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特許7347717溝摩耗量の測定方法、測定装置、及びエレベーター用綱車
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】溝摩耗量の測定方法、測定装置、及びエレベーター用綱車
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20230912BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20230912BHJP
【FI】
B66B5/00 G
B66B5/02 S
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023529384
(86)(22)【出願日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2021024009
(87)【国際公開番号】W WO2022269879
(87)【国際公開日】2022-12-29
【審査請求日】2023-07-07
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】飯田 康雅
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-018643(JP,A)
【文献】特開2011-246242(JP,A)
【文献】特開2011-213479(JP,A)
【文献】特開2003-112876(JP,A)
【文献】特開2006-027762(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 - 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の綱車に形成された溝の摩耗量を測定する方法であって、
前記溝の底面が向く方向と反対の方向を向く基準面に、センサを対向させる第1工程と、
前記第1工程の後、前記底面と前記基準面との距離である金属の厚さを前記センサによって測定する第2工程と、
を備えた溝摩耗量の測定方法。
【請求項2】
前記第2工程の後、前記センサによって測定された厚さが基準値より小さい場合に、前記綱車を交換する第3工程を更に備えた請求項1に記載の溝摩耗量の測定方法。
【請求項3】
前記センサは支持部材に支持され、
前記綱車に、測定用の孔が形成され、
前記孔の中心軸は、前記綱車の回転軸に対して平行であり、
前記基準面は、前記孔の内側に形成され、
前記第1工程において、前記センサが前記孔に配置された状態で前記支持部材が前記綱車に固定される請求項1又は請求項2に記載の溝摩耗量の測定方法。
【請求項4】
測定面を有し、前記測定面を金属製部材に接触させることによって前記金属製部材の厚さを測定可能なセンサと、
前記センサを支持する支持部材と、
を備え、
前記支持部材は、
前記センサが固定された基部と、
前記基部に設けられ、前記基部の表面から突出する円盤状の第1嵌め合い部と、
前記基部に設けられ、前記基部の前記表面から突出し、中心軸が前記第1嵌め合い部の中心軸に対して平行である円盤状の第2嵌め合い部と、
を備えた測定装置。
【請求項5】
前記支持部材に、前記基部と前記第2嵌め合い部とを貫くように貫通孔が形成され、
前記支持部材は、前記貫通孔を貫通するボルトによって前記金属製部材に固定される請求項4に記載の測定装置。
【請求項6】
回転軸に固定される内筒部と、
ロープを巻き掛けるための複数の溝が外周面に形成された外筒部と、
前記内筒部に設けられ、前記外筒部を支持する支持部と、
を備え、
前記外筒部に、前記複数の溝と前記回転軸との間を通過するように測定用の孔が形成され、
前記孔の中心軸は、前記回転軸に対して平行であるエレベーター用綱車。
【請求項7】
前記外筒部に、前記回転軸の周りに等間隔に配置されるように複数の前記孔が形成された請求項6に記載のエレベーター用綱車。
【請求項8】
前記孔を塞ぐための蓋を更に備えた請求項6又は請求項7に記載のエレベーター用綱車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、溝の摩耗量を測定する方法及び装置に関する。また、本開示は、エレベーター用綱車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エレベーターの綱車を点検するための装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、変位センサを備える。変位センサは、綱車に巻き掛けられたロープに対向するように配置される。変位センサによって、ロープの表面の変位が検出される。また、変位センサによって、綱車の表面の変位が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本特開平5-278975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置では、変位センサは、カバーによってブラケットに取り付けられる。このブラケットは、綱車とは別の部材である。このため、変位センサによって検出された結果には、カバーの取付誤差が含まれる。また、当該変位センサを用いて測定した溝の摩耗量には、ロープの摩耗量が誤差として含まれる。このため、特許文献1に記載された装置は測定精度が悪いといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、溝の摩耗量を精度良く測定することができる方法と、溝の摩耗量を精度良く測定するための装置とを提供することである。本開示の他の目的は、このような方法及び装置を適用するためのエレベーター用綱車を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る溝摩耗量の測定方法は、金属製の綱車に形成された溝の摩耗量を測定する方法である。当該測定方法は、溝の底面が向く方向と反対の方向を向く基準面に、センサを対向させる第1工程と、第1工程の後、底面と基準面との距離である金属の厚さをセンサによって測定する第2工程と、を備える。
【0007】
本開示に係る測定装置は、測定面を有し、測定面を金属製部材に接触させることによって金属製部材の厚さを測定可能なセンサと、センサを支持する支持部材と、を備える。支持部材は、センサが固定された基部と、基部に設けられ、基部の表面から突出する円盤状の第1嵌め合い部と、基部に設けられ、基部の表面から突出し、中心軸が第1嵌め合い部の中心軸に対して平行である円盤状の第2嵌め合い部と、を備える。
【0008】
本開示に係るエレベーター用綱車は、回転軸に固定される内筒部と、ロープを巻き掛けるための複数の溝が外周面に形成された外筒部と、内筒部に設けられ、外筒部を支持する支持部と、を備える。外筒部に、複数の溝と回転軸との間を通過するように測定用の孔が形成される。孔の中心軸は、回転軸に対して平行である。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、溝の摩耗量を精度良く測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】エレベーター装置の例を示す図である。
図2】駆動綱車を拡大した図である。
図3図2のA-A断面を示す図である。
図4】実施の形態1における測定装置の例を示す図である。
図5図4に示す測定装置をB方向から見た図である。
図6図4に示す測定装置をC方向から見た図である。
図7図2のE-E断面を示す図である。
図8】溝の摩耗量を測定する方法を説明するための図である。
図9】外筒部に取り付けられたセンサ及び支持部材をB方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0012】
実施の形態1.
図1は、エレベーター装置の例を示す図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって昇降路3に吊り下げられる。ロープ4は、例えばワイヤロープである。
【0013】
巻上機5は、かご1を駆動する。巻上機5は、駆動綱車6、モータ7、及びブレーキ装置8を備える。駆動綱車6は金属製である。ロープ4は、駆動綱車6に巻き掛けられる。モータ7は、駆動綱車6を駆動するための駆動力を発生させる。ブレーキ装置8は、駆動綱車6を静止保持する。図1は、2:1ローピング方式のエレベーター装置を一例として示す。1:1ローピング方式のエレベーター装置では、ロープ4は、そらせ車に更に巻き掛けられる。駆動綱車6及びそらせ車は、エレベーター用綱車の一例である。
【0014】
図2は、駆動綱車6を拡大した図である。図3は、図2のA-A断面を示す図である。駆動綱車6は、内筒部10、外筒部11、及び支持部12を備える。内筒部10は、回転軸9に固定される。回転軸9は、内筒部10を貫通する。回転軸9は、モータ7の駆動力によって回転する。例えば、回転軸9は、モータ7の出力軸に直結される。内筒部10は、回転軸9とともに回転する。
【0015】
内筒部10は、外筒部11の内側に配置される。外筒部11の外周面に、ロープ4を巻き掛けるための複数の溝13が形成される。図3は、外筒部11に3本の溝13が等間隔に形成される例を示す。外筒部11の外周面に形成される溝13の本数は何本でも良い。また、図3は、外筒部11の外周面に形成された各溝13に1本のロープ4が巻き掛けられる例を示す。即ち、図3に示す例では、かご1は3本のロープ4によって吊られている。外筒部11に形成された一部の溝13にロープ4が巻き掛けられていなくても良い。
【0016】
支持部12は、内筒部10に設けられ、内筒部10から放射状に延びる。支持部12は、内筒部10と外筒部11とを繋ぐ。即ち、外筒部11は、支持部12によって支持される。駆動綱車6が鋳造によって製造される場合、内筒部10、外筒部11、及び支持部12は一体的に形成される。
【0017】
かご1及びつり合いおもり2はロープ4によって吊り下げられているため、ロープ4には吊り荷重が作用する。ロープ4に作用する吊り荷重によって、ロープ4と溝13との間に摩擦力が発生する。上述したように、かご1は、駆動綱車6が回転することによって移動する。このため、ロープ4が巻き掛けられている溝13は、かご1が移動する度に極僅かに摩耗する。かご1が複数本のロープ4によって吊られている場合、摩耗が進行する早さは溝13毎に異なる。
【0018】
例えば、エレベーターが据え付けられた当初は、ロープ4に作用する吊り荷重が各ロープ4において同じになるように調整される。しかし、ロープ4の伸びには個体差があるため、時間の経過に伴い、ロープ4に作用する吊り荷重に偏りが生じる。溝13の摩耗の進み具合は、ロープ4に作用する吊り荷重の大きさに比例する。このため、溝13の摩耗の進行にも偏りが生じる。
【0019】
溝13に生じる摩耗の偏りを放置すると、1本のロープ4にのみ過大な吊り荷重が作用するようになる。当該ロープ4は、他のロープ4と比較して、素線が切れやすく、滑りが発生し易くなる。このため、エレベーター装置を適切な状態に保つためには、溝13の摩耗量を定期的に測定し、把握する必要がある。
【0020】
図2及び図3に示す駆動綱車6には、外筒部11に、複数組の貫通孔14と段付き穴15とが形成される。貫通孔14は、溝13の摩耗量を測定する際に用いられる測定用の孔である。当該複数の貫通孔14は、回転軸9の周りに配置される。図3に示す例では、8つの貫通孔14が回転軸9の周りに等間隔に形成されている。外筒部11に形成される貫通孔14の数は8に限定されない。
【0021】
貫通孔14は、外筒部11の側面11a及び側面11bで開口する。側面11a及び側面11bは、回転軸9に直交する面であり、互いに反対の方向を向く。貫通孔14の中心軸は、回転軸9に対して平行である。貫通孔14は、回転軸9と各溝13との間を通過するように形成される。
【0022】
段付き穴15は、対応する貫通孔14に隣接するように配置される。段付き穴15は、側面11aで開口する止まり穴15aと、止まり穴15aの底面で開口するねじ穴15bとを含む。ねじ穴15bの中心軸は、止まり穴15aの中心軸と一致する。
【0023】
図4は、実施の形態1における測定装置20の例を示す図である。図5は、図4に示す測定装置20をB方向から見た図である。図6は、図4に示す測定装置20をC方向から見た図である。測定装置20は、駆動綱車6に形成された溝13の摩耗量を測定するための装置である。測定装置20によって他の綱車に形成された溝の摩耗量を測定しても良い。測定装置20は、センサ21、ケーブル22、表示器23、及び支持部材24を備える。
【0024】
センサ21は、測定面25を有する。センサ21は、測定面25から例えば超音波を発する。測定面25が金属製の部材の表面に接触していれば、測定面25からの超音波は当該金属製部材の内部を伝搬する。金属製部材の内部を伝搬する超音波は、金属製部材の他の表面に達することにより、当該他の表面で反射する。センサ21は、この反射した超音波を検出することにより、当該表面間の距離、即ち金属製部材の厚さを測定することができる。センサ21によって測定された結果は、表示器23に表示される。
【0025】
支持部材24は、センサ21を支持する。また、支持部材24は、測定装置20によって溝13の摩耗量を測定する際のセンサ21の位置決め機能を有する。図4から図6に示す例では、支持部材24は、基部26、嵌め合い部27、及び嵌め合い部28を備える。
【0026】
基部26は、板状である。基部26に、センサ21が固定される。センサ21が図4に示すように円柱形状であれば、基部26は、センサ21に対して直交するように配置される。嵌め合い部27は、円盤状である。嵌め合い部28は、円盤状である。嵌め合い部27及び嵌め合い部28は、基部26に設けられる。嵌め合い部27及び嵌め合い部28は、基部26の表面26aから突出する。嵌め合い部28の中心軸は、嵌め合い部27の中心軸に対して平行に配置される。
【0027】
図4から図6に示す例では、センサ21の一部が嵌め合い部27から突出する。センサ21の当該一部、即ち突出部分は円柱形状である。当該突出部分の外周面は測定面25である。他の例として、当該突出部分の外周面の一部は、測定面25である。当該突出部分の中心軸は、嵌め合い部27の中心軸に対して平行である。但し、当該突出部分の中心軸は、嵌め合い部27の中心軸とは一致していない。当該突出部分は、測定面25の少なくとも一部と嵌め合い部27の外周面の一部との間に段差が形成されないように配置される。図6に示す例では、符号Dで示される測定面25の下端と嵌め合い部27の外周面の下端とが一直線状に配置されるように、センサ21が基部26に固定されている。
【0028】
支持部材24に、貫通孔24aが形成される。貫通孔24aは、基部26と嵌め合い部28とを貫く。貫通孔24aの中心軸は、嵌め合い部28の中心軸に一致する。
【0029】
次に、図7から図9も参照し、測定装置20を用いて駆動綱車6に形成された溝13の摩耗量を測定する方法について説明する。
【0030】
図7は、図2のE-E断面を示す図である。図7は、駆動綱車6の外筒部11に3本の溝13a~13cが形成された例を示す。なお、溝13aは、摩耗していない溝の例を示す。溝13bは、溝13aの状態から摩耗が少し進行した溝の例を示す。溝13cは、溝13bの状態から摩耗が更に進行した溝の例を示す。
【0031】
本実施の形態に示す例では、溝13の底面30と予め設定された基準面との距離を測定装置20によって測定することにより、溝13の摩耗量を得る。基準面は、底面30が向く方向とは反対の方向を向く面である。即ち、底面30と基準面との距離は、駆動綱車6の当該部分の金属の厚さである。本実施の形態に示す例では、基準面は、貫通孔14の内側に形成されている。即ち、本実施の形態に示す例では、貫通孔14の内周面のうち、底面30が向く方向とは反対の方向を向く部分が基準面である。
【0032】
測定装置20を用いて溝13の摩耗量を測定する場合、エレベーターの保守員は、先ず、センサ21を貫通孔14に挿入し、センサ21を貫通孔14に配置する。そして、保守員は、嵌め合い部27が貫通孔14に嵌まり且つ嵌め合い部28が段付き穴15の止まり穴15aに嵌まるように支持部材24を配置する。
【0033】
図8は、溝13の摩耗量を測定する方法を説明するための図である。図8は、図2のE-E断面に相当する。以下においては、溝13aの底面に対して符号30aを付す。同様に、溝13bの底面に対して符号30bを付す。溝13cの底面に対して符号30cを付す。
【0034】
図8に示す例では、嵌め合い部27が貫通孔14に嵌まり且つ嵌め合い部28が止まり穴15aに嵌まるように支持部材24が配置されている。この状態では、貫通孔14の内側に形成された基準面にセンサ21の測定面25が対向する。より好ましくは、貫通孔14の内側に形成された基準面にセンサ21の測定面25が接触する。センサ21を図8に示す状態に配置すると、保守員は、貫通孔24aに通したボルト31をねじ穴15bに締め付けることにより、支持部材24を外筒部11に固定する。図9は、外筒部11に取り付けられたセンサ21及び支持部材24をB方向から見た図である。
【0035】
センサ21及び支持部材24が外筒部11に取り付けられると、保守員は、センサ21によって、底面30aと基準面との距離L1、底面30bと基準面との距離L2、及び底面30cと基準面との距離L3を測定する。センサ21によって測定された結果は表示器23に表示される。
【0036】
保守員は、測定された距離L1、距離L2、及び距離L3のそれぞれを基準値TH1と比較する。基準値TH1は予め設定される。保守員は、測定された距離L1、距離L2、及び距離L3の少なくとも1つでも基準値TH1より小さければ、駆動綱車6の交換が必要であると判断する。かかる場合、保守員は、その場で或いは後日、駆動綱車6を新品のものに交換する。
【0037】
また、保守員は、測定した距離(金属の厚さ)の中で一番大きい値と一番小さい値との差を求める。保守員は、求めた差を基準値TH2と比較する。基準値TH2は予め設定される。保守員は、求めた差が基準値TH2より大きければ、駆動綱車6の交換が必要であると判断する。
【0038】
なお、駆動綱車6の交換が必要か否かの判断は、その場で行われなくても良い。かかる場合、測定装置20は、表示器23を備えていなくても良い。測定装置20は、表示器23の代わりに記憶装置或いは送信機を備えても良い。測定装置20が記憶装置を備えていれば、センサ21によって測定された結果は記憶装置に保存される。測定装置20が送信機を備えていれば、センサ21によって測定された結果は、予め登録された他の機器に送信される。
【0039】
本実施の形態に示す例では、駆動綱車6の外筒部11に形成された基準面に測定面25が対向するようにセンサ21が配置される。このため、センサ21の取付誤差を極めて小さな値に収めることができ、溝13の摩耗量を精度良く測定することができる。また、本実施の形態に示す例であれば、貫通孔14の加工を駆動綱車6の製作時に行うことができるため、極めて高い精度で貫通孔14を加工することができる。
【0040】
従来では、溝13の摩耗量を測定する際に、駆動綱車6の外周面を基準面とすることがあった。駆動綱車6の外周面には、ロープ4から染み出た油が付着している。このため、駆動綱車6の外周面を測定の基準面とする場合は、外周面に付着した油を取り除く作業を事前に行わなければならなかった。
【0041】
本実施の形態に示す例では、測定の基準面が溝13よりも回転軸9に近い位置に配置されている。また、当該基準面は、溝13の底面30が向く方向とは反対の方向を向いている。このため、ロープ4から染み出た油が基準面に付着することを防止できる。
【0042】
ロープ4から染み出た油が基準面に付着することを更に防止するため、駆動綱車6は、貫通孔14を塞ぐための蓋(図示せず)を更に備えても良い。駆動綱車6は、貫通孔14と段付き穴15との双方を塞ぐ蓋を備えても良い。かかる場合、貫通孔14が蓋に塞がれた状態で、エレベーターにおいて通常運転が行われる。
【0043】
溝13の摩耗量を測定する場合、保守員は、蓋を外筒部11から外した後に支持部材24を外筒部11に固定する。溝13の摩耗量の測定が終了すると、保守員は、センサ21及び支持部材24を外筒部11から取り外した後に、蓋を外筒部11に取り付ける。
【0044】
本実施の形態では、センサ21の位置決めのために、支持部材24の嵌め合い部27を貫通孔14に嵌め、嵌め合い部28を止まり穴15aに嵌める例について説明した。他の例として、測定装置20は、貫通孔14の内部においてセンサ21の測定面25を外筒部11の基準面に押し付けるための手段を更に備えても良い。例えば、当該手段として、弾性部材或いは板バネ等が採用されても良い。
【0045】
本実施の形態では、エレベーターの点検時等に、保守員が測定装置20の取り付け及び取り外しを行う例について説明した。測定装置20は、駆動綱車6に常設されても良い。かかる場合、測定装置20は、表示器23の代わりに記憶装置或いは送信機を備えることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本開示に係る測定方法は、金属製の綱車に形成された溝の摩耗量を測定する際に適用できる。
【符号の説明】
【0047】
1 かご、 2 つり合いおもり、 3 昇降路、 4 ロープ、 5 巻上機、 6 駆動綱車、 7 モータ、 8 ブレーキ装置、 9 回転軸、 10 内筒部、 11 外筒部、 11a~11b 側面、 12 支持部、 13 溝、 14 貫通孔、 15 段付き穴、 15a 止まり穴、 15b ねじ穴、 20 測定装置、 21 センサ、 22 ケーブル、 23 表示器、 24 支持部材、 24a 貫通孔、 25 測定面、 26 基部、 26a 表面、 27~28 嵌め合い部、 30 底面、 31 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9