5cm以上、7cm以上の各範囲を挙げることができる。開ストッパ部と枢支軸との好ましい距離に上限はないが、実用的には、30cm以下とするのが好ましい。閉ストッパ部と枢支軸との距離の好ましい範囲についても同様である。
【0035】
本発明の車両用ボックス装置は、アームレストとして使用される。この都合上、開位置における開上面部の上下方向の位置と、閉位置における閉上面部の上下方向の位置と、の差は小さい方が好ましい。乗員に違和感を与えないためである。なお、当該上下方向の位置とは、車両室内に配置した車両用ボックス装置における上下方向の位置、つまり、ボックスの開口を上としたときの上下方向の位置を意味する。
開位置における開上面部の上下方向の位置と、閉位置における閉上面部の上下方向の位置との差は、30mm以内であるのが好ましく、20mm以内であるのがより好ましく、15mm以内であるのが特に好ましい。
【0036】
以下、具体例を挙げて本発明の車両用ボックス装置を説明する。
【0037】
(実施例1)
実施例の車両用ボックス装置は、本発明の車両用ボックス装置を運転席と助手席との間に配置されるセンターコンソールボックスとして具現化したものである。
図1は実施例1の車両用ボックス装置を分解した様子を模式的に表す図である。
図2はリッド本体部が閉位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を模式的に表す図である。
図3はリッド本体部が開位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を模式的に表す図である。
図4~
図9は実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。このうち
図4~
図6はリッド本体部が閉位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を表し、
図8及び
図9はリッド本体部が開位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を表し、
図7はリッド本体部が閉位置と開位置との間の半開位置にあるときの実施例1の車両用ボックス装置を表す。
【0038】
必要に応じて、リッド本体部が閉位置にあるときの車両用ボックス装置を閉状態と称し、リッド本体部が開位置にあるときの車両用ボックス装置を開状態と称し、リッド本体部が半開位置にあるときの車両用ボックス装置を半開状態と称する。
また、上、下、左、右、前、後とは、
図1に示す上、下、左、右、前、後を意味するものとする。上下方向は鉛直方向であり、左右方向は車幅方向であり、前後方向は車両進行方向である。
【0039】
実施例1の車両用ボックス装置は、ボックス1、2つのカバー19、2つのリッド2、2つのリンク要素5、2つの付勢要素6、及びロック要素7を有する。
図1に示すように、ボックス1は長手方向を前後に向けた箱状をなす。ボックス1は、開口10を上方に向けた内部空間11を有し、当該内部空間11はボックス1の周壁12及び底壁13によって、側方及び下方において外界と区画されている。
図4に示すように、ボックス1の周壁12は内周壁121と外周壁120とを有する2層構造を有し、ボックス1の底壁13は周壁12のうち内周壁121に一体化されている。
ボックス1の外周壁120のうち前側に位置する部分を前外周壁122と称し、後側に位置する部分を後外周壁123と称する。
【0040】
前外周壁122及び後外周壁123は、各々、2つの枢支軸受け部14と、二つのガイドラック15とを有する。2つの枢支軸受け部14は、各々、後述する枢支軸37を枢支する。また、2つのガイドラック15は、各々、後述するリッド側脚部30に設けられているガイド歯列31に噛み合う。各ガイドラック15は枢支軸受け部14を中心とする円弧状をなす。
【0041】
更に、前外周壁122の前側及び後外周壁123の後側は、各々、カバー19によって覆われている。カバー19は、各々対応する前外周壁122又は後外周壁123に固定されている。
【0042】
カバー19と前外周壁122との間、及びカバー19と後外周壁123との間には、各々、枢支軸受け部14及びガイドラック15、並びに後述する付勢要素6、リンク側脚部35、リッド側脚部30及びロック要素7等のボックス装置構成部材が収容される。
【0043】
2つのリッド2は、各々、リッド本体部20、2つのリッド側脚部30、及び、2つのリンク側脚部35を有する。各リンク側脚部35には、各々、リンク要素5を構成するリンク歯列50の一方が一体化されている。リンク要素5については後述する。
【0044】
各リッド本体部20は、
図1~
図3に示すように、略矩形かつ略板状をなし、長手方向を前後に向ける。各リッド本体部20は、各々、
図2に示す閉位置において上面となる閉上面部21u、当該閉位置において下面となる閉下面部21l(
図1及び
図4参照)、
図3に示す開位置において上面となる開上面部22u、及び、当該開位置において下面となる開下面部22lを有する。
図2及び
図4に示す閉位置において、閉下面部21lはボックス1の内部空間11に対面する。また、当該閉位置において、開上面部22uは左右方向すなわち車幅方向の内側にあり、開下面部22lは当該車幅方向の外側にある。
各リッド本体部20のうち閉上面部21uと開上面部22uとの間の領域は、面取りされて傾斜面20slとなっている。
【0045】
図4に示すように、各リッド本体部20は基材部25とクッション部28とを有する。基材部25はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂(所謂ABS樹脂)製であり、板状をなす。基材部25は、基材本体25mと基材カバー25cとの2つの分体が組み立てられ一体化されたものである。基材本体25mにおける閉上面部21u側の部分、開上面部22u側の部分及び開下面部22l側の部分は、何れもクッション部28で覆われている。クッション部28は、発泡ポリウレタンと、当該発泡ポリウレタンの表面に形成されたスキン層とで構成され、基材部25よりも軟質かつ弾性変形可能である。
【0046】
基材カバー25cは、基材本体25mにおける閉下面部21l側の部分を覆うように、基材本体25mに一体化されている。基材カバー25cには、後述するロック要素7の一部を構成する凹状のロック受け部76が設けられている。また、各基材カバー25cの長手方向の二端部、すなわち、各基材カバー25cの前側端部及び後側端部には、各々、リッド側脚部30が一体に設けられている。各リッド側脚部30は、各々、ガイドラック15に噛合するガイド歯列31を有し、かつ、別々のリンク側脚部35に枢支される。
【0047】
具体的には、
図6に示すように、各リッド側脚部30には凸状をなすリッド側枢支部32が設けられている。
図5に示すように、各リンク側脚部35には凹状をなすリンク側枢支部36が設けられている。各リッド側脚部30のリッド側枢支部32が各リンク側脚部35のリンク側枢支部36に挿入され、各リッド側脚部30が各リンク側脚部35に枢支される。上記したガイド歯列31は、同じリッド側脚部30に設けられているリッド側枢支部32を中心とした円弧状に配列する。
【0048】
図5に示すように、各リンク側脚部35は、既述したリンク側枢支部36の他に、枢支軸37を有する。各枢支軸37は、ボックス1の前外周壁122及び後外周壁123に各々2つずつ設けられている枢支軸受け部14に各々枢支される。したがって、各リッド2は、当該枢支軸37を介してボックス1に枢支されるといえる。
【0049】
前外周壁122に枢支される2つの枢支軸37には、各々、付勢要素6が取り付けられている。当該付勢要素6はねじりコイルバネであり、
図4に示すように、当該付勢要素6の一端60はリンク側脚部35に取り付けられ、他端61はカバー19に取り付けられる。換言すると、付勢要素6の一端はリッド2に取り付けられ、他端はカバー19を介してボックス1に取り付けられる。付勢要素6の付勢力によって、リッド2は、
図2及び
図4に示す閉位置から
図3及び
図8に示す開位置に向けて付勢される。
【0050】
実施例1の車両用ボックス装置は2つのリンク要素5を有する。各リンク要素5は、リッド2の前側部分と後側部分とに各々一つずつ一体化されている。
図4に示すように、各リンク要素5は、各リンク側脚部35に一体化されている2つのリンク歯列50で構成されている。当該二つのリンク歯列50は、各々、同じリンク側脚部35に設けられている枢支軸37を中心とした円弧状に配列する歯列であり、互いに噛合する。
【0051】
ロック要素7は、
図1に示すように、スイッチ部70と、ロック部71とを有する。スイッチ部70は前外周壁122とカバー19との間に取り付けられる。スイッチ部70は略棹状をなし、
図2及び
図3に示すように、スイッチ部70の上端70uはボックス1の上側に露出する。
図1に示すスイッチ部70の下端70lは、前外周壁122とこれを覆うカバー19との間において、後述するロック部71の入力部75の前側に位置する。
【0052】
ロック部71は、
図1に示すように、鉤状の鉤頭部73と棹状の鉤脚部74とを有する2つの鉤部72と、当該2つの鉤部72を連結する棹状の入力部75と、を有する略U字状をなす。鉤部72は、鉤頭部73を上方に向けて略上下方向に配置される。入力部75は鉤脚部74の下端を連結する。入力部75の枢支軸75aはカバー19の受け部19sに枢支され、ロック部71はカバー19に対して回動する。
【0053】
ロック部71は、図略のロック付勢要素の付勢力によって、入力部75の枢支軸75aを中心として、後側すなわちリッド2側に鉤頭部73を近づける方向に付勢される。ロック付勢要素に付勢された鉤頭部73は、閉位置にあるリッド本体部20のロック受け部76と係合する。当該鉤頭部73とロック受け部76との係合によって、リッド本体部20は閉位置にロックされる。
【0054】
ロック部71の入力部75はスイッチ部70の下端70lの更に下側に配置されている。このため、スイッチ部70を下方に押圧すると、入力部75が下側に押圧される。このためロック部71は、ロック付勢要素の付勢力に抗して、入力部75の枢支軸75aを中心として、鉤頭部73がリッド2から遠ざかる方向に回動する。したがって、このとき鉤頭部73とロック受け部76との係合が解除される。
【0055】
以下、実施例1の車両用ボックス装置の動作を説明する。
【0056】
図2及び
図4に示す閉位置において、リッド本体部20は閉上面部21uを上に向けつつボックス1の開口10を覆う。このときリッド本体部20は、ロック要素7によって閉位置にロックされた状態にある。図示しないが、このとき、リッド本体部20はボックス1の上面の一部に当接している。当該ボックス1の一部は閉ストッパ部として機能し、このときリッド本体部20を下側から支持する。したがって、このときリッド本体部20は閉位置に安定して保たれる。
【0057】
図4に示すように、リッド本体部20の閉上面部21uはクッション部28で構成されている。クッション部28は基材部25よりも軟質かつ弾性変形可能であるため、閉位置にあるリッド本体部20は、アームレストとして好適に使用される。又、上記したようにリッド本体部20は図略の閉ストッパ部により下側から支持され、位置規制されているため、リッド本体部20の閉方向への更なる位置変化は抑制され、かつ、リッド本体部20に作用する荷重は当該閉ストッパ部によって受け止められる。このことによっても、閉位置にあるリッド本体部20は、アームレストとして好適に使用される。
【0058】
図6に示すように、リッド本体部20が閉位置にあるとき、各リッド側脚部30のガイド歯列31はガイドラック15の上側部分と噛合している。リンク要素5を構成する2つのリンク歯列50は、互いに上側部分で噛合している。以下、必要に応じて、2つのリッド2の一方を第1リッド2fと称し、他方を第2リッド2sと称し、第1リッド2fのリッド本体部20を第1リッド本体部20fと称し、第2リッド2sのリッド本体部20を第2リッド本体部20sと称する。なお、2つのリッド2のうち
図4中右側に位置する方が第1リッド2fであり、
図4中左側に位置する方が第2リッド2sである。
【0059】
また、必要に応じて、第1リッド本体部20fの前側部分に一体化されているリッド側脚部30を第1リッド側脚部30fと称し、第2リッド本体部20sの前側部分に一体化されているリッド側脚部30を第2リッド側脚部30sと称する。さらに必要に応じて、第1リッド側脚部30fを枢支しているリンク側脚部35を第1リンク側脚部35fと称し、第2リッド側脚部30sを枢支しているリンク側脚部35を第2リンク側脚部35sと称し、第1リンク側脚部35fに設けられている枢支軸37を第1枢支軸37fと称し、第2リンク側脚部35sに設けられている枢支軸37を第2枢支軸37sと称し、第1リンク側脚部35fの第1枢支軸37fに取り付けられている付勢要素6を第1付勢要素6fと称し、第2リンク側脚部35sの第2枢支軸37sに取り付けられている付勢要素6を第2付勢要素6sと称する。
【0060】
図4に示す閉状態において、第1付勢要素6f及び第2付勢要素6sは圧縮されて付勢力を蓄積した状態にある。
したがって、閉状態において、第1リンク側脚部35fには、第1付勢要素6fによる
図4中反時計回りの付勢力が作用する。また、第2リンク側脚部35sには、第2付勢要素6sによる
図4中時計回りの付勢力が作用する。
【0061】
なお、既述したように、このとき、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは、ロック要素7によって閉位置にロックされている。このため、第1リンク側脚部35f及び第2リンク側脚部35sもまた、第1付勢要素6f及び第2付勢要素6sの付勢力に抗して、
図4に示す閉位置に保たれる。
【0062】
ロック要素7のスイッチ部70を下方に押圧すると、既述したように、ロック部71の鉤頭部73とリッド2のロック受け部76との係合が解除される。
【0063】
すると、
図5に示すように、第1付勢要素6f(図略)の付勢力により第1リンク側脚部35fは第1枢支軸37fを中心として
図5中反時計回りに回動する。また、第2付勢要素6s(図略)の付勢力により第2リンク側脚部35sは第2枢支軸37sを中心として
図5中時計回りに回動する。なお、第1リンク側脚部35fと第2リンク側脚部35sとは、リンク要素5の2つのリンク歯列50によって同期されているため、このときの第1リンク側脚部35fの回動速度と第2リンク側脚部35sの回動速度とは略同じである。
【0064】
このとき、第1リンク側脚部35fのリンク側枢支部36は第1枢支軸37fを中心とした円弧上を下降する。このため、当該リンク側枢支部36が挿入されている第1リッド側脚部30fのリッド側枢支部32もまた、同じ円弧上を下降する。同様に、第2リンク側脚部35sのリンク側枢支部36は第2枢支軸37sを中心とした円弧上を下降する。このため、当該リンク側枢支部36が挿入されている第2リッド側脚部30sのリッド側枢支部32もまた、同じ円弧上を下降する。
【0065】
ここで、
図6に示すように、第1リッド側脚部30fのガイド歯列31、及び第2リッド側脚部30sのガイド歯列31は、各々、対応するガイドラック15と噛合している。このため、第1リッド側脚部30f及び第2リッド側脚部30sは、各々、各ガイドラック15に案内されて回動しつつ下降する。したがってこのとき、
図6に示すように、第1リッド側脚部30f及び当該第1リッド側脚部30fに一体化されている第1リッド本体部20f、並びに、第2リッド側脚部30s及び当該第2リッド側脚部30sに一体化されている第2リッド本体部20sは、各々、対応する枢支軸37及びリッド側枢支部32を中心として二軸的に回動する。
【0066】
具体的には、第1リッド側脚部30f及び第1リッド本体部20fは、第1リッド側脚部30fのリッド側枢支部32を中心として
図6中反時計回りに回動する。当該リッド側枢支部32は第1枢支軸37fを中心として反時計回りに回動するため、第1リッド本体部20fは、第1リッド側脚部30fのリッド側枢支部32及び第1枢支軸37fを中心として二軸的に回動するといえる。
【0067】
また、第2リッド側脚部30s及び第2リッド本体部20sは、第2リッド側脚部30sのリッド側枢支部32を中心として
図6中時計回りに回動する。当該第2リッド側脚部30sのリッド側枢支部32は第2枢支軸37sを中心として時計回りに回動するため、第2リッド本体部20sは、第2リッド側脚部30sのリッド側枢支部32及び第2枢支軸37sを中心として二軸的に回動するといえる。
【0068】
第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sがこのように二軸的に回動することで、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sの開位置と閉位置との間の移動軌跡を小さくすることができ、車両用ボックス装置を限られた空間である車両室内に好ましく搭載することとができる。
【0069】
第1リッド2f、第2リッド2s及びリンク要素5は、
図7に示す半開状態を経て、
図8に示す開状態にまで状態変化する。第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは、
図7に示す半開位置を経て、
図8に示す開位置にまで二軸的に回動する。
【0070】
図8に示す開位置において、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは、各々、開上面部22uを上に向け、閉上面部21uを側方に向ける。このとき、第1リッド本体部20fの基材カバー25cはボックス1の右側外周壁124における上面に当接し、第2リッド本体部20sの基材カバー25cはボックス1の左側外周壁125における上面に当接する。このため当該ボックス1の右側外周壁124の上面及び左側外周壁125の上面が、各々、開ストッパ部16として機能し、リッド2の回動が停止する。
【0071】
より具体的には、このとき開ストッパ部16はリッド本体部20を下側から支持し、位置規制する。このため、リッド本体部20の開方向への更なる位置変化は抑制され、かつ、リッド本体部20に作用する荷重は当該開ストッパ部16によって受け止められる。
【0072】
また、第1リッド本体部20fの開上面部22u及び第2リッド本体部20sの開上面部22uは、各々、クッション部28で構成されている。したがって、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは、開位置においても、アームレストとして好適に使用される。
【0073】
なお、開上面部22uがクッション部28で構成されているため、仮に乗員がリッド本体部20に腕などをぶつけたとしても、その衝撃はクッション部28によって吸収される。したがって、実施例1の車両用ボックス装置では、このような場合に乗員に与える不快感が低減される。つまり、この点においても、実施例1の車両用ボックス装置は車両室内の限られた空間に搭載する車両用ボックス装置として好適である。
【0074】
ここで、
図9に示すように、各リッド本体部20の開上面部22uの幅W1、すなわち、車幅方向における開上面部22uの長さは、20mmと十分に長い。したがって、乗員は、開上面部22uの上に腕を安定して載せることができる。なお、開上面部22uに連続する傾斜面20slもまたクッション部28で構成され(
図8参照)、アームレストとして使用可能である。当該傾斜面20slの幅と閉上面部21uの幅との和W2は35mmと、開上面部22uの幅W1よりも更に長い。更に、傾斜面20slは面取りされていることから感触も優しい。このことによっても、実施例1の車両用ボックス装置には優れた使用感が付与されている。
【0075】
また、実施例1の車両用ボックス装置において、開位置における開上面部22uの上下方向の位置(
図9中実線で示す)と、閉位置における閉上面部21uの上下方向の位置(
図9中二点鎖線で示す)との差W3は、10mmと非常に小さい。このため、乗員はリッド本体部20が開位置にあるときにも、閉位置にあるときにも、違和感なく、リッド本体部20をアームレストとして使用できる。このことによっても、実施例1の車両用ボックス装置は使用感に優れるといえる。
【0076】
更に、開位置において、2つのリッド本体部20の基材カバー25cは、各々、ボックス1の右側外周壁124又は左側外周壁125の上面、すなわち開ストッパ部16に、上側から当接する。当該開ストッパ部16は、リッド2のうち枢支軸37から離れた位置にある基材カバー25cに当接するため、各リッド本体部20は開位置に安定して保たれる。このため、リッド本体部20によって乗員の腕を安定して支えることができ、各リッド本体部20のアームレストとしての使用感は更に向上する。
【0077】
開位置にあるリッド本体部20を閉位置に回動させて車両用ボックス装置を開状態から閉状態に状態変化させる場合には、付勢要素6の付勢力に抗して、乗員が手動でリッド本体部20を開位置から閉位置にまで回動させれば良い。このとき、リンク要素5によって2つのリッド2が同期することから、乗員は一方のリッド本体部20のみを開位置から閉位置に回動させるだけで良い。
【0078】
なお、ロック要素7のロック部71は、ロック付勢要素によって後側すなわちリッド2側に鉤頭部73を近づける方向に付勢されている。このため、半開位置から閉位置に向かうリッド本体部20の下側において、鉤頭部73がリッド本体部20に干渉する。しかし、鉤頭部73の上後部は、
図1に示すように、上側かつ前側から下側かつ後側に向けた傾斜面を有する。したがって、鉤頭部73に当接したリッド本体部20は、鉤頭部73の当該傾斜面上を相対的に滑り、鉤頭部73はロック付勢要素の付勢力に抗して前側に向けて回動する。このためリッド本体部20は、ロック部71の鉤頭部73によって停止することなく、閉位置に向けて回動する。
【0079】
2つのリッド本体部20が閉位置まで回動すると、ロック部71の各鉤頭部73は、各リッド本体部20のロック受け部76と再度係合する。このため各リッド本体部20は閉位置にロックされ、各リッド2は閉状態に保たれる。
【0080】
実施例1の車両用ボックス装置においては、リッド本体部20が傾斜面20slを有する切り欠き形状をなす。このため、
図2に示すように、閉状態にある2つのリッド本体部20は、接触していようが離れていようが、視覚的に分断される。このため、例えばリッド2の寸法精度が比較的低く、閉位置において二つのリッド本体部20が意図せず離れてしまった場合にも、実施例1の車両用ボックス装置は意匠的に不具合があるようには見え難い。
【0081】
つまり、実施例1の車両用ボックス装置におけるリッド本体部20、特に傾斜面20sl近傍の部分には厳密な寸法精度が要求されないため、当該車両用ボックス装置を安価に製造できる利点がある。
【0082】
また、
図3に示すように、実施例1の車両用ボックス装置におけるリッド2は、開位置においてボックス1の側方すなわちボックス1の外部に配置される。このため、実施例1の車両用ボックス装置によると、開位置においてリッド2をボックス1の内部空間11に収容する場合に比べて、リッド2を大きくでき、かつ、内部空間11を十分な大きさにできる。リッド2、特にリッド本体部20を大きくできれば、その分だけ、リッド本体部20によって乗員の腕を安定して支えることができ、アームレストとしての使用感が向上する。したがって、このことによっても、本発明の車両用ボックス装置は使用感に優れるといえる。
【0083】
ところで、開位置においてリッド本体部20の全体をボックス1の上面よりも下方に配置する場合には、ボックス1の側方に、リッド本体部20を配置するための比較的大きな空間が必要である。これに対して、実施例1の車両用ボックス装置のように、リッド本体部20の開上面部22uおよびその周辺部分が、開位置においてボックス1の上方に張り出している場合には、当該リッド本体部20を配置するための空間を低減することができる。この場合には、削減した当該空間を内部空間11に充てることもでき、車両用ボックス装置に比較的大きな内部空間11を付与することも可能である。
【0084】
(実施例2)
実施例2の車両用ボックス装置は、リッド本体部及びボックスの外周壁の形状において実施例1の車両用ボックス装置と異なり、その他は実施例1の車両用ボックス装置と概略同様である。
図10はリッド本体部が開位置にあるときの実施例2の車両用ボックス装置を模式的に表す図であり、
図11はリッド本体部が閉位置にあるときの実施例2の車両用ボックス装置を模式的に表す図である。
図12~
図14は実施例2の車両用ボックス装置の動作を説明する説明図である。
【0085】
以下、実施例1の車両用ボックス装置と相違する部分を中心に、実施例2の車両用ボックス装置を説明する。
【0086】
実施例2の車両用ボックス装置における第1リッド2f及び第2リッド2sは、実施例1の車両用ボックス装置における第1リッド2f及び第2リッド2sと同様に、開状態と閉状態との間を状態変化し、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは開位置と閉位置との間を二軸的に回動する。
【0087】
図10に示すように、実施例2の車両用ボックス装置におけるリッド本体部20は傾斜面を持たず、閉上面部21uと開上面部22uとは角状に連続している。このため、第1リッド本体部20f及び第2リッド本体部20sは、閉位置において連続しているように見える。リッド本体部20をこのような形状にすることで、
図11に示すように、開位置におけるリッド本体部20の開上面部22uの幅W1を大きくでき、当該開上面部22uによって乗員の腕をより安定に支持できる利点がある。なお、実施例2の車両用ボックス装置における開上面部22uの幅W1は、35mmである。
【0088】
また、実施例2の車両用ボックス装置のボックス1における外周壁120は、リッド本体部20の閉下面部21l、つまり基材カバー25cの形状に対応する形状である。
図12に示すように、開位置において、第1リッド本体部20fは、ボックス1の右側方に配置され、右側外周壁124に対面するとともに当該右側外周壁124の一部に当接する。また、開位置において、第2リッド本体部20sは、ボックス1の左側方に配置され、左側外周壁125に対面するとともに当該左側外周壁125の一部に当接する。
【0089】
具体的には、第1リッド本体部20fの基材カバー25cは、
図12に示す開位置において、ボックス1における右側外周壁124の上面124u、及び、当該上面124uに連続し左上方から右下方に傾斜する上斜面124slに、上側から当接する。また、当該第1リッド本体部20fの基材カバー25cは、開位置において、当該上斜面124slの下側に連続し上下方向に延びるストレート面124sに、右側、すなわち、車幅方向の外側から当接する。更に、上記のボックス1におけるストレート面124sよりも更に下側には、左上方から右下方に緩やかに傾斜する底斜面124bが設けられている。第1リッド本体部20fのうち開位置において下端に配置される部分は、開位置において、当該底斜面124bに上側から当接する。
【0090】
このため第1リッド本体部20fは、開位置において、ボックス1の右側外周壁124に干渉されて、下側及び左側に位置変化できない。換言すると、閉位置から開位置に回動した第1リッド本体部20fの更なる回動は、ボックス1の右側外周壁124によって阻害される。
【0091】
一方、第2リッド本体部20sの基材カバー25cは、開位置において、ボックス1における左側外周壁125の上面125u、及び、当該上面125uに連続し右上方から左下方に傾斜する上斜面125slに、上側から当接する。また、当該第2リッド本体部20sの基材カバー25cは、開位置において、当該上斜面125slの下側に連続し上下方向に延びるストレート面125sに、左側、すなわち、車幅方向の外側から当接する。更に、上記のボックス1におけるストレート面125sよりも更に下側には、右上方から左下方に緩やかに傾斜する底斜面125bが設けられている。第2リッド本体部20sのうち開位置において下端に配置される部分は、開位置において、当該底斜面125bに上側から当接する。
このため第2リッド本体部20sは、開位置において、ボックス1の左側外周壁125に干渉されて、下側及び右側に位置変化できない。換言すると、閉位置から開位置に回動した第2リッド本体部20sの更なる回動は、ボックス1の左側外周壁125によって阻害される。
【0092】
上記した、ボックス1の右側外周壁124の上面124u、上斜面124sl、ストレート面124s及び底斜面124bは、何れも、開位置における第1リッド本体部20fに当接する開ストッパ部16として機能する。同様に、ボックス1の左側外周壁125の上面125u、上斜面125sl、ストレート面125s及び底斜面125bは、何れも、開位置における第2リッド本体部20sに当接する開ストッパ部16として機能する。
以下、必要に応じて、当該開ストッパ部16を「リッド本体部20用の開ストッパ部16m」と称する。
【0093】
図10に示すように、実施例2の車両用ボックス装置のボックス1における前外周壁122は、さらに2つの開ストッパ部16を有する。当該2つの開ストッパ部16の一方は、開位置において、第1リッド側脚部30f及び第2リッド側脚部30sに各々当接する。以下、必要に応じて、当該開ストッパ部16を「リッド側脚部30用の開ストッパ部16ld」と称する。また、上記2つの開ストッパ部16の他方は、開位置において、第1リンク側脚部35f及び第2リンク側脚部35sに各々当接する。以下、必要に応じて、当該開ストッパ部16を「リンク側脚部35用の開ストッパ部16lk」と称する。
【0094】
図13に示すように、各リッド側脚部30用の開ストッパ部16ldは、前外周壁122から前側に突起する立壁状をなす。開ストッパ部16ldの一方は、開状態における第1リッド側脚部30fの下面に当接する底面160bと、開状態における第1リッド側脚部30fの右側面に当接する側面160sとを有する。換言すると、第1リッド側脚部30fは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16ldに上側及び右側から当接する。このため第1リッド側脚部30fは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16ldに干渉されて下側及び左側に位置変化できない。換言すると、車両用ボックス装置が閉状態から開状態にまで状態変化すると、第1リッド側脚部30fの更なる回動が開ストッパ部16ldによって阻害される。
【0095】
また、2つの開ストッパ部16ldの他方は、開状態における第2リッド側脚部30sの下面に当接する底面161bと、開状態における第2リッド側脚部30sの左側面に当接する側面161sとを有する。換言すると、第2リッド側脚部30sは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16ldに上側及び左側から当接する。このため第2リッド側脚部30sは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16ldに干渉されて下側及び左側に位置変化できない。換言すると、車両用ボックス装置が閉状態から開状態にまで状態変化すると、第2リッド側脚部30sの更なる回動が開ストッパ部16ldによって阻害される。
【0096】
図14に示すように、リンク側脚部35用の開ストッパ部16lkは、リッド側脚部30の開ストッパ部16ldと同様に、前外周壁122から前側に突起する立壁状をなす。開ストッパ部16lkの一方は、開状態における第1リンク側脚部35fの下面に当接する底面162bと、開状態における第1リンク側脚部35fの左側面に当接する側面162sとを有する。換言すると、第1リンク側脚部35fは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16lkに上側及び右側から当接する。このため第1リンク側脚部35fは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16lkに干渉されて下側及び左側に位置変化できない。換言すると、車両用ボックス装置が閉状態から開状態にまで状態変化すると、第1リンク側脚部35fの更なる回動が開ストッパ部16lkによって阻害される。
【0097】
同様に、2つの開ストッパ部16lkの他方は、開状態における第2リンク側脚部35sの下面に当接する底面163bと、開状態における第2リンク側脚部35sの右側面に当接する側面163sとを有する。換言すると、第2リンク側脚部35sは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16lkに上側及び左側から当接する。このため第2リンク側脚部35sは、車両用ボックス装置が開状態にあるときには、開ストッパ部16lkに干渉されて下側及び右側に位置変化できない。換言すると、車両用ボックス装置が閉状態から開状態にまで状態変化すると、第2リンク側脚部35sの更なる回動が開ストッパ部16lkによって阻害される。
【0098】
以上のように、実施例2の車両用ボックス装置が開状態にあるときには、リッド本体部20用の開ストッパ部16mによってリッド本体部20が位置規制され、リッド側脚部30用の開ストッパ部16ldによってリッド側脚部30が位置規制され、かつ、リンク側脚部35用の開ストッパ部16lkによってリンク側脚部35が位置規制される。このため、実施例2の車両用ボックス装置におけるリッド2は、強固に位置規制され、リッド本体部20は非常に安定して開位置に保たれる。このため、実施例2の車両用ボックス装置のリッド本体部20は、乗員の腕を更に安定して支えることができ、各リッド本体部20のアームレストとしての使用感は更に向上する。
【0099】
なお、開ストッパ部16は、開位置においてリッド本体部20と当接しても良いし、リッド側脚部30やリンク側脚部35のような脚部と当接しても良い。何れの場合にも、開ストッパ部16によって、開位置にあるリッド本体部20の位置規制がなされることで、車両用ボックス装置にアームレストとしての優れた使用感が付与される。
【0100】
好ましくは、開ストッパ部16は、開位置にあるリッド本体部20の更なる開方向への位置変化を規制でき、かつ、アームレストとしての使用時にリッド本体部20に作用する荷重を受け止め得るのが良い。こうすることで、アームレストとしての使用時のリッド本体部20の安定感や、車両用ボックス装置の耐久性が向上する。
【0101】
開ストッパ部16は、特に、開位置におけるリッド本体部20に当接するのが良い。リッド本体部20は、アームレストとしての使用時に、乗員からの荷重が作用する部分であるため、当該リッド本体部20が開ストッパ部16に直接当接することで、リッド本体部20に作用した荷重を開ストッパ部16によって効率よく受け止めることができる。
【0102】
実施例2の車両用ボックス装置において、リッド本体部20用の開ストッパ部16mと枢支軸37との距離、リッド側脚部30用の開ストッパ部16ldと枢支軸37との距離、および、リンク側脚部35用の開ストッパ部16lkと枢支軸37との距離は、各々20mm以上である。
【0103】
本発明は、上記し且つ図面に示した実施形態にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。また、実施形態を含む本明細書に示した各構成要素は、それぞれ任意に抽出し組み合わせて実施できる。
【0104】
本発明の車両用ボックス装置は、以下のように表現できる。
〔1〕
開口10を上方に向けた内部空間11を有するボックス1と、
リッド本体部20と、前記リッド本体部20に一体化され前記ボックス1に対して枢支される枢支軸37と、を有し前記ボックス1の前記開口10を開閉する2つのリッド2と、
前記2つのリッド2を接続し前記2つのリッド2の位置を同期させるリンク要素5と、を有し、
2つの前記リッド2は、前記リッド本体部20が前記ボックス1の上方に配置され前記開口10を閉じる閉位置と、前記リッド本体部20が前記ボックス1の対向する2つの側方に各々配置され前記開口10を開く開位置と、の間を位置変化し、
前記リッド本体部20は、弾性変形可能なクッション部28と、前記クッション部28よりも硬質の基材部25と、を有し、
前記リッド本体部20のうち、前記開位置における上面となる開上面部22uと、前記閉位置における上面となる閉上面部21uとは、前記クッション部28で構成されている、車両用ボックス装置。
〔2〕
前記開位置における前記開上面部22uの上下方向の位置と、前記閉位置における前記閉上面部21uの上下方向の位置と、の差は30mm以内である、〔1〕に記載の車両用ボックス装置。
〔3〕
前記開上面部22uの幅W1は20mm以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の車両用ボックス装置。
〔4〕
前記ボックス1は、前記開位置において、前記リッド2のうち前記枢支軸37以外の部分に当接する開ストッパ部16を有する、〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の車両用ボックス装置。
〔5〕
前記開ストッパ部16は、前記ボックス1部の周壁12に設けられ、前記開位置において前記リッド本体部20は前記開ストッパ部16に当接する、〔4〕に記載の車両用ボックス装置。
【符号の説明】
【0105】
1:ボックス 2:リッド
5:リンク要素 10:開口
11:内部空間 16:開ストッパ部
20:リッド本体部 21u:閉上面部
22u:開上面部 25:基材部
28:クッション部 37:枢支軸
W1:閉上面部の幅