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  • 特許-スライドスタック椅子 図1
  • 特許-スライドスタック椅子 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-11
(45)【発行日】2023-09-20
(54)【発明の名称】スライドスタック椅子
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/04 20060101AFI20230912BHJP
【FI】
A47C3/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020102821
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021194246
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】391014114
【氏名又は名称】株式会社SANKEI
(74)【代理人】
【識別番号】100081547
【弁理士】
【氏名又は名称】亀川 義示
(72)【発明者】
【氏名】北岡 秀典
(72)【発明者】
【氏名】池谷 晃一
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-62353(JP,A)
【文献】特開2016-106692(JP,A)
【文献】特開2017-86362(JP,A)
【文献】特開2019-63166(JP,A)
【文献】特開2020-28666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 3/00-7/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前脚、後脚の上部を連結するほぼ水平な座枠の内側面間に、座を回転可能に保持する回転軸ステーと、座が着座状態で着座する座受けステーを固定し、上記座を跳ね上げて起立させることにより、複数の椅子を前後方向にスライドさせてスタックできるよう後脚間の間隔を前脚間の間隔よりも狭く形成したスライドスタック椅子において、上記座受けステーは、回転軸ステーよりも前方位置で座枠に固定される座受けステー固定部と、該座受けステー固定部から斜め前部下方に内方に斜行して延びる斜行部と、該斜行部の先端から横方向に延び座の前方部分の裏面に対向する座支持部を具備し、着座状態において座の前方部分を座支持部で支持し、前後方向にスタックする際、座枠間に挿入された他方の椅子の後脚を受け入れできる受入れ空間を上記斜行部と座枠内側間に形成したスライドスタック椅子。
【請求項2】
上記座の裏面には、座板フレームが設けられ、該座板フレームには着座状態で上記座受けステーの座支持部に着座するよう座横架パイプが設けられている請求項1記載のスタック椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、座を跳ね上げた状態で複数の椅子を前後方向にスライドさせてスタックするスライドスタック椅子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前脚間の対向間隔と後脚間の対向間隔を、いずれか一方の間隔よりも他方の間隔を大きく形成し、椅子を前後方向にスライドさせることにより、前脚の間若しくは後脚の間に他方に椅子の後脚若しくは前脚を受け入れて前後方向にスタックできるようにしたスライドスタック椅子が知られている。このような椅子として、座枠に、横方向に延びる回転軸ステーと、該回転軸ステーの前方に座受けステーを設け、回転軸ステーに座を跳ね上げ回転可能に取り付け、座を着座状態に展開したとき座の下面を座受けステーで支持する構成の椅子が広く用いられている。着座状態で座に作用する荷重は、後方部分が回転軸ステーで支持され、前方部分が座受けステーで支持されるから、座の支持強度を上げるためには、座受けステーと回転軸ステーの間隔をできるだけ広くし、すなわち座受けステーを椅子の前方部分に設けることが好ましい。
【0003】
一方、座受けステーは、座を跳ね上げた状態でも回転軸ステ―の前方部分に横方向に位置しているから、椅子を前後方向にスタックする際、後方若しくは前方から組み合わされる椅子の後脚、前脚、座等がぶつかった状態でスタックされることになる。したがって、前後方向にスタックするときのスタックピッチを小さくするには、座受けステーの位置は、回転軸ステーに接近し、できるだけ後方に位置させることが好ましいが、そうすると、座がたわんだり、指を挟み込むおそれが大きくなり、座の支持強度を確保するのがむずかしくなる。
上述したように座の支持強度を向上させるための要求と、スタックピッチを短くするという要求は反することになる。
【0004】
例えば、スライドスタック椅子の一例として示す特許文献1には、前脚フレーム(前脚)間の間隔を、後脚フレーム(後脚)間の間隔よりも広く形成し、前方の椅子を後方にスライドしてスタックすることができる椅子が示されているが、特許文献1に記載の椅子では、公報の図4に示されているように、肘掛け部が上方に設けられているので、肘掛け部の後端が他方に椅子の前端に当って停止する。このような肘掛け部がない通常の椅子では、後脚は架設フレーム(座枠)間のさらに内方に入り込み、座板受軸(座受けステー)に当って停止することになる。このとき、特許文献1に記載の椅子では、図4図5に示されているように、座板受軸は、架設フレームに固定された一端の固定部から他端の固定部に向かって架設フレームに直交して直線状に延びているから、座を取り付けた回動支軸と、座を支持する座板受軸の間隔は短くなる。そのため、座の支持間隔が短く、座の支持強度を大きくする効果は期待できない。また前後方向にスタックするときに後脚が座板受軸に当接することになるので、スタックピッチを短くすることもできない。さらに、通常座板受軸はパイプ材料で構成されており、前後方向にスタックするとき、後脚は座板受軸のパイプ表面に接触して左右に滑りやすく、不安定となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-62353号公報(図4図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の解決課題は、前後方向にスライドさせてスタックするスライドスタック椅子において、座の支持強度を向上でき、かつスタックピッチを短くでき、前後方向に椅子を安定状態に組み合わせることができるようにしたスライドスタック椅子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、前脚、後脚の上部を連結するほぼ水平な座枠の内側面間に、座を回転可能に保持する回転軸ステーと、座が着座状態で着座する座受けステーを固定し、上記座を跳ね上げて起立させることにより、複数の椅子を前後方向にスライドさせてスタックできるよう後脚間の間隔を前脚間の間隔よりも狭く形成したスライドスタック椅子において、上記座受けステーは、回転軸ステーよりも前方位置で座枠に固定される座受けステー固定部と、該座受けステー固定部から斜め前部下方に内方に斜行して延びる斜行部と、該斜行部の先端から横方向に延び座の前方部分の裏面に対向する座支持部を具備し、着座状態において座の前方部分を座支持部で支持し、前後方向にスタックする際、座枠間に挿入された他方の椅子の後脚を受け入れできる受入れ空間を上記斜行部と座枠内側間に形成したスライドスタック椅子が提供され、上記課題が解決される。
【0008】
上記座の裏面には、座板フレームが設けられ、該座板フレームには着座状態で上記座受けステーの座支持部に着座するよう座横架パイプが設けられている上記スライドスタック椅子が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、上記のように構成され、座受けステーを座枠に固定する座受けステー固定部は、従来の椅子と同様に、回転軸ステ―よりも前方に位置しているが、本発明の座受けステーには、座受けステー固定部に連絡して、該座受けステー固定部から斜め前部下方に内方に斜行して延びる斜行部と、該斜行部の先端から横方向に延び座の前方部分の裏面に対向する座支持部が形成されている。すなわち、本発明では、着座状態において座の前方部分を支持する座支持部は、座受けステー固定部よりも前方位置に存しており、従来の椅子に比べて前方部分で座を担持することになるから、座のたわみが防止され、指を挟み込むおそれも少なくでき、座の支持強度を向上させることができる。
また、受入れ空間が、座支持部よりも回転軸ステーに近い位置にある座受ステー固体部側に形成され、スタックの際、後脚をこの受入れ空間に挿入してスタックできるから、座支持部に後脚を当接させてスタックする場合に比べて、スタックピッチを短くでき、後脚を受入れ空間で囲むことができるので、ガタつかないようにスライドスタックすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】着座状態の本発明の一実施例を示し、 (A)は正面図、(B)は平面図、(C)は側面図。
図2】座を跳ね上げた状態を示し、 (A)は正面図、(B)は平面図、(C)は側面図。
図3】スタック状態を示す説明図であり (A)は側面図、(B)は平面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照し、本発明のスライドスタック椅子1の一実施例を示し、断面円形のパイプ材料により上方に起立する前脚2と後脚3を形成し、後脚3間の対向する間隔を前脚間の対向間隔よりも狭く形成し、下端にはそれぞれキャスター4が設けられている。前脚2の上端には、後方に延びるほぼ水平な座枠5が連接され、座枠5の後端は後脚3の上部に連接されており、後脚3の上方には背フレーム6が連接されて背部7が形成されている。
【0012】
上記座枠5の対向する内側面間には、座8を回転可能に保持する回転軸ステー9と、座8が着座状態で着座する座受けステー10が横方向に固定されている。回転軸ステー9は、両端が座枠5に固定され、この固定部11間を結んで中間部分が下方に湾曲する取付部12が座枠に直交して直線状に延びており、該取付部12に、座8の取付けブラケット13を固定して座8の前方部分を跳ね上げて起立状態に回転できるように回転可能に座を保持している
【0013】
上記座受けステー10は、回転軸ステー9よりも前方に位置し、座枠5に固定される座受けステー固定部14を両端に形成し、該座受けステー固定部14から斜め前部下方に内方に斜行して延びる斜行部15が連接され、該斜行部15の先端には、横方向に延びて座8の前方部分を支持する座支持部16が一連に形成されている。上記斜行部15の傾斜角度や、座支持部16と座受けステー固定部14間の距離は適宜にすることができるが、例えば、斜行部15の傾斜角度を、固定部14を通る仮想垂直線に対して約45~60度、好ましくは約60度程度にし、固定部14と座支持部16間の距離を約30~50mm、好ましくは約50mm程度に形成することができる。
【0014】
上記座8は、ネット構造の座やその他の適宜の構成にすることができる。図に示す実施例では、図2に示すように、前方が広く、後方がそれより狭くなるよう略矩形状に屈曲した座板フレーム17を形成し、その上面に座板18を取り付けるとともに、該座板フレーム17の略中間部に横方向に延びる座横架パイプ19を固定してある。該座横架パイプ19は、中間部が座板から離れるように下方に屈曲して座板フレーム17からほぼ垂直に垂下し、着座状態において上記座受けステー10の座支持部16に載置されるようにしてある。
【0015】
上記のように座受けステー10の斜行部15は、該座受けステー固定部14から斜め前部下方に内方に斜行して延びるるから、図3に示すように、斜行部15と座枠内側間には、受入れ空間20が形成される。この受入れ空間20には、前後方向に椅子1をスタックする際、座枠5間に挿入された他方の椅子の後脚3が入り込み、この空間内で後脚3は囲まれ、安定する。
【0016】
上記の構成により座8を倒せば、図1に示すように座8は前方部分の裏面で、座受けステー10の座支持部16に支持され、この位置は従来の椅子の支持位置よりも前方であるから、座のたわみが防止される。従来のスタック椅子の座受けステーと本発明の座受ステーの位置の変化による効果を比較するため、従来のスタック椅子の座受けステーの固定位置と同じ位置に座受ステー固定部14を位置させ、その位置よりも座支持部16を約50mm前方に位置させた状態で座板フレーム17の前部先端に10Nの荷重をかけたときのこの座枠フレームの先端の上下方向の位置の変化を測定した。従来のものでは、座板フレーム17の先端が約0.126mm下方にたわんだのに対し、図1に示す椅子では、約0.098mmのたわみであり、支持強度が約1.28倍になったことが確かめられた。
【0017】
また、図2に示すように座8を跳ね上げ、前後方向にスタックしたところ、図3に示すように、後脚3は座受けステー10の固定部14よりも少し前方に位置することになるが、固定部に隣接する受入れ空間20に入り込むので、実質的に従来の椅子と変わらない程度のスタックピッチ、換言すれば上記のような座の支持強度を得るために、座受けステーを座枠の前方に設けたときのスタックピッチよりも短いピッチでスタックできるとともに、受入れ空間20で後脚3を囲むことができるので、スタック状態が安定し、崩れにくい状態でスタックすることができる。
【符号の説明】
【0018】
1 スライドスタック椅子
2 前脚
3 後脚
5 座枠
8 座
9 回転軸ステー
10 座受ステー
14 座受ステー固定部
15 斜行部
16 座支持部
17 座板フレーム
18 座板
19 座横架パイプ
20 受入れ空間
図1
図2
図3