(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】制御方法、情報処理装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/06 20230101AFI20230912BHJP
【FI】
G06Q10/06
(21)【出願番号】P 2022532963
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2020026054
(87)【国際公開番号】W WO2022003914
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】竹内 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】森永 正信
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-046738(JP,A)
【文献】特開2019-3309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00ー99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象の評価値を決定する要求を受け付けると、第1のユーザによる入力に応じて第1のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記評価値の算定式と、第2のユーザによる入力に応じて第2のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記算定式に含まれる変数の値の第1の条件とを取得し、
取得した前記評価値の算定式と、取得した前記第1の条件を満たす値から選定した値とに基づき、前記評価値を算定し、
選定した前記値が前記変数の値であることを示す情報について前記第2のブロックチェーンネットワークへの送信を制御する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする制御方法。
【請求項2】
算定した前記評価値が前記評価対象の評価値であることを示す情報について前記第1のブロックチェーンネットワークへの送信を制御する、
処理をコンピュータが実行することを特徴とする請求項1記載の制御方法。
【請求項3】
複数の前記要求に関して共通に適用される第2の条件を取得する、
処理をコンピュータが実行し、
前記評価値を算定する処理は、更に、取得した前記第2の条件をも満たす値から選定した値に基づき、前記評価値を算定する、
ことを特徴とする請求項1又は2記載の制御方法。
【請求項4】
評価対象の評価値を決定する要求を受け付けると、第1のユーザによる入力に応じて第1のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記評価値の算定式と、第2のユーザによる入力に応じて第2のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記算定式に含まれる変数の値の第1の条件とを取得する取得部と、
取得した前記評価値の算定式と、取得した前記第1の条件を満たす値から選定した値とに基づき、前記評価値を算定する算定部と、
選定した前記値が前記変数の値であることを示す情報について前記第2のブロックチェーンネットワークへの送信を制御する制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項5】
評価対象の評価値を決定する要求を受け付けると、第1のユーザによる入力に応じて第1のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記評価値の算定式と、第2のユーザによる入力に応じて第2のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記算定式に含まれる変数の値の第1の条件とを取得し、
取得した前記評価値の算定式と、取得した前記第1の条件を満たす値から選定した値とに基づき、前記評価値を算定し、
選定した前記値が前記変数の値であることを示す情報について前記第2のブロックチェーンネットワークへの送信を制御する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御方法、情報処理装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ブロックチェーンに基づくシステムは、原則として、ブロックチェーンネットワークにおける多数のノードによる検証をベースとして、中央機関不在の信頼性を保っている。一方で、企業が運営するサービスやシステムの場合、ブロックチェーンに記録されている情報をアクセス制御したい場合もあり、その場合には企業ごとに異なるブロックチェーンを運用される可能性が有る。
【0003】
他方において、最近では、各々の企業が単独でビジネスを運営していくのではなく、企業同士が協力して成果を出すような共創型ビジネスが盛んである。、共創型ビジネスにおいては、複数の企業ごとに運営されるブロックチェーンネットワーク間を跨ぐワークフローが構成される可能性が有る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ブロックチェーンには改竄不可能という性質があり、上記のような単一のブロックチェーンによりワークフローが構成される場合、企業間でやり取りされる処理は改竄不可能となる。一方で、ブロックチェーンを跨ぐ処理というのは、企業が他社を含めて行う決断であるため、極めて重い判断を要するものもある。そのため、ブロックチェーンへの記録に要する負荷(例えば、ブロックチェーンに記録される事項に関しての企業内で意思決定する負荷等)が増加する可能性が有る。
【0006】
そこで、一側面では、ブロックチェーンへの記録に要する負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの案では、評価対象の評価値を決定する要求を受け付けると、第1のユーザによる入力に応じて第1のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記評価値の算定式と、第2のユーザによる入力に応じて第2のブロックチェーンネットワークの台帳に記録された前記算定式に含まれる変数の値の第1の条件とを取得し、取得した前記評価値の算定式と、取得した前記第1の条件を満たす値から選定した値とに基づき、前記評価値を算定し、選定した前記値が前記変数の値であることを示す情報について前記第2のブロックチェーンネットワークへの送信を制御する、処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0008】
一態様によれば、ブロックチェーンへの記録に要する負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】データの価格付けのワークフローの一例を示す図である。
【
図2】本発明の実施の形態における取引制御システム1の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の実施の形態における連携サーバ10のハードウェア構成例を示す図である。
【
図4】ワークフローの第1ステップを説明するための図である。
【
図5】ワークフローの第2ステップを説明するための図である。
【
図6】ワークフローの第3ステップを説明するための図である。
【
図7】ワークフローの第4ステップを説明するための図である。
【
図8】本発明の実施の形態における取引制御システム1の機能構成例を示す図である。
【
図9】取引制御システム1において実行される処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図10】取引制御システム1において実行される処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図11】取引制御システム1において実行される処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【
図12】取引制御システム1において実行される処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、検討する問題設定として、データに関する価格付け問題を取り上げる。データとは、例えば、ビッグデータのように、経済的価値を有するデータである。すなわち、本実施の形態では、価格が評価値であり、データが評価値の評価対象である例について説明する。
【0011】
例えば、
図1に示されるようなワークフローによってデータの価格付けが行われるとする。
図1では、「申請者→直属上司→技術調査会社Q→技術調査会社R→終点決済」というワークフローによって価格付けの処理が行われる例が示されている。
【0012】
会社Pの申請者は「データを売りたい」という申請を出すが、申請者自身は、当該データの属する技術分野(技術Q、技術R)の専門家ではなく、当該データの価格の相場について精通していない。直属上司は、売るという判断にはOKを出したいが、自身も非専門家なので価格の妥当性を検証できない。そこで、当該データの価格は会社においては保留にされて、他社である技術調査会社の意見次第で決まることとする。技術調査会社は、その専門性に基づいてデータの価格を決める属性値を決定する。終点決済では、その属性値に基づいて最終的に価格が決定される。なお、各会社における決定事項は、会社別のブロックチェーン(BC)に記録されることとする。また、各技術調査会社において属性値を決定する者を、便宜上、「審査官」という。
【0013】
このような取引がシーケンシャルに流れる状況を考える。制約としては以下を想定する。
【0014】
(1)各技術調査会社の審査官に与えられる属性値付けには幅がある。すなわち、複数の取引に対して与えられる属性値の分散は0ではない。例えば、或る審査官が全での取引に高評価をつけたりする、などは許されない。一定期間の間、高~低評価まで、幅を持たせた評価付けが行われる必要がある。
【0015】
(2)各審査官の属性値付けは、自分より前の段階の審査官の判断に依存する可能性がある。例えば、1次審査では書類審査で篩にかけ、2次審査では技術審査で詳細に調査されるというイメージである。
【0016】
なお、このようなワークフローは、データ売買以外でも適用可能である。例えば、電力事業者における電力売買の利益配分システムに対して当該ワークフローが適用されてもよい。
【0017】
上記のワークフローに関して考えられるアプローチについて説明する。
【0018】
[アプローチ1:ブロックチェーン連携]
方式として、異なるブロックチェーンネットワーク間を連携する方式を用いて、ワークフローの処理が行われるたびに逐一評価結果が付与されることを想定する。異なるブロックチェーンネットワーク間を連携する方式の例として、「Shingo Fujimoto, Yoshiki Higashikado, Takuma Takeuchi、ConnectionChain:the Secure Interworking of Blockchains (2019)、<URL:https://ieeexplore.ieee.org/document/8939267>」に開示されたコネクションチェーンが存在する。
【0019】
単にコネクションチェーンを用いるだけの問題点としては、途中経過も含めて逐一属性値が付与され、当該属性値がブロックチェーンに記録されるため、ワークフローの後段になればなるほど、付与可能な属性値の自由度が低くなることが挙げられる。データの価格付けの例であれば、途中経過の時点で属性値の値が決定されると、最終的に審査官が付与できる属性値に制限がかかる難点がある。そのため、途中では属性値の付与は保留としたい。
【0020】
[アプローチ2:ブロックチェーン連携+保留状態付与]
アプローチ1の改良として、ブロックチェーンの連携方式はアプローチ1と同様に用いて、途中経過の取引では属性値が付与されない(保留状態とされる)ことを示す変数をブロックチェーンに記録し、最終時点(終点決済)の取引において一括で保留状態の変数に属性値を付与する。この方法のメリットとして、最終取引の時点で属性値の自由度が高くなる。
【0021】
しかし、最終取引から遡って各ブロックチェーンにおいて保留状態の変数に属性値を付与するのは、多くの場合において処理性能が低下するというデメリットがある。各ブロックチェーンに順々に遡って承認依頼をかけるため、連携するブロックチェーンの台数(技術調査会社の数)に比例して処理時間が増加する。審査官の判断が前の審査官の判断に依存するため、順番に承認依頼をかけざるを得ないためである。
【0022】
ブロックチェーンによっては、取引が発行されてから承認されるまでに10分以上かかるものもあるし、そもそも審査官の確認処理が人力で行われることを想定すると、申請の種類にもよるが1時間はかかるものと思われる(重要な処理であれば1日、1週間かかるものもある)。その場合、例えば、最終時点のブロックチェーン以外に4台のブロックチェーンがある場合、各々への確認処理が入り、4時間の所要時間が発生してしまう。これはワークフローの各処理が重要のものであるか、又は接続するブロックチェーンの台数が増えることにより顕著に表れるデメリットである。
【0023】
そこで、本実施の形態では、ブロックチェーンに対して保留状態の記録が許容される分散ワークフローに関して、「最終時点の取引における属性値付与の自由度を上げること」と「最終時点の取引の処理時間を短縮する」を同時に満たす例について説明する。そうすることで、ワークフローの各段階において、ブロックチェーンへの記録に要する負荷を軽減することができる。
【0024】
図2は、本発明の実施の形態における取引制御システム1の構成例を示す図である。
図2に示されるように、取引制御システム1は、複数のブロックチェーンネットワーク(以下、「BC20」という。)及び連携サーバ10を含む。BC20-1~BC20-4等の各BC20は、インターネット等のネットワークを介して連携サーバ10に接続される。但し、連携サーバ10の機能は、いずれかのBC20におけるスマートコントラクトによって実現されてもよい。
【0025】
各BC20は、
図1に示した、会社P、技術調査会社Q、技術調査会社P、又は終点決済を実行する組織(以下、「終点組織」という。)において運用されるブロックチェーンネットワークである。例えば、BC20-1が、会社Pのブロックチェーンネットワークであり、BC20-2が、技術調査会社Qのブロックチェーンネットワークであり、BC20-3が、技術調査会社Rのブロックチェーンネットワークであり、BC20-4が、終点組織のブロックチェーンネットワークである。
【0026】
連携サーバ10は、各BC20における処理を保留状態とするための連携処理を実行する1以上のコンピュータ(情報処理装置)である。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態における連携サーバ10のハードウェア構成例を示す図である。
図3の連携サーバ10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0028】
連携サーバ10での処理を実現するプログラムは、記録媒体101によって提供される。プログラムを記録した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0029】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って連携サーバ10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0030】
なお、記録媒体101の一例としては、CD-ROM、DVDディスク、又はUSBメモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置102の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等が挙げられる。記録媒体101及び補助記憶装置102のいずれについても、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に相当する。
【0031】
なお、各BC20の各ノード(情報処理装置)も、
図3に示されるようなハードウェア構成を有してよい。
【0032】
次に、取引制御システム1において実行されるワークフローの処理手順の概要を4つのステップ(第1ステップ~第4ステップ)に分けて説明する。
【0033】
図4は、ワークフローの第1ステップを説明するための図である。第1ステップでは、BC20-1におけるデータの価格付けの申請取引の発行に応じ、連携サーバ10は、当該価格付けのための評価式(評価値の算定式)を取得し、当該評価式を条件式DB121へ格納する。なお、
図4において、当該評価式は、y=200x
1+50x
2である。yは、データの価格である。x
1は、当該価格の属性(変数)のうち、技術調査会社Qの審査官A1によって値が決定される属性(変数)である。x
2は、当該価格の属性(変数)のうち、技術調査会社Rの審査官A2によって値が決定される属性(変数)である。なお、当該評価式は、例えば、申請者又は会社Pによって決定される。
【0034】
図5は、ワークフローの第2ステップを説明するための図である。第2ステップにおいて、保留状態となる取引が、各技術調査会社のBC20上で行われ際に、連携サーバ10は、当該各BC20から条件式を取得し、当該条件式を条件式DB121に格納する。当該各BC20では、x
1又はx
2について保留状態を含む取引が発行される。
【0035】
ここで、条件式は、評価式の変数(x
1又はx
2)に関する条件を示す式である。
図5では、審査官A1によって、3≦x
1≦5が入力され、審査官A2によって、2≦x
2≦4が入力された例が示されている。すなわち、第2ステップでは、各変数は一意に決定されずに、条件式によって保留状態とされる。
【0036】
図5において、3≦x
1≦5は、条件式3として条件式DB121に格納されている。2≦x
2≦4は、条件式4として条件式DB121に格納されている。なお、条件式1(審査官A1,A2の各取引の属性値の平均μは2≦μ≦3を満たす。)及び条件式2(属性値x
1が3以下の場合、属性値x
2は2である。)は、予め条件式DB121に対して登録されている条件式の一例である。条件式1及び2は、全てのワークフローに対して共通に適用される条件式(以下、「既定条件式」という。)である。
【0037】
図6は、ワークフローの第3ステップを説明するための図である。第3ステップにおいて、終点組織のBC20-4において保留状態の変数の値の決定が行われる。具体的には、条件式DB121及び結果DB122が参照され、条件式DB121に格納された全ての条件式を満たすように各変数(x
1、x
2)の値が決定されることで、価格yが決定され、終点決済取引が発行される。終点決済取引の発行により、決定された価格及び変数の値がBC20-4の台帳に記録される。当該価格及び変数の値は、また、連携サーバ10へ送信される。
図6の例では、x
1=3、x
2=4、y=2600として決定された例が示されている。なお、結果DB122は、過去の価格及び変数の値の履歴が記憶されるデータベースである。結果DB122を参照する必要が有るのは、条件式1を満たすために、過去の取引の結果が必要だからである。
【0038】
図7は、ワークフローの第4ステップを説明するための図である。終点決済後の第4ステップにおいて、連携サーバ10は、結果DB122に格納された終点決済取引の結果をBC20-2及びBC20-3に反映させるため、保留状態の変数への値(x1又はx2)の代入要求を示す取引を発行して、各変数の値をBC20-2及びBC20-3へ送信するとともに、終点決済取引の結果(y、x1、x2の値)を結果DB122に格納する。各BC20は、それぞれの保留状態の変数の値を終点決済取引の結果の値によって更新する。なお、
図7において破線で示されているように、代入要求を示す取引を発行によって、BC20-1に対して変数yの値が送信されてもよい。この場合、BC20-1において、変数yに対して値が代入されてもよい。
【0039】
第1ステップから第4ステップ等を実行可能とするため、取引制御システム1(各BC20及び連携サーバ10)は、
図8に示されるような機能構成を有する。
【0040】
図8は、本発明の実施の形態における取引制御システム1の機能構成例を示す図である。
図8に示されるように、各BC20(の各ノード)は、リクエスト受付部21、保留状態取引発行部22、条件式DB更新要求部23、保留状態値決定部24、終点決済取引発行部25、値決定通知部26、値反映取引発行部27、通知部28及び通知受信部29等を有する。これら各部は、BC20にインストールされた1以上のプログラム(例えば、スマートコントラクト)が、BC20を構成するノードのCPUに実行させる処理により実現される。なお、終点決済取引発行部25、値決定通知部26及び値反映取引発行部27は、終点決済取引を行うBC20-4以外のBC20は有していなくてもよい。
【0041】
リクエスト受付部21は、ユーザ(申請者、審査官等)からのリクエストを受け付ける。
【0042】
保留状態取引発行部22は、取引の結果としてBC20の台帳に記録される内容が保留状態であることを示す変数である取引(以下、「保留取引」という。)を発行する。BC20-1においては、価格付けの申請が保留取引に該当する。BC20-2及びBC20-3においては、条件式を含む取引が保留取引に該当する。
【0043】
条件式DB更新要求部23は、BC20において発行される保留取引に含まれる情報(評価式又は条件式)の登録要求を連携サーバ10へ送信する。
【0044】
保留状態値決定部24は、条件式DB121に格納されている条件式、及び結果DB122に格納されている過去の取引の結果等に基づいて、保留状態の変数の値を決定する。
【0045】
終点決済取引発行部25は、終点決済取引を発行する。
【0046】
値反映取引発行部27は、保留状態の変数の値を反映させるためのイベント又は取引を発行する。
【0047】
通知部28は、連携サーバ10に対して通知を送信する。通知受信部29は、連携サーバ10からの通知を受信する。
【0048】
一方、連携サーバ10は、イベント監視部11、条件式DB更新部12、条件式DB参照部13、結果DB参照部14、結果DB更新部15、値反映要求部16、通知部17及び通知受信部18等を有する。これら各部は、連携サーバ10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。連携サーバ10は、また、条件式DB121及び結果DB122等のデータベース(記憶部)を利用する。これら各データベースは、例えば、補助記憶装置102、又は連携サーバ10にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0049】
イベント監視部11は、各BC20におけるイベントの発行を監視する。
【0050】
条件式DB更新部12は、条件式DB更新要求部23によって発行されるイベントに応じ、評価式又は条件式を条件式DB121へ登録することで、条件式DB121を更新する。
【0051】
条件式DB参照部13は、条件式DB121に格納されている条件式を保留状態値決定部24へ送信する。
【0052】
結果DB参照部14は、結果DB122に格納されている過去の取引の結果を保留状態値決定部24へ送信する。
【0053】
結果DB更新部15は、保留状態値決定部24によって決定された値を結果DB122へ登録することで、結果DB122を更新する。
【0054】
値反映要求部16は、保留状態の変数について、保留状態値決定部24によって決定された値の反映を各BC20へ要求する。
【0055】
通知部17は、各BC20に対して通知を送信する。通知受信部18は、各BC20からの通知を受信する。
【0056】
以下、取引制御システム1において実行される処理手順について説明する。
図9~
図12は、取引制御システム1において実行される処理手順の一例を説明するためのシーケンス図である。
【0057】
ステップS101において、BC20-1のリクエスト受付部21は、データの価格付けの申請に関するリクエストの入力を申請者から受け付ける。当該リクエストには、例えば、上述した評価式(y=200x1+50x2)が含まれる。
【0058】
続いて、BC20-1の保留状態取引発行部22は、当該リクエストに応じた申請取引をBC20-1内において発行する(S102)。その結果、BC20-1内の各ノードの台帳には、当該リクエストに含まれている評価式が記録される。
【0059】
連携サーバ10のイベント監視部11は、当該申請取引の発行を検知すると、当該申請取引においてBC20-1の台帳に記録された評価式を取得する(S103)。続いて、条件式DB更新部12は、当該評価式を条件式DB121に記録することで、条件式DB121を更新する(S104)。続いて、連携サーバ10の通知部17は、ワークフローの発生の通知をBC20-2へ送信する(S105)。
【0060】
BC20-2の通知受信部29が当該通知を受信すると、BC20-2の通知部28は、ワークフローの発生を審査官A1に対して通知する(S106)。例えば、BC20-2の通知部28は、BC20-2のスマートコントラクトと連携するアプリケーションに対してワークフローの発生を通知し、当該アプリケーションが、所定のユーザインタフェースを介して審査官A1に対してワークフローの発生を通知してもよい。
【0061】
審査官A1は、ワークフローの発生の通知に応じ、当該ワークフローの評価式のうち、審査官A1が審査すべき変数(上記の例では、x1)の値の条件式を決定する。続いて、BC20-2のリクエスト受付部21は、当該条件式を含むリクエストの入力を受け付ける(S107)。なお、審査官A1は、評価式のうち自らが審査すべき変数を事前に知っていることとする。BC20-2の保留状態取引発行部22は、当該リクエストの入力に応じ、当該変数の値について保留状態とする取引をBC20-2において発行する(S108)。その結果、当該条件式がBC20-2の各ノードの台帳に記録される。続いて、条件式DB更新要求部23は、条件式DB121の更新要求を示すイベント又は取引を発行する(S109)。
【0062】
連携サーバ10のイベント監視部11は、当該イベント又は当該取引の発行を検知すると、BC20-2の台帳に記録された条件式を取得する(S110)。続いて、条件式DB更新部12は、当該条件式を条件式DB121に記録することで、条件式DB121を更新する(S111)。続いて、連携サーバ10の通知部17は、ワークフローの発生の通知をBC20-3へ送信する(
図10のS112)。
【0063】
ステップS113~S118においては、
図9のステップS105~S111と同様の処理手順が実行される。但し、ステップS113~S118におけるユーザは、審査官A2であり、BC20は、BC20-3であり、条件式は審査官A2が審査すべき変数(上記の例では、x
2)の値の条件式である。
【0064】
続いて、連携サーバ10の通知部17は、ワークフローの発生の通知をBC20-4へ送信する(
図11のS119)。BC20-4の通知受信部29が当該通知を受信すると、BC20-4の保留状態値決定部24は、条件式DB121及び結果DB122の値の参照要求を示すイベント又は取引をBC20-4において発行する(S120)。その結果、当該取引に関する情報がBC20-4の台帳に記録される。
【0065】
連携サーバ10のイベント監視部11が、当該イベント又は当該取引の発行を検知すると(S121)、連携サーバ10の条件式DB参照部13は、現在のワークフローに関する評価式及び当該評価式の各変数の条件式、並びに既定条件式等の値を結果DB122から取得し、取得した値をBC20-4の保留状態値決定部24へ通知する(S122)。また、連携サーバ10の結果DB参照部14は、過去のワークフローに関するの各変数の値、及び評価式の値(すなわち、価格)の履歴を含む値を結果DB122から取得し、取得した値をBC20-4の保留状態値決定部24へ通知する(S123)。その結果、BC20-4の保留状態値決定部24は、評価式、当該評価式の各変数の条件式、既定条件式、並びに過去のワークフローに関するの各変数の値、及び評価式の値(すなわち、価格)の履歴を含む値を取得する。
【0066】
BC20-4の保留状態値決定部24は、ステップS122及びS123において取得した各値に基づいて、保留状態の各値を決定(算定)する(S124)。すなわち、保留状態値決定部24は、各変数について条件式及び既定条件式を満たす値から選定した値を評価式に代入することで、価格(評価値)を算定する。続いて、BC20-4の終点決済取引発行部25は、終点決済取引を発行する(S125)。終点決済取引の発行により、決定された価格及び各変数の値がBC20-4の台帳に記録される。
【0067】
続いて、BC20-4の値決定通知部26は、各BC20上における保留状態の解除要求を示すイベント又は取引を発行する(
図12のS126)。なお、当該イベント又は取引の発行に応じてステップS127以降が実行される。したがって、当該イベント又は取引の発行は、BC20-4において選定された各変数の値(又は算定された価格)について、B20-2及びBC20-3(又はBC20-1)への送信の制御に相当する。
【0068】
連携サーバ10のイベント監視部11は、当該イベント又は当該取引の発行を検知すると(S127)、BC20-4において算定された価格及び選定された各変数の値を取得する。続いて、連携サーバ10の値反映要求部16は、BC20-2に対して、保留状態の変数への値の代入要求を示すイベント又は取引を発行する(S128)。当該イベント又は取引の発行に伴って、BC20-2において保留状態とされている変数(x1)について選定された値を示す情報がBC20-2へ送信される。
【0069】
BC20-2の値反映取引発行部27は、当該情報を受信すると、保留状態とされている変数(x1)に対して当該情報が示す値を代入する(S129)。その結果、BC20-2の台帳には、当該変数の値が記録(反映)される。続いて、BC20-2の通知部28は、保留状態の変数への値の反映の終了通知を連携サーバ10へ送信する(S130)。連携サーバ10の通知受信部18が当該終了通知を受信すると、連携サーバ10の結果DB更新部15は、当該変数の値を結果DB122へ記録する(S131)。
【0070】
続くステップS132~S135では、ステップS128~S131と同様の処理手順がBC20-3に関して実行される。その結果、BC20-3の台帳には、BC20-3において保留状態だった変数(x2)の値が記録され、結果DB122には、当該変数の値が記録される。
【0071】
なお、BC20-1についても、ステップS128~S131と同様の処理手順が実行されてもよい。その場合、BC20-1の台帳には、価格yの値が記録されてもよい。
【0072】
上述したように、本実施の形態によれば、複数のブロックチェーンを跨ぐ、保留状態を含むワークフローについて、最終時点の取引(終点決済取引)における属性値付与の自由度を上げることができる。すなわち、途中の取引では条件式を除き保留状態となっているため、アプローチ1に比べて終点決済取引の自由度を高くすることができる。また、本実施の形態によれば、終点決済取引においては、当該取引に係るBC20-4と連携サーバ10との間におけるやりとりが行われればよいため、アプローチ2に比べて時間を短縮することができる。その結果、ワークフローの各段階において、ブロックチェーンへの記録に要する負荷を軽減することができる。
【0073】
なお、本実施の形態において、申請者は、第1のユーザの一例である。審査官は、第2のユーザの一例である。BC20-1は、第1のブロックチェーンネットワークの一例である。BC20-2又はBC20-3は、第2のブロックチェーンネットワークの一例である。
【0074】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
1 取引制御システム
10 連携サーバ
11 イベント監視部
12 条件式DB更新部
13 条件式DB参照部
14 結果DB参照部
15 結果DB更新部
16 値反映要求部
17 通知部
18 通知受信部
20 BC
21 リクエスト受付部
22 保留状態取引発行部
23 条件式DB更新要求部
24 保留状態値決定部
25 終点決済取引発行部
26 値決定通知部
27 値反映取引発行部
28 通知部
29 通知受信部
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
121 条件式DB
122 結果DB
B バス