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特許7347608制御装置、制御システム、制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/87 20060101AFI20230912BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230912BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230912BHJP
   G01S 13/91 20060101ALI20230912BHJP
   G01S 13/74 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
G01S13/87
G08G1/16 D
G08G1/09 F
G01S13/91
G01S13/74
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022132774
(22)【出願日】2022-08-23
【審査請求日】2022-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(74)【代理人】
【識別番号】100167793
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(72)【発明者】
【氏名】滝波 茂
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-323178(JP,A)
【文献】特開2001-202599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0047663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0116560(US,A1)
【文献】米国特許第4965583(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - G01S 7/42
G01S 13/00 - G01S 13/95
G08G 1/00 - G08G 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナとを制御する制御装置であって、
前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信する受信制御部と、
前記受信制御部が受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定する位置特定部と、
前記受信制御部が受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定する速度特定部と、
前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する推定部と、
前記第1車両に対し、前記推定部が推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させる送信制御部と、
を備える、制御装置。
【請求項2】
前記送信制御部は、前記第1車両が発した前記車両レーダ波を前記受信制御部が所定期間ごとに受信している場合に、前記第1車両に対し、受信した前記車両レーダ波の次回以降に受信する前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した反射波の受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナにより送信する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナと、当該第1フェーズドアレイアンテナ及び当該第2フェーズドアレイアンテナを制御する制御装置とを備える制御システムであって、
前記制御装置は、
前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信する受信制御部と、
前記受信制御部が受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定する位置特定部と、
前記受信制御部が受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定する速度特定部と、
前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する推定部と、
前記第1車両に対し、前記推定部が推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させる送信制御部と、
を有する、
制御システム。
【請求項4】
前記第1フェーズドアレイアンテナは、互いに合流する前記第1車線及び前記第2車線のうち、前記第1車線に面した位置に配置された前記構造物に設けられ、前記第2フェーズドアレイアンテナは、前記第2車線に面した位置に設けられている、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記第1フェーズドアレイアンテナは、交差点において互いに交差する前記第1車線及び前記第2車線のうち、前記第1車線に面した位置に配置された前記構造物に設けられ、前記第2フェーズドアレイアンテナは、前記第2車線に面した位置に設けられている、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項6】
第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナとを制御する制御装置に実行させる制御方法であって、
前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信するステップと、
受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定するステップと、
受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定するステップと、
前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定するステップと、
前記第1車両に対し、推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させるステップと、
を備える、制御方法。
【請求項7】
コンピュータに、
第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を、当該第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナから受信し、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線を走行中の第2車両に対して、当該第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を、当該第2フェーズドアレイアンテナから受信するステップと、
受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定するステップと、
受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定するステップと、
前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定するステップと、
前記第1車両に対し、推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させるステップと、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナによるレーダ波の送受信を制御する制御装置、制御システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車専用道路等の互いに見通しが良好でない複数の車線が合流する合流部等において車両が他の車両と接触することを防止するための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、複数の車線に複数の路車間通信用のアンテナをそれぞれ配置し、それぞれの車線を走行中の車両が同時に合流部に進入しないように一方の車線に対応するアンテナのみから合流部への進入を許可する進行信号を出力することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-334392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された方法では、自動車専用道路等の互いに見通しが良好でない複数の車線が合流する合流部等において走行中の自動運転車両が直後に合流する別の車線を走行中の車両の位置及び速度を検知することができないという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、互いに見通しが良好でない複数の車線が合流又は交差する場所において走行中の車両が直後に合流等する別の車線を走行中の車両の位置及び速度を検知するようにすることができる制御装置、制御システム、制御方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の制御装置は、第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナとを制御する制御装置であって、前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信する受信制御部と、前記受信制御部が受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定する位置特定部と、前記受信制御部が受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定する速度特定部と、前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する推定部と、前記第1車両に対し、前記推定部が推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させる送信制御部と、を備える。
【0007】
前記送信制御部は、前記第1車両が発した前記車両レーダ波を前記受信制御部が所定期間ごとに受信している場合に、前記第1車両に対し、受信した前記車両レーダ波の次回以降に受信する前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した反射波の受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナにより送信してもよい。
【0008】
本発明の第2の態様の制御システムは、第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナと、当該第1フェーズドアレイアンテナ及び当該第2フェーズドアレイアンテナを制御する制御装置とを備える制御システムであって、前記制御装置は、前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信する受信制御部と、前記受信制御部が受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定する位置特定部と、前記受信制御部が受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定する速度特定部と、前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する推定部と、前記第1車両に対し、前記推定部が推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させる送信制御部と、を有する。
【0009】
前記第1フェーズドアレイアンテナは、互いに合流する前記第1車線及び前記第2車線のうち、前記第1車線に面した位置に配置された前記構造物に設けられ、前記第2フェーズドアレイアンテナは、前記第2車線に面した位置に設けられていてもよい。
【0010】
前記第1フェーズドアレイアンテナは、交差点において互いに交差する前記第1車線及び前記第2車線のうち、前記第1車線に面した位置に配置された前記構造物に設けられ、前記第2フェーズドアレイアンテナは、前記第2車線に面した位置に設けられていてもよい。
【0011】
本発明の第3の態様の制御方法は、第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナと、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナとを制御する制御装置に実行させる制御方法であって、前記第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナから受信し、前記第2車線を走行中の第2車両に対して前記第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を前記第2フェーズドアレイアンテナから受信するステップと、受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定するステップと、受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定するステップと、前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定するステップと、前記第1車両に対し、推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させるステップと、を備える。
【0012】
本発明の第4の態様のプログラムは、コンピュータに、第1車線を走行中の第1車両が発した車両レーダ波を、当該第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられた第1フェーズドアレイアンテナから受信し、当該第1車線と当該構造物をはさんで反対側の第2車線を走行中の第2車両に対して、当該第2車線に面した位置に設けられた第2フェーズドアレイアンテナが発したレーダ波が当該第2車両において反射した反射波を、当該第2フェーズドアレイアンテナから受信するステップと、受信した前記反射波の進行方向及び前記反射波の受信のタイミングに基づいて、前記第2車両の位置を特定するステップと、受信した前記反射波の周波数に基づいて、前記第2車両の速度を特定するステップと、前記第1車両が発した前記車両レーダ波が前記第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定するステップと、前記第1車両に対し、推定した前記周波数、前記進行方向及び前記受信のタイミングでレーダ波を前記第1フェーズドアレイアンテナに送信させるステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自動車専用道路等の互いに見通しが良好でない複数の車線が合流又は交差する場合に、走行中の自動運転車両が直後に合流又は交差する別の車線を走行中の車両の位置及び速度を検知するようにするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態の制御システムの概要を説明するための図である。
図2】第1の実施形態の制御システムの概要を説明するための図である。
図3】第1の実施形態の制御システムの概要を説明するための図である。
図4】制御システムの構成を示す。
図5】制御システムによるレーダ波の送信の処理手順を示すフローチャートである。
図6】本変形例の制御システムの構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[制御システムの概要]
図1図2及び図3は、本実施形態の制御システムSの概要を説明するための図である。図1は、制御システムSの構成を示す。図2及び図3は、制御システムSの動作の例を示す。制御システムSは、フェーズドアレイアンテナ200(以下、第1フェーズドアレイアンテナともいう)、フェーズドアレイアンテナ300(以下、第2フェーズドアレイアンテナともいう)、及び、制御装置100を備える。
【0016】
図1に示す制御システムSは、4つの第1フェーズドアレイアンテナ200(200a~200d)、及び4つの第2フェーズドアレイアンテナ300(300a~300d)を有する。以下の説明においては、それぞれのフェーズドアレイアンテナ200に共通の機能を説明する際には、これらを第1フェーズドアレイアンテナ200と称し、それぞれの第2フェーズドアレイアンテナ300に共通の機能を説明する際には、これらを第2フェーズドアレイアンテナ300と称する場合がある。
【0017】
第1フェーズドアレイアンテナ200は、合流部において互いに合流する第1車線及び第2車線のうち、第1車線に面した位置に配置された構造物に設けられている。図1の例では、第1車線は、自動車専用道路の本線に合流する合流車線である。構造物は、例えば、第1車線と第2車線とを隔てる防護壁であるが、第1車線と第2車線とを隔てる遮音壁又はガードレールであってもよい。第2車線は、第1車線と構造物をはさんで反対側の車線である。第2フェーズドアレイアンテナ300は、第2車線に面した位置に設けられている。第2車線は、自動車専用道路の本線である。
【0018】
第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300は、複数のアンテナ素子によりレーダ波を受信する。第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300は、複数のアンテナ素子によりレーダ波を送信する。第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300は、制御装置100が指示した周波数、進行方向、送信のタイミングでレーダ波を送信する。
【0019】
制御装置100は、例えば、コンピュータである。制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300と有線又は無線により通信する。制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200と第2フェーズドアレイアンテナ300とによる電波の送受信を制御する。制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300を介してレーダ波を受信する。制御装置100は、受信したレーダ波の周波数、進行方向、受信のタイミングを特定する。例えば、制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300が受信したレーダ波の位相をアンテナ素子ごとに解析することにより、受信したレーダ波の進行方向を特定する。
【0020】
制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300に送信するレーダ波の周波数、進行方向、送信のタイミングを指示し、指示した周波数等のレーダ波を第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300に送信させる。
【0021】
発信元車両400(第1車両に相当)は、車両レーダ波を発し、周囲を走行する車両において車両レーダ波が反射された反射波を受信することにより、他の車両の位置及び速度を検知する。発信元車両400は、例えば、第1車線において自動運転により走行する。なお、発信元車両400は、合流車線側の第1車線を走行する例に限定されず、本線側の第2車線を走行してもよい。
【0022】
以下、制御システムSの処理の流れについて説明する。図1に示すように、発信元車両400は、第1車線を走行中であり、第2車線に合流する直前である。検知対象車両500(第2車両に相当)は、第2車線を走行中である。図1の例では、発信元車両400が発した車両レーダ波は構造物に遮られて検知対象車両500まで届かない。
【0023】
図2に示すように、第1フェーズドアレイアンテナ200cは、発信元車両400が発した車両レーダ波を受信する(図2中の(1))。制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200cを介して受信した車両レーダ波の進行方向、受信のタイミング及び周波数を特定する。
【0024】
制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200cが車両レーダ波を受信した場合に、第1車線とは構造物をはさんで反対側の第2車線へ第2フェーズドアレイアンテナ300cによりレーダ波を送信させる(図2中の(2))。第2フェーズドアレイアンテナ300cは、検知対象車両500に対して第2フェーズドアレイアンテナ300cが発したレーダ波が検知対象車両500において反射した反射波を受信する。制御装置100は、第2フェーズドアレイアンテナ300cを介して受信した反射波の進行方向、受信のタイミング及び周波数を特定する。
【0025】
制御装置100は、第2フェーズドアレイアンテナ300cがレーダ波を送信してから反射波を受信するまでに要した時間に基づいて、第2フェーズドアレイアンテナ300cから検知対象車両500までの距離を特定する。制御装置100は、第2フェーズドアレイアンテナ300cが受信した反射波の進行方向と、第2フェーズドアレイアンテナ300cから検知対象車両500までの距離とに基づいて、検知対象車両500の位置を特定する(図2中の(3))。
【0026】
検知対象車両500は走行中であることから、第2フェーズドアレイアンテナ300cが受信した反射波の周波数は、ドップラー効果により、第2フェーズドアレイアンテナ300cが発した元のレーダ波の周波数とは異なる。制御装置100は、第2フェーズドアレイアンテナ300が受信した反射波の周波数に基づいて、検知対象車両500の速度を特定する(図2中の(3))。
【0027】
図3(a)に示すように、制御装置100は、第1フェーズドアレイアンテナ200cが受信した発信元車両400の車両レーダ波が構造物をそのまま通り抜けたと仮定した場合に、この車両レーダが検知対象車両500において反射するか否かを判定する(図3(a)中の(4))。図3(b)に示すように、制御装置100は、車両レーダが検知対象車両500において反射すると判定した場合に、この反射波(以下、仮想反射波ともいう)の周波数と、進行方向と、この仮想反射波を発信元車両400が受信するタイミングとをそれぞれ推定する(図3(b)中の(5))。
【0028】
図3(c)に示すように、制御装置100は、推定した周波数及び進行方向のレーダ波を推定した受信のタイミングで発信元車両400が受信するように第1フェーズドアレイアンテナ200bから送信させる(図3(c)中の(6))。このようにして、制御装置100は、発信元車両400が発したレーダ波が検知対象車両500に反射された仮想反射波を受信した場合と、同じ進行方向、周波数及び受信のタイミングでレーダ波を発信元車両400に受信させることができる。このため、発信元車両400は、構造物をはさんで反対側の車線を走行する検知対象車両500を検知することができる。
【0029】
[制御システムSの構成]
図4は、制御システムSの構成を示す。制御システムSは、第1フェーズドアレイアンテナ200a、200b、200c、200d、第2フェーズドアレイアンテナ300a、300b、300c、300d及び制御装置100を備える。制御装置100は、記憶部1及び制御部2を備える。制御部2は、受信制御部21、位置特定部22、速度特定部23、推定部24及び送信制御部25を備える。
【0030】
記憶部1は、例えば、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等により構成される。記憶部1は、制御部2を機能させるための各種プログラムや各種データを記憶する。制御部2は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部2は、記憶部1に記憶されたプログラムを実行することにより、受信制御部21、位置特定部22、速度特定部23、推定部24、送信制御部25として機能する。
【0031】
受信制御部21は、第1フェーズドアレイアンテナ200及び第2フェーズドアレイアンテナ300を介して、レーダ波を受信する。受信制御部21は、第1フェーズドアレイアンテナ200が受信した車両レーダ波を第1フェーズドアレイアンテナ200から受信する。受信制御部21は、受信した車両レーダ波の進行方向、周波数及び受信のタイミングを特定する。
【0032】
送信制御部25の制御によって第2フェーズドアレイアンテナ300が検知対象車両500に向けてレーダ波を発した場合、受信制御部21は、フェーズドアレイアンテナ300を介して反射波を受信する。受信制御部21は、受信した反射波の進行方向、周波数及び受信のタイミングを特定する。受信制御部21は、特定した反射波の進行方向及び受信のタイミングを示す情報を位置特定部22へ出力する。
【0033】
受信制御部21は、第2フェーズドアレイアンテナ300が受信した反射波の周波数を示す情報を速度特定部23へ出力する。受信制御部21は、特定した車両レーダ波の進行方向、周波数及び受信のタイミングを示す情報を推定部24へ出力する。
【0034】
位置特定部22は、受信制御部21が受信した反射波の進行方向及び反射波の受信のタイミングに基づいて、検知対象車両500の位置を特定する。より詳しくは、位置特定部22は、第2フェーズドアレイアンテナ300がレーダ波を送信してから反射波を受信するまでに要する時間に基づいて、第2フェーズドアレイアンテナ300から検知対象車両500までの距離を特定する。位置特定部22は、特定した距離と、反射波の進行方向とに基づいて、検知対象車両500の位置を特定する。位置特定部22は、特定した検知対象車両500の位置を示す情報を推定部24へ出力する。
【0035】
第2フェーズドアレイアンテナ300が受信した反射波の周波数は、検知対象車両500の速度が大きいほど、第2フェーズドアレイアンテナ300が検知対象車両500へ送信した元のレーダ波の周波数から離れた値になる。この原理を利用して、速度特定部23は、受信制御部21が受信した反射波の周波数に基づいて、検知対象車両500の速度を特定する。速度特定部23は、特定した検知対象車両500の速度を示す情報を推定部24へ出力する。
【0036】
推定部24は、発信元車両400が発した車両レーダ波が構造物を通り抜けて検知対象車両500において反射したと仮定した場合に発信元車両400側のフェーズドアレイアンテナ300のいずれかが受信する仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する。まず、推定部24は、第1フェーズドアレイアンテナ200が受信した発信元車両400の車両レーダ波の進行方向に基づいて、この車両レーダ波が構造物をそのまま通り抜けた場合に、位置特定部22が特定した検知対象車両500の位置において車両レーダ波が反射するか否かを判定する(図3(a)参照)。
【0037】
推定部24は、検知対象車両500において車両レーダ波が反射すると判定した場合に、反射した仮想反射波の進行方向及び周波数を推定する(図3(b)参照)。例えば、推定部24は、発信元車両400が発した車両レーダ波の発信源へレーダ波を送り返す方向を仮想反射波の進行方向として決定する。推定部24は、速度特定部23が特定した検知対象車両500の速度に基づいて、仮想反射波の周波数を決定する。
【0038】
推定部24は、検知対象車両500において車両レーダ波が反射すると判定した場合に、反射した仮想反射波を検知対象車両500側の第2フェーズドアレイアンテナ300が受信するタイミングを推定する(図3(b)参照)。例えば、推定部24は、検知対象車両500側の第2フェーズドアレイアンテナ300の位置から検知対象車両500の位置まで車両レーダが往復するのに要する時間だけ、発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200が発信元車両400の車両レーダ波を受信したタイミングより後のタイミングを算出する。推定部24は、算出したタイミングをフェーズドアレイアンテナ300が仮想反射波を受信するタイミングと推定する。
【0039】
送信制御部25は、フェーズドアレイアンテナ200、300を介して、レーダ波を送信する。送信制御部25は、受信制御部21が発信元車両400dの車両レーダ波を受信した場合に、発信元車両400とは構造物をはさんで反対側の車線へレーダ波をこの車線側の第2フェーズドアレイアンテナ300により送信する。送信制御部25は、検知対象車両500において車両レーダ波が反射すると判定した場合に、発信元車両400に対し、推定部24が推定した周波数及び進行方向のレーダ波を発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200に送信させる。このレーダ波の送信のタイミングは、推定部24が推定した仮想反射波の受信のタイミングと一致させる。
【0040】
送信制御部25は、フェーズドアレイアンテナ200、300が発するレーダ波の位相をアンテナ素子ごとに指示することによりこのレーダ波の進行方向を指示する。送信制御部25は、検知対象車両500において車両レーダ波が反射しないと判定した場合に、発信元車両400に対し、レーダ波を発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200に送信させない。
【0041】
[次に受信のタイミングに対応するレーダ波の送信]
送信制御部25は、発信元車両400が発した車両レーダ波を受信制御部21が所定期間ごとに受信している場合に、発信元車両400に対し、受信した車両レーダ波の次回以降に受信する車両レーダ波が構造物を通り抜けて検知対象車両500において反射したと仮定した反射波を検知対象車両500側の第2フェーズドアレイアンテナ300が受信するタイミングを特定する。送信制御部25は、特定したタイミングと一致する送信のタイミングでレーダ波を発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200により送信してもよい。所定期間は、例えば、発信元車両400が車両レーダ波を発する周期である。
【0042】
例えば、送信制御部25は、発信元車両400が発した車両レーダ波をT秒の受信周期ごとに受信制御部21が受信し、推定部24が推定した仮想反射波の受信のタイミングが発信元車両400の車両レーダ波を受信制御部21が受信してからA秒後であると仮定する。
【0043】
この場合に、送信制御部25は、発信元車両400の車両レーダ波を受信制御部21が受信したタイミングを基準として、このA秒後に受信周期であるT秒を加えたA+T秒後にレーダ波を発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200により送信してもよい。このとき、送信制御部25は、受信した車両レーダ波自体が検知対象車両500において反射したと仮定した仮想反射波の進行方向及び周波数として推定部24が推定したとおりの進行方向及び周波数のレーダ波を発信元車両400へ送信する。
【0044】
仮想反射波の周波数、進行方向及び送信のタイミングの推定処理に要する時間が大きいことに起因して、推定した送信のタイミングでレーダ波を発信元車両400側の第1フェーズドアレイアンテナ200により送信することが難しいことがある。送信制御部25は、次回以降に受信する車両レーダ波が検知対象車両500において反射したと仮定した反射波を第2フェーズドアレイアンテナ300が受信するタイミングと同じ送信のタイミングでレーダ波を送信することにより、このレーダ波を受信した発信元車両400が自車両から検知対象車両500までの距離を精度良く検知することができるようにすることができる。
【0045】
[制御システムSによるレーダ波の送信の処理手順]
図5は、制御システムSによるレーダ波の送信の処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、フェーズドアレイアンテナ200、300の動作中に開始される。
【0046】
まず、受信制御部21は、第1フェーズドアレイアンテナ200のいずれかが車両レーダ波を受信したか否かを判定する(S101)。送信制御部25は、車両レーダ波を受信したと判定した場合に(S101のYES)、車両レーダ波を受信した車線と構造物をはさんで反対側の車線へこの車線に面した第2フェーズドアレイアンテナ300よりレーダ波を送信する(S102)。受信制御部21は、レーダ波を送信制御部25が送信した後、検知対象車両500から反射波を受信したか否かを判定する(S103)。位置特定部22は、検知対象車両500から反射波を受信制御部21が受信したと判定した場合に(S103のYES)、反射波の進行方向及び受信のタイミングに基づいて、検知対象車両500の位置を特定する(S104)。
【0047】
速度特定部23は、反射波の周波数に基づいて、検知対象車両500の速度を特定する(S104)。推定部24は、発信元車両400が発した車両レーダ波が構造物を通り抜けて検知対象車両500において反射したと仮定した場合に検知対象車両500側の第2フェーズドアレイアンテナ300のいずれかが受信する仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する(S105)。送信制御部25は、発信元車両400に対し、推定部24が推定した周波数及び進行方向のレーダ波を送信する(S106)。送信制御部25は、このレーダ波の送信のタイミングを推定部24が推定した仮想反射波の受信のタイミングと一致させ、処理を終了する。
【0048】
受信制御部21は、S101の判定において車両レーダ波を受信していないと判定した場合に(S101のNO)、S101の判定を繰り返す。受信制御部21は、S103の判定において検知対象車両500から反射波を受信制御部21が受信していないと判定した場合に(S103のNO)、処理を終了する。
【0049】
<変形例>
フェーズドアレイアンテナは、第1車線及び第2車線が互いに合流する直前の位置に配置される例に限定されない。例えば、フェーズドアレイアンテナは、第1車線及び第2車線が互いに交差する交差点等に配置されてもよい。
【0050】
図6は、本変形例の制御システムSの構成を示す。図6の例では、第1フェーズドアレイアンテナ200a及び200bは、交差点において第1車線(図6中の左右方向に延びる車線)に面した位置に配置された構造物に設けられる。第1車線を走行中の発信元車両400が発したレーダ波は、この構造物に遮られるため、図6中の上下方向に延びる第2車線を走行中の検知対象車両500には到達しない。
【0051】
第2フェーズドアレイアンテナ300a及び300bは、第2車線に面した位置に設けられている。第1フェーズドアレイアンテナ200a及び200b、第2フェーズドアレイアンテナ300a及び300b、及び、制御装置600の動作については図4の第1フェーズドアレイアンテナ200、第2フェーズドアレイアンテナ300、及び、制御装置100と同様であるため、説明を省略する。
【0052】
[本開示の制御装置100による効果]
制御装置100は、発信元車両400が発したレーダ波が検知対象車両500に反射された仮想反射波を受信した場合と、同じ進行方向、周波数及び受信のタイミングでレーダ波を発信元車両400に受信させることができる。このため、発信元車両400は、構造物をはさんで反対側の車線を走行する検知対象車両500を検知することができる。
【0053】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0054】
1 記憶部
2 制御部
21 受信制御部
22 位置特定部
23 速度特定部
24 推定部
25 送信制御部
100 制御装置
200a 第1フェーズドアレイアンテナ
200b 第1フェーズドアレイアンテナ
200c 第1フェーズドアレイアンテナ
200d 第1フェーズドアレイアンテナ
300a 第2フェーズドアレイアンテナ
300a 第2フェーズドアレイアンテナ
300b 第2フェーズドアレイアンテナ
300c 第2フェーズドアレイアンテナ
300d 第2フェーズドアレイアンテナ
400 発信元車両
500 検知対象車両
600 制御装置
S 制御システム
【要約】
【課題】走行中の車両が直後に合流又は交差する別の車線を走行中の車両の位置及び速度を検知するようにする。
【解決手段】車両レーダ波を受信し、第2車両に対して発したレーダ波が第2車両において反射した反射波を受信する受信制御部21と、受信制御部21が受信した反射波の進行方向及び反射波の受信のタイミングに基づいて、第2車両の位置を特定する位置特定部22と、受信制御部21が受信した反射波の周波数に基づいて、第2車両の速度を特定する速度特定部23と、第1車両が発した車両レーダ波が第2車両において反射したと仮定した場合の仮想反射波の周波数、進行方向及び受信のタイミングを推定する推定部24と、第1車両に対し、推定部24が推定した周波数、進行方向及び受信のタイミングでレーダ波を送信させる送信制御部25と、を備える。
【選択図】図4

図1
図2
図3
図4
図5
図6