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特許7347712無効電力制御装置、無効電力制御方法、及び無効電力制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】無効電力制御装置、無効電力制御方法、及び無効電力制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20230912BHJP
   G05F 1/70 20060101ALI20230912BHJP
   H02J 3/18 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
H02M7/48 F
G05F1/70 A
H02M7/48 R
H02J3/18 135
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023503509
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044344
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関 航佑
(72)【発明者】
【氏名】李 海青
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/144841(WO,A1)
【文献】特開2018-82530(JP,A)
【文献】特開2019-103296(JP,A)
【文献】特表2018-519774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
G05F 1/70
H02J 3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
系統電圧と直流電圧とを検出する電圧取得部と、
前記電圧取得部により取得された前記系統電圧と前記直流電圧とを用いて変調率を算出する変調率算出部と、
上位装置から第1の無効電力指令を取得する無効電力指令取得部と、
前記無効電力指令取得部により取得された前記第1の無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する不感帯領域判定部と、
前記不感帯領域判定部により、前記第1の無効電力指令が前記不感帯レベルではないと判定されたときに、前記変調率算出部により算出された前記変調率に基づいて、前記第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出する無効電力指令算出部と、
前記無効電力指令算出部により前記第2の無効電力指令が算出されたときは、前記第2の無効電力指令を出力し、前記無効電力指令算出部により前記第2の無効電力指令が算出されなかったときは、前記第1の無効電力指令を出力する無効電力指令出力部と、
を備えることを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無効電力制御装置において、
前記無効電力指令取得部により取得された前記第1の無効電力指令が0より大きいか否かを判定する指令値極性判定部を
さらに備え、
前記無効電力指令算出部は、前記指令値極性判定部により、前記第1の無効電力指令が0より大きいと判定されたときは、誘導性の領域において前記第1の無効電力指令を制限して前記第2の無効電力指令を算出し、前記第1の無効電力指令が0より小さいと判定されたときは、容量性の領域において前記第1の無効電力指令を制限して前記第2の無効電力指令を算出する
ことを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の無効電力制御装置において、
前記無効電力指令算出部は、前記変調率が所定の制限開始レベルを超えたときに、前記第1の無効電力指令の制限を開始し、前記変調率が所定の制限終了レベルを超えたときは、前記第1の無効電力指令の制限を終了する
ことを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の無効電力制御装置において、
前記変調率に応じた変調率補償ゲインがテーブルとして記憶された記憶部を
さらに備え、
前記無効電力指令算出部は、前記記憶部に記憶された前記テーブルを参照して、前記変調率に応じた前記変調率補償ゲインを抽出し、抽出された前記変調率補償ゲインを前記第1の無効電力指令に乗算することにより、前記第1の無効電力指令を制限又は補償して前記第2の無効電力指令を算出する
ことを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項5】
請求項1に記載の無効電力制御装置において、
所定の変調率基準が記憶された記憶部を
さらに備え、
前記無効電力指令算出部は、前記記憶部に記憶された前記変調率基準と前記変調率との差分又は偏差を算出し、算出された前記差分又は偏差にPI制御を行い、前記PI制御により求められた制御量を前記第1の無効電力指令に加算することにより、前記第1の無効電力指令を制限又は補償して前記第2の無効電力指令を算出する
ことを特徴とする無効電力制御装置。
【請求項6】
系統電圧と直流電圧とを検出する電圧取得ステップと、
前記電圧取得ステップにより取得された前記系統電圧と前記直流電圧とを用いて変調率を算出する変調率算出ステップと、
上位装置から第1の無効電力指令を取得する無効電力指令取得ステップと、
前記無効電力指令取得ステップにより取得された前記第1の無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する不感帯領域判定ステップと、
前記不感帯領域判定ステップにより、前記第1の無効電力指令が前記不感帯レベルではないと判定されたときに、前記変調率算出ステップにより算出された前記変調率に基づいて、前記第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出する無効電力指令算出ステップと、
前記無効電力指令算出ステップにより前記第2の無効電力指令が算出されたときは、前記第2の無効電力指令を出力し、前記無効電力指令算出ステップにより前記第2の無効電力指令が算出されなかったときは、前記第1の無効電力指令を出力する無効電力指令出力ステップと、
を備えることを特徴とする無効電力制御方法。
【請求項7】
請求項6に記載の無効電力制御方法の処理をコンピュータに実行させる
ことを特徴とする無効電力制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無効電力制御装置、無効電力制御方法、及び無効電力制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有効電力に応じて無効電力指令を生成することにより、発電設備の出力精度や出力電力検出部の検出精度に左右されることなく、運転力率を維持することができるパワーコンディショナが知られている(例えば、特許文献1参照)。なお、以下、パワーコンディショナは、電力変換器又はPCS(Power Conditioning Subsystem)とも称される。また、太陽光発電用パワーコンディショナは、PV-PCS(Photovoltaics-Power Conditioning Subsystem)とも称され、蓄電池用パワーコンディショナは、ESS-PCS(Energy Storage System-Power Conditioning Subsystem)とも称される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開2015-132988号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、PV/ESS-PCSが任意の有効・無効電力指令に従って運転する場合、PCSの無効電力出力が増加することで系統電圧が上昇することがある。この場合、PWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)が過変調となり系統側への高調波が増大する恐れがあった。
【0005】
すなわち、PCSの無効電力出力が増加すると、PCSや系統側に含まれているリアクトル成分におけるインピーダンスの電圧も上昇し、結果的に系統電圧が上昇することがある。系統電圧が所定値以上まで上昇し続けると、例えばリミッタ等が作用して、電圧の正弦波の波形の上部がある一定以上上がらなくなり台形のように歪むことがある。これにより、電圧の波形が崩れ、PWMが過変調となり、系統側への高調波が増大する恐れがあった。
【0006】
従前は、PWMが過変調となった場合でも、PCSの故障検出レベルの範囲内であればPCSは運転を続け、PCSの故障検出レベルを超えたときに初めてPCSが停止することもあった。しかし、電圧の波形が崩れてPWMが過変調となり高調波が増大すると、電流の波形も崩れ、系統側に接続されている負荷や機器の誤作動や破損等の悪影響を与えてしまう恐れがある。例えば、系統側に接続されている継電器やブレーカの誤動作やヒューズの溶断等、あるいは映像機器における映像の乱れやノイズの発生等の悪影響が考えられる。
【0007】
そこで、本件開示は、PWMの変調率に応じて無効電力指令を制御することにより、系統電圧の上昇を防止し、PWMの過変調を防止して、系統側へ流出する高調波の増大を抑制し、系統側に接続されている機器等への悪影響を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様に係る無効電力制御装置は、系統電圧と直流電圧とを検出する電圧取得部と、電圧取得部により取得された系統電圧と直流電圧とを用いて変調率を算出する変調率算出部と、上位装置から第1の無効電力指令を取得する無効電力指令取得部と、無効電力指令取得部により取得された第1の無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する不感帯領域判定部と、不感帯領域判定部により、第1の無効電力指令が不感帯レベルではないと判定されたときに、変調率算出部により算出された変調率に基づいて、第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出する無効電力指令算出部と、無効電力指令算出部により第2の無効電力指令が算出されたときは、第2の無効電力指令を出力し、無効電力指令算出部により第2の無効電力指令が算出されなかったときは、第1の無効電力指令を出力する無効電力指令出力部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
なお、一態様に係る無効電力制御装置において、無効電力指令取得部により取得された第1の無効電力指令が0より大きいか否かを判定する指令値極性判定部をさらに備え、無効電力指令算出部は、指令値極性判定部により、第1の無効電力指令が0より大きいと判定されたときは、誘導性の領域において第1の無効電力指令を制限して第2の無効電力指令を算出し、第1の無効電力指令が0より小さいと判定されたときは、容量性の領域において第1の無効電力指令を制限して第2の無効電力指令を算出してもよい。
【0010】
また、一態様に係る無効電力制御装置において、無効電力指令算出部は、変調率が所定の制限開始レベルを超えたときに、第1の無効電力指令の制限を開始し、変調率が所定の制限終了レベルを超えたときは、第1の無効電力指令の制限を終了してもよい。
【0011】
また、一態様に係る無効電力制御装置において、変調率に応じた変調率補償ゲインがテーブルとして記憶された記憶部をさらに備え、無効電力指令算出部は、記憶部に記憶されたテーブルを参照して、変調率に応じた変調率補償ゲインを抽出し、抽出された変調率補償ゲインを第1の無効電力指令に乗算することにより、第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出してもよい。
【0012】
また、一態様に係る無効電力制御装置において、所定の変調率基準が記憶された記憶部をさらに備え、無効電力指令算出部は、記憶部に記憶された変調率基準と変調率との差分又は偏差を算出し、算出された差分又は偏差にPI制御を行い、PI制御により求められた制御量を第1の無効電力指令に加算することにより、第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出してもよい。
【0013】
一態様に係る無効電力制御方法は、系統電圧と直流電圧とを検出する電圧取得ステップと、電圧取得ステップにより取得された系統電圧と直流電圧とを用いて変調率を算出する変調率算出ステップと、上位装置から第1の無効電力指令を取得する無効電力指令取得ステップと、無効電力指令取得ステップにより取得された第1の無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する不感帯領域判定ステップと、不感帯領域判定ステップにより、第1の無効電力指令が不感帯レベルではないと判定されたときに、変調率算出ステップにより算出された変調率に基づいて、第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出する無効電力指令算出ステップと、無効電力指令算出ステップにより第2の無効電力指令が算出されたときは、第2の無効電力指令を出力し、無効電力指令算出ステップにより第2の無効電力指令が算出されなかったときは、第1の無効電力指令を出力する無効電力指令出力ステップと、を備えることを特徴とする。
【0014】
一態様に係る無効電力制御プログラムは、上記の無効電力制御方法の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本件開示によれば、PWMの変調率に応じて無効電力指令を制御することにより、系統電圧の上昇を防止し、PWMの過変調を防止して、系統側へ流出する高調波の増大を抑制し、系統側に接続されている機器等への悪影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る無効電力制御装置が配置されたパワーコンディショナの構成例を示す図である。
図2図1に示した第1実施形態に係る無効電力制御装置の構成例を示す図である。
図3図2に示した無効電力制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図4図3に示したステップS2において変調率算出部によって行われる処理の一例を示す図である。
図5図3に示したステップS4において不感帯領域判定部によって行われる処理の一例を示す図である。
図6図3に示したステップS5において指令値極性判定部によって行われる処理の一例を示す図である。
図7図3に示したステップS6Aにおいて無効電力指令算出部によって行われる処理の一例を示す図である。
図8】第2実施形態に係る無効電力制御装置の構成例を示す図である。
図9図8に示した無効電力制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図10図9に示したステップS6Bにおいて無効電力指令算出部によって行われる処理の一例を示す図である。
図11図7に示したテーブルの構成例を示す図である。
図12】第3実施形態に係る無効電力制御装置の構成例を示す図である。
図13図12に示した無効電力制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図14図13に示したステップS6Cにおいて無効電力指令算出部によって行われる処理の一例を示す図である。
図15図14に示したステップS62Cにおいて無効電力指令算出部27Cによって行われるPI制御の処理の一例を示す図である。
図16図1図15に示す実施形態に係る無効電力制御装置が有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本件開示の無効電力制御装置、無効電力制御方法、及び無効電力制御プログラムについて、図面を用いて説明する。
【0018】
<第1実施形態の構成>
図1は、第1実施形態に係る無効電力制御装置20が配置されたパワーコンディショナ1の構成例を示す図である。なお、図1に示す無効電力制御装置20は、本件開示の無効電力制御装置、無効電力制御方法、及び無効電力制御プログラムの一例である。
【0019】
図1に示すとおり、パワーコンディショナ(PCS)1は、直流電源11と、直流スイッチ12と、インバータ13と、交流スイッチ14と、交流電力系統15と、系統電圧検出器16と、直流電圧検出器17と、無効電力制御装置20とを有する。PCS1は、例えば、PV-PCS又はESS-PCSであり、直流電源11から供給される直流電力を、インバータ13を介して交流電力に変換し、交流電力系統15に出力する。なお、PCS1において、本実施形態で用いられない構成は、説明及び図示を省略又は簡略化する。
【0020】
直流電源11は、PCS1の直流端に接続される。直流電源11は、例えば、太陽光パネル(PV:Photovoltaics)又は蓄電池(ESS:Energy Storage System)等であり、PCS1の直流端からPCS1に直流電力を供給する。なお、直流電源11は、例えば、風力発電機と交流直流コンバータ等からなる直流電源システム等であってもよい。
【0021】
直流スイッチ(直流開閉器)12は、直流電源11とインバータ13の直流端との間の直流母線に直列に設けられ、不図示の制御回路や作業者からの投入指示又は開放指示に従って、直流母線を接続又は開放する。直流スイッチ12が開放されると直流電源11から供給される直流電力がインバータ13に流入することが遮断される。
【0022】
インバータ13は、直流スイッチ12と交流スイッチ14との間に設けられ、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)等の複数のスイッチング素子で構築されている。インバータ13は、不図示のインバータ制御回路を有し、インバータ制御回路は、スイッチング素子のゲート駆動信号であるパルス幅変調信号を生成する。インバータ13は、インバータ制御回路の制御に従い、直流電源11から供給される直流電力を直流端から受け、交流電力に変換して交流端から出力する。
【0023】
交流スイッチ(交流開閉器)14は、インバータ13の交流端と交流電力系統15との間の三相交流回路に直列に設けられ、不図示の制御回路や作業者からの投入指示又は開放指示に従って、交流回路を接続又は開放する。交流スイッチ14が開放されるとインバータ13から供給される交流電力が交流電力系統15に流出することが遮断される。
【0024】
交流電力系統(系統)15は、PCS1から出力された交流電力を需要家の受電設備に供給するための、発電・変電・送電・配電を統合したシステムであり、例えば、不特定の負荷や機器が接続されている。
【0025】
系統電圧検出器16は、例えば公知の交流電圧計又は交流電圧センサ等であり、PCS1の系統電圧を検出する。なお、系統電圧検出器16が設けられる位置は、PCS1の系統電圧を計測できる位置であればどこでもよく、図1に示される位置には限られない。系統電圧検出器16によって計測された系統電圧の値は、無効電力制御装置20によって取得される。
【0026】
直流電圧検出器17は、例えば公知の直流電圧計又は直流電圧センサ等であり、PCS1の直流電圧を検出する。なお、直流電圧検出器17が設けられる位置は、PCS1の直流電圧を計測できる位置であればどこでもよく、図1に示される位置には限られない。直流電圧検出器17によって計測された直流電圧の値は、無効電力制御装置20によって取得される。
【0027】
無効電力制御装置20は、例えば、PCS1の内部又は外部に設けられ、図中配線等は省略されているが、インバータ13を始めとするPCS1の各要素と、有線又は無線によって電気的に接続されている。無効電力制御装置20は、例えば、系統電圧検出器16や直流電圧検出器17の計測値及び不図示の上位装置から無効電力指令を取得し、制限又は補償後の無効電力指令を算出して、算出した制限又は補償後の無効電力指令をインバータ13に出力する。なお、無効電力制御装置20は、PCS1における不図示の制御部や不図示のインバータ制御回路の機能として実現されていてもよい。
【0028】
図2は、図1に示した第1実施形態に係る無効電力制御装置20の構成例を示す図である。
【0029】
無効電力制御装置20は、例えば、プログラムを実行することにより動作するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の不図示のプロセッサを有する。無効電力制御装置20は、記憶部30を有し、例えば、記憶部30に記憶された所定のプログラムを実行することにより不図示のプロセッサを動作させてPCS1の無効電力指令を統括的に制御する。
【0030】
無効電力制御装置20は、例えば、記憶部30に記憶された所定のプログラムを実行することにより、系統電圧取得変換部21と、直流電圧取得部22と、変調率算出部23と、無効電力指令取得部24として機能する。また、無効電力制御装置20は、同様に、所定のプログラムを実行することにより、不感帯領域判定部25と、指令値極性判定部26と、無効電力指令算出部27と、無効電力指令出力部28としても機能する。なお、上記の各機能は、無効電力制御装置20が有する演算処理装置が実行する無効電力制御プログラムにより実現されてもよい。また、これらの各機能は、ハードウェアにより実現されてもよい。
【0031】
系統電圧取得変換部21は、系統電圧検出器16と接続され、系統電圧検出器16によって測定された系統電圧の値を取得する。系統電圧取得変換部21は、例えば、取得されたu相、v相、w相の交流の系統電圧の値をそれぞれ直流成分に分解し(dq変換し)、系統電圧のd軸の値とq軸の値とを算出する。系統電圧取得変換部21は、dq変換して算出された系統電圧のd軸の値とq軸の値とを変調率算出部23に出力する。
【0032】
直流電圧取得部22は、直流電圧検出器17と接続され、直流電圧検出器17によって測定された直流電圧の値を取得する。直流電圧取得部22は、取得された直流電圧の値を変調率算出部23に出力する。なお、系統電圧取得変換部21と直流電圧取得部22とは、「電圧取得部」の一例である。
【0033】
変調率算出部23は、系統電圧取得変換部21から出力された系統電圧のd軸の値と、系統電圧のq軸の値と、直流電圧取得部22から出力された直流電圧の値とを取得し、これらの値に基づいて変調率を算出する。すなわち、変調率算出部23は、系統電圧取得変換部21と直流電圧取得部22とにより取得された系統電圧の値と直流電圧の値とに基づいて変調率を算出する。変調率算出部23は、算出された変調率を無効電力指令算出部27に出力する。なお、変調率算出部23の具体的な動作は、後述する。
【0034】
無効電力指令取得部24は、不図示の上位装置と、有線又は無線で接続されており、不図示の上位装置から、例えば、パーセント単位でアナログ指令として出力された無効電力指令を取得する。なお、不図示の上位装置は、例えば、複数台のPCS1を統括的に監視・制御する。不図示の上位装置から出力される無効電力指令は、例えば、太陽光発電の発電状況、電力会社との取り決め、系統電圧の変動等により変動してもよい。無効電力指令取得部24は、取得された無効電力指令を不感帯領域判定部25及び指令値極性判定部26に出力する。なお、不図示の上位装置によって出力され、無効電力指令取得部24によって取得される無効電力指令は、「第1の無効電力指令」の一例である。
【0035】
不感帯領域判定部25は、無効電力指令取得部24から出力された無効電力指令を取得し、取得された無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する。不感帯レベルか否かの閾値は、例えばPCS1が有する電流センサ及び電圧センサの精度以上の値で設定される。不感帯領域判定部25は、不感帯レベルか否かの判定結果を無効電力指令算出部27に出力し、無効電力指令算出部27のゲートパルスを許可又は禁止する。なお、不感帯領域判定部25の具体的な動作は、後述する。
【0036】
指令値極性判定部26は、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルで無いと判定されたときに、無効電力指令取得部24から出力された無効電力指令を取得して、取得された無効電力指令の極性を判定する。すなわち、指令値極性判定部26は、取得された無効電力指令が0より大きいか0より小さいかを判定する。指令値極性判定部26は、判定された無効電力指令の極性を無効電力指令算出部27に出力する。なお、指令値極性判定部26の具体的な動作は、後述する。
【0037】
無効電力指令算出部27は、変調率算出部23により算出された変調率と、不感帯領域判定部25により判定された無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果と、指令値極性判定部26により判定された無効電力指令の極性の判定結果とを取得する。
【0038】
無効電力指令算出部27は、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、無効電力指令を制限又は補償し、制限又は補償された無効電力指令を算出する。そして、無効電力指令算出部27は、制限又は補償された無効電力指令を無効電力指令出力部28に出力する。なお、無効電力指令算出部27により制限又は補償された無効電力指令は、「第2の無効電力指令」の一例である。
【0039】
一方、無効電力指令算出部27は、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。なお、無効電力指令算出部27の具体的な動作は、後述する。
【0040】
無効電力指令出力部28は、無効電力指令算出部27から出力された第1の無効電力指令又は第2の無効電力指令をインバータ13に出力する。すなわち、無効電力指令算出部27により制限又は補償後の無効電力指令が算出されたときは、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)をインバータ13に出力する。一方、無効電力指令算出部27により制限又は補償後の無効電力指令が算出されなかったときは、無効電力指令取得部24によって取得された無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのままインバータ13に出力する。
【0041】
記憶部30は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)や半導体メモリ等の揮発性又は不揮発性の記憶媒体であり、例えば、無効電力制御装置20の各部の動作に必要なプログラムを記憶する。また、記憶部30は、無効電力制御装置20の各部によって、取得された値、算出された算出結果、又は判定された判定結果等を記憶する。なお、記憶部30は、無効電力制御装置20の外部に設けられ、有線又は無線で無効電力制御装置20と接続されていてもよい。また、記憶部30は、メモリカード、DVD(Digital Versatile Disc)等の外部記憶媒体等であっても、オンラインストレージ等であってもよい。
【0042】
<第1実施形態の動作>
図3は、図2に示した無効電力制御装置20の動作の一例を示すフローチャートである。図3のフローチャートは、例えば、PCS1の運転が開始されたときに開始される。
【0043】
ステップS1において、無効電力制御装置20は、系統電圧と直流電圧とを取得する。すなわち、無効電力制御装置20の系統電圧取得変換部21が、系統電圧検出器16によって測定された系統電圧の値を取得してdq変換し、系統電圧のd軸の値とq軸の値とを算出して取得する。系統電圧取得変換部21は、取得された系統電圧のd軸の値とq軸の値とを変調率算出部23に出力する。また、無効電力制御装置20の直流電圧取得部22が、直流電圧検出器17によって測定された直流電圧の値を取得する。直流電圧取得部22は、取得された直流電圧の値を変調率算出部23に出力する。
【0044】
ステップS2において、無効電力制御装置20は、変調率を算出する。すなわち、無効電力制御装置20の変調率算出部23は、系統電圧取得変換部21から系統電圧のd軸の値とq軸の値とを取得し、直流電圧取得部22から直流電圧の値とを取得し、これらの値に基づいて変調率を算出する。
【0045】
図4は、図3に示したステップS2において変調率算出部23によって行われる処理の一例を示す図である。
【0046】
ステップS21において、変調率算出部23は、系統電圧のd軸の値を二乗した値を求める。
【0047】
ステップS22において、変調率算出部23は、系統電圧のq軸の値を二乗した値を求める。
【0048】
ステップS23において、変調率算出部23は、ステップS21で求められた値と、ステップS22で求められた値とを加算した値を求める。
【0049】
ステップS24において、変調率算出部23は、ステップS23で求められた値の平方根をとった値を求める。ステップS24で求められた値が振幅となる。
【0050】
ステップS25において、変調率算出部23は、ステップS24で求められた値(振幅)に所定の係数Kを乗算した値を求める。なお、ここで、所定の係数Kは、電源利用率と呼ばれているものであり、例えば、85%や115%などの値である。電源利用率(K)は、例えば装置固有の変数であり、通常は装置の仕様や装置の制御手法等によって決められている。
【0051】
ステップS26において、変調率算出部23は、直流電圧の値に所定の係数である(√3/2√2)を乗算する。なお、(√3/2√2)は、変調比を求めるための所定の係数(又は変数)の一例である。ステップS26で求められた値が変調比となる。
【0052】
ステップS27において、変調率算出部23は、ステップS26で求められた値(変調比)に下限リミッタをかける。これにより、変調率算出部23は、変調率を求めるための計算で使用されるステップS26で求められた値(変調比)が所定値以下とはならないようにする。
【0053】
ステップS28において、変調率算出部23は、ステップS25で求められた値をステップS27で求められた値で除算する。ステップS28で求められた値が変調率となる。すなわち、「系統電圧の振幅に所定の係数を掛けたもの(系統電圧の実効値)」を「直流電圧に所定の係数を掛けたもの(PCS1の直流電圧)」で割ったものが変調率となる。変調率算出部23は、ステップS28で求められた値(変調率)を無効電力指令算出部27に出力する。
【0054】
なお、上記のステップS2(S21~S28)の変調率の求め方は一例であり、変調率の求め方は上記には限られない。なお、図4の右側に記載されている動作は、ステップS6(S6A、S6B、S6C)において後述する。
【0055】
図3に戻り、ステップS3において、無効電力指令取得部24は、不図示の上位装置から無効電力指令(第1の無効電力指令)を取得する。無効電力指令取得部24は、取得された無効電力指令を不感帯領域判定部25及び指令値極性判定部26に出力する。
【0056】
ステップS4において、無効電力制御装置20は、無効電力指令(第1の無効電力指令)が不感帯領域(不感帯レベル)か否かを判定する。すなわち、無効電力制御装置20の不感帯領域判定部25は、無効電力指令取得部24から無効電力指令を取得し、取得された無効電力指令が不感帯領域(不感帯レベル)か否かを判定する。不感帯領域判定部25は、無効電力指令(第1の無効電力指令)が不感帯領域ではないと判定したときは(YES側)、ステップS5に処理を移行させる。一方、不感帯領域判定部25は、無効電力指令(第1の無効電力指令)が不感帯領域であると判定したときは(NO側)、ステップS6Aに処理を移行させる。
【0057】
図5は、図3に示したステップS4において不感帯領域判定部25によって行われる処理の一例を示す図である。
【0058】
ステップS41において、不感帯領域判定部25は、無効電力指令(第1の無効電力指令)の絶対値(ABS:absolute value)を求める。
【0059】
ステップS42において、不感帯領域判定部25は、ステップS41で求められた無効電力指令(第1の無効電力指令)の絶対値(ABS)が所定の不感帯突入レベルよりも大きいか否かを判定する。
【0060】
ステップS42において無効電力指令のABSが所定の不感帯突入レベルよりも大きいと判定されたときは、不感帯領域判定部25は、不感帯レベルでは無いと判定し、ステップS43において、ゲートパルスを許可し、その旨を無効電力指令算出部27に出力する。
【0061】
一方、ステップS42において無効電力指令のABSが所定の不感帯突入レベルよりも小さいと判定されたときは、不感帯領域判定部25は、不感帯レベルと判定し、ステップS43において、ゲートパルスを禁止し、その旨を無効電力指令算出部27に出力する。
【0062】
そして、ステップS42において無効電力指令のABSが不感帯レベルであると判定されたときは、その後さらに、ステップS44において、不感帯領域判定部25は、無効電力指令のABSが所定の不感帯解除レベルよりも大きくなったか否かを判定する。
【0063】
この場合、ステップS44において無効電力指令のABSが所定の不感帯解除レベルよりも大きくなったと判定されたとする。この場合、不感帯領域判定部25は、不感帯レベルでは無いと判定し、ステップS43において、ゲートパルスの禁止を解除し(ゲートパルスを許可し)、その旨を無効電力指令算出部27に出力する。
【0064】
一方、ステップS44において無効電力指令のABSが所定の不感帯解除レベルよりも大きくなっていないと判定されたとする。この場合、不感帯領域判定部25は、引き続き不感帯レベルであると判定し、ステップS43において、ゲートパルスの禁止を解除せず(ゲートパルスは引き続き禁止し)、その旨を無効電力指令算出部27に出力する。
【0065】
ここで、不感帯突入レベルか否か、又は不感帯解除レベルか否かの閾値は、例えばPCS1が有する電流センサ及び電圧センサの精度以上の値で設定される。無効電力指令が例えば1~2%など非常に小さな値であった場合、PCS1は、電流又は電圧の誤差等によっては当該1~2%を制御できない。このため、このような場合は、不感帯領域判定部25は、不感帯レベルであると判定する。この場合、ゲートパルスが禁止され、当該1~2%などの非常に小さな値の無効電力指令の制御は行われない。
【0066】
一例として、例えば、図5のステップS42における不感帯突入レベルが3%であった場合において、無効電力指令のABSが3%未満であったときは、ステップS43において、ゲートパルスが禁止され、無効電力指令は制御されない。その後、例えば、図5のステップS44における不感帯解除レベルが5%であった場合において、無効電力指令のABSが5%以上となったときは、ステップS43において、ゲートパルスの禁止が解除され、無効電力指令の制御が行われるようになる。すなわち、無効電力指令が3%未満になったときは制御が行われなくなり、その後無効電力指令が5%以上になったときに制御が行われるようになる。
【0067】
なお、不感帯突入レベルの値と不感帯解除レベルの値とを同一の値にしてしまうと、当該値付近で許可と禁止とがふらついてしまうため、不感帯突入レベルの値よりも不感帯解除レベルの値の方を大きい値としている。このため、一旦無効電力指令が3%未満に突入したら、その後無効電力指令が5%以上となるまでゲートパルスは禁止される。一方、無効電力指令が3%未満に突入していなければ、例えば不感帯解除レベル(5%)よりも小さい4%であってもゲートパルスは許可される。
【0068】
図3に戻り、ステップS5において、無効電力制御装置20は、無効電力指令(第1の無効電力指令)の指令値の極性を判定する。すなわち、無効電力制御装置20の指令値極性判定部26は、無効電力指令取得部24から無効電力指令を取得し、取得された無効電力指令の極性を判定する。
【0069】
図6は、図3に示したステップS5において指令値極性判定部26によって行われる処理の一例を示す図である。
【0070】
ステップS51において、指令値極性判定部26は、無効電力指令(第1の無効電力指令)が0より大きいか0より小さいかを判定する。
【0071】
ステップS52において、指令値極性判定部26は、符号判定を行う。すなわち、指令値極性判定部26は、無効電力指令が0より大きい場合は、符号1と判定し、判定結果(極性)である1を無効電力指令算出部27に出力する。一方、指令値極性判定部26は、無効電力指令が0より小さい場合は、符号0と判定し、判定結果(極性)である0を無効電力指令算出部27に出力する。なお、無効電力指令が0のときは、ステップS4において不感帯領域であると判定されるため(ステップS4のNO側)、そもそもステップS5(S51~S52)の処理は行われない。
【0072】
すなわち、指令値極性判定部26は、無効電力指令が、「不感帯<0<不感帯でない」を満たす(プラスである)ときは符号1と判定し、判定結果(極性)である1を無効電力指令算出部27に出力する。一方、指令値極性判定部26は、無効電力指令が、「不感帯でない<0<不感帯」を満たす(マイナスである)ときは符号0と判定し、判定結果(極性)である0を無効電力指令算出部27に出力する。なお、詳細は後述するが、符号1の場合、極性は誘導性(L性)であり、領域(1)で無効電力指令が制限され、符号0の場合、極性は容量性(C性)であり、領域(2)で無効電力指令が制限される。
【0073】
図3に戻り、ステップS6Aにおいて、無効電力制御装置20は、リミッタ制限により、制限、補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出する。すなわち、無効電力制御装置20の無効電力指令算出部27は、変調率算出部23から変調率を取得し、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果を取得し、指令値極性判定部26から無効電力指令の極性の判定結果を取得する。
【0074】
そして、無効電力指令算出部27は、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を算出する。そして、無効電力指令算出部27は、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0075】
一方、無効電力指令算出部27は、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。
【0076】
図7は、図3に示したステップS6Aにおいて無効電力指令算出部27によって行われる処理の一例を示す図である。図7において、縦軸は無効電力指令であり、横軸は変調率である。上半分の領域(1)は、誘導性(L性)を示し、下半分の領域(2)は、容量性(C性)を示す。領域(1)ではリミッタ1が動作し、領域(2)ではリミッタ2が動作する。
【0077】
中央の横方向の2本の点線は不感帯レベルの閾値を示し、縦軸の無効電力指令が不感帯レベルの閾値を示す2本の点線の間の領域にあるときは、無効電力指令は不感帯レベルであることを示す。縦方向の2本の点線は、左が制限開始レベルの閾値を示し、右が制限終了レベルの閾値を示す。横軸の変調率が制限開始レベルの閾値を超えたときは、リミッタ1又は2が動作し、縦軸の無効電力指令が制限され、横軸の変調率が制限終了レベルを超えたときは、縦軸の無効電力指令の制限が終了する。なお、制限開始レベルの閾値と制限終了レベルの閾値とは、PCS1の仕様、使用環境、使用状況、使用者等によって、又は、事前のシミュレーションや設計値等に従って、所定の値に設定される。
【0078】
図7において、例えば、無効電力指令算出部27が取得した無効電力指令が不感帯レベルではなく、かつL性であった場合、無効電力指令算出部27は、取得された変調率に応じて、領域(1)においてリミッタ1を動作させて無効電力指令を制限する。例えば、無効電力指令算出部27は、取得された変調率が制限開始レベルを超えていないときは、領域(1)の無効電力指令を制限しない。また、例えば、無効電力指令算出部27は、取得した変調率が制限開始レベルを超えてかつ制限終了レベルよりも小さいときは、図示されているように、領域(1)においてリミッタ1を線形に動作させて無効電力指令を+100%から0%に向けて直接制限する。すなわち、無効電力指令算出部27は、無効電力指令の上限値がリミッタ内に収まるよう絞っていく。そして、例えば、無効電力指令算出部27は、取得された変調率が制限終了レベルを超えたときは、領域(1)の無効電力指令の制限を終了する。
【0079】
一方、図7において、例えば、無効電力指令算出部27が取得した無効電力指令が不感帯レベルではなく、かつC性であった場合、無効電力指令算出部27は、取得された変調率に応じて、領域(2)においてリミッタ2を動作させて無効電力指令を制限する。例えば、無効電力指令算出部27は、取得された変調率が制限開始レベルを超えていないときは、領域(2)の無効電力指令を制限しない。また、例えば、無効電力指令算出部27は、取得された変調率が制限開始レベルを超えてかつ制限終了レベルよりも小さいときは、図示されているように、領域(2)においてリミッタ2を線形に動作させて無効電力指令を-100%から0%に向けて直接制限する。すなわち、無効電力指令算出部27は、無効電力指令の上限値がリミッタ内に収まるよう絞っていく。そして、例えば、無効電力指令算出部27は、取得された変調率が制限終了レベルを超えたときは、領域(2)の無効電力指令の制限を終了する。
【0080】
上記の方法で、無効電力指令算出部27は、制限された無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出し、算出された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0081】
なお、リミッタ1又は2が動作しなかったときは、無効電力指令は制限又は補償されないため、結果的に無効電力指令(第2の無効電力指令)は算出されないことになる。この場合、無効電力指令算出部27は、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときと同様に、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力することになる。
【0082】
例えば、リミッタ1又は2が動作しなかったとき(±100%)、又は変調率に応じてリミッタ1又は2が動作したがリミッタ1又は2の上限値(例えば±90%)を下回る無効電力指令が取得されたときは、取得された無効電力指令は制限されずに出力される。一方、例えば、変調率に応じてリミッタ1又は2が動作し、かつリミッタの上限値(例えば±50%)を超える無効電力指令が取得されたときは、無効電力指令は、当該上限値の±50%の値に制限されて出力される。なお、図7において、リミッタ1とリミッタ2との傾きは、上下対称に直線で記載されているが、非対称であっても曲線であってもよい。
【0083】
図3に戻り、ステップS7において、無効電力制御装置20は、無効電力指令を出力する。すなわち、無効電力制御装置20の無効電力指令出力部28は、無効電力指令算出部27から出力された第1又は第2の無効電力指令をインバータ13に出力する。
【0084】
例えば、無効電力指令算出部27により制限又は補償後の無効電力指令が算出されたときは、無効電力指令出力部28は、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)をインバータ13に出力する。一方、無効電力指令算出部27により制限又は補償後の無効電力指令が算出されなかったときは、無効電力指令出力部28は、無効電力指令取得部24によって取得された無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのままインバータ13に出力する。
【0085】
ステップS8において、無効電力制御装置20は、PCS1が停止したか否かを判定する。無効電力制御装置20は、PCS1が停止したと判定したときは(YES側)、図3のフローチャートの処理を終了する。一方、無効電力制御装置20は、PCS1が停止していないと判定したときは(NO側)、ステップS1に処理を戻し、ステップS1~ステップS8の処理を繰り返す。
【0086】
<第1実施形態の作用効果>
以上、図1図7に示す第1実施形態によれば、変調率算出部23は、系統電圧取得変換部21から系統電圧のd軸の値とq軸の値とを取得し、直流電圧取得部22から直流電圧の値とを取得し、これらの値に基づいて変調率を算出する(S2)。これにより、無効電力制御装置20は、PCS1の系統電圧と直流電圧とに応じた変調率に応じて無効電力指令を制御することができる。
【0087】
また、図1図7に示す第1実施形態によれば、不感帯領域判定部25は、無効電力指令取得部24から無効電力指令を取得し、取得された無効電力指令が不感帯領域(不感帯レベル)か否かを判定する(S3)。そして、不感帯突入レベルか否か、又は不感帯解除レベルか否かの閾値は、例えばPCS1が有する電流センサ及び電圧センサの精度以上の値で設定される。これにより、無効電力制御装置20は、制御可能な範囲についてのみ無効電力指令を制御することができる。
【0088】
また、図1図7に示す第1実施形態によれば、不感帯領域判定部25は、閾値として、不感帯突入レベルの値よりも不感帯解除レベルの値の方を大きい値としている(S3)。これにより、無効電力制御装置20は、これらの値の付近におけるゲートパルスの禁止と許可とのふらつきを抑制することができる。
【0089】
また、図1図7に示す第1実施形態によれば、無効電力指令算出部27は、無効電力指令(第1の無効電力指令値)が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、取得された変調率に基づいて、当該無効電力指令を制御する(S6A)。そして、変調率が制限開始レベルから制限終了レベルまでの間にあるときは、無効電力指令(第1の無効電力指令)を制限して、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出する。そして、無効電力指令出力部28は、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)が算出されたときは、第2の無効電力指令をインバータ13に出力し、算出されなかったときは第1の無効電力指令をインバータ13に出力する(S7)。これにより、図1図7に示す第1実施形態によれば、変調率に応じて無効電力指令を制御することができる。このため、図1図7に示す第1実施形態によれば、系統電圧の上昇を防止し、PWMの過変調を防止して、系統側へ流出する高調波の増大を抑制し、系統側に接続されている機器等への悪影響を抑制することができる。
【0090】
<第2実施形態>
図8は、第2実施形態に係る無効電力制御装置20Bの構成例を示す図である。なお、第2実施形態において、図1図7に示す第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0091】
図2に示す無効電力制御装置20では、指令値極性判定部26が設けられていたが、図8に示す無効電力制御装置20Bには指令値極性判定部26は設けられていない。また、図2に示す無効電力制御装置20では、無効電力指令算出部27と記憶部30とが設けられていたが、図8に示す無効電力制御装置20Bでは、これらは無効電力指令算出部27Bと記憶部30Bとに置き換わっている。
【0092】
無効電力指令算出部27Bは、変調率算出部23により算出された変調率と、不感帯領域判定部25により判定された無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果とを取得する。なお、無効電力制御装置20Bには指令値極性判定部26は設けられていないため、無効電力指令算出部27Bは、無効電力指令の極性の判定結果は取得しない。
【0093】
無効電力指令算出部27Bは、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、無効電力指令を制限又は補償し、制限又は補償された無効電力指令を算出する。そして、無効電力指令算出部27Bは、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0094】
一方、無効電力指令算出部27Bは、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。なお、無効電力指令算出部27Bの具体的な動作は、後述する。
【0095】
記憶部30Bは、図2に示す記憶部30と同様の構成及び機能を有する。さらに、記憶部30Bは、変調率に対する補償ゲインをテーブル(TABLE)31Bとして記憶する。一例として、記憶部30Bは、例えば、変調率0.5に対応するゲイン、変調率0.6に対応するゲイン、その他各変調率に対応するゲイン等をテーブル31Bとして記憶する。なお、テーブル31Bの値(係数)は、PCS1の仕様、使用環境、使用状況、使用者等に応じて、又は、事前のシミュレーションや設計値等に従って、所定の値に設定される。なお、記憶部30Bは、無効電力指令算出部27Bと接続されており、テーブル31Bとして記憶された変調率に対する補償ゲインの各値は、無効電力指令算出部27Bによって取得されて使用される。
【0096】
図9は、図8に示した無効電力制御装置20Bの動作の一例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートでは、ステップS5の処理が行われていたが、図9に示すフローチャートでは、ステップS5の処理は行われない。また、図3に示すフローチャートでは、ステップS6Aの処理が行われていたが、図9に示すフローチャートでは、これはステップS6Bに置き換わっている。
【0097】
以下、図9に示すフローチャートでは、図3に示すフローチャートと異なる点を中心に説明し、図3に示すフローチャートと同様の点については説明を省略又は簡略化する。図9に示すフローチャートは、図3に示すフローチャートと同様に、例えば、PCS1の運転が開始されたときに開始される。
【0098】
ステップS6Bにおいて、無効電力制御装置20Bは、ゲイン補償により、制限、補償後の無効電力指令値(第2の無効電力指令値)を算出する。すなわち、無効電力制御装置20Bの無効電力指令算出部27Bは、変調率算出部23から変調率を取得し、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果を取得する。
【0099】
そして、無効電力指令算出部27Bは、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出する。そして、無効電力指令算出部27Bは、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0100】
一方、無効電力指令算出部27Bは、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。
【0101】
図10は、図9に示したステップS6Bにおいて無効電力指令算出部27Bによって行われる処理の一例を示す図である。図10では、無効電力指令算出部27Bが、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときの処理が示されている。
【0102】
ステップS61Bにおいて、無効電力指令算出部27Bは、記憶部30Bに記憶されたテーブル(TABLE)31Bを参照して、取得された変調率に応じた変調率補償ゲインを抽出する。
【0103】
図11は、図7に示したテーブル31Bの構成例を示す図である。図11に示すテーブル31Bにおいて、左側は、変調率を示し、右側は変調率補償ゲインを示す。
【0104】
例えば、記憶部30Bには、変調率が制限開始レベル[変調率:小]のときの変調率補償ゲインの値が1.0である旨が、テーブル31Bとして対応付けられて記憶されている。同様に、例えば、記憶部30Bには、変調率が(制限最大レベル+開始レベル)/2[変調率:中]のときの変調率補償ゲインの値が0.55である旨が、テーブル31Bとして対応付けられて記憶されている。同様に、例えば、記憶部30Bには、変調率が制限最大レベル[変調率:大]のときの変調率補償ゲインの値が0.1である旨が、テーブル31Bとして対応付けられて記憶されている。
【0105】
これにより、無効電力指令算出部27Bは、例えば、図11に示されたテーブル31Bを参照して、入力値である変調率に応じた変調率補償ゲインを選択して抽出する。なお、テーブル31Bにおいて、変調率及び変調率補償ゲインの最大値及び最小値は、設計値等による。また、テーブル31Bにおいて、変調率及び変調率補償ゲインの刻み幅は、テーブル31Bのサイズによる。このため、無効電力指令算出部27Bによって抽出される変調率補償ゲインの最大精度は、記憶部30Bのメモリ容量に依存する。
【0106】
図10に戻り、ステップS62Bにおいて、無効電力指令算出部27Bは、抽出された変調率補償ゲインを無効電力指令(第1の無効電力指令)に乗算し、第1の無効電力指令を制限又は補償して制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出する。すなわち、本実施形態では、無効電力指令に何らかの係数が乗算されることで、無効電力指令が制限又は補償される。これにより、無効電力指令が変調率補償ゲインで調整され、変調率が制御される。そして、無効電力指令算出部27Bは、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0107】
<第2実施形態の作用効果>
以上、図8図11に示す第2実施形態によれば、図1図7に示す第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0108】
また、図8図11に示す第2実施形態によれば、記憶部30Bに記憶されるテーブル31Bを変更することで、仕様や環境等の変動に柔軟に対応することができる。また、記憶部30Bに記憶されるテーブル31Bを細かく設定することで、無効電力指令を細かく制限又は補償することができる。
【0109】
<第3実施形態>
図12は、第3実施形態に係る無効電力制御装置20Cの構成例を示す図である。なお、第3実施形態において、図1図7に示す第1実施形態及び図8図11に示す第2実施形態と同様の構成については同一の符号を付し、詳細な説明は省略又は簡略化する。
【0110】
図2に示す無効電力制御装置20では、指令値極性判定部26が設けられていたが、図12に示す無効電力制御装置20Cでは、図8に示す無効電力制御装置20Bと同様に、指令値極性判定部26は設けられていない。また、図2に示す無効電力制御装置20では、無効電力指令算出部27と記憶部30とが設けられ、図8に示す無効電力制御装置20Bでは、これらは無効電力指令算出部27Bと記憶部30Bとに置き換わっていた。一方、図12に示す無効電力制御装置20Cでは、これらは無効電力指令算出部27Cと記憶部30Cとに置き換わっている。
【0111】
無効電力指令算出部27Cは、変調率算出部23により算出された変調率と、不感帯領域判定部25により判定された無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果とを取得する。なお、無効電力制御装置20Cには指令値極性判定部26は設けられていないため、無効電力指令算出部27Cは、無効電力指令の極性の判定結果は取得しない。
【0112】
無効電力指令算出部27Cは、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、無効電力指令を制限又は補償し、制限又は補償された無効電力指令を算出する。そして、無効電力指令算出部27Cは、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0113】
一方、無効電力指令算出部27Cは、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。なお、無効電力指令算出部27Cの具体的な動作は、後述する。
【0114】
記憶部30Cは、図2に示す記憶部30と同様の構成及び機能を有する。さらに、記憶部30Cは、変調率に応じた変調率基準を記憶する。なお、変調率基準は、PCS1の仕様、使用環境、使用状況、使用者等に応じて、又は、事前のシミュレーションや設計値等に従って、所定の値に設定される。なお、記憶部30Cは、無効電力指令算出部27Cと接続されており、変調率基準の値は、無効電力指令算出部27Cによって取得されて使用される。
【0115】
図13は、図12に示した無効電力制御装置20Cの動作の一例を示すフローチャートである。図3に示すフローチャートでは、ステップS5の処理が行われていたが、図13に示すフローチャートでは、図9に示すフローチャートと同様に、ステップS5の処理は行われない。また、図3に示すフローチャートでは、ステップS6Aの処理が行われ、図9に示すフローチャートでは、これはステップS6Bに置き換わっていたが、図13に示すフローチャートでは、これはステップS6Cに置き換わっている。
【0116】
以下、図13に示すフローチャートでは、図3及び図9に示すフローチャートと異なる点を中心に説明し、図3及び図9に示すフローチャートと同様の点については説明を省略又は簡略化する。図13に示すフローチャートは、図3及び図9に示すフローチャートと同様に、例えば、PCS1の運転が開始されたときに開始される。
【0117】
ステップS6Cにおいて、無効電力制御装置20Cは、制御補償により、制限、補償後の無効電力指令値(第2の無効電力指令値)を算出する。すなわち、無効電力制御装置20Cの無効電力指令算出部27Cは、変調率算出部23から変調率を取得し、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルか否かの判定結果を取得する。
【0118】
そして、無効電力指令算出部27Cは、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときは、変調率算出部23により算出された変調率に基づいて、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を算出する。そして、無効電力指令算出部27Cは、制限又は補償された無効電力指令(第2の無効電力指令値)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0119】
一方、無効電力指令算出部27Cは、不感帯領域判定部25から無効電力指令が不感帯レベルであるとの判定結果を取得したときは、無効電力指令を制限又は補償せず、無効電力指令(第1の無効電力指令)をそのまま無効電力指令出力部28に出力する。
【0120】
図14は、図13に示したステップS6Cにおいて無効電力指令算出部27Cによって行われる処理の一例を示す図である。図13では、無効電力指令算出部27Cが、不感帯領域判定部25により無効電力指令が不感帯レベルに無いとの判定結果を取得したときの処理が示されている。
【0121】
ステップS61Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、記憶部30Cに記憶された変調率基準と、変調率算出部23によって算出された現在の変調率とを取得し、変調率基準と現在の変調率との差分を算出する。
【0122】
ステップS62Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS61Cで求められた差分にPI(Proportional-Integral:比例・積分)制御をかけて、当該差分又は偏差をゼロにするような制御量を求める。
【0123】
図15は、図14に示したステップS62Cにおいて無効電力指令算出部27Cによって行われるPI制御の処理の一例を示す図である。図15において、図14に示したステップ62Cは、ステップS621C~ステップS626Cで示される。
【0124】
ステップS621Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、例えば、ステップS61Cで求められた変調率基準と現在の変調率との差分の偏差を求める。
【0125】
ステップS622Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS621Cで求められた偏差とKpとに基づいて比例制御(P制御)を行う。なお、Kpは、比例ゲインである。
【0126】
ステップS623Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS621Cで求められた偏差を積分する。
【0127】
ステップS624Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS623Cで求められた偏差の積分とKp/Tiとに基づいて積分制御(I制御)を行う。なお、Kpは、比例ゲインであり、Tiは、積分ゲイン(時定数)である。
【0128】
ステップS625Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、S622Cの比例制御(P制御)で求められた制御量と、ステップS623C及びステップS624Cの積分制御(I制御)で求められた制御量とを加算した制御量を求める。
【0129】
ステップS626Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS625Cで求められた制御量に所定のリミッター(Limiter)をかけて無効電力補償項のPI制御出力とする。
【0130】
図14に戻り、ステップS63Cにおいて、無効電力指令算出部27Cは、ステップS62Cで求められた制御量を無効電力指令(第1の無効電力指令)に加算し、第1の無効電力指令を制限又は補償して制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を算出する。すなわち、本実施形態では、PI制御によって求められた制御量が無効電力指令に少しずつ加算されていくことで、無効電力指令が制限又は補償される。そして、無効電力指令算出部27Cは、制限又は補償後の無効電力指令(第2の無効電力指令)を無効電力指令出力部28に出力する。
【0131】
なお、ステップS62Cで求められた制御量がマイナスの値であった場合、無効電力指令算出部27Cは、マイナスの値の制御量を無効電力指令(第1の無効電力指令)に加算する(結果的に、制御量が減算される)。ここで、ステップS62Cが乗算ではなく、加算となっているのは、例えば、変調率基準と現在の変調率との差分又は偏差が無く、ゼロであった場合、ゼロが乗算されることにより無効電力指令(第2の無効電力指令)がゼロになってしまうことを避けるためである。
【0132】
以上、図13のステップS6Cにおける制御補償では、図14及び図15に示すとおり、変調率基準と入力値である変調率の偏差にPI制御が行われ、PI制御の出力が無効電力指令に加算されることで変調率が制御される。なお、変調率基準は、設計等による。例えば、装置定格放電運転時の変調率基準は、固定値であってもよく、外部から任意の設定値を入力可能とした可変値であってもよい。
【0133】
<第3実施形態の作用効果>
以上、図12図15に示す第3実施形態によれば、図1から図7に示す第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0134】
また、図12図15に示す第3実施形態によれば、記憶部30Cに記憶される変調率基準を変更することで、仕様や環境等の変動に柔軟に対応することができ、精度よく無効電力指令を制限又は補償することができる。
【0135】
また、図12図15に示す第3実施形態によれば、PI制御の制御速度に応じて、無効電力指令を制限又は補償する応答速度を変化させることができる。すなわち、PI制御の制御速度を早めることにより、無効電力指令を制限又は補償する応答速度を早めることができる。
【0136】
<ハードウェア構成例>
図16は、図1図15に示す実施形態に係る無効電力制御装置20、20B、20Cが有する処理回路のハードウェア構成例を示す概念図である。上述した各機能は処理回路により実現される。一態様として、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ91と少なくとも1つのメモリ92とを備える。他の態様として、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア93を備える。
【0137】
処理回路がプロセッサ91とメモリ92とを備える場合、各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、又はソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、メモリ92に格納される。プロセッサ91は、メモリ92に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、各機能を実現する。
【0138】
処理回路が専用のハードウェア93を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、又はこれらを組み合わせたものである。各機能は処理回路で実現される。
【0139】
無効電力制御装置20、20B、20Cが有する各機能は、それぞれ一部又は全部がハードウェアによって構成されてもよいし、プロセッサが実行するプログラムとして構成されてもよい。すなわち、無効電力制御装置20、20B、20Cはコンピュータとプログラムとによっても実現でき、プログラムを記憶媒体に記憶することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0140】
<実施形態の補足事項>
以上、図1図16に示す実施形態によれば、図1図7に示す第1実施形態と、図8図11に示す第2実施形態と、図12図15に示す第3実施形態とに実施形態が分かれているが、これには限られない。これらの実施形態の一部又は全部は、直列又は並列に組み合わされてもよい。実施形態が組み合わされることにより、組み合わされた実施形態は、組み合わされる前の各実施形態が奏する各作用効果を全て奏することができる。
【0141】
また、図1図16に示す実施形態によれば、本件開示の一態様として、無効電力制御装置20、20B、20Cを例に説明したが、無効電力制御装置20、20B、20Cの各部の処理ステップが行われる無効電力制御方法としても実現可能である。
【0142】
また、本件開示は、無効電力制御装置20、20B、20Cの各部の処理ステップをコンピュータに実行させる無効電力制御プログラムとしても実現可能である。
【0143】
また、本件開示は、当該無効電力制御プログラムを記憶させた記憶媒体(非一時的なコンピュータ可読媒体)としても実現可能である。すなわち、無効電力制御プログラムは、例えば、CD(Compact Disc)あるいはDVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ等のリムーバブルメディア等に記憶して頒布することができる。なお、無効電力制御プログラムは、無効電力制御装置20、20B、20Cに含まれるネットワークインタフェース等を介してネットワークからダウンロードされ、記憶部30、30B、30Cに格納されてもよい。
【0144】
以上の詳細な説明により、実施形態の特徴点および利点は明らかになるであろう。これは、特許請求の範囲がその精神および権利範囲を逸脱しない範囲で前述のような実施形態の特徴点および利点にまで及ぶことを意図するものである。また、当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、あらゆる改良および変更に容易に想到できるはずである。したがって、発明性を有する実施形態の範囲を前述したものに限定する意図はなく、実施形態に開示された範囲に含まれる適当な改良物および均等物に拠ることも可能である。
【符号の説明】
【0145】
1…PCS(パワーコンディショナ、電力変換器);11…直流電源;12…直流スイッチ(直流開閉器);13…インバータ;14…交流スイッチ(交流開閉器);15…交流電力系統(系統);16…系統電圧検出器;17…直流電圧検出器;20,20B,20C…無効電力制御装置;21…系統電圧取得変換部;22…直流電圧取得部;23…変調率算出部;24…無効電力指令取得部;25…不感帯領域判定部;26…指令値極性判定部;27,27B,27C…無効電力指令算出部;28…無効電力指令出力部;30,30B,30C…記憶部;31B…テーブル(TABLE);91…プロセッサ;92…メモリ;93…ハードウェア;K…係数
【要約】
無効電力制御装置は、系統電圧と直流電圧とを検出する電圧取得部と、電圧取得部により取得された系統電圧と直流電圧とを用いて変調率を算出する変調率算出部と、上位装置から第1の無効電力指令を取得する無効電力指令取得部と、無効電力指令取得部により取得された第1の無効電力指令が不感帯レベルか否かを判定する不感帯領域判定部と、不感帯領域判定部により、第1の無効電力指令が不感帯レベルではないと判定されたときに、変調率算出部により算出された変調率に基づいて、第1の無効電力指令を制限又は補償して第2の無効電力指令を算出する無効電力指令算出部と、無効電力指令算出部により第2の無効電力指令が算出されたときは、第2の無効電力指令を出力し、無効電力指令算出部により第2の無効電力指令が算出されなかったときは、第1の無効電力指令を出力する無効電力指令出力部と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16