(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】運転支援車両の制御方法及び制御システム
(51)【国際特許分類】
B60W 50/02 20120101AFI20230912BHJP
【FI】
B60W50/02
(21)【出願番号】P 2022077604
(22)【出願日】2022-05-10
(62)【分割の表示】P 2020530738の分割
【原出願日】2018-07-16
【審査請求日】2022-05-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩野目 恒二
【審査官】二之湯 正俊
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102014213171(DE,A1)
【文献】特開平10-076964(JP,A)
【文献】特開2018-062308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラが搭載された運転支援車両の制御方法であって、
同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、前記運転支援制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能をそれぞれで分担する前記複数のコントローラを、正常モードのときには、全てのコントローラを用いて要求される動作機能が達成される一方、コントローラに失陥が発生したときには、複数のコントローラ群にグループ分けして区分し、ネットワーク通信線で互いに接続する形態によりネットワークトポロジーを構築し、
前記運転支援制御を正常モードにて実行中、前記複数のコントローラの何れかに失陥が発生したか否かを判断し、
前記複数のコントローラの何れかに失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対して前記ネットワーク通信線を介し失陥情報を送出
すると共に、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力し、
前記正常コントローラ群が前記ネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、前記正常コントローラ群を構成するコントローラにより、前記失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行し、
前記失陥モードの実行中、
前記ドライバによる操作復帰が判断されると、マニュアル運転モードへと移行する
ことを特徴とする運転支援車両の制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載された運転支援車両の制御方法において、
前記ドライバによる操作復帰は、ステアリングホイールにドライバが操舵力を加えたことで判断する
ことを特徴とする運転支援車両の制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載された運転支援車両の制御方法において、
前記ステアリングホイールに
前記ドライバが操舵力を加えたことは、ステアリングシステムに設けられたトルクセンサにて検知する
ことを特徴とする運転支援車両の制御方法。
【請求項4】
運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラが搭載された運転支援車両の制御システムであって、
同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、前記運転支援制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能をそれぞれで分担する前記複数のコントローラを、正常モードのときには、全てのコントローラを用いて要求される動作機能が達成される一方、コントローラに失陥が発生したときには、複数のコントローラ群にグループ分けして区分し、ネットワーク通信線で互いに接続する形態によりネットワークトポロジーを構築し、
前記コントローラ群での情報処理を統合的に扱うコントローラは、
前記運転支援制御を正常モードにて実行中、前記複数のコントローラの何れかに失陥が発生したか否かを判断する失陥判断部と、
前記複数のコントローラの何れかに失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対して前記ネットワーク通信線を介し失陥情報を送出する
と共に、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力する失陥情報送出部と、
前記正常コントローラ群が前記ネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると
、前記正常コントローラ群を構成するコントローラにより、正常コントローラ群を構成するコントローラが、前記失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行するフェールセーフ制御部と、を有し、
前記失陥モードの実行中、
前記ドライバによる操作復帰が判断されると、マニュアル運転モードへと移行する
ことを特徴とする運転支援車両の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援車両の制御方法及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両における自動化されたタスクを統合的に制御できるシステムを提供することを課題とし、以下に述べる解決手段による自動化された運転のためのフェールセーフE/Eアーキテクチャが開示されている。即ち、第1の計算ユニット(1)は、少なくとも1つのセンサ(3)及び少なくとも1つのアクチュエータ(4)とコンタクトをとるためのインターフェースを有する。第2の計算ユニット(2)は、少なくとも1つのセンサ(3)及び少なくとも1つのアクチュエータ(4)とコンタクトをとるためのインターフェースを有する。第1の計算ユニット(1)及び第2の計算ユニット(2)は、インターフェース(5)を介し相互に接続を形成する。第1の計算ユニット(1)及び/又は第2の計算ユニット(2)及び/又はアクチュエータ(4)は、第1又は第2の計算ユニット(1,2)がアクチュエータ(4)を実効的に駆動制御可能であるか否かを決定するように構成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたフェールセーフE/Eアーキテクチャは、何れかのコントローラに失陥が生じても、失陥が生じる前と同一の動作が実施できるように冗長構成とされている。このため、同一のコントローラ及びアクチュエータを複数有する制御システム構成にする必要がある、という問題があった。
【0005】
本開示は、上記問題に着目してなされたもので、車載された複数のコントローラの何れかに失陥が発生した場合、制御システム構成を冗長構成にすることなく、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示は、運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラが搭載された運転支援車両の制御方法である。
同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、運転支援制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能をそれぞれで分担する複数のコントローラを、正常モードのときには、全てのコントローラを用いて要求される動作機能が達成される一方、コントローラに失陥が発生したときには、複数のコントローラ群にグループ分けして区分し、ネットワーク通信線で互いに接続する形態によりネットワークトポロジーを構築する。
このネットワークトポロジーによる制御方法は、下記の通りとする。
運転支援制御を正常モードにて実行中、複数のコントローラの何れかに失陥が発生したか否かを判断する。
複数のコントローラの何れかに失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対して前記ネットワーク通信線を介し失陥情報を送出すると共に、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力する。
正常コントローラ群がネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、正常コントローラ群を構成するコントローラにより、失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する。
失陥モードの実行中、ドライバによる操作復帰が判断されると、マニュアル運転モードへと移行する。
【発明の効果】
【0007】
運転支援制御を正常モードにて実行中、複数のコントローラの何れかに失陥が発生したと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対してネットワーク通信線を介し失陥情報が送出される。正常コントローラ群がネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、正常コントローラ群を構成するコントローラにより、失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モードが実行される。この結果、車載された複数のコントローラの何れかに失陥が発生した場合、制御システム構成を冗長構成にすることなく、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
運転支援制御を正常モードにて実行中、複数のコントローラの何れかに失陥が発生したと判断されると、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報が出力される。失陥モードの実行中、ドライバによる操作復帰が判断されると、マニュアル運転モードへと移行される。即ち、運転支援車両の場合、最終的なフェールセーフ動作は、ドライバによるマニュアル操作である。よって、運転支援モードを選択中における失陥モードでは、失陥が発生してからドライバによるマニュアル操作に受け渡すまでの間、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の制御方法及び制御システムが適用された自動運転車両に搭載された複数のコントローラを第1コントローラ群と第2コントローラ群とに区分したネットワークトポロジーを示す全体制御システム図である。
【
図2】複数のコントローラのうち第1コントローラ群に有するADASコントローラと第2コントローラ群に有するADASサブコントローラによるフェールセーフ制御系構成を示す制御ブロック図である。
【
図3】実施例1の制御システムにより自動運転モードの選択時に実行されるフェールセーフ制御作用の流れを示すフローチャートである。
【
図4】転舵アクチュエータ動作機能を分担するステアリング制御システムでの正常モードを示す作用説明図である。
【
図5】ステアリング制御システムでの失陥モード1を示す作用説明図である。
【
図6】ステアリング制御システムでの失陥モード2を示す作用説明図である。
【
図7】制動アクチュエータ動作機能を分担するブレーキ制御システムでの正常モードを示す作用説明図である。
【
図8】ブレーキ制御システムでの失陥モード1を示す作用説明図である。
【
図9】ブレーキ制御システムでの失陥モード2を示す作用説明図である。
【
図10】自車の走行レーン認識動作機能を分担する走行レーン認識制御システムでの正常モードを示す作用説明図である。
【
図11】走行レーン認識制御システムでの失陥モード1を示す作用説明図である。
【
図12】走行レーン認識制御システムでの失陥モード2を示す作用説明図である。
【
図13】自車の前方障害物認識動作機能を分担する前方障害物認識制御システムでの正常モードを示す作用説明図である。
【
図14】前方障害物認識制御システムでの失陥モード1を示す作用説明図である。
【
図15】前方障害物認識制御システムでの失陥モード2を示す作用説明図である。
【
図16】自車の側方障害物認識動作機能を分担する側方障害物認識制御システムでの正常モードを示す作用説明図である。
【
図17】側方障害物認識制御システムでの失陥モード1を示す作用説明図である。
【
図18】側方障害物認識制御システムでの失陥モード2を示す作用説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による運転支援車両の制御方法及び制御システムを実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
実施例1における制御方法及び制御システムは、自動車専用道路の単一車線での自動運転を実現する自動運転車両(運転支援車両の一例)に適用したものである。以下、実施例1の構成を、「全体制御システム構成」、「フェールセーフ制御系構成」に分けて説明する。
【0011】
[全体システム構成]
図1は、実施例1の制御方法及び制御システムが適用された自動運転車両に搭載された複数のコントローラを第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bとに区分したネットワークトポロジーを示す。
図1に基づいて全体システム構成を説明する。
【0012】
自動運転車両は、自動運転モードを選択すると、自動車専用道路の単一車線での自動運転を実現する電動車両である。例えば、自動運転モードを選択しての走行中、車線の逸脱を検知すると、走行レーンの中央付近を走行するようにステアリングを制御し、運転者のハンドル操作を支援する。自動運転モードを選択しての走行中、先行車を検出していないときは運転者がセットした車速で走行し、先行車を検出しているときは運転者がセットした車速を上限として車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行う。渋滞路等において先行車追従走行で停止する場合はVDCによるブレーキ制御を行い、停止状態を続ける要求があると電動パーキングブレーキを作動させる。このように、自動運転車両は、ハンドル操作支援や車速の加減速調整や駐停車の何れもサポートする技術を備えた車両とされる。
【0013】
自動運転車両に搭載される複数のコントローラは、自動運転制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能をそれぞれで分担し、正常モードのときに全てのコントローラを用いて要求される動作機能を達成するコントローラである。そして、同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、複数のコントローラを、第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bに区分してネットワークトポロジーを構築している。即ち、「ネットワークトポロジー」とは、複数のコントローラを、同等の動作機能を第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bのそれぞれで実現するという設計思想に基づいてグループ分けし、ネットワーク通信線で互いに接続する形態をいう。
【0014】
第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bのネットワーク通信線/電源は、電気的/物理的に独立させている。即ち、一方のコントローラ群に有するコントローラに失陥が発生した場合、他方のコントローラ群に有するコントローラでのバックアップにより、失陥コントローラ群の動作機能を担保できるようにしている。
【0015】
第1コントローラ群Aのコントローラとして、
図1に示すように、ADASコントローラ1と、AVMコントローラ2と、RADARコントローラ3と、HDmapコントローラ4と、SRコントローラ5と、を備えている。さらに、eACTコントローラ6と、StBW1コントローラ7と、を備えている。
【0016】
第1コントローラ群Aのネットワーク通信線として、
図1に示すように、第1CAN通信線8と、第2CAN通信線9と、第3CAN通信線10と、第4CAN通信線11と、第1LAN通信線12と、を備えている。
【0017】
即ち、第1CAN通信線8によって、ADASコントローラ1とAVMコントローラ2とRADARコントローラ3とHDmapコントローラ4が接続されている。第2CAN通信線9によってADASコントローラ1とSRコントローラ5が接続されている。第3CAN通信線10によって、ADASコントローラ1とeACTコントローラ6が接続されている。第4CAN通信線11によって、ADASコントローラ1とStBW1コントローラ7が接続されている。そして、第1LAN通信線12によって、ADASコントローラ1とHDmapコントローラ4が接続されている。
【0018】
ADASコントローラ1は、ドライバの運転操作を支援する先進運転支援システムにおいて、フェールセーフ制御を含み第1コントローラ群Aでの情報処理を統合的に扱うコントローラである。このADASコントローラ1では、HDmapコントローラ4からの高精度地図情報と、図外のGPSからの自車位置情報とを入力する。そして、自動運転モードの選択により単一車線に沿っての走行中、車線の逸脱を検知すると、ステアリングを補正する制御指令をStBW1コントローラ7へ出力する。また、単一車線に沿っての走行中に先行車割り込み等があった場合、先行車との車間距離を維持するために自車の減速が必要と判断されると、車両減速度を要求減速度まで落とす制御指令をeACTコントローラ6へ出力する。
なお、「ADAS」とは、「Advanced driver-assistance system」の略称である。
【0019】
AVMコントローラ2は、自車周囲認識システム(全方位モニタシステム)において、自車の全周域に存在する障害物や道路に描かれた駐車枠や白線による走行レーン等をカメラ画像データに基づいて認識する機能を分担するコントローラである。このAVMコントローラ2では、前後左右の4方向に向けて設置された車載カメラからの画像データを入力して画像処理を行い、自車周囲に障害物が存在すると判断されると、自車から障害物までの距離を演算する。そして、自車周囲の障害物位置情報や障害物までの距離情報をADASコントローラ1へ出力する。
なお、「AVM」とは、「Around View Monitor」の略称である。
【0020】
RADARコントローラ3は、自車周囲認識システム(フロントレーダーシステム)において、自車の前方領域に存在する前方障害物をレーダー反射波に基づいて認識する機能を分担するコントローラである。このRADARコントローラ3では、自車の前方に向けて設置されたフロントレーダーからのセンサ信号を入力し、自車の前方領域に前方障害物が存在すると判断されると、自車から前方障害物までの距離を演算する。そして、前方障害物位置情報や前方障害物までの距離情報をADASコントローラ1へ出力する。
【0021】
HDmapコントローラ4は、GPSにて自車位置を認識すると、電子地図データマップが格納された車載メモリから自車位置を中心とする地図データを切り取り、ADASコントローラ1へ出力するコントローラである。ここで、「HDマップ」とは、GPS地図マップに比べて詳細な道路情報(例えば、道路種別、車線幅、道路形状、等)による高精度地図マップのことをいう。
【0022】
SRコントローラ5は、自車周囲認識システム(サイドレーダーシステム)において、自車の左右側方領域に存在する側方障害物をレーダー反射波に基づいて認識する機能を分担するコントローラである。このSRコントローラ5は、自車の側方に向けて設置されたサイドレーダーからのセンサ信号を入力し、自車の側方領域に側方障害物が存在すると判断されると、自車から側方障害物までの距離を演算する。そして、側方障害物位置情報や側方障害物までの距離情報をADASコントローラ1へ出力する。なお、サイドレーダーとしては、例えば、左前側方位置と左後側方位置と右前側方位置と右後側方位置にそれぞれ設けられる。
【0023】
eACTコントローラ6は、車載のブレーキ制御システムにおいて、ブレーキペダルとマスタシリンダの間に介装される電動ブースタを用いる制動アクチュエータ動作機能を分担するコントローラである。このeACTコントローラ6では、ADASコントローラ1から減速制御指令を入力すると、車両減速度を要求減速度まで落とす指令を電動ブースタのモータへ出力する。
【0024】
StBW1コントローラ7は、車載のステアリング制御システムにおいて、ステア・バイ・ワイヤ構造のうちタイヤ転舵系に設けられる第1転舵モータを用いる転舵アクチュエータ動作機能を分担するコントローラである。このStBW1コントローラ7では、ADASコントローラ1からステアリングを補正する制御指令を入力すると、目標とする転舵補正量とする指令を第1転舵モータへ出力する。ここで、「StBW」とは、ハンドル操作系とタイヤ転舵系とがステアリングクラッチを介し機械的に分離可能とされているステア・バイ・ワイヤのことをいう。
【0025】
ここで、ステア・バイ・ワイヤ構造は、ステアリングクラッチによりハンドル操作系とタイヤ転舵系とに分けられる。そして、ステアリングクラッチが解放される「SBWモード」と、ステアリングクラッチが締結される「EPSモード(電動パワーステアリングモード)」を有する。ハンドル操作系には、「SBWモード」の選択時にステアリングホイールに操舵反力を与える反力モータを備える。タイヤ転舵系には、「SBWモード」の選択時にタイヤを転舵する第1転舵モータと、「EPSモード」の選択時に操舵系にアシストトルクを与える第2転舵モータと、を備える。
【0026】
第2コントローラ群Bのコントローラとして、
図1に示すように、ADASサブコントローラ21と、FrCAMERAコントローラ22と、SONARコントローラ23と、を備えている。さらに、VDCコントローラ24と、E-PKBコントローラ25と、StBW2コントローラ26と、を備えている。
【0027】
第2コントローラ群Bのネットワーク通信線として、
図1に示すように、第5CAN通信線27と、第6CAN通信線28と、を備えている。
【0028】
即ち、第5CAN通信線27によって、ADASサブコントローラ21とFrCAMERAコントローラ22とSONARコントローラ23とStBW2コントローラ26が接続される。第6CAN通信線28によって、ADASサブコントローラ21とVDCコントローラ24とE-PKBコントローラ25が接続される。
【0029】
ADASサブコントローラ21は、ドライバの運転操作を支援する先進運転支援システムにおいて、フェールセーフ制御を含み第2コントローラ群Bでの情報処理を統合的に扱うサブコントローラである。このADASサブコントローラ21では、FrCAMERAコントローラ22からの走行レーンや障害物情報とSONARコントローラ23からの障害物情報を入力する。そして、自動運転モードの選択により単一車線に沿っての走行中、障害物を回避する必要があると判断すると、自車の減速挙動により障害物を回避するブレーキ液圧指令をVDCコントローラ24へ出力する。さらに、停車状態で所定時間が経過し、駐車状態にする必要があると判断すると、パーキング作動指令をE-PKBコントローラ25へ出力する。「EPSモード」を選択しての走行中、操舵アシスト力が必要であると判断すると、操舵系にアシストトルクを与える制御指令をStBW2コントローラ26へ出力する。
【0030】
FrCAMERAコントローラ22は、自車周囲認識システム(フロントカメラシステム)において、自車の前方領域に存在する障害物や道路に描かれた白線による走行レーン等をカメラ画像データに基づいて認識する機能を分担するコントローラである。このFrCAMERAコントローラ22では、車両前方に向けて設置されたフロントカメラからの画像データを入力して画像処理を行い、自車前方に障害物が存在すると判断されると、自車から前方障害物までの距離を演算する。そして、前方障害物の位置情報や前方障害物までの距離情報をADASサブコントローラ21へ出力する。
【0031】
SONARコントローラ23は、自車周囲認識システム(車載ソナーシステム)において、自車周囲に存在する障害物をソナー反射波(音波)に基づいて認識する機能を分担するコントローラである。このSONARコントローラ23は、自車の側方に向けて設置されたソナーからのセンサ信号を入力し、自車の側方領域に側方障害物が存在すると判断されると、自車から側方障害物までの距離を演算する。そして、側方障害物位置情報や側方障害物までの距離情報をADASサブコントローラ21へ出力する。
【0032】
VDCコントローラ24は、車載のブレーキ制御システムにおいて、マスタシリンダとホイールシリンダの間に介装され、4輪独立制御によるブレーキ液圧アクチュエータを用いる制動アクチュエータ動作機能を分担するコントローラである。このVDCコントローラ24では、ADASサブコントローラ21からブレーキ液圧指令を入力すると、障害物を回避する自車の減速回避挙動を得る指令をブレーキ液圧アクチュエータへ出力する。
なお、「VDC」とは、「Vehicle Dynamics Control」の略称である。
【0033】
E-PKBコントローラ25は、車載のブレーキ制御システムにおいて、変速機出力軸位置に設けられたパーキングブレーキ機構に有するパーキングアクチュエータを用いる制動アクチュエータ動作機能を分担するコントローラである。このE-PKBコントローラ25では、ADASサブコントローラ21からパーキング作動指令を入力すると、パーキングブレーキ機構を機械的な噛み合いによりロックする指令をPKBアクチュエータへ出力する。
【0034】
StBW2コントローラ26は、車載のステアリング制御システムにおいて、ステア・バイ・ワイヤ構造のうちタイヤ転舵系に設けられる第2転舵モータを用いる転舵アクチュエータ動作機能を分担するコントローラである。このStBW2コントローラ26では、ADASサブコントローラ21から操舵アシスト指令を入力すると、操舵系にアシストトルクを与える制御指令を第2転舵モータへ出力する。
【0035】
第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bとを繋ぐネットワーク通信線として、
図1に示すように、第4CAN通信線11と、第2LAN通信線32と、第3LAN通信線33と、第4LAN通信線34と、第5LAN通信線35と、を備えている。
【0036】
即ち、第4CAN通信線11を分岐してADASサブコントローラ21まで延ばすことによって、ADASコントローラ1とADASサブコントローラ21が接続される。第2LAN通信線32によって、ADASコントローラ1とFrCAMERAコントローラ22が接続される。第3LAN通信線33と第4LAN通信線34によって、StBW1コントローラ7とStBW2コントローラ26が接続される。第5LAN通信線35によって、eACTコントローラ6とVDCコントローラ24が接続される。
【0037】
[フェールセーフ制御系構成]
図2は、複数のコントローラのうち第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1と第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21によるフェールセーフ制御系構成を示す。以下、
図2に基づいてフェールセーフ制御系構成を説明する。
【0038】
ADASコントローラ1は、
図2に示すように、失陥判断部1aと、失陥情報送出部1bと、フェールセーフ制御部1cと、を備えている。同様に、ADASサブコントローラ21は、
図2に示すように、失陥判断部21aと、失陥情報送出部21bと、フェールセーフ制御部21cと、を備えている。
【0039】
失陥判断部1aは、自動運転モードの選択中、第1コントローラ群Aに有する複数のコントローラ1,2,3,4,5,6,7の何れかに失陥が発生したか否かを判断する。同様に、失陥判断部21aは、自動運転モードの選択中、第2コントローラ群Bに有する複数のコントローラ21,22,23,24,25,26の何れかに失陥が発生したか否かを判断する。
【0040】
ここで、第1コントローラ群Aの場合、複数のコントローラ1,2,3,4,5,6,7のそれぞれは自己診断機能を有し、自己診断により失陥が発生した場合には失陥判断部1aに対し失陥フラグを出力する。よって、失陥判断部1aでは、失陥フラグを入力しないと、全てのコントローラ1,2,3,4,5,6,7が正常と判断する。一方、失陥フラグを入力すると、フラグにより特定されるコントローラに失陥が発生したと判断する。なお、失陥判断部21aについても同様であり、第2ントローラ群Bに有する複数のコントローラ21,22,23,24,25,26からの失陥フラグを入力し、正常/失陥を判断する。
【0041】
失陥情報送出部1bは、複数のコントローラ1,2,3,4,5,6,7の何れかに失陥の発生有りと判断されると、ADASコントローラ1から第4CAN通信線11を介しADASサブコントローラ21のフェールセーフ制御部21cに対して失陥情報を送出する。同様に、失陥情報送出部21bは、複数のコントローラ21,22,23,24,25,26の何れかに失陥の発生有りと判断されると、ADASサブコントローラ21から第4CAN通信線11を介しADASコントローラ1のフェールセーフ制御部1cに対して失陥情報を送出する。
【0042】
ここで、失陥情報送出部1b又は失陥情報送出部21bにて失陥の発生有りと判断されると、失陥情報送出すると共に、ドライバへ失陥が発生したことを視覚(ディスプレイ表示)や聴覚(警報音)に訴えて知らせる報知情報を出力する。
【0043】
フェールセーフ制御部1cは、第2コントローラ群Bを構成するコントローラに失陥が発生すると、ADASサブコントローラ21の失陥情報送出部21bから第4CAN通信線11を介し失陥情報を受け取る。失陥情報を受け取ると、ドライバが操作復帰するまでの間、第1コントローラ群Aを構成するコントローラが、第2コントローラ群B(失陥コントローラ群)の動作機能をバックアップする失陥モードを実行する。同様に、フェールセーフ制御部21cは、第1コントローラ群Aを構成するコントローラに失陥が発生すると、ADASコントローラ1の失陥情報送出部1bから第4CAN通信線11を介し失陥情報を受け取る。失陥情報を受け取ると、ドライバが操作復帰するまでの間、第2コントローラ群Bを構成するコントローラが、第1コントローラ群A(失陥コントローラ群)の動作機能をバックアップする失陥モードを実行する。
【0044】
なお、車載される複数のコントローラ1~7、21~26の何れも失陥の発生無しと判断されると、複数のコントローラ1~7、21~26の全てを用いて動作機能を実現する正常モードを実行する。
【0045】
以下、フェールセーフ制御部1c又はフェールセーフ制御部21cで実行されるフェールセーフ制御の例を、下記に列挙する。
【0046】
(a) 失陥により失われた動作機能が転舵アクチュエータ動作機能である場合
StBW1コントローラ7(第1ステアリングコントローラ)とStBW2コントローラ26(第2ステアリングコントローラ)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用いる。そして、失陥により失われた転舵アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード1,2を実行する。
【0047】
(b) 失陥により失われた動作機能が制動アクチュエータ動作機能である場合
eACTコントローラ6(第1ブレーキコントローラ)とVDCコントローラ24、E-PKBコントローラ25(第2ブレーキコントローラ)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用いる。そして、失陥により失われた制動アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード1,2を実行する。
【0048】
(c) 失陥により失われた動作機能が自車の走行レーン認識動作機能である場合
HDmapコントローラ4(第1走行レーン認識コントローラ)とFrCAMERAコントローラ22(第2走行レーン認識コントローラ)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用いる。そして、失陥により失われた自車の走行レーン認識動作機能をバックアップする失陥モード1,2を実行する。
【0049】
(d) 失陥により失われた動作機能が自車の前方障害物認識動作機能である場合
RADARコントローラ3(第1前方障害物認識コントローラ)とFrCAMERAコントローラ22(第2前方障害物認識コントローラ)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用いる。そして、失陥により失われた自車の前方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード1,2を実行する。
【0050】
(e) 失陥により失われた動作機能が自車の側方障害物認識動作機能である場合
SRコントローラ5(第1側方障害物認識コントローラ)とSONARコントローラ23(第2側方障害物認識コントローラ)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用いる。そして、失陥により失われた自車の側方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード1,2を実行する。
【0051】
次に、実施例1の作用を、「車載コントローラが失陥したときのフェールセーフ制御作用」、「ステアリング制御システムでの正常/失陥モード作用」、「ブレーキ制御システムでの正常/失陥モード作用」に分けて説明する。さらに、「走行レーン認識制御システムでの正常/失陥モード作用」、「前方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用」、「側方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用」に分けて説明する。
【0052】
[車載コントローラが失陥したときのフェールセーフ制御作用]
運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラが搭載された運転支援車両において、何れかのコントローラに失陥が生じても、失陥が生じる前と同一の動作が実施できるように冗長構成とするものを比較例とする。ここで、「冗長構成」とは、制御システムを複数用意し、一部に失陥が発生しても動作機能を継続できるようにした構成をいう。
【0053】
この比較例の場合、失陥時において、正常時と同等のバックアップ機能が確保されるものの、冗長構成としているためにセンサ・コントローラ・アクチュエータの数が多くなってしまう。特に、自動運転レベルが高くなるにつれて多くの動作機能を実現する必要がある自動運転車両のように、車載のコントローラが多くなる場合、冗長構成を採用するとセンサ・コントローラ・アクチュエータの数が膨大になってしまう。
【0054】
一方、ドライバによる運転を支援する運転支援車両の場合、例えば、走行中にアクセル操作やブレーキ操作やステアリング操作の少なくとも一部の操作を車載制御に委ねる。このため、失陥時におけるフェールセーフ制御は必要不可欠といえる制御であり、失陥の発生に備えて常にバックアップ機能を確保しておきたいという要求がある。
【0055】
本発明者は、上記課題や要求に着目し、冗長構成を採用することなく、失陥時のバックアップ機能を確保することを解決課題とした。そして、この課題を解決する手段として、同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、複数のコントローラを複数のコントローラ群に区分してネットワークトポロジーを構築する。そして、複数のコントローラの何れかに失陥が発生した場合、失陥コントローラが属さない正常コントローラ群を構成するコントローラが、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群の動作機能をバックアップする手段を採用した。
【0056】
即ち、車載コンローラに失陥が発生したとき、性能を多少落としたとしても同等の動作機能を何らかの形で残したいという点を特徴とする。例えば、“止まる”というブレーキ動作機能に対し、ブレーキアクチュエータとして、倍力制御を行う電動ブースタとVDC制御を行うブレーキ液圧アクチュエータを有するとする。この車両において、例えば、電動ブースタが故障したときは、電動ブースタに比べ制動力の制御精度が低くなるアクチュエータではあるが、VDC制御を行うブレーキ液圧アクチュエータを用いて“止まる”ことを実現するものある。
【0057】
次に、
図3に基づいて、自動運転モードの選択時におけるフェールセーフ制御作用を説明する。
【0058】
自動運転モードの選択中であるか否かを判断する(S1)。自動運転モードの選択中でないと判断されると、S1での判断を繰り返す。
【0059】
S1にて自動運転モードの選択中であると判断されると、車載コントローラのうち何れかのコントローラに失陥が発生しているか否かを判断する(S2)。何れのコントローラにも失陥が発生していないと判断されている間は、S1→S2→S3へと進む流れが繰り返され、正常モードが実行される(S3)。正常モードでは、アクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能を分担する車載コントローラの全てを用い、ハンドル操作支援や車速の加減速調整や駐停車の何れもサポートしながら自動運転モードにより単一車線に沿って走行する。
【0060】
一方、S2にて車載コントローラのうち何れかのコントローラに失陥が発生したと判断されると、失陥したコントローラが属する失陥コントローラ群と失陥コントローラが属しない正常コントローラ群を特定する(S4)。そして、失陥コントローラ群から正常コントローラ群に対して第4CAN通信線11を介し失陥情報(失陥した動作機能情報を含む)を送出する(S5)。同時に、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力する(S6)。
【0061】
正常コントローラ群が第4CAN通信線11を介し失陥情報を受け取ると、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モード1又は失陥モード2を実行する(S7)。
【0062】
S7に続いて、ドライバによる操作復帰があったか否かを判断する(S8)。そして、ドライバによる操作復帰が無いと判断されている間は、S6→S7→S8へと進む流れが繰り返され、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力と失陥モード1又は失陥モード2の実行か継続される。その後、ドライバによる操作復帰が判断されると、S8からS9へ進み、S9にて自動運転モードからマニュアル運転モードへと移行し、自動運転モードの選択時におけるフェールセーフ制御を終了する。
ここで、ドライバによる操作復帰は、例えば、ステアリングホイールにドライバが操舵力を加えたことをステアリングシステムに設けられたトルクセンサにて検知することで判断される。
【0063】
このように、車載コントローラのうち何れかのコントローラに失陥が発生したと判断されると、ドライバによる操作復帰するまでの間、失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モード1又は失陥モード2が実行される。この結果、車載された複数のコントローラの何れかに失陥が発生した場合、制御システム構成を冗長構成にすることなく、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0064】
[ステアリング制御システムでの正常/失陥モード作用]
以下、
図4~
図6に基づいて、ステアリング制御システムでの正常/失陥モード作用を説明する。
【0065】
第1コントローラ群Aには、ステアリング制御系として、
図4に示すように、ADASコントローラ1、第1転舵モータ51(第1転舵アクチュエータ)を制御するStBW1コントローラ7(第1ステアリングコントローラ)を備える。第2コントローラ群Bには、ステアリング制御系として、
図4に示すように、ADASサブコントローラ21、第2転舵モータ52(第2転舵アクチュエータ)を制御するStBW2コントローラ26(第2ステアリングコントローラ)を備える。
【0066】
ステアリング制御システムでの正常モードでは、
図4に示すように、ADASコントローラ1、StBW1コントローラ7、ADASサブコントローラ21、StBW2コントローラ26の全てを用い、転舵アクチュエータ動作機能を分担する。
【0067】
第2コントローラ群Bに有するステアリング制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第2コントローラ群Bに有するステアリング制御システムの失陥」とは、ADASサブコントローラ21やStBW2コントローラ26そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第2コントローラ群Bでの転舵アクチュエータ動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0068】
この場合、
図5に示すように、正常コントローラ群である第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1とStBW1コントローラ7とを用い、失陥により失われた転舵アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード1が実行される。
【0069】
第1コントローラ群Aに有するステアリング制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第1コントローラ群Aに有するステアリング制御システムの失陥」とは、ADASコントローラ1やStBW1コントローラ7そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第1コントローラ群Aでの転舵アクチュエータ動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0070】
この場合、
図6に示すように、正常コントローラ群である第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21とStBW2コントローラ26とを用い、失陥により失われた転舵アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード2が実行される。
【0071】
[ブレーキ制御システムでの正常/失陥モード作用]
以下、
図7~
図9に基づいて、ブレーキ制御システムでの正常/失陥モード作用を説明する。
【0072】
第1コントローラ群Aには、ブレーキ制御系として、
図7に示すように、ADASコントローラ1、電動ブースタ53を制御するeACTコントローラ6を備える。第2コントローラ群Bには、ブレーキ制御系として、
図7に示すように、ADASサブコントローラ21、ブレーキ液圧アクチュエータ54を制御するVDCコントローラ24、PKBアクチュエータ55を制御するE-PKBコントローラ25を備える。なお、電動ブースタ53は、第1ブレーキアクチュエータに相当し、eACTコントローラ6は、第1ブレーキコントローラに相当する。ブレーキ液圧アクチュエータ54及びPKBアクチュエータ55は、第2ブレーキアクチュエータに相当し、VDCコントローラ24及びE-PKBコントローラ25は、第2ブレーキコントローラに相当する。
【0073】
ブレーキ制御システムでの正常モードでは、
図7に示すように、ADASコントローラ1、eACTコントローラ6、ADASサブコントローラ21、VDCコントローラ24、E-PKBコントローラ25の全てを用い、制動アクチュエータ動作機能を分担する。
【0074】
第2コントローラ群Bに有するブレーキ制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第2コントローラ群Bに有するブレーキ制御システムの失陥」とは、ADASサブコントローラ21やVDCコントローラ24やE-PKBコントローラ25そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第2コントローラ群Bでの制動アクチュエータ動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0075】
この場合、
図8に示すように、正常コントローラ群である第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1とeACTコントローラ6とを用い、失陥により失われた制動アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード1が実行される。
【0076】
第1コントローラ群Aに有するブレーキ制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第1コントローラ群Aに有するブレーキ制御システムの失陥」とは、ADASコントローラ1やeACTコントローラ6そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第1コントローラ群Aでの制動アクチュエータ動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0077】
この場合、
図9に示すように、正常コントローラ群である第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21とVDCコントローラ24とE-PKBコントローラ25とを用い、失陥により失われた制動アクチュエータ動作機能をバックアップする失陥モード2が実行される。
【0078】
[走行レーン認識制御システムでの正常/失陥モード作用]
以下、
図10~
図12に基づいて、走行レーン認識制御システムでの正常/失陥モード作用を説明する。
【0079】
第1コントローラ群Aには、走行レーン認識制御系として、
図10に示すように、自車位置と高精度地図マップに基づいて自車の走行レーンを認識するHDmapコントローラ4、ADASコントローラ1を備えている。第2コントローラ群Bには、走行レーン認識制御系として、
図10に示すように、フロントカメラからの自車前方撮像情報に基づいて自車の走行レーン認識するFrCAMERAコントローラ22、ADASサブコントローラ21を備えている。なお、HDmapコントローラ4は、第1走行レーン認識コントローラに相当し、FrCAMERAコントローラ22は、第2走行レーン認識コントローラに相当する。
【0080】
走行レーン認識制御システムでの正常モードでは、
図10に示すように、ADASコントローラ1、HDmapコントローラ4、ADASサブコントローラ21、FrCAMERA22の全てを用い、走行レーン認識動作機能を分担する。
【0081】
第2コントローラ群Bに有する走行レーン認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第2コントローラ群Bに有する走行レーン認識制御システムの失陥」とは、ADASサブコントローラ21やFrCAMERAコントローラ22そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第2コントローラ群Bでの走行レーン認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0082】
この場合、
図11に示すように、正常コントローラ群である第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1とHDmapコントローラ4とを用い、失陥により失われた走行レーン認識動作機能をバックアップする失陥モード1が実行される。
【0083】
第1コントローラ群Aに有する走行レーン認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第1コントローラ群Aに有する走行レーン認識制御システムの失陥」とは、ADASコントローラ1やHDmapコントローラ4そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第1コントローラ群Aでの走行レーン認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0084】
この場合、
図12に示すように、正常コントローラ群である第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21とFrCAMERAコントローラ22とを用い、失陥により失われた走行レーン認識動作機能をバックアップする失陥モード2が実行される。
【0085】
[前方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用]
以下、
図13~
図15に基づいて、前方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用を説明する。
【0086】
第1コントローラ群Aには、前方障害物認識制御系として、
図13に示すように、フロントレーダーからのレーダー情報に基づいて自車の前方障害物を認識するRADARコントローラ3、ADASコントローラ1を備えている。第2コントローラ群Bには、前方障害物認識制御系として、
図13に示すように、フロントカメラからの自車前方撮像データに基づいて自車の前方障害物を認識するFrCAMERAコントローラ22、ADASサブコントローラ21を備えている。なお、RADARコントローラ3は、第1前方障害物認識コントローラに相当し、FrCAMERAコントローラ22は、第2前方障害物認識コントローラに相当する。
【0087】
前方障害物認識制御システムでの正常モードでは、
図13に示すように、ADASコントローラ1、RADARコントローラ3、ADASサブコントローラ21、FrCAMERAコントローラ22の全てを用い、前方障害物認識動作機能を分担する。
【0088】
第2コントローラ群Bに有する前方障害物認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第2コントローラ群Bに有する前方障害物認識制御システムの失陥」とは、ADASサブコントローラ21やFrCAMERAコントローラ22そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第2コントローラ群Bでの前方障害物認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0089】
この場合、
図14に示すように、正常コントローラ群である第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1とRADARコントローラ3とを用い、失陥により失われた前方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード1が実行される。
【0090】
第1コントローラ群Aに有する前方障害物認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第1コントローラ群Aに有する前方障害物認識制御システムの失陥」とは、ADASコントローラ1やRADARコントローラ3そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第1コントローラ群Aでの前方障害物認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0091】
この場合、
図15に示すように、正常コントローラ群である第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21とFrCAMERAコントローラ22とを用い、失陥により失われた前方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード2が実行される。
【0092】
[側方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用]
以下、
図16~
図18に基づいて、側方障害物認識制御システムでの正常/失陥モード作用を説明する。
【0093】
第1コントローラ群Aには、側方障害物認識制御系として、
図16に示すように、再度レーダーからのレーダー情報に基づいて自車の側方障害物を認識するSRコントローラ5、ADASコントローラ1を備えている。第2コントローラ群Bには、側方障害物認識制御系として、
図16に示すように、ソナーからのソナー情報に基づいて自車の側方障害物を認識するSONARコントローラ23、ADASサブコントローラ21を備えている。なお、SRコントローラ5は、第1側方障害物認識コントローラに相当し、SONARコントローラ23は、第2側方障害物認識コントローラに相当する。
【0094】
側方障害物認識制御システムでの正常モードでは、
図16に示すように、ADASコントローラ1、SRコントローラ5、ADASサブコントローラ21、SONARコントローラ23の全てを用い、側方障害物認識動作機能を分担する。
【0095】
第2コントローラ群Bに有する側方障害物認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第2コントローラ群Bに有する側方障害物認識制御システムの失陥」とは、ADASサブコントローラ21やSONARコントローラ23そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第2コントローラ群Bでの側方障害物認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0096】
この場合、
図17に示すように、正常コントローラ群である第1コントローラ群Aに有するADASコントローラ1とSRコントローラ5とを用い、失陥により失われた側方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード1が実行される。
【0097】
第1コントローラ群Aに有する側方障害物認識制御システムに失陥が生じたとする。ここで、「第1コントローラ群Aに有する側方障害物認識制御システムの失陥」とは、ADASコントローラ1やSRコントローラ5そのものの失陥だけでなく、コネクタ障害や通信障害やアクチュエータ障害等を含む。つまり、第1コントローラ群Aでの側方障害物認識動作機能が機能障害になるあらゆる原因が含まれる。
【0098】
この場合、
図18に示すように、正常コントローラ群である第2コントローラ群Bに有するADASサブコントローラ21とSONARコントローラ23とを用い、失陥により失われた側方障害物認識動作機能をバックアップする失陥モード2が実行される。
【0099】
以上説明したように、実施例1の自動運転車両の制御方法及び制御システムにあっては、下記に列挙する効果を奏する。
【0100】
(1) 運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラ1~7,21~26が搭載された運転支援車両の制御方法であって、
同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、複数のコントローラ1~7,21~26を複数のコントローラ群(第1コントローラ群A、第2コントローラ群B)に区分してネットワークトポロジーを構築し、
複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥が発生したか否かを判断し、
複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対してネットワーク通信線を介し失陥情報を送出し、
正常コントローラ群がネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、正常コントローラ群を構成するコントローラが、失陥コントローラ群の動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図1)。
このため、車載された複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥が発生した場合、制御システム構成を冗長構成にすることなく、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現する制御方法を提供することができる。
即ち、同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するというアーキテクチャに基づいて、例えば、複数のコントローラ1~7,21~26が、第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bに区分される。このため、区分された第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bは、失陥の発生に備えて互いに動作機能をバックアップするコントローラ群という関係性を持つ。
【0101】
(2) 複数のコントローラ1~7,21~26の何れも失陥の発生無しと判断されると、複数のコントローラの全てを用いて動作機能を実現する正常モードを実行する(
図1)。
このため、制御システム構成として、正常モードでの制御時に要求される動作機能を実現するために使うことのない制御系要素を有さない簡潔な構成とすることができる。
即ち、制御システム構成が冗長構成を有する場合、正常モードでの制御時に要求される動作機能を実現するときに使うことのない制御系要素が存在するものとなる。つまり、複数のコントローラの全てを用いて正常モードを実行するということは、同じ動作機能を実現する制御系要素を複数用意する冗長構成を有さないことの裏付けになる。
【0102】
(3) 複数のコントローラ1~7,21~26を、第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bとの二つに区分してネットワークトポロジーを構築し、
第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bのネットワーク通信線/電源を、電気的/物理的に独立させる(
図1)。
このため、正常コントローラ群に有するコントローラを用いて失陥モードを実行する際、失陥したコントローラが属するコントローラ群による影響を受けることなく、失陥により失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行することができる。
即ち、第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bのネットワーク通信線/電源に関して、電気的/物理的な独立性が担保される。
【0103】
(4) 運転支援車両は、自動運転モードを選択すると、少なくとも単一車線での自動運転を実現する自動運転車両であり、
複数のコントローラ1~7,21~26は、自動運転制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能を分担するコントローラであり、
自動運転モードの選択中、複数のコントローラ1~7,21~26の何れかのコントローラに失陥が発生したか否かを判断し、
失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属しない正常コントローラ群に対してネットワーク通信線を介し失陥情報を送出すると共に、ドライバへ失陥が発生したことを知らせる報知情報を出力し、
正常コントローラ群がネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、ドライバが操作復帰するまでの間、正常コントローラ群を構成するコントローラが、失陥コントローラ群の動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図3)。
このため、自動運転モードの選択中に必要な動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、失陥が発生してからドライバが操作復帰するまでの間、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
即ち、自動運転車両の場合、最終的なフェールセーフ動作は、ドライバによるマニュアル操作である。よって、自動運転モードを選択中における失陥モードでは、失陥が発生してからドライバによるマニュアル操作に受け渡すまでの間、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現できれば良い。
【0104】
(5) 自動運転車両のステアリング制御系に、第1コントローラ群Aに有し第1転舵アクチュエータ(第1転舵モータ51)を制御する第1ステアリングコントローラ(StBW1コントローラ7)と、
第2コントローラ群Bに有し第2転舵アクチュエータ(第2転舵モータ52)を制御する第2ステアリングコントローラ(StBW2コントローラ26)と、を備え、
失陥により失われた動作機能が転舵アクチュエータ動作機能である場合、第1ステアリングコントローラ(StBW1コントローラ7)と第2ステアリングコントローラ(StBW2コントローラ26)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図4~6)。
このため、転舵アクチュエータ動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、2つのコントローラ群A,Bのうち正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた転舵アクチュエータ動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0105】
(6) 自動運転車両の制動制御系に、第1コントローラ群Aに有し第1ブレーキアクチュエータ(電動ブースタ53)を制御する第1ブレーキコントローラ(eACTコントローラ6)と、
第2コントローラ群Bに有し第2ブレーキアクチュエータ(ブレーキ液圧アクチュエータ54、PKBアクチュエータ55)を制御する第2ブレーキコントローラ(VDCコントローラ24、E-PKBコントローラ25)と、を備え、
失陥により失われた動作機能が制動アクチュエータ動作機能である場合、第1ブレーキコントローラ(eACTコントローラ6)と第2ブレーキコントローラ(VDCコントローラ24、E-PKBコントローラ25)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図7~9)。
このため、制動アクチュエータ動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、2つのコントローラ群A,Bのうち正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた制動アクチュエータ動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0106】
(7) 自動運転車両の自車周囲認識系に、第1コントローラ群Aに有し自車位置と高精度地図マップに基づいて自車の走行レーンを認識する第1走行レーン認識コントローラ(HDmapコントローラ4)と、
第2コントローラ群Bに有しフロントカメラからの自車前方撮像情報に基づいて自車の走行レーン認識する第2走行レーン認識コントローラ(FrCAMERAコントローラ22)と、を備え、
失陥により失われた動作機能が自車の走行レーン認識動作機能である場合、第1走行レーン認識コントローラ(HDmapコントローラ4)と第2走行レーン認識コントローラ(FrCAMERAコントローラ22)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図10~12)。
このため、自車の走行レーン認識動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、2つのコントローラ群A,Bのうち正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた自車の走行レーン認識動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0107】
(8) 自動運転車両の自車周囲認識系に、第1コントローラ群Aに有しフロントレーダーからのレーダー情報に基づいて自車の前方障害物を認識する第1前方障害物認識コントローラ(RADARコントローラ3)と、
第2コントローラ群Bに有しフロントカメラからの自車前方撮像データに基づいて自車の前方障害物を認識する第2前方障害物認識コントローラ(FrCAMERAコントローラ22)と、を備え、
失陥により失われた動作機能が自車の前方障害物認識動作機能である場合、第1前方障害物認識コントローラ(RADARコントローラ3)と第2前方障害物認識コントローラ(FrCAMERAコントローラ22)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図13~15)。
このため、自車の前方障害物認識動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、2つのコントローラ群A,Bのうち正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた自車の前方障害物認識動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0108】
(9) 自動運転車両の自車周囲認識系に、第1コントローラ群Aに有しサイドレーダーからのレーダー情報に基づいて自車の側方障害物を認識する第1側方障害物認識コントローラ(SRコントローラ5)と、
第2コントローラ群Bに有しソナーからのソナー情報に基づいて自車の側方障害物を認識する第2側方障害物認識コントローラ(SONARコントローラ23)と、を備え、
失陥により失われた動作機能が自車の側方障害物認識動作機能である場合、第1側方障害物認識コントローラ(SRコントローラ5)と第2側方障害物認識コントローラ(SONARコントローラ23)のうち、正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた動作機能をバックアップする失陥モードを実行する(
図16~18)。
このため、自車の側方障害物認識動作機能を担う一つのコントローラが失陥した際、2つのコントローラ群A,Bのうち正常コントローラ群に有するコントローラを用い、失われた自車の側方障害物認識動作機能と同等の動作機能を実現することができる。
【0109】
(10) 運転支援制御での動作機能を分担する複数のコントローラ1~7,21~26が搭載された運転支援車両の制御システムであって、
同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、複数のコントローラ1~7,21~26を複数のコントローラ群(第1コントローラ群A、第2コントローラ群B)に区分してネットワークトポロジーを構築し、
複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥が発生したか否かを判断する失陥判断部1a,21aと、
複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥の発生有りと判断されると、失陥コントローラが属する失陥コントローラ群以外の正常コントローラ群に対してネットワーク通信線を介し失陥情報を送出する失陥情報送出部1b,21bと、
正常コントローラ群がネットワーク通信線を介し失陥情報を受け取ると、正常コントローラ群を構成するコントローラが、失陥コントローラ群の動作機能をバックアップする失陥モードを実行するフェールセーフ制御部1c,21cと、
を有する(
図2)。
このため、車載された複数のコントローラ1~7,21~26の何れかに失陥が発生した場合、制御システム構成を冗長構成にすることなく、失陥により失われた動作機能と同等の動作機能を実現する制御システムを提供することができる。
【0110】
以上、本開示の運転支援車両の制御方法及び制御システムを実施例1に基づき説明してきた。しかし、具体的な構成については、この実施例1に限られるものではなく、請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0111】
実施例1では、車載される複数のコントローラを、同等の動作機能をそれぞれのコントローラ群で実現するアーキテクチャに基づいて、第1コントローラ群Aと第2コントローラ群Bに区分してネットワークトポロジーを構築する例を示した。しかし、車載される複数のコントローラを、動作機能や要求に応じて部分的又は全体的に3以上のコントローラ群に区分してネットワークトポロジーを構築しても良い。
【0112】
実施例1では、フェールセーフ制御系構成として、ADASコントローラ1に失陥判断部1aと失陥情報送出部1bとフェールセーフ制御部1cを備える。同様に、ADASサブコントローラ21に失陥判断部21aと失陥情報送出部21bとフェールセーフ制御部21cを備える例を示した。しかし、フェールセーフ制御系構成としては、ADASコントローラとは別に第1コントローラ群にフェールセーフコントローラを設け、ADASサブコントローラとは別に第2コントローラ群にフェールセーフコントローラを設ける例としても良い。さらに、フェールセーフ制御系構成としては、第1コントローラ群と第2コントローラ群から独立してフェールセーフコントローラを設ける例としても良い。
【0113】
実施例1では、複数のコントローラとして、自動運転制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能を分担するコントローラ1~7,21~26を車載する例を示した。しかし、複数のコントローラとしては、運転支援制御でのアクチュエータ動作機能と自車周囲認識動作機能以外に、車速認識動作機能やデイスプレイ表示動作機能等を分担するコントローラを車載する例であっても良い。
【0114】
実施例1では、フェールセーフ制御として、転舵アクチュエータ動作機能と制動アクチュエータ動作機能をバックアップする例と走行レーン/前方障害物/側方障害物の認識動作機能をバックアップする例を示した。しかし、フェールセーフ制御としては、車載コントローラの追加等に伴い、車速認識動作機能をバックアップする例であっても良いし、デイスプレイ表示動作機能をバックアップする例であっても良い。
【0115】
実施例1では、本開示の制御方法及び制御システムを、自動車専用道路の単一車線での自動運転を実現する電動車両(ハイブリッド車や電気自動車)による自動運転車両に適用する例を示した。しかし、本開示の制御方法及び制御システムは、自動運転レベルとしてより高いレベルの自動運転車両に適用することも勿論できる。また、緊急ブレーキシステムやACCシステム等を搭載する運転支援車両に対しても適用することができる。さらに、電動車両に限らず、エンジン車にも適用することができる。